説明

がん検出のための多因子アッセイ

卵巣がんを検出するための方法を提供する。本方法は、患者の血液試料中のEGF、G−CSF、IL−6、IL−8、CA−125、VEGF、MCP−1、抗IL6、抗IL8、抗CA−125、抗c−myc、抗p53、抗CEA、抗CA15−3、抗MUC−1、抗スルビビン、抗bHCG、抗オステオポンチン、抗PDGF、抗Her2/neu、抗Akt1、抗サイトケラチン19、サイトケラチン19、EGFR、CEA、カリクレイン−8、M−CSF、FasL、ErB2およびHer2/neuのうちの2種またはそれ以上のマーカーのレベルを検出するために多重イムノアッセイを使用し、この際、異常なレベルの2種またはそれ以上のマーカーの存在が、患者における卵巣がんの存在を示す。また、患者の血液中でのこれらのマーカーのレベルを定量するためのアレイならびに臨床卵巣がんの発症を予測する方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はがんを迅速に初期検出するための多因子アッセイのための方法および試薬である。
【背景技術】
【0002】
卵巣がんは、女性生殖路の3番目に多いがんである。多くの初期段階のがんは、無症候性であり、診断の4分の3を超える分は、疾患が局所または遠隔の転移をすでに確立している時点で下されている。攻撃的な細胞減少の(cytoreductive)外科手術および白金ベースの化学療法にもかかわらず、臨床的に進行した卵巣がんを患う患者の5年生存率は、15から20パーセントにすぎないが、I期疾患での治癒率は通常、90パーセントを上回る(Holschneider,C.H.and J.S.Berek,Ovarian cancer:epidemiology,biology,and prognostic factors.Semin Surg Oncol,2000.19(1):p.3−10)。これらの統計により、卵巣がんスクリーニングおよび初期同定を改善するための基本的な理論的根拠が得られる。
【0003】
有効な初期検出方法が存在しないために、上皮性卵巣がんは、一部では致命的である。初期に検出されれば、生存率は劇的に上昇する。現在の研究では、女性、特に、卵巣がんを発症するリスクの高い女性を検査するための改善された方法を開発することに焦点が当てられている。しかしながら今のところ、前がん病巣は同定されていない。卵巣がんの相当部分において、いくつかの遺伝子、例えば、c−erb−B2、c−mycおよびp53の変化が同定されているが、これらの突然変異のいずれも、悪性度を提示しないし、一定期間にわたる腫瘍活動の前兆ともならない(Veikkola,T.ら,Regulation of angiogenesis via vascular endothelial growth factor receptors.Cancer Res,2000.60(2):p.203−12;Berek,J.S.ら,Serum interleukin−6 levels correlate with disease status in patients with epithelial ovarian cancer.Am J Obstet Gynecol,1991.164(4):p.1038−42;discussion 1042−3;Cooper,B.C.ら,Preoperative serum vascular endothelial growth factor levels:significance in ovarian cancer.Clin Cancer Res,2002.8(10):p.3193−7;およびDiBlasio,A.M.ら,Basic fibroblast growth factor and ovarian cancer.J Steroid Biochem Mol Biol,1995.53(1−6):p.375−9)。
【0004】
むしろ、高いリスクを有する女性は、遺伝上の相談および遺伝試験に、さらに血清CA−125レベルの測定および経膣超音波測定に頼らざるを得ない(Oehler,M.K.および H.Caffier,Prognostic relevance of serum vascular endothelial growth factor in ovarian cancer.Anticancer Res,2000.20(6D):p.5109−12;Santin,A.D,ら,Secretion of
vscular endothelial growth factor in ovarian cancer.Eur J Gynaecol Oncol,1999.20(3):p.177−81;ならびにSenger,D.R.ら,Tumor cel
ls secrete a vascular permeability factor that promotes accumulation of ascites fluid.Science,1983.219(4587):p.983−5)。
【0005】
しかしながら、CA−125は、初期段階の疾患を検出するための感受性もないし、特異性もない。これは、現在では一般的なスクリーニングのためには推奨されていない。CA−125は、疾患の応答または進行を監視する際に確実であると考えられるにすぎず、診断または予後のマーカーとしては考えられない(Gadducci,A.ら,Serum preoperative vascular endothelial growth factor(VEGF) in epithelial ovarian cancer:relationship with prognostic variables and clinical outcome.Anticancer Res,1999.19(2B):p.1401−5)。
【0006】
経膣の超音波、ドップラーおよび形態学上の指標を使用してのスクリーニングは、多少は励みになる結果を示しているが、単独で使用すると、これは現在、一般的集団についてのスクリーニング試験で必要とされる特異性を欠いている(Karayiannakis,A.J.ら,Clinical significance of preoperative serum vascular endothelial growth factor levels in patients with colorectal
cancer and the effect of tumor surgery.Surgery,2002.131(5):p.548−55およびJ.K.ら,Clinical usefulness of serum and plasma vascular endothelial growth factor in cancer patients:which is the optimal specimen?Int J Oncol,2000.17(1):p.149−52)。
【0007】
腫瘍マーカーおよび超音波を組み合わせて利用する複合的スクリーニングは、より高い感度および特異性をもたらす。さらに、この組み合わせ手法は、最も費用的に効果のある有望なスクリーニングストラテジーである(karayiannakis ら,2002
and Lee ら,Int J Oncol,2000)。しかしながら、これも、一般的集団においては有効性に問題がある。したがって、疾患を早期に検出するためのさらなるマーカーを開発する切実な必要性が存在する。
【0008】
最近、固相タンパク質クロマトグラフィーと質量分析測定法とを組み合わせている表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析測定法(SELDI−TOF−MS)と称される新規の技術(Issaq,H.J.ら,The SELDI−TOF MS approach to proteomics:protein profiling and biomarker identification.Biochem Biophys Res Commun,2002.292(3):p.587−92)に解説されている)が、卵巣がんにおけるバイオマーカーを発見するための新規手法として利用されている。
【0009】
卵巣がん患者に関する、最近公表のランドマーク的研究では、卵巣がん進行についてのタンパク質プロファイリングするために、この新規技術が使用されている(Petricoin,E.F.ら,Use of proteomic patterns in serum to identify ovarian cancer.Lancet,2002.359(9306):p.572−7)。
【0010】
この手法により、CA−125での34%に比較して、94%という陽性予測の値を有
する血清タンパク質プロファイルを識別することができた。しかしながら、この値は高いが、スクリーニングされるであろう集団での卵巣がんの発生率が低いことから、多数の擬陽性の発生を回避するためには、陽性を予測する値はほぼ100%でなければならない。したがって、卵巣がんに関して有効な一般的集団をスクリーニングするために、この手法を利用する際に必要とされる特異性および確実性を必要とされる高レベルにするためには、さらに追加のマーカーが必要である。加えて、この手法は極めて費用がかかり、高リスク集団にしか適用することができないであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
卵巣がん細胞は様々な血管由来因子を産生し、様々なサイトカインの分泌を刺激するために、これらをバイオマーカーとして使用することができることは、よく知られている。しかしながら、これらの因子は個別には、初期段階の本疾患とは僅かしか関係していなかった。個々の患者の血清中にある複数の血管由来因子およびサイトカインを含む項目群を評価することにより、初期段階の卵巣がんを診断するために充分な特異性および感度が得られるであろうと仮定された。がん患者の血清マーカーに関する以前の試験はすべて、ELISAを使用して行われたが、これは、極めてコストがかかり、しかも個々のサイトカイン各々について別々のキットを必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
卵巣がんを迅速に早期検出するための方法を提供する。この方法により、血管由来因子を含む幅広い項目群を同時に検査する機会、ならびに、例えば限定するものではないが、1時点について血清または血漿50μlのみを使用する複数時点でのこのような試験の反復が提供される。
[発明の説明]
患者における卵巣がんの存在をアッセイする方法を提供する。さらに、患者における卵巣がんの存在または成行きを予測する方法を提供する。この方法は、患者における卵巣がんの存在を決定するための方法を含み、これは、EGF(上皮成長因子)、G−CSF(顆粒球コロニー刺激因子)、IL−6(インターロイキン6、本明細書で使用する場合、「IL」を「インターロイキン」という)、IL−8、CA−125(がん抗原125)、VEGF(血管内皮成長因子)、MCP−1(単球化学誘因物質タンパク質−1)、抗IL6、抗IL8、抗CA−125、抗c−myc、抗p53、抗CEA、抗CA15−3、抗MUC−1、抗スルビビン、抗bHCG、抗オステオポンチン(anti-osteopontin)、抗PDGF、抗Her2/neu、抗Akt1、抗サイトケラチン19、サイトケラチン19、EGFR、CEA、カリクレイン−8、M−CSF、FasL、ErbB2およびHer2/neuのうちの2種またはそれ以上を含む血液マーカーパネルで、患者の血液試料中のマーカーレベルを検出することを含み、この場合、次の状態:EGFLO、G−CSFHI、IL−6HI、IL−8HI、VEGFHI、MCP−1LO、抗IL−6HI、抗IL−8HI、抗CA−125HI、抗c−mycHI、抗p53HI、抗CEAHI、抗CA15−3HI、抗MUC−1HI、抗スルビビンHI、抗bHCGHI、抗オステオポンチンHI、抗Her2/neuHI、抗Akt1HI、抗サイトケラチン19HIおよび抗PDGFHI、CA−125HI、サイトケラチン19HI、EGFRLO、Her2/neuLO、CEAHI、FasLHI、カリクレイン−8LO、ErbB2LO、およびM−CSFLOのうちの2つまたはそれ以上の存在が、患者における卵巣がんの存在を示している。
【0013】
パネルの例は、これに限られないが:CA−125、サイトケラチン−19、FasL、M−CSF;サイトケラチン−19、CEA、Fas、EGFR、カリクレイン−8;CEA、Fas、M−CSF、EGFR、CA−125;サイトケラチン19、カリクレイン8、CEA、CA125、M−CSF;カリクレイン−8、EGFR、CA−125;サイトケラチン−19、CEA、CA−125、M−CSF、EGFR;サイトケラチ
ン−19、カリクレイン−8、CA−125、M−CSF、FasL;サイトケラチン−19、カリクレイン−8、CEA、M−CSF;サイトケラチン−19、カリクレイン−8、CEA、CA−125;CA125、サイトケラチン19、ErbB2;EGF、G−CSF、IL−6、IL−8、VEGFおよびMCP−1;抗CA15−3、抗IL−8、抗スルビビン、抗p53および抗c−myc;および抗CA15−3、抗IL−8、抗スルビビン、抗p53、抗c−myc、抗CEA、抗IL−6、抗EGF;および抗bHCGを含む。
【0014】
さらに本方法は、線形回帰分析、判別ツリー分析およびヒューリスティックなナイーブベイズ(naive Bayes)分析などの統計的方法を適用することにより、患者血液での2種またはそれ以上のマーカーレベルと1種または複数の対照試料での同じマーカーのレベルとを比較することをさらに含む。統計的方法は、コンピュータープロセスにより、例えば、市販の統計解析ソフトウェアにより行うことができるし、通常は行う。一つの実施態様における統計的方法は、判別ツリー分析、例えば、CART(C&RT、判別および回帰ツリー)である。
【0015】
EGF、G−CSF、IL−6、IL−8、CA−125、VEGF、MCP−1、抗c−myc、抗p53、抗CEA、抗CA15−3、抗MUC−1、抗スルビビン、抗bHCG、抗オステオポンチン、抗PDGF、サイトケラチン19、CEA、カリクレイン−8、M−CSF、EGFRおよびHer2/neuのうちの2種またはそれ以上に特異的な結合試薬タイプ類を含むアレイであり、その場合、各結合試薬タイプが独立に、1個または複数の支持体の1個または複数の表面上に位置する1個または複数の別々の位置に結合しているアレイも提供する。その支持体は、識別可能なマーカーを有するビーズであってもよく、この場合、各結合試薬タイプは、別の結合試薬が結合しているビーズとは異なる、識別可能なマーカーを有するビーズに結合している。識別可能なマーカーは、蛍光化合物または量子ドットを含んでもよい。
【0016】
他の実施形態では、患者における卵巣がんの存在を決定する方法を提供するが、この方法は、患者の血液試料での抗Her2/neu、抗IL−8、抗オステオポンチン、抗VEGFおよび抗PDGFのうちの少なくとも1種のレベルを決定することを含み、その際、次の状態:抗Her2/neuHI、抗IL−8HI、抗オステオポンチンHI、抗VEGFHI、抗Akt1および抗PDGFHIのうちの1種または複数の存在が、患者における卵巣がんの存在を示している。
【0017】
別の実施形態では、臨床的に卵巣がんの発症を予測するための方法を提供し、この方法は、患者の血液における、抗Her2/neu、抗MUC−1、抗c−myc、抗p53、抗CA−125、抗CEA、抗CA72−4、抗PDGFRα、IFNγ、IL−6、IL−10、TNFα、MIP−1α、MIP−1β、EGFRおよびHer2/neuのうちの2種またはそれ以上の濃度変化を2つまたはそれ以上の時点で測定することを含む。その場合、2つの時点間での患者血液中の抗Her2/neu、抗MUC−1、抗c−myc、抗p53、抗CA−125、抗CEA、抗CA72−4、抗PDGFRα、IFNγ、IL−6およびIL−10の濃度の上昇ならびに2つの時点間での患者の血液中のTNFα、MIP−1α、MIP−1β、EGFRおよびHer2/neuの濃度低下は、臨床的卵巣がんの発症を予測している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本出願に記載されている種々の範囲での数値の使用は、特に他に指示のない限り、記載の範囲内の最小値および最大値の両方の前に「約」との用語があるように、近似値として記載されている。この場合、記載された範囲を上回るか下回る若干の変動を用いて、範囲内の値と実質的に同じ結果を達成することができる。したがって、これらの範囲の開示は
、最小値と最大値との間のすべての値を含む連続的な範囲を意図している。
【0019】
本明細書は、卵巣悪性度を初期に迅速に同定するための多因子アッセイを提供する。卵巣がんの検出で使用可能な血液サイトカイン、免疫グロブリン(Ig)およびがん抗原マーカーを次に同定する。サイトカインマーカーには、卵巣がんに罹る患者の血中で異常に発現されるEGF、G−CSF、IL−6、IL−8、VEGFおよびMCP−1が含まれる。EGFおよびMCP−1は、対照のヒト個々と比較して、卵巣がんを患う患者では発現不足である一方で、G−CSF、IL−6、IL−8およびVEGFは、これらの患者で過剰発現される。このように、2種類またはそれ以上、典型的には3種または4種の次のパラメーター:EGFLO、G−CSFHI、IL−6HI、IL−8HI、VEGFHIおよびMCP−1LOを示す患者は、卵巣がんを有するとの極めて高い可能性が存在する。
【0020】
さらに、卵巣がんを伴う患者の血中に異常なレベルで存在する、あるIg種が特定される。これらのマーカーには、IL−6、IL−8、CA−125、c−myc、p53、CEA、CA15−3、MUC−1、スルビビン、bHCG、オステオポンチン、Her2/neu、Akt1、サイトケラチン19およびPDGF(血小板由来成長因子)に対する抗体が挙げられる。このように、2種類またはそれ以上、通常は3種または4種の次のパラメーター:抗IL−6HI、抗IL−8HI、抗CA−125HI、抗c−mycHI、抗p53HI、抗CEAHI、抗CA15−3HI、抗MUC−1HI、抗スルビビンHI、抗bHCGHI、抗オステオポンチンHI、抗Her2/neuHI、抗サイトケラチン19HIおよび抗PDGFHIを示す患者は卵巣がんを有するとの極めて高い可能性が存在する。
【0021】
