説明

かしめ工具

【課題】ブラインドナットやブラインドリベットなどの固定具を斜めの状態や浮いた状態で被取付部材にかしめることがないだけでなく、効率的に作動させることができるようにしたかしめ工具を提供する。
【解決手段】本かしめ工具は、ツールハウジング1の先端側に装着され、ブラインドナット3を取り付けるチャック機構10と、ツールハウジング1の中間部に内装され、前記チャック機構10をスライドさせる引込機構20と、引込機構20にエアを供給する管路と、この管路に接続されたトリガスイッチ37とが備えられている。ブラインドナット3を被取付部材5にかしめる際に後退するスライダ39がツールハウジング1の先端側に進退自在に配置され、後退したスライダ39を検知するプッシャスイッチ38が備えられ、該プッシャスイッチ38とトリガスイッチ37とがともにONされることによって引込機構20を作動させる方向切換弁(バルブ)49が前記管路に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラインドナットやブラインドリベットなどの固定具を被取付部材の一方側からかしめるためのかしめ工具に関し、詳しくは、固定具が斜め向きの状態や浮いた状態となることなくかしめることができるようにしたかしめ工具に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラインドナットやブラインドリベットなどの固定具を板材や鋼管などの被取付部材に一方の側からかしめるためのかしめ工具が種々提供されている。例えば特許文献1には、作業者の感覚に依存せずに、ブラインドナットやブラインドリベットなどの固定具(この特許文献1においては「固着具」)を斜め締結や浮き締結することなく、被取付部材に締結することができるようにした固着締結装置が開示されている。
【0003】
この固着締結装置において固着具としてブラインドナットを締結するためのものは、図8に示すように、細長いツールハウジング110、ブラインドナット(図示せず)を先端部で螺合するマンドレル120、マンドレル120を後方に引き込むための引込み手段としての油圧作動機構130、油圧作動機構130を作動させるための空圧作動機構140を備えている。ツールハウジング110の先端と中間部とには、それぞれノーズ111とハンドル112とが設けられている。
【0004】
そして、ハンドル112には、空圧作動機構140を構成するエアシリンダ141が形成され、このエアシリンダ141内をエアピストン142が移動するようにされている。また、マンドレル120は、エアモータ121によって周方向に回転するとともに進退可能なように中間部がノーズ111内に挿入され、先端部がノーズ111から突出している。また、油圧作動機構130は、ツールハウジング110内で進退するピストン131を備えている。
【0005】
そして、空圧作動機構140は、トリガレバー143によって制御されるトリガバルブ144と、少なくとも2個(実施例では3個)のメカニカルバルブ145,145,145とを空気通路146に直列に設けたもので、メカニカルバルブ145,145,145の各々には、押圧されることによって各メカニカルバルブ145,145,145を開放させる作動ピン147,147,147が備えられている。この作動ピン147は、ノーズ111付近でツールハウジング110の外周に等間隔(実施例では120°の間隔)に配置され、ノーズ111の先端が被取付部材(図示せず)に当接させられたときに、押圧する長さに形成されている。また、空気通路146の下流端146aは、エアシリンダ141の下端に接続されている。
【0006】
このような固着締結装置にあっては、ノーズ111が被取付部材に垂直、かつ、正確に当接すると、全ての作動ピン147,147,147が押圧され、全てのメカニカルバルブ145,145,145が開放され、そして、トリガバルブ144が開放されることにより、圧縮空気が空気通路146を流れる。すると、圧縮空気がエアシリンダ141内のエアピストン142を移動させ、油圧作動機構130のピストン131及びマンドレル120が後退することにより、ブラインドナットが後方に引き込まれ、適正な状態に締結される。
【0007】
これに対し、ノーズ111が被取付部材に斜めの姿勢で当接して押圧されると、いずれかの作動ピン147が押圧されず、このメカニカルバルブ145が遮断状態を維持するため、トリガバルブ144が開放されても、圧縮空気が空気通路146内を流れない。したがって、圧縮空気がエアシリンダ141内のエアピストン142を移動させないことから、ブラインドナットが後方に引き込まれず、締結操作が行われない、すなわち、浮締結がなされない。
