説明

かばん

【課題】かばんに肩掛けベルトと取っ手を併設し、その肩掛けベルトと取っ手を併用可能となし、併用したときにその両者に支持荷重が分散されるようにして重たいかばんの携行性を高めることを課題としている。
【解決手段】同一かばんに肩掛けベルト3と取っ手4を併用可能に併設し、その肩掛けベルト3と取っ手4の少なくとも一方(図は肩掛けベルト3)に、支持荷重の変化に応じて伸縮する弾性体で形成された伸縮部5を設け、肩掛けベルト3と取っ手4を併用し、取っ手4を掴んだ手を伸ばした状態で伸縮部5が伸びて支持荷重が肩掛けベルト3と取っ手4に分散されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、肩掛けベルト(ショルダーストラップ)と取っ手を併設したかばん、詳しくは、肩掛けベルトと取っ手を併用でき、併用時に支持荷重が肩掛けベルトと取っ手の両方に分散されて使用者の負担が軽減される携行性に優れたかばんに関する。
【背景技術】
【0002】
所謂ノートパソコンなどをかばんに入れて持ち歩く人が近年増えている。かばんには手提げ用の取っ手がついているが、重たい物品を収容して重量が大きくなったかばんを手に提げて持ち歩くのは使用者にとって大変に負担のかかることである。その負担を軽減するために、かばんを肩に掛けて持ち運ぶことが多くなっている。そのような使用を可能ならしめるために、肩掛けベルトと取っ手を併設したかばんが市場に広く出回っている。
【0003】
しかしながら、この種のかばんは、肩掛けベルトと取っ手のどちらか一方を選択的に使用するようにしており、両方を併用する(同時に使用する)ものは見当たらない。肩掛けベルトと取っ手を違和感なく併用できればその両者で荷重を分散して受けることができ、重たいかばんを持ち歩くときに便利であるが、肩掛けベルトと取っ手を併設した従来のかばんでは、その要求に応えられない。
【0004】
従来のかばんも、肩掛けベルトと取っ手の併用ができない訳ではないが、ベルトを肩に掛けた状態で取っ手を掴んでかばんを持ち上げると、ベルトが緩んで肩からずり落ち、荷重が取っ手のみに加わる。また、ベルトにも荷重が加わるようにしようとすると、腕を曲げて取っ手を掴んだ手の高さを調節する必要があり、使用者の負担がむしろ増加する。
【0005】
一般な肩掛けベルトは、長さ調節はできるが、伸縮性はない。そのようなありふれた肩掛けベルトと取っ手を併用したかばんは、支持荷重を肩掛けベルトと取っ手に分散させる機能を有していない。
【0006】
ここで、伸縮性のあるベルトを使用したバッグが、例えば、下記特許文献1〜3に開示されている。特許文献1は、ベルトの一部を伸縮性のある緩衝体で形成して使用者の肩に掛かるゴルフバッグの重量の衝撃を緩和することを述べている。また、特許文献2は、
背負いバンドの上端をリュックサック本体に伸縮自在の弾性体を介して接続することでリュックサックをバランス良く背負えるようにする技術を、特許文献3は、ランドセルの背当て部の上部に弾性部材を介して肩掛けベルトを連結し、弾性部材の作用でランドセルの使用時の重心のずれを抑制する技術をそれぞれ開示している。
【0007】
しかしながら、これらの特許文献に開示されたバッグ類は、肩掛けベルトと取っ手を併用する思想を持ち合わせていない。特許文献1のゴルフバッグは、肩掛けベルトと取っ手を併設しているが、その2者を併用することは構造的に難しいものになっている。また、特許文献2、3が開示しているリュックサックやランドセルには取っ手が存在しない。
【特許文献1】特開平8−89608号公報
【特許文献2】特開2002−28027号公報
【特許文献3】特開2004−81802号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
冒頭で述べたように、近年は、ノートパソコンなどをかばんに入れて携行する人が増加しており、持ち歩くかばんの重量が大きくなる傾向にある。その重量の大きいかばんを腕だけ、或いは肩だけで支えると、疲労しやすく、長時間の持ち歩きができない。
