説明

おむつ替えシート

【課題】おむつ替えシートを展開すると同時におむつも展開でき、おむつ交換にかかる作業の大幅な軽減を図ったおむつ替えシートを提供する。
【解決手段】接合手段3は、少なくともシート材2の上下方向下側であって幅方向両側部に夫々設けられ、これらの接合手段3に対して、おむつ本体部を前後方向に二つ折りした紙おむつ10の背側両側部が夫々着脱自在に接合可能とされ、おむつ替えシート1は、おむつ本体部を前後方向に二つ折りした紙おむつ10が接合手段3に接合された状態で、シート材2の幅方向両側部が夫々紙おむつの背側両側部と共に、中央部に重なるように三つ折り状態で折り畳まれた後、上下方向に、下側部分が紙おむつ10と共に上方向側に中央部に重なるように折り畳まれ、次いで上側部分がその上面に重なるように三つ折り状態で折り畳まれ、前記上側部分が開封端部としてシート材2の裏面に対して着脱可能に接合され個装される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、おむつ替えシートを展開すると同時におむつも展開できるようにしたおむつ替えシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、外出先などでおむつを交換する際、(1)汚れたシートや野外のベンチなどに子供を寝かせると子供が汚れたり怪我をしたりする、(2)子供の排泄した便や尿によって床や車のシートが汚れる、などの理由から、子供の下に敷くおむつ替えシートが使用されている。
【0003】
かかるおむつ替えシートとして、下記特許文献1では、肌触りの良い不織布若しくは紙シートからなる表面シートに防水性のある裏面シートを接着させ、裏面シートに粘着テープを付着させた使い捨ておむつ替えシートが開示され、下記特許文献2では、おむつ替えが必要な赤ちゃんの体の下に敷いて使用する汚れ防止シート等からなるおむつ替え補助具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−248126号公報
【特許文献2】特開2006−346376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1、2記載のシート等の一般的なおむつ替えシートは、持ち運びし易いようにおむつ替えシート単体がコンパクトに折り畳まれるようになっている。このようにコンパクトに折り畳まれたおむつ替えシートを使用しておむつ替えを行う場合、その手順は、(1)おむつ替えシートを展開して敷く、(2)その上に子供を寝かせる、(3)新しいおむつを敷きこむ、という要領で行われ、手間や時間が掛かっていた。
【0006】
また、外出時などでは、子供を抱きかかえながら片手でこれらの作業を行わなければならない場合が多いため、衛生面などからおむつ替えシートを敷きたくても手間がかかるため敷くことができないという不満が少なくなかった。従って、子供を抱きかかえながらでも、片手で簡単におむつ替えシート及びおむつが展開できるものが望まれていた。
【0007】
そこで本発明の主たる課題は、おむつ替えシートを展開すると同時におむつも展開でき、おむつ交換にかかる作業の大幅な軽減を図ったおむつ替えシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、シート材と、該シート材の表面側に設けられテープ式の紙おむつ外面に対して着脱可能な接合手段とから構成されたおむつ替えシートであって、
前記接合手段は、少なくとも前記シート材の上下方向下側であって幅方向両側部に夫々設けられ、これらの接合手段に対して、おむつ本体部を前後方向に二つ折りした紙おむつの背側両側部が夫々着脱自在に接合可能とされ、
前記おむつ替えシートは、おむつ本体部を前後方向に二つ折りした紙おむつが前記接合手段に接合された状態で、前記シート材の幅方向両側部が夫々紙おむつの背側両側部と共に、中央部に重なるように三つ折り状態で折り畳まれた後、上下方向に、下側部分が前記紙おむつと共に上方向側に中央部に重なるように折り畳まれ、次いで上側部分がその上面に重なるように三つ折り状態で折り畳まれ、前記上側部分が開封端部として前記シート材の裏面に対して着脱可能に接合され個装されることを特徴とするおむつ替えシートが提供される。