【0008】
なお、特許文献1には、固着具がブラインドリベットである場合の固着締結装置も開示されている。
【0009】
【特許文献1】特開2005−46862号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示された固着締結装置は、トリガバルブ144とメカニカルバルブ145,145,145とが空気通路146に直列に設けられているため、圧縮空気は、トリガバルブ144とメカニカルバルブ145,145,145とを通過して、エアシリンダ141内のエアピストン142を作動させる。したがって、圧縮空気は、トリガバルブ144とメカニカルバルブ145,145,145とを通過する際に圧力損失が生じ、効率的にエアピストン142を移動させることができない。
【0011】
そこで、本発明は、固定具を斜めの状態や浮いた状態で被取付部材にかしめることがないだけでなく、効率的に作動させることができるかしめ工具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明にかかるかしめ工具は、ツールハウジングの先端側に装着され、固定具を取り付けるチャック機構と、ツールハウジングの中間部に内装され、前記チャック機構をスライドさせる引込機構と、該引込機構にエアを供給する管路と、該管路に接続されたトリガスイッチとが備えられているかしめ工具であって、固定具を被取付部材にかしめる際に後退するスライダが前記ツールハウジングの先端側に進退自在に配置され、後退したスライダを検知するプッシャスイッチが備えられ、該プッシャスイッチと前記トリガスイッチとがともにONされることによって前記引込機構を作動させる方向切換弁が前記管路に接続されていることを特徴としている。
【0013】
このかしめ工具によれば、後退したスライダを検知するプッシャスイッチとトリガスイッチとがともにONされることによって、方向切換バルブが引込機構を作動させるようにされているため、固定具が被取付部材に所期の状態でセットされたときのみ、固定具をかしめることができる。換言すれば、固定具が斜め向きの状態や浮いた状態など被取付部材に所期でない状態でセットされていると、プッシャスイッチがONされず、引込機構が作動しないことから固定具をかしめることができない。そして、方向切換弁がトリガスイッチやプッシャスイッチを介することなく、引込機構を直接作動させることにより、エアの圧力損失がなく、効率的に引込機構を作動させることができる。
【0014】
また、前記本発明に係るかしめ工具において、前記固定具は、一端に外向きのフランジ部を設けたブラインドナットであり、前記スライダは、チャック機構の先端側を突出させる穿孔部を先端部に設けたものであり、該先端部が被取付部材に当接してから後退することによって前記プッシャスイッチをONするようにされていることが好ましい。
【0015】
このかしめ工具によれば、ブラインドナットが被取付部材に所期の状態でセットされているときのみ、スライダが後退し、プッシャスイッチがONされるため、所期の状態にかしめることができ、斜め向きの状態や浮いた状態ではスライダが後退しないことから、プッシャスイッチがOFFのままとされ、ブラインドナットを被取付部材にかしめることがないようにすることができる。
【0016】
また、前記本発明に係るかしめ工具において、前記チャック機構は、ブラインドナットに螺合するマンドレルと、前記トリガスイッチがONされることによって作動するとともに、マンドレルを正・逆転させるエアモータとを備え、前記マンドレルを貫通させる貫通穴を形成した端部を有するヘッダが前記ツールハウジングの先端部に備えられ、前記スライダはヘッダを外嵌し、かつ、ヘッダの端部を露出させる穿孔部をブラインドナットのフランジ部の入る大きさに形成した筒状体とし、前記エアモータが正転し、ブラインドナットがマンドレルに螺合され、ブラインドナットの一端が前記スライダの穿孔部内で前記ヘッダの端部に当接すると、エアモータが一旦停止し、その後、前記スライダの先端部が被取付部材に当接して後退するようにされていることが好ましい。
【0017】
