説明

紐留め具

【課題】特に、操作用紐を簡単に組込可能にしたり交換できるようにする。
【解決手段】通し孔21付き雌部材2と、雌部材内に移動自在に嵌合された通し穴1付きの雄部材1と、雄部材を雌部材から突出する方向へ付勢する付勢手段3と、雄部材に対し紐上端側を係止した状態で雌部材の下端部に設けられた貫通孔26を通って外へ導出された操作用紐6とを備え、紐6の引き力により雄部材1を付勢力に抗し雌部材2の没方向へ移動可能となる紐留め具4であって、雄部材1は、通し孔11より下側に設けられて周囲に貫通している内空間12と、内空間と下端面とを貫通形成して雌部材の貫通孔と略同軸線上に配置される貫通孔16とを有し、紐6の紐上端側が雌部材及び雄部材の各貫通孔を通って内空間12に挿通された状態で係止される構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、衣服や袋状部材の開口縁回り等に配置される紐(ロープやコードそれら類似にするものを含む、以下、同じ)の両端又は一端を任意の長さに係止したり、紐の引出量や締め付け度合いを調整するために好適な紐留め具に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は特許文献1に開示の紐留め具を示している。この紐留め具は、同(b)のごとく通し孔を周囲に有した雌部材1と、通し孔を周囲に有して雌部材内に移動自在に嵌合された雄部材2と、雄部材2を雌部材1から突出する方向へ付勢するバネ3と、雄部材2に対し紐上端側を係止した状態で雌部材1の下端部に設けられた貫通孔を通って外へ導出された操作用紐8とを備えている。操作用紐8は、雄部材2の下側に貫通された係合孔を迂回して外へ2重状態に引き出され、引き力により雄部材2を付勢力に抗し雌部材1の内側没方向へ移動して、雌・雄部材の各通し孔に挿通された締め紐11を長さ調整可能にする。同(a)は以上の紐留め具の使用例を示し、操作用紐8が締め紐11を配置している被適用物品である手袋側に係止されている。このため、この使用例では、締め紐11を引っ張ることにより、操作用紐8に張力を与え雄部材2をバネ3の付勢力に抗して雌部材1の没方向へ移動し、両部材1,2の各通し孔を略同軸線上に一致させるようにして、締め紐11を長さ調整することになる。
【0003】
図9は特許文献2に開示の紐留め具を示している。この紐留め具170も、同(b)のごとく通し孔110,110'を周囲に有した雌部材102と、通し孔122を周囲に有して雌部材内に移動自在に嵌合された雄部材104と、雄部材104を雌部材102から突出する方向へ付勢するスプリング128と、雄部材104に対し紐上端側を係止した状態で雌部材102の下端部に設けられた貫通孔136を通って外へ導出された操作用紐124とを備えている。操作用紐124は、雄部材104の下端側に固定され、引き力により雄部材104を付勢力に抗し雌部材102の内側没方向へ移動して、雌・雄部材の各通し孔に挿通された締め紐144を長さ調整可能にする。同(a)は以上の紐留め具の使用例を示し、紐留め具17が雌部材上側に設けられた取付溝142に掛け止めされた取付紐118により被適用物品である手袋90に係止されている。このため、この使用例では、操作用紐124を引っ張ることにより、取付紐118に張力を与え雄部材2をスプリング128の付勢力に抗して雌部材102の内側没方向へ移動し、両部材102,104の各通し孔を略同軸線上に一致させるようにして、締め紐144を長さ調整することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平5−2090号公報
【特許文献2】米国特許公開2010/0257701号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の各紐留め具は、部材数が少なく、衣服等の被適用物品に配置された締め紐を各通し孔の相対的なずれを利用して係止し、また操作用紐を用いて雄部材を雌部材の内没方向へ移動し、締め紐の引出量を調整可能なため簡易かつ使い勝手に優れている。