【0009】
上記請求項1記載の発明では、前記接合手段は、少なくとも前記シート材の上下方向下側であって幅方向両側部に夫々設けられ、これらの接合手段に対して、おむつ本体部を前後方向に二つ折りした紙おむつの背側両側部が夫々着脱自在に接合可能とされている。また、前記おむつ替えシートは、おむつ本体部を前後方向に二つ折りした紙おむつが前記接合手段に接合された状態で配置され、前記シート材の幅方向両側部が夫々紙おむつの背側両側部と共に、中央部に重なるように三つ折り状態で折り畳まれた後、上下方向に、下側部分が前記紙おむつと共に上方向側に中央部に重なるように折り畳まれ、次いで上側部分がその上面に重なるように三つ折り状態で折り畳まれ、前記上側部分が開封端部として前記シート材の裏面に対して着脱可能に接合され個装されている。このため、おむつ替えをする際に、個装されたおむつ替えシートを前記開封端部から展開すると、シート材の下側部分に、おむつ本体部が前後方向に二つ折りされ、背側両側部が夫々展開された新しい紙おむつが自動的にセットされることになる。すなわち、本発明に係るおむつ替えシートを使用しておむつ替えを行う手順は、(1)おむつ替えシートを展開して敷く(すると、自動的に背側両側部が展開された新しい紙おむつがシート下側中央に配置されることになる。)、(2)その上に子供を寝かせる、という2工程で済むため、おむつ替えにかかる手間が簡略化できる。さらに、おむつ替えシートの展開作業は、前記シート材の上下方向の三つ折り状態及び幅方向の三つ折り状態を夫々解除するだけなので、子供を抱きかかえた状態でも片手で簡単にでき、おむつ交換にかかる作業の大幅な軽減が図られるようになる。
【0010】
請求項2に係る本発明として、前記シート材の上下方向下側であって幅方向中央部に接合手段が設けられ、前記紙おむつの背側中央部が着脱自在に接合可能としてある請求項1記載のおむつ替えシートが提供される。
【0011】
上記請求項2記載の発明では、シート材に紙おむつを着脱自在に接合可能とする接合手段を、紙おむつの背側両側部に加えて、紙おむつの背側中央部にも設けるようにしたものである。特に紙おむつが背側端部に幅方向へ伸縮する胴回り伸縮部材を有するものであると、接合手段が紙おむつの背側両側部だけでは伸縮部材の収縮によりおむつの背側中央部が浮き上がってしまう。このような場合には、背側中央部にも接合手段を設けると、紙おむつの固定がより安定したものとなる。
【0012】
請求項3に係る本発明として、前記シート材の折り畳み位置に沿って予め折り目が設けてある請求項1、2いずれかに記載のおむつ替えシートが提供される。
【0013】
上記請求項3記載の発明では、前記シート材の折り畳み位置に沿って予め折り目を設けることにより、おむつ替えシートを個装する際に、シート材を折り畳み易くしたものである。
【0014】
請求項4に係る本発明として、前記シート材の幅方向両側部であってその上部側に、シート側縁上の任意点からシート上縁上の任意点に向かって、外形線となる斜め方向の傾斜辺を有する請求項1〜3いずれかに記載のおむつ替えシートが提供される。
【0015】
上記請求項4記載の発明では、シート材の幅方向両側部であってその上部側に、シート側縁上の任意点からシート上縁上の任意点に向かって、外形線となる斜め方向の傾斜辺を有することにより、おむつ替えシートの展開時に、特に両側部を展開する際、シート材の上側が折れ曲がったりせずに綺麗に展開させることができるようになる。
【0016】
請求項5に係る本発明として、前記シート材の開封端部には、幅方向中央部に前記シート材の裏面に対して着脱可能に接合されるタグテープが設けてある請求項1〜4いずれかに記載のおむつ替えシートが提供される。
【0017】
上記請求項5記載の発明では、前記シート材の開封端部には、幅方向中央部に前記シート材の裏面に対して着脱可能に接合されるタグテープを設けることにより、タグテープを摘んで開封することにより、開封端部からの開封を容易に行うことができるようになる。
【0018】
