説明

口金および管形ランプ

【課題】 有底円筒状をなす口金本体においてリード線を半田付け(接続)する部分からフラックスの流下防止がはかれる口金およびこの口金をバルブ端部に接合した管形ランプを提供することを目的とする。
【解決手段】 端部にリード線4を封着した封着部31が形成されたガラス管バルブ3と、このガラス管バルブ3内においてリード線4に設けられた発光源5Aと、上記ガラス管バルブ3の端部に有底円筒状をなす口金本体11の開口部13側が接合されるとともにバルブ3端部から導出したリード線4を口金本体11側面に口金軸に沿って形成したリード線案内溝15を介し案内して先端部を本体11に半田7付けしてなる口金1とを備えたランプ2Aおよび上記口金1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はランプのガラス管バルブ端部に取着される口金およびこの口金が設けられた管形ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車輌やAV機器などには照明用や表示用として、ヒューズ球と呼ばれている小形の管形白熱電球(ランプ)や、液晶表示用などとして細径のバルブを使用した冷陰極蛍光ランプなどが多く用いられている。
【0003】
これらのランプは、細径のガラス管によりバルブが形成され、バルブ両端のリード線を封着した封着部を覆うように有底円筒状の口金が設けられ、この両端の口金部がソケット装置に装着されることにより機械的な支持と電気的な接続がなされるよう構成されている。
【0004】
たとえば従来の小形管形電球(ランプ)は、図5にその一端部を示すように、ガラス管からなるバルブGの封着部Sを覆うように有底円筒状をなす金属製の口金Bが被せられ、口金Bの開口部側において接着剤Cを介し接合させているとともに封着部Sから導出したリード線Lを口金Bの底面T中心のリード線挿通孔Hを挿通させその先端部を口金Bの底面T外側において半田付けにより接続している。(なお、図示していないがバルブB内においてリード線の先端にはフィラメントが継線されている。)
そして、上記バルブG端部への口金Bの接合は、開口部の内面に接着剤Cを被着した口金Bの底面Tのリード線挿通孔Hにリード線Lを挿通させた後、封着部Sに口金Bを被せ、この状態で接着剤Cを硬化させてるとともにリード線挿通孔Hから突出している部分を少し残してリード線Lを切断する。
【0005】
この切断したリード線Lの先端をそのままあるいは折り曲げ、この先端部分および底面Tの表面にフラックスを塗布した後、底面T部分とリード線Lとを半田付けする。このとき半田Rは端子としての作用をなすよう盛り上がった状態にある。
【0006】
このようにして電球は完成されるが、電球が倉庫などで長く留め置かれたり実使用された後、リード線Lが腐食することに起因してリード線Lの痩せや封着部のクラックなどで早期に電球が不点となることがあった。
【0007】
この早期に電球が不点となるフラックスによるリード線L腐食の原因は、上記リード線Lの半田付け時に、フラックスがリード線挿通孔Hから口金B内にリード線Lを通じ伝え流れリード線Lとバルブとの封着部にまで達するためで、フラックス塗布量の低減や腐食の少ないフラックスなどの手段を講じたが半田付け部の接合力や作業性の低下を招くなどの問題があった。また、洗浄などの後処理も考えられるが、口金内であるため作業が極めて困難である。
【0008】
そこで、これら問題を含む対応としてリード線挿通孔を設けていない口金を用いた管球が、たとえば特許文献1に記載されている。
【0009】
この特許文献1によれば、バルブと口金とを接合する接着剤としてたとえばSn−Pb合金からなる軟質金属蝋を用い、口金内部に溶融充填された金属蝋中にバルブ端部およびこの端部から突出させたリード線を埋没固定して機械的および電気的な接合をなした管球である。
【0010】
しかし、このように軟質とはいえ金属蝋材を用いることは、電気的には好適であるが、高い作業温度であるとともに充填に多量の材料を要するので作業性の低下を招き、かつ、高価となる虞がある。
【特許文献1】特開平7−262910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、有底円筒状をなす口金本体においてリード線を半田付け(接続)する部分からフラックスの流下防止がはかれる口金およびこの口金をバルブ端部に接合した管形ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1に記載の口金は、有底円筒状をなす口金本体の側面に口金軸に沿ってリード線案内溝が形成されていることを特徴としている。