【0006】
しかしながら、各特許文献1,2の構造は、操作用紐が一旦組み付けられると、簡単には交換できないため汎用性に欠ける。加えて、特許文献1の操作用紐は、雌部材の下側貫通孔から雄部材に設けられた係合穴を一方から他方へ通して迂回するため2重の紐となって太くなり、外観特性が損なわれ易い。特許文献2の操作用紐は、雄部材の下端部に対して接着やインサート等の方法で固定しなくてはならないため作業性が悪く、製造費を低減し難い。
【0007】
そこで、本発明の目的は、以上のような問題を解消して、特に、操作用紐を簡単に組込可能にしたり、簡単に交換可能にすることによりファッション性に優れるようにする。他の目的は以下の内容説明のなかで明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解消するため請求項1の発明は、図面を参照して特定すると、通し孔21を周囲に有した雌部材2と、通し孔11を周囲に有して前記雌部材内に移動自在に嵌合された雄部材1と、前記雄部材を前記雌部材から突出する方向へ付勢する付勢手段3と、前記雄部材に対し紐上端側を係止した状態で前記雌部材の下端部に設けられた貫通孔26を通って外へ導出された操作用紐6とを備え、前記操作用紐の引き力により前記雄部材1を付勢力に抗し前記雌部材2の内側没方向へ移動可能となる紐留め具4であって、前記雄部材1は、前記通し孔11より下側に設けられて周囲に貫通されている内空間12と、前記内空間と下端面とを貫通形成して前記雌部材の貫通孔と略同軸線上に配置される貫通孔16とを有し、前記操作用紐6の紐上端側が前記雌部材及び雄部材の各貫通孔を通って前記内空間12に挿通された状態で係止されることを特徴としている。
【0009】
以上の本発明は、請求項2〜6で特定したように具体化されることがより好ましい。
(ア)、前記雄部材1は、前記通し孔11の下側周囲に設けられて前記内空間12と連通している前記通し孔11よりも大きな開口12aを有しており、前記操作用紐6が前記内空間12から前記開口12aを通って外に導出されて結び目等の抜け止め用膨出部6aを形成可能となっている構成である(請求項2)。なお、抜け止め用の膨出部としては、結び目が簡易なため好ましいが、技術的には簡易なストッパーなどでもよい。
(イ)、前記雄部材1は、前記通し孔11の下側周囲に突設された係止爪13を有し、前記係止爪が前記雌部材2の前記通し孔21に嵌合した状態で前記雌部材に対し抜けを阻止する構成である(請求項3)。
【0010】
(ウ)、前記雌部材2は、上側周囲に設けられた紐挿通用取付溝23を有している構成である(請求項4)
(エ)、前記雌部材2の通し孔21は、前記雄部材1の通し孔11及び前記開口12aより大きく形成されている構成である(請求項5)。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明では、図3に例示されるごとく操作用紐を組み付けたり交換する場合、例えば雌部材の貫通孔より雄部材の貫通孔を通って雄部材の内空間に挿通し、その挿通した端部に結び目等の膨出部を形成するだけで簡単に組み付けることができ、また、特許文献1に比べて操作用紐を単一紐にして、例えば紐留め具の外径を抑え易くしたり、紐留め具を袋状部内に配置する場合に袋内より孔や鳩目などを介して見栄えよく外へ導出可能となる。これらにより、本発明は、操作用紐の組込性、交換性、単一紐構成などの点からファション性を向上して用途拡大に寄与できる。
【0012】
請求項2の発明では、雄部材が内空間と連通している通し孔よりも大きな開口を有しているため、図3(a)に例示されるごとく操作用紐を内空間から開口を通って外に一旦導出した状態で、結び目等の抜け止め用膨出部を形成した後、引っ張ることによってより迅速に操作用紐を組み付けたり交換できる。
【0013】
