説明

おくるみマットおよび座席付き育児器具

【課題】育児器具上に置かれるマットとしての働きをするとともに、乳幼児の身体を包み込むことのできる形態を持つおくるみマットを提供する。
【解決手段】おくるみマットは、乳幼児の背中の下に位置する背部マット部11と、背部マット部11の両側縁から両側方に突出して延び、乳幼児の腹部を両側から包み込むように折り曲げられる1対の側方張出マット部12と、背部マット部11から連続的に連なって下方に延び、乳幼児の尻から股を通って腹部を包み込むように折り曲げられる股当てマット部13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乳母車、自動車用子供座席等の座席付き育児器具や、子供用ベッド等において、乳幼児の下に敷かれるマットに関し、特に乳幼児を包み込むような形態にすることのできるおくるみマットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図9は、乳母車の座席上に子供が着座している状態を図解的に示している。座席1上に着座した子供の身体を拘束するために、座席1には、股ベルト2と、1対の腰ベルト3とが取付けられている。股ベルト2と各腰ベルト3とは、バックル等の連結手段を介して連結される。図示した形態では、股ベルト2の先端に受入具4が取付けられ、1対の腰ベルト3の先端に、受入具4に係合する差込具5が取付けられている。
【0003】
股ベルト2、腰ベルト3およびバックル部材4,5が直接子供の身体に接触しないようにするために、それらの部材の下にパッドを設けることが一般的に行なわれている。例えば、特開2003−040005号公報には、腰ベルトの下に側部パッドを取付け、股ベルトの下に股部パッドを取付けた育児器具が開示されている。
【0004】
また、一般的に、育児器具の座席上にマットやクッション材を置くことによって、子供に柔らかな感触を与えることが行なわれている。例えば、特開2002−211286号公報には、座席上に補助クッションを取付けたチャイルドシートが開示されている。
【特許文献1】特開2003−040005号公報
【特許文献2】特開2002−211286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の目的は、育児器具上に置かれるマットとしての働きをするとともに、乳幼児の身体を優しく包み込むことのできる形態を持つおくるみマットを提供することである。
【0006】
この発明の他の目的は、育児器具上に置かれるマットとしての働きをするとともに、腰ベルトおよび股ベルトの下に位置する緩衝パッドとしての働きもすることのできるおくるみマットを提供することである。
【0007】
この発明のさらに他の目的は、上記のおくるみマットを備えた座席付き育児器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に従ったおくるみマットは、乳幼児の背中の下に位置する背部マット部と、背部マット部の両側縁から両側方に突出して延び、乳幼児の腹部を両側から包み込むように折り曲げられる1対の側方張出マット部と、背部マット部から連続的に連なって下方に延び、乳幼児の尻から股を通って腹部を包み込むように折り曲げられる股当てマット部とを備える。
【0009】
上記構成のおくるみマットは、育児器具上に置かれるマットとしての働きをするとともに、1対の側方張出マット部および股当てマット部を折り曲げることにより、乳幼児の身体を包み込む形態を実現できる。また、おくるみマットによって乳幼児を包み込む形態を維持しながら、育児器具上の乳幼児を育児器具から離して抱き上げることができる。
【0010】
座席上に長方形の大きなタオル等を置き、そのタオル等によって乳幼児を包み込むようにすることも可能であるが、その場合には、乳幼児の脚部も包み込んでしまうことになるので、乳幼児に対して窮屈感を与える。それに対して、上記構成の本発明によれば、乳幼児の脚部は露出したままであるので、乳幼児は脚部を楽に動かすことができる。
【0011】
好ましい実施形態では、1対の側方張出マット部および股当てマット部のうちの少なくともいずれか一方は、内部に物を収容するためのポケットを有する。ポケットには、例えば、母親の香りが染み込んだ柔軟性素材が収容される。母親の香りが染み込んだ柔軟性素材の例として、母親のハンカチ、授乳パッド等を挙げることができる。このような構成であれば、乳幼児を母親の香りのする側方張出マット部または股当てマット部によって包み込むので、乳幼児は、母親に抱かれているような安らかな気持ちを持つことができる。
【0012】
好ましい実施形態では、おくるみマットは、重ね合わされた1対の側方張出マット部および股当てマット部の先端部分を連結して乳幼児を包み込む形態を保持するための接続手段をさらに備える。
【0013】
おくるみマットは、乳幼児の頭部の下に位置する頭部マット部を備えるものであってもよい。その場合、好ましくは、頭部マット部の背面に、使用者の手を受入れるための手受入部を設ける。このような構成であれば、おくるみマットで乳幼児を包み込んで抱き上げる際、乳幼児の頭部を安定して支えることができる。
【0014】
