説明

てんぷの耐振軸受機構、これを備えたてんぷ及びこれを備えた時計

【課題】てん真の支持状態の変動によるてんぷの動作の変動が最低限に抑えられ得る耐振軸受機構、これを備えたてんぷ及び時計の提供。
【解決手段】時計2のてんぷ3の耐振軸受機構1は、スラスト軸受として働く受石10と、ジャーナル軸受として働く穴石部17及び該穴石部と一体の穴石枠部20を備えた穴石・穴石枠一体構造体9と、該穴石・穴石枠一体構造体9を支えると共に大径の開口端側に係合部を備える耐振座体30と、外周側において耐振座体30の係合部で支持され内周側において受石を穴石・穴石枠一体構造体9に弾性的に押付けて保持する押さえばね37とを有し、受石10のうち耐振軸受機構1により支えられる軸40の端面45に対面し該軸の端面に当接する表面11が外に突出するように湾曲した凸面からなる。受石10の凸面11が球面の一部からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はてんぷの耐振軸受機構、これを備えたてんぷ及びこれを備えた時計に係る。
【背景技術】
【0002】
時計の使用者の手首の急激な動き等により手首にはめられた時計のてんぷに加わる軸方向(てん真の延在方向に平行な方向)ないし横方向(てん真の延在方向に対して直角な方向)の衝撃が緩和されるように、てん真の両端のほぞ部は耐振軸受機構で支持されている。この種の耐振軸受機構として、受石と、穴石と、受穴石を支える穴石枠と、該穴石枠を支える耐振座体と、耐振座体と穴石枠との間において受石を穴石枠に押付ける押さえばねとを有する耐振軸受機構は、知られている(特許文献1や特許文献2)。
【0003】
より詳しくは、この種の耐振軸受機構101は、例えば、図10並びに図11の(a)及び(b)に示したような構造であって、スラスト軸受として働く受石110と、ジャーナル軸受として働く穴石117と、筒状部121及びその開口端121a側の拡径部122を備え拡径部122において受石110を支えると共に筒状部121内で穴石117を支える穴石枠120と、該穴石枠120を支える耐振座体130と、耐振座体130と穴石枠120との間に配置されて受石110を穴石枠120の筒状部121の開口端部121aに押付ける耐振押さえばね137とを有する。
【0004】
より詳しくは、真鍮やステンレス鋼の如き金属製の耐振座体130は、内周側に傾斜面部135a,135bを有する。この傾斜面部135a,135bは、全体として一つの仮想円錐台の周面を形成し、例えば、傾斜面部135a,135bの部分は図10の断面で見た場合概ね一列に並んでいる。また、真鍮やステンレス鋼の如き金属製の穴石枠120も、外周面に傾斜面部126a,126bを有する。この傾斜面部126a,126bも、傾斜面部135a,135bと同様に、全体として一つの仮想円錐台の周面を形成し、例えば、傾斜面部126a,126bの部分は図10の断面で見た場合概ね一列に並んでいる。穴石枠120を耐振座体130の所定位置に配置した状態では、穴石枠120の傾斜面部126a,126bが耐振座体130の傾斜面部135a,135bに丁度当接する。
【0005】
耐振座体130は、耐振押さえばね137や耐振受石110や耐振穴石枠120などの部品全体を保持する。より詳しくは、耐振押さえばね137が耐振受石110及び耐振穴石枠120を保持しててんぷ103への衝撃力を吸収し、衝撃を受けた際の受石110及び穴石枠120の移動(変位)及び元の位置の方への復元を助ける。耐振受石110は、てんぷ103のてん真140の中心軸線Cの延在方向(軸方向)A1,A2の力に抗しててん真140を支える。
【0006】
耐振穴石枠120は、押さえばね137によって、傾斜面部126a,126bにおいて耐振座体130の傾斜面部135a,135bに弾性的に押付けられ衝撃等を受けた際には耐振座体に対して摺動する。このとき、金属製の耐振枠体130の傾斜面部135a,135bに対して金属製の耐振穴石枠120が傾斜面部126a,126bで相対変位され、例えばB方向の衝撃に伴う外力がなくなると、抑えばね137のばね力により概ねもとの位置に戻る。
【0007】
但し、耐振座体130と耐振穴石枠120との傾斜面部135a,126aおよび135b,126bにおける変位は金属間の接触面に沿った変位(摺動)であるから、摩擦抵抗が大きいために、衝撃を受けた耐振座体が元の位置に確実には戻り難い。その結果、穴石117が中心からずれててんぷ103の回転中心軸線が中心からずれたままになる虞れがある。しかも、耐振座体130の傾斜面部135aの傾斜角度及び傾斜面部135aの傾斜角度を相互に同一にし且つ耐振穴石枠120の傾斜面部126aの傾斜角度及び傾斜面部126bの傾斜角度と同一にすることは容易でなく実際には多少なりともずれる虞れが高いので耐振座体130と耐振穴石枠120との傾斜面部135a,126aおよび135b,126bの間の実効的な摩擦抵抗が大きくなり元の位置に戻りにくくなる虞れがある。
【0008】
この耐振軸受機構101は、機械式時計102のてんぷ103のてん真140の両端の小径ほぞ部141F,141Rにおいててん真140を支える。以下では、耐振軸受機構101F及び101R並びにその部品ないし要素について、同一の符号の後に添字F又はRを付して示す。両者を区別しないとき又は総称するときは添字FやRを省く。