さらに、卵巣がんを伴う患者の血中に異常に高レベルで存在する、あるがん抗原を同定する。これらのマーカーには、CA−125、FasL、CEAおよびサイトケラチン19が含まれる。他のがん抗原は、卵巣がん患者では異常に低いレベルで存在し、これにはHer2/neu、M−CSF、カリクレイン8およびEGFRが含まれる。このように、2種類またはそれ以上、通常は3種または4種の次の状態:CA−125HI、サイトケラチン19HI、EGFRLO、Her2/neuLO、CEAHI、FasLHI、カリクレイン−8LOおよびM−CSFLOを示す患者が卵巣がんを有するとの極めて高い可能性が存在する。
【0022】
前記の3つの群それぞれに由来する血液マーカーを含むパネルは、患者が卵巣がんに罹っているかどうかを同定する際に役立つ。EGF、G−CSF、IL−6、IL−8、CA−125、VEGF、MCP−1、抗IL6、抗IL8、抗CA−125、抗c−myc、抗p53、抗CEA、抗CA15−3、抗MUC−1、抗スルビビン、抗bHCG、抗オステオポンチン、抗PDGF、抗Her2/neu、抗Akt1、抗サイトケラチン19、サイトケラチン19、EGFR、CEA、カリクレイン−8、M−CSF、FasL、ErbB2およびHer2/neuのうちの2種またはそれ以上、通常は3種または4種から選択されるパネルは、正常/良性患者と卵巣がん患者とを区別する際に役立つ。正常/良性患者と卵巣がん患者とを区別する場合のその有用性により、いくつかのマーカーを初めに記載する。これらの新規の卵巣がんマーカーには、抗Her2/neu、抗IL−8、抗VEGF、抗オステオポンチン、抗PDGF−AA(血小板由来成長因子AAホモダイマー)および抗Akt1が挙げられる。
【0023】
パラメーターである、EGFLO、G−CSFHI、IL−6HI、IL−8HI、CA−125HI、VEGFHI、MCP−1LO、抗c−mycHI、抗p53HI、抗CEAHI、抗CA15−3HI、抗MUC−1HI、抗スルビビンHI、抗bHCGHI、抗オステオポンチンHI、抗PDGFHI、サイトケラチン19HI、EGFRLO、Her2/neuLO、CEAHI、FasLHI、カリクレイン−8LOおよびM−CSFLOは、これらのマーカーについて正常または対照の血液(血清または血漿)レベルと卵巣がんを患う患者における血液レベルとを統
計的に比較することにより決定される。下記に示される統計データは、患者における前記マーカーについて、一定のLOまたはHIパラメーターを規定するためのある値を同定している。LOまたはHI値の推定値について限定を意味しない例として、実施例1のデータを参照すると、EGFLOは、EGFが約224pg/mL未満であることを意味し、G−CSFHIは、G−CSFが約22pg/mLを上回ることを意味し、IL−6HIは、IL−6が約8.8pg/mLを上回ることを意味し、IL−8HIは、IL−8が約10.2pg/mLを上回ることを意味し、CA−125HIは、CA−125が約10pg/mLを上回ることを意味し、VEGFHIは、VEGFが約91pg/mLを上回ることを意味し、あるいはMCP−1LOは、MCP−1が約342pg/mL未満であることを意味する。
【0024】
次のものに限られないが、EGFLO、G−CSFHI、IL−6HI、IL−8HI、CA−125HI、VEGFHI、MCP−1LO、抗c−mycHI、抗p53HI、抗CEAHI、抗CA15−3HI、抗MUC−1HI、抗スルビビンHI、抗bHCGHI、抗オステオポンチンHI、抗PDGFHI、サイトケラチン19HI、EGFRLOおよびHer2/neuLOを含む、本明細書で同定される他のマーカーに関するLOまたはHI値の同定は、本明細書に示されているグラフ、本明細書に示されているデータを参照することにより、および/または本明細書に記載されている統計的方法を使用することにより決定することができる。これらはすべて、本明細書に記載されているデータに基づき、生物統計学の分野における通常の専門家の能力による範囲内である。
【0025】
これらのLOまたはHI値は近似値であり、統計的に由来することを理解されたい。各因子の相対的なレベルを検出し、LOまたはHIについての臨界値を規定する他の統計方法を使用する場合には、これらの近似値をやや上回るか、下回る値、通常は1標準偏差の範囲内の値を、LOまたはHI状態と正常とを区別するための統計的に有意な値と見なすこともありうる。この理由で、「約」との用語が記載の値とともに使用されている。「統計的判別方法」を使用して、正常な患者および良性増殖を伴う患者と卵巣がん患者とを区別し得るマーカーを同定し、そうした患者を区別するための各マーカーについての血中臨界値を決定する。そのために3種の特別な統計方法を使用して、判別するマーカーおよびそのパネルを同定する。これらの統計方法には:1)下記の実施例1に同定されているような線形回帰;2)下記の実施例4で同定されているような判別ツリー方法(下記の実施例で使用されるCARTとともに、CHAIDおよびQUESTが、判別ツリープログラムである);および3)下記の実施例7に記載されているような、マスキングされたクラス標識を予測するためのアルゴリズムの不偏性能を最適化する統計装置知能が含まれる。これらの統計方法はそれぞれ、生物統計分野の通常の専門家にはよく知られており、コンピューターでのプロセスとして行うことができる。統計方法を実行するために、次だけに限られないが、Insightful Corporation of Seattle(WA)から市販されているS−PLUS(登録商標)などの数多くのソフトウェア製品を市場で購入することができる。
【0026】
卵巣がん患者に存在するマーカーおよびどのマーカーおよびどのマーカー群が卵巣がん患者を同定する場合に役立つかを同定ことにより、当技術分野の専門家であれば、本明細書の開示に基づき、優れた選択性および感度をもたらすパネルを同定することができる。優れた判別能力を与えるパネルの例には、これらに限られないが:CA−125、サイトケラチン−19、Fas、M−CSF;サイトケラチン−19、CEA、Fas、EGFR、カリクレイン−8;CEA、Fas、M−CSF、EGFR、CA−125;サイトケラチン19、カリクレイン8、CEA、CA125、M−CSF;カリクレイン−8、EGFR、CA−125;サイトケラチン−19、CEA、CA−125、M−CSF、EGFR;サイトケラチン−19、カリクレイン−8、CA−125、M−CSF、Fas;サイトケラチン−19、カリクレイン−8、CEA、M−CSF;サイトケラチン−19、カリクレイン−8、CEA、CA−125;CA125、サイトケラチン19、E
rbB2;EGF、G−CSF、IL−6、IL−8、VEGFおよびMCP−1;抗CA15−3、抗IL−8、抗スルビビン、抗p53および抗c−myc;ならびに抗CA15−3、抗IL−8、抗スルビビン、抗p53、抗c−myc、抗CEA、抗IL−6、抗EGF;および抗bHCGなどのパネルが挙げられる。生物統計分野の通常の専門家であれば、特定のパネルにあるマーカー数は、マーカーの組み合わせに応じて、異なってよいことを理解するであろう。特異性と同様に最適な感度が到達目標であるので、一つのパネルが2種のマーカーを有してもよいが、他のパネルが8種のマーカーを有してもよく、両方とも、同様の結果をもたらす。
【0027】
「結合試薬」なる用語および類似の用語は、別の化合物または分子(免疫認識の場合にはエピトープである。)に特異的に、または実質上特異的に(即ち、限られた交差感受性を伴う)結合しうる化合物、組成物または分子をいう。「結合試薬タイプ」とは、単一の特異性を有する1つの結合試薬またはその集団である。結合試薬は通常、抗体、好ましくはモノクローナル抗体またはその誘導体または類似体であり、さらに、次のものに限られないが、:Fv断片;一本鎖Fv(scFv)断片;Fab’断片;F(ab’)2断片;ヒト化抗体および抗体断片;ラクダ化抗体および抗体断片;および前記の多価の別形態が含まれる。多価結合試薬を適切に使用することもでき、以下に限られないが、単一特異性または二特異性の抗体、例えば、ジスルフィド安定化Fv断片、scFvタンデム((scFv)2断片)、通常、共有結合されているか、その他により安定化された(即ち、
ロイシンジッパーまたはへリックス安定化されている)scFv断片であるジアボディ(diabodies)、トリボディ(tribodies)またはテトラボディ(tetrabodies)が含まれる。さらに「結合試薬」には、当技術分野で記載されているようなアプタマーが含まれる。
【0028】
抗体ならびにその誘導体および類似体ならびにアプタマーを含む抗原特異的結合試薬を製造する方法は、当技術分野でよく知られている。動物の免疫化によりポリクローナル抗体を生じさせることができる。標準的な(ハイブリドーマ)方法論に従い、モノクローナル抗体を調製することができる。標準的な方法に従い、モノクローナル抗体をコードするDNAからDNA断片を単離し、適切なV領域を適切な発現ベクター中でサブクローニングすることにより、ヒト化抗体を含む抗体誘導体および類似体を組換えにより調製することができる。ファージディスプレイおよびアプタマー技術は、文献に記載されており、これらにより、極めて親和性の低い交叉感受性を有する抗原特異的結合試薬のin vitroクローン増幅が可能である。ファージディスプレイの試薬およびシステムは市販されており、Amersham Pharmacia Biotech,Inc.(Piscataway、New Jersey)から市販されているRecombinant Phage Antibody System(RPAS)およびMoBiTec LLC
(Marco Island、Florida)から市販されているpSKAN Phagemid Display Systemが例示される。アプタマー技術は、例えば、これらに限られないが、米国特許第5,270,163号、同第5,475,096号、同第5,840,867号および同第6,544,776号の明細書に記載されている。
【0029】
下記のELISAおよびLuminex LabMAPイムノアッセイは、サンドイッチ型アッセイの例である。用語「サンドイッチ型アッセイ」とは、抗原が2つの結合試薬(通常は抗体である)の間にサンドイッチされるイムノアッセイに関する。第1の結合試薬/抗体は表面に結合し、第2の結合試薬/抗体は検出可能な基を含む。検出可能な基の例には例えば、これらに限られないが:蛍光色素、酵素、第2の結合試薬と結合するためのエピトープ(例えば、第2の結合試薬/抗体がマウス抗体である場合には、それは蛍光標識された抗マウス抗体により検出される)、例えば、抗原または結合の対の片割れ、例えばビオチンが挙げられる。その表面は、例えば本明細書に記載されているように、通常の格子型アレイ(例えば、これらに限られないが96ウェルプレートおよび平面マイクロ
アレイ)の場合には、平面表面であってよいか、あるいはコーティングされているビーズアレイ技術を伴う非平面表面であり、この際、ビーズの各々の「種」は、例えば、蛍光色素(本明細書ならびに米国特許第6,599,331号、同第6,592,822号および同第6,268,222号の明細書に記載のLuminex技術など)または量子ドット技術(例えば、米国特許第6,306,610号明細書に記載されている)で標識されている。
【0030】
下記の実施例に記載されているビーズ型イムノアッセイでは、Luminex LabMAPシステムを使用している。LabMAPシステムは、スペクトル的に区別される2種の蛍光色素で内部を染色されているポリスチレン微小球を導入している。これらの蛍光色素の正確な比を使用して、特異的なスペクトルアドレスを有する100種の異なる微小球セットからなるアレイを作製する。各微小球セットは、その表面に異なる反応成分を有することができる。微小球セットは、そのスペクトルアドレスにより区別することができるので、これらを組み合わせると、100種までの異なる分析物(analytes)を、単一の反応器中で同時に測定することができる。リポーター分子に結合した第3の蛍光色素により、微小球表面で生じた生体分子相互作用を定量する。微小球がLuminex分析器を通過するときに、急速に流れている流体の流れの中で2種の別々のレーザーにより個別に調べる。高速デジタル信号プロセッシングにより、微小球をそのスペクトルアドレスに基づいて類別し、1試料当たり数秒で、表面の反応を定量する。
【0031】
本明細書に記載されるアッセイでは、ビーズ型イムノアッセイが、いくつかの理由により好ましい。ELISAと比較して、コストおよび処理量が格段に優れている。典型的な平面抗体マイクロアレイ技術(例えば、BD Biosciences Clontech(Palo Alto,CA)から市販されているBD Clontech Antibodyアレイなど)と比較すると、定量目的に関して、ビーズは格段に優れている。それというのも、ビーズ技術は、もともと再現性、コストおよびテクニシャンの時間において困難を伴う血漿または血清の試料の前処理または分取を必要としないためである。この理由から、これらに限られないがELISA、RIAおよび抗体マイクロアレイ技術といった他のイムノアッセイも、本発明の状況下で使用することができるが、これらは好まれない。本明細書で使用する場合、「イムノアッセイ」とは、所望の血液マーカー、即ち、EGF、G−CSF、IL−6、IL−8、CA−125、VEGF、MCP−1、抗IL6、抗IL8、抗CA−125、抗c−myc、抗p53、抗CEA、抗CA15−3、抗MUC−1、抗スルビビン、抗bHCG、抗オステオポンチン、抗PDGF、抗Her2/neu、抗Akt1、抗サイトケラチン19、サイトケラチン19、EGFR、CEA、カリクレイン−8、M−CSF、FasL、ErbB2およびHer2/neuのうちの1種を検出および定量することができる免疫アッセイ、通常は、専らではないがサンドイッチアッセイを言及している。
【0032】
マーカー:EGF、G−CSF、IL−6、IL−8、CA−125、VEGF、MCP−1、抗IL6、抗IL8、抗CA−125、抗c−myc、抗p53、抗CEA、抗CA15−3、抗MUC−1、抗スルビビン、抗bHCG、抗オステオポンチン、抗PDGF、抗Her2/neu、抗Akt1、抗サイトケラチン19、サイトケラチン19、EGFR、CEA、カリクレイン−8、M−CSF、FasL、ErbB2およびHer2/neuのうちの2種、3種または4種もしくはそれ以上の血中レベルを決定するためのアッセイから生じたデータを使用して、患者での卵巣がんの可能性を決定することができる。
【0033】
本明細書に示すように、次の条件:EGFLO、G−CSFHI、IL−6HI、IL−8HI、VEGFHI、MCP−1LO、抗IL−6HI、抗IL−8HI、抗CA−125HI、抗c−mycHI、抗p53HI、抗CEAHI、抗CA15−3HI、抗MUC−1HI、抗スルビビン
HI、抗bHCGHI、抗オステオポンチンHI、抗Her2/neuHI、抗Akt1HI、抗サイトケラチン19HIおよび抗PDGFHI、CA−125HI、サイトケラチン19HI、EGFRLO、Her2/neuLO、CEAHI、FasLHI、カリクレイン−8LO、ErbB2LO、およびM−CSFLOのうちの2種またはそれ以上、通常は3種または4種が患者の血液に当てはまる場合、患者が卵巣がんを有する極めて高い可能性が存在する。1つの実施形態では、次の条件:EGFLO、G−CSFHI、IL−6HI、IL−8HI、VEGFHI、MCP−1LO、抗IL−6HI、抗IL−8HI、抗CA−125HI、抗c−mycHI、抗p53HI、抗CEAHI、抗CA15−3HI、抗MUC−1HI、抗スルビビンHI、抗bHCGHI、抗オステオポンチンHI、抗Her2/neuHI、抗Akt1HI、抗サイトケラチン19HIおよび抗PDGFHI、CA−125HI、サイトケラチン19HI、EGFRLO、Her2/neuLO、CEAHI、FasLHI、カリクレイン−8LO、ErbB2LO、およびM−CSFLOの内の3種またはそれ以上、好ましくは3種または4種が、患者の血液に当てはまる場合には、患者が卵巣がんを有する非常に高い可能性が存在する。
【0034】
本発明の開示の関係において、「血液」には、本明細書に記載の方法に従い分析することができるすべての血液フラクション、例えば、血清が含まれる。血清は、試験することができる標準的な血液フラクションであり、下記の実施例で試験される。ある特定マーカーの血液レベルを測定するとは、適切ないずれの血液フラクションを、血液レベルを測定するために検査することができ、さらに、データをそのフラクションに存在する値として報告することができることを意味している。限定的に解されてはならないが例えば、あるマーカーの血液レベルを、50pg/血清mLとして記載することができる。
【0035】
前記のように、特定の同定された血液マーカーのレベルを決定することにより卵巣がんを診断する方法を提供する。さらに、前臨床的卵巣がんを検出する方法を提供するが、これは、患者の血液において特定の同定されたマーカーの存在および/またはベロシティ(velocity)を決定することを含む。ベロシティとは、一定期間にわたる患者血液中でのマーカーの濃度変化を意味している。実施例7では、臨床的卵巣がんの発症を予測する際に、患者の血中特異的マーカーのベロシティを決定する値が、ある期間にわたるデータとして与えられる。前臨床的卵巣がんを示す明白なベロシティを有するマーカーには:卵巣がんの臨床的発症の30〜40ヶ月前に濃度が上昇し始める抗Her2/neu、抗MUC−1、抗c−myc、抗p53、抗CA−125、抗CEA、抗CA72−4、抗PDGFRα、IFNγ、IL−6およびIL−10、ならびに卵巣がんの臨床的発症の30〜40ヶ月前に濃度が低下し始めるTNFα、MIP−1α、MIP−1β、EGFRおよびHer2/neuが挙げられる。
[実施例]
【実施例1】
【0036】
患者集団
初期(I〜II)段階の卵巣がんと診断されている患者55人、良性骨盤内腫瘍(benign pelvic masses)を有する患者55人および適合年齢をマッチさせた健康な対照55人からの血清試料を試験した。初期(I〜II)段階の卵巣がんを有する患者および良性骨盤内疾患を有する女性からの血清試料は、Gynecologic
Oncology Group(GOG(Cleveland、OH)から得た。IRBプロトコルのもとに、全参加者から同意および血液検体を得た。婦人科上の診断および卵巣がんの段階付けを検証するため、臨床腫瘍学の専門家がチャートを検討した。組織学および段階を検証するため、病理学者が卵巣がん症例についての病理スライドを調査した。上皮卵巣がんおよび良性骨盤内症状の主要タイプのすべてが提示された。表Aに患者のデータをまとめた。適合年齢をマッチさせた健康な女性からの対照血清試料は、IRBプロトコルに従い、Allegheny Couty Case−Control Networkから得た。
【0037】
【表1】

