説明

うつ病のバイオマーカー、うつ病のバイオマーカーの測定法、コンピュータプログラム、及び記憶媒体

【課題】うつ病を診断するためのバイオマーカーを提供する。
【解決手段】ADPリボース、ATP、ADP、AMP、セロトニン、トリプトファン、キヌレニン、SDMA(対称性ジメチルアルギニン)、スレオニン、グリセリン酸、セリン、N−アセチルアスパラギン酸、グルタミン酸、トリゴネリン、クレアチン、2−メチルセリン、スフィンゴシン、ホモバニリン酸、ピペリジン、スルホキシド化メチオニン、ピペコリン酸、スフィンガニン、γ−ブチロベタイン、グアニド酢酸、イソ酪酸、クレアチニン、サルコシン、3−メチル酪酸、ニコチンアミド、ベタイン、オルニチン、カルニチン、エタノールアミン、ホスホエタノールアミン、タウリン、ヒポタウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、ホスホリルコリン、アルギニン、アスパラギン、他からなる群から選択される一以上の化合物を、バイオマーカーとし、採取した血液中の含有量を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、うつ病を診断するためのバイオマーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
うつ病とは、気分障害の一種であり、「抑うつ気分」及び「興味や喜びの喪失」を主たる症状とするが、それ以外にも、食欲低下、不眠、疲れやすさ、希死念慮、などの症状を訴える患者もいる。一般に、診断基準として、WHO(世界保健機関)の国際疾病分類である「ICD-10」、または米国精神医学会の「DSM-IV」の2つが用いられることが多い。
【0003】
しかしながら、うつ病の診断は、医師や心理士の主観、あるいは症状やストレスを申告する患者や個人の主観に依拠しており、客観的と言いがたいことも多い。実際、無意識的にしろ、意識的にしろ、患者が病気であることによって何らかの有利な点がある場合に症状を過剰に訴える疾病利得や、その反対にうつ病であると他人に知られることによって蒙る偏見や不都合を避けたくて症状を秘匿することが頻繁に観察される。そのような場合、正確な疾患の診断が困難であって、治療方法を決定することが難しかったり、誤った診断によって誤った治療をしたりすることもある。
【0004】
そこで、医師や心理士の診断を客観的に補足する方法が各種検討されている。例えば、医師や心理士の診断結果をコンピュータ処理することによって患者の症状に表れるノイズをできるだけ除く方法(国際公開 WO2004/080312)である。
【0005】
これまでにうつ病のマーカーとして報告された例として、遺伝子の発現レベルを測定する方法(特開2008−253258)や、タンパク質の分解産物を検出する方法(特開2009−92550)等の、高分子物質が知られている。
【0006】
一方で、生体内における低分子化合物をうつ病マーカーとして着目した例は、テストステロン及びコルチゾール量の測定値と対比する方法(特開2007−24822)やトリプトファンの生体内分解産物を検出する方法(国際公開 WO2006/105907)について報告されているものがあるが、実用化には至っていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、うつ病を診断するためのバイオマーカーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の各項よりなる。
(1)うつ病を診断するためのバイオマーカーであって、ADPリボース、ATP、ADP、AMP、セロトニン、トリプトファン、キヌレニン、SDMA(対称性ジメチルアルギニン)、スレオニン、グリセリン酸、セリン、N−アセチルアスパラギン酸、グルタミン酸、トリゴネリン、クレアチン、2−メチルセリン、スフィンゴシン、ホモバニリン酸、ピペリジン、スルホキシド化メチオニン、ピペコリン酸、スフィンガニン、γ−ブチロベタイン、グアニド酢酸、イソ酪酸、クレアチニン、サルコシン、3−メチル酪酸、ニコチンアミド、ベタイン、オルニチン、カルニチン、エタノールアミン、ホスホエタノールアミン、タウリン、ヒポタウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、ホスホリルコリン、アルギニン、アスパラギン、3−アミノ酪酸、β−アラニン、フェニルアラニン、リジン、ホスホクレアチン、アラニン、尿酸、コリン、イソクエン酸、ロイシン、リンゴ酸、2−アミノアジピン酸、チラミン、バリン、グルカル酸、ヒスチジン、ADMA(非対称性ジメチルアルギニン)、イソロイシン、ヒドロキシプロリン、及びシスタチオニンからなる群から選択されることを特徴とするバイオマーカー。
(2)うつ病を診断するためのバイオマーカーであって、ホスホエタノールアミン、タウリン、ヒポタウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、ホスホリルコリン、アルギニン、アスパラギン、3−アミノ酪酸、β−アラニン、フェニルアラニン、リジン、ホスホクレアチン、アラニン、尿酸、コリン、イソクエン酸、ロイシン、リンゴ酸、2−アミノアジピン酸、チラミン、バリン、グルカル酸、ヒスチジン、ADMA、イソロイシン、ヒドロキシプロリン、及びシスタチオニンからなる群から選択されることを特徴とする(1)項に記載のバイオマーカー。
(3)うつ病を診断するためのバイオマーカーであって、ホスホエタノールアミン、タウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、2−アミノアジピン酸、ヒスチジン、及びイソロイシンからなる群から選択されることを特徴とする(1)項に記載のバイオマーカー。
(4)うつ病を診断するためのバイオマーカーであって、ヒポタウリン、ホスホリルコリン、アルギニン、3−アミノ酪酸、β−アラニン、リジン、ホスホクレアチン、アラニン、尿酸、コリン、イソクエン酸、ロイシン、リンゴ酸、チラミン、バリン、及びADMAからなる群から選択されることを特徴とする(1)項に記載のバイオマーカー。
(5)うつ病を診断するためのバイオマーカーであって、アスパラギン、フェニルアラニン、グルカル酸、ヒドロキシプロリン、及びシスタチオニンからなる群から選択されることを特徴とする(1)項に記載のバイオマーカー。
(6)うつ病を診断するためのバイオマーカーであって、シスタチオニンであることを特徴とする(1)項に記載のバイオマーカー。
【0009】
(7)うつ病を診断するためのバイオマーカーであって、ADMA、ヒポタウリン、リジン、ヒスチジン、ロイシン、β-アラニン、コリン、スレオニン、グリセリン酸、イソクエン酸、セリン、リンゴ酸、2-メチルセリン、スフィンゴシン、ホモバニリン酸、スルホキシド化メチオニン、スフィンガニン、フェニルアラニン、アラニン、2-アミノアジピン酸、N-アセチルアスパラギン酸、グルタミン酸、トリゴネリン、クレアチン、グアニド酢酸、イソ酪酸、クレアチニン、サルコシン、ベタイン、ホスホエタノールアミン、タウリン、ADPリボース、アスパラギン酸、チロシン、ATP、ADP、アスパラギン、AMP、セロトニン、バリン、トリプトファン、キヌレニン、ホスホリルコリン、イソロイシン、SDMA、ピペリジン、ピペコリン酸、クレアチン、ニコチンアミド、γ-ブチロベタイン、尿酸、3−メチル酪酸、3−アミノ酪酸、オルニチン、カルニチン、エタノールアミン、及びメチオニンからなる群から選択されることを特徴とする(1)項に記載のバイオマーカー。
(8)うつ病を診断するためのバイオマーカーであって、メチオニン、ホスホエタノールアミン、タウリン、ADPリボース、アスパラギン酸、チロシン、ATP、ADP、アスパラギン、AMP、セロトニン、バリン、トリプトファン、キヌレニン、ホスホリルコリン、イソロイシン、SDMA、ピペリジン、ピペコリン酸、クレアチニン、及びニコチンアミドからなる群から選択されることを特徴とする(1)項に記載のバイオマーカー。
(9)うつ病を診断するためのバイオマーカーであって、ADMA、ヒポタウリン、リジン、ヒスチジン、ロイシン、β-アラニン、コリン、スレオニン、グリセリン酸、イソクエン酸、セリン、リンゴ酸、2-メチルセリン、スフィンゴシン、ホモバニリン酸、スルホキシド化メチオニン、スフィンガニン、イソ酪酸、γ-ブチロベタイン、尿酸、3−メチル酪酸、3−アミノ酪酸、オルニチン、カルニチン、及びエタノールアミンからなる群から選択されることを特徴とする(1)項に記載のバイオマーカー。
(10)うつ病を診断するためのバイオマーカーであって、フェニルアラニン、アラニン、2−アミノアジピン酸、N−アセチルアスパラギン酸、グルタミン酸、トリゴネリン、クレアチン、グアニド酢酸、サルコシン、及びベタインからなる群から選択されることを特徴とする(1)項に記載のバイオマーカー。
【0010】
(11)採取された血液中のADPリボース、ATP、ADP、AMP、セロトニン、トリプトファン、キヌレニン、SDMA(対称性ジメチルアルギニン)、スレオニン、グリセリン酸、セリン、N−アセチルアスパラギン酸、グルタミン酸、トリゴネリン、クレアチン、2−メチルセリン、スフィンゴシン、ホモバニリン酸、ピペリジン、スルホキシド化メチオニン、ピペコリン酸、スフィンガニン、γ−ブチロベタイン、グアニド酢酸、イソ酪酸、クレアチニン、サルコシン、3−メチル酪酸、ニコチンアミド、ベタイン、オルニチン、カルニチン、エタノールアミン、ホスホエタノールアミン、タウリン、ヒポタウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、ホスホリルコリン、アルギニン、アスパラギン、3−アミノ酪酸、β−アラニン、フェニルアラニン、リジン、ホスホクレアチン、アラニン、尿酸、コリン、イソクエン酸、ロイシン、リンゴ酸、2−アミノアジピン酸、チラミン、バリン、グルカル酸、ヒスチジン、ADMA(非対称性ジメチルアルギニン)、イソロイシン、ヒドロキシプロリン、及びシスタチオニンからなる群から選択される一以上の化合物の含有量を測定する工程を含む、測定方法。
(12)採取された血液中のホスホエタノールアミン、タウリン、ヒポタウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、ホスホリルコリン、アルギニン、アスパラギン、3−アミノ酪酸、β−アラニン、フェニルアラニン、リジン、ホスホクレアチン、アラニン、尿酸、コリン、イソクエン酸、ロイシン、リンゴ酸、2−アミノアジピン酸、チラミン、バリン、グルカル酸、ヒスチジン、ADMA、イソロイシン、ヒドロキシプロリン、及びシスタチオニンからなる群から選択される一以上の化合物の含有量を測定する工程を含む、(11)項に記載の測定方法。
(13)採取された血液中のヒポタウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、ホスホリルコリン、アルギニン、アスパラギン、3−アミノ酪酸、β−アラニン、フェニルアラニン、リジン、ホスホクレアチン、アラニン、尿酸、コリン、イソクエン酸、ロイシン、リンゴ酸、2−アミノアジピン酸、チラミン、バリン、グルカル酸、ヒスチジン、ADMA、イソロイシン、ヒドロキシプロリン、及びシスタチオニンからなる群から選択される第1の化合物の含有量を測定する工程と、前記血液中のホスホエタノールアミン及びタウリンからなる群から選択される第2の化合物の含有量を測定する工程と、を含む(11)項に記載の測定方法。
(14)(11)項に記載の測定方法であって、前記血液中のアスパラギン酸及びアルギニンの含有量を測定する工程を含む測定方法。
(15)(11)項に記載の測定方法であって、前記血液中のアスパラギン酸及びチロシンの含有量を測定する工程を含む測定方法。
(16)(11)項に記載の測定方法であって、前記血液中のチロシン及びグルカル酸の含有量を測定する工程を含む測定方法。
(17)(11)項に記載の測定方法であって、前記血液中のチロシン及び3−アミノ酪酸の含有量を測定する工程を含む測定方法。
【0011】
(18)採取された血液中のADMA、ヒポタウリン、リジン、ヒスチジン、ロイシン、β-アラニン、コリン、スレオニン、グリセリン酸、イソクエン酸、セリン、リンゴ酸、2-メチルセリン、スフィンゴシン、ホモバニリン酸、スルホキシド化メチオニン、スフィンガニン、フェニルアラニン、アラニン、2-アミノアジピン酸、N−アセチルアスパラギン酸、グルタミン酸、トリゴネリン、クレアチン、グアニド酢酸、イソ酪酸、クレアチニン、サルコシン、ベタイン、ホスホエタノールアミン、タウリン、ADPリボース、アスパラギン酸、チロシン、ATP、ADP、アスパラギン、AMP、セロトニン、バリン、トリプトファン、キヌレニン、ホスホリルコリン、イソロイシン、SDMA、ピペリジン、ピペコリン酸、クレアチン、ニコチンアミド、γ-ブチロベタイン、尿酸、3−メチル酪酸、3−アミノ酪酸、オルニチン、カルニチン、エタノールアミン、及びメチオニンからなる群から選択される一以上の化合物の含有量を測定する工程を含む、(11)項に記載の測定方法。
【0012】
(19)うつ病に対する薬剤の効果を判定するための方法であって、前記うつ病を罹患した患者に前記薬剤を投与する前後で採取した血液に含まれる、ADPリボース、ATPのペア、ADP、AMP、セロトニン、トリプトファン、キヌレニン、SDMA(対称性ジメチルアルギニン)、スレオニン、グリセリン酸、セリン、N−アセチルアスパラギン酸、グルタミン酸、トリゴネリン、クレアチン、2−メチルセリン、スフィンゴシン、ホモバニリン酸、ピペリジン、スルホキシド化メチオニン、ピペコリン酸、スフィンガニン、γ−ブチロベタイン、グアニド酢酸、イソ酪酸、クレアチニン、サルコシン、3−メチル酪酸、ニコチンアミド、ベタイン、オルニチン、カルニチン、エタノールアミン、ホスホエタノールアミン、タウリン、ヒポタウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、ホスホリルコリン、アルギニン、アスパラギン、3−アミノ酪酸、β−アラニン、フェニルアラニン、リジン、ホスホクレアチン、アラニン、尿酸、コリン、イソクエン酸、ロイシン、リンゴ酸、2−アミノアジピン酸、チラミン、バリン、グルカル酸、ヒスチジン、ADMA(非対称性ジメチルアルギニン)、イソロイシン、ヒドロキシプロリン、及びシスタチオニンからなる群から選択される一以上の化合物の含有量を測定する工程と、前記血液間で、前記化合物含有量を比較する工程と、を含む方法。
