説明

エレクトロウェッティングディスプレイ

【課題】画素に電圧印加した時の着色オイルの集合位置を制御することを可能にするエレクトウェッティングディスプレイを提供する。
【解決手段】基板1上に形成された透明電極2上に撥水性絶縁膜を形成し、その上に格子状の隔壁リブ5を形成し、隔壁リブ5で囲まれた部分に着色オイルを満たし、その上方を水で満たして透明電極が形成された対向基板と貼り合わされてなるエレクトロウェッティングディスプレイであって、前記撥水性絶縁膜として、電圧無印加状態では水に対する接触角が同等であるが、印加電圧の上昇に伴って変化する接触角の特性が異なる、第1の撥水性絶縁膜3と第2の撥水性絶縁膜4とを使用し、前記第2の撥水性絶縁膜4として、前記第1の撥水性絶縁膜3の接触角が印加電圧の上昇により変化開始する前に、接触角の差が所定角度以上変化、もしくは飽和する撥水性絶縁膜を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロウェッティング現象を用いたエレクトウェッティングディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロウェッティングディスプレイは、透明電極上に撥水性(疎水性)の絶縁膜を形成し、その上に格子状の隔壁を形成する。隔壁で囲まれた部分には着色オイルで満たされており、その上方は水で満たされて透明電極が形成された対向基板と貼り合わされる。この電極間に電圧を印加すると、撥水性絶縁膜の水に対する接触角が低下して撥水性絶縁膜面が親水性に変化し、水がなじむようになる。その結果、水が着色オイルを押しのけ、画素内の着色オイルと水との面積比が変化し画素の明暗が作り出されて表示体として機能する。
【0003】
従来、この様なエレクトロウェッティング現象を表示装置として使用する場合には、形成された画素内で着色オイルの集合する場所は、それぞれの画素に於いて同一場所である必要があり、それは四角い画素の4コーナーの内のいずれか1つである。そのため、集合する場所を制御する為に、撥水性絶縁膜の下にある駆動用電極の一部を切り欠き、駆動時に掛かる電圧を不均一にして集合場所を規定するが、完全に制御することができない場合がある。
【0004】
また、この他の制御方法としては、絶縁膜の一部を画素全体より薄くするものがある(例えば、特許文献1参照)。しかし、画素内に段差が生じてしまい、工程が複雑になり、コストアップの要因にもなる。また、電極を2つの領域に形成し、集合させたいコーナーの対向二辺にL字型とそれ以外の部分を形成するものがある(例えば、特許文献2参照)。しかし、駆動素子を1画素に2つ形成しなければならず、工程が複雑になり、歩留まりが低下し、コストアップの要因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第03/071346号パフレット
【特許文献2】特表2010−503013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したエレクトロウェッティングディスプレイにおいては、次のような問題点があった。
【0007】
・画素に電圧を印加した場合に、画素内の着色オイルの集合する位置はコーナーであるが、どの位置に集合するかは制御できない。
【0008】
・画素毎に着色オイルが移動する位置がバラバラである場合には人間の目に表示が不自然に見えてしまう。
【0009】
・そのため、画素内で着色オイルが移動する場合、常に特定の位置(コーナー)に移動する事が望ましい。
【0010】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、画素に電圧印加した時の着色オイルの集合位置を制御することを可能にするエレクトウェッティングディスプレイを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るエレクトウェッティングディスプレイは、基板上に形成された透明電極上に撥水性絶縁膜を形成し、その上に格子状の隔壁を形成し、隔壁で囲まれた部分に着色オイルを満たし、その上方を水で満たして透明電極が形成された対向基板と貼り合わされてなるエレクトロウェッティングディスプレイであって、前記撥水性絶縁膜として、電圧無印加状態では水に対する接触角が同等であるが、印加電圧の上昇に伴って変化する接触角の特性が異なる、第1の撥水性絶縁膜と第2の撥水性絶縁膜とを使用し、前記第2の撥水性絶縁膜として、前記第1の撥水性絶縁膜の接触角が印加電圧の上昇により変化開始する前に、接触角の差が所定角度以上変化、もしくは飽和する撥水性絶縁膜を使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、画素に電圧印加した時の着色オイルの集合する方向を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係るエレクトロウェッティングディスプレイを示す図であって、(a)は上面図、(b)は断面図である。