請求項6に係る本発明として、前記シート材の裏面側には、中央部及び/又は前記紙おむつの配設位置対応部に対し、前記シート材のズレ止めを図るためのズレ止め手段が設けてある請求項1〜5いずれかに記載のおむつ替えシートが提供される。
【0019】
上記請求項6記載の発明では、おむつ交換時にシート材がずれないように、前記シート材の裏面側には、中央部及び/又は前記紙おむつの配設位置対応部に対し、前記シート材のズレ止めを図るためのズレ止め手段を設けるようにしたものである。
【0020】
請求項7に係る本発明として、前記シート材には、前記紙おむつの配設位置に合わせて表示線が施してある請求項1〜6いずれかに記載のおむつ替えシートが提供される。
【0021】
上記請求項7記載の発明では、前記シート材には、前記紙おむつの配設位置に合わせて表示線を施すことにより、おむつ替えシートに新しい紙おむつを装着する際に、紙おむつのセット位置を判りやすくしたものである。
【0022】
請求項8に係る本発明として、前記シート材には、略おむつ本体の側部位置に、縦方向に沿って表面側に突出する山折りの堰が設けてある請求項1〜7いずれかに記載のおむつ替えシートが提供される。
【0023】
上記請求項8記載の発明では、前記シート材には、おむつ本体の側部位置に、縦方向に沿って表面側に突出する山折りの堰を設けることにより、軟便などがおむつ替えシートから流出して設置面を汚さないようにしたものである。
【発明の効果】
【0024】
以上詳説のとおり本発明によれば、おむつ替えシートを展開すると同時におむつも展開でき、おむつ交換にかかる作業の大幅な軽減を図ったおむつ替えシートが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るおむつ替えシート1の使用状態を示す表面側展開図である。
【図2】おむつ替えシート1の表面側展開図である。
【図3】タグテープ4の拡大図である。
【図4】おむつ替えシートの個装要領を示す手順図(その1)である。
【図5】おむつ替えシートの個装要領を示す手順図(その2)である。
【図6】おむつ替えシートの個装要領を示す手順図(その3)である。
【図7】おむつ替えシートの個装要領を示す手順図(その4)である。
【図8】おむつ替えシートの開封要領を示す手順図(その1)である。
【図9】おむつ替えシートの開封要領を示す手順図(その2)である。
【図10】表示線20を示すおむつ替えシート1の表面側展開図である。
【図11】堰21を示すおむつ替えシート1の表面側展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。なお、本発明における「上下方向」とは、おむつ交換を行う際に子供をシート上に寝かせた状態でほぼ頭部側(上側)と脚部側(下側)とを結ぶ方向であり、おむつ替えシート1の長手方向を意味する。また「幅方向」とは、前記上下方向と直交する方向(おむつ替えシート1の展開時の左右方向)を意味する。
【0027】
(おむつ替えシート1の構造)
本発明に係るおむつ替えシート1は、所定の平面形状を有するシート材2と、該シート材2の表面側に複数設けられ、テープ式の紙おむつ10の外面に対して着脱可能な接合手段3、3…と、前記シート材2の上下方向上側縁の幅方向中央部に、基端側がシート材2に剥離不能に固定されるとともに、突出部分にシート材2の裏面に対して着脱可能な接合面が設けられたタグテープ4と、前記シート材2の裏面側に対して中央部及び/又は前記紙おむつ10の配設位置対応部に設けられ、設置面と前記シート材2とのズレ止めを図るためのズレ止め手段5、6とから主に構成されている。
【0028】
前記シート材2は、図1に示されるように、上下方向に長い平面形状を有し、子供を寝かせた状態で少なくとも子供の腹部から脚上部までを十分にカバー可能な大きさとされる。前記シート材2は、図1及び図2に示されるように、平面視で、シート材2の幅方向両側部であってその上部側に、シート側縁上の任意点からシート上縁上の任意点に向かって外形線となる斜め方向の傾斜辺7、7が形成されることが好ましい。前記傾斜辺7、7を形成することにより、おむつ替えシート1の特に両側部を展開する際、シート材2の上側が折れ曲がったりせず、スムーズに展開できるようになる。なお、前記傾斜辺7、7は、図示例では直線状であるが、曲線状に形成することもできる。また前記傾斜辺7を形成せずに、前記シート材2を長方形状としても良い。