(20)うつ病に対する薬剤の効果を判定するための方法であって、前記うつ病を罹患した患者に前記薬剤を投与する前後で採取した血液に含まれる、ホスホエタノールアミン、タウリン、ヒポタウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、ホスホリルコリン、アルギニン、アスパラギン、3−アミノ酪酸、β−アラニン、フェニルアラニン、リジン、ホスホクレアチン、アラニン、尿酸、コリン、イソクエン酸、ロイシン、リンゴ酸、2−アミノアジピン酸、チラミン、バリン、グルカル酸、ヒスチジン、ADMA、イソロイシン、ヒドロキシプロリン、及びシスタチオニンからなる群から選択される一以上の化合物の含有量を測定する工程と、前記血液間で、前記化合物含有量を比較する工程と、を含む(19)項に記載の方法。
【0013】
(21)うつ病に対する薬剤の効果を判定するための方法であって、前記うつ病を罹患した患者に前記薬剤を投与した後で採取した血液に含まれる、ADPリボース、ATP、ADP、AMP、セロトニン、トリプトファン、キヌレニン、SDMA(対称性ジメチルアルギニン)、スレオニン、グリセリン酸、セリン、N−アセチルアスパラギン酸、グルタミン酸、トリゴネリン、クレアチン、2−メチルセリン、スフィンゴシン、ホモバニリン酸、ピペリジン、スルホキシド化メチオニン、ピペコリン酸、スフィンガニン、γ−ブチロベタイン、グアニド酢酸、イソ酪酸、クレアチニン、サルコシン、3−メチル酪酸、ニコチンアミド、ベタイン、オルニチン、カルニチン、エタノールアミン、ホスホエタノールアミン、タウリン、ヒポタウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、ホスホリルコリン、アルギニン、アスパラギン、3−アミノ酪酸、β−アラニン、フェニルアラニン、リジン、ホスホクレアチン、アラニン、尿酸、コリン、イソクエン酸、ロイシン、リンゴ酸、2−アミノアジピン酸、チラミン、バリン、グルカル酸、ヒスチジン、ADMA(非対称性ジメチルアルギニン)、イソロイシン、ヒドロキシプロリン、及びシスタチオニンからなる群から選択される一以上の化合物の含有量を測定する工程と、うつ病患者と健常者を判別するための、血液中の前記化合物の含有量の閾値と、前記化合物の含有量を比較する工程と、を含む方法。
(22)うつ病に対する薬剤の効果を判定するための方法であって、前記うつ病を罹患した患者に前記薬剤を投与した後で採取した血液に含まれる、ホスホエタノールアミン、タウリン、ヒポタウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、ホスホリルコリン、アルギニン、アスパラギン、3−アミノ酪酸、β−アラニン、フェニルアラニン、リジン、ホスホクレアチン、アラニン、尿酸、コリン、イソクエン酸、ロイシン、リンゴ酸、2−アミノアジピン酸、チラミン、バリン、グルカル酸、ヒスチジン、ADMA、イソロイシン、ヒドロキシプロリン、及びシスタチオニンからなる群から選択される一以上の化合物の含有量を測定する工程と、うつ病患者と健常者を判別するための、血液中の前記化合物の含有量の閾値と、前記化合物の含有量を比較する工程と、を含む、(21)項に記載の方法。
【0014】
(23)うつ病患者と健常者を判別するための、血液中のADPリボース、ATP、ADP、AMP、セロトニン、トリプトファン、キヌレニン、SDMA(対称性ジメチルアルギニン)、スレオニン、グリセリン酸、セリン、N−アセチルアスパラギン酸、グルタミン酸、トリゴネリン、クレアチン、2−メチルセリン、スフィンゴシン、ホモバニリン酸、ピペリジン、スルホキシド化メチオニン、ピペコリン酸、スフィンガニン、γ−ブチロベタイン、グアニド酢酸、イソ酪酸、クレアチニン、サルコシン、3−メチル酪酸、ニコチンアミド、ベタイン、オルニチン、カルニチン、エタノールアミン、ホスホエタノールアミン、タウリン、ヒポタウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、ホスホリルコリン、アルギニン、アスパラギン、3−アミノ酪酸、β−アラニン、フェニルアラニン、リジン、ホスホクレアチン、アラニン、尿酸、コリン、イソクエン酸、ロイシン、リンゴ酸、2−アミノアジピン酸、チラミン、バリン、グルカル酸、ヒスチジン、ADMA(非対称性ジメチルアルギニン)、イソロイシン、ヒドロキシプロリン、及びシスタチオニンからなる群から選択される一以上の化合物の含有量の閾値を決定する方法であって、うつ病と診断された複数の患者、及び複数の健常者から採取された血液に含まれる、前記化合物の含有量を測定する工程、を含む方法。
(24)うつ病患者と健常者を判別するための、血液中のホスホエタノールアミン、タウリン、ヒポタウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、ホスホリルコリン、アルギニン、アスパラギン、3−アミノ酪酸、β−アラニン、フェニルアラニン、リジン、ホスホクレアチン、アラニン、尿酸、コリン、イソクエン酸、ロイシン、リンゴ酸、2−アミノアジピン酸、チラミン、バリン、グルカル酸、ヒスチジン、ADMA、イソロイシン、ヒドロキシプロリン、及びシスタチオニンからなる群から選択される一以上の化合物の含有量の閾値を決定する方法であって、うつ病と診断された複数の患者、及び複数の健常者から採取された血液に含まれる、前記化合物の含有量を測定する工程、を含む、(23)項に記載の方法。
【0015】
(25)うつ病のモデル動物をスクリーニングする方法であって、候補の動物から血液を採取する工程と、前記血液中のADPリボース、ATP、ADP、AMP、セロトニン、トリプトファン、キヌレニン、SDMA(対称性ジメチルアルギニン)、スレオニン、グリセリン酸、セリン、N−アセチルアスパラギン酸、グルタミン酸、トリゴネリン、クレアチン、2−メチルセリン、スフィンゴシン、ホモバニリン酸、ピペリジン、スルホキシド化メチオニン、ピペコリン酸、スフィンガニン、γ−ブチロベタイン、グアニド酢酸、イソ酪酸、クレアチニン、サルコシン、3−メチル酪酸、ニコチンアミド、ベタイン、オルニチン、カルニチン、エタノールアミン、ホスホエタノールアミン、タウリン、ヒポタウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、ホスホリルコリン、アルギニン、アスパラギン、3−アミノ酪酸、β−アラニン、フェニルアラニン、リジン、ホスホクレアチン、アラニン、尿酸、コリン、イソクエン酸、ロイシン、リンゴ酸、2−アミノアジピン酸、チラミン、バリン、グルカル酸、ヒスチジン、ADMA(非対称性ジメチルアルギニン)、イソロイシン、ヒドロキシプロリン、及びシスタチオニンからなる群から選択される一以上の化合物の含有量を測定する工程と、を含む方法。
【0016】
(26)うつ病患者に対する治療薬をスクリーニングする方法であって、前記うつ病のモデル動物に治療薬の候補物質を投与する工程と、前記候補物質を投与する前後で、血液を採取する工程と、前記血液中のADPリボース、ATP、ADP、AMP、セロトニン、トリプトファン、キヌレニン、SDMA(対称性ジメチルアルギニン)、スレオニン、グリセリン酸、セリン、N−アセチルアスパラギン酸、グルタミン酸、トリゴネリン、クレアチン、2−メチルセリン、スフィンゴシン、ホモバニリン酸、ピペリジン、スルホキシド化メチオニン、ピペコリン酸、スフィンガニン、γ−ブチロベタイン、グアニド酢酸、イソ酪酸、クレアチニン、サルコシン、3−メチル酪酸、ニコチンアミド、ベタイン、オルニチン、カルニチン、エタノールアミン、ホスホエタノールアミン、タウリン、ヒポタウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、ホスホリルコリン、アルギニン、アスパラギン、3−アミノ酪酸、β−アラニン、フェニルアラニン、リジン、ホスホクレアチン、アラニン、尿酸、コリン、イソクエン酸、ロイシン、リンゴ酸、2−アミノアジピン酸、チラミン、バリン、グルカル酸、ヒスチジン、ADMA(非対称性ジメチルアルギニン)、イソロイシン、ヒドロキシプロリン、及びシスタチオニンからなる群から選択される一以上の化合物の含有量を測定する工程と、前記候補物質を投与する前後で、前記血液中の化合物の含有量を比較する工程と、を含む方法。
(27)うつ病患者に対する治療薬をスクリーニングする方法であって、前記うつ病のモデル動物に治療薬の候補物質を投与する工程と、前記候補物質を投与する前後で、血液を採取する工程と、前記血液中のホスホエタノールアミン、タウリン、ヒポタウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、ホスホリルコリン、アルギニン、アスパラギン、3−アミノ酪酸、β−アラニン、フェニルアラニン、リジン、ホスホクレアチン、アラニン、尿酸、コリン、イソクエン酸、ロイシン、リンゴ酸、2−アミノアジピン酸、チラミン、バリン、グルカル酸、ヒスチジン、ADMA、イソロイシン、ヒドロキシプロリン、及びシスタチオニンからなる群から選択される一以上の化合物の含有量を測定する工程と、前記候補物質を投与する前後で、前記血液中の化合物の含有量を比較する工程と、を含む、(26)項に記載の方法。
【0017】
(28)うつ病を診断するための診断方法であって、診断対象の被検者の血液中のADPリボース、ATP、ADP、AMP、セロトニン、トリプトファン、キヌレニン、SDMA(対称性ジメチルアルギニン)、スレオニン、グリセリン酸、セリン、N−アセチルアスパラギン酸、グルタミン酸、トリゴネリン、クレアチン、2−メチルセリン、スフィンゴシン、ホモバニリン酸、ピペリジン、スルホキシド化メチオニン、ピペコリン酸、スフィンガニン、γ−ブチロベタイン、グアニド酢酸、イソ酪酸、クレアチニン、サルコシン、3−メチル酪酸、ニコチンアミド、ベタイン、オルニチン、カルニチン、エタノールアミン、ホスホエタノールアミン、タウリン、ヒポタウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、ホスホリルコリン、アルギニン、アスパラギン、3−アミノ酪酸、β−アラニン、フェニルアラニン、リジン、ホスホクレアチン、アラニン、尿酸、コリン、イソクエン酸、ロイシン、リンゴ酸、2−アミノアジピン酸、チラミン、バリン、グルカル酸、ヒスチジン、ADMA(非対称性ジメチルアルギニン)、イソロイシン、ヒドロキシプロリン、及びシスタチオニンからなる群から選択される一以上の化合物の含有量を測定する工程を含む診断方法。
(29)(28)項に記載の診断方法であって、被検者の血液中のホスホエタノールアミン、タウリン、ヒポタウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、ホスホリルコリン、アルギニン、アスパラギン、3−アミノ酪酸、β−アラニン、フェニルアラニン、リジン、ホスホクレアチン、アラニン、尿酸、コリン、イソクエン酸、ロイシン、リンゴ酸、2−アミノアジピン酸、チラミン、バリン、グルカル酸、ヒスチジン、ADMA、イソロイシン、ヒドロキシプロリン、及びシスタチオニンからなる群からなる群から選択される一以上の化合物の含有量を測定する工程を含む診断方法。
(30)(28)項に記載の診断方法であって、被検者の血液中のヒポタウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、ホスホリルコリン、アルギニン、アスパラギン、3−アミノ酪酸、β−アラニン、フェニルアラニン、リジン、ホスホクレアチン、アラニン、尿酸、コリン、イソクエン酸、ロイシン、リンゴ酸、2−アミノアジピン酸、チラミン、バリン、グルカル酸、ヒスチジン、ADMA、イソロイシン、ヒドロキシプロリン、及びシスタチオニンからなる群から選択される第1の化合物の含有量を測定する工程と、患者の血液中のホスホエタノールアミン及びタウリンからなる群から選択される第2の化合物の含有量を測定する工程と、を含む診断方法。
(31)(28)項に記載の診断方法であって、被検者の血液中のアスパラギン酸及びアルギニンの含有量を測定する工程を含む診断方法。
(32)(28)項に記載の診断方法であって、被検者の血液中のアスパラギン酸及びチロシンの含有量を測定する工程を含む診断方法。
(33)(28)項に記載の診断方法であって、被検者の血液中のチロシン及びグルカル酸の含有量を測定する工程を含む診断方法。
(34)(28)項に記載の診断方法であって、被検者の血液中のチロシン及び3−アミノ酪酸の含有量を測定する工程を含む診断方法。
【0018】
(35)うつ病の軽重度を診断するための診断方法であって、患者の血液中のシスタチオニンの含有量を測定する工程を含む診断方法。
【0019】
(36)うつ病を診断するための診断方法であって、診断対象の被検者の血液中のADMA(非対称性ジメチルアルギニン)、ヒポタウリン、リジン、ヒスチジン、ロイシン、β−アラニン、コリン、スレオニン、グリセリン酸、イソクエン酸、セリン、リンゴ酸、2−メチルセリン、スフィンゴシン、ホモバニリン酸、スルホキシド化メチオニン、スフィンガニン、フェニルアラニン、アラニン、2−アミノアジピン酸、N−アセチルアスパラギン酸、グルタミン酸、トリゴネリン、クレアチン、グアニド酢酸、イソ酪酸、クレアチニン、サルコシン、ベタイン、ホスホエタノールアミン、タウリン、ADPリボース、アスパラギン酸、チロシン、ATP、ADP、アスパラギン、AMP、セロトニン、バリン、トリプトファン、キヌレニン、ホスホリルコリン、イソロイシン、SDMA(対称性ジメチルアルギニン)、ピペリジン、ピペコリン酸、クレアチン、及びニコチンアミドからなる群から選択される一以上の化合物の含有量を測定する工程を含むことを特徴とする(28)項に記載の診断方法。
(37)うつ病を診断するための診断方法であって、被検者の血液中のホスホエタノールアミン、タウリン、ADPリボース、アスパラギン酸、チロシン、ATP、ADP、アスパラギン、AMP、セロトニン、バリン、トリプトファン、キヌレニン、ホスホリルコリン、イソロイシン、SDMA、ピペリジン、ピペコリン酸、クレアチニン、及びニコチンアミドからなる群から選択される一以上の化合物の含有量を測定する工程を含むことを特徴とする(28)項に記載の診断方法。