【0009】
受石110F,110Rのほぞ受面ないしスラスト軸受面111F,111Rは平面になっている。時計102の裏蓋側ないしてんぷ受側にあるてん真140のほぞ部141Fを支える耐振軸受機構(いわゆるてんぷ上軸受)101F及び時計102の文字板側にあるてん真140のほぞ部141Rを支える耐振軸受機構(いわゆるてんぷ下軸受)101Rは、実際上同様に構成されている。
【0010】
ここで、てんぷ103は、耐振軸受機構101の形態の上下の耐振軸受101F,101Rに加えて、てん真140やてんわ150やひげぜんまい155を備え、裏蓋側の耐振軸受101Fにおいててんぷ受105に取付けられている。なお、てんぷ受105及び文字板側の耐振軸受101Rは、夫々、地板108に取付けられている。ひげぜんまい155は、てん真140の中心軸線Cのまわりの渦巻の形態を備え、うずまきの内周側端部でひげ玉143に取付けられうずまきの外周側端部でひげ持(図示せず)に取付けられていて、緩急針(図示せず)によりその渦巻(ばね)の実効長が調整される。
【0011】
てんぷ103を含む調速脱進機104は、てんぷ103に加えて地板108で支持されたアンクル106及びがんぎ車107を有する。アンクル106は、ハコ先161で振り座の振り石144に係合され、入りつめ石及び出つめ石(図示せず)でがんぎ車107のがんぎ歯162に係合される。がんぎ車107はかな部164で四番車170に噛合されている。ぜんまい(図示せず)の動力で調速脱進機104を動作させる四番車170は、てんぷ103により規定された速度で間欠回転されるがんぎ車107により所定の回転速度で間欠回転される。
【0012】
以上の如く構成された従来の耐振軸受機構101F,101Rを備えた従来のてんぷ103を有する従来の時計102では、図13の(a)及び(b)に示したようにてんぷ103が適切な状態PS0にある場合、時計2は適切な動作をする。すなわち、受石110F,110Rの平面状のほぞ受面111F,111Rがてん真140の中心軸線Cに対して垂直になるように裏蓋側及び文字板側の耐振軸受機構101F,101R及び該機構101F,101Rの受石110F,110Rが配置され且つてん真140の中心軸線Cが実際上傾いていない場合、裏蓋側の耐振軸受機構101Fが文字板側の耐振軸受機構101Rの上に位置する平姿勢PP1を採っても、文字板側の耐振軸受機構101Rが裏蓋側の耐振軸受機構101Fの上に位置する裏平姿勢PP2を採っても、てん真140は、下側に位置するほぞ部141R,141Fの端面145R,145Fのうち実際上中心軸線Cの通る位置C0R,C0Fにおいてその下側に位置する文字板側又は裏蓋側の耐振軸受機構101R,101Fの受石110R,110Fのほぞ受面111R,111Fと当接し、該位置C0R,C0Fを中心に回転されることになる。従って、てんぷ103は、時計102の姿勢PP1,PP2によらず、実際上同様に動作し得、姿勢差が最低限に抑えられ得る。
【0013】
しかしながら、従来の耐振軸受機構101F,101Rを備えた従来のてんぷ103を有する従来の時計102において、裏蓋側の耐振軸受機構101Fが文字板側の耐振軸受機構101Rの上に位置する向きすなわち姿勢(以下では、「平姿勢」ともいう)PP1に時計102が配置されている場合と文字板側の耐振軸受機構101Rが裏蓋側の耐振軸受機構101Fの上に位置する向きすなわち姿勢(以下では、「裏平姿勢」ともいう)PP2に時計102が配置されている場合とでは、てんぷ103の状態が異なる状況が生じ得る。
【0014】
例えば、図14の(a)及び(b)に示したように、てんぷ受105側ないし裏蓋側の受石110Fが少し(例えば1度程度)傾いた状態で押さえばね137Fによって穴石枠120Fに取付けられた状態PS1では、図14の(a)に示した通り裏蓋側の耐振軸受機構101Fが文字板側の耐振軸受機構101Rの上に位置する平姿勢PP1に時計102が配置されている場合と、図14の(b)に示した通り文字板側の耐振軸受機構101Rが裏蓋側の耐振軸受機構101Fの上に位置する裏平姿勢PP2に時計102が配置されている場合とでは、てんぷ103の状態が異なる状況になる。なお、受石110Fの傾きは、典型的には、穴石枠120Fが耐振座体130Fに対して傾いた場合に生じる。
【0015】
てんぷ受105側の受石110Fが傾いて取付けられた状態PS1にある場合において図14の(a)に示したように文字板側の耐振軸受機構101Rが下側に位置していて文字板側の受石110Rがそのほぞ受面111Rでてん真140のほぞ141Rの端面を受ける平姿勢PP1では、図13の(a)や(b)の場合と実際上同様に、てん真140は、下側に位置するほぞ部141Rの端面145Rのうち実際上中心軸線Cの通る位置C0Rにおいてその下側に位置する文字板側の耐振軸受機構101Rの受石110Rのほぞ受面111Rと当接し、該位置C0Rを中心に回転されることになる。
【0016】