【0029】
前記シート材2を構成する素材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、不織布、コットンなど、通常のおむつ替えシートや包装材に使用される素材の単体又は複合素材とすることができる。前記シート材2を複合素材とする場合、表面側と裏面側とで異なる素材を使用でき、例えば表面側を肌触りの良い不織布、裏面側を防漏性のあるナイロンなどとすることができる。素材としてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロンを使用する場合、目付けは27g/m以上、好ましくは45〜80g/m、厚みは23μm以上、好ましくは45〜80μmとする。薄すぎると子供の下に敷く際によれが生じやすく、厚すぎると折り畳みしにくくなる。一方不織布やコットンを使用する場合、同様の理由から、目付けは17〜60g/m、好ましくは20〜30g/mとすることが好ましい。
【0030】
前記シート材2は、上下方向及び幅方向に沿って折り線L1〜L4が設けられ、おむつ替えシート1の個装時に、これらの折り線位置にて適宜折り畳まれる。具体的には、図1に示されるように、シート材2の幅方向中心線に対して両側にそれぞれ上下方向に沿って折り線L1、L2が設けられるとともに、シート材2の上下方向下端縁から上方向にほぼ紙おむつを前後方向に二つ折りした長さでほぼ等間隔に幅方向に沿って折り線L3、L4が設けられている。
【0031】
折り線L1〜L4の位置について、図2に基づいて詳述する。前記折り線L1〜L4の位置は、折り畳まれる紙おむつ10の寸法に基づいて設定される。シート材2の幅方向両端縁から折り線L1、L2までの長さAは、紙おむつ10を構成する吸収体のおむつ幅方向長さ(吸収体幅)の1.3倍以下、かつ折り線L1、L2間の長さB以下とする。これよりも長いと、個装時にシート材2の幅方向両側部を中央部に重ねるように三つ折り状態で折り畳んだ際、この両側部がよれるおそれがある。好ましい長さAは、前記吸収体幅の35〜60%である。また、折り線L1、L2間の長さBは、前記吸収体幅の1.1〜1.3倍程度とする。これは、吸収体幅に加えて、シート材2を幅方向に三つ折りに折り畳んだ際に多少の余裕を持たせた長さである。シート材2の上下方向上端から折り線L4までの長さCは、紙おむつの製品前後方向長さの0.1〜0.5倍程度、好ましくは0.2〜0.4倍程度とする。このC部分(シート材2の上側部分)は、個装時に開封端部としてシート材2の裏面に接合される部分であるため、開封端部としての機能が確保されるように上記寸法としたものである。シート材2の上下方向下端からほぼ等間隔に形成された折り線L3、L4の各間隔D、Eは、前記吸収体のおむつ前後方向長さに対して0.5〜0.7倍程度、すなわちおむつ前後方向に二つ折りした紙おむつを十分に外装可能な寸法とする。
【0032】
一方、シート材2の上下方向長さFは、紙おむつの前後方向長さの1.1〜1.5倍程度、好ましくは1.2〜1.3倍程度とする。他方、前記傾斜辺7とシート側縁との交点であるシート側縁上の任意点は、折り線L3、L4間に存在することが好ましく、この点からシート下端までの長さMは、シート材2の上下方向長さFの80%以下、好ましくは60〜70%とする。また、前記傾斜辺7とシート上縁との交点であるシート上縁上の任意点は、折り線L1、L2よりそれぞれ外側に設けられることが好ましく、この点から折り線L1、L2までの長さNは、折り線L1、L2間の長さBの5〜20%、好ましくは10〜15%とする。ここで、前記上端上の任意点は、シート材2の幅方向両側部を夫々中央部に重なるように三つ折り状態で折り畳んだ際に、幅方向両側部がずれてタグテープ4の粘着剤層に接合しないように、タグテープ4と重ならない範囲内に設けることが好ましい。
【0033】