(38)うつ病を診断するための診断方法であって、被検者の血液中のADMA、ヒポタウリン、リジン、ヒスチジン、ロイシン、β-アラニン、コリン、スレオニン、グリセリン酸、イソクエン酸、セリン、リンゴ酸、2−メチルセリン、スフィンゴシン、ホモバニリン酸、スルホキシド化メチオニン、スフィンガニン、及びイソ酪酸からなる群から選択される一以上の化合物の含有量を測定する工程を含むことを特徴とする(28)項に記載の診断方法。
(39)うつ病を診断するための診断方法であって、被検者の血液中のフェニルアラニン、アラニン、2−アミノアジピン酸、N−アセチルアスパラギン酸、グルタミン酸、トリゴネリン、クレアチン、グアニド酢酸、サルコシン、及びベタインからなる群から選択される一以上の化合物の含有量を測定する工程を含むことを特徴とする(28)項に記載の診断方法。
(40)診断対象の被検者から採取された血液中のバイオマーカーの含有量を取得する工程と、当該含有量に基づいて、当該被験者が健常者であるか、健常者でないか、うつ病患者であるか、うつ病患者でないか、のいずれか一つ以上を判定する工程と、得られた判定結果を出力する工程と、をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記バイオマーカーが、ADPリボース、ATP、ADP、AMP、セロトニン、トリプトファン、キヌレニン、SDMA(対称性ジメチルアルギニン)、スレオニン、グリセリン酸、セリン、N−アセチルアスパラギン酸、グルタミン酸、トリゴネリン、クレアチン、2−メチルセリン、スフィンゴシン、ホモバニリン酸、ピペリジン、スルホキシド化メチオニン、ピペコリン酸、スフィンガニン、γ−ブチロベタイン、グアニド酢酸、イソ酪酸、クレアチニン、サルコシン、3−メチル酪酸、ニコチンアミド、ベタイン、オルニチン、カルニチン、エタノールアミン、ホスホエタノールアミン、タウリン、ヒポタウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、ホスホリルコリン、アルギニン、アスパラギン、3−アミノ酪酸、β−アラニン、フェニルアラニン、リジン、ホスホクレアチン、アラニン、尿酸、コリン、イソクエン酸、ロイシン、リンゴ酸、2−アミノアジピン酸、チラミン、バリン、グルカル酸、ヒスチジン、ADMA(非対称性ジメチルアルギニン)、イソロイシン、ヒドロキシプロリン、及びシスタチオニンからなる群から選択されることを特徴とするプログラム。
(41)バイオマーカー測定装置に、前記血液中の当該バイオマーカーの含有量を測定させる工程を、さらに含むことを特徴とする(40)項に記載のプログラム。
(42)(40)項または(41)項に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【0020】
(43)うつ病が非定型うつ病であることを特徴とする(19)〜(22)項のいずれか1項に記載の方法。
(44)うつ病と診断された複数の患者が、非定型うつ病と診断された患者を含むことを特徴とする(23)項または(24)項に記載の方法。
(45)うつ病患者が、非定型うつ病の患者であることを特徴とする(26)項または(27)項に記載の方法。
【0021】
<関連文献とのクロスリファレンス>
なお、本出願は、2009年8月12日出願の日本国出願番号特願2009−187521及び2009年12月22日出願の日本国出願番号特願2009−291029の優先権の利益を主張し、これを引用することにより本明細書に含めるものとする。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、上記知見に基づき完成した本発明の実施の形態を、実施例を挙げながら詳細に説明する。なお、本発明の目的、特徴、利点、および、そのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【0023】
==バイオマーカーの診断対象となるうつ病==
本明細書において、うつ病を診断するためのバイオマーカー(以下、「診断するためのバイオマーカー」を、「診断マーカー」とも称する)という場合、うつ病患者を高確率で特定できるバイオマーカー(罹患マーカー)の他に、健常者をうつ病患者から高確率で排除できるバイオマーカー(健常マーカー)も含むものとする。
【0024】
==診断マーカーの含有量の測定方法==
本発明にかかる診断マーカーは、ホスホエタノールアミン、タウリン、ヒポタウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、ホスホリルコリン、アルギニン、アスパラギン、3−アミノ酪酸、β−アラニン、フェニルアラニン、リジン、ホスホクレアチン、アラニン、尿酸、コリン、イソクエン酸、ロイシン、リンゴ酸、2−アミノアジピン酸、チラミン、バリン、グルカル酸、ヒスチジン、ADMA(非対称性ジメチルアルギニン)、イソロイシン、ヒドロキシプロリン、及びシスタチオニンである。うつ病に罹患しているかどうかは、患者から採取した血液中の診断マーカーの含有量を測定することにより診断できる。
【0025】
採取された血液に含まれる、診断マーカーの含有量を測定するにあたっては、測定に先立って、血液に前処理をしておくことが好ましい。例えば、静置や遠心分離などによって血液から血清または血漿を分離し、取り出した血清または血漿を測定に用いることが好ましい。
【0026】
採取された血液に含まれる診断マーカーである化合物の含有量は、公知の方法によって測定することができる。例えば、高速液体クロマトグラフィー-質量分析計(LC-MS)や、ガスクロマトグラフィー-質量分析計(GC-MS)などの目的とする化合物を単離した後の質量を測定する方法が挙げられるが、これらに限定されない。なお、高速液体クロマトグラフィーを用いる場合には、複数のイオン性代謝物質が同時に分析可能なカラム(例えば、イオン交換カラム)を用いることが好ましい。
【0027】
また、目的とする化合物を測定する方法として、NMR分析を利用する測定方法、酸アルカリ中和滴定を利用する測定方法、アミノ酸分析計による測定方法、酵素法による測定方法、核酸アプタマー/ペプチドアプタマーを利用する測定方法、比色定量による測定方法、高速液体クロマトグラフィーのみを利用する測定方法、ガスクロマトグラフィーのみを利用する測定方法、及び、質量分析計のみによる測定方法等が挙げられるが、これらに限定されない。高速液体クロマトグラフィーを用いる場合には、複数のイオン性代謝物質が同時に分析可能なカラム(例えば、イオン交換カラム)を用いることが好ましい。
【0028】
血液に含まれる複数種類の診断マーカーである化合物の含有量を、全種類一斉に測定できるという観点から、キャピラリー電気泳動-飛行時間型質量分析計(CE-TOFMS)を用いて測定することが好ましい。CE-TOFMSを用いて測定するにあたっては、前処理によって得られる血清または血漿に、さらに以下の前処理をしておくことが好ましい。
【0029】
血清または血漿を、アルコール溶媒と混合し、血清中または血漿中に含まれる酵素の反応を停止させる。使用するアルコール溶媒の種類は、メタノールが好ましい。次に、酵素反応を停止させた血清または血漿に対して、有機溶媒と水とを加えて混合し、得られた混合液を相分離することによって、リン脂質等の脂溶性物質を含む有機相を除去する。用いる有機溶媒の種類は、水と相分離できる有機溶媒であれば特に限定されないが、ジクロロメタン、クロロホルム、及び、ジクロロエタン等が好ましく、クロロホルムが特に好ましい。得られた水相から、タンパク質を除去することが好ましい。タンパク質を除去する方法は、特に限定されないが、例えば、限外ろ過が好ましい。タンパク質を除去した後、水相中に含まれるアルコール溶媒を留去することが好ましい。溶媒を留去する方法は、自然乾燥、減圧乾燥、または、減圧遠心乾燥等、特に限定されないが、短時間で簡便に行えるということを考慮すれば、減圧遠心乾燥が好ましい。このようにして、採取した血液から不溶物を除去した水溶液を調製し、この不溶物が除去された水溶液を用いてCE-TOFMS測定を行うことが好ましい。
【0030】
CE-TOFMSを用いた測定のために用いるサンプルは、診断マーカーである化合物の、電気泳動時間や含有量の測定基準となる内部標準物質を含んでいても良い。内部標準物質は、診断マーカーである化合物の電気泳動及び質量分析の効率に影響を及ぼさないものであれば特に限定されないが、例えば、メチオニンスルホンや10−カンファースルホン酸(10-camphorsulfonic acid、CSA)であることが好ましい。
【0031】
キャピラリー電気泳動のためのキャピラリーは、ヒューズドシリカキャピラリーであることが好ましい。また、キャピラリーの内径は、分離能の向上を踏まえれば、100 μm以下であることが好ましく、50 μmであることが特に好ましい。キャピラリーの全長は、50 cm〜150 cmであることが好ましい。
【0032】
上記キャピラリー電気泳動により得られた各画分中における、目的の診断マーカーである化合物が含まれた画分を特定する方法は、特に限定されないが、例えば、目的化合物の標品を用いて、予め当該化合物の電気泳動時間を測定しておく方法や、内部標準物質の電気泳動時間との相対時間を利用する方法などが挙げられる。
【0033】
次に、目的の診断マーカーである化合物が含まれていると特定された画分中の、目的化合物のm/zを有する化合物の含有量を、ピーク面積として測定する。このピーク面積は、内部標準物質のピーク面積との比をとることで標準化することができる。また、目的化合物の標品を用いて検量線を作成することによって、測定されたピーク面積から、採血された血液に含まれる目的診断マーカーである化合物の絶対濃度を求めることができる。この検量線は、標準溶液法ではなく、標準添加法で作成するのが好ましい。
【0034】
==診断マーカーの使用方法==
診断マーカーの使用方法には、例えば、以下の様な態様が含まれる。
【0035】
<うつ病の診断方法>
まず、ヒトまたはヒト以外の脊椎動物から採血して得られた血液を用いて、診断マーカーの含有量(本明細書では、マーカー量とも称する)を測定することにより、疾患の診断を行うことができる。ここで、血液中のバイオマーカーの含有量とは、バイオマーカーの絶対濃度が好ましいが、バイオマーカーの絶対濃度と相関して各個体の絶対濃度の比較ができる値であれば限定されず、相対濃度や、単位体積辺りの重量や、絶対濃度を知るために測定した生データ(例えば、CE-TOFMS測定によって得られるグラフのピーク面積を標準化して得られる値)などでも良い。
【0036】
診断をする際には、予め、うつ病に罹患していると診断された脊椎動物(本明細書では、疾患脊椎動物とも称する)、及びうつ病ではないと診断された脊椎動物(本明細書では、健常脊椎動物とも称する)の血液中のバイオマーカー量の範囲を計測しておき、診断対象である脊椎動物の血液中のバイオマーカー量が、健常脊椎動物の血液中のバイオマーカー量の範囲に入る場合は、この脊椎動物は疾患に罹患していない可能性が高く、疾患脊椎動物の血液中のバイオマーカー量の範囲に入る場合は、疾患に罹患している可能性が高い。なお、疾患脊椎動物は、非定型うつ病であってもかまわない。また、疾患脊椎動物及び診断対象である脊椎動物は、不安障害、境界性人格障害、パニック障害など、他の疾患を併発していてもかまわない。
【0037】
また、健常脊椎動物の血液中のバイオマーカー量の範囲として、診断対象となる脊椎動物個体の健常時における血液中のバイオマーカー量の範囲を予め測定しておき、診断時のマーカー量を、健常時のバイオマーカー量の範囲と比較してもよい。
【0038】
ここで、健常脊椎動物の血液中のバイオマーカー量の範囲は、各動物に対する複数回の測定値の平均値に標準偏差を減じた値から平均値に標準偏差を加えた値までの範囲としてもよく、平均値の下限値から上限値までの範囲としてもよく、特に限定されるものではないが、診断マーカーによって、疾患を診断する際に最も好ましい値または範囲を選択すればよい。
【0039】
あるいは、疾患脊椎動物と健常脊椎動物を判別するための、血液中のバイオマーカー量の閾値を決定してもよい。例えば、予め、複数の疾患脊椎動物及び複数の健常脊椎動物の血液中のバイオマーカー量を計測し、閾値を決定する。閾値の決定方法は、当業者の定法に従えばよく、特に限定されないが、疾患脊椎動物が、閾値未満(又は閾値以上)に第1の所定の割合含まれ、健常脊椎動物が、閾値以上(又は閾値未満)に第2の所定の割合含まれるように、閾値を決定すればよい。具体的な方法としては、例えば、SAS社の統計ソフトJMPなどを用い、判別のカイ二乗値が最良となるような値を求めてもよい。診断マーカーとしては、第1の所定の割合も第2の所定の割合も高い方が好ましく、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、100%が最も好ましい。両方の値を高く設定すると、特異度(specificity)及び感度(sensitivity)が高くなる。しかしながら、第1と第2の所定の割合を両方とも高くできない場合は、特異度と感度のどちらかが高くなるように閾値を決めても良い。特異度、感度ともに高い方が好ましく、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、100%が最も好ましい。なお、特異度とは(閾値以上または未満の健常脊椎動物数)/(健常脊椎動物総数)の百分率のことであり、感度とは(閾値未満または以上の疾患脊椎動物数)/(疾患脊椎動物総数)の百分率のことである。特異度が高いバイオマーカーは、バイオマーカー量が閾値未満または以上であった場合にうつ病に罹患している確率が高く、うつ病患者を特定するバイオマーカー(本明細書で、これらのバイオマーカーを罹患マーカーとも称する。)として用いられるのが好ましい。感度が高いバイオマーカーは、バイオマーカー量が閾値以上または未満であった場合にうつ病に罹患していない確率が高く、うつ病患者から健常者を排除するバイオマーカー(本明細書で、これらのバイオマーカーを健常マーカーとも称する。)として用いられるのが好ましい。
【0040】
