説明

がん予後診断アッセイ

本発明は、診断未確定のがん罹患のより大きなリスクを有する対象を特定し、および/またはがん発症のより大きなリスクがある対象を特定する、がんをもつ対象の予後診断の方法であって、対象からの試料における遊離軽鎖(FLC)の量を検出することを含む方法であって、FLCのより高い量が、がんに起因する生存の減少、ならびに/または診断未確定の癌を有する対象および/もしくはがん発症のリスクが増加した対象のリスクの増加と関連する、方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断未確定のがん罹患のより大きなリスクを有する対象を特定し、および/またはがん発症のリスクがある対象を特定する、がんをもつ対象の予後診断の方法に関する。該がんは、典型的に、肺、結腸直腸、小腸、食道または膵臓(LCBOP)のがんなどの炎症誘発性のがんである。
【背景技術】
【0002】
出願人らは、患者の広範なモノクローナルガンマグロブリン血症についてアッセイをする方法として、遊離軽鎖を長年にわたって研究してきた。そのような遊離軽鎖を診断に使用することについては、書籍「血清遊離軽鎖分析(Serum Free Light Chain Analysis)第5版(2008年)A.R.Bradwellら、ISBN0704427028に詳しく説明されている。
【0003】
抗体は、重鎖および軽鎖からなる。それらは通常、二重対称(two‐fold symmetry)で、2つの同一の重鎖および2つの同一の軽鎖で構成され、各々、可変および定常領域を含有する。各々の軽鎖/重鎖対の可変領域は、組み合わさって抗原結合部位を形成し、両鎖が抗体分子の抗原結合特異性に寄与する。軽鎖には、κおよびλの2つのタイプがあり、どの抗体分子も、いずれか一方の軽鎖を用いて作られ、両方が用いられることはない。ヒトでは、λ分子より約2倍多くのκ分子が作られるが、これが異なる哺乳類もいる。通常は、軽鎖は重鎖に結合している。しかしながら、幾つかの結合していない「遊離軽鎖」が人々の血清または尿中で検出できる。遊離軽鎖は、通常、軽鎖が重鎖に結合することによって隠れている遊離軽鎖の表面に対する抗体を作ることによって特異的に識別しうる。遊離軽鎖(FLC)では、この表面が露出され、それを免疫的に検出できる。κまたはλ遊離軽鎖検出用の市販のキットとしては、例えば、英国バーミンガム、バインディングサイトリミテッド(Binding Site Limited)社製の「フリーライト(Freelite)(商標)」が挙げられる。出願人らは、遊離κ/遊離λ比率の量を測定することが患者におけるモノクローナルガンマグロブリン血症の診断の一助となることを以前に見いだしている。それは、例えば、完全型免疫グロブリン多発性骨髄腫(MM)、軽鎖MM、非分泌MM、ALアミロイドーシス、軽鎖沈着症、くすぶり型MM、形質細胞腫およびMGUS(意義不明のモノクローナル免疫グロブリン血症)の診断における一助として使用されてきた。また、FLCの検出は、例えば他のB細胞疾患の診断の補助として、実際にモノクローナルガンマグロブリン血症一般の診断のために、尿ベンスジョーンズタンパク質分析の代替物として使用されてきた。
【0004】
従来は、λまたはκ軽鎖の1つの増加およびその結果としての異常な比率を求めた。例えば、多発性骨髄腫は悪性形質細胞のモノクローナル増殖に起因し、単一のタイプの免疫グロブリンを産生する単一のタイプの細胞の増加をもたらす。これは、個体内で観察される、λまたはκいずれか遊離軽鎖の量の増加となる。この濃度の増加を測定し、通常は遊離κの遊離λに対する比率をもとめ、正常範囲と比較する。これはモノクローナル疾患の診断の一助となる。さらに、遊離軽鎖アッセイはまた患者の疾患の治療後にも使用しうる。例えば、ALアミロイドーシスに対する治療後の患者の予後診断を実施しうる。
【0005】
Katzmanら(Clin. Chem. (2002); 48(9): 1437-1944)は、モノクローナルガンマグロブリン血症の診断における遊離κおよび遊離λ免疫グロブリンに関する血清基準範囲および診断範囲を考察している。21〜90才の人々を免疫アッセイによって調査し、免疫固定によって得た結果と比較し、B細胞疾患をもつ人々におけるモノクローナル遊離軽鎖(FLC)を検出するための免疫アッセイを最適化した。
【0006】
κおよびλFLCの量およびκ/λ比率を記録し、B細胞疾患の検出を目的として基準範囲を確定することができた。
【発明の概要】
【0007】