このかしめ工具によれば、チャック機構がマンドレルとエアモータとを備え、筒状体のスライダ内にマンドレルを貫通させる貫通穴を形成したヘッダが挿入されている。そして、スライダには、ヘッダ部の端部を露出させる穿孔部が形成され、この穿孔部がブラインドナットのフランジ部の入る大きさに形成されている。したがって、トリガスイッチがONされることによってエアモータが回転し、このエアモータの回転によってマンドレルにブラインドナットが螺合され、ブラインドナットがヘッダの方に進行し、スライダの穿孔部内でヘッダの端部に当接すると、エアモータが停止する。そして、ブラインドナットを被取付部材にセットし、スライダの端部が被取付部材に所期の状態で当接することにより、スライダが後退し、プッシャスイッチがONされ、ブラインドナットがかしめられる。このように、このかしめ工具は、ブラインドナットをマンドレルに螺合してからかしめるまでの操作を一連の作業として行うことができる。
【0018】
また、前記本発明に係るかしめ工具において、前記固定具は、ブラインドリベットであり、前記スライダは、チャック機構をカバーし、かつ、チャック機構に把持されたブラインドリベットを突出させる穿孔部を先端部に設けたものであり、該先端部が被取付部材に当接してから後退することによって前記プッシャスイッチをONするようにされていてもよい。
【0019】
このかしめ工具によれば、ブラインドリベットが被取付部材に所期の状態でセットされているときのみ、スライダが後退し、プッシャスイッチがONされるため、斜め向きの状態や浮いた状態になることなく、所期の状態でかしめることができる。
【0020】
また、前記本発明に係るかしめ工具において、前記プッシャスイッチは、スプリングオフセット式のエアスイッチであることが好ましい。
【0021】
このかしめ工具によれば、固定具をかしめた後、スライダがプッシャスイッチによって自動的に元の位置に復帰するようにすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、固定具を被取付部材にかしめる際に後退するスライダを検知するプッシャスイッチとトリガスイッチとがともにONされることによって、かしめることができるようにする方向切換バルブが管路に接続されていることにより、エアは圧力損失が生じることなく、引込機構を作動させ、固定具が斜め向きの状態や浮いた状態となることなく、効率的に所期の状態にかしめることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
〔実施形態1〕
固定具として、ブラインドナット3を使用するかしめ工具の一実施形態について図1ないし図4を参照しながら説明する。
【0024】
このかしめ工具は、図1及び図2に示すように、中空のツールハウジング1とハンドル2とを一体化したもので、ブラインドナット3を取り付けるチャック機構10と、このチャック機構10をスライドさせる引込機構20と、この引込機構20を作動させる作動機構30とを備えている。なお、ブラインドナット3の一端には、外向きのフランジ部3aが設けられている。
【0025】
チャック機構10は、先端側がツールハウジング1の先端から突出し、基端側がツールハウジング1内に収納されたマンドレル11と、管路40に接続されて正・逆回転させるエアモータ12と、マンドレル11の基端部とエアモータ12とを接続した回転ロッド13とを備えている。そして、マンドレル11には、ブラインドナット3を螺合するネジが形成されている。また、マンドレル11の中間部分が貫通する貫通穴19aを端部19bに設けたヘッダ19がツールハウジング1の先端部に備えられている。また、エアモータ12は、ツールハウジング1の後端部内に収納されている。
【0026】
そして、引込機構20は、油圧シリンダ21によって構成されている。油圧シリンダ21は、油圧室22と空気室23とに仕切る油圧ピストン24と、この油圧ピストン24と前記マンドレル11の基端部とを連結した管状のロッド25とを備えている。
【0027】
そして、作動機構30は、前記油圧室22に連通する油収容室31と、ハンドル2内に形成されたエアシリンダ32と、方向切換バルブを設けた図3に示す管路40とを備えている。エアシリンダ32は、油収容室31内を往復動するピストンロッド33と、このピストンロッド33を接続したエアピストン34とを備えている。エアピストン34によって、エアシリンダ32は管路40が接続される第1の空気室35と、油収容室31側の第2の空気室36とに仕切られる。
【0028】
そして、管路40は、図3に示すように、エア源44と前記エアモータ12との間に配管される第1の管路41と、この第1の管路41から分岐し、前記エアシリンダ32の第1の空気室35に接続される第2の管路42と、第2の管路42から分岐する第3の管路43を備えている。そして、第1の管路41には、トリガスイッチ37によって作動する常閉の2ポートの方向切換弁(以下、「第1のバルブ」という。)45と、エアモータ12の回転方向を切り替える方向切換弁(以下、「第2のバルブ」という。)46が設けられている。