本明細書に記載の診断マーカーは罹患マーカーとしても健常マーカーとしても用いることができるが、ホスホエタノールアミン、タウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、2−アミノアジピン酸、ヒスチジン、イソロイシン、ADPリボース、チロシン、ATP、ADP、アスパラギン、AMP、セロトニン、バリン、トリプトファン、キヌレニン、ホスホリルコリン、SDMA(対称性ジメチルアルギニン)、ピペリジン、ピペコリン酸、クレアチニン、ニコチンアミドは、罹患マーカーとしても健常マーカーとしても有効であり、その血漿中濃度を、診断対象の脊椎動物で測定し、例えば、ヒトの場合、表1で示した範囲にある場合、うつ病の可能性が高い、または健常の可能性が高いと診断する。また、アスパラギン、フェニルアラニン、グルカル酸、ヒドロキシプロリン、シスタチオニン、アラニン、2−アミノアジピン酸、N−アセチルアスパラギン酸、グルタミン酸、トリゴネリン、クレアチン、グアニド酢酸、サルコシン、ベタインは罹患マーカーとして用いられるのが好ましく、その血漿中濃度を、診断対象の脊椎動物で測定し、例えば、ヒトの場合、表1で示した範囲にある場合、うつ病の可能性が高いと診断する。さらに、ヒポタウリン、ホスホリルコリン、アルギニン、3−アミノ酪酸、β−アラニン、リジン、ホスホクレアチン、アラニン、尿酸、コリン、イソクエン酸、ロイシン、リンゴ酸、チラミン、バリン、ADMA(非対称性ジメチルアルギニン)、スレオニン、グリセリン酸、セリン、2-メチルセリン、スフィンゴシン、ホモバニリン酸、スルホキシド化メチオニン、スフィンガニン、イソ酪酸は健常マーカーとして用いられるのが好ましく、その血漿中濃度を、診断対象の脊椎動物で測定し、例えば、ヒトの場合、実施例1によって得られた表1、または実施例2によって得られた表2で示した範囲にある場合、健常の可能性が高いと診断する。ホスホエタノールアミン及びタウリンの場合、閾値は、それぞれ、2.41及び50.54(μM)を用いるのがより好ましい。なお、ここで挙げた閾値は、特定の集団において、特定の方法によって算出した一例にすぎず、集団が変わると変化する可能性が高い。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
これらのバイオマーカーを組み合わせて用いることにより、診断精度を上げることが可能になり、バイオマーカーの組み合わせは特に限定されない。例えば、罹患マーカーを2種類用い、一方だけがうつ病の可能性を示す濃度であれば、うつ病の可能性があると診断してもよいが、両方ともうつ病の可能性を示す濃度であれば、1種類の時よりうつ病の可能性は上昇する。好ましいのは、健常マーカーを罹患マーカーに組み合わせて用いる場合であって、例えば、ある動物個体に対し、健常マーカーで診断し、「健常ではない」ことを示す濃度であれば、罹患マーカーで診断し、「罹患している」ことを示す濃度であれば、うつ病である可能性が高いと判定し、「罹患している」ことを示す濃度でなければ、健常である可能性が高いと判定する。このときの診断精度は、罹患マーカーだけを用いるときより高くなる。健常マーカーが「健常である」ことを示す濃度であれば、健常である可能性が高いと診断するが、その後罹患マーカーで診断し、「罹患していない」ことを示す濃度であれば、健常である可能性はさらに高くなる。もし、罹患マーカーで「罹患している」ことを示す濃度であれば、双方のバイオマーカーの濃度の、閾値からの距離や、第3のバイオマーカーの判定により、さらに診断を行うのが好ましい。
【0044】
複数のバイオマーカーを用いてうつ病患者を同定する場合、一つ目のバイオマーカーにおいて、感度が高くなるように閾値を設定して健常マーカーとして用い、健常者の可能性が高い人を予め排除しても良い。この場合の閾値は、高い値であれば特に限定されず、例えば約90%としてもよいが、約92%とするのが好ましく、約94%とするのがより好ましい。この方法によれば、一つ目の健常マーカーにおいて、「健常である」ことを示す濃度である場合は、健常である可能性が高いと診断することができる。また、「健常である」ことを示す濃度ではない場合、次に診断マーカーを用いて、「罹患している」ことを示す濃度であれば、うつ病である可能性が高いと判定し、「罹患している」ことを示す濃度でなければ、健常である可能性が高いと判定する。これにより、判定精度を高めることが可能になる。
【0045】
また、診断マーカーによる診断を、面接による問診やアンケートなどの、従来の診断方法と組み合わせて診断してもよい。
【0046】
このように、これらの診断マーカーを用いることによって、精神科において、より簡便で精度の高い診断が行えるようになるだけでなく、厳密な診断法が行えない健康診断現場、内科や外科などの精神科以外の診察現場、患者が救急状態などで言葉が使えない場合、などに、スクリーニングとして用い、これまで、精神科受診からもれていたうつ病患者を精神科受診(すなわち本来の治療現場)に到達させることができるようになる。
【0047】
特に、感度の閾値を、極端に高く設定することによって、健常マーカーとして、より有効に用いることも可能である。ここで設定する閾値は、高い値であれば特に限定されず、例えば約90%としてもよいが、約92%とするのが好ましく、約94%とするのがより好ましい。そして、厳密な診断法が行えない健康診断現場では、この閾値を用いた1次診断によって、うつ病患者が少なく健常者が多い範囲にある患者を健常者と診断し、うつ病患者が多い範囲にある患者を、うつ病の可能性がある者として、精神科における専門の診断を受けさせることができる。この1次診断によって、うつ病患者の割合を高くし、精神科における2次診断の負担を減らすことができる。
【0048】
ここで診断対象となるうつ病とは、従来の診断方法で判定され得るうつ病であれば、特に限定されないが、SCID面接法によって判定されるうつ病であることが好ましい。なお、面接による問診やアンケートなどの、従来の診断方法で、適応障害を有する患者は、あらかじめ排除しておくことが好ましい。また、不安障害、境界性人格障害や抑うつ性人格障害などの人格障害、気分変調性障害を有する患者は、診断し得るが、その場合、ADMA、ヒポタウリン、リジン、ヒスチジン、ロイシン、β-アラニン、コリン、スレオニン、グリセリン酸、イソクエン酸、セリン、リンゴ酸、2−メチルセリン、スフィンゴシン、ホモバニリン酸、スルホキシド化メチオニン、スフィンガニン、フェニルアラニン、アラニン、2−アミノアジピン酸、N−アセチルアスパラギン酸、グルタミン酸、トリゴネリン、クレアチン、グアニド酢酸、サルコシン、ベタイン、ホスホエタノールアミン、タウリン、ADPリボース、アスパラギン酸、チロシン、ATP、ADP、アスパラギン、AMP、セロトニン、バリン、トリプトファン、キヌレニン、ホスホリルコリン、イソロイシン、SDMA、ピペリジン、ピペコリン酸、イソ酪酸、クレアチニン、ニコチンアミドなどを用いるのが好ましく、表2の閾値、あるいは表2の閾値を得た方法と同じ方法で得られる閾値を用いるのが好ましい。不安障害、境界性人格障害や抑うつ性人格障害などの人格障害、気分変調性障害を有しない患者は、本発明のいずれのマーカーでも使用し得て、表1及び表2のどちらの閾値も用いることができるが、表1の閾値、あるいは表1の閾値を得た方法と同じ方法で得られる閾値を用いるのが好ましい。
【0049】
<うつ病の重症度を判定する方法>
シスタチオニンの血漿中濃度は、CESDとの順位及びSCIDによる診断合致項目の多さと反比例しているため、うつ病患者の中で、うつ病の重症度を判定するためのバイオマーカーとして用いることができる。
まず、診断対象の動物がうつ病であるかどうか、本発明の一つであるバイオマーカーや、面接による問診やアンケートなどの従来の診断方法で診断する。その後、うつ病患者の血漿中濃度を調べ、例えば、18.36μM未満のとき、軽症うつであり、18.36μM以上のとき、重症うつであると診断できる。
【0050】
<薬効の判定>
一般に、疾患の治療薬は、個体によってその効果がばらつくことがある。従って、各個体における、ある治療薬の薬効を調べることは非常に有益であり、本発明の診断マーカーを用いれば、容易にその治療薬の薬効を調べることができる。例えば、うつ病の治療薬を投薬する前後で、疾患脊椎動物から血液を採血し、その採血した血液に含まれる診断マーカーの含有量を測定して、治療薬を投薬する前後の血液における診断マーカーの含有量を比較する。そして、治療薬の投与後に、その診断マーカーの含有量が健常の範囲に近づけば、治療薬は効果があると判定できる。このように、本発明の診断マーカーを用いることにより、治療薬の効果があるかどうかについて容易に判定することができる。
【0051】
<うつ病のモデル動物のスクリーニング方法>
本発明の診断マーカーを用いることにより、うつ病のモデル動物を容易にスクリーニングすることができる。例えば、候補の動物(ヒトを除く)の血液に含まれる診断マーカーの含有量を測定して、同種の健常な動物の血液中の診断マーカーの含有量と比較することにより、その動物を診断し、うつ病のモデル動物かどうかを判断できる。
【0052】
<うつ病に効果のある薬剤のスクリーニング方法>
うつ病を有する実験動物を用いて、うつ病の治療に効果がある化合物を同定することができる。例えば、うつ病のモデル動物(ヒトを除く)にうつ病の治療薬の候補である化合物を投与し、投与前後で採血し、その血液に含まれる診断マーカーの含有量を測定して、その化合物を投与する前後の血液における診断マーカーの含有量を比較する。化合物投与後に、その診断マーカーの含有量が健常の範囲に近づけば、投与した化合物はうつ病の治療に効果があると判定できる。このように、本発明の診断マーカーを用いることにより、疾患の治療に効果がある化合物を容易にスクリーニングすることも可能である。
【0053】
<疾患動物に最も効果のある薬剤のスクリーニング方法>
個体によって薬効が異なる薬剤の場合、うつ病を有する個体に複数の薬剤を試してみて、診断マーカーによって診断し、その個体にとって最も有効な薬剤をスクリーニングすることも可能である。
【0054】
==バイオマーカーを利用するためのコンピュータ==
上述したように、脊椎動物個体から採取された血液に含まれる診断マーカーである化合物の含有量が測定された後、その結果が、コンピュータに送信され、上述の方法に従って、コンピュータが、その結果を利用してもよい。
例えば、医療従事者が、脊椎動物個体から血液を採取し、適切に処理をして、サンプルをバイオマーカー測定装置にセットする。コンピュータは、バイオマーカー測定装置に、サンプル中のバイオマーカーの含有量を測定させ、測定結果を取得する。そして、コンピュータは、取得した血漿中マーカー含有量に基づいて、診断対象の被験者が健常者であるか、健常者でないか、うつ病患者であるか、うつ病患者でないか、のいずれか一つ以上を判定する。また、コンピュータは、上述した方法と同様にして、うつ病の重症度や、抗うつ剤の薬効を判定することもできる。コンピュータは、そのようにして得られた判定結果を出力し、医療従事者は、診断対象の被験者についての情報を得ることが可能になる。
なお、本発明のプログラムは、コンピュータに、取得した血漿中マーカー含有量を利用する方法を実行させるものである。また、コンピュータに、バイオマーカー測定装置にサンプル中のバイオマーカーの含有量を測定させる工程を実行させてもよい。
そして、このようなプログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録することもできる。記録媒体は、ハードディスク、CD、DVD、USBメモリ、フロッピーディスクなど、特に限定されない。
【実施例】
【0055】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。本実施例では、うつ病であると予め診断された患者に対し、本発明のマーカーを用いることにより、実際に、うつ病患者と健常者を区別しうることを示す。
【0056】
[実施例1]
[1]うつ病患者の診断
うつ病患者は、国立精神・神経センター病院の外来で診察し、主に初診、及び、再診2−3回目までに、SCID(Structured Clinical Interview for Diagnosis)面接法にて、うつ病であると診断された患者から選択し、倫理委員会の承認のもと、所定のインフォームドコンセント手続きを経て、研究協力を依頼した患者である。除外規定は、I軸およびII軸の診断との併発のある大うつ病(MD)である。SCID面接法とは、精神障害の鑑別診断法の一つであって、DSM−IVの診断基準に準拠して、再現性のある診断が可能なように組み立てられた構成的面接法である。初診時には、喫煙習慣などの生活習慣、薬物の摂取状況、主訴、月経、睡眠状態などの、一般的な問診情報と、既往歴、家族歴、身体疾患の有無などの検査、B型肝炎、C型肝炎の有無、頭部CT、血液生化学検査、心電図、レントゲン、などの医学情報を得た。インフォームドコンセント取得後に、アンケート調査により、CESD(抑うつに関する得点)、STAI(不安に関する得点)についても調査した。その際、研究コーディネーター(臨床心理士)が直接面談することによって、回答が欠落している箇所を確認した。また、各患者から、本発明のマーカーの血漿中濃度を測定するために、14mLの血を採取し、2時間以内に血漿を分離し、測定まで液体窒素中で保管した。いずれかの不安障害の併発するうつ病、適応障害との鑑別が難しい軽症うつ病、境界性人格障害やなんらかの人格障害を持つうつ病、気分変調性障害の経過の中で起こった大うつ病エピソードの患者などを除外し、このようなI軸の患者およびII軸の診断との併発のない大うつ病(MD)の患者を35名選択し、解析を行った。
【0057】
一方、健常者は、広告などにより、精神保健研究所で召集し、研究協力を依頼した者から選択した。まず、精神保健研究所実験室にて、インフォームドコンセント取得後に、喫煙習慣などの生活習慣、薬物の摂取状況、主訴、月経、睡眠状態、既往歴、家族歴、身体疾患の有無などの問診、CESD、STAIアンケート調査を行ったが、CESDが21点以上のものは、アンケートのみによって、健常者ではないと判断して除外した。また、問診で、身体疾患の治療中の被験者は、極力排除した。アンケートに際しては、研究コーディネーター(臨床心理士)が直接面談することによって、回答が欠落している箇所を確認した。こうして健常であると診断された41名を選び、各健常者から、本発明のマーカーの血漿中濃度を測定するために、14mLの血を採取し、2時間以内に血漿を分離し、測定まで液体窒素中で保管した。
【0058】
表3に、うつ病及び健常者の、性別、年齢、心理テスト(CESD,STAI)の結果を示す。
【0059】
【表3】