この発明に従った座席付き育児器具は、股ベルトおよび1対の腰ベルトを取付けた座席と、座席上に置かれるおくるみマットとを備える。おくるみマットは、乳幼児の背中の下に位置する背部マット部と、背部マット部の両側縁から両側方に突出して延び、乳幼児の腹部を両側から包み込むように折り曲げられる1対の側方張出マット部と、背部マット部から連続的に連なって下方に延び、乳幼児の尻から股を通って腹部を包み込むように折り曲げられる股当てマット部とを含む。股当てマット部は、股ベルトの下に位置し、1対の側方張出マット部は、1対の腰ベルトの下に位置する。
【0015】
上記構成の育児器具によれば、座席上に置かれるおくるみマットが、腰ベルトおよび股ベルトの下に位置する緩衝パッドとしての働きもする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1〜図3は、この発明の一実施形態に係るおくるみマットを示している。おくるみマット10は、乳母車、自動車用子供座席、室内用子供椅子等の座席付き育児器具や、ベッド等において、乳幼児の下に敷かれるものである。乳幼児に柔らかな感触を与えるために、おくるみマット10の内部にクッション材を入れるようにしてもよい。
【0017】
おくるみマット10は、展開状態において、十字状の形態を呈する。具体的には、おくるみマット10は、乳幼児の背中の下に位置する背部マット部11と、背部マット部11の両側縁から両側方に突出して延び、乳幼児の腹部を両側から包み込むように折り曲げられる1対の側方張出マット部12と、背部マット部11から連続的に連なって下方に延び、乳幼児の尻から股を通って腹部を包み込むように折り曲げられる股当てマット部13と、乳幼児の頭部の下に位置する頭部マット部14とを備える。図2は、1対の側方張出マット部12と股当てパッド部13とを折り曲げた状態を示している。
【0018】
頭部マット部14は、必須の構成要素ではなく、省略することも可能である。図示した実施形態は、枕として機能する頭部マット部14を備える。枕の形態の頭部マット部14は、特開2005−81039号公報に開示された構成を備える。すなわち、頭部マット部14は、第1の高さを有し、乳幼児の後頭部の両側部を下から支える逆U字状の頭部位置決め部15と、第1の高さよりも低い第2の高さを有し、頭部位置決め部15によって位置決めされた乳幼児の首を下から支える頚椎支え部16とを備え、頭部位置決め部15と頚椎支え部16とで囲まれた凹部17を形成し、そこに乳幼児の後頭部が位置する。凹部17には、通気孔18が設けられている。
【0019】
図5は、乳母車の座席上でおくるみマット10を使用している状態を示している。乳母車の座席30には、股ベルト31と1対の腰ベルト32とが取付けられている。股ベルト31と各腰ベルト32とは、受入具33および差込具34等の連結手段を介して連結される。
【0020】
乳幼児の下に敷かれるおくるみマット10の股当てマット部13が乳幼児の尻から股を通って腹部を包み込むように折り曲げられ、さらに股当てマット部13の上に重なるように1対の側方張出マット部12が乳幼児の腹部を両側から包み込むように折り曲げられる。股当てマット部13は、股ベルト31の下に位置し、1対の側方張出マット部12は、1対の腰ベルト32の下に位置する。したがって、股ベルト31、腰ベルト32およびバックル部材33,34が直接乳幼児の身体に接触するのを防止できる。
【0021】
乳幼児の手足は露出した状態のままであるので、乳幼児は、手足を自由に動かすことができる。
【0022】
乳幼児を乳母車の座席30から離して抱き上げるときには、股ベルト31と腰ベルト32との連結を解き、乳幼児をおくるみマット10で包み込んだままで抱き上げる。
【0023】
図4は、この発明の他の実施形態に係るおくるみマットを示している。図1〜図3に示した実施形態と同一の番号を付した部分は、同一または相当の要素を示すものであるので、それらの具体的な説明を省略する。図4に示した実施形態の特徴は、1対の側方張出マット部12および股当てパッド部13のうちの少なくともいずれか一方が、内部に物を収容するためのポケットを有する点にある。
【0024】
具体的に説明すると、1対の側方張出マット部12の先端部分の内面にスリット20が設けられ、このスリット20に連なって内部にポケット21が設けられている。さらに、股当てマット部13の先端部分の内面にもスリット22が設けられ、このスリット22に連なって内部にポケット23が設けられている。
【0025】
ポケット21、23内には、母親の香りが染み込んだ柔軟性素材が収容されている。柔軟性素材の好ましい例として、母親の香りが染み込んだハンカチ、授乳パッド等を挙げることができる。乳幼児を母親の香りのするおくるみマット10で包み込むことにより、乳幼児は、母親に抱かれているような安らかな気持ちを持つことができる。
【0026】
図6〜図8は、この発明のさらに他の実施形態に係るおくるみマット40を示している。おくるみマット40は、例えば子供用ベッドの上に置かれて使用されるものであり、先の実施形態と同様に、背部マット部41と、1対の側方張出マット部42と、股当てマット部43と、頭部マット部44とを備える。この実施形態の特徴は、図8に示すように、頭部マット部44の背面に、母親等の使用者の手を受入れるための手受入部46が設けられている点にある。手受入部46は、図示した実施形態では、手を差し込むことができるようにした帯である。手受入部46の形態としては、帯以外の形状のものを採用できることは言うまでも無い。
【0027】