【0029】
この第1と第2のバルブ45,46の間から第2の管路42が分岐している。第2の管路42には、第3の管路43を接続した方向切換弁(以下、「第3のバルブ」という。)47が接続されている。この第3のバルブ47には、図4に示すように、エア源44(図3参照)側の第1のポート47aと、エアシリンダ32の第1の空気室35(図3参照)に連通する第2のポート47bと、第3の管路43を接続する第3のポート47cと、排気マフラ47d(図3参照)に接続される第4のポート47eとを設けたシリンダ47fが備えられている。そして、シリンダ47f内には、第1のポート47aと第3のポート47cとを仕切る位置で移動するピストン47gが備えられている。
【0030】
また、前記ポート47a,47b,47eを連通・遮断するように、シリンダ47fは第2のポート47bを設けた部分が縮径され、シリンダ47fの縮径した部分と同じ外径とされた基端側のピストンロッド47i及び先端部のピストンロッド47jと、シリンダ47fの縮径した部分よりも径の小さな中間部のピストンロッド47kとを備え、基端側のピストンロッド47iとピストン47gとが接続されている。
【0031】
そして、シリンダ47f内は、ピストン47gによって第1のポート47a側の第1室47mと第3のポート47c側の第2室47nとに仕切られている。また、ピストン47gと基端側のピストンロッド47i内には、第1室47mと第2室47nとに連通する細管47pが設けられ、エア源44からのエアが第1のポート47aから細管47pを通って第3の管路43に供給されている。
【0032】
そして、ピストン47gの面積は、基端側のピストンロッド47iによって、ピストンロッド47iを設けた第1のポート47a側が狭く、第3のポート47c側が広くされている。この面積差によって、ピストン47gに加えられるエア圧に差が生じ、第3の管路43が閉鎖され、第3の管路内にエアが充満しているときに、第2室47nのエア圧が第1室47mのエア圧よりも大きくなり、図4(a)に示すように、基端側のピストンロッド47iがシリンダ47fの縮径した部分に位置し、第1のポート47aと第2のポート47bとを遮断する。
【0033】
しかし、第3の管路43内のエアが抜かれると、第1のポート47aからエアが供給されていることから、エア第2室47n内のエア圧よりも、第1室47m内のエア圧の方が高くなり、ピストン47gが図4(b)に示すように、第3のポート47c側に移動する。すると、基端側のピストンロッド47iがエアシリンダ47fの縮径した部分から外れ、中間部のピストンロッド47kがエアシリンダ47fの縮径した部分に位置し、第1のポート47aと第2のポート47bとが連通するようにされている。このとき、先端側のピストンロッド47jがエアシリンダ47fの縮径した部分に位置し、第2のポート47bと第4のポート47eとが遮断される。
【0034】
そして、図3に示すように、第3の管路43には、前記エアモータ12の正・逆転によって切り換えられる2ポートの方向切換弁(以下、「第4のバルブ」という。)48と、プッシャスイッチ38によって作動する常閉の2ポートの方向切換弁(以下、「第5のバルブ」という。)49とが設けられている。第4のバルブ48は、エアモータ12が回転しているときにポートが遮断され、エアモータ12が停止すると、ポートが連通するようにされている。
【0035】
そして、第5のバルブ49は、プッシャスイッチ38のON・OFFによって、第5のバルブ49のポートが連通・遮断するようにされている。したがって、第4のバルブ48と第5のバルブ49の各ポートが遮断されている状態においては、エアがエア源44から第3のバルブ47の第1のポート47a、細管47から第3の管路43内に供給され、充満することによって、第3のバルブ47のピストン47gが定常状態に位置するようにされている。また、第4のバルブ48と第5のバルブ49の各ポートが連通すると、第3の管路43内のエアが抜かれ、第3のバルブ47のピストン47gが移動するようにされている。
【0036】
そして、プッシャスイッチ38は、スプリングオフセット式のエアスイッチであり、図1及び図2に示すように、ツールハウジング1の先端部に取り付けられ、チャック機構10の先端側に配置されたスライダ39が後退することによってONするようにされている。
【0037】