今回、出願人らは、FLC、特に総FLCについてアッセイすることを、診断未確定のがん罹患のより大きなリスクを有する対象を特定し、および/またはがん発症のリスクがある対象を特定する、がんをもつ対象の予後診断の方法に使用できることを見いだした。彼らは、FLC濃度が、対象におけるそのようながんによる死亡のリスクに統計的に有意に関連し、そのようながんの有無の指標であることを見いだした。
【0008】
明らかに健康な人からの血清中のFLCの濃度は、ある程度、個人の腎臓のFLCを濾過および排出する能力に影響される。FLCクリアランスが限られる人では、血清に見られるFLCレベルに増加がある。結果として、今日、FLCは腎機能の良いマーカーと考えられている。単量体FLCカッパ分子(25kDa)は、二量体のラムダ分子(50kDa)と異なるサイズであるので、それらは共に、例えばクレアチニン113kDaと比べて、糸球体濾過のより良いマーカーである。しかしながら、クレアチニンと対照的に、FLCの産生は多くの疾患の結果として起こりうるため、血清FLCは典型的には単独で腎機能マーカーとして使用されないことになる。
【0009】
しかしながら、B細胞増殖/活性のマーカーは重要であり、B細胞はFLCの生成に関与するので、これは臨床的に有用である。FLC産生は、B細胞アップレギュレーションの初期指標である。この点において、それはT細胞によって媒介される炎症反応のマーカーであるCRPの使用を補完することができる。
【0010】
高いFLC濃度は、おそらく、慢性の腎臓もしくは炎症性の障害またはB細胞疾患の指標でありうる。つまり、異常なFLCアッセイ結果は、現在のところ幾つかのテストを組合せることを必要とする、さまざまな障害のマーカーでありうる。これとは逆に、FLCアッセイ結果が正常な場合、良好な腎機能、炎症性の状態が無い状態およびB細胞疾患の証拠がないことを示す。
【0011】
出願人は、さまざまな程度の腎機能障害を有する患者からの血清試料を詳しく調べた。患者の死因をFLC濃度と比較して調査した。がんと腎機能の間に関連性は観察されなかったが、FLCレベル、特に総FLCレベルが、がんによる死亡のリスクと明らかに関連することが観察された。P<0.033の確率で観察された。
【0012】
本発明は、診断未確定のがん罹患のより大きなリスクを有する対象を特定し、および/またはがん発症のより大きなリスクがある対象を特定する、がんをもつ対象の予後診断の方法であって、その対象からの試料における遊離軽鎖(FLC)の量を検出することを含む方法であって、FLCのより高い量が、がんに起因する生存の減少、ならびに/または診断未確定の癌を有する対象および/もしくはがん発症のリスクが増加した対象のリスクの増加と関連する、方法を提供する。
【0013】
本発明のさらなる態様は、対象からの試料中のFLCの量を検出することを含む、がんをもつ対象の予後診断の方法であって、FLCのより高い量が、がんに起因する生存の減少と関連する、方法を提供する。
【0014】
典型的に、対象は以前にがんと診断されたことがない。
【0015】
がんは、炎症誘発性のがん、例えば肺、結腸直腸、小腸、食道または膵臓(LCBOP
)のがんである。
【0016】
FLCは、カッパまたはラムダFLCでありうる。しかしながら、カッパFLCまたはラムダFLCを単独で検出することは、患者における例えばモノクローナル産生されたどちらか一方のFLCの、例えば異常な高レベルを見逃しうるので、好ましくは総FLC濃度を測定する。
【0017】
総遊離軽鎖とは、試料中の遊離カッパ軽鎖と遊離ラムダ軽鎖との総量を意味する。
【0018】
好ましくは、対象は必ずしもB細胞関連疾患の症状を有することはない。症状としては、再発性感染、骨痛および疲労を挙げられうる。そのようなB細胞関連疾患は、好ましくは、骨髄腫(完全型免疫グロブリン骨髄腫、軽鎖骨髄腫、非分泌性骨髄腫など)、MGUS、ALアミロイドーシス、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、ホジキンリンパ腫、濾胞中心細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、マントル細胞リンパ腫、プレB細胞白血病または急性リンパ性白血病ではない。さらに、典型的に、個人は骨髄機能が低下していない。典型的に、個人は、多くのそのような疾患で典型的に見られる異常なλ:κのFLC比率を有さない。
【0019】
「総遊離軽鎖」という用語は、対象からの試料中のκおよびλ遊離軽鎖の量を意味する。
【0020】