請求項3の発明では、係止爪が雌部材の通し孔に嵌合した状態で雌部材から抜け止めされるため、紐留め具として締め紐を各通し孔に挿通しない態様であっても一体物のとして取り扱うことができる。
【0014】
請求項4の発明では、図5(a)に例示されるごとく紐留め具が取付用紐を取付溝に挿入しループを形成するようして被適用物品に取り付けることができる。
【0015】
請求項5の発明では、雌部材の通し孔が雄部材の通し孔及び開口より大きく形成されているため、上述した図3(a)のごとく操作用紐を内空間から開口、及び雌部材側の大きな通し孔を通って外に導出する操作、結び目等の抜け止め用膨出部を形成した後に再び内空間に収容する操作などに好適なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a),(b)は形態の紐留め具を示す正面と背面側より見た斜視図である。
【図2】(a)は上記紐留め具の左側面図、(b)は上面図、(c)は正面図、(d)は下面図、(e)は背面図である。
【図3】(a)は図2のA−A線拡大断面図、(b)は(a)の紐留め具に締め紐及び操作用紐を組み込んで、操作用紐を引っ張った状態図である。
【図4】(a)は上記紐留め具の使用例を示す模式図、(b)は紐留め具を配置している裏側を示す模式図、(c)は紐留め具を覆っている布等を省略した模式図である。
【図5】本紐留め具を被適用物品に用いる場合を想定し、(a)は紐留め具が取付用紐を介し被適用物品に組み付けられる態様を示し、(b)は操作用紐が鳩目を介し被適用物品の一方の面側から他方の面側に挿通配置される態様を示している。
【図6】上記紐留め具の雌部材単品を示し、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は下面図、(d)は(b)のB−B線拡大断面図である。
【図7】上記紐留め具の雄部材単品を示し、(a)は左側面図、(b)は上面図(c)正面図、(d)は下面図、(e)は(c)のC−C線拡大断面図である。
【図8】(a)と(b)は特許文献1の紐留め具を説明するための図である。
【図9】(a)と(b)は特許文献2の紐留め具を説明するための図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の最適な形態を図面を参照しながら説明する。図1及び図2は紐留め具を操作用紐のない態様で示し、図3は操作用紐を組み込む操作例を示し、図4及び図5は使用例を示し、図6は雌部材単品を示し、図7は雄部材単品を示している。以下の説明では、構造、組立、使用例の順に詳述する。
【0018】
(構造)形態の紐留め具4は、雄部材1及び雌部材2並び付勢手段としてコイルばね3と操作用紐6から構成されている。このうち、雄部材1及び雌部材2は何れもが樹脂成形品であるが、樹脂以外でも差し支えない。コイルばね3は金属製であるが、樹脂で構成しても差し支えない。全体の大きさは、作図上拡大しているが、実際はかなり小さくなっている。細部は以下の通りである。
【0019】
まず、雄部材1は、図1及び図7に示されるごとく、全体が軸線方向に長い筒部10となっている。筒部10には、上側(これは筒部10を縦向きにした場合であり、横向きにした場合は左端又は右端である一端側となる、以下、同じ)周囲に対向して設けられた2つの通し孔11,11と、各通し孔11より所定距離だけ下側の周囲に対向して設けられて筒部の内空間12に連通している2つの開口12aと、各通し孔11と各開口12aとの間の周囲に対向して突設された2つの係止爪13と、一回り径小に形成された下端部14と、内空間12と下端部14の下端面とを貫通形成している下側の貫通孔16とを有している。
【0020】
筒部10の外周は、各係止爪13と、下端部14とを除いて同じ径で連続している。筒部10の内部は、下端部14の少し上側までがほぼ同じ孔径、つまり上側貫通孔15及び内空間12は連続した同径の孔であり、下側の貫通孔16が少し径小となっている。貫通孔16は、操作用紐6が余裕を持って挿通される孔径に設定されている。