そこで、この発明は、併設した肩掛けベルトと取っ手を併用可能となし、併用したときにその両者に支持荷重が分散されるようにして重たいかばんの携行性を高めることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、この発明においては、同一かばんに肩掛けベルトと取っ手を併用可能に併設し、その肩掛けベルトと取っ手の少なくとも一方に、支持荷重の変化に応じて伸縮する弾性体で形成された伸縮部を設けた。
【0010】
前記伸縮部は、肩掛けベルト、取っ手のどちらか一方にあれば荷重分散の目的が達成されるが、肩掛けベルト、取っ手の両方に設けることも制限されない。
【0011】
その伸縮部を肩掛けベルトに設けるかばんは、伸縮性の無い補助ベルトを前記伸縮部と並列配置にして設け、その補助ベルトの長さが前記伸縮部の自由時長さと同一又は自由時の長さよりも短く、この補助ベルトが着脱自在又は切り離し自在の連結部を有している構造にしてもよい。
【0012】
また、取っ手はかばん本体の側部に設けてもよい。この場合の取っ手は、伸縮部の有るもの、無いもののどちらであってもよい。取っ手に伸縮部の無いかばんは、肩掛けベルトの伸縮部によって発明の目的が達成される。
【発明の効果】
【0013】
この発明のかばんは、肩掛けベルトと取っ手を併用可能に併設しているので、肩掛けベルトを肩に掛け、その状態で使用者が取っ手を掴むことができる。また、肩掛けベルトと取っ手の少なくとも一方が弾性体で形成された伸縮部を有しており、その伸縮部が支持荷重の変化に応じて伸縮して支持荷重が肩掛けベルトと取っ手に分散される。また、その荷重分散によって肩掛けベルトの弛みとその弛みによる肩からのずり落ちも防止され、腕と肩の両方による支持状態が維持される。これらの作用によって腕と肩の負担が軽減され、使用者の疲労が少なくなってかばんを長時間持ち歩くことが可能になる。
【0014】
このかばんは、肩掛けベルトと取っ手の荷重分担比率をほぼ半々にすると肩と腕の負担が平均化される。その荷重分担比率は、伸縮部を形成する弾性体の力を変えて調整することができる。
【0015】
なお、肩掛けベルトに伸縮部を設け、さらに、その伸縮部と並列配置にして伸縮性の無い補助ベルトを設けたものは、伸縮部の伸縮を必要に応じて補助ベルトで止めることができる。この補助ベルトを有するものは、伸縮部と補助ベルトの使用状態を切り替える(どちらかを選択的に使用する)ために、補助ベルトの長さを伸縮部の自由時長さと同一又は自由時長さよりも短くし、さらに、この補助ベルトを着脱自在又は切り離し自在となす連結部を備えさせる。
【0016】
また、取っ手をかばん本体の上部に設けたかばんは、取っ手を掴んだ腕を伸ばしたときに本体部が腰よりも下に吊り下げられた状態になるが、取っ手をかばん本体の側部に設けたかばんは、取っ手の位置が下がった分本体部が相対的に上に来るので、かばんのサイズが大きくても手で下げたときの位置が低くなりすぎることが無く、吊り下げた位置が低すぎて持ち運びがし辛くなるという問題が起こらない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明のかばんの実施の形態を添付図面の図1〜図9に基づいて説明する。図1及び図2はこの発明のかばんの第1実施形態を示している。このかばん1は、肩掛けベルト3と取っ手4を併設してなる。
【0018】
かばん本体2は、スライドファスナーや錠で口を開閉するアタッシュケースやスーツケースタイプのもの、留め金のついたフラップで口を閉じるものなど任意の形式のものでよい。ノートパソコンなどを収納するものは箱型の保護効果の高いものが好ましいが、収納する物品によっては柔らかい布や皮革などで形成することも考えられる。
【0019】
肩掛けベルト3は、弾性体で形成される伸縮部5を長手途中に設けたものを使用している。例示の肩掛けベルト3は、両端にフック6を取り付け、そのフック6をかばん本体2に設けた吊輪7に着脱自在に掛ける構造にしているが、両端をかばん本体2に着脱不可に取り付けても構わない。この肩掛けベルト3は、長さ調節金具8などを設けて長さを調節できるようにしたものが好ましい。長さ調節金具8は市販の肩掛けベルトに採用されているようなものでよい。その長さ調節金具8による長さ調節は、図に示すものはベルトの非伸縮部の長さを変化させて行うが、伸縮部5の長さを変化させて行うこともできる。