【0038】
血液試料の収集および貯蔵
標準化された静脈切開手順により、末梢血液10mLを被験者から採取した。抗凝血剤を用いずに、血液試料を2本の5mLレッドトップ・バキュテイナー(vacutainer)に集め、遠心分離により血清を分離し、すべての試料を直ちに凍結させ、−80℃の専用冷凍庫に貯蔵した。すべての血液試料を、貯蔵日時、凍結/解凍サイクルおよび分類などの情報を探せるように研究用コンピューターに記録した。
【0039】
BioSource International(Camarillo、CA)から購入した多重化キットを使用して、製造者のプロトコルに従い多重分析を行った。これらのキットについて最少サイトカイン検出レベルは、<5pg/mLである。次の29種のサイトカイン、血管由来因子、死因子および成長因子を多重フォーマットで解析した:IL−1β、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、IL−10、IL−12p40、IL−13、IL−15、IL−17、IL−18、TNFα(腫瘍壊死因子α)、IFNγ(インターフェロンγ)、GM−CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)、EGF、VEGF、G−CSF、bFGF(塩基性繊維芽細胞成長因子)、HGF(肝細胞成長因子)、RANTES(CCL5またはMCP2としても知られている、Reulation on Activation,Normal T Expressed and Secreted)、MIP−1α(マクロファージ炎症性タンパク質−1α)、MIP−1β(マクロファージ炎症性タンパク質−1β)、MCP−1、EGFR(上皮成長因子受容体)、TGFβ(形質転換成長因子ベータ)、FasL(Fasリガンド)、スルビビンおよびCA−125。
【0040】
96ウェルマイクロプレート様式でアッセイを行った。底部フィルター(filter−bottom)96ウェルマイクロプレート(Millipore社)をPBS/BS
Aで10分間ブロックした。標準曲線を生じさせるために、製造者から得た適切な「標準」の段階的希釈を血清希釈剤中で調製した。「標準」および患者血清を二連で、50μl/ウェルとなるようにピペットにより導入し、ビーズ混合物50μlと混合した。マイクロプレートをマイクロタイター・シェーカー上、室温で1時間インキュベーションした。次いで、真空マニホールドを使用して、ウェルを洗浄緩衝液で3回洗浄した。PE結合二次抗体を適切なウェルに加え、暗所で継続的に振盪しながら45分間インキュベーションした。ウェルを2回洗浄し、アッセイ緩衝液を各ウェルに加え、蛍光リーダーおよびBio−Plex Manager分析用ソフトウェア(Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA)を含むBio−Plexサスペンジョンアレイ・システムを使用して、試料を分析した。5パラメーター曲線フィッティングを使用して、データ解析を行った。
【0041】
Luminexアッセイの開発
CA−125を除くすべてのアナライトについては、R&D Systems(Minneapolis、MN)から、CA−125についてはFitzgerald Industries International(Concord、MA)から購入した抗体ペアを使用して、多重化アッセイ系のためのVEGF、G−CSF、IL−6、IL−8、IL−12p40、EGF、MCP−1およびCA125試薬を開発した(表B)。
捕捉抗体はモノクローナル抗体であり、検出抗体はポリクローナル抗体であった。捕捉抗体は、Luminex社(Austin、Tex)から購入したカルボキシル化ポリスチレン微小球第74番に共有結合により結合させた。捕捉抗体と微小球との共有結合の形成は、Luminexにより推奨された手順に従って行った。要するに、微小球ストック溶液を、超音波浴(Sonicor Instrument Corporation,Copiaque,N.Y.)中で2分間分散させた。2.5×106微小球のアリコート
を、0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.1)(リン酸緩衝液)を含むマイクロタイター管中で再懸濁させて、最終容量80μlにした。微小球の均一な分布が観察されるまで、この懸濁液を超音波処理した。N−ヒドロキシ−スルホスクシンイミド(スルホ−NHS)および塩酸1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(Pierce)の溶液を両方とも50mg/mLで、リン酸緩衝液中で調製し、続いて、各溶液10μlを加えて、反応を安定化させ、微小球を活性化した。この懸濁液を室温で10分間インキュベーションし、抗体50μgを含有するPBS250μlに再懸濁させた。
【0042】
混合物を暗所で継続的に振盪しながら一晩インキュベーションした。次いで、微小球をPBS−0.05%ツイーン20、250μlとともに4時間インキュベーションした。吸引した後に、ビーズをPBS−1%BSA−0.1%アジ化ナトリウム、1mLでブロックした。血球計算盤を用いて微小球を数え、1mL当たり微小球106個の最終濃度で
暗所中、4℃で貯蔵した。微小球2000個をPE結合ヤギ抗マウスIgG(BD Biosciences,San Diego、CA)で染色することにより、モノクローナル抗体の結合効率を検証した。EZ−LinkスルホNHS−ビオチン化キット(Pierce,Rockford,IL)を使用して、製造者プロトコルに従い、検出抗体Abをビオチン化した。HABAアッセイを使用して、ビオチン導入の程度を測定したところ、タンパク質1モル当たりビオチン20モルであった。検出抗体の濃度およびインキュベーション時間に関して、アッセイをさらに最適化した。新たに開発されたアッセイの感度を、連続希釈された精製タンパク質を使用して決定した。変動係数として表されるイントラアッセイ変動性を、患者10人の試料についての平均をもとに算出し、2つの異なる時点で2回測定した。平均変動係数として表される重複測定の範囲内でのイントラアッセイ変動性は、8.5%であった(データは示さない)。各標準および試料10個の4重のセット(quadruplicates)測定を試験することにより、インターアッセイ変動性を評価したところ、10から22%であり、平均は16.5%であった(データは示さない)。新た
に開発されたキットを、一緒に多重化し、Luminexプロトコルに従い、交叉感受性が存在しないことを確認した。
【0043】
【表2】