前記折り線L1〜L4には、それぞれ折り畳み方向に折り畳みやすいように予め折り目が設けられることが好ましい。これによりおむつ替えシートを個装する際の折り畳みが容易となる。
【0034】
前記シート材2の表面側に設けられる接合手段3は、機械接合式のファスニングテープとすることが好ましい。前記機械接合式のファスニングテープは、その外面に多数の係合片を有している。係合片の形状としては、例えばレ字状、J字状、マッシュルーム状、T字状等のものが存在するが、いずれの形状であっても良い。好ましいのはT字状のものである。
【0035】
前記接合手段3は、図示例では、前記シート材2の上下方向下側において、幅方向両側部と幅方向中央部に3箇所設けられている。幅方向両側部の接合手段3は、それぞれ前記折り線L1、L2より外側であって前記折り線L3より下側の領域に設けられるようにする。また、幅方向中央部の接合手段3は、シート材2の幅方向中央部であって前記折り線L3より下側の領域に設けられるようにする。前記接合手段3は、幅方向両側部のみに設けられようにしてもよく、おむつ背側の幅方向に沿って4箇所以上設けられるようにしてもよい。
【0036】
前記接合手段3の大きさは、両側部の接合手段3、3については、シート幅方向長さが10〜30mm、シート上下方向長さが20〜50mmとし、中央部の接合手段3については、シート幅方向長さが20〜70mm、シート上下方向長さが25〜50mmとすることが好ましい。
【0037】
前記シート材2の外面側であって上下方向上端縁のほぼ中央には、タグテープ4が設けられている。前記タグテープ4は、紙又はプラスチックフィルム等からなる部材で、図3に示されるように、基端部4aがシート材2に剥離不能に接着され、突出部分に剥離可能な接着剤層4bが設けられ、且つその先端部分に非接着性の摘み部4cが形成されている。タグテープ4の幅bは8〜25mm、好ましくは13〜20mmとする。8mmより小さいと狭すぎて摘みにくく、25mmより大きいと接着剤層4bの接合力がかかりすぎるとともに資材コストが嵩む。タグテープ4の全長cは、20〜60mm、好ましくは25〜45mmとする。20mmより短いと個装する際の接着力が不十分で、60mmより長いと開封時に剥離する力がかかりすぎるとともに資材コストが嵩む。前記摘み部4cは、接着剤を塗布しない部分とするか、接着剤層を形成した後、折り返して接着剤層同士を接合させた部分によって形成する。この摘み部4cの上下方向長さdは、5〜15mm、好ましくは5〜10mmとする。5mmより短いと摘みにくく、15mmより長いと摘み部4cが浮きやすくなり、自然とタグテープ4が剥離してしまうおそれがある。
【0038】
前記シート材2の裏面側に設けられるズレ止め手段5は、シート材2の裏面側に対して略中央部に設けられ、おむつ替えシート1の展開時に設置面とのズレ止めを図り、片手でも開封しやすいようにするためのものである。前記ズレ止め手段5は、図示例ではシート材2の中央部に横長の長方形状で1箇所設けられているが、シート材2の中央部に円形状等の任意形状で複数箇所設けられるようにしてもよい。ズレ止め手段5の総面積は、450〜3500mmとする。図示例のように略中央部に長方形状で設ける場合、幅方向寸法は30〜70mm、好ましくは40〜60mmとし、上下方向寸法は15〜50mm、好ましくは20〜30mmとする。前記ズレ止め手段5は、図2に示されるように、折り線L1、L2間(B)の幅方向中央部であって、折り線L3、L4間(D)の上下方向下側寄り位置に設けることが好ましい。
【0039】
また、前記ズレ止め手段6は、シート材2の裏面側に対して紙おむつ10の配設位置対応部、すなわち紙おむつ10を接合する上下方向下側であって幅方向中央部に設けられ、おむつ交換時に子供が動いてもシート材2がずれないように、シート材2と設置面とのズレ止めを図るためのものである。ズレ止め手段6の寸法及び形状は、ズレ止め手段5と同様である。ズレ止め手段6が設けられていれば、ズレ止め手段5は省略することもできる。また、前記ズレ止め手段6は、おむつ替えシート1を上下方向に三つ折り状態で折り畳む際(図6及び図7参照)、シート上側部分の表面側(シート材2の形状が長方形である場合は裏面側)と接合しておむつ替えシート1の折り畳み状態を維持するための接合手段として使用することもできる。