これに対して、時計102が反転されて、図14の(b)に示したようにてんぷ受105側(裏蓋側)の耐振軸受機構101Fが下側に位置していててんぷ受105側の受石110Fがそのほぞ受面111Fでてん真140のほぞ141Fの端面を受ける姿勢PP2では、図13の(a)や(b)の場合や図14の(a)の場合と異なり、てん真140は、中心軸線Cから離れていて、下側に位置するほぞ部141Fの端面145Fのうち受石110の傾斜方向と一致する側の端縁CaFにおいてその下側に位置するてんぷ受105側の耐振軸受機構101Fの受石110Fのほぞ受面111Fと当接する。従って、てん真140の回転中心CaFは、該てん真140の中心軸線Cとは異なり該中心軸線CからΔpr(ほぞ部141の半径に相当する大きさで、数10μm程度である)離れた点CaF(Ca)になり、回転軸が安定しない。
【0017】
従って、この状態PS1にある場合、時計102が平姿勢PP1を採るときと裏平姿勢PP2を採るときとで、てんぷ103の動作が異なり、相当程度の歩度の差が生じるのを避け難い。
【0018】
また、例えば、図15の(a)及び(b)(特に図15の(b))に示したように、裏平姿勢PP2において、てん真140の中心軸線Cが傾いている場合PS2も、図14の(a)及び(b)の場合PS1と同様に、てん真140は、中心軸線Cから離れていて、下側に位置するほぞ部141Fの端面145Fのうちてん真140の中心軸線Cの傾斜方向と一致する側の端縁CaFにおいてその下側に位置するてんぷ受105側の耐振軸受機構101Fの受石110Fのほぞ受面111Fと当接する。従って、てん真140の回転中心CaFは、該てん真140の中心軸線Cとは異なり該中心軸線CからΔpr(ほぞ部141の半径に相当する大きさで、数10μm程度である)離れた点CaF(Ca)になり、回転軸が安定しない。
【0019】
この状態PS2にある場合にも、時計102が平姿勢PP1を採るときと裏平姿勢PP2を採るときとで、てんぷ103の動作が異なり、相当程度の歩度の差が生じるのを避け難い。
【0020】
なお、てん真140の中心軸線Cが傾くのは、例えば、てんわ150の周方向の重量バランスがずれている場合に生じ得る。なお、厳密に言えば、例えば、渦巻きばねの形態のひげぜんまい155の巻上げ動作やほどけ動作の際にひげ玉143を介しててん真140にトルクが加えられることに応じててん真140の中心軸線Cは多少なりとも傾いたり該傾きが多少なりとも変動する。
【0021】
更に、図16の(a)及び(b)に示したように、てんぷ受105側のほぞ141Fの端面145Fがてん真140の中心軸線Cに対して傾斜している状態PS3の場合も、裏平姿勢PP2において、端面145Fのうち傾斜に伴って突出した端縁CaFがその下側に位置するてんぷ受105側の耐振軸受機構101Fの受石110Fのほぞ受面111Fと当接する。従って、てん真140の回転中心CaFは、該てん真140の中心軸線Cとは異なり該中心軸線CからΔpr(ほぞ部141の半径に相当する大きさで、数10μm程度である)離れた点CaF(Ca)になり、回転軸が安定しない。
【0022】
この状態PS3にある場合にも、時計102が平姿勢PP1を採るときと裏平姿勢PP2を採るときとで、てんぷ103の動作が異なり、相当程度の歩度の差が生じるのを避け難い。
【0023】
一方、時計102が平姿勢PP1を採る場合と裏平姿勢PP2を採る場合とで上述のような種々の理由で歩度に差異が生じる虞れが高くなるのを避けるべく、てん真140のほぞ141F,141Rの端面145F,145Rを平面状にしておく代わりに、該端面ないしほぞ先145F,145Rを凸状に湾曲させることも提案されている。
【0024】
しかしながら、ほぞ141F,141Rの直径は通常高々0.1mm程度であるので、凸状湾曲面の形状の寸法精度を高く保ち難く、凸状湾曲面の形状のバラツキに伴ってほぞ丈のバラツキ換言すればてん真140の長さのバラツキが大きくなると、平姿勢PP1と裏平姿勢PP2とでひげぜんまい155の形状に差異が生じる虞れが高くなる。従って、本来はてん真140の中心軸線Cに対して垂直な平面内で渦巻状に延在すべきひげぜんまい155が、例えば、時計が平姿勢PP1にある場合又は裏平姿勢PP2にある場合において多少なりともロート状になってそのばね特性が変動し、歩度差を生じさせる虞れが高くなるのを避け難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特開2009-139180号公報
【特許文献2】特許第4598701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明は、前記諸点に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、てん真の支持状態の変動によるてんぷの動作の変動が最低限に抑えられ得るてんぷの耐振軸受機構、これを備えたてんぷ及びこれを備えた時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明のてんぷの耐振軸受機構は、前記目的を達成すべく、スラスト軸受として働く受石と、ジャーナル軸受として働く穴石部及び該穴石部と一体の穴石枠部を備えた穴石・穴石枠一体構造体と、該穴石・穴石枠一体構造体を支えると共に大径の開口端側に係合部を備える耐振座体と、外周側において耐振座体の係合部で支持され内周側において受石を穴石・穴石枠一体構造体に弾性的に押付けて保持する押さえばねとを有するてんぷの耐振軸受機構であって、受石のうち耐振軸受機構により支えられる軸の端面に対面し該軸の端面に当接する表面が外に突出するように湾曲した凸面からなる。