【0013】
この有底円筒状をなす口金は、底面(頂面)にランプ端部から導出したリード線が半田付けされるが、底面(頂面)にはリード線の挿通孔が設けられておらず、リード線半田付けの際にフラックスがリード線を伝わり流下する虞がなく封着部にまで浸入しないので、リード線の腐食発生防止がはかれる。
【0014】
なお、本発明および以下の各発明において、特に指定しない限り用語の定義および技術的意味は次による。
【0015】
口金本体(シェルとも呼ばれている)は真鍮やニッケルメッキした鉄などの金属板をプレス成形した有底円筒状をなし、口金本体の外側面に口金軸に沿うリード線案内溝が上記本体製造のプレス工程時に形成することができる。
【0016】
また、封止済みランプのバルブ端部に口金を接合する手段は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂やシリコン樹脂などを接着主成分とする接着剤による接合手段やバルブ端部および口金の本体側面に互いに嵌合する凹凸や螺旋溝などを形成したメカニカル接合手段などを適用することができる。
【0017】
さらに、半田は高融点半田から低融点半田にまで適用でき、フラックスは半田の種類に応じて塩化亜鉛系のものなどから選ぶことができる。
【0018】
本発明の請求項2に記載の口金は、有底円筒状をなす口金本体の側面に口金軸に沿って開口部側には切欠部が、底面側にはこの切欠部と連設してリード線案内溝が形成されていることを特徴としている。
【0019】
上記請求項1に記載の作用の他、口金本体の側面に口金軸に沿って開口部側に切欠部を形成することにより、バルブ端部から延出したリード線を本体外に導出する位置出しおよび切欠部と連設したリード線案内溝内にリード線を容易に案内させることができる。
【0020】
本発明の請求項3に記載の管形ランプは、端部にリード線を気密封着した封着部が形成されたガラス管バルブと、このガラス管バルブ内においてリード線に設けられた発光源と、上記ガラス管バルブの端部に開口部側が接合されるとともにバルブ端部から導出したリード線をリード線案内溝を介し案内して先端部を本体に半田付けしてなる前記請求項1または請求項2に記載の口金とを具備していることを特徴としている。
【0021】
ガラス管バルブの端部に接合する口金として、上記請求項1および2に記載の作用を奏する口金を用いているので、バルブ端部から延出したリード線を本体外に導出する位置出しおよび切欠部と連設したリード線案内溝内にリード線を容易に案内させることができる。
【0022】
また、リード線案内溝から突出したリード線の先端部分は口金本体の底面(頂面)と平行になるようほぼ直角に折り曲げられ半田付けされるので、半田付け予定部に付着したフラックスがリード線を伝わり流下する虞がなく、万一流れてもリード線が添設される口金本体外側面のリード線案内溝に付着して封着部にまで達することがない。
【0023】
なお、このリード線の口金本体への半田付け部分は底面(頂面)に限らず、本体の外側面であってもよい。
【0024】
本発明の請求項4に記載の管形ランプは、前記発光源がフィラメントまたは放電電極であることを特徴としている。
【0025】
発光源がフィラメントの場合は管形白熱電球(ランプ)として、また、放電電極の場合は冷陰極形蛍光ランプなどの放電ランプとしての作用をなす。
【発明の効果】
【0026】
本発明の請求項1および請求項2の記載によれば、半田付け予定部にリード線挿通孔がない底面(頂面)を有し、半田付け時に口金内部にフラックス流下の虞がない口金を提供できる。
【0027】
本発明の請求項3の記載によれば、フラックスがリード線を伝わり流下する虞がない口金を接合しているので、フラックスによるリード線の腐食発生防止および封着部の破壊防止がはかれる長寿命の両端口金付き管形ランプを提供できる。
【0028】
本発明の請求項4の記載によれば、管形電球および管形放電ランプに適用して上記請求項3に記載と同様の効果を奏する長寿命の両端口金付き管形ランプを提供できる。
【0029】
また本発明は、管形電球として白熱電球や赤外線電球など、管形放電ランプとして冷陰極形の蛍光ランプや紫外線ランプなどに適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の口金およびこの口金を接合した両端口金付き管形白熱電球(ランプ)の実施の形態を図1ないし図3を参照して説明する。図1は口金単体を示し(a)図は上面図、(b)図は正面図、(c)図は(a)図中のa−a線に沿い縦断した部分の縦断面図、図2は口金接合前の管形白熱電球(ランプ)の正面図、図3は両端口金付き管形白熱電球(ランプ)を示し、(a)図は正面図、(b)図は(a)図中のb−b線に沿い縦断した部分(端部)の縦断面図である。