【0040】
前記ズレ止め手段5、6は、前述の機械接合式のファスニングテープ又は剥離自在に接合可能な粘着剤層とすることができる。前記ズレ止め手段5、6を粘着剤層によって形成する場合、少なくともズレ止め手段5は剥離紙によって剥離可能に覆われるのが好ましい。あるいは、前記ズレ止め手段6に対しては、シート材2自体に剥離処理を施しておけば、前述のような、おむつ替えシート1を上下方向に三つ折り状態で折り畳む際、シート上側部分の表面側と接合しておむつ替えシート1の折り畳み状態を維持するための接合手段として使用することもできる。ただし、この場合、シート材2の形状が長方形であると、ズレ止め手段6に当接するのがシート材2の裏面(ズレ止め手段6と同じ側の面)となるため、部分的に剥離処理を施さないとズレ止め手段6の粘着剤層が、シート材2から剥離しやすくなる。ここで、シート材2が前記傾斜辺7、7を有する形状であると、図7に示すようにシート材2の表側面(ズレ止め手段6と対向する面)に剥離処理を施すことになるため、シート材2の表側面全体に剥離処理を施すことが可能となり、製造が容易である。前記粘着剤層を形成する粘着剤としては、たとえばスチレン系ポリマー、粘着付与剤、可塑剤のいずれかが主成分であるものが好適に使用される。前記スチレン系ポリマーとしては、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体等が挙げられるが、これらのうち1種のみを使用しても、二種以上のポリマーブレンドであってもよい。この中でも熱安定性が良好であるという点で、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体が好ましい。また、前記粘着付与剤および可塑剤としては、常温で固体のものを好ましく用いることができ、粘着付与剤ではたとえばC5系石油樹脂、C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、ロジン系石油樹脂、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等が挙げられ、前記可塑剤では例えば、リン酸トリフレシル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等のモノマー可塑剤の他、ビニル重合体やポリエステルのようなポリマー可塑剤が挙げられる。
【0041】
前記粘着剤層を覆う剥離紙あるいはシート材2の剥離処理面としては、粘着剤層に対する当接面に対し、例えばシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、または四フッ化エチレン系樹脂などの離型処理液を塗工するかスプレー塗布し離型処理した紙や不織布、またはプラスチックシートを用いることができる。なお、特別に離型処理をしなくても、実質的に粘着力の低下を招かないものであれば、フィルムそのものであっても、不織布そのものであっても良い。
【0042】
前記紙おむつ10は、例えば図1に示されるように、透液性表面シート11と不透液性裏面シート12との間に綿状パルプ等からなる吸収体13が介在され、背側両側部に側方に突出する止着テープ14、14が取り付けられたテープ式の使い捨て紙おむつである。また、図示しないが、紙おむつ10は背側端部に幅方向へ伸縮する胴回り伸縮部材を備えていてもよい。この紙おむつ10は、おむつ本体部を前後方向に二つ折りした状態で、少なくとも背側両側部が夫々、前記接合手段3に対して着脱自在に接合される。このため、おむつ替えシート1を個装した状態がコンパクトになり、持ち運びに便利となる。さらに、おむつ背側部分だけが接合され、おむつ腹側部分がシート材2に接合されないため、おむつ装着作業がし易くなる。
【0043】