【0060】
性別の分布に関して、カイ二乗検定で、うつ病、健常の群間差はなかった。年齢に関しては、うつ病と健常者の間で、t検定で有意差はなく、各群の、男性間、女性間でも、有意差はなかった。両群間で、結婚しているか否か、就労しているか否か、身長、体重、検査一ヶ月前の体重の変動、タバコの摂取量において、有意な差が、認められなかった。
【0061】
抑うつの状態を自己申告で表現するCESD得点に関しては、うつ病と健常者の間で、t検定でp<0.01で有意差があり、各群の、男性間、女性間でも、有意差があった。各群内の、男性および女性の間では、有意差がなかった。検査時点での不安の状態を自己申告で表現するSTAI-S得点に関しては、うつ病と健常者の間で、t検定でp<0.05で有意差があり、各群の、男性間、女性間でも、有意差があった。各群内の、男性および女性の間では、有意差がなかった。しかしながら、被験者の生来の不安になりやすさを測定するSTAI-T得点に関しては、うつ病と健常者の間で、t検定で有意差がなく、各群の、男性間、女性間でも、有意差がなく、各群内の男性および女性の間でも、有意差がなかった。
【0062】
なお、両群間で、有意な差のあった心理社会的指標は以下のとおりである。不眠症状である寝つきの悪さ、早朝覚醒において、うつ病群において、顕著に頻度が多かった。BMIは、うつ病群でやや大きかった。アルコール摂取頻度は、健常群のほうがやや多かった。学歴に関しては、うつ病群には、女性に中学卒が多く、健常女性に大学院卒がおり、やや、うつ病群の方が、低学歴であった。
【0063】
検査時の薬物の使用に関しては、下記の表4のとおりで、カイ二乗検定で有意な差(p<0.01)があった。健常者で使用している薬物は、頭痛腰痛などの痛み止め、高血圧の薬であり、うつ病で使用している薬物は、睡眠薬、抗不安薬が主体で、SSRIは、7名が使用していた。
【表4】