スライダ39は、ツールハウジング1の先端部に進退自在に取り付けられ、そのため、マンドレル11が貫通するとともに、ブラインドナット3のフランジ部3aが入る大きさの穿孔部39aを設けたキャップ状の先端部39bと、この先端部39bからプッシャスイッチ38に対向するように突出した突片部39cとを一体成形して構成されている。このスライダ39は、前記ヘッダ19を外嵌し、ヘッダ19の端部19bがスライダ39の穿孔部39aから露出している。
【0038】
このかしめ工具は、このように構成され、次に、使用方法について説明する。まず、トリガスイッチ37をONし、エアモータ12を正転させ、マンドレル11を回転させることによって、マンドレル11にブラインドナット3を螺合する。このとき、第3の管路43は、第4のバルブ48によって遮断されている。したがって、エアがエア源44から第3のバルブ47の第1のポート47a、細管47h、そして第3のポート47cを通過して、第3の管路43内に供給され、充満した状態となっている。この状態においては、図4(a)に示すように、エアは第3のバルブ47の第1室47mにも供給されるが、ピストン47gの面積差によって第2室47nのエア圧が第1室47mのエア圧よりも大きくなり、基端側のピストンロッド47iがエアシリンダ47fの縮径した部分に位置し、第3のバルブ47は第1のポート47aと第2のポート47bとが遮断されている。
【0039】
また、スライダ39が移動して、プッシャスイッチ38がONされ、第5のバルブ49のポートが連通したとしても、第4のバルブ48のポートが遮断されているため、第3の管路43内には、エアが充満された状態を維持する。したがって、第3のバルブ47は図4(a)に示すように、第1のポート47aと第2のポート47bとが遮断されたままとなる。
【0040】
このように第3のバルブ47の第1のポート47aと第2のポート47bとが遮断されていると、エアが第2の管路42からエアシリンダ32の第1の空気室35内に供給されず、エアピストン34及び油圧シリンダ21の油圧ピストン24は移動しない。
【0041】
そして、ブラインドナット3は、マンドレル11が回転することにより、次第にスライダ39の方へ移動する。そして、ブラインドナット3がスライダ39の穿孔部39a内でヘッダ19の端部19aに当接すると、エアモータ12が停止し、第4のバルブ48が作動することによって、第4のバルブ48のポートが連通する。その後、ブラインドナット3を被取付部材5の取付穴内にセットし、スライダ39を被取付部材5に当接させる。
【0042】
スライダ39の先端部39bが被取付部材5に斜め向きの状態で当接し、あるいは被取付部材5から浮いた状態となっていると、スライダ39は後退しないため、プッシャスイッチ38がONされず、第5のバルブ49のポートが遮断されたままとなるため、第3の管路43内は前記のようにエアが充満された状態を維持する。したがって、第3のバルブ47は図4(a)に示すように、第2の管路42を遮断したままとし、エアが第2の管路42からエアシリンダ32の第1の空気室35内に供給されないことから、エアピストン34及び油圧シリンダ21の油圧ピストン24は移動しない。このため、ブラインドナット3は、斜め向きの状態や浮いた状態など所期でない状態でセットされると、マンドレル11が引き込まれず、不良な状態でかしめられない。
【0043】
しかし、スライダ39が被取付部材5に所期の状態で当接すると、スライダ39は後退し、プッシャスイッチ38がONされる。すると、第5のバルブ49のポートが連通し、また、エアモータ12の停止によって第4のバルブ48のポートが連通していることから、第3の管路43内に充満していたエアが抜かれる。すると、第3のバルブ47は図4(b)に示すように、ピストン47gが作動し、第1のポート47aと第2のポート47bとが連通し、第2のポート47bと第5のポート47eとが遮断される。
【0044】
そして、第2の管路42内からエアシリンダ32の第1の空気室35内にエアが供給され、エアピストン34が移動し、このピストンロッド33によって油収容室31及び油圧室22内の油によって油圧シリンダ21の油圧ピストン24が移動する。すると、マンドレル11が後退し、ブラインドナット3は引き込まれることによって、かしめられ、図2に示すように、所期のバルビング部3bが形成される。
【0045】