前記紙おむつ10の裏面シート12を構成する素材は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル繊維を原綿とした非透液性不織布が好ましく、単体又は複合素材とする。かかる不織布は、エアスルー法、スパンボンド法、スパンレース法、ポイントボンド法、SMS法などにより製造することができ、前記接合手段3に接合させるため、エアスルー法やポイントボンド法、スパンボンド法により製造したものが好ましい。スパンレース法では接着部分に繊維が絡み付いて取りにくくなるおそれがある。前記裏面シート12の目付けは、13〜35g/mとし、より好ましいのは17〜25g/mである。
【0044】
(個装手順)
次に、おむつ替えシート1の個装手順について、図4〜図7に基づいて詳述する。先ずはじめに、図4に示されるように、おむつ本体部を前後方向に二つ折りした紙おむつ10の背側両側部及び背側中央部を夫々、接合手段3、3…に対して着脱自在に接合しておく。
【0045】
この状態で、図5に示されるように、前記シート材2の幅方向両側部を夫々、折り線L1、L2位置にて、紙おむつ10の背側両側部と共に、中央部に重なるように三つ折り状態で折り畳む。
【0046】
次いで、図6に示されるように、シート材2の下側部分を前記紙おむつ10と共に、折り線L3位置にて、上方向側に中央部に重なるように折り畳む。
【0047】
しかる後、図7に示されるように、シート材2の上側部分をその上面に重なるように、折り線L4位置にて、上下方向に三つ折り状態で折り畳み、開封端縁に設けてあるタグテープ4をシート材2の外面に剥離可能に接合し、折り畳み状態を保持する。
【0048】
(開封手順)
続いて、図7に示される個装状態のおむつ替えシート1を開封する手順について、図8及び図9に基づいて詳述する。おむつ替えシート1を開封するには、図8に示されるように、タグテープ4の摘み部4cを摘んでシート材2の折り畳み状態を順次展開する。本発明に係るおむつ替えシート1は、上述の通りシート材2を折り畳むことにより個装されているので、片手でも簡単に展開することができるとともに、シート材2とともに紙おむつ10が折り畳まれているため、図9に示されるように、シート材2を展開すると紙おむつ10が幅方向中央部下側に置かれた状態になるとともに、シート材2の両側部の展開に伴い、紙おむつ10の背側両側部も自動的に展開される。なお、二つ折りされたおむつ本体部の前身頃(上側部分)についても自動的に展開されると思われるが、折り癖によって展開していない場合は手操作にて展開させる。
【0049】
(おむつ替えシート1の変形例)
ところで、前記おむつ替えシート1は、種々の形態で変形して構成することができる。例えば、図10に示されるように、前記シート材2には、紙おむつ10の配設位置に合わせて表示線20を施すことができる。図10(A)は紙おむつ10の上端に合わせた表示線20、(B)は紙おむつ10の外形線に沿った表示線20を施したものである。前記表示線20を施すことにより、おむつ替えシート1に新しい紙おむつ10を装着する際、紙おむつ10のセット位置が判りやすくなる。
【0050】
また、図11に示されるように、前記シート材2には、略おむつ本体の側部位置に、縦方向に沿って表面側に突出する山折りの堰21、21が設けられるようにしてもよい。前記堰21は、シート材2を縦方向に沿って中間部を山折りとし、その両側を谷折りとして表面側に三角形状の山形に突出させたものである。前記堰21の突出する傾斜辺の高さQは、7mm以上、特に10mm以上が好ましい。7mm未満では、通常の量の軟便(約60cc)が外側に漏れ出るおそれがある。なお、前記堰21として、表面側に突出する別部材を設けるようにしてもよい。
【0051】
前記おむつ替えシート1は、何度か使用した後廃棄する使い捨てタイプでも、何度も繰り返して使用できる繰り返しタイプでもよい。使い捨てタイプの場合、シート材2を構成する素材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、不織布など、通常の包装材に使用される素材の単体又は複合素材とすることができる。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルの中では、特に衛生用品の包装に使用されるポリエチレンフィルムが好ましい。また、より柔らかい素材である低密度ポリエチレン(LDPE)若しくは中密度ポリエチレン(MDPE)が好ましい。かかる使い捨てタイプの場合、前記シート材2に消臭機能を付加すると、使用済みのおむつをくるんで外出先から持ち替える際に臭いを軽減できるため好ましい。