【0044】
加えて、Fitzgerald Industries International(Concord,MA)から購入した抗体ペアを使用して、多重系のためのCA−125試薬を開発した。捕捉抗体は、モノクローナルであり、検出抗体は、ヒツジポリクローナルであった。EZ−Linkスルホ−NHS−ビオチン化キット(Pierce,Rockford,IL)を使用して製造者のプロトコルに従い、捕捉抗体(Ab)をビオチン化した。HABAアッセイを使用して、ビオチン導入の規模を測定したところ、タンパク質1モル当たりビオチン20モルであった。捕捉抗体は、Luminex社(Austin、Tex)から購入したカルボキシル化ポリスチレン微小球第74番に共有結合させた。Luminexにより推奨された手順に従い、捕捉抗体と微小球との共有結合を行った。
【0045】
要するに、微小球のストック溶液を、超音波浴(Sonicor Instrument Corporation,Copiaque,N.Y.)中で2分間分散させた。2.5×106微小球のアリコートを、0.1Mのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.1)
(リン酸緩衝液)を含むマイクロタイター管中で再懸濁させて、最終容量80μlにした。微小球の均一な分布が観察されるまで、この懸濁液を超音波処理した。N−ヒドロキシ−スルホスクシンイミド(スルホ−NHS)および塩酸1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(Pierce)の溶液を両方とも50mg/mLで、リン酸緩衝液中で調製し、続いて、各溶液10μlを加えて、反応を安定化させ、微小球を活性化した。この懸濁液を室温で10分間インキュベーションし、抗体50μgを含有するPBS250μl中に再懸濁させた。この混合物を暗所で継続的に振盪しながら一晩インキュベーションした。次いで、微小球をPBS−0.05%ツイーン20、250μlとともに4時間インキュベーションした。吸引した後に、ビーズをPBS−1%BSA−0.1%アジ化ナトリウム1mLでブロックした。血球計算板を用いて微小球をカウントし、1mL当たり微小球106個の最終濃度で暗所中、4℃で貯蔵した。微小球20
00個をPE結合ヤギ抗マウスIgG(BD Biosciences,San Diego、CA)で染色することにより、モノクローナル抗体の結合効率を試験した。検出抗体(Ab)の濃度およびインキュベーション時間に関して、アッセイをさらに最適化した。連続希釈された精製CA−125を使用しLuminexアッセイおいて決定された、新開発のアッセイの感度は、20IUであった。変動係数として表されるイントラアッセイ変動性を、患者10人の試料についての平均をもとに算出し、2つの異なる時点で2回測定した。平均変動係数として表される重複測定の範囲内でのイントラアッセイ変動性は、8.5%であった(データは示さない)。各標準および試料10個の4倍重複(quadru
plicates)測定を試験することにより、インターアッセイ変動性を評価した。これらの試料の変動性は、10から22%であり、平均は16.5%であった(データは示さない)。次いで、抗CA−125微小球を既存の多重キットと組み合わせた。
【0046】
データの統計解析
S−Plus統計ソフトウェア(Seattle,Washington:Math Soft,Inc.,1999)を使用して、すべての統計解析を行った。データを初めに、トレーニングおよび試験セットにランダムに分ける;表Cに記載。次いで、ロジスティック回帰(Hosmer,DW,S Lemeshow,Applied Logistic Regression.New York,NY:John Wiley&Sons,1989)を使用して、各マーカーの最適な重み付け、ならびに引き続いて症例であると予測される確率を算出した。予測確率≧0.5のすべてを、予測症例と分類し;予測確率<0.5を予測対照として分類した。ロジスティックモデルとトレーニングセットとを適合させた後に、疾患状態の判別を試験セットに関して計算した。
【0047】
【表3】

【0048】
サイトカイン
市販元から、組換えVEGF、EGFおよびMCP−1を購入した。PeproTech,Inc(Rocky Hill、NJ)から、組換えIL−6、IL−8およびIL−12を得た。R&D Systems,Inc.(Minneapolis,MN)から、ポリクローナル中和抗EGF Ab(Ab528)を得た。
LabMap技術によるサイトカインおよび血管由来因子の血清濃度
LabMap技術を使用する多重アッセイで、3種の臨床群:対照の健康なボランティア、良性骨盤内腫瘍を有する女性および初期卵巣がんを有する女性からの患者の血液中で、26種の異なる血清マーカー(表D)の循環系濃度を評価した。
【0049】
【表4】

【0050】
対照でも患者群でも、IL−2、IL−4、IL−5、IL−10、IL−13、IL−15、IL−17、IL−18、TNFα、IFNγ、RANTES、GM−CSF、bFGFおよびスルビビンの血清レベルは検出不可能であった。IL−1β、MIP−1
α、MIP−1β、HGF、TGFβ、EGFRおよびFasLは、測定可能な血清濃度を示したが、これは、対照と患者群とでは異ならなかった(データは示さない)。IL−6、IL−8、G−CSF、VEGFおよびCA−125の血清濃度は、対照に比べて、卵巣がん患者では有意(P<0.01)に高かった。意外にも、卵巣がんを有する女性は、EGF、IL−12p40およびMCP−1についてかなり低い血中レベルを示した(p<0.001)。表Eおよび図1に、EGF、G−CSF、IL−6、IL−8、CA−125、VEGF、MCP−1およびIL−12p40での結果を示す。
【0051】
【表5】

【0052】
統計解析
これらのサイトカインの予診可能性を評価するために、データを初めに、ほぼ同等サイズのトレーニングセットおよび試験セットにランダムに分けた。該当する比較(即ち、対照対初期がん、対照対良性および良性対初期がん)それぞれについて、ロジスティック回帰モデル(Hosmerら,1989)を手初めにトレーニングデータに当てはめ;次いで、個々の試験セットを使用して、予測される確率(症例であると)および判別結果を得た。試験およびトレーニングデータのランダムな選択を各モデルで1000回繰り返し、判別率の変動性に関する確実な推定値を得た。正確に判別されたパーセント(PCC)、感度(SEN)および特異性(SPC)の平均値(トレーニングおよび試験セットの全部で1000回のランダム分割にわたる)で、結果を記載した。PCC、SENおよびSPCについての95%信頼区間(95%CI)も、分布の2.5および97.5パーセンタ
イルとして示した。S−Plus統計ソフトウェア(Seattle,Washington:Math Soft,Inc.,1999)を使用して、すべての統計解析を行った。
【0053】
通常、変数kを用いるロジスティックモデル(即ち、サイトカイン)を次の式で表すが、ここで、y^は、予測された症例状態であり、x1からxkは、該当するサイトカインで
の発現レベルである。
【0054】
【数1】

【0055】
log関数(即ち、上式の左側)は、二分する結果(即ち、症例または対照)をlog規格では線状である量に変換する。
次いで、ロジスティックモデルからの係数をトレーニングデータに適合させて使用し、症例であると予測された確率を、試験セットにおける各被験者について算出した。症例である予測確率が、トレーニングセットで観察された症例の割合よりも高かった場合には(通常、0.5を上回る)、被験者を予測された症例と判別した。症例であると予測された確率が、トレーニングセットで観察された症例の割合よりも低かった場合には、被験者を予測された対照と判別した。ロジスティックモデルを1つのデータセットに合わせ、次いで、結果を個々の(即ちランダムに選択された)試験セットについて予測することにより、判別の正確度、感度および特異性を公平に推定することができる。
【0056】
所定の比較(例えば、対照対初期がん)のために、ロジスティックモデルを初めに、個別のサイトカインそれぞれに当てはめた。次いで、最も高い判別率(即ち、正確に判別されるパーセンテージ)をもたらすサイトカインを別個に、残りのサイトカインを各々伴う一連の2変数モデルに入れた。例えば、EGFが最も良好な判別をもたらした場合には、残りのサイトカインをそれぞれ、EGFを伴う2変数モデルに入れることにする。次いで、正確に分類された最も高いパーセンテージをもたらす2変数モデルを別個に、残りのサイトカイン各々と組み合わせて、一連の3変数モデルを生じさせる。同様のまたはより良好な判別正確度がより大きなモデルで達成することができるまで、同様のステップアップまたは前方選択の手順を続けた。最も高い判別率をもたらすモデルを、最適モデルと示す。
【0057】
対照 対 初期卵巣がんの比較
表Fは、対照から初期卵巣がんを同定するために個々のサイトカインそれぞれを使用した場合の判別結果を示している。結果は、これらのサイトカインのいずれも個別には、初期がんの特別に正確な予測をもたらさないことを示している。EGFのみが、試験セット被験者の75%を超えて正確に判別した。他には2種のサイトカイン(MCPおよびIL−6)だけが、60%を上回る正確な判別をもたらした。しかしながら、95%信頼区間は、9種のサイトカインの中で、3種(EGF、MCPおよびIL−6)が個別に、偶然よりも有意に良好な判別をもたらすことを示している。即ち、PCCについて低い方の95%信頼限界は、50.0%より上であった。
【0058】
【表6】

【0059】
EGFが初期がんを最も予測したので、これをモデル選択プロセスに初めに入れた。前記のように前方選択プロセスを続けることにより、さらなるモデルを案出した。表Gは、生じた多重回帰モデルを示している。結果は、4種のサイトカインを伴うモデルが最も良好な類別率をもたらし、したがって、最適モデルとして選択されることを示している。EGF、IL−6、IL−8およびVEGFを含む一モデルは、90%を上回る正確度を、正確な判別(90%)、感度(90%)および特異性(91%)においてもたらした。6種またはそれ以上のサイトカインを含むさらなるモデルは、判別率の低下をもたらした(ここには示さない)
【0060】
【表7】