【0064】
[2]血漿サンプルの調製
血液中に含まれる各診断マーカーである化合物の量を、キャピラリー電気泳動-飛行時間型質量分析計(CE-TOFMS)で測定するべく、以下の方法でCE-TOFMS測定用血漿サンプルを調製した。
【0065】
インフォームドコンセントを得たうえで患者から採血し調製された血漿100 μL(国立精神・神経センターが採取)を、遠心チューブに入れた。内部標準溶液として10 μMのメチオニンスルホンと10 μMの10−カンファースルホン酸(H3304-1002、販売製造元:ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社)を含有するメタノール(和光純薬、LC/MS用)0.45 mLを加え、クロロホルム(和光純薬、試薬特級)0.5 mLおよびMilli-Q水200 μLを加えた後、ボルテックスで30秒間よく混合し、遠心分離(4℃、2,300 × g、5分)した。水相を限外ろ過フィルター(ミリポア社 Ultrafree-MCPBCC 遠心式フィルターユニット 5kDa)に移し、フィルターカップ内の溶液が、ほぼなくなるまで遠心ろ過(4℃、9,100 × g、2 - 4時間)した。フィルターカップを取り除き、ろ液を減圧下で遠心乾燥した。乾燥物を、内部標準物質を添加した50 μLのMilli-Q水に再溶解することによって、CE-TOFMS測定用サンプルを調製した。
【0066】
[3]CE-TOFMSの測定方法と結果の解析方法
CE-TOFMSの測定、および、引き続くデータ解析は、Agilent CE-TOF-MSD system(Agilent Technologies社)において、キャピラリーにFused silica capillaryを用いて行った。
【0067】
CE-TOFMSの測定の測定条件は、下記の通りである。
(A)カチオンモード
Run buffer : Cation Buffer Solution ( p/n : H3301-1001)
Rinse buffer : Cation Buffer Solution ( p/n : H3301-1001)
Sample injection : Pressure injection 50 mbar, 10 sec
CE voltage : Positive, 30 kV
MS ionization : ESI Positive
MS capillary voltage : 4,000 V
MS scan range : m/z 50-1,000
Sheath liquid : HMT Sheath Liquid ( p/n : H3301-1020)
【0068】
(B)アニオンモード
Run buffer : Anion Buffer Solution ( p/n : H3302-1021)
Rinse buffer : Anion Buffer Solution ( p/n : H3302-1022)
Sample injection : Pressure injection 50 mbar, 25 sec
CE voltage : Positive, 30 kV
MS ionization : ESI Negative
MS capillary voltage : 3,500 V
MS scan range : m/z 50-1,000
Sheath liquid : HMT Sheath Liquid ( p/n : H3301-1020)
【0069】
CE-TOFMSで検出されたピークは、ピーク情報としてm/z、泳動時間(Migration time: MT)と面積値を得た。得られたピーク面積値は下記の式1を用いて相対面積値に変換した。