試料は、典型的に、対象からの血清の試料である。しかしながら、全血、血漿、尿、または組織もしくは体液のその他試料もまた、場合により利用しうる。
【0021】
典型的に、総FLCなどのFLCは、ELISAアッセイなどの免疫アッセイ、またはルミネックス(Luminex)(商標)ビーズなどの蛍光標識されたビーズを利用することによって測定する。
【0022】
例えば、サンドイッチアッセイは、抗体を使用して特異的抗原を検出する。アッセイに使用する1つ以上の抗体を、検出可能な検体に基質を変換できる酵素を用いて標識しうる。そのような酵素としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼおよび当該技術分野において公知の他の酵素が挙げられる。代替的に、他の検出可能なタグまたは標識を、酵素の代わりに、または酵素と一緒に使用しうる。これらとしては、放射性同位元素、当該技術分野において公知の、広範な着色および蛍光標識、例えばフルオレセイン、アレクサフルオル、オレゴングリーン、ボディピー、ローダミンレッド、カスケードブルー、マリーナブルー、パシフィックブルー、カスケードイエロー、金;およびビオチンなどの複合体(例えば、英国インビトロジェン社から入手可能)が挙げられる。また、染料ゾル、化学発光ラベル、金属ゾルまたは着色ラテックスも使用しうる。1つ以上のこれら標識を、本明細書において記載されているさまざまな発明に従ってELISAアッセイに使用するか、または代替的に、本明細書において記載されている他のアッセイ、標識された抗体もしくはキットに使用しうる。
【0023】
サンドイッチ型アッセイの構造はそれ自体、当該技術分野において周知である。例えば、FLCに対して特異的な「捕捉抗体」を基質に固定する。「捕捉抗体」は、当該技術分野において周知である方法によって基質に固定しうる。試料中のFLCは、「捕捉抗体」を介してFLCを基質に結合する「捕捉抗体」によって結合される。
【0024】
結合していない免疫グロブリンは洗い流しうる。
【0025】
ELISAまたはサンドイッチアッセイでは、結合している免疫グロブリンの有無は、
目的のFLCの結合抗体とは異なる部分に対して特異的な、標識された「検出抗体」を使用することによって測定しうる。
【0026】
フローサイトメトリーを使用して、目的のFLCの結合を検出しうる。本技法は、例えば細胞選別など当該技術分野において周知である。しかしながら、それを使用して、ビーズなどの標識された粒子を検出し、それらのサイズを測定することもできる。実用フローサイトメトリー(Practical Flow Cytometry)、第3版 (1994年)、H.Shapiro、Alan R.Liss、ニューヨーク、およびフローサイトメトリー第一原則(Flow Cytometry、First Principles)(第2版)2001年、A.L.Given、Wiley Lissなどの多数のテキストブックが、フローサイトメトリーについて説明している。
【0027】
FLCに対して特異的な抗体などの結合抗体の1つを、ポリスチレンまたはラテックスビーズなどのビーズに結合させる。ビーズを、試料および第2の検出抗体と共に混合する。検出抗体は、好ましくは、検出可能な標識で標識し、試料中で検出されるFLCに結合させる。これにより、アッセイされるFLCが存在する場合、標識されたビーズが得られる。
【0028】
また、本明細書において記載されている他の検体に特異的な他の抗体を使用して、それら検体の検出を可能にしうる。
【0029】
次いで、標識されたビーズを、フローサイトメトリーを介して検出しうる。異なる蛍光標識などの異なる標識を、例えば抗遊離λおよび抗遊離κ抗体に対して使用しうる。また、本明細書において記載されているがん特異的な抗原などの他の検体に対して特異的な他の抗体を、このアッセイまたは本明細書において記載されている他のアッセイに使用して、それら検体の検出を可能にしうる。これにより、結合したFLC各種の量を同時に測定でき、その他の検体の有無を決定できる。
【0030】
代替的にまたは付加的に、異なる大きさのビーズを、異なる抗体、例えば異なるマーカーに特異的な抗体に対して使用しうる。フローサイトメトリーは異なる大きさのビーズを識別することができ、よって試料中の各FLCまたはその他の検体の量を迅速に測定することができる。
【0031】