【図2】図1における第1の撥水性絶縁膜3と第2の撥水性絶縁膜4の電圧対接触角の動作特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るエレクトロウェッティングディスプレイは、公知のエレクトロウェッティング効果(電気毛管現象)を利用したエレクトロウェッティングディスプレイであり、撥水性絶縁膜として第1と第2の撥水性絶縁膜を使用する。この2種類の撥水性絶縁膜は、電圧無印加状態では水に対する接触角がほぼ同等であるが、印加電圧の上昇に伴って変化する接触角の特性が異なるものであって、第2の撥水性絶縁膜は、第1の撥水性絶縁膜の接触角が電圧により変化開始する前に、所定角度以上の接触角の差を有する、もしくは飽和する撥水性絶縁膜を使用する。そして、着色オイルを集合したいコーナーと接する側に第1の撥水性絶縁膜を形成し、そのコーナーに対向する2辺に第2の撥水性絶縁膜をL字型に形成する。
【0015】
以下、具体例について説明する。図1(a)、(b)は、本発明の実施の形態に係るエレクトロウェッティングディスプレイの上面図と断面図である。基板1上にITO電極2が形成され、ITO電極2の上に、着色オイルを集合したいオイル集合コーナーと接する側に第1の撥水性絶縁膜3と形成され、前記オイル集合コーナーに対向する2辺にL字型の第2の撥水性絶縁膜4が形成されている。さらに、第1の撥水性絶縁膜3と第2の撥水性絶縁膜4の上に、隔壁リブ5が形成されている。ここで、第1の撥水性絶縁膜3は透明フッ素樹脂であるCYTOP(ペルフルオロ(4−ビニルオキシ−1−ブテン)(BVE)を環化重合させることにより得られる非結晶フッ素樹脂であって、旭硝子の商品名)で形成され、第2の撥水性絶縁膜4は高誘電率膜+CYTOPで形成されている。
【0016】
このように、図1に示すように、着色オイルを集合したいコーナーと接する側に第1の撥水性絶縁膜3を形成し、そのコーナーに対向する2辺に第2の撥水性絶縁膜4をL字型に形成することで、印加電圧を徐々に上げていくと、第2の撥水性絶縁膜4側の2辺側が先に接触角が低下し、この2辺側から着色オイルが動くように方向づけられる。さらに、印加電圧が上昇して第1の撥水性絶縁膜3の接触角が変化する電圧に達すると、先の2辺側から着色オイルの後退が起こり、所望するコーナーに向かって着色オイルが集合する。
【0017】
図2は、第1の撥水性絶縁膜3と第2の撥水性絶縁膜4の電圧対接触角の動作特性図を示す。図2に示すように、第2の撥水性絶縁膜4の電圧対接触角特性Aは、第1の撥水性絶縁膜3の電圧対接触角特性Bに比較して、印加電圧の上昇につれて、接触角が比較的早く変化することが理解できる。例えば、図2に示す特性図から、印加電圧が40Vである場合、第1の撥水性絶縁膜3の電圧対接触角特性Bは接触角が変化しなく、106°近辺であるが、第2の撥水性絶縁膜4の電圧対接触角特性Aの接触角は低下して92°となる。これにより、着色オイルを集合したいコーナーに対向する2辺側が先に接触角が低下し、この2辺側から着色オイルが動くように方向づけられ、印加電圧がさらに上昇して第1の撥水性絶縁膜3の接触角が変化する電圧、例えば70Vに達すると、先の2辺側から着色オイルの後退が起こり、所望するコーナーに向かって着色オイルが集合することになる。
【0018】
したがって、本発明の実施の形態によれば、撥水性絶縁膜として、電圧無印加状態では水に対する接触角が同等であるが、印加電圧の上昇に伴って変化する接触角の特性が異なる、第1の撥水性絶縁膜3と第2の撥水性絶縁膜4とを使用し、着色オイルを集合したいコーナーと接する側に第1の撥水性絶縁膜3を形成し、そのコーナーに対向する2辺に第2の撥水性絶縁膜4をL字型に形成することで、電圧印加した時の着色オイルの集合する方向を制御することができる。
【符号の説明】
【0019】
1 基板、2 ITO電極、3 第1の撥水性絶縁膜、4 第2の撥水性絶縁膜、5 隔壁リブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された透明電極上に撥水性絶縁膜を形成し、その上に格子状の隔壁を形成し、隔壁で囲まれた部分に着色オイルを満たし、その上方を水で満たして透明電極が形成された対向基板と貼り合わされてなるエレクトロウェッティングディスプレイであって、
前記撥水性絶縁膜として、電圧無印加状態では水に対する接触角が同等であるが、印加電圧の上昇に伴って変化する接触角の特性が異なる、第1の撥水性絶縁膜と第2の撥水性絶縁膜とを使用し、
前記第2の撥水性絶縁膜として、前記第1の撥水性絶縁膜の接触角が印加電圧の上昇により変化開始する前に、接触角の差が所定角度以上の変化、もしくは飽和する撥水性絶縁膜を使用する
ことを特徴とするエレクトロウェッティングディスプレイ。
【請求項2】
請求項1に記載のエレクトロウェッティングディスプレイにおいて、
前記第1の撥水性絶縁膜は、前記着色オイルを集合したいコーナーと接する側に形成され、
前記第2の撥水性絶縁膜は、前記コーナーに対向する2辺にL字型に形成される
ことを特徴とするエレクトロウェッティングディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−92701(P2013−92701A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235566(P2011−235566)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(501426046)エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド (732)
【Fターム(参考)】