【0031】
なお、本発明の口金および管形白熱電球(ランプ)において上下(天地)や左右などは図面の説明上であって、口金の底面が頂面になるなど実使用時にはその名称や位置方向が変わることがある。
【0032】
図1において1は口金で、たとえば板厚さが0.1〜0.2mm程度の真鍮などの金属材料で外径が約6mm、全長が約8mmの有底円筒状に形成された口金本体(シェル)11と、この有底部を形成する底面(頂面)12と、口金本体11の軸に沿って開口部13から中間部にまで形成された切溝14と、この切溝14に連設して中間部から底面12部までの外側面に形成された一条のリード線案内溝15とで構成されている。
【0033】
また、図2は排気済みの管形白熱電球(ランプ)2で、外径が約5mm、全長が約20mmの軟質のガラス管からなるバルブ3の両端に外径が約0.3mmのリード線4をガラスビーズ封止や焼絞り封止なとの手段で形成した封着部31,31を有する。また、バルブ3内に延在したリード線4,4の先端部には発光源としてタングステン細線を巻回したコイル状のフィラメント5Aが継線されているとともにバルブ3内にはアルゴンAr、キセノンXeやクリプトンKrなどの不活性ガスが封入されていたりあるいは真空雰囲気としてある。
【0034】
そして、この管形白熱電球(ランプ)2は、バルブ3両端の封着部31,31を覆うように円筒状をなす金属製の口金1が被せられ、口金1の開口部13側においてフェノール樹脂などを接着主成分とする接着剤6を介し接合されているとともに封着部31から導出したリード線4,4を口金1,1の底面(頂面)12に半田7付けしている。
【0035】
このとき封着部31から導出したリード線4は、口金1の中間部において切溝14から外部に引き出されて、リード線案内溝15を巻くよう溝15内に沿って案内され、先端部を底面(頂面)12部に導き長すぎる場合は切断したのち底面(頂面)12部に添設して、この先端部および底面(頂面)12の表面にフラックスを少量付着してこの部分を加熱し半田7付けを行い、固定と電気的接続がなされるよう構成して両端口金付き管形白熱電球(ランプ)2Aが完成する。
【0036】
この両端口金付き管形白熱電球(ランプ)2Aは、両端の口金1,1部分がソケット装置(図示しない。)のΩ型をした受け端子に装着されて、機械的な保持と電気的な接続がなされる。なお、口金1の底面(頂面)12は、平面であっても差し支えないが、図示のように底面(頂面)12部分を凹状とすることによって半田7は中心部分が盛り上がり、この底面(頂面)12部分を接続部とする場合に好適する形状が得られる。
【0037】
そして、この両端口金付き管形白熱電球(ランプ)2Aは、口金1の底面(頂面)12部分にリード線4を半田7付けする際には従来と同様に塩化亜鉛などを主成分としたフラックスが用いられ、通常、口金1の底面(頂面)12側を上にしてリード線4の半田7付けが行われるが、リード線案内溝15から突出したリード線4の先端部分は底面(頂面)12と平行になるようほぼ直角に折り曲げられるのでフラックスがリード線4を伝わり流下する虞がなく封着部31にまで浸入しないので、リード線4の腐食発生防止がはかれる長寿命の電球(ランプ)2Aを提供できる。
【0038】
また、上記実施の形態では、口金本体11の開口部側の外側面に口金軸に沿って開口部13から中間部にまで切溝14を形成したが、この切溝14は全く形成していなくても、また、リード線4が引っ掛かる僅かな長さ形成してあってもよく、この切溝14が形成されない場合は、代わりにリード線案内溝15が延長形成されていればよい。
【0039】
また、口金本体11における上記リード線4の半田7付けは、底面12(頂面)部分に限らず、本体11側面のリード線案内溝15内において行うようにしても差し支えない。
【0040】
また、図4は本発明の他の実施の形態を示す直管形の放電ランプで、中間部を切欠するとともに一端部側を縦断した正面断面図である。この図4は液晶のバックライト装置などに用いられる冷陰極放電ランプ2Bであって、図1ないし図3と同一部分には同一の符号を付してその説明は省略する。
【0041】