【0028】
本発明のてんぷの耐振軸受機構では、「受石のうち耐振軸受機構により支えられる軸の端面に対面し該軸の端面に当接する表面が外に突出するように湾曲した凸面からなる」ので、穴石枠と押さえばねとで保持される受石が傾いたり、軸の中心軸線(重心線)が傾いたり、軸の端面が傾いたりしても、「受石のうち耐振軸受機構により支えられる軸の端面に対面し該軸の端面に当接する表面」が「平面」である場合と比較して、これらの傾斜に伴う回転支持部の位置ズレが最低限に抑えられる。従って、例えば、時計の姿勢が歩度に与える影響を最低限に抑えることも可能になる。また、「受石の表面(ほぞ受面)が外に突出するように湾曲した凸面である」ので、回転支持されるべき軸の端面に対して実際上一点で当接して支持し得るから、軸の回転が安定し易い。なお、この場合、てんぷの耐振軸受機構によって支持されるべき軸(てん真)の端部の端面ないし該端部(ほぞ部)の先端(ほぞ先)を平面状にし得るので、軸(てん真)の長さのバラツキを最低限に抑え得る。
【0029】
また、本発明のてんぷの耐振軸受機構では、「ジャーナル軸受として働く穴石部及び該穴石部と一体の穴石枠部を備えた穴石・穴石枠一体構造体」が設けられ、穴石部と穴石枠部とが一体的に構成され一体形成されているので部品点数が低減され得、「外周側において耐振座体の係合部で支持された押さえばねが内周側において受石を穴石・穴石枠一体構造体に弾性的に押付けて保持する」ので、受石を穴石枠を介して位置決めするのではなくて穴石に対して直接位置決めし得るから、受石の位置決めないし位置出しが容易且つ確実に行われ得る。
【0030】
加えて、本発明のてんぷの耐振軸受機構では、「ジャーナル軸受として働く穴石部及び該穴石部と一体の穴石枠部を備えた穴石・穴石枠一体構造体」が設けられ、「耐振座体が穴石・穴石枠一体構造体を支える」ように構成されるので、通常金属製である耐振座体が通常金属製である穴石枠ではなくて石(広義のセラミック)製である穴石・穴石枠一体構造体に当接してこれを支えることになるから、従来のてんぷの耐振軸受機構の場合と異なり(耐振座体と穴石枠との間における)「金属・金属」間の摺動ではなくて、(耐振座体と穴石・穴石枠一体構造体との間における)「金属・セラミック」間の摺動になることから、摩擦抵抗が低減され得る。従って、衝撃(外力)により受石の位置がずれても、衝撃(外力)がなくなると受石が元の正規の位置に戻り易く、軸受機構が最適な状態で動作され易い。本発明のてんぷの耐振軸受機構では、典型的には、穴石・穴石枠一体構造体が広義のセラミック製で、耐振座体が金属製である。
【0031】
本発明のてんぷの耐振軸受機構では、典型的には、受石の凸面が球面の一部からなる。
【0032】
その場合、受石の凸面が正確に乃至高精度に形成され易い。なお、凸面は、広義にみて球面を含む回転楕円体面であれば、所望ならば、他の形状でもよい。凸面が外向きに凸の滑らかに湾曲した形状であれば、凸面に回転対称性がなくてもよい。但し、受石の傾きの如きてん真の支持状態の変動が歩度の如きてんぷの動作に与える影響(動作の変動)を最低限に抑えるためには、部分球状面(球面の一部)であることが好ましい。
【0033】
本発明のてんぷの耐振軸受機構では、典型的には、受石が凸レンズ様の形状を有し、穴石・穴石枠一体構造体が円錐台状部を備え、該円錐台状部の大径端部のところで受石を支えるように構成され、押さえばねが、外周側において耐振座体の係合部で支持され内周側において穴石・穴石枠一体構造体の大径端部のところに受石を弾性的に押付けて保持するように構成される。
【0034】
その場合、耐振軸受機構の厚さを最低限に抑えた状態で、且つ該軸受機構に対面する軸の端面が平面であっても、てん真の支持状態の変動によるてんぷの動作の変動が最低限に抑えられ得、平姿勢や裏平姿勢の如き姿勢差による動作の変動も最低限に抑えられ得る。
【0035】
本発明のてんぷの耐振軸受機構の別の典型的な例では、受石が球体からなる。
【0036】
その場合、受石が高寸法精度で形成され、てんぷの動作変動も最低限に抑えられ得る。
【0037】
また、この別の典型的な例の場合、球状の受石が穴石・穴石枠一体構造体の穴石部に当接可能に穴石・穴石枠一体構造体の穴石枠部の円筒状領域内に配置され、押さえばねが、外周側において耐振座体の係合部で支持され内周側において穴石・穴石枠一体構造体の穴石枠部の円筒状領域内で穴石部の対向端面に受石を押付けることにより、受石を弾性的に保持するように構成されている。
【0038】
その場合、受石が球体(ボール)の形態であることによる厚さの増大が最低限に抑えられた状態で、受石が球体(ボール)であることの利点が享受され得る。
【0039】
本発明のてんぷの耐振軸受機構では、典型的には、穴石・穴石枠一体構造体の穴石枠部のうち受石のほぞ受面を支える部位が円錐台状である。
【0040】
その場合、てんぷの動作の変動を最低限に抑え得る。円錐台状の代わりに球状でもよい。