代替的な方法は、例えば、市販のルミネックス(商標)ビーズなどの蛍光標識されたビーズに結合する抗体を使用する。異なるビーズを異なる抗体と使用する。異なるビーズを、異なるフルオロフォア混合物で標識し、それ故に異なる検体を蛍光波長によって測定できる。ルミネックスビーズは、アメリカ合衆国、テキサス州オースチン、ルミネックスコーポレーション(Luminex Corporation)社より入手可能である。
【0032】
好ましくは、アッセイは、比ろう法または比濁法を使用する。λ‐またはκ‐FLCの検出に関する比ろう法および比濁法のアッセイは、一般に当該技術分野において公知であるが、総FLCアッセイに関してはそうではない。それらは、アッセイとして最も良い感度のレベルを有し、λおよびκFLC濃度は別々に測定されうるか、総FLC用の単一のアッセイに到達する。そのようなアッセイは、抗κおよび抗λFLC抗体を典型的に60:40の比率で含有するが、50:50などの他の比率も使用されうる。
【0033】
また、抗体は、遊離λおよび遊離κ軽鎖の混合物に対して作られうる。
【0034】
総FLCなどのFLCの量は、標準の所定値と比較され、FLCの正常範囲より高いか低いかを決定されうる。
【0035】
以下で詳細に論じるように、出願人らは、血清FLCのより高い濃度が、炎症誘発性がんをもつ患者における生存が減少する可能性の著しい増加に関連することを見いだしている。例えば、低い血清FLCレベルをもつ人々よりその関連性がある。
【0036】
単位GFR当たり1.7mg/Lを超えるFLCレベルは、がんによる死亡リスクの増加に関連した。第90パーセンタイル(単位GFR当たり6.12mg/LのFLC)を超えるレベルを持つ患者は、非常に著しく増加したリスクを有した(P<0.005)。
【0037】
歴史的に見て、アッセイキットは、カッパおよびラムダFLCを別々に測定し、比率を計算できるように製作されてきた。それらは、従来、疾患症状をすでに呈する個人に使用されている。
【0038】
好ましくは、アッセイは、例えば約1mg/L〜100mg/Lまたは1mg/L〜80mg/Lの試料中のFLC、例えば総FLCを測定することができる。これは、圧倒的多数の人々において、異なる希釈にて試料を再アッセイすることを必要とせずに、血清FLC濃度を検出することが期待されている。
【0039】
好ましくは、その方法は、例えば抗遊離κ軽鎖および抗遊離λ軽鎖抗体またはその断片の混合物を利用することによる、免疫アッセイを利用して試料中の総遊離軽鎖の量を検出することを含む。そのような抗体は、50:50の抗κ:抗λ抗体の比率でありうる。FLCに結合する抗体または断片は、標識された抗体または断片を使用することによって直接的に、または抗遊離λもしくは抗遊離κ抗体に対する標識された抗体を使用して間接的に検出しうる。
【0040】
抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルでありうる。ポリクローナルは同一鎖の異なる部分に対して作られるので同一タイプの軽鎖間の若干の変動を許容するため使用されうる。ポリクローナル抗体の作製については、例えば国際公開第97/17372号に記載されている。
【0041】
好ましくは、全生存の可能性の増加を示すのに有意であることが特定および判明した総FLCなどの血清FLCの量は、50mg/L未満である。47.4mg/L未満のレベルで、P<O.001を示した。
【0042】
単位GFR(糸球体濾過率)当たり1.7mg/Lを超える修正FLCレベルをもつ個人は、顕著により短い生存を有した。第90パーセンタイル(単位GFR当たり6.12mg/LのFLC)を超えるレベルを持つ患者は、非常に著しく増加したリスクを有した(P<0.005)。
【0043】
また、FLC用の、例えば本発明の方法で使用するためのアッセイキットも提供される。該キットは、試料中の総FLC量を検出しうる。それらは、本発明の方法に使用するための取扱説明書と組み合せて提供されうる。
【0044】
また、アッセイキットは、1つ以上の抗FLC抗体および1つ以上の抗がん抗原抗体を含む本発明の方法で使用される。一般に、マーカーである抗原は、多くのがんについて知られている。抗体は、そのようなマーカーに対して提供され、さらにがんを特定しうる。
【0045】
アッセイキットは、25mg/L未満、最も好ましくは20mg/L未満または約、10mg/L、5mg/Lもしくは4mg/L未満の試料中の総遊離軽鎖(FLC)の量を検出するように構成されうる。検量用の材料は、典型的に、1〜l00mg/Lの範囲を