この冷陰極放電ランプ2Bはソーダライムなどのガラスからなる長尺の直管円筒状のガラス管からなるバルブ3の両端に外径が約0.3mmのリード線4をガラスビーズ封止や焼絞り封止なとの手段で形成した封着部31(一方は図示しない。)を有する。また、バルブ3内に延在したリード線4の先端部には棒状や筒状あるいは平板状をした放電用の冷陰極5Bが接続されている。
【0042】
また、このバルブ3の内面には蛍光体膜8が形成されているとともにバルブ3内にはアルゴンArやキセノンXeなどの希ガスが単独または混合して封入されている。
【0043】
また、上記バルブ3両端の封着部31を覆うように図1に示す円筒状をなす金属製の口金1が被せられ、口金1の開口部13側においてエポキシ樹脂やシリコン樹脂などを成分とする接着剤6を介し接合されているとともに封着部31から導出したリード線4を口金本体11の底面(頂面)12に半田7付けしている。
【0044】
この実施の形態においても上記図2,3に示すと同様に封着部31から導出したリード線4は、口金1の本体11中間部において切溝14から外部に引き出されて、リード線案内溝15内に沿って案内され、先端部を底面(頂面)12部に導きフラックスを少量塗布して半田7付けが行なわれ固定と電気的接続がなされ両端に口金1,1が設けられた冷陰極形蛍光ランプ2Bを構成している。
【0045】
この冷陰極形蛍光ランプ2Bは、両端の口金1,1部分がソケット装置(図示しない。)のΩ型などをした受け端子に装着されて、機械的な保持と電気的な接続がなされる。そして、図示しないインバータなどを有する高周波点灯回路装置に接続したソケット装置に給電することにより、電極5B,5B間に放電を生起させ、この放電によりバルブ3内の水銀を電離および励起して紫外線を発生させて蛍光体膜8で可視光に変化して発光(点灯)させることができる。
【0046】
この冷陰極形蛍光ランプ2Bの場合も、上記口金付けにおいて口金1の底面(頂面)12に半田7付けをする際にリード線4を伝わりフラックスが流下する虞がなく封着部31にまで浸入しないので、リード線4の腐食発生防止がはかれる液晶のバックライト装置などに用いて好適な長寿命の蛍光ランプ2Bを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の口金の実施の形態を示し、(a)図は上面図、(b)図は正面図、(c)図は(a)図中のa−a線に沿い縦断した端部の縦断面図である。
【図2】口金接合前の管形ランプ(管形白熱電球)の正面図である。
【図3】本発明の両端口金付き管形ランプ(管形白熱電球)の実施の形態を示し、(a)図は正面図、(b)図は(a)図中のb−b線に沿い縦断した端部の縦断面図である。
【図4】本発明の両端口金付き管形ランプ(放電ランプ)の実施の形態を示す一部切欠正面断面図である。
【図5】従来の両端口金付き管形ランプの端部の縦断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1:口金
11:口金本体
12:底面(頂面)
2A:管形白熱電球(ランプ)
2B:冷陰極蛍光ランプ(放電ランプ)
3:ガラス管バルブ
31:封着部
4:リード線
5A:発光源(フィラメント)
5B:発光源(放電電極)
7:半田

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底円筒状をなす口金本体の側面に口金軸に沿ってリード線案内溝が形成されていることを特徴とする口金。
【請求項2】
有底円筒状をなす口金本体の側面に口金軸に沿って開口部側には切欠部が、底面側にはこの切欠部と連設してリード線案内溝が形成されていることを特徴とする口金。
【請求項3】
端部にリード線を気密封着した封着部が形成されたガラス管バルブと;
このガラス管バルブ内においてリード線に設けられた発光源と;
上記ガラス管バルブの端部に開口部側が接合されるとともにバルブ端部から導出したリード線をリード線案内溝を介し案内して先端部を本体に半田付けしてなる前記請求項1または請求項2に記載の口金と;
を具備していることを特徴とする管形ランプ。
【請求項4】
前記発光源がフィラメントまたは放電電極であることを特徴とする請求項3に記載の管形ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−4800(P2006−4800A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180801(P2004−180801)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】