その後、第2のバルブ46を切り替えることによって、エアモータ12を逆転させ、マンドレル11をブラインドナット3から外す。また、エアモータ12の逆転によって、第4のバルブ48が作動し、第3の管路43が遮断される。すると、第3の管路43内にエアが充満した状態となり、第3のバルブ47のピストン47gが作動し、図4(a)に示すように第2の管路42からエアシリンダ32の第1の空気室35内にエアが供給されなくなる。
【0046】
そして、油圧シリンダ21の油圧ピストン24が元の位置に戻り、油圧室22及び油収容室31内の油が移動することにより、エアシリンダ32のエアピストン34も元の位置に戻る。また、スライダ39がスプリングオフセット式のエアスイッチであるプッシャスイッチ38によって被取付部材5から離間し、プッシャスイッチ38がOFFされ、第5のバルブ49のポートが遮断される。このようにして一連の作業が終了する。
【0047】
なお、前記の実施形態におけるブラインドナット3用のかしめ工具では、ブラインドナット3をマンドレル11に取り付ける作業から行えるようにしたが、本発明のかしめ工具は、この作業を省略することもできる。
【0048】
この場合のかしめ工具は、第2のバルブ46と第4のバルブ48が省略される。そして、手作業によって、ブラインドナット3をマンドレル11に螺合した後、ブラインドナット3を被取付部材5にセットする。ブラインドナット3が斜め向きの状態や浮いた状態でセットされると、スライダ39が移動しないことから、プッシャスイッチ38がONされず、第3のバルブ47が作動しない。したがって、エアは、第2の管路42内を流れず、トリガスイッチ37がONされてもエアシリンダ32の第1の空気室35内に供給されない。このようにして、ブラインドナット3は不良な状態でかしめられないようにすることができる。
【0049】
また、ブラインドナット3が所期の状態で被取付部材5にセットされると、スライダ39が移動し、プッシャスイッチ38がONされる。すると、前記のように、第3のバルブ47が作動し、エアが第2の管路42からエアシリンダ32の第1の空気室35内に供給され、マンドレル11が後退することによって、ブラインドナット3を良好な状態でかしめることができる。
【0050】
〔実施形態2〕
固定具として、ブラインドリベットを使用する工具の一実施形態について図5ないし図7を参照しながら説明する。
【0051】
このかしめ工具も、第1の実施形態と同様、中空のツールハウジング1とハンドル2とを一体化したもので、ブラインドリベット4を取り付けるチャック機構10と、このチャック機構10をスライドさせる引込機構20と、この引込機構20を作動させる作動機構30とを備えている。
【0052】
そして、チャック機構10は、ツールハウジング1の先端に取り付けられたノズル14と、ツールハウジング1内で往復動する筒状のジョーケース15と、ジョーケース15の一端部内に内装され、リベットピン(ブラインドリベット)4を把持するジョー16とで構成されている。
【0053】
そして、引込機構20は、第1の実施形態と同様、油圧シリンダ21によって構成されるが、この油圧シリンダ21の後端部に、リベット締結後に分離されたピンを回収する有底筒状の回収体26が設けられている。
【0054】
そして、作動機構30は、第1の実施形態と同様、前記油圧室22に連通する油収容室31と、ハンドル2内に形成されたエアシリンダ32と、方向切換バルブを設けた管路50とによって構成されるが、管路50は図7に示すように、エア源53とエアシリンダ32の第1の空気室35とを接続する第1の管路51と、第1の管路51から分岐する第2の管路52を備えている。
【0055】
第1の管路51には、実施形態1において説明した第3のバルブ47と同じ構成の3ポートの方向切換弁(以下、「第1のバルブ」という。)54が設けられている。第2の管路52は、第1のバルブ54の第3のポート47cに接続され、トリガスイッチ37によって作動する常閉の2ポートの方向切換弁(以下、「第2のバルブ」という。)55と、プッシャスイッチ38によって作動する常閉の2ポートの方向切換弁(以下、「第3のバルブ」という。)56とが設けられている。
【0056】
プッシャスイッチ38は、スプリングオフセット式のエアスイッチであり、図5及び図6に示すように、ツールハウジング1の先端部に取り付けられ、チャック機構10の先端側に配置されたスライダ39が後退することによってONするようにされている。スライダ39は、筒状部39d及び先細りのテーパ部39eによってツールハウジング1の先端側をカバーするように形成され、筒状部39dの後端にプッシャスイッチ38と対向するように突出した突片39fが設けられ、さらにテーパ部39eの先端部の中心にブラインドリベット4を貫通させる穿孔部39gが設けられている。