【0061】
培養卵巣がん細胞の上澄み液中でのサイトカインレベル
in vivoデータを実証するために、2種の卵巣腫瘍細胞系列:OVCAR3およびSKOV3の細胞培養培地中におけるIL−6、IL−8、G−CSF、VEGF、EGF、IL−12p40およびMCP−1のレベルを評価した。Luminexビーズ分析により、両方の細胞系列の調整培養培地中でのVEGF、IL−6、IL−8およびG−CSFの測定できるレベルが明らかになった。このことは、卵巣腫瘍細胞による前記サイトカインの分泌を示している。対照的に調整培養培地において、測定できるEGF、IL−12p40またはMCP−1は同定することができなかった(データは示さず)。
【0062】
これらのin vivo結果により、EGF、MCP−1およびIL−12の比較的低い循環濃度が証明された。これらのサイトカインの低いレベルは、腫瘍による消費によると仮定した。この仮定を確認するために、3種すべてのサイトカインを測定可能な濃度で
含有する女性の血清100μlとともに、それぞれOVCAR3およびSKOV3卵巣腫瘍細胞108個をRTで1時間インキュベーションした。1時間のインキュベーション後
に、血清からこれら3種のサイトカインの完全な枯渇が観察された。さらに、卵巣腫瘍細胞系は両方とも、PBSまたは強化血清からEGF、MCP−1およびIL−12を消費した。特異的中和抗体の添加によりEGFの特異的結合が阻害される場合には、血清からのEGFの枯渇は観察されなかった(図2)。卵巣腫瘍細胞によるPBSからの組換えIL−6、IL−8またはVEGFの枯渇も観察されなかった(データは示さず)。
【0063】
別々に染色された蛍光ビーズを使用するLuminex LabMap検出アッセイは
、慣用されるELISAを上回る明らかな利点を有する。即ち、ELISAに匹敵する感度、正確度および再現性で多数のアナライトを同時に検出することができる(Veikkolaら,2000)。正常な対照との比較において、初期卵巣がんに罹った女性の血清をスクリーニングするためにLabMAP技術を使用したところ、8種の循環タンパク質:EGF、MCP−1、IL−12p40、G−CSF、CA−125、VEGF、IL−6およびIL−8が、卵巣がん特異性を有すると同定された。これらのタンパク質すべての循環レベルは、ELISAまたはRIAにより測定され、刊行されている所見に報告されているレベルに近かった。
【0064】
対照と比較して、サイトカインレベルの2種の異なるパターンが卵巣がんでは観察された。VEGF、IL−6、IL−8およびCA−125は、卵巣がん患者の血液中では上昇した。加えて、卵巣がんを伴う患者では循環G−CSFの比較的高いレベルが、初めて観察された。がん患者の血液中でのサイトカインの高い値は、腫瘍細胞または非腫瘍細胞、即ち、腫瘍に応答する免疫または内皮細胞による分泌に起因しうる。刊行されている情報(Santinら,1999)と一致して、IL−6、G−CSF(Glezermanら,Tumor necrosis factor−alpha and interleukin−6 are differently expressed by fresh human cancerous ovarian tissue and primary cell lines. Eur Cytokine Netw.199
8 Jun;9(2):171−9、およびZiltenerら, Secretion
of bioactive interleukin−1,interleukin−6,and colony−stimulating factors by human ovarian surface epithelium.Biol Reprod.1993 Sep;49(3):635−41)およびIL−8(Xu,L.and I.J.Fidler,Interlukin 8:an autocrine gro
wth factor for human ovarian cancer. Onc
ol Res,2000.12(2):p.97−106)、VEGFのin vitr
o分泌が卵巣がん細胞により観察された。
【0065】
しかしながら、これらのサイトカインは、他の細胞によっても産生され、例えばVEGFは、平滑筋、黄体および副腎皮質細胞を含む複数の正常な細胞種により産生されて分泌され;IL−6、IL−8およびMCP−1(CCL2)は、マクロファージ、樹状細胞、内皮細胞、線維芽細胞およびリンパ球を含む多くの細胞により産生されうる。腫瘍により分泌される因子は、腫瘍種に特異的であるだろうが、理論的には、腫瘍が一定サイズになって初めて、測定可能になる。このような腫瘍マーカーの例は、CA−125であり、これは、末期の上皮卵巣がんの85%で上昇するが、I段階疾患を有する患者ではその50%未満で上昇するにすぎない。他方、腫瘍の成長に応答して免疫および他の細胞で誘発されるサイトカインは比較的低い腫瘍特異性を示すが、腫瘍進展の初期では上昇し始めうる。理想的には、診断の試験は、両方の群を代表するマーカーの組み合わせを測定しなければならない。
【0066】
EGF、MCP−1およびIL−12p40により異なるパターンが提示されたが、これらは、対照血清と比較して卵巣がんでは低かった。調べた8種の抗原のうち、EGFが最も強い卵巣がんとの関連を示した。これは、卵巣がんを有する患者では低いEGFレベルが疾患と強い関係を持つことの初めての記載である。甲状腺の分化がんを有する患者で、低下した循環EGFレベルが観察されている(Nedvidkovaら,Epidermal growth factor(EGF)in serum of patients with differentiated carcinoma of thyroids Neoplasma.1992;39(1):11−4)が、乳がんまたはメラノーマの患者においてはそうではない(我々の未発表の観察)。
【0067】
したがって、EGFの低い循環レベルは、がんに特異的であり得る。卵巣がん細胞はEGF受容体を発現し、EGFは、卵巣細胞のためのオートクリン成長因子である(Baron,A.T.ら,Serum sErbB1 and epidermal growth factor levels as tumor biomarkers in women with stage III or IV epithelial ovarian cancer.Cancer Epidemiol Biomarkers
Prev,1999.8(2):p.129−37およびMaihle,N.J.ら,EGF/ErbB receptor family in ovarian cancer.Cancer Treat Res,2002.107:p.247−58)。我々のin vitro実験が示すように、卵巣がん患者における低下した循環EGFレベルは、卵巣腫瘍細胞によるEGFの消費によるようである。加えて、可溶性EGF受容体(sErbB1)が、これらの患者末期の血液中で見いだされた(Baronら、1999およびMaihleら2002)。EGFR/EGF相互作用は、付加的にEGFのクリアランスを上昇させ、卵巣がん患者で血中EGFレベルの低減をもたらすようである。前記の刊行物(Baronら、1999およびMaihleら、2002)に反して、ErbB1の循環濃度における、卵巣がんに特異的な差異はLabMap方法によって観察されなかったことを特記する。EGFと同様に初期の卵巣がん患者は、低いレベルの循環MCP−1を示した。本明細書に示されている知見と同様に、対照に比較して卵巣がんにおけるMCP−1の低い循環レベルを、Pensonらが記載している(Cytokines IL−1beta,IL−2,IL−6,IL−8,MCP−1,GM−CSF and TNFalpha in patients with epithelial ovarian cancer and their relationship to treatment with paclitaxel,Int J Gynecol Cancer 2000 Jan;10(1):33−41)。
【0068】
しかしながら他の研究は、対照に比較して卵巣がん患者でのMCP−1の高い循環レベルを報告している(Heflerら, Monocyte chemoattracta
nt protein−1 serum levels in ovarian cancer patients Br J Cancer.1999 Nov;81(5):855−9)。
【0069】
前記マーカーの各々と卵巣がんとの相関は控えめではあるが、統計解析によりこれらのマーカーの中から3種または4種を含む組み合わせパネルは、疾患との極めて強い相関を示し、したがって卵巣がんを初期診断するために用い得ることが証明された。いくつかのモデルは、卵巣がんの初期診断に関してひけを取らぬ高い感度と特異性とを与えた。したがって、案出されたサイトカインの組み合わせは、マーカーの唯一のサブセットとして見なすべきではない。同数のサイトカインを有する他のモデル(結果に示さず)も、極めて類似した結果を往々にしてもたらしうる。例えば、試験された3変数モデルはすべて、著しく類似した判別率をもたらした。数多くの可能な組み合わせならびにトレーニングおよび試験セットを繰り返し区分するコンピュータによる需要からあらゆる可能なモデルにつ
いて徹底的に検索しなくて済む。CA−125は初期段階の卵巣がんに関して、比較的高い特異性を有するが、感度は低いという我々の観察は、公表物と一致する(例えば、Folkら,Monitoring cancer antigen 125 levels
in induction chemotherapy for epithelial ovarian carcinoma and predicting outcome of second−look procedure Gynecol Oncol.1995 May;57(2):178−82)。興味深いことに、判別アルゴリズムにCA−125を組み込むと、劣悪な判別結果、即ち低い感度となった。
【0070】
LabMap技術により測定されたいくつかの血清マーカーの組み合わせにより、高い特異性および感度が得られた。したがって、LabMap技術により測定された初期卵巣がんについての血清マーカー組み合わせの予測能力は、SELDI−TOF技術により同定されたプロテオーム(proteomic)スペクトルに関してPetricoinおよびLiottaのグループが報告した予測能力に匹敵する(Gyn Oncol 2003)。しかしながらこれら2つの技術を比較すると、LabMapアッセイは、より高い再現性でしかも低費用の手法を提供している。我々の知る限り、本研究では、血清マーカーを使用する他の文献と比較して、最も高い予測能力が達成された。表Hは、単一および組み合わせ血清マーカーの感度および特異性に関する利用可能なデータを表している。
【0071】
【表8】

【0072】
1 Diamandis 2002
2 Luo
3 Baronら,1999
4 Skates
5 Robertson
6 Nam,Cole
7 Oehler,M.K.and H.Caffier,Prognostic re
levance of serum vascular endothelial growth factor in ovarian cancer.Anticancer
Res,2000.20(6D);p.5109−12;Obermair,Aら,Concentration of vascular endothelial growth factor(VEGF) in the serum of patients with suspected ovarian cancer.Br J Cancer,1998.77(11):p.1870−4;Tanirら,Preoperative serum vascular endothelial growth factor(VEGF) in ovarian masses.Eur J Gynaecol Oncol.2003;24(3−4):271−4;and Cooperら,2002
興味深いことに、サイトカイン数を(最適なモデルを超えて)多くするモデルでは、判別率の低下が観察された。この現象は、少なくとも部分的には試料サイズの限界によるようである。充分なデータを利用して、極めて正確な判別、高い感度および高い特異性を得ることができたが、より大きな試料サイズのためにさらなるデータ収集が可能であれば、モデルのさらなる複雑さ、より正確な結果を得ることができる。1変数(即ちモデルでのサイトカイン)当たり少なくとも10回の観察を得るという一般的なルールは、このモデルでは2〜3変数でほぼ満たされる。ロジスティックモデルの線形特性は、何らかの制約をもたらすかも知れない。それというのもがんの確率は同時に、複数のサイトカインの多重的な組み合わせに依存しうるためである。未来分析は、他のさらに柔軟な回帰および判別方法、例えば、ニューラルネットワークおよび判別ツリーを導入するであろう。
【実施例2】
【0073】
循環抗体の精製
抗原特異的(単一特異性)循環抗体または2種またはそれ以上のこのような循環抗体の集団(これらに限られないが)を、次のプロトコルに従って精製すると、特異的な循環抗体の血清濃度を決定するためのアッセイを容易にすることができる。この方法で精製されたIgは、個々の循環抗体を正確に定量するための対照として使用することができる。
【0074】
該当する精製抗原、例えば、IL−6、IL−8、EGF、EGFR、VEGF、Her2/neu、PDGF、PDGFR、スルビビン、Fas、FasL、CA−125、CA15−3、CA19−9、CA72−4、CEA、MUC−1、PSA;AFP、bHCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)、トランスグルタミナーゼ、c−myc、N−Ras、K−Ras、p53;サイクリンB、サイクリンD、Akt1(v−aktネズミ胸腺腫ウイルスがん遺伝子ホモログ1)などを、これらに限られないが、タンパク質をLuminexビーズに結合させるための前記プロトコルを使用して、カルボキシレート修飾ポリスチレンビーズ(Cat.No.CLB4、Sigma Chemical Co.)に共有結合させることができる。例えば、下記の実施例に示されているように、IL−6およびIL−8は、Peprotech,Inc.,Rocky Hill NJから;EGF、EGFR、VEGF、Her2/neu、PDGF、PDGFR、スルビビン、FasおよびFasLは、R&D Systems,Inc.(Minneapolis,MN)から;CA−125、CA15−3、CA19−9、CA72−4、CEA、MUC−1、PSA;AFPおよびbhCGは、Fitzgerald Industries International,Inc.(Concord,MA)から;トランスグルタミナーゼは、Sigma−Aldrich Corp.(St.Lois,MO)から;c−myc、N−Ras、K−Ras、p53;サイクリンB、サイクリンDは、Santa Cruz Biotechnology,Inc.(Santa Cruz,CA)から;Akt1はBiosource International(Camarillo,CA)から得た。カップリング反応は、PBS、5%BSA、0.01%
ツイーン20中で行った。ビーズ1mLはタンパク質2mgまで結合させる。アフィニティカラムを、前記のカップリング緩衝液の5カラム容量で平衡させた。
【0075】
例えば、これらに限られないがPBSを用いて1:2に希釈された血清試料をカラムに適用し、RT(約25℃)で30〜60分インキュベーションした。該アフィニティカラムを15カラム容量の結合緩衝液で洗浄した。結合した免疫グロブリン(約99%IgG/1%IgM)を、5カラム容量のImmunoPure(登録商標)IgG溶離緩衝液(Cat.No.21004,Pierce Biotechnology,Inc.)で溶離する。溶離を280nmでの吸光によりモニターした。1Mトリス(pH9.5)50μlを加えるか、ImmunoPure(登録商標)結合緩衝液100μlを加えることにより、溶離した液を中和した。次のステップの間に、ヒトIgMに対するウサギ抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.,West Grove,PA)を共有結合させているSigmaビーズを有するアフィニティカラムを使用して、IgM分子を除去した。最初のアフィティ結合に関して記載したと同様に、手順を正確に行う。最後に分光光度計により、タンパク質濃度を測定する。必要であるか望ましい場合には、標準的な方法論に従い長期保存のために、こうして精製されたヒト単一特異性IgG調製物を濃縮し、無菌化し、アリコートに分け、凍結させることができる。
【実施例3】
【0076】
血清サイトカイン分析
・患者集団
患者集団は、実施例1に記載されている。本研究では、各群からのより少ない試料を利用した(表I)
【0077】
【表9】

【0078】
EGF、IL−6、IL−8、G−CSF、VEGF、CA−125およびMCP−1についての多重LabMapアッセイを、実質的に実施例1において記載したように行った。しかし、各アナライトを単一ビーズアッセイで試験して、検出抗体の最適な濃度を決
定した。次いで、微小球を多重化して、インキュベーション時間およびレポーターシグナルに関して最適化した。レポーターシグナルとして、ストレプトアビジン−PE(Molecular Probes,Inc,Eugene OR)を様々な濃度で試験した。EGFRおよびFasLでの最小サイトカイン検出レベルは、<5pg/mLであり、CA125では、<5IU/mLであった。変動係数として表されるイントラアッセイ変動性を、10個の患者試料での平均に基づいて算出し、異なる2つの時点で2回測定した。平均変動係数として表される重複試験の範囲内でのイントラアッセイ変動性は、5.4〜9.1%の範囲であった(データは示さず)。各標準および10の試料からなる4重のセット(quadruplicates)を試験することにより、インターアッセイ変動性を評価した。これらの試料の変動性は、5.6〜9.6%であった(データは示さず)。これらの単一アッセイを1つの多重アッセイに組み合わせて、さらに最適化した。24セット(plex)での個々のサイトカインについてのインターアッセイ変動性は、3.5〜9.8%の範囲であり、イントラアッセイ変動性は、3.6〜12.6%の範囲であった(Biosource Internationalにより提供された情報)。
データの統計解析
記述的な統計およびグラフ表示(即ちドット・プロット)を作成して、各疾患状態について各マーカーの分布を示した。t検定とノンパラメトリックに等価であるWilcoxon順位−和(rank−sum)検定を使用して、各疾患状態間でのマーカー発現における差の有意性を評価した。スピアマンの(ノンパラメトリック)順位相関も算出して、マーカーの各ペア間での関係を算出した。
【0079】
S−Plus統計ソフトウェアによって与えられた判別ツリー(CART)を使用して、卵巣がんの状態の識別を行った。有望な指標物質(例えば所定のサイトカイン)それぞれの範囲をまず探索し、次いで所定のデータセットの可能性を最大化するスプリット(split)を見出すことにより、判別ツリーは、結果(outcome)のクラス間(例えば、がん患者と対照とを)を識別する。生じたサブセット(または「節(node)」)それぞれの中で、アルゴリズムは、再び最適なスプリットを選択するためにそれぞれの変数の範囲を探索する。すべての観察が完全に識別されるか、あるいは所定の節内での試料サイズがさらに識別するには小さくなりすぎる(即ち、n=5以下)まで、このプロセスを続ける。データセットにおいて、2つの観察のみが、マーカーに関して欠測値を有しており、解析から除外された。生じた判別ツリーの最終アウトプットは、各スプリットについての決定基準のグラフ表示であり、最終スプリット(即ち末端の節)を越えて、症例であると予測される確率を示している。いくつかの他の方法(ロジスティック回帰およびニューラルネットワーク)も、同様ではあるが、やや最適さには劣る結果で実行された(結果は示さず)。
【0080】
独立のデータを用いて10倍交叉妥当化(ten-fold cross-validation)を実行し、判
別正確度(classification accuracy)を評価した。特に、該データを同じサイズ(また
は可能な限り同じサイズ;これらのデータではnk=8〜9)の10個のサブセットにラ
ンダムに分けた。各サブセットについて、モデルを、そのサブセット外のデータの90%に合わせた;生じたモデル(またはツリー)を次いで、所定サブセット内のデータの10%に適用した。したがって、生じた判別正確度の推定値は、モデル適合および検証のために、別々のデータサブセットを利用し、かくして再置換のバイアス(re−substitution bias)を回避する。得られた感度および特異性は、決定ルール(即ち、所定の症例または対照として予測される可能性を判別するためのカットポイント)の範囲にわたって報告され、レシーバ−オペレータ特性(ROC)曲線を生じさせた。ROC曲線は、様々なカットポイントにわたる(1特異性)による感度の図形表示である。しかしながら交叉妥当化は、データの各サブセットについて可能性として異なるモデルをもたらすために、すべての観察を用いて(即ち、交叉妥当化を用いずに)生じさせた判別ツリーは、最適モデルを記載する目的のために示された。他に記載がなければ、0.5を上回る予測可能性を有する観察は、症例として(または、良性と対照とを比較するための良性
の状態として)判別する。
【0081】
卵巣がん患者でのサイトカインおよびCA125
LabMAP(登録商標)技術を使用する多重アッセイで、3種の臨床群:初期段階(I〜II)卵巣がんを有する女性、良性骨盤内腫瘍を有する女性および年齢をマッチさせた健康な対照(表I)からの患者の血清試料において、異なる機能群に属する28種の異なる血清マーカーの循環濃度を評価した。IL−2、IL−4、IL−5、IL−10、IL−13、IL−15、IL−17、IL−18、TNFα、IFNγおよびスルビビンの血清レベルは、対照でも患者の血清でも検出不可能であった。IL−1β、IL−12p40、MIP−1α、MIP−1β、HGF、RANTES、bFGF、GM−CSF、TGFβは、測定可能な血清濃度を示したが、これらは、対照と患者群とで異なることはなかった(データは示さず)。IL−6、IL−8、G−CSF、CA125およびVEGFの血清濃度は、対照に比較して卵巣がん患者では著しく高いことが判明した(p<0.05〜p<0.001)(表Jおよび図3)。LabMAP(登録商標)アッセイは、EGF(224±12pg/ml)およびMCP−1(384±21pg/ml)では相対的に高い血清濃度を示した(表Jおよび図3)。意外にも、EGFおよびMCP−1の血清レベルは、対照に比較して卵巣がん患者では有意に低かった(P<0.05〜P<0.001)(表Iおよび図3)。
【0082】
【表10】