【0041】
本発明のてんぷは、前記目的を達成すべく、上述のような耐振軸受機構を有する。
【0042】
本発明のてんぷでは、耐振軸受機構により支えられる軸がてん真からなり、てん真の両端部にあり該てん真の本体部よりも小径のほぞ部の端面が実際上平面状である。
【0043】
その場合、てん真の長さが高い寸法精度で得られ、その結果、時計が平姿勢であるか裏平姿勢であるかによる歩度の変動が最低限に抑えられ得る。
【0044】
本発明の時計は、前記目的を達成すべく、上述のような耐振軸受機構又は上述のようなてんぷを有する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の好ましい一実施例の耐振軸受機構を備えた本発明の好ましい一実施例のてんぷを有する本発明の好ましい一実施例の時計の一部を示した断面説明図。
【図2】図1のてんぷの耐振軸受機構を示したもので、(a)は平面説明図、(b)は断面説明図。
【図3】図1のてんぷの耐振軸受機構にてん真のほぞ部を含む一端部が嵌った状態を示した断面説明図。
【図4】図1の時計のてんぷの耐振軸受機構においててんぷ受側の受石が傾いた状態にある場合を示したもので、(a)は平姿勢にある時計においててんぷの耐振軸受機構及びてん真のほぞ部を含む両端部を示した断面説明図、(b)は裏平姿勢にある時計においててんぷの耐振軸受機構及びてん真のほぞ部を含む両端部を示した断面説明図。
【図5】図1の時計のてんぷの耐振軸受機構において時計が裏平姿勢を採った際にてん真のほぞ部が傾いた状態になる場合を示したもので、(a)は平姿勢にある時計においててんぷの耐振軸受機構及びてん真のほぞ部を含む両端部を示した断面説明図、(b)は裏平姿勢にある時計においててんぷの耐振軸受機構及びてん真のほぞ部を含む両端部を示した断面説明図。
【図6】図1の時計のてんぷの耐振軸受機構においててん真のほぞ部のうちてんぷ受側のほぞ部の端面が傾いた状態にある場合を示したもので、(a)は平姿勢にある時計においててんぷの耐振軸受機構及びてん真のほぞ部を含む両端部を示した断面説明図、(b)は裏平姿勢にある時計においててんぷの耐振軸受機構及びてん真のほぞ部を含む両端部を示した断面説明図。
【図7】本発明の別の好ましい一実施例の耐振軸受機構を示したもので、(a)は平面説明図、(b)は断面説明図。
【図8】図7の耐振軸受機構にてん真のほぞ部を含む一端部が嵌った状態を示した本発明の別の好ましい一実施例のてんぷの一部を示した断面説明図。
【図9】図7の耐振軸受機構を有するてんぷにおいて種々の条件下での回転中心の位置ズレの程度を示したもので、(a)はてん真及び受石が所定の状態にある基準の場合を示した断面説明図、(b)は受石が傾いた状態にある場合を示した断面説明図、(c)はてん真が傾いた状態にある場合を示した断面説明図。
【図10】従来の耐振軸受機構を備えた従来のてんぷを有する従来の時計の一部を示した断面説明図。
【図11】図10の時計の従来の耐振軸受機構を示したもので、(a)は平面説明図、(b)は断面説明図。
【図12】図10のてんぷの耐振軸受機構にてん真のほぞ部を含む一端部が嵌った状態を示した断面説明図。
【図13】図10の時計のてんぷの耐振軸受機構が適切に動作し得る場合の状態を示したもので、(a)は平姿勢にある時計においててんぷの耐振軸受機構及びてん真のほぞ部を含む両端部を示した断面説明図、(b)は裏平姿勢にある時計においててんぷの耐振軸受機構及びてん真のほぞ部を含む両端部を示した断面説明図。
【図14】図10の時計のてんぷの耐振軸受機構においててんぷ受側の受石が傾いた状態にある場合を示したもので、(a)は平姿勢にある時計においててんぷの耐振軸受機構及びてん真のほぞ部を含む両端部を示した断面説明図、(b)は裏平姿勢にある時計においててんぷの耐振軸受機構及びてん真のほぞ部を含む両端部を示した断面説明図。
【図15】図10の時計のてんぷの耐振軸受機構において時計が裏平姿勢を採った際にてん真のほぞ部が傾いた状態になる場合を示したもので、(a)は平姿勢にある時計においててんぷの耐振軸受機構及びてん真のほぞ部を含む両端部を示した断面説明図、(b)は裏平姿勢にある時計においててんぷの耐振軸受機構及びてん真のほぞ部を含む両端部を示した断面説明図。
【図16】図10の時計のてんぷの耐振軸受機構においててん真のほぞ部のうちてんぷ受側のほぞ部の端面が傾いた状態にある場合を示したもので、(a)は平姿勢にある時計においててんぷの耐振軸受機構及びてん真のほぞ部を含む両端部を示した断面説明図、(b)は裏平姿勢にある時計においててんぷの耐振軸受機構及びてん真のほぞ部を含む両端部を示した断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の好ましい一実施の形態を添付図面に示した好ましい一実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0047】
図1には、本発明の好ましい一実施例の耐振軸受機構1を備えた本発明の好ましい一実施例のてんぷ3を有する本発明の好ましい一実施例の時計2の一部が示され、図2の(a)及び(b)には時計2の耐振軸受機構1が拡大して示され、図3には耐振軸受機構1を含むてんぷ3のてん真の一端側部分が拡大して示されている。