【0021】
各通し孔11は、図5に示されるごとく矩形の孔であるが、対象の締め紐5が余裕を持って挿通される大きさの孔であればよい。内空間12は、操作用紐6の紐上端側(これは上記筒部10と同じく縦向きにした場合であり、横向きにした場合は左端又は右端である一端側となる、以下、同じ)に形成される抜け防止用膨出部である結び目6aが収まる大きさとなっている。
【0022】
各開口12aは、通し孔11より少し大きな矩形状となっているが、操作用紐6に設けられる結び目6aなどの抜け防止用膨出部を余裕を持って挿通できる形状であればよい。各係止爪13は、突起であり、突出寸法が図3に示されるごとく雌部材側筒部20の外径とほぼ同じ大きさとなっている。下端部14は、コイルばね3の一端(図では上端)側を嵌合し支持する箇所となる。
【0023】
雌部材2は、図1及び図6に示されているごとく、上側から下端付近なでを内空間25に形成している概略トンネル形状の筒部20となっている。筒部20には、中間部の周囲に対向して設けられた2つの通し孔21,21と、上側周囲の一部を鍔状に突設した取付部22と、図3のごとく下端内側に設けられたばね支持部24と、内空間25と下端面とを貫通形成している下側の貫通孔26とを有している。
【0024】
内空間25は、雄部材1のほぼ全体を収容可能な大きさとなっている。各通し孔21は、筒長手方向に長い略矩形状であり、大きさが雄部材側通し孔11と開口12aとを合わせた開口面積とほぼ同じか、それよりも少し大きく形成されている。取付部22は、上下ないしは筒部20の長手方向に貫通され取付溝23を形成している。取付溝23には、図5(a)に例示されるごとく取付用紐7がループ状に挿通した状態に組み込まれる。取付用紐7は、紐留め具4を必要に応じて衣服などの被適用物品に取り付けるときに用いられる。
【0025】
また、図3のごとく雄部材1が雌部材側内空間25に挿入された組込状態において、ばね支持部24は、雌部材側の下端部14との間にコイルばね3を膨縮自在に支持する箇所である。貫通孔26は、雄部材側の貫通孔16と略同径に形成されていると共に貫通孔16と対向しており、操作用紐6の対応端側をここから貫通孔16に向けて挿通可能にする。なお、コイルばね3は、コイル径がばね支持部24及び下端部14の外径より大きく、かつ雌部材側内空間25の内径より小さくなっている。
【0026】
(組立)以上の各部材は次の要領にて紐留め具4として組み立てられる。まず、雌部材2に対してコイルばね3が図6(d)のごとくばね支持部24に一端を嵌合支持される。この状態から、雄部材1が雌部材2の筒内に差し込まれる。その差込操作では、雌部材側筒部20に対する雄部材1の差込途中で、各係止爪13が筒部20の上端縁に当たるが、各係止爪13が内側に押されて縮径方向に変形されることで、筒部20内に押し込められつつ最終的に対応する通し孔21内に嵌合される。その嵌合により、雄部材1は、図3(a)のごとく雌部材2に抜け止め状態に組み付けられるとともに、コイルばね3の付勢力により雌部材2に対し最大(係止爪13が雌部材側の通し孔21の孔上縁に係止される)まで突出され、通し孔11が雌部材側の通し孔21より上側に移動された状態となる。この組立体は3点構成の紐留め具4である。
【0027】
また、以上の紐留め具4は、操作用紐6を図3(b)のごとく雄部材1に着脱可能ないしは交換可能に取り付けることで4点構成の紐留め具4となる。つまり、紐留め具4は、操作用紐6を組み付けない態様で紐6と共に提供されたり、操作用紐6を組み付けた態様で提供される。前者の場合は、紐6として色や模様等の異なるものを複数組として提供することも考えられ、使用者は好みの紐6を選択して紐留め具4に後付けすることになる。この操作では、例えば、紐6の一端側が図3(a)のごとく雌部材側貫通孔26から雄部材側貫通孔16及び内空間12に挿通され、かつ、内空間12から開口12a及び雌部材側通し孔21を通って外へ引き出され、結び目6aが形成される。その後は、紐6の他端(この他端にも結び目6aや他のストッパー等の膨出部が設けられる)側が図3(b)の矢印方向に引っ張られると、形成した結び目6aが通し孔21及び開口12aから内空間12に引き込まれて4点構成の紐留め具3となる。