【0020】
滑り止めと肩の保護のためにゴム製の肩当てパッド9を備えさせるのも好ましい。その肩当てパッド9は、ベルト上でスライド可能となしてベルトの長さ調節後も肩位置にフィットさせられるようにしておく。
【0021】
伸縮部5は、肩掛けベルト3の肩掛け部(肩当てパッド9を取り付けた部分)から外れた位置に設けると好ましく、図のように、その伸縮部5を肩掛けベルト3の両端付近の2箇所に設けると、伸縮部5の伸びによるベルトの長さ変化が肩掛け部の両側で平均的に起こって吊り下げたかばんのバランスを保ち易い。
【0022】
その伸縮部5は、ゴムベルトからなるものが加工し易く、体裁も良くてコスト面でも有利と思われるが、金属製の板ばねやコイルスプリング、ゴム紐など伸縮できる弾性体であればよい。傷つき易いゴムベルトやゴム紐で形成した伸縮部5は、その伸びを許容するカバー、例えば、余長や伸縮性のある布製の筒や樹脂製の蛇腹などで覆って保護すると好ましく、カバーがあると外観も良くなる。板ばねやコイルスプリングなども露出する場合にはカバーで覆うと好ましい。このときのカバーは外観を向上させられるものであればよく、保護機能は特に必要としない。
【0023】
このように構成したかばん1は、肩掛けベルト3を使用して肩に吊り下げる。このとき、かばん本体2の重量によって伸縮部5が重量に応じた位置まで伸びる。その伸びが止った位置で、図2(a)に示すように、伸ばした腕の手のひらよりも取っ手4が少し下になるように肩掛けベルト3の長さを予め調整しておく。この図2(a)の位置からかばん本体2を多少引き上げて図2(b)に示すように取っ手4を手で掴む。これにより、支持荷重が肩掛けベルト3と取っ手4に分散され、腕と肩の負担が軽減される。また、使用者は腕を伸ばし切った自然な姿勢になるので、疲れ難い。さらに、肩掛けベルト3も荷重を受けているので、この肩掛けベルト3が弛んで肩からずり落ちることがない。このために、重量のあるかばん1を長時間持ち歩くことが可能になる。
【0024】
なお、かばんの重量が例えば10kgあった場合、約5kgの荷重で伸縮部5が伸びるようにしておくとかばんの重量が肩と手にほぼ半々に分散されて加わり、かばんの持ち歩きが従来品に比べると格段に楽になる。
【0025】
図3、図4は、他の実施形態である。伸縮部5は、図3、図4に示すように、取っ手4に設けてもよい。図3のかばん1は、取っ手4を本体部2の側部に、また、図4のかばん1は、取っ手4を本体部2の上部にそれぞれ設けている。いずれのかばんも、取っ手4を手で掴み、同時に肩掛けベルト3でかばん1を肩に吊り下げる。このとき、取っ手4を本体部2の側部に設けた図3のかばん1は、図4のかばんに比べて全体が持ち上がった状態になり、かばんのサイズが大きくても吊り下げた位置が低くなりすぎることが無い。そのため、かばんの位置が低すぎて持ち運びがし辛いという問題が起こらない。この図3、図4のかばんも、肩掛けベルト3と取っ手4に荷重が分散されて加わり、そのために使用者の疲労が少なく、長時間持ち歩ける。
【0026】
取っ手4に設ける伸縮部5も、ゴムベルト、金属製の板ばね、コイルスプリング、ゴム紐などの弾性体で形成する。この場合も、伸縮部5は、それが荷重を受けて伸びた状態で取っ手4を水平に保って持ち易くするために、図5〜図8に示すように、掴み部の両側に設けるのがよい。図5、図7に示すように、その伸縮部5は、外から見える位置に設けてもよく、また、図6、図8に示すように、かばんの表皮2aなどに覆い隠される位置に設けてもよい。外から見える位置に設ける伸縮部5は、伸縮を許容するカバーで覆うと体裁が良くなって好ましい。
【0027】