【0057】
このかしめ工具は、このように構成され、次に、使用方法について説明する。まず、トリガスイッチ37がONされ、第2のバルブ55のポートが連通しても、ブラインドリベット4が斜め向きの状態や浮いた状態など所期でない状態でセットされると、スライダ39が移動しないことから、プッシャスイッチ38がONされず、第3のバルブ55のポートは遮断し続ける。
【0058】
したがって、第2の管路52内にはエアが充満された状態を維持することから、第1のバルブ54の第1のポート54aと第2のポート54bとが遮断された状態を維持し、エアが第1の管路51からエアシリンダ32の第1の空気室35内に供給されないことから、エアピストン34及び油圧シリンダ21の油圧ピストン24は移動しない。したがって、ジョー16は後退せず、ブラインドリベット4は、引き込まれないことから、斜め向きの状態や浮いた状態でかしめられない。
【0059】
なお、スライダ39が移動し、プッシャスイッチ38がONされても、トリガスイッチ37がOFFされていると、第2の管路52内をエアが流れないことから、第1のバルブ54の第1のポート54aと第2のポート54bとは遮断された状態を維持し、エアが第1の管路51からエアシリンダ32の第1の空気室35内に供給されず、同様にジョー16が引き込まれないことから、ブラインドリベット4はかしめられない。
【0060】
そして、ブラインドリベット4が所期の状態で被取付部材5にセットされると、スライダ39が移動し、プッシャスイッチ38がONされることにより、第3のバルブ56が作動する。このスライダ39の移動の前又は後でトリガスイッチ37がONされ、第2のバルブ55が作動し、第2のバルブ55のポートが連通し、エアが第2の管路52内から抜けることにより、第1のバルブ54が作動し、第1のバルブ54の第1のポート54aと第2のポート54bとが連通し、エアが第1の管路51からエアシリンダ32の第1の空気室35内に供給され、エアピストン34が移動し、ピストンロッド33によって油収容室31及び油圧室22内の油が油圧シリンダ21の油圧ピストン24が移動させる。すると、ジョー16が引き込まれ、ブラインドリベット4が所期の状態にかしめられる。
【0061】
そして、トリガスイッチ37が解除されることによって、第2のバルブ55のポートが遮断され、第2の管路52にエアが流れなくなることにより、第1のバルブ54が作動し、第1の管路51のポートが遮断され、エアが第1の管路51からエアシリンダ32の第1の空気室35内に供給されなくなる。すると、エアピストン34及び油圧ピストン24が元の位置に戻る。また、分断されたピンが回収体26内に回収される。
【0062】
なお、本発明は、前記の実施形態に限定することなく種々変更することができる。本発明は、プッシャスイッチ38とトリガスイッチ37とがともにONされたときに、引込機構20を作動させることを要旨としており、チャック機構10、引込機構20、作動機構30は汎用されているものに置換することができる。また、プッシャスイッチ38は、スプリングオフセット式でなく、別途、スプリングなどによってスライダ39を初期の位置に戻るようにしてもよい。
【0063】
さらに、プッシャスイッチ38は、複数のスイッチ(図示せず)を直列に接続したものとしてもよい。すなわち、プッシャスイッチ38は、実施形態1における第5のバルブ49又は実施形態2における第3のバルブ56を作動させるスイッチ(以下、「第1のスイッチ」という。)と、スライダに取り付けられる複数(好ましくは3個以上)のスイッチ(以下、「第2のスイッチ」という。)とを直列に接続したものとしてもよい。
【0064】
この場合のスライダ39は、チャック機構の先端側の周囲であって、チャック機構の移動方向と並行に配置される複数のロッド(図示せず)によって構成される。各ロッドは、独立して進退自在とされる。そして、各ロッドに前記第2のスイッチが取り付けられ、ロッドが後退することによってプッシャスイッチがONとなるようにされている。
【0065】
したがって、全ての第2のスイッチがONされたときのみ、第1のスイッチがONされ、実施形態1における第5のバルブ49又は実施形態2における第3のバルブ56が作動する。プッシャスイッチ38をこのようにすることにより、固定具3,4が傾斜姿勢のときに、かしめられないようにする操作を一層確実にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】ブラインドナットをかしめるための本発明に係るかしめ工具の一実施形態であって、使用前の状態を示す断面正面図である。