【0083】
特に図3は、健康な対照、I〜II期の卵巣がん患者および良性の婦人科疾患を有する
患者でのサイトカインおよび成長因子の血清レベルを示している。初期(I〜II)卵巣がんを有する患者45人、良性骨盤内腫瘍を有する患者44人および年齢および性別をマッチさせた健康な対照37人から血清を集めた。サイトカインおよび成長因子の循環濃度を、「方法」に記載されているようにLabMAP技術を使用して測定した。測定を2回行った。図中の水平線は平均値を示している。*はp<0.05での、**は、p<0.01での;***はp<0.001での対照とがん患者との間の統計的有意性を示している。
【0084】
良性腫瘍を有する患者の血清は、対照と比較して高いレベルのVEGF、G−CSFおよびCA−125を有していた(p<0.05)。しかしながら、がん群と良性群との間に、G−CSFおよびVEGF濃度に関して統計的な差異は観察されなかった。CA−125レベルは、がん群に比較して良性群ではかなり(P<0.05)低かった。良性腫瘍を有する患者は、低レベルのEGF、IL−12p40およびMCP−1を有することを特徴とする(表Jおよび図3)。しかしながら、IL−6およびIL−8の循環濃度は、卵巣がん患者の血清のみで上昇し、良性群では上昇しなかった(表Jおよび図3)。
卵巣がんバイオマーカーとしての血清サイトカインの統計解析
初期の卵巣がんと健康な対照との比較
表Jは、初期卵巣がんと対照とを区別するために個々のサイトカインをそれぞれ使用しての判別結果を示している。結果は、マーカーは個別には、初期がんについてやや正確な予測しかもたらさなかった。CA−125、EGFおよびIL−6のみが、試験セット被験者の80%を超える割合で正確に分類した(表K)
【0085】
【表11】

【0086】
図4Aは、対照と初期卵巣がんとを区別するためにCART方法論を使用する判別ツリーを表している。図3のモデルは、モデルに適合する各群でのすべての観察を利用した(後続のパラグラフで説明されるように、判別正確度についての後の推定に利用される交叉妥当化とは逆)。この判別ツリーは、8種のマーカーのうち、5種を利用し、これには、CA125、EGF、VEGF、IL−6およびIL−8が含まれた。各スプリットに記載されたデータの範囲(例えば、CA−125<26)は、データのサブセットを示しており、これはさらに分岐により左側に細分化する。例えば、CA−125<26を有する被験者を、IL−6(<6.35対>6.35)により細分化する一方で、CA−125>26を有する被験者を次いでさらに、IL−8のレベルにより細分化した(<5.265対>5.165)。各最終群(即ち、末端の節)に記載された数は、各サブセットの範囲内で症例である可能性を示している。
【0087】
次いで、10倍交叉妥当化を使用して、判別正確率(対象と初期がんとを区別する際の)を得た。図4Bは、生じたROC曲線を示している。「方法」セクションに記載したように、感度および特異性は、各被験者を症例と対照とに判別するために使用されるカットポイント(即ち、判別ツリーからの予測確率)に依存している。0.5の標準的なカットポイント(即ち、0.5を上回る予測確率を有する者はすべて、がん症例として判別される)を使用すると、感度100%、特異性86%および正確な判別93%が得られる。さらに特異性を91%に固定すると、著しく高い感度95.5%が得られた(この場合も正確な判別93%)。あるいは95.3%の特異性は、感度84.1%(および正確な判別90.0%)に対応する。レシーバ−オペレータ特性(ROC)曲線下の全面積は、1(完全な判別を示す)に近く、0.966であった。
【0088】
特に、図4Aは、初期卵巣がんと健康な対照とを区別するための判別ツリーを示している。矩形は、サイトカインおよびサイトカインカットオフを含むスプリッティング節(splitting nodes)を示している。各スプリットに記載されているデータ範囲は、分岐によ
り左側にさらに細分化されるデータのサブセットを示している。各最終群(即ち末端の節)に記載された数は、各サブセット内で症例である確率を示している。図4Bは、バイオマーカー・パネルに関するレシーバ−オペレータ特性(ROC)曲線を示している。初期卵巣がんと健康な対照との判別ツリー分析の10倍交叉妥当化からの結果を示している。いくつかのモデルが、卵巣がんの初期診断に関して比較可能な高い感度および特異性を示した。したがって、結果的に生じたサイトカインの組み合わせを、唯一のマーカーサブセットと見なすべきではない。同じ数のサイトカインを有する他のモデル(示さない)も往々にして、極めて類似した結果をもたらした。例えば、試験された3変数モデルはすべて、非常に似た判別率をもたらした。数多くの可能な組み合わせ、ならびにトレーニングおよび試験セットを繰り返し区分するコンピューターによる要求によって、あらゆる可能なモデルを徹底的に検索しなくてもよい。
【0089】
・対照および初期卵巣がんと良性状態との比較
良性骨盤内腫瘍と他の群とを区別するための血清バイオマーカー・パネルの有効性を評価するために、別々の判別ツリーモデルを適用して、1)良性状態 対 初期がんを、2)良性状態 対 対照を予測した。同様の10倍交叉妥当化手順を使用して、判別正確度を評価した。良性とがんとの比較では、被験者の80.2%が正確に判別され、感度は84.1%、特異性は75.7%であった。良性とがんとを比較するための判別ツリー(示さず)は、5種のマーカー(CA125、G−CSF、IL−6、EGFおよびVEGF)を利用した。良性と対照との比較では、被験者の90.0%が正確に判別され、感度は86.5%、特異性は93.0%であった。良性と対照とを比較するための判別ツリー(示さず)は、8種のマーカーの中から6種を利用し、これにはEGF、VEGF、G−CSF、CA125、IL−6およびIL−8が含まれていた。
【実施例4】
【0090】
循環抗体についてのLabMAPアッセイの開発
底部がフィルターの96ウェルマイクロプレート(Millipore)中で、アッセイを行った。該当する精製抗原(実施例2に記載の供給源からのIL−6、IL−8、EGF、EGFR、VEGF、Her2/neu、PDGF、PDGFR、スルビビン、Fas、FasL、CA−125、CA15−3、CA19−9、CA72−4、CEA、MUC−1、PSA;AFP、bhCG、トランスグルタミナーゼ、c−myc、N−Ras、K−Ras、p53;サイクリンB、サイクリンDおよびAkt1)を抗体に関する記載と同様にしてLuminexビーズに結合させた。
【0091】
抗原結合ビーズを、4%BSAを含有するブロック緩衝液とともにマイクロタイターシェーカー上、室温で1時間、プレインキュベーションした。次いで、真空マニホールドを
使用して、洗浄緩衝液(PBS、1%BSA、0.05%ツイーン20)でビーズを3回洗浄し、続いて1:250に希釈された血清50μlとともに4℃で30分間インキュベーションした。この希釈は、前の血清滴定に基づき抗IL−8IgGを回収するには最適のものとして選択された(データ示さず)。次いで洗浄手順を前記のように繰り返し、ビーズをヒトIgGに対して生じたPE結合ロバ抗体(Jackson Laboratories)4μg/ml(50μl/ウェル)とともに、継続的に振盪しながら暗所で45分間インキュベーションした。ウェルを2回洗浄し、アッセイ緩衝液を各ウェルに加え、Bio−Plex懸濁アレイシステム(Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA)を使用して、試料を分析した。標準曲線のために、抗原結合ビーズを、特異抗原に対する連続希釈ヒト抗体とともにインキュベーションした。単一特異的ヒト抗体の精製は前記した。データ分析は5パラメーター曲線フィッティングを使用して行った。
【実施例5】
【0092】
初期卵巣がんを有する患者、良性骨盤内腫瘍を有する患者および対照の健康な女性での循環抗体のLabMAP分析
循環抗体を分析するために、パネルを作成した。このパネルは、次の抗体:IL−6、IL−8、EGF、EGFR、VEGF、Her2/neu、PDGF、PDGFR、CA−125、CA15−3、CA19−9、CA72−4、CEA、MUC−1、PSA、AFP、bhCG、スルビビン、Fas、FasL、トランスグルタミナーゼ、c−myc、N−Ras、K−Ras、Akt1、p53;サイクリンB、サイクリンDのための28アッセイを含む。結果を定量化するために、精製ヒトIgGの標準曲線を利用した。正確な定量のために、所定の抗原に特異的なヒト抗体(単一特異性)を実施例2に前記したように血清から精製した。血清サンプル、実施例1に前記したサンプル+初期卵巣がんを有する患者からの追加的試料31種、良性状態を有する患者からの試料60種(表A)および追加的な対照試料30種を分析した。次の12種の抗原に対する抗体の血清濃度は、対照および良性骨盤内腫瘍に比較して卵巣がん患者では著しく高いことが判明した(P<0.05〜P<0.001);IL−6、IL−8、c−Myc、p53、CA−125、CEA、CA15−3、MUC−1、スルビビン、bHCG、オステオポンチン、PDGF BB(図3)。
【0093】
・初期卵巣がんと健康な対照との比較
この判別ツリーは、13種のマーカーの中から5種を利用し、これには、CA15−3、IL−8、スルビビン、p53、c−mycが含まれた。0.5の標準的なカットポイントを使用すると、感度95%、特異性100%および正確な判別98%が得られる。前記の12種の循環抗体からの3〜約8種からなる他の組み合わせも、高い判別結果をもたらした。
【0094】
・対照および初期卵巣がんと良性状態との比較
良性とがんとを比較する表Lに示されているように、被験者のうちの89%が感度95%および特異性80%で正確に判別された。良性とがんとを比較するための判別ツリー(示さず)は、次の8種の抗原:CA15−3、CEA、IL−6、IL−8、p53、c−myc、bHCGおよびスルビビンに対する抗体を利用した。良性と対照との比較では、被験者の98%が感度96%および特異性99%で正確に判別された。良性と対照とを比較するための判別ツリー(示さず)は4種のマーカーを利用し、これには、CA15−3、IL−8、MUC1およびc−mycが含まれた。
【0095】
【表12】

【実施例6】
【0096】
がんマーカーのためのLabMAPアッセイの作成
ErbB2、CA15−3、CEA、Fas、FasL、EGFR、CA−125、サイトケラチン19(Cyfra21−1)、カリクレイン−8、M−CSF(マクロファージコロニー刺激因子)のためのアッセイを、実施例1と同様に開発した。これらのアッセイを開発するために使用された抗体および標準の供給源を表Mに示す。
【0097】
【表13】