上記のような手受入部46を備えることにより、母親は、乳幼児をおくるみマット40に包んで抱き上げるとき、手を手受入部46に差し入れて乳幼児の頭部を安定して支えることができるようになる。
【0028】
また、図6に示すように、股当てマット部43の先端部分の外面には2本の紐45が取付けられており、1対の側方張出マット部42の先端部分には、紐45を通すための通し穴47が設けられている。
【0029】
図7に示すように、股当てパッド部43および1対の側方張出マット部42を折り曲げて乳幼児を包み込む形態にした状態で、2本の紐45を側方張出マット部42の通し穴47に通して結び目を作れば、包み込む形態を安定して維持できる。したがって、乳幼児をおくるみマット40で包み込んで抱く場合にも、包み込み形態が崩れない。
【0030】
なお、図6〜図8に示した実施形態では、重ね合わされた1対の側方張出マット部42および股当てマット部43の先端部分を連結して乳幼児を包み込む形態を保持するための接続手段として、紐および通し穴を採用したが、面ファスナ等の他の接続部材を採用することも可能である。
【0031】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
この発明は、座席付き育児器具やベッド等の上に置かれるマットとして、有利に利用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明の一実施形態に係るおくるみマットを示す平面図である。
【図2】図1に示したおくるみマットの使用状態の形態を示す図である。
【図3】枕の形態の頭部マット部を示す平面図である。
【図4】この発明の他の実施形態に係るおくるみマットを示す平面図である。
【図5】乳母車の座席上でおくるみマットを使用している状態を示す図である。
【図6】この発明のさらに他の実施形態に係るおくるみマットを示す平面図である。
【図7】図6に示したおくるみマットの使用状態の形態を示す図である。
【図8】使用状態の形態のおくるみマットを背面側から見た図である。
【図9】乳母車の座席上の乳幼児を股ベルトおよび腰ベルトによって拘束している状態を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 座席、2 股ベルト、3 腰ベルト、4 受入具、5 差込具、10 おくるみマット、11 背部マット部、12 側方張出マット部、13 股当てマット部、14 頭部マット部、15 頭部位置決め部、16 頚椎支え部、17 凹部、18 通気孔、20 スリット、21 ポケット、22 スリット、23 ポケット、30 座席、31 股ベルト、32 腰ベルト、33 受入具、34 差込具、40 おくるみマット、41背部マット部、42 側方張出マット部、43 股当てマット部、44 頭部マット部、45 紐、46 手受入帯、47 通し穴。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳幼児の背中の下に位置する背部マット部と、
前記背部マット部の両側縁から両側方に突出して延び、乳幼児の腹部を両側から包み込むように折り曲げられる1対の側方張出マット部と、
前記背部マット部から連続的に連なって下方に延び、乳幼児の尻から股を通って腹部を包み込むように折り曲げられる股当てマット部とを備える、おくるみマット。
【請求項2】
前記1対の側方張出マット部および前記股当てパッド部のうちの少なくともいずれか一方は、内部に物を収容するためのポケットを有する、請求項1に記載のおくるみマット。
【請求項3】
前記ポケットには、母親の香りが染み込んだ柔軟性素材が収容されている、請求項2に記載のおくるみマット。
【請求項4】
重ね合わされた前記1対の側方張出マット部および前記股当てマット部の先端部分を連結して乳幼児を包み込む形態を保持するための接続手段をさらに備える、請求項1〜3のいずれかに記載のおくるみマット。
【請求項5】
前記おくるみマットは、乳幼児の頭部の下に位置する頭部マット部を備える、請求項1〜4のいずれかに記載のおくるみマット。
【請求項6】
前記頭部マット部の背面に、使用者の手を受入れるための手受入部が設けられている、請求項5に記載のおくるみマット。
【請求項7】
股ベルトおよび1対の腰ベルトを取付けた座席と、
前記座席上に置かれるおくるみマットとを備え、
前記おくるみマットは、乳幼児の背中の下に位置する背部マット部と、前記背部マット部の両側縁から両側方に突出して延び、乳幼児の腹部を両側から包み込むように折り曲げられる1対の側方張出マット部と、前記背部マット部から連続的に連なって下方に延び、乳幼児の尻から股を通って腹部を包み込むように折り曲げられる股当てマット部とを含み、
前記股当てマット部は、前記股ベルトの下に位置し、
前記1対の側方張出マット部は、前記1対の腰ベルトの下に位置する、座席付き育児器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−279(P2008−279A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−171739(P2006−171739)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(390006231)アップリカ育児研究会アップリカ▲葛▼西株式会社 (97)
【Fターム(参考)】