【0052】
一方、前記繰り返しタイプの場合は、上記使い捨てタイプに挙げた素材の他に、コットンや化繊など、通常のおむつ替えシートに使用される素材を用いることができる。
【0053】
(その他)
本発明のおむつ替えシートは、薄くかさばらないものであり、予めおむつをセットしてコンパクトにまとめることができるものである。またシンプルな構造であるため低コストである。そのため、本発明のおむつ替えシートを多数用意し、外出の間に使用する複数枚のおむつ全てを個別におむつ替えシートで包装しても、荷物がかさばることがない。また、使用者が外出前の準備として本発明のおむつ替えシートでおむつを包むのではなく、予め本発明のおむつ替えシートで個別に包装した個包装おむつを製品として提供することもできる。
【符号の説明】
【0054】
1…おむつ替えシート、2…シート材、3…接合手段、4…タグテープ、5・6…ズレ止め手段、7…傾斜辺、10…紙おむつ、11…透液性表面シート、12…不透液性裏面シート、13…吸収体、L1〜L4…折り線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材と、該シート材の表面側に設けられテープ式の紙おむつ外面に対して着脱可能な接合手段とから構成されたおむつ替えシートであって、
前記接合手段は、少なくとも前記シート材の上下方向下側であって幅方向両側部に夫々設けられ、これらの接合手段に対して、おむつ本体部を前後方向に二つ折りした紙おむつの背側両側部が夫々着脱自在に接合可能とされ、
前記おむつ替えシートは、おむつ本体部を前後方向に二つ折りした紙おむつが前記接合手段に接合された状態で、前記シート材の幅方向両側部が夫々紙おむつの背側両側部と共に、中央部に重なるように三つ折り状態で折り畳まれた後、上下方向に、下側部分が前記紙おむつと共に上方向側に中央部に重なるように折り畳まれ、次いで上側部分がその上面に重なるように三つ折り状態で折り畳まれ、前記上側部分が開封端部として前記シート材の裏面に対して着脱可能に接合され個装されることを特徴とするおむつ替えシート。
【請求項2】
前記シート材の上下方向下側であって幅方向中央部に接合手段が設けられ、前記紙おむつの背側中央部が着脱自在に接合可能としてある請求項1記載のおむつ替えシート。
【請求項3】
前記シート材の折り畳み位置に沿って予め折り目が設けてある請求項1、2いずれかに記載のおむつ替えシート。
【請求項4】
前記シート材の幅方向両側部であってその上部側に、シート側縁上の任意点からシート上縁上の任意点に向かって、外形線となる斜め方向の傾斜辺を有する請求項1〜3いずれかに記載のおむつ替えシート。
【請求項5】
前記シート材の開封端部には、幅方向中央部に前記シート材の裏面に対して着脱可能に接合されるタグテープが設けてある請求項1〜4いずれかに記載のおむつ替えシート。
【請求項6】
前記シート材の裏面側には、中央部及び/又は前記紙おむつの配設位置対応部に対し、前記シート材のズレ止めを図るためのズレ止め手段が設けてある請求項1〜5いずれかに記載のおむつ替えシート。
【請求項7】
前記シート材には、前記紙おむつの配設位置に合わせて表示線が施してある請求項1〜6いずれかに記載のおむつ替えシート。
【請求項8】
前記シート材には、略おむつ本体の側部位置に、縦方向に沿って表面側に突出する山折りの堰が設けてある請求項1〜7いずれかに記載のおむつ替えシート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2010−235127(P2010−235127A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82565(P2009−82565)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】