【0048】
機械式時計2では、調速脱進機4はてんぷ3とアンクル6とがんぎ車7とを有する。調速脱進機4を構成するこれらの時計部品3,6,7は地板8によって支持されている。アンクル6は、ハコ先61で振り座の振り石44に係合され、入つめ石及び出つめ石(図示せず)でがんぎ車7のがんぎ歯62に係合される。がんぎ車7はかな部64で四番車70に噛合されている。ぜんまい(図示せず)の動力で調速脱進機4のがんぎ車7を動作させる四番車70は、てんぷ3により規定された速度で間欠回転されるがんぎ車7により所定の回転速度で間欠回転される。
【0049】
てんぷ3は、てん真40と、てんわ50と、ひげぜんまい55とを有し、てん真40は上下(裏蓋側及び文字板側)の小径端部であるほぞ部41F,41Rにおいて耐振軸受機構の形態の上下の耐振軸受ないしてんぷ上軸受1F及びてんぷ下軸受1Rにより回転自在に支持されている。ほぞ部41F,41Rの端面45F,45Rは実際上中心軸線Cに対して垂直な平面になっている。従って、ほぞ部の端面ないしほぞ先を凸状に湾曲した面にする場合と比較して、ほぞ丈を正確に形成し得るので、てん真40の長さや形状を正確に形成し易く、ほぞ先の組付け状態のバラツキが最低限に抑えられ得る。
【0050】
なお、以下において、耐振軸受機構1F及び1R並びにその部品ないし要素について、同一の符号の後に添字F又はRを付して示す。両者を区別しないとき又は総称するときは添字FやRを省く。
【0051】
てんぷ下軸受すなわち下側ないし文字板側の耐振軸受機構1Rは地板8に取付けられ、てんぷ上軸受すなわち上側ないし裏蓋側の耐振軸受1Fはてんぷ受5を介して地板8に取付けられている。てん真40は、また、ほぞ部41F,41Rよりも中間部側に該ほぞ部41F,41Rよりも大径であるけれどもてん真40の他の部分よりも小径の端部軸部42F,42Rを有する。ひげぜんまい55は、てん真40の中心軸線(重心軸)Cのまわりの渦巻の形態を備え、渦巻の内周側端部においてひげ玉43に取付けられ、渦巻の外周側端部においてひげ持(図示せず)に取付けられていて、緩急針(図示せず)によりその渦巻(ばね)の実効長が調整される。
【0052】
上下の耐振軸受1F,1Rは、実際上同一の構造及び形状を有するので、両者を区別する必要がない限り、耐振軸受機構ないし耐振軸受1として説明する。
【0053】
てんぷ軸受一式ないし耐振軸受一式すなわち耐振軸受機構1は、スラスト軸受として働く広義のセラミック製の受石ないし耐振受石10と、広義のセラミック製であってジャーナル軸受として働く穴石部17及び該穴石部17と一体的な穴石枠部20を備えた穴石・穴石枠一体構造体9と、受石10及び穴石・穴石枠一体構造体9を支える金属製の耐振座体30と、押さえばねないし耐振押さえばね37とを有する。ここで、「広義のセラミック」は、ルビー等を含めてアルミナやジルコニアの如き金属酸化物のみならず、窒化物や炭化物も含み、天然石及び人工(合成)セラミックの両方を含むものを指す。
【0054】
耐振軸受機構1は、機械式時計2のてんぷ3のてん真40の両端の小径ほぞ部41F,41Rにおいててん真40を支える。受石10F,10Rのほぞ受面ないしスラスト軸受面11F,11Rは部分球面(半径の大きな球面の一部)になっている。受石10F,10Rのほぞ受面11F,11Rは、外に凸状に滑らかに湾曲した曲面(凸面)で回転対称性がある限り、部分球面(半径の大きな球面の一部)でなくてもよい。
【0055】
受石10は、上述のような凸レンズのような部分球状の端面11,12を有する。端面11,12の部分球状面が同一である場合、組付けの際に表裏の識別が不要である。但し、端面12は、径の異なる部分球面状であっても、部分球状である代わりに、例えば、平面状等他の形状であってもよい。耐振受石10は、てんぷ3のてん真40の中心軸線Cの延在方向(軸方向)A1,A2(区別しないか総称するときはA方向という)の力を受ける。
【0056】
耐振座体30は、小径筒状部31と、大径筒状部32と、てん真40の端部軸部42が遊嵌される端部軸部受容孔33aを備えた端部フランジ状部33と、接続フランジ状部34と、傾斜面部35a,35bと、径方向内向き係合部36とを有する。端部フランジ状部33は小径フランジ状部31の一端に形成され、大径筒状部32は小径筒状部31よりも大径で、その一端側において接続フランジ状部34を介して小径筒状部31の他端につながっている。径方向内向き係合部36は、大径筒状部32の他端側に形成されている。端部軸部受容孔33aは、てん真40の端部軸部42の径よりも多少大きい。傾斜面部35a,35bは、夫々円錐台の外周面の形態であり、典型的には、両傾斜面部35a,35bは、同一の仮想的な円錐台の外周面の一部をなすように同様に且つ直線状に並んで配置されている。傾斜面部35aは端部フランジ状部33の端部軸部受容孔33aの一端に形成され、傾斜面部35bは小径筒状部31のうち接続フランジ状部34の近傍に形成されている。
【0057】
穴石・穴石枠一体構造体9は、概ね円錐台状の中空円錐台状体21からなり、この中空円錐台状体21は、円錐台状外周面部22と、小径側端面部23と、大径側円筒状部24と、大径側端面部25と、円錐台状内周面部26と、大径側円筒状内面部27と、ほぞ孔18と、案内凹部19とを有する。