【0028】
(使用例)以上の4点構成の紐留め具4は、特許文献1や2と同じく例えば衣服や袋状部材の開口縁回り等に配置される締め紐5の両端又は一端を任意の長さに係止したり、締め紐5の引出量や締め付け度合いを調整するときに用いられる。すなわち、締め紐5との関係では、図3(b)に例示したごとく、操作用紐6を同図の矢印方向に引っ張ったり、図8及び図9で述べた方法で前記矢印方向への張力を与えたり、雄部材1を雌部材2の筒内へ直接押し操作することにより、雄部材1をコイルばね3の付勢力に抗し雌部材2の下側に押し、雄部材1と雌部材2の両通し孔11,21をほぼ合わせた状態から、締め紐5の対応端をそれら各通し孔にそれぞれ挿通させる。その後、前記した操作用紐6の引っ張りや張力を解放したり、雄部材1に対する押し力を解放する。すると、雄部材1は雌部材2に対しコイルばね3の付勢力により上側へ動かされ、これにより、通し孔11が雌部材側通し孔21に対し相対的な位置がずれて締め紐5を所定のテンションにて抜け止め(紐係止状態)することになる。紐留め具4は、以上の基本作用に加え、次のような従来にない優れた作用効果を有している。
【0029】
(1)紐留め具4は、操作用紐6を使用者の好みなどに応じて簡単に交換できる。すなわち、操作用紐6の交換操作では、図3の例だと、同(b)の状態から、紐6を上向きに少し持ち上げ、同(a)のごとく結び目6を開口12a及び通し孔21から外へ引き出し、結び目6をほぐしたり切断するだで、後は他端側を引っ張るだけで紐6が紐留め具4から取り外される。新たな操作用紐6は、上述したごとく紐6の一端側が同(a)のごとく貫通孔26から貫通孔16及び内空間12に挿通され、かつ、内空間12から開口12a及び通し孔21を通って外へ引き出され、結び目6aが形成される。その後は、紐6の他端側が同(b)の矢印方向に引っ張られると、結び目6aが通し孔21及び開口12aから内空間12に引き込まれる。
【0030】
(2)紐留め具4は、以上のごとく操作用紐6の交換が簡単なことに加え、特許文献1のような2重の紐構成に比べ単一の紐構成であることから、全体の外径寸法を小さく抑え易くなってデザインの自由度を拡大できる。しかも、図4に示した使用例のごとく紐留め具4を袋状部81内に配置するようにしても操作用紐6を袋内より鳩目9や鳩目に代わる孔などを介して見栄えよく外へ導出できる。
【0031】
図4を補足説明する。符号8は防寒着のフード又はそれに類似のものを想定している。このフード8には、同(b)及び(c)のごとく開口周縁部に沿って設けられた細長い袋状部80と、袋状部80の両側に設けられて袋状部80側を開口している紐留め具4用の袋状部81と、袋状部81内にあって表面材に所定間隔を保って装着された2つの鳩目9とを有している。符号83は袋状部81を形成するための縫製部である。
【0032】
袋状部80には締め紐5が挿通されている。締め紐5は、対応端側が袋状部80から袋状部81に入れられ、同(c)のごとく袋状部81内に配置された紐留め具4の各通し孔21,11及び鳩目9を通ってフード8の裏側から表側へ引き出されている。締め紐5の端末には、必要に応じて結び目5aや他の抜け止め用膨出部が設けられる。また、紐留め具4の操作用紐6は、他の鳩目9を通ってフード8の裏側から表側へ引き出されている。図4において、締め紐5の引出量や締め付け度合いを調整する要領は、上記した基本作用と同じく操作用紐6を引っ張った状態で、締め紐5の引き出し端側を必要量だけ引っ張ったり緩めることになる。
【0033】