測定する。アッセイキットは、例えば比ろう法アッセイキットでありうる。好ましくは、キットは、FLCに対する1つ以上の抗体含む免疫アッセイキットである。典型的に、キットは、抗κおよび抗λFLC抗体の混合物を含む。典型的に、抗遊離κと抗遊離λ抗体が50:50の混合物が使用される。キットは、試料中の1〜100mg/Lまたは、好ましくは1〜80mg/Lの総遊離軽鎖の量を検出するように構成されうる。
【0046】
また、(Fab)またはFab抗体などのFLCに結合することができる抗体断片も使用されうる。
【0047】
抗体または断片は、例えば前述のような標識を用いて標識されうる。標識された抗免疫グロブリン結合抗体またはその断片が提供され、FLCに結合する抗遊離λまたは抗遊離κが検出されうる。
【0048】
キットは、示された範囲でアッセイを検量できるように検量用の液を含みうる。検量用の液は、好ましくは、例えば、100mg/L〜1mg/L、25mg/L未満、20mg/L未満、10mg/L未満、5mg/L未満または1mg/Lまでの所定の濃度のFLCを含有する。キットはまた、抗体の量、およびラテックス粒子上にコーティングした「ブロッキング」タンパク質の量を最適化することによって、ならびに、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)濃度などの、補助試薬の濃度を最適化することによって構成されうる。
【0049】
キットは、例えばFLCについて複数の標準対照を含みうる。標準対照を使用して、FLCまたは生じる他の構成要素の濃度に関する標準曲線を有効にしうる。そのような標準対照は、先に検量された標準曲線が使用される試薬および状態に対して妥当であることを確認する。典型的に、それらは対象からの試料のアッセイと実質的に同時に使用される。標準は、FLCについて20mg/L未満、より好ましくは15mg/L未満、約10mg/L未満、またはアッセイがより低い濃度の遊離軽鎖を検出できるように、5mg/L未満の、1つ以上の標準を含みうる。
【0050】
アッセイキットは、比ろう法または比濁法キットでありうる。それは、ELISA、フローサイトメトリー、蛍光、化学発光もしくはビーズタイプアッセイまたはディップスティックでありうる。一般に、そのようなアッセイは当該技術分野において公知である。
【0051】
アッセイキットはまた、本発明の方法で使用される取扱説明書を含みうる。取扱説明書は、正常値であると考えられている総遊離軽鎖の濃度の指標を含み、例えば、それ未満または実際にはそれを超えると、個人の生存の確率の増加または減少のどちらか、またはがんが存在する可能性の増加の指標を示しうる。そのような濃度は、上記で定義された通りでありうる。
【0052】
本発明を、実施例を単なる例示として、以下の図を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、その総FLC濃度を基にして五分位に分けられた試験集団についての生存の確率を示す。五分位レベルは、<33.3、33.4〜47.3、47.4〜76.8、67.9〜106.3および>106.5mg/Lである。
【図2】図2は、混合した抗λおよび抗κ遊離軽鎖抗体を使用する総FLCアッセイキットと比較しての、市販の別々の抗遊離κおよび抗遊離λアッセイキットを使用して得られた総FLC濃度の比較である。
【実施例】
【0054】
腫瘍予後診断
背景
がんによる死亡は、依然として一般的な死因である。早期診断および早期治療は、患者予後を飛躍的に改善することができ、正確なスクリーニングテストの継続的な開発は非常に重要になっている。幾つかのがんは、炎症誘発性の特質を有し、高い血清、免疫グロブリン、遊離軽鎖濃度は、それら腫瘍のうちの1つの有無または進行中の発症についての有用な標識であるかもしれないと仮定されていた。考慮された具体的ながんは、炎症に大きく関連するもの(肺、結腸直腸、小腸、食道、膵臓;LCBOP)であった。
【0055】
方法
さまざまな程度の腎機能障害をもつ1300人の患者から、血清試料を採集し(「基準」)、その後、最長63カ月の期間にわたって追跡調査した。
【0056】
より詳細には、患者は、バーミンガム大学病院の腎臓クリニックから募った。患者は、例えば蛋白尿、血尿、慢性腎臓疾患(すべての病期)、末期腎不全(血液透析および腹膜透析)および腎移植レシピエントを含む、腎臓にさまざまな問題を有した。
【0057】
行われたテストおよび評価は以下の通り:
血清クレアチニンおよび推定糸球体濾過率(eGFR)
単位GFR当たりFLCの修正レベルは次のように計算した:総血清FLC濃度 (mg/L)をコッククロフト・ゴールト式(REF)によりmls/min/1.73mで計算した推定糸球体濾過率で除した。このようにして、腎機能に依存しない単位GFR当たりmg/Lでの、患者の血清総FLCレベルを得た。