【0098】
初期卵巣がんを有する患者、良性骨盤内腫瘍を有する患者および対照の健康な女性でのがんマーカーのLabMAP分析
このプロジェクトのために、初期段階卵巣がんを有する患者から試料31種、良性状態を有する患者からの試料60種および追加の対照試料30種(表Aに含まれる)を利用した。CA−125およびCyfra21−1の血清濃度は、対照および良性骨盤内腫瘍を有する患者に比較して、卵巣がん患者では著しく高いことが判明した(P<0.05〜P<0.001)。Her2/neuおよびEGFRの濃度は、対照分および良性群においてよりもがん群では著しく低かった(P<0.05)(図6)。
・初期卵巣がんと健康な対照との比較
LUMINEXプロファイルのマスキングされたクラス標識を予測するため、アルゴリ
ズムの不偏性能を最適化する統計装置を使用して、次のデータを作成した。このnaive Bayes分析により、感度91%、特異性94%および正確な判別92%が生じた。
・対照および初期卵巣がんと良性状態との比較
これら4種のマーカーの組み合わせを使用する、良性とがんとの比較では、感度40%および特異性94%で、被験者の76%が正確に判別された。これら4種のマーカーの組み合わせを使用する良性と対照との比較では、感度86%および特異性89%で、被験者の87%が正確に判別された。
【0099】
さらにデータを、CARTプログラムを使用して分析し、その結果を表NおよびOに示す。がんと対照とを区別するためにパネル:サイトケラチン19、カリクレイン8、CEA、CA125、M−CSFを使用すると、感度94%、特異性94.0%および正確な判別94%が生じた。他の有効なパネルには:1)サイトケラチン−19、CEA、CA−125、M−CSFおよびEGFR;2)サイトケラチン−19、カリクレイン−8、CA−125、M−CSFおよびFas;3)サイトケラチン−19、カリクレイン−8、CEAおよびM−CSF;および4)サイトケラチン−19、カリクレイン−8、CEAおよびCA−125が含まれる。CART方法論を使用するがんと良性との増殖評価に対してパネルCA125、サイトケラチン19、ErbB2を使用すると、感度81.3%および特異性88.1%で、被験者の85.9%が正確に判別された。
【0100】
【表14】