【0070】
[4]CE-TOFMSによる診断マーカーの血漿中濃度測定と結果の解析
うつ病患者及び、健常者から採血し調製された血漿由来のCE-TOFMS測定用サンプルについて、カチオンモード及びアニオンモードでのCE-TOFMS測定を行った。この測定により、各サンプル内に含まれる、各化合物の含有量のデータをピーク面積として得た。
【0071】
このピーク面積のデータから、SAS社の統計ソフトJMPを用い、判別のカイ二乗値が最良となるような値を求め、罹患マーカーとして、うつ病患者と健常者とを区別しうる閾値とした。また、市販の標品を用いて検量線を作成することにより、得られた閾値を、血漿中の濃度に基づく絶対値(閾値(μM))に変換した。表5に、罹患マーカーとして使用する際の、その値以上、またはその値未満の範囲に含まれる、うつ病患者数または健常者数を示し、特異度及び感度を計算した結果を表6に示す。
【0072】
【表5】

【0073】
【表6】

【0074】
これらの化合物のうち、ヒポタウリン、ホスホリルコリン、アルギニン、3−アミノ酪酸、β−アラニン、リジン、ホスホクレアチン、アラニン、尿酸、コリン、イソクエン酸、ロイシン、リンゴ酸、チラミン、バリン、ADMA(非対称性ジメチルアルギニン)などは、特に感度が高く、健常者を排除する能力が高いので、健常マーカーとして用いるのが好ましい。また、アスパラギン、フェニルアラニン、グルカル酸、ヒドロキシプロリン、シスタチオニンなどは、特に特異度が高く、罹患者を捕捉する能力が高いので、罹患マーカーとして用いるのが好ましい。特に、感度、特異度共に60%以上あるような化合物、ホスホエタノールアミン、タウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、2−アミノアジピン酸、ヒスチジン、イソロイシンなどは、罹患マーカーとしても健常マーカーとしても有効であり、単独で診断に用いることもできる。
【0075】
また、これらの化合物に関しては、血液をCE-TOFMS測定するのみで、血液における全ての含有量を一斉に測定できるため、複数の化合物の結果を組み合わせて診断することが極めて容易である。
【0076】
[5]健常者を効果的に除くための健常マーカーの使用
本実施例では、上記の化合物について、バイオマーカーの感度の閾値を94.3%と設定して健常マーカーとして用いる場合に、閾値以上、または閾値未満の範囲に含まれる、うつ病患者数または健常者数を表7に示し、表8に特異度を計算した結果を示す。
【0077】
【表7】

【0078】
【表8】

【0079】
このように閾値を決めることによって、閾値より高値あるいは低値に、うつ病患者を偏らせることができる。従って、うつ病患者を多数含んだ範囲を採ることによって、全体の人数におけるうつ病患者の割合を増やすことができる。
実際には、感度が94.3%とした場合、特異度が5.7(=100−94.3)%より大きければ、集団中のうつ病患者と健常者の割合にかかわらず、この方法によって、うつ病患者の割合を増やすことができる。表8に示されたバイオマーカーについては、全て、特異度が5.7%以上であり、健常マーカーとして有用である。
【0080】
[6]複数のバイオマーカーを用いた診断
上記の化合物のうち、複数のバイオマーカーを用いることにより、診断精度を上げることができる。特に、罹患マーカーと健常マーカーの組み合わせ、両方に有効なバイオマーカーと罹患マーカーの組み合わせ、両方に有効なバイオマーカーと健常マーカーの組み合わせ、両方に有効なバイオマーカー同士の組み合わせが有効であると考えられる。以下に、具体例を示す。
(1)アスパラギン酸が3.95μM未満かつ、アルギニンが89.27μM未満の患者をうつ病と定義し、それ以外を健常と定義すると、感度94%、特異度88%
(2)アスパラギン酸が3.95μM未満かつチロシンが67.19μM未満の患者をうつ病と定義し、それ以外を健常と定義すると、感度94%、特異度81%
(3)チロシンが67.19μM未満かつ、グルカル酸が0.42μM以上の患者をうつ病と定義し、それ以外を健常と定義すると、感度94%、特異度81%
(4)チロシンが67.19μM未満かつ、3−アミノ酪酸が11.50μM未満の患者をうつ病と定義し、それ以外を健常と定義すると、感度91%、特異度85%
となって、単独でバイオマーカーを使用するより、診断精度が向上する。
【0081】
[7]うつ病の重症度を判定するためのバイオマーカー
実施例4と同様に、うつ病患者群の各サンプル内に含まれる、シスタチオニンの含有量のデータをピーク面積として得て、CESDとの順位及びSCIDによる診断合致項目の多さに関し、Spearmanの順位相関係数で検定したところ、CESD とは、r=-0.460 p=0.039で、SCIDとは、r=-0.339、p=0.049となり、逆相関した。
そこで、シスタチオニンの含有量について、軽症うつ病患者と重症うつ病患者の閾値を求めたところ、表9に示すように、閾値0.00265を以って、軽症うつ病患者と重症うつ病患者が識別できた。なお、本実施例では、CESD30点以下を軽症うつ病、31点以上を重症うつ病とし、SCIDの診断基準9項目のうち、5−6項目該当が軽症うつ病、7項目以上該当を重症うつ病と定義した。
【0082】
【表9】

【0083】
このように、シスタチオニンは、うつ病の診断マーカー、特に、うつ病の重症度を判定するためのバイオマーカーとして有効に利用できる。
【0084】
なお、この閾値は、絶対濃度に変換すると約18.36μMになった。
【0085】
[実施例2]
[1]うつ病患者の診断
本実施例では、適応障害以外の不安障害を併発するうつ病患者3名、境界性人格障害を併発しているうつ病患者2名を含めた、I軸の患者34名の患者群、及び適応障害との鑑別が難しい軽症うつ病患者7名及び健常者31名を含めた対照群に対し、解析を行った。患者群及び対照群に含まれる検査対象者は、実施例1と同様に選択した。
両方の群で、年齢、身長、体重、BMI、性別に有意差はなかった。また、結婚状況、就労状況、検査一ヶ月前の体重の変動、タバコの摂取量についても、有意差は認められなかった。
【0086】
[2]血漿サンプルの調製及びCE-TOFMSの測定方法と結果の解析方法
上述した検査対象者からの血漿サンプルの調製、及びそれらのサンプルにおける各マーカーのCE-TOFMSによる測定方法は実施例1と同じである。
【0087】
[3]CE-TOFMSによる診断マーカーの血漿中濃度測定と結果の解析
患者群及び対照群に含まれる検査対象者の血漿における診断マーカーの濃度測定、閾値決定、及び結果の解析は実施例1と同様に行った。
表10に、各診断マーカーの解析結果を記載する。
【0088】
【表10】

【0089】
これらの化合物のうち、ADMA、ヒポタウリン、リジン、ヒスチジン、ロイシン、β-アラニン、コリン、スレオニン、グリセリン酸、イソクエン酸、セリン、リンゴ酸、2-メチルセリン、スフィンゴシン、ホモバニリン酸、スルホキシド化メチオニン、スフィンガニン、イソ酪酸などは、特に感度が高く、健常者を排除する能力が高いので、健常マーカーとして用いるのが好ましい。また、フェニルアラニン、アラニン、2−アミノアジピン酸、N−アセチルアスパラギン酸、グルタミン酸、トリゴネリン、クレアチン、グアニド酢酸、サルコシン、ベタインなどは、特に特異度が高く、罹患者を捕捉する能力が高いので、罹患マーカーとして用いるのが好ましい。特に、感度、特異度共に60%以上あるような化合物、ホスホエタノールアミン、タウリン、ADPリボース、アスパラギン酸、チロシン、ATP、ADP、アスパラギン、AMP、セロトニン、バリン、トリプトファン、キヌレニン、ホスホリルコリン、イソロイシン、SDMA(対称性ジメチルアルギニン)、ピペリジン、ピペコリン酸、クレアチニン、ニコチンアミドなどは、罹患マーカーとしても健常マーカーとしても有効であり、単独で診断に用いることもできる。
【0090】
[4]健常者を効果的に除くための健常マーカー及びその閾値の設定
ここでは、健常マーカーによって、健常者を効率よく排除できることを示す。
各バイオマーカーの閾値を、感度を94.1%になるように設定し、うつ病患者の少ない範囲の集団を除外することで、健常者を効率よく除外した。その閾値における特異度を計算し、その結果を表11に示す。
【0091】
【表11】

このように閾値を決めることによって、閾値より高値あるいは低値に、うつ病患者を偏らせることができる。従って、うつ病患者を多数含んだ範囲を採ることによって、全体の人数におけるうつ病患者の割合を増やすことができる。
実際には、感度が94.1%とした場合、特異度が5.9(=100−94.1)%より大きければ、集団中のうつ病患者と健常者の割合にかかわらず、この方法によって、うつ病患者の割合を増やすことができる。表11に示されたバイオマーカーについては、全て、特異度が5.9%以上であり、健常マーカーとして有用である。
[実施例3]
[1]標準添加法を用いた血漿中マーカー濃度の算出
実施例1及び2では、市販の標品を標準溶液として検量線を作成することにより、得られた閾値を、血漿中の濃度に基づく絶対値(閾値(μM))に変換した(標準溶液法)。本実施例では、所定の系列の濃度の標準溶液を作製し、サンプルごとに、各標準溶液を添加した溶液の系列を作製し、検量線を作成することによって、実施例2の各サンプルの血漿中マーカー濃度を決定した(標準添加法)。その濃度を用いて、実施例2と同様に閾値を決定したところ、ホスホエタノールアミン及びタウリンの閾値は、それぞれ、2.41及び50.54(μM)となった。
【0092】
[2]治療前後での血漿中マーカー濃度の変化
実施例1及び2の集団には入っていないうつ病患者2名について、治療前と、約6ヶ月間SSRIなどの薬物で治療し、うつ病が寛解したと診断された後(治療後)において、ホスホエタノールアミン及びタウリンの血漿中マーカー濃度(μM)を測定した。なお、濃度は、標準添加法によって決定した。
【0093】
【表12】

【0094】
このように、両方の患者とも、ホスホエタノールアミン及びタウリンの血漿中マーカー濃度は、治療後、健常者と同等のレベルにまで増加した。また、閾値の一例として、[1]で決定した閾値を用いると、患者A、患者Bともに、どちらのマーカーを用いても、治療前にはうつ病であると、治療後には健常であると診断できる。
【0095】
[3]閾値の検定 その1
実施例1及び2で用いたサンプルと独立な11名(6名は健常者、5名はうつ病患者と確定診断されている)の血漿中マーカー濃度を、[1]と同様に測定し、[1]で決定した閾値を用いて診断した。
【0096】
【表13】