参照文献:Cockcroft DW,Gault MH:血清クレアチニンからのクレアチニンクリアランスの予測(Prediction of creatinine clearance from serum creatinine) Nephron
16:31‐41、1976年
【0058】
尿アルブミン/クレアチニン比率
これらは、当該技術分野において標準的なテストである。
【0059】
カッパおよびラムダの両方の血清FLC濃度(フリーライト、バインディングサイトリミテッド社、バーミンガム、英国)
総血清FLC濃度は、カッパFLCおよびラムダFLCの値を合計することによって計算した。
【0060】
追跡調査:
患者を、死亡するまでの期間および死因について追跡調査した。
【0061】
結果
患者生存のカプランマイヤー分析は、より高いFLCレベルをもつ患者は、減少した生存を示した(P<0.001)。
【0062】
生存率を図1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
血清総FLCを腎機能と独立して評価したとき、単位GFR当たり>1.7mg/LのFLCのレベルは、著しくより短い生存を有した。(P<0.0001)。
【0065】
【表2】

【0066】
中央値(単位GFR当たり1.7mg/L)を超える修正FLCレベルをもつ個人は、生存が著しくより短いことを有した。
【0067】
死因を調査したとき、がんに続く死亡の可能性は、より高い総FLC濃度をもつ患者で著しくより高かった。
【0068】
【表3】

【0069】
がんによる死亡の種類を特定した際、データはより強い印象を与える:
FLC五分位1:脳腫瘍、尿路腫瘍
五分位2:結腸腫瘍、尿路腫瘍
五分位3:3×尿路腫瘍
五分位4:胸部がん、小腸腫瘍、食道がん、2×血液学的腫瘍
五分位5:肝臓、3×血液学的腫瘍、膵臓がん、食道がん、2×結腸腫瘍、2×肺腫瘍
【0070】
したがって、より炎症誘発性である、またB細胞増殖と関連すると知られているがんは、より高いFLC五分位にあった。がんおよび腎機能の間に関連性は見られなかった。カプランマイヤー分析では、高いFLCレベルは、がんによる死亡までのより短い期間と関連した(P<0.023)。
【0071】
総FLCレベルは、炎症誘発性がんによる死亡のリスクと明らかに関連した。
【0072】
考察
なんらかの形の腎機能障害をもつ患者で結果を集めたが、腎機能はLCBOPがんの進行と何ら関連性を有さないと考えられ、このことは、最も悪い腎機能をもつ人々で少しも発生率の増加がないことによって示された。これを受けて、総FLCの上昇は、論理上、一般の集団においてLCBOPがん発生率の同様な予測となるであろう。検査(複数含む)は、低下した腎機能によるFLC濃度の背景の上昇がない一般の集団ではより感度が良いであろうと考えられる。
【0073】
アッセイキット
本発明の方法は、以下のアッセイキットを利用しうる。アッセイキットは、患者試料内の、例えば血清中に存在する総遊離κおよび遊離λ軽鎖を定量する。これは、抗遊離κおよび抗遊離λ軽鎖ヒツジ抗体の50:50混合物を用いて、100nmカルボキシル修飾ラテックス粒子をコーティングすることによって達成しうる。以下に例示されたアッセイでは、総遊離軽鎖に関する測定範囲は、1〜80mg/Lである。しかしながら、他の測
定範囲も同じように考慮されうる。
【0074】
抗遊離κおよび抗遊離λ抗血清は、一般に当該技術分野において公知の技術を使用して、この場合ではヒツジで作製した。一般的な免疫化プロセスは、国際公開第97/17372号に記載されている。
【0075】
抗κおよび抗λ抗血清を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を使用して等しい濃度まで希釈した。それら抗体を混ぜ合わせ、50%の抗κ抗体および50%の抗λ抗体を含む抗血清を作成した。
【0076】
抗体を、10mg/lotのコーティング量(coat load)でカルボキシル修飾ラテックスにコーティングした。これは、標準的な手順を使用して達成した。例えば、「微粒子試薬最適化:微粒子の専門家からの実験室参照マニュアル(Microparticle Reagent Optimization: A laboratory reference manual from the authority on microparticles)」編者 Caryl Griffin、Jim Sutor、Bruce Shull、著作権 Seradyn Inc、1994年(P/N0347835(1294)を参照されたい。