(3)図5は図4の使用例において、紐留め具4と被適用物品であるフード8との関係を示している。同(a)の紐留め具4は、取付溝23に挿通された取付用紐7を袋状部81内にあってフード8側に縫製部7aにより装着されている。この構成は、特許文献1や2と同様に、紐留め具4を取付用紐7を介し被適用物品側に縫製部7aなどによって位置固定することにより、操作用紐6の引っ力により雌部材2に対し雄部材1が効率よく動くようにするためである。これに対し、同(b)の紐留め具4は取付用紐7を用いることなく袋状部81内に単に入れられて遊嵌されている。以上の紐留め具4はこの場合でも操作用紐6を引っ張ると、雌部材2が鳩目9に当たって位置規制されるため、操作用紐6の引っ力により雌部材2に対し雄部材1が動くことになる。この作用は、紐留め具4の操作用紐6が単一紐の構成であり、鳩目9を使用できるためである。
【0034】
なお、以上の形態は本発明を制約するものではない。本発明は、請求項で特定される技術要素を実質的に備えておればよく、細部は必要に応じて種々変更したり展開可能なものである。一例を挙げると、付勢手段としては、コイルばねに代えて雄部材又は雌部材に弾性片又はそれに類似の弾性部分を一体的に形成することである。
【符号の説明】
【0035】
1…雄部材(10は筒部、11は通し孔、12aは開口、13は係止爪)
2…雌部材(20は筒部、21は通し孔、22は取付部、23は取付溝)
3…コイルばね(付勢手段)
4…紐留め具
5…締め紐
6…操作用紐(6aは抜け止め用膨出部である結び目)
7…取付用紐
8…防寒着等のフード(被適用物品、80と81は袋状部)
9…鳩目
12…内空間
14…下端部
15…貫通孔
16…貫通孔
24…ばね支持部
25…内空間
26…貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通し孔を周囲に有した雌部材と、通し孔を周囲に有して前記雌部材内に移動自在に嵌合された雄部材と、前記雄部材を前記雌部材から突出する方向へ付勢する付勢手段と、前記雄部材に対し紐上端側を係止した状態で前記雌部材の下端部に設けられた貫通孔を通って外へ導出された操作用紐とを備え、前記操作用紐の引き力により前記雄部材を付勢力に抗し前記雌部材の内側没方向へ移動可能となる紐留め具であって、
前記雄部材は、前記通し孔より下側に設けられて周囲に貫通している内空間と、前記内空間と下端面とを貫通形成して前記雌部材の貫通孔と略同軸線上に配置される貫通孔とを有し、前記操作用紐の紐上端側が前記雌部材及び雄部材の各貫通孔を通って前記内空間に挿通した状態で係止されることを特徴とする紐留め具。
【請求項2】
前記雄部材は、前記通し孔の下側周囲に設けられて前記内空間と連通している前記通し孔よりも大きな開口を有しており、前記操作用紐が前記内空間から前記開口を通って外に導出されて結び目等の抜け止め用膨出部を形成可能となっていることを特徴とする請求項1に記載の紐留め具。
【請求項3】
前記雄部材は、前記通し孔の下側周囲に突設された係止爪を有し、前記係止爪が前記雌部材の前記通し孔に嵌合した状態で前記雌部材に対し抜けを阻止することを特徴とする請求項1又は2に記載の紐留め具。
【請求項4】
前記雌部材は、上側周囲に設けられた紐挿通用取付溝を有していることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の紐留め具。
【請求項5】
前記雌部材の通し孔は、前記雄部材の通し孔及び前記開口より大きく形成されていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の紐留め具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−106675(P2013−106675A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252222(P2011−252222)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)