【0101】
【表15】

【実施例7】
【0102】
縦断的研究
複合ランダム化コントロール試験(RCT)を、1996年に開始し2001年12月に
終了する年間スクリーニングでSt Bartholomew病院(英国、ロンドン)にて行い、がんについては2003年12月まで追跡する(Skates,SJら.Calculation of the Risk of Ovarian Cancer from Serial CA−125 Values for Preclinical
Detection in Postmenopausal Women J.Clin.Oncol.2003 21(Suppl.):206−210;「Skates ら」)。この試験は、CA125を用い、さらにSkatesらにより記載されている「Risk of Ovarian Cancer」アルゴリズムを使用する、唯一の血清ベースの卵巣がんスクリーニング試験である。そのアルゴリズムを予見的に評価し、このようなRCTの実現可能性を決定するために、この研究が英国で企画された。
【0103】
この試験では、閉経期後の50歳を超える(自己申告)の女性13688人を集められた。基底となる疫学的な情報をすべての女性から得て、6734人をスクリーニングアームにランダム化した。これらの女性は、年間スクリーニングを2年間から6年間にわたって受けた。スクリーニングを2001年12月に終えた。6年間にわたり、6週間から1年間間隔の連続的な試料が得られた。全部で35175種の試料を、血清バンクで得ることができ、がんおよび他の一般的な疾患の発生を記録するための追跡が進行中である。このコレクションからの最も独特で貴重な試料は、卵巣がんを有すると診断された女性からの臨床前の試料である。この研究からの血清バンクは、症状による提示と対照的に、スクリーニングにより卵巣/ファロピオ卵管のがんの進展が検出される1年未満前〜6年前からの19人の女性からの93血清試料のセットを目下含んでいる。
【0104】
すべての症例および対照は、高い家族履歴リスクを有さない、即ち、卵巣がんを有する親戚を1人以下しか有さない、閉経期後の≧50才の女性である。原発性の卵巣/ファロピオ卵管がんと診断された研究参加者からの各血清試料を、健康なままだった女性からの3試料とマッチングさせた。すべての試料を採取し、郵便により室温、凝血管中で輸送した。中央研究室に届いたら、これらを直ちに遠心分離させ、血清を冷凍庫中、−20℃で保管した。試料の輸送時間をすべての試料に関して記録した。すべて、56時間未満の輸送時間を有していた。目下の研究では、試料の1アリコートを解凍し、100mLのアリコートに分配し、これを、冷凍庫中−20℃で貯蔵した。
【0105】
卵巣がんを発症した、Bartの研究での女性から得た一連の血清試料をLabMAP技術の使用により、実施例1〜6に記載のサイトカイン、循環抗体およびガンマーカーに関して分析した。図7Aおよび7Bは、診断のほぼ30から40ヶ月前に、Her2/neu、MUC−1、c−myc、p53、CA−125、CEA、CA72−4、PDGFRαに対する抗体(図7A)およびサイトカイン、IL−6、IP−10(インターフェロンγ誘発タンパク質、MW10kDA)およびIFNγの濃度(11人の患者での平均)が一過性で上昇することを示している。
【0106】
さらに、TNFα、MIP−1α、MIP−1β、EGFRおよびHer2/neuの濃度は、診断の40ヶ月前から確実に減少する(図7B)。平均CA−125濃度の上昇は、診断の9ヶ月前に初めて明らかになる(図7B)。さらに目下のところ、CA−125の上昇は、介入のための充分な正当性を表さない。したがって、いくつかのマーカーのベロシティを組み合わせることは、外科的に介入することについて卵巣がん発現の充分な指標として役立つであろう。図7Aおよび7Bにおいて、3〜30ヶ月の時点で、n=11:36ヶ月は実際には、36から42ヶ月の期間を表しており(n=11)、42ヶ月は実際には、42ヶ月以上の期間を示している(n=9)。
【0107】
多重Luminex LabMAPアッセイを、実施例1および3の記載とほぼ同様にして循環タンパク質;IL−6、IFN−γ、GM−CSF、TNFα、MCP−1、M
IP−1α、MIP−1β、bFGF、HGF、IP−10、IL−12p40、IL−15、CEA、ErbB2およびEGFRについて、さらに実施例4および5の記載と同様にして循環抗体;抗EGF、抗IL−8、抗VEGF、抗p53、抗スルビビン、抗Her2/neu(ヒト上皮成長因子受容体2)、抗MUC1、抗c−myc、抗c−myc2、抗オステオポンチン、抗PSA、抗CA−125、抗CEA、抗CA72−4、抗PDGF、抗Akt1および抗PDGFRα(血小板由来成長因子受容体α)について行った。循環抗体を、実施例2の記載のように抗原結合ビーズの混合物を使用してアフィニティ精製した。抗原結合ビーズは実施例2での記載と同様にして調製した。
【0108】
本明細書では、本発明の特定の実施形態を、本発明を限定するためではなく本発明を詳述するために記載したのであるが、当技術分野の専門家であれば、添付の請求項に記載の発明から逸脱することなく、本発明の原理および範囲内で、各部の詳細、材料および配置の数多くのバリエーションを作成することができることを認めるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】図1は、卵巣がん患者(OvCa)および健康な対照(C)での血清マーカーを示すグラフである。
【図2】図2は、卵巣がん細胞による可溶性EGFの吸収を示すグラフである。図中、“serum”は、血清を、“control”は対照を意味する。
【図3】図3は、実施例3に記載された3研究群における血清サイトカインレベルの分布を示すグラフである。図中、“benign”は、良性を、“control”は対照を意味する。
【図4A】図4Aは、初期段階卵巣がんと健康な対照とを区別するための判別ツリーを示す図である。
【図4B】図4Bは、実施例4に記載のROC曲線を示すグラフである。図中、“specificity”は、特異性を、“sensitivity”は感度を意味する。
【図5】図5は、実施例6に記載された3研究群における循環抗体の血清レベル分布を示すグラフである。図中、“benign”は良性を、“control”は対照を意味する。
【図6】図6は、実施例6に記載された3研究群でのがんマーカーの血清レベル分布を示すグラフである。図中、“benign”は良性を、“control”は対照を意味する。
【図7A】図7Aは、血清中を循環する血清マーカーのベロシティを示すグラフである。図中、“Months before diagnosis”は、診断前の月数を意味する。
【図7B】図7Bは、血清中を循環する血清マーカーのベロシティを示すグラフである。図中、“Months before diagnosis”は、診断前の月数を意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における卵巣がんの存在を決定する方法であって、EGF、G−CSF、IL−6、IL−8、CA−125、VEGF、MCP−1、抗IL6、抗IL8、抗CA−125、抗c−myc、抗p53、抗CEA、抗CA15−3、抗MUC−1、抗スルビビン、抗bHCG、抗オステオポンチン、抗PDGF、抗Her2/neu、抗Akt1、抗サイトケラチン19、サイトケラチン19、EGFR、CEA、カリクレイン−8、M−CSF、FasL、ErbB2およびHer2/neuのうちの2種またはそれ以上を含む血液マーカーパネルにおいて、該患者の血液試料中のマーカーレベルを決定することを含み、この場合、次の状態:EGFLO、G−CSFHI、IL−6HI、IL−8HI、VEGFHI、MCP−1LO、抗IL−6HI、抗IL−8HI、抗CA−125HI、抗c−mycHI、抗p53HI、抗CEAHI、抗CA15−3HI、抗MUC−1HI、抗スルビビンHI、抗bHCGHI、抗オステオポンチンHI、抗Her2/neuHI、抗Akt1HI、抗サイトケラチン19HIおよび抗PDGFHI、CA−125HI、サイトケラチン19HI、EGFRLO、Her2/neuLO、CEAHI、FasLHI、カリクレイン−8LO、ErbB2LO、およびM−CSFLOのうちの2つまたはそれ以上の存在が、患者における卵巣がんの存在を示すことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記のパネルが、EGF、G−CSF、IL−6、IL−8、CA−125、VEGF、MCP−1、抗c−myc、抗p53、抗CEA、抗CA15−3、抗MUC−1、抗スルビビン、抗bHCG、抗オステオポンチン、抗PDGF、サイトケラチン19、EGFR、CEA、カリクレイン−8、M−CSFおよびHer2/neuのうちの3種から5種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記のパネルが、EGF、G−CSF、IL−6、IL−8、CA−125、VEGF、MCP−1、抗c−myc、抗p53、抗CEA、抗CA15−3、抗MUC−1、抗スルビビン、抗bHCG、抗オステオポンチン、抗PDGF、サイトケラチン19、EGFR、CEA、カリクレイン−8、M−CSFおよびHer2/neuのうちの4種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記のパネルが、EGF、G−CSF、IL−6、IL−8、CA−125、VEGF、MCP−1、抗c−myc、抗p53、抗CEA、抗CA15−3、抗MUC−1、抗スルビビン、抗bHCG、抗オステオポンチン、抗PDGF、サイトケラチン19、EGFR、CEA、カリクレイン−8、M−CSFおよびHer2/neuのうちの5種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記のパネルが、サイトケラチン19を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記のパネルが、カリクレイン−8をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記のパネルが、CEAをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記のパネルが、M−CSFおよびCA−125の一方または両方をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記のパネルが、CA−125をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記のパネルが、M−CSFおよびFasLの一方または両方をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記のパネルが、CA−125を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記のパネルが、CK−19をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記のパネルが:
a. CA−125、サイトケラチン−19、Fas、M−CSF;
b. サイトケラチン−19、CEA、Fas、EGFR、カリクレイン−8;
c. CEA、FAS、M−CSF、EGFR、CA−125;
d. サイトケラチン19、カリクレイン8、CEA、CA125、M−CSF;
e. カリクレイン−8、EGFR、CA−125;
f. サイトケラチン−19、CEA、CA−125、M−CSF、EGFR;
g. サイトケラチン−19、カリクレイン−8、CA−125、M−CSF、Fas;
h. サイトケラチン−19、カリクレイン−8、CEA、M−CSF;
i. サイトケラチン−19、カリクレイン−8、CEA、CA−125;
j. CA125、サイトケラチン19、ErbB2;および
k. 抗CA15−3、抗IL−8、抗スルビビン、抗p53および抗c−myc
のいずれかである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
線形回帰分析、判別ツリー分析およびヒューリスティックなナイーブBayes分析からなる群から選択される統計的方法を適用することにより、患者の血液での2種またはそれ以上のマーカーのレベルと対照試料での同じマーカーのレベルとを比較することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記の統計的方法を、コンピュータープロセスにより行う、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記の統計的方法は、判別ツリー分析である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記のパネルは、前記の統計的方法を使用すると少なくとも約80%の感度および少なくとも約80%の特異性をもたらす、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記のパネルは、前記の統計的方法を使用すると少なくとも約85%の感度をもたらす、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記のパネルは、前記の統計的方法を使用すると少なくとも約85%の特異性をもたらす、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記のパネルは、前記の統計的方法を使用すると少なくとも約90%の特異性をもたらす、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記のパネルは、前記の統計的方法を使用すると少なくとも約99%の特異性をもたらす、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記のパネルは、抗c−myc、抗p53、抗CEA、抗CA15−3、抗MUC−1、抗スルビビン、抗bHCG、抗オステオポンチンおよび抗PDGFのうちの2種またはそれ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記のパネルは、CA−125、サイトケラチン19、EGFR、カリクレイン−8、M−CSF、FasL、CEAおよびHer2/neuのうちの2種またはそれ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記のパネルは、Her2/neu、EGFR、CA−125およびサイトケラチン19を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記のパネルは、抗CA15−3、IL−8、スルビビン、抗p53および抗c−mycを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記のパネルは、抗CA15−3、抗CEA、抗IL−6、抗IL−8、抗スルビビン、抗p53、抗bHGCおよび抗c−mycを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記の血液試料は、血清試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
患者の血液におけるEGF、G−CSF、IL−6、IL−8、CA−125、VEGF、MCP−1、抗c−myc、抗p53、抗CEA、抗CA15−3、抗MUC−1、抗スルビビン、抗bHCG、抗オステオポンチン、抗PDGF、抗Her2/neu、サイトケラチン19、EGFR、CEA、カリクレイン−8、M−CSF、FasL、ErbB2およびHer2/neuのうちの2種またはそれ以上の量を決定するため、イムノアッセイを行うことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記のイムノアッセイは、EGF、G−CSF、IL−6、IL−8、VEGFおよびMCP−1に特異的な複数の結合試薬タイプを含むアレイを利用し、この場合、各結合試薬タイプは独立に、1個または複数の支持体の1つまたは複数の表面において1個または複数の別々の位置に結合している、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記の支持体は、識別可能なマーカーを含むビーズであり、この場合、各結合試薬タイプは、別の結合試薬タイプが結合しているビーズとは異なる識別可能なマーカーを含むビーズに結合している、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記の識別可能なマーカーは、蛍光化合物を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記の識別可能なマーカーは、量子ドットを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
EGF、G−CSF、IL−6、IL−8、CA−125、VEGF、MCP−1、抗IL6、抗IL8、抗CA−125、抗c−myc、抗p53、抗CEA、抗CA15−3、抗MUC−1、抗スルビビン、抗bHCG、抗オステオポンチン、抗PDGF、抗Her2/neu、抗Akt1、抗サイトケラチン19、サイトケラチン19、EGFR、CEA、カリクレイン−8、M−CSF、FasL、ErbB2およびHer2/neuのうちの2種またはそれ以上に特異的な結合試薬タイプを含み、その際、各結合試薬タイプは独立に、1個または複数の支持体の1個または複数の表面において1個または複数の別々の位置に結合していることを特徴とするアレイ。
【請求項34】
前記の支持体は、識別可能なマーカーを含むビーズであり、この場合、各結合試薬タイプは、別の結合試薬が結合するビーズとは異なる識別可能なマーカーを含むビーズに結合している、請求項33に記載のアレイ。
【請求項35】
前記の識別可能なマーカーは、蛍光化合物を含む、請求項34に記載のアレイ。
【請求項36】
前記の識別可能なマーカーは、量子ドットを含む、請求項34に記載のアレイ。
【請求項37】
EGF、G−CSF、IL−6、IL−8、CA−125、VEGF、MCP−1、抗
c−myc、抗p53、抗CEA、抗CA15−3、抗MUC−1、抗スルビビン、抗bHCG、抗オステオポンチン、抗PDGF、サイトケラチン19、EGFRおよびHer2/neuのうちの2種またはそれ以上に対して個別に特異的である複数の結合試薬タイプから実質的になるアレイで、この場合、各結合試薬タイプは独立に、1個または複数の支持体の1個または複数の表面において1個または複数の別々の位置に結合する、請求項33に記載のアレイ。
【請求項38】
前記のパネルが、EGF、G−CSF、IL−6、IL−8、CA−125、VEGF、MCP−1、抗c−myc、抗p53、抗CEA、抗CA15−3、抗MUC−1、抗スルビビン、抗bHCG、抗オステオポンチン、抗PDGF、サイトケラチン19、EGFR、CEA、カリクレイン−8、M−CSFおよびHer2/neuのうちの3種から5種を含む、請求項33に記載のアレイ。
【請求項39】
前記のパネルが、EGF、G−CSF、IL−6、IL−8、CA−125、VEGF、MCP−1、抗c−myc、抗p53、抗CEA、抗CA15−3、抗MUC−1、抗スルビビン、抗bHCG、抗オステオポンチン、抗PDGF、サイトケラチン19、EGFR、CEA、カリクレイン−8、M−CSFおよびHer2/neuのうちの4種を含む、請求項33に記載のアレイ。
【請求項40】
前記のパネルが、EGF、G−CSF、IL−6、IL−8、CA−125、VEGF、MCP−1、抗c−myc、抗p53、抗CEA、抗CA15−3、抗MUC−1、抗スルビビン、抗bHCG、抗オステオポンチン、抗PDGF、サイトケラチン19、EGFR、CEA、カリクレイン−8、M−CSFおよびHer2/neuのうちの5種を含む、請求項33に記載のアレイ。
【請求項41】
前記のパネルが、サイトケラチン19を含む、請求項33に記載のアレイ。
【請求項42】
前記のパネルが、カリクレイン−8をさらに含む、請求項41に記載のアレイ。
【請求項43】
前記のパネルが、CEAをさらに含む、請求項42に記載のアレイ。
【請求項44】
前記のパネルが、M−CSFおよびCA−125の一方または両方をさらに含む、請求項43に記載のアレイ。
【請求項45】
前記のパネルが、CA−125をさらに含む、請求項42に記載のアレイ。
【請求項46】
前記のパネルが、M−CSFおよびFasLの一方または両方をさらに含む、請求項45に記載のアレイ。
【請求項47】
前記のパネルが、CA−125をさらに含む、請求項33に記載のアレイ。
【請求項48】
前記のパネルが、CK−19をさらに含む、請求項47に記載のアレイ。
【請求項49】
前記のパネルが:
a. CA−125、サイトケラチン−19、Fas、M−CSF;
b. サイトケラチン−19、CEA、Fas、EGFR、カリクレイン−8;
c. CEA、FAS、M−CSF、EGFR、CA−125;
d. サイトケラチン19、カリクレイン8、CEA、CA125、M−CSF;
e. カリクレイン−8、EGFR、CA−125;
f. サイトケラチン−19、CEA、CA−125、M−CSF、EGFR;
g. サイトケラチン−19、カリクレイン−8、CA−125、M−CSF、Fas;
h. サイトケラチン−19、カリクレイン−8、CEA、M−CSF;
i. サイトケラチン−19、カリクレイン−8、CEA、CA−125;
j. CA125、サイトケラチン19、ErbB2;および
k. 抗CA15−3、抗IL−8、抗スルビビン、抗p53および抗c−myc
のいずれかである、請求項33に記載のアレイ。
【請求項50】
患者における卵巣がんの存在を決定する方法であって、抗Her2/neu、抗IL−8、抗オステオポンチン、抗VEGFおよび抗PDGFのうちの少なくとも1種のレベルを患者の血液試料で決定することを含み、この場合、次の状態:抗Her2/neuHI、抗IL−8HI、抗オステオポンチンHI、抗VEGFHIおよび抗PDGFHIのうちの1種または複数の存在が患者における卵巣がんの存在を示すことを特徴とする方法。
【請求項51】
患者における卵巣がんの存在を決定する方法であって、抗CA15−3、抗IL−8、抗スルビビン、抗p53および抗c−mycを含む血液マーカーパネルで、患者の血液試料中のマーカーレベルを決定することを含み、この場合、次の状態:抗CA15−3HI、抗IL−8HI、抗スルビビンHI、抗p53HIおよび抗c−mycHIの存在が患者における卵巣がんの存在を示すことを特徴とする方法。
【請求項52】
前記の血液マーカーパネルは、抗CEA、抗IL−6、抗EGFおよび抗bHCGをさらに含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
線形回帰分析、判別ツリー分析およびヒューリスティックなナイーブBayes分析からなる群から選択される統計的方法を適用することにより、患者の血液でのマーカーのレベルと対照試料での同じマーカーのレベルとを比較することをさらに含む、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記の統計的方法を、コンピュータープロセスにより行う、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記の統計的方法は、判別ツリー分析である、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記のパネルは、前記の統計的方法を使用すると少なくとも約90%の感度および少なくとも約99%の特異性をもたらす、請求項51に記載の方法。
【請求項57】
前記のパネルは、前記の統計的方法を使用すると少なくとも約90%の感度および少なくとも約99%の特異性をもたらす、請求項51に記載の方法。
【請求項58】
患者の血液中の抗CA15−3HI、抗IL−8HI、抗スルビビンHI、抗p53HIおよび抗c−mycHIの量を決定するため、イムノアッセイを行うことを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項59】
前記のイムノアッセイは、EGF、G−CSF、IL−6、IL−8、VEGFおよびMCP−1に特異的な複数の結合試薬タイプを含むアレイを利用し、この場合、各結合試薬タイプは独立に、1個または複数の支持体の1つまたは複数の表面において1個または複数の別々の位置に結合している、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記の支持体は、識別可能なマーカーを含むビーズであり、この場合、各結合試薬タイプは、別の結合試薬タイプが結合しているビーズとは異なる識別可能なマーカーを含むビーズに結合している、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記の識別可能なマーカーは、蛍光化合物を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記の識別可能なマーカーは、量子ドットを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
抗CA15−3、抗IL−8、抗スルビビン、抗p53および抗c−mycに特異的な複数の結合試薬タイプを含み、この場合、各結合試薬タイプは独立に、1個または複数の支持体の1つまたは複数の表面において1個または複数の別々の位置に結合していることを特徴とするアレイ。
【請求項64】
抗CEA、抗IL−6、抗EGFおよび抗bHCGに特異的な複数の結合試薬タイプをさらに含み、この場合、各結合試薬タイプは独立に、1個または複数の支持体の1つまたは複数の表面において1個または複数の別々の位置に結合している、請求項63に記載のアレイ。
【請求項65】
臨床的卵巣がんの発症を予測する方法であって、患者の血液中の抗Her2/neu、抗MUC−1、抗c−myc、抗p53、抗CA−125、抗CEA、抗CA72−4、抗PDGFRα、IFNγ、IL−6、IL−10、TNFα、MIP−1α、MIP−1β、EGFRおよびHer2/neuのうちの2種またはそれ以上の、2つまたはそれ以上の時点での濃度変化を決定することを含み、この場合、2つの時点間での該患者の血液中の抗Her2/neu、抗MUC−1、抗c−myc、抗p53、抗CA−125、抗CEA、抗CA72−4、抗PDGFRα、IFNγ、IL−6およびIL−10の濃度上昇ならびに2つの時点間での該患者の血液中のTNFα、MIP−1α、MIP−1β、EGFRおよびHer2/neuの濃度低下が、臨床的卵巣がんの発症の前兆であることを特徴とする方法。
【請求項66】
患者における卵巣がんの存在を決定する方法であって、EGF、G−CSF、IL−6、IL−8、VEGFおよびMCP−1のうちの3種またはそれ以上を含む血液マーカーパネルで、該患者の血液試料中のマーカーレベルを決定することを含み、この場合、次の状態:EGFLO、G−CSFHI、IL−6HI、IL−8HI、VEGFHIまたはMCP−1LOのうちの3種またはそれ以上の存在が、患者における卵巣がんの存在を示すことを特徴とする方法。
【請求項67】
EGFLOは、EGFが約224pg/mL未満であることを意味し、G−CSFHIは、G−CSFが約22pg/mLを上回ることを意味し、IL−6HIは、IL−6が約8.8pg/mLを上回ることを意味し、IL−8HIは、IL−8が約10.2pg/mLを上回ることを意味し、CA−125HIは、CA−125が約10pg/mLを上回ることを意味し、VEGFHIは、VEGFが約91pg/mLを上回ることを意味し、MCP−1LOは、MCP−1が約342pg/mL未満であることを意味する、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
患者の血液中でのEGF、G−CSF、IL−6、IL−8、VEGFまたはMCP−1の量を決定するため、イムノアッセイを行うことを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記のイムノアッセイは、EGF、G−CSF、IL−6、IL−8、VEGFおよびMCP−1に特異的な複数の結合試薬タイプを含むアレイを利用し、この場合、各結合試薬タイプは独立に、1個または複数の支持体の1つまたは複数の表面において1個または複数の別々の位置に結合している、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記の支持体は、識別可能なマーカーを含むビーズであり、この場合、各結合試薬タイ
プは、別の結合試薬タイプが結合しているビーズとは異なる識別可能なマーカーを含むビーズに結合している、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記の識別可能なマーカーは、蛍光化合物を含む、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記の識別可能なマーカーは、量子ドットを含む、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
EGF、G−CSF、IL−6、IL−8、VEGF、CA−125およびMCP−1のうちの3種またはそれ以上に特異的な複数の結合試薬タイプを含み、この場合、各結合試薬タイプは独立に、1個または複数の支持体の1つまたは複数の表面において1個または複数の別々の位置に結合していることを特徴とするアレイ。
【請求項74】
前記の支持体は、識別可能なマーカーを含むビーズであり、この場合、各結合試薬タイプは、別の結合試薬タイプが結合しているビーズとは異なる識別可能なマーカーを含むビーズに結合している、請求項73に記載のアレイ。
【請求項75】
前記の識別可能なマーカーは、蛍光化合物を含む、請求項74に記載のアレイ。
【請求項76】
前記の識別可能なマーカーは、量子ドットを含む、請求項74に記載のアレイ。
【請求項77】
他の結合試薬に対比して独立に、1個または複数の支持体の1個または複数の表面において1個または複数の別々の位置に結合しているCA−125に特異的な結合試薬タイプをさらに含む、請求項73に記載のアレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公表番号】特表2007−502983(P2007−502983A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523941(P2006−523941)
【出願日】平成16年8月13日(2004.8.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/026317
【国際公開番号】WO2005/016126
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(501102988)ユニバーシティ オブ ピッツバーグ オブ ザ コモンウェルス システム オブ ハイヤー エデュケイション (24)