【0077】
この参照文献はまた、ポリエチレングリコール(PEG)を使用したアッセイキットの詳細も提供する。
【0078】
混合した抗体を市販のκおよびλフリーライト(商標)キット(英国バーミンガム、バインディングサイトグループリミテッド(Binding Site Group Limited)社から入手)を使用して得られた結果と比較した。そのようなフリーライト(商標)キットは、κ遊離軽鎖の量およびλ遊離軽鎖の量を、別々のアッセイにて特定する。総FLCキットを使用して曲線を作成し、対照濃度を使用して確認した。校正曲線は、1〜80mg/Lの間の総遊離軽鎖について得ることができた。下記の結果の表において、κフリーライト(商標)、λフリーライト(商標)および総遊離軽鎖アッセイを使用して、κ遊離軽鎖(κFLC)、λ遊離軽鎖(λFLC)および総FLCについて結果を得た。これらの結果を15の異なる正常血清試料について示す。比濁法により測定した結果を下表および図2に示す。
【0079】
予備結果は、抗κおよび抗λ遊離軽鎖抗体に基づく総遊離軽鎖アッセイを使用する原理は実行可能であることを示す。
【0080】
結果
【0081】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断未確定のがん罹患のより大きなリスクを有する対象を特定し、および/またはがん発症のより大きなリスクがある対象を特定する、がんをもつ対象の予後診断の方法であって、対象からの試料における遊離軽鎖(FLC)の量を検出することを含む方法であって、FLCのより高い量が、がんに起因する生存の減少、ならびに/または診断未確定の癌を有する対象および/もしくはがん発症のリスクが増加した対象のリスクの増加と関連する、方法。
【請求項2】
前記がんが、炎症誘発性がんであり、好ましくは、肺、結腸直腸、小腸、食道または膵臓(LCBOP)がんである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記遊離軽鎖の量が、前記試料における総遊離軽鎖の量である、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記FLCが、前記対象の血清の試料において測定される、請求項1〜3に記載の方法。
【請求項5】
前記総FLCが、抗遊離軽鎖抗体を使用する免疫アッセイにより測定される、請求項1〜4に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体が、抗遊離κ軽鎖および抗遊離λ軽鎖抗体の混合物である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記FLCの量を比ろう法または比濁法によって検出することを含む、請求項1〜6に記載の方法。
【請求項8】
前記対象が、以前にがんを有すると診断されたことがない、および/またはB細胞関連疾患の症状を有しない、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記方法において使用される取扱説明書を追加として含む、請求項1〜8に記載の前記方法に使用するためのアッセイキット。
【請求項10】
前記アッセイキットを使用して得たFLCの濃度が対象の生存の増加を示す正常値を追加として含む、請求項9に記載のアッセイキット。
【請求項11】
1つ以上の抗FLC抗体および1つ以上の抗がん抗原抗体を含む、請求項1〜8に記載の方法に使用するためのアッセイキットまたは、請求項9もしくは10に記載のアッセイキット。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−519082(P2013−519082A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551687(P2012−551687)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【国際出願番号】PCT/GB2011/050193
【国際公開番号】WO2011/095818
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(510184449)ザ バインディング サイト グループ リミテッド (6)