【図2】ブラインドナットをかしめるための本発明に係るかしめ工具の一実施形態であって、使用中の状態を示す正面断面図である。
【図3】ブラインドナットをかしめるための本発明に係るかしめ工具の一実施形態を示す管路図である。
【図4】ブラインドナットをかしめるための本発明に係るかしめ工具を構成している方向切換弁の一実施形態であって、(a)は定常状態の概略断面図、(b)は作動時の概略断面図である。
【図5】ブラインドリベットをかしめるための本発明に係るかしめ工具の一実施形態であって、使用前の状態を示す断面正面図である。
【図6】ブラインドリベットをかしめるための本発明に係るかしめ工具の一実施形態であって、使用中の状態を示す断面正面図である。
【図7】ブラインドリベットをかしめるための本発明に係るかしめ工具の一実施形態を示す管路図である。
【図8】従来のかしめ工具の一例である固着締結装置を示す断面正面図である。
【符号の説明】
【0067】
1………ツールハウジング
3………ブラインドナット
3a……フランジ部
4………ブラインドリベット
5………被取付部材
10……チャック機構
11……マンドレル
12……エアモータ
19……ヘッダ
19a…貫通穴
20……引込機構
30……作動機構
37……トリガスイッチ
38……プッシャスイッチ
39a…穿孔部
39g…穿孔部
40……管路
49……方向切換弁(第5のバルブ)
50……管路
56……方向切換弁(第2のバルブ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツールハウジングの先端側に装着され、固定具を取り付けるチャック機構と、ツールハウジングの中間部に内装され、前記チャック機構をスライドさせる引込機構と、該引込機構にエアを供給する管路と、該管路に接続されたトリガスイッチとが備えられているかしめ工具であって、
固定具を被取付部材にかしめる際に後退するスライダが前記ツールハウジングの先端側に進退自在に配置され、後退したスライダを検知するプッシャスイッチが備えられ、該プッシャスイッチと前記トリガスイッチとがともにONされることによって前記引込機構を作動させる方向切換弁が前記管路に接続されていることを特徴とするかしめ工具。
【請求項2】
前記固定具は、一端に外向きのフランジ部を設けたブラインドナットであり、
前記スライダは、チャック機構の先端側を突出させる穿孔部を先端部に設けたものであり、該先端部が被取付部材に当接してから後退することによって前記プッシャスイッチをONするようにされていることを特徴とする請求項1に記載のかしめ工具。
【請求項3】
前記チャック機構は、ブラインドナットに螺合するマンドレルと、前記トリガスイッチがONされることによって作動するとともに、マンドレルを正・逆転させるエアモータとを備え、
前記マンドレルを貫通させる貫通穴を形成した端部を有するヘッダが前記ツールハウジングの先端部に備えられ、前記スライダはヘッダを外嵌し、かつ、ヘッダの端部を露出させる穿孔部をブラインドナットのフランジ部の入る大きさに形成した筒状体とし、前記エアモータが正転し、ブラインドナットがマンドレルに螺合され、ブラインドナットの一端が前記スライダの穿孔部内で前記ヘッダの端部に当接すると、エアモータが一旦停止し、その後、前記スライダの先端部が被取付部材に当接して後退するようにされていることを特徴とする請求項2に記載のかしめ工具。
【請求項4】
前記固定具は、ブラインドリベットであり、
前記スライダは、チャック機構をカバーし、かつ、チャック機構に把持されたブラインドリベットを突出させる穿孔部を先端部に設けたものであり、該先端部が被取付部材に当接してから後退することによって前記プッシャスイッチをONするようにされていることを特徴とする請求項1に記載のかしめ工具。
【請求項5】
前記プッシャスイッチは、スプリングオフセット式のエアスイッチであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のかしめ工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−5686(P2010−5686A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−170486(P2008−170486)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000232830)株式会社ロブテックス (21)