【0058】
ほぞ孔18は、円錐台状内周面部26の小径側に位置し、該ほぞ孔18に挿通されるてん真40のほぞ部41を実際上摺動回転自在に支える。すなわち、ほぞ孔18を規定する領域21aは、ジャーナル軸受として機能する穴石部17として働く。小径側端面部23の中心軸線Cのまわりに形成された案内凹部19は、てん真40の端部軸部42よりも十分に大きい。但し、端部軸部42よりも大きく例えば耐振座体30の端部軸部受容孔33aと同程度以上の大きさであって端部軸部42が遊嵌される程度の径であれば、もう少し小さくてもよい。
【0059】
円錐台状内周面部26は、受石10のほぞ受面11になっている凸レンズのような部分球状の端面11の外側部分11aに当接して該部分球状端面11の外側部分11aで受石10を支える。円錐台状内周面部26は円錐台状外周面部22よりも頂角の大きい円錐の錐台面になっている。
【0060】
円錐台状外周面部22は、ひとつの円錐台の外周面部からなり、穴石・穴石枠一体構造体9が耐振座体30内の所定位置に配置された際に、該外周面部の一部をなす傾斜面部22a,22bにおいて耐振座体30の傾斜面部35a,35bに当接する。従って、穴石・穴石枠一体構造体9は、円錐台状外周面部22の傾斜面部22a,22bにおいて耐振座体30の傾斜面部35a,35bに当接して耐振座体30により支えられる。
【0061】
以上において、穴石枠部20は、円錐台状外周面部22及び円錐台状内周面部26を含む領域21bであって、穴石部17を形成する領域21aにつながった領域からなる。
【0062】
耐振押さえばね37は、三つ葉のクローバーの如き形状であって、大径部38から突出した係合部38a,38a,38aで耐振座体30の径方向内向き係合部36に係合され、径方向内向きに延びたU字状係合部39,39,39で受石10の外側端面12に係合して、該受石10を穴石・穴石枠一体構造体9(又は該構造体の穴石枠部20)の円錐台状内周面部26に押付ける。これにより、受石10を介して穴石・穴石枠一体構造体9が円錐台状外周面部22の傾斜面部22a,22bにおいて耐振座体30の傾斜面部35a,35bに押付けられる。なお、耐振押さえばね37は、受石10を押え得る限り、三つ葉のクローバーの如き形状の代わりに他の形状でもよい。
【0063】
従って、耐振押さえばね37は耐振受石10及び穴石・穴石枠一体構造体9を弾性的に保持しててんぷ3の本体への衝撃力を吸収し、衝撃を受けた際の受石10及び穴石・穴石枠一体構造体9の移動及び復元を可能にする。腕時計の形態の時計2を使用者が手首にはめた状態で使用者の手首の急激な動きにより軸方向の衝撃がてん真40にかかると、てん真40に働く軸方向力(衝撃)により受石10がほぞ受面11でほぞ41の端面(ほぞ先)45からA方向の力を受け、受石10のA方向変位を許容して衝撃を吸収してほぞ部41を保護する。また、使用者の手首の急激な動きにより横方向(軸方向に対して直角な方向)の衝撃がてん真40にかかっててん真40が中心軸線Cに対して直角な向きに力(衝撃)を受けると、ほぞ部41からほぞ孔18に当該向きの力が働くので、押さえばね37のばね力に抗して穴石・穴石枠一体構造体9が該穴石・穴石枠一体構造体9の円錐台状外周面部22の斜面部22a,22bと耐振座体30の斜面部35a,35bとの係合面に沿って変位されて、衝撃が吸収されてほぞ部41が保護される。いずれの場合も、衝撃がなくなると、押さえばねの力により多少なりとも元の位置に戻る。
【0064】
以上の如く構成されたてんぷ3の耐振軸受機構1では、ジャーナル軸受として働く穴石部17及び該穴石部17と一体の穴石枠部20を備えた穴石・穴石枠一体構造体9が設けられ、穴石部17と穴石枠部20とが一体的に構成され一体形成されているので部品点数が低減され得るだけでなく、外周側において耐振座体30の係合部36で支持された押さえばね37が内周側において受石10を穴石・穴石枠一体構造体9の円錐台状内周面部26に弾性的に押付けて保持するので、図10〜図12等に示した従来の耐振軸受機構101の場合のように受石110を穴石117とは別体の別体の穴石枠120を介して位置決めするのではなくて、受石10を穴石部17に対して直接位置決めし得るから、受石10の位置決めないし位置出しが容易且つ確実に行われ得る。すなわち、この耐振軸受機構1では、ほぞ部41の外周面を穴石部17で支える穴石・穴石枠一体構造体9に対して受石10が直接的に当接せしめられてほぞ部41の端面を支えるので、ほぞ部41の外周面および端面を支える軸受部分17,10の位置決めが正確に行われ得る。
【0065】
また、この耐振軸受機構1では、ジャーナル軸受として働く穴石部17及び該穴石部と一体の穴石枠部20を備えた穴石・穴石枠一体構造体9が設けられ、耐振座体30が穴石・穴石枠一体構造体9を支えるに構成されるので、通常金属製である耐振座体30が通常金属製である従来の穴石枠ではなくて石(広義のセラミック)製である穴石・穴石枠一体構造体9に当接してこれを支えることになるから、図10〜図12に示したような従来の耐振軸受機構101の場合のような耐振座体130と穴石枠120との間における「金属・金属」間の摺動ではなくて、耐振座体30と穴石・穴石枠一体構造体9との間における「金属・セラミック」間の摺動になることから、摩擦抵抗が低減され得る。従って、衝撃(外力)により受石の位置がずれても、衝撃(外力)がなくなると受石が元の正規の位置に戻り易く、軸受機構が最適な状態で動作され易い。