【0097】
[1]で決定した閾値を用いることによって、健常者は100%の確率で適切に診断できた。また、うつ病患者は、ホスホエタノールアミンでは80%の確率で、タウリンは60%の確率で適切に診断が可能であった。このように、ホスホエタノールアミン及びタウリンは、うつ病の診断マーカーとして有用である。
【0098】
[4]閾値の検定 その2
実施例1〜3で用いたサンプルと独立な14名(全員がパニック障害を有する。9名は非うつ病者[表では健常者と記載]、5名は非定型うつ病患者と確定診断されている。)の血漿中マーカー濃度を、[1]と同様に測定し、[1]で決定した閾値を用いて診断した。
【0099】
【表14】

【0100】
[1]で決定した閾値を用いることによって、ホスホエタノールアミンでは、うつ病者も非うつ病者も、100%の確率で適切に診断できた。タウリンでは、60%の確率でうつ病者を、89%の確率で非うつ病者を、適切に診断できた。このように、ホスホエタノールアミン及びタウリンは、非定型うつ病の患者に対しても、うつ病の診断マーカーとして有用である。また、他の疾患(例えば、パニック障害)を併発していても、本発明のマーカーは使用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明によって、うつ病を診断するためのバイオマーカー及びそのバイオマーカーを用いた診断方法を提供することができるようになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
うつ病を診断するためのバイオマーカーであって、ADPリボース、ATP、ADP、AMP、セロトニン、トリプトファン、キヌレニン、SDMA(対称性ジメチルアルギニン)、スレオニン、グリセリン酸、セリン、N−アセチルアスパラギン酸、グルタミン酸、トリゴネリン、クレアチン、2−メチルセリン、スフィンゴシン、ホモバニリン酸、ピペリジン、スルホキシド化メチオニン、ピペコリン酸、スフィンガニン、γ−ブチロベタイン、グアニド酢酸、イソ酪酸、クレアチニン、サルコシン、3−メチル酪酸、ニコチンアミド、ベタイン、オルニチン、カルニチン、エタノールアミン、ホスホエタノールアミン、タウリン、ヒポタウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、ホスホリルコリン、アルギニン、アスパラギン、3−アミノ酪酸、β−アラニン、フェニルアラニン、リジン、ホスホクレアチン、アラニン、尿酸、コリン、イソクエン酸、ロイシン、リンゴ酸、2−アミノアジピン酸、チラミン、バリン、グルカル酸、ヒスチジン、ADMA(非対称性ジメチルアルギニン)、イソロイシン、ヒドロキシプロリン、及びシスタチオニンからなる群から選択されることを特徴とするバイオマーカー。
【請求項2】
うつ病を診断するためのバイオマーカーであって、ホスホエタノールアミン、タウリン、ヒポタウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、ホスホリルコリン、アルギニン、アスパラギン、3−アミノ酪酸、β−アラニン、フェニルアラニン、リジン、ホスホクレアチン、アラニン、尿酸、コリン、イソクエン酸、ロイシン、リンゴ酸、2−アミノアジピン酸、チラミン、バリン、グルカル酸、ヒスチジン、ADMA、イソロイシン、ヒドロキシプロリン、及びシスタチオニンからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のバイオマーカー。
【請求項3】
うつ病を診断するためのバイオマーカーであって、ホスホエタノールアミン、タウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、2−アミノアジピン酸、ヒスチジン、及びイソロイシンからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のバイオマーカー。
【請求項4】
うつ病を診断するためのバイオマーカーであって、ヒポタウリン、ホスホリルコリン、アルギニン、3−アミノ酪酸、β−アラニン、リジン、ホスホクレアチン、アラニン、尿酸、コリン、イソクエン酸、ロイシン、リンゴ酸、チラミン、バリン、及びADMAからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のバイオマーカー。
【請求項5】
うつ病を診断するためのバイオマーカーであって、アスパラギン、フェニルアラニン、グルカル酸、ヒドロキシプロリン、及びシスタチオニンからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のバイオマーカー。
【請求項6】
うつ病を診断するためのバイオマーカーであって、シスタチオニンであることを特徴とする請求項1に記載のバイオマーカー。
【請求項7】
うつ病を診断するためのバイオマーカーであって、ADMA、ヒポタウリン、リジン、ヒスチジン、ロイシン、β-アラニン、コリン、スレオニン、グリセリン酸、イソクエン酸、セリン、リンゴ酸、2−メチルセリン、スフィンゴシン、ホモバニリン酸、スルホキシド化メチオニン、スフィンガニン、フェニルアラニン、アラニン、2−アミノアジピン酸、N−アセチルアスパラギン酸、グルタミン酸、トリゴネリン、グアニド酢酸、イソ酪酸、クレアチニン、サルコシン、ベタイン、ホスホエタノールアミン、タウリン、ADPリボース、アスパラギン酸、チロシン、ATP、ADP、アスパラギン、AMP、セロトニン、バリン、トリプトファン、キヌレニン、ホスホリルコリン、イソロイシン、SDMA、ピペリジン、ピペコリン酸、クレアチン、ニコチンアミド、γ-ブチロベタイン、尿酸、3−メチル酪酸、3−アミノ酪酸、オルニチン、カルニチン、エタノールアミン、及びメチオニンからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のバイオマーカー。
【請求項8】
うつ病を診断するためのバイオマーカーであって、ホスホエタノールアミン、タウリン、ADPリボース、アスパラギン酸、チロシン、ATP、メチオニン、ADP、アスパラギン、AMP、セロトニン、バリン、トリプトファン、キヌレニン、ホスホリルコリン、イソロイシン、SDMA、ピペリジン、ピペコリン酸、クレアチニン、及びニコチンアミドからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のバイオマーカー。
【請求項9】
うつ病を診断するためのバイオマーカーであって、ADMA、ヒポタウリン、リジン、ヒスチジン、ロイシン、β-アラニン、コリン、スレオニン、グリセリン酸、イソクエン酸、セリン、リンゴ酸、2−メチルセリン、スフィンゴシン、ホモバニリン酸、スルホキシド化メチオニン、スフィンガニン、イソ酪酸、γ-ブチロベタイン、尿酸、3−メチル酪酸、3−アミノ酪酸、オルニチン、カルニチン、及びエタノールアミンからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のバイオマーカー。
【請求項10】
うつ病を診断するためのバイオマーカーであって、フェニルアラニン、アラニン、2-アミノアジピン酸、N−アセチルアスパラギン酸、グルタミン酸、トリゴネリン、クレアチン、グアニド酢酸、サルコシン、及びベタインからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のバイオマーカー。
【請求項11】
採取された血液中のADPリボース、ATP、ADP、AMP、セロトニン、トリプトファン、キヌレニン、SDMA(対称性ジメチルアルギニン)、スレオニン、グリセリン酸、セリン、N−アセチルアスパラギン酸、グルタミン酸、トリゴネリン、クレアチン、2−メチルセリン、スフィンゴシン、ホモバニリン酸、ピペリジン、スルホキシド化メチオニン、ピペコリン酸、スフィンガニン、γ−ブチロベタイン、グアニド酢酸、イソ酪酸、クレアチニン、サルコシン、3−メチル酪酸、ニコチンアミド、ベタイン、オルニチン、カルニチン、エタノールアミン、ホスホエタノールアミン、タウリン、ヒポタウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、ホスホリルコリン、アルギニン、アスパラギン、3−アミノ酪酸、β−アラニン、フェニルアラニン、リジン、ホスホクレアチン、アラニン、尿酸、コリン、イソクエン酸、ロイシン、リンゴ酸、2−アミノアジピン酸、チラミン、バリン、グルカル酸、ヒスチジン、ADMA(非対称性ジメチルアルギニン)、イソロイシン、ヒドロキシプロリン、及びシスタチオニンからなる群から選択される一以上の化合物の含有量を測定する工程を含む、測定方法。
【請求項12】
採取された血液中のホスホエタノールアミン、タウリン、ヒポタウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、ホスホリルコリン、アルギニン、アスパラギン、3−アミノ酪酸、β−アラニン、フェニルアラニン、リジン、ホスホクレアチン、アラニン、尿酸、コリン、イソクエン酸、ロイシン、リンゴ酸、2−アミノアジピン酸、チラミン、バリン、グルカル酸、ヒスチジン、ADMA、イソロイシン、ヒドロキシプロリン、及びシスタチオニンからなる群から選択される一以上の化合物の含有量を測定する工程を含む、請求項11に記載の測定方法。
【請求項13】
請求項11に記載の測定方法であって、患者の血液中のヒポタウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、ホスホリルコリン、アルギニン、アスパラギン、3−アミノ酪酸、β−アラニン、フェニルアラニン、リジン、ホスホクレアチン、アラニン、尿酸、コリン、イソクエン酸、ロイシン、リンゴ酸、2−アミノアジピン酸、チラミン、バリン、グルカル酸、ヒスチジン、ADMA、イソロイシン、ヒドロキシプロリン、及びシスタチオニンからなる群から選択される第1の化合物の含有量を測定する工程と、患者の血液中のホスホエタノールアミン及びタウリンからなる群から選択される第2の化合物の含有量を測定する工程と、を含む測定方法。
【請求項14】
請求項11に記載の測定方法であって、患者の血液中のアスパラギン酸及びアルギニンの含有量を測定する工程を含む測定方法。
【請求項15】
請求項11に記載の測定方法であって、患者の血液中のアスパラギン酸及びチロシンの含有量を測定する工程を含む測定方法。
【請求項16】
請求項11に記載の測定方法であって、患者の血液中のチロシン及びグルカル酸の含有量を測定する工程を含む測定方法。
【請求項17】
請求項11に記載の測定方法であって、患者の血液中のチロシン及び3−アミノ酪酸の含有量を測定する工程を含む測定方法。
【請求項18】
採取された血液中のADMA、ヒポタウリン、リジン、ヒスチジン、ロイシン、β-アラニン、コリン、スレオニン、グリセリン酸、イソクエン酸、セリン、リンゴ酸、2−メチルセリン、スフィンゴシン、ホモバニリン酸、スルホキシド化メチオニン、スフィンガニン、フェニルアラニン、アラニン、2−アミノアジピン酸、N−アセチルアスパラギン酸、グルタミン酸、トリゴネリン、クレアチン、グアニド酢酸、サルコシン、ベタイン、ホスホエタノールアミン、タウリン、ADPリボース、アスパラギン酸、チロシン、ATP、ADP、アスパラギン、AMP、セロトニン、バリン、トリプトファン、キヌレニン、ホスホリルコリン、イソロイシン、SDMA、ピペリジン、ピペコリン酸、イソ酪酸、クレアチニン、ニコチンアミド、γ-ブチロベタイン、尿酸、3−メチル酪酸、3−アミノ酪酸、オルニチン、カルニチン、エタノールアミン、及びメチオニンからなる群から選択される一以上の化合物の含有量を測定する工程を含む、請求項11に記載の測定方法。
【請求項19】
うつ病に対する薬剤の効果を判定するための方法であって、前記うつ病を罹患した患者に前記薬剤を投与する前後で採取した血液に含まれる、ADPリボース、ATP、ADP、AMP、セロトニン、トリプトファン、キヌレニン、SDMA(対称性ジメチルアルギニン)、スレオニン、グリセリン酸、セリン、N−アセチルアスパラギン酸、グルタミン酸、トリゴネリン、クレアチン、2−メチルセリン、スフィンゴシン、ホモバニリン酸、ピペリジン、スルホキシド化メチオニン、ピペコリン酸、スフィンガニン、γ−ブチロベタイン、グアニド酢酸、イソ酪酸、クレアチニン、サルコシン、3−メチル酪酸、ニコチンアミド、ベタイン、オルニチン、カルニチン、エタノールアミン、ホスホエタノールアミン、タウリン、ヒポタウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、ホスホリルコリン、アルギニン、アスパラギン、3−アミノ酪酸、β−アラニン、フェニルアラニン、リジン、ホスホクレアチン、アラニン、尿酸、コリン、イソクエン酸、ロイシン、リンゴ酸、2−アミノアジピン酸、チラミン、バリン、グルカル酸、ヒスチジン、ADMA(非対称性ジメチルアルギニン)、イソロイシン、ヒドロキシプロリン、及びシスタチオニンからなる群から選択される一以上の化合物の含有量を測定する工程と、前記血液間で、前記化合物含有量を比較する工程と、を含む方法。
【請求項20】
うつ病に対する薬剤の効果を判定するための方法であって、前記うつ病を罹患した患者に前記薬剤を投与する前後で採取した血液に含まれる、ホスホエタノールアミン、タウリン、ヒポタウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、ホスホリルコリン、アルギニン、アスパラギン、3−アミノ酪酸、β−アラニン、フェニルアラニン、リジン、ホスホクレアチン、アラニン、尿酸、コリン、イソクエン酸、ロイシン、リンゴ酸、2−アミノアジピン酸、チラミン、バリン、グルカル酸、ヒスチジン、ADMA、イソロイシン、ヒドロキシプロリン、及びシスタチオニンからなる群から選択される一以上の化合物の含有量を測定する工程と、前記血液間で、前記化合物含有量を比較する工程と、を含む請求項19に記載の方法。
【請求項21】
うつ病に対する薬剤の効果を判定するための方法であって、前記うつ病を罹患した患者に前記薬剤を投与した後で採取した血液に含まれる、ADPリボース、ATP、ADP、AMP、セロトニン、トリプトファン、キヌレニン、SDMA(対称性ジメチルアルギニン)、スレオニン、グリセリン酸、セリン、N−アセチルアスパラギン酸、グルタミン酸、トリゴネリン、クレアチン、2−メチルセリン、スフィンゴシン、ホモバニリン酸、ピペリジン、スルホキシド化メチオニン、ピペコリン酸、スフィンガニン、γ−ブチロベタイン、グアニド酢酸、イソ酪酸、クレアチニン、サルコシン、3−メチル酪酸、ニコチンアミド、ベタイン、オルニチン、カルニチン、エタノールアミン、ホスホエタノールアミン、タウリン、ヒポタウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、ホスホリルコリン、アルギニン、アスパラギン、3−アミノ酪酸、β−アラニン、フェニルアラニン、リジン、ホスホクレアチン、アラニン、尿酸、コリン、イソクエン酸、ロイシン、リンゴ酸、2−アミノアジピン酸、チラミン、バリン、グルカル酸、ヒスチジン、ADMA(非対称性ジメチルアルギニン)、イソロイシン、ヒドロキシプロリン、及びシスタチオニンからなる群から選択される一以上の化合物の含有量を測定する工程と、うつ病患者と健常者を判別するための、血液中の前記化合物の含有量の閾値と、前記化合物の含有量を比較する工程と、を含む方法。
【請求項22】
うつ病に対する薬剤の効果を判定するための方法であって、前記うつ病を罹患した患者に前記薬剤を投与した後で採取した血液に含まれる、ホスホエタノールアミン、タウリン、ヒポタウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、ホスホリルコリン、アルギニン、アスパラギン、3−アミノ酪酸、β−アラニン、フェニルアラニン、リジン、ホスホクレアチン、アラニン、尿酸、コリン、イソクエン酸、ロイシン、リンゴ酸、2−アミノアジピン酸、チラミン、バリン、グルカル酸、ヒスチジン、ADMA、イソロイシン、ヒドロキシプロリン、及びシスタチオニンからなる群から選択される一以上の化合物の含有量を測定する工程と、うつ病患者と健常者を判別するための、血液中の前記化合物の含有量の閾値と、前記化合物の含有量を比較する工程と、を含む請求項21に記載の方法。
【請求項23】
うつ病患者と健常者を判別するための、血液中のADPリボース、ATP、ADP、AMP、セロトニン、トリプトファン、キヌレニン、SDMA(対称性ジメチルアルギニン)、スレオニン、グリセリン酸、セリン、N−アセチルアスパラギン酸、グルタミン酸、トリゴネリン、クレアチン、2−メチルセリン、スフィンゴシン、ホモバニリン酸、ピペリジン、スルホキシド化メチオニン、ピペコリン酸、スフィンガニン、γ−ブチロベタイン、グアニド酢酸、イソ酪酸、クレアチニン、サルコシン、3−メチル酪酸、ニコチンアミド、ベタイン、オルニチン、カルニチン、エタノールアミン、ホスホエタノールアミン、タウリン、ヒポタウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、ホスホリルコリン、アルギニン、アスパラギン、3−アミノ酪酸、β−アラニン、フェニルアラニン、リジン、ホスホクレアチン、アラニン、尿酸、コリン、イソクエン酸、ロイシン、リンゴ酸、2−アミノアジピン酸、チラミン、バリン、グルカル酸、ヒスチジン、ADMA(非対称性ジメチルアルギニン)、イソロイシン、ヒドロキシプロリン、及びシスタチオニンからなる群から選択される一以上の化合物の含有量の閾値を決定する方法であって、うつ病と診断された複数の患者、及び複数の健常者から採取された血液に含まれる、前記化合物の含有量を測定する工程、を含む方法。
【請求項24】
うつ病患者と健常者を判別するための、血液中のホスホエタノールアミン、タウリン、ヒポタウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、ホスホリルコリン、アルギニン、アスパラギン、3−アミノ酪酸、β−アラニン、フェニルアラニン、リジン、ホスホクレアチン、アラニン、尿酸、コリン、イソクエン酸、ロイシン、リンゴ酸、2−アミノアジピン酸、チラミン、バリン、グルカル酸、ヒスチジン、ADMA、イソロイシン、ヒドロキシプロリン、及びシスタチオニンからなる群から選択される一以上の化合物の含有量の閾値を決定する方法であって、うつ病と診断された複数の患者、及び複数の健常者から採取された血液に含まれる、前記化合物の含有量を測定する工程、を含む請求項23に記載の方法。
【請求項25】
うつ病のモデル動物をスクリーニングする方法であって、候補の動物から血液を採取する工程と、前記血液中のADPリボース、ATP、ADP、AMP、セロトニン、トリプトファン、キヌレニン、SDMA(対称性ジメチルアルギニン)、スレオニン、グリセリン酸、セリン、N−アセチルアスパラギン酸、グルタミン酸、トリゴネリン、クレアチン、2−メチルセリン、スフィンゴシン、ホモバニリン酸、ピペリジン、スルホキシド化メチオニン、ピペコリン酸、スフィンガニン、γ−ブチロベタイン、グアニド酢酸、イソ酪酸、クレアチニン、サルコシン、3−メチル酪酸、ニコチンアミド、ベタイン、オルニチン、カルニチン、エタノールアミン、ホスホエタノールアミン、タウリン、ヒポタウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、ホスホリルコリン、アルギニン、アスパラギン、3−アミノ酪酸、β−アラニン、フェニルアラニン、リジン、ホスホクレアチン、アラニン、尿酸、コリン、イソクエン酸、ロイシン、リンゴ酸、2−アミノアジピン酸、チラミン、バリン、グルカル酸、ヒスチジン、ADMA(非対称性ジメチルアルギニン)、イソロイシン、ヒドロキシプロリン、及びシスタチオニンからなる群から選択される一以上の化合物の含有量を測定する工程と、を含む方法。
【請求項26】
うつ病患者に対する治療薬をスクリーニングする方法であって、前記うつ病のモデル動物に治療薬の候補物質を投与する工程と、前記候補物質を投与する前後で、血液を採取する工程と、前記血液中のADPリボース、ATP、ADP、AMP、セロトニン、トリプトファン、キヌレニン、SDMA(対称性ジメチルアルギニン)、スレオニン、グリセリン酸、セリン、N−アセチルアスパラギン酸、グルタミン酸、トリゴネリン、クレアチン、2−メチルセリン、スフィンゴシン、ホモバニリン酸、ピペリジン、スルホキシド化メチオニン、ピペコリン酸、スフィンガニン、γ−ブチロベタイン、グアニド酢酸、イソ酪酸、クレアチニン、サルコシン、3−メチル酪酸、ニコチンアミド、ベタイン、オルニチン、カルニチン、エタノールアミン、ホスホエタノールアミン、タウリン、ヒポタウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、ホスホリルコリン、アルギニン、アスパラギン、3−アミノ酪酸、β−アラニン、フェニルアラニン、リジン、ホスホクレアチン、アラニン、尿酸、コリン、イソクエン酸、ロイシン、リンゴ酸、2−アミノアジピン酸、チラミン、バリン、グルカル酸、ヒスチジン、ADMA、イソロイシン、ヒドロキシプロリン、及びシスタチオニンからなる群から選択される一以上の化合物の含有量を測定する工程と、前記候補物質を投与する前後で、前記血液中の化合物の含有量を比較する工程と、を含む方法。
【請求項27】
うつ病患者に対する治療薬をスクリーニングする方法であって、前記うつ病のモデル動物に治療薬の候補物質を投与する工程と、前記候補物質を投与する前後で、血液を採取する工程と、前記血液中のホスホエタノールアミン、タウリン、ヒポタウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、ホスホリルコリン、アルギニン、アスパラギン、3−アミノ酪酸、β−アラニン、フェニルアラニン、リジン、ホスホクレアチン、アラニン、尿酸、コリン、イソクエン酸、ロイシン、リンゴ酸、2−アミノアジピン酸、チラミン、バリン、グルカル酸、ヒスチジン、ADMA、イソロイシン、ヒドロキシプロリン、及びシスタチオニンからなる群から選択される一以上の化合物の含有量を測定する工程と、前記候補物質を投与する前後で、前記血液中の化合物の含有量を比較する工程と、を含む請求項26に記載の方法。
【請求項28】
診断対象の被検者から採取された血液中のバイオマーカーの含有量を取得する工程と、
当該含有量に基づいて、当該被験者が健常者であるか、健常者でないか、うつ病患者であるか、うつ病患者でないか、のいずれか一つ以上を判定する工程と、
得られた判定結果を出力する工程と、
をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記バイオマーカーが、
ADPリボース、ATP、ADP、AMP、セロトニン、トリプトファン、キヌレニン、SDMA(対称性ジメチルアルギニン)、スレオニン、グリセリン酸、セリン、N−アセチルアスパラギン酸、グルタミン酸、トリゴネリン、クレアチン、2−メチルセリン、スフィンゴシン、ホモバニリン酸、ピペリジン、スルホキシド化メチオニン、ピペコリン酸、スフィンガニン、γ−ブチロベタイン、グアニド酢酸、イソ酪酸、クレアチニン、サルコシン、3−メチル酪酸、ニコチンアミド、ベタイン、オルニチン、カルニチン、エタノールアミン、ホスホエタノールアミン、タウリン、ヒポタウリン、アスパラギン酸、メチオニン、チロシン、ホスホリルコリン、アルギニン、アスパラギン、3−アミノ酪酸、β−アラニン、フェニルアラニン、リジン、ホスホクレアチン、アラニン、尿酸、コリン、イソクエン酸、ロイシン、リンゴ酸、2−アミノアジピン酸、チラミン、バリン、グルカル酸、ヒスチジン、ADMA(非対称性ジメチルアルギニン)、イソロイシン、ヒドロキシプロリン、及びシスタチオニンからなる群から選択されることを特徴とするプログラム。
【請求項29】
バイオマーカー測定装置に、前記血液中の当該バイオマーカーの含有量を測定させる工程を、さらに含むことを特徴とする請求項28に記載のプログラム。
【請求項30】
請求項28または29に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項31】
うつ病が非定型うつ病であることを特徴とする請求項19〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
うつ病と診断された複数の患者が、非定型うつ病と診断された患者を含むことを特徴とする請求項23または24に記載の方法。
【請求項33】
うつ病患者が、非定型うつ病の患者であることを特徴とする請求項26または27に記載の方法。

【公開番号】特開2012−211908(P2012−211908A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−121097(P2012−121097)
【出願日】平成24年5月28日(2012.5.28)
【分割の表示】特願2011−526785(P2011−526785)の分割
【原出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(504059429)ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社 (9)
【出願人】(510202237)
【Fターム(参考)】