図9は、この発明のかばんのさらに他の実施形態を示している。この図9のかばん1は、肩掛けベルト3の一端側に伸縮部5と伸縮性の無い補助ベルト10を並列配置にして設けたものであって、補助ベルト10は、切り離し自在の連結部11を有している。図の連結部11は、プラグに設けた逆止爪が弾性変形してソケットに差込まれ、差込み終点で弾性復元してソケットに係止し、その係止状態が両側から逆止爪を摘んで弾性変形させることによってワンタッチで解除される普及品の樹脂製ジョイントで形成され、補助ベルト10の長手途中を切り離すものになっているが、フックなどによる連結部を補助ベルト10の両端に設けて補助ベルト10の全体を着脱自在となしてもよい。
【0028】
この補助ベルト10の長さを伸縮部5の自由時長さと同一長さ、又は自由時長さよりも短くして補助ベルト10を使用すると、伸縮部5の伸縮が補助ベルト10に規制されて止まる。また、補助ベルト10を取り外し又は切り離すと伸縮部5が機能する。
【0029】
なお、補助ベルト10と伸縮部5は、ベルトの肩掛け部を間にした両側にそれぞれ並列配置にして設けることもできる。
【0030】
また、長さ調節金具8によるベルトの長さ調節は、伸縮部5の位置で行うこともできる。図9の肩掛けベルト3は、伸縮部5をゴムベルトで形成し、そのゴムベルトの長さを長さ調節金具8を用いて調節可能にしており、ゴムベルトの着け外しも可能になっている。そのため、ゴムベルトを強度の異なるものに交換することができ、肩掛けベルト3の負担荷重の調整が容易に行える。
【0031】
このほか、伸縮部5を肩掛けベルトと取っ手の両方に設けることもできる。このときの取っ手側の伸縮部は、伸び量があまり大きくならないものがよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明のかばんの第1実施形態を示す側面図
【図2】(a)図1のかばんを肩掛けベルトで支持した状態の模式図、(b)図1のかばんを肩掛けベルトと取っ手を併用して支持した状態の模式図
【図3】この発明のかばんの他の実施形態を示す側面図
【図4】この発明のかばんのさらに他の実施形態を示す側面図
【図5】図3のかばんの本体部側面の取っ手を拡大して示す図
【図6】本体部側面の取っ手の伸縮部を表面シートの裏側に設けた図
【図7】図4のかばんの本体部上部の取っ手を拡大して示す図
【図8】本体部の上部取っ手の伸縮部を表面シートの裏側に設けた図
【図9】この発明のかばんのさらに他の実施形態を示す側面図
【符号の説明】
【0033】
1 かばん
2 かばん本体
2a 表皮
3 肩掛けベルト
4 取っ手
5 伸縮部
6 フック
7 吊り輪
8 長さ調節具
9 肩当パッド
10 補助ベルト
11 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肩掛けベルト(3)と取っ手(4)を併用可能に併設し、その肩掛けベルト(3)と取っ手(4)の少なくとも一方に、支持荷重の変化に応じて伸縮する弾性体で形成された伸縮部(5)を設けたかばん。
【請求項2】
肩掛けベルト(3)と取っ手(4)を併用可能に併設し、前記肩掛けベルト(3)に、支持荷重の変化に応じて伸縮する弾性体で形成された伸縮部(5)を設けたかばん。
【請求項3】
伸縮性の無い補助ベルト(10)を前記伸縮部(5)と並列配置にして肩掛けベルト(3)に設け、その補助ベルト(10)の長さが前記伸縮部(5)の自由時長さと同一又は自由時長さよりも短く、この補助ベルト(10)が着脱自在又は切り離し自在の連結部(11)を有している請求項2に記載のかばん。
【請求項4】
肩掛けベルト(3)と取っ手(4)を併用可能に併設し、前記取っ手(4)に支持荷重の変化に応じて伸縮する弾性体で形成された伸縮部(5)を設けたかばん。
【請求項5】
前記取っ手(4)をかばん本体(2)の側部に設けた請求項1〜4のいずれかに記載のかばん。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−181612(P2007−181612A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−2673(P2006−2673)
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【出願人】(505194262)有限会社IMP (7)