【0066】
なお、以上の如く構成された本発明の好ましい一実施例の耐振軸受機構1F,1Rを備えた本発明の好ましい一実施例のてんぷ3を有する本発明の好ましい一実施例の機械式時計2において、種々の条件下で、裏蓋側の耐振軸受機構1Fが文字板側の耐振軸受機構1Rの上に位置する「平姿勢」P1に時計2が配置されている場合と文字板側の耐振軸受機構1Rが裏蓋側の耐振軸受機構1Fの上に位置する「裏平姿勢」P2に時計2が配置されている場合との差異の有無ないし差異の程度について、図4の(a)及び(b)、図5の(a)及び(b)、並びに図6の(a)及び(b)を参照しつつ詳しく説明する。
【0067】
受石10F,10Rが、てんぷ3のてん真40の中心軸線Cに対して実際上垂直に配置され、部分球面状の受面11F,11Rが中心軸線Cのまわりで回転対称の状態にある場合、時計2が平姿勢P1を採る場合と裏平姿勢P2を採る場合とでてんぷ3のてん真40の支持状態は実際上同一であるので、平姿勢P1及び裏平姿勢P2で歩度の差異は実際上ないことは、従来通りである。なお、このてんぷ3では、受石10F,10Rのほぞ受面11F,11Rが部分球面状であるので、該ほぞ受面11F,11Rは、てん真40のほぞ部41F,41Rの端面45F,45Rに対して実際上一点で当接するから、てん真40の回転が安定し易い。
【0068】
図4の(a)及び(b)に示したように、てんぷ受5側ないし裏蓋側の受石10Fが少し(例えば1度程度)傾いた状態で押さえばね37Fによって穴石・穴石枠一体構造体9Fに取付けられた状態S1では、厳密に言えば、図4の(a)に示したように時計2が平姿勢P1を採る場合と、図4の(b)に示したように時計2が裏平姿勢P2を採る場合とでは、てんぷ3の状態が多少なりとも異なる状況になる。受石10Fの傾きは、典型的には、穴石・穴石枠一体構造体9Fが傾斜面22a,22bにおいて耐振座体30Fの傾斜面35a,35bに対してズレて耐振座体30Fに対して傾いた場合に生じる。なお、このこと(時計が平姿勢を採る場合と裏平姿勢を採る場合とでてんぷの状態が異なること)自体は、従来の耐振軸受機構101F,101Rを備えた従来のてんぷ103を有する従来の時計102について図14の(a)及び(b)に関連して説明したのと同様であるけれども、平姿勢の場合と裏平姿勢の場合とにおけるてんぷの状態の差異の程度が、時計2と従来の時計102とでは異なる。
【0069】
すなわち、時計2において、てんぷ受5側の受石10Fが傾いて取付けられた状態S1にある場合において図4の(a)に示したように文字板側の耐振軸受機構1Rが下側に位置していて文字板側の受石10Rがそのほぞ受面11Rでてん真140のほぞ41Rの端面45Rを受ける平姿勢P1では、てん真40が、下側に位置するほぞ部41Rの端面45Rのうち中心軸線Cの通る位置C0Rにおいてその下側に位置する文字板側の耐振軸受機構1Rの受石10Rの部分球面状のほぞ受面11Rに当接し、該当接位置C0Rを中心に中心軸線Cのまわりで回転されることは図14の(a)の場合と実際上同じである。すなわち、この範囲では、てんぷ受5側ないし裏蓋側の受石10Fが少し(例えば1度程度)傾いた状態で押さえばね37Fによって穴石・穴石枠一体構造体9Fに取付けられていることによる影響が現れないことは、図14の(a)の場合と実際上同じである。但し、厳密に言えば、この時計2では受石10Rのほぞ受面11Rが凸状に湾曲しているので、中心軸線Cに一致するところC0Rが確実に回転中心になる点で時計102の場合と異なり得る。
【0070】
一方、時計2が反転されて、図4の(b)に示したようにてんぷ受5側(裏蓋側)の耐振軸受機構1Fが下側に位置していててんぷ受5側の受石10Fがそのほぞ受面11Fでてん真40のほぞ41Fの端面45Fを受ける裏平姿勢P2では、中心軸線Cの近傍におけるほぞ受面11Fの輪郭に多少のズレが生じるとしても、図4の(b)において想像線で示した通り、ほぞ受面11Fの輪郭は1度程度の傾きが生じる前と概ね同様になる。特に、受石10Fの概ね1度の傾きに伴いほぞ受面11Fのうち接線が中心軸線Cに対して垂直になる部位CaVは受面11Fが中心軸線Cと交わる位置にほとんど一致する。すなわち、受石10Fの傾きが耐振座体30に対する穴石・穴石枠一体構造体9Fのズレ(面35a,35bに対する面22a,22bのズレ)によって生じるとすると、1度の回転に応じてほぞ受面11Fが1度だけ概ね周方向に回転するとしても、ほぞ受面11Fのうち中心軸線Cが交わる部位C0Fにおける接平面の向きは概ね一定に保たれ得るから、結果的にはほぞ受面11Fのうち接平面が中心軸線Cに対して垂直になる部位CaVは受面11Fが中心軸線Cと交わる位置C0Fからほとんどずれない。従って、てん真40は、下側に位置するほぞ部41Fの端面45Fのうち中心軸線Cの通る位置の近傍の点CaVにおいてその下側に位置する文字板側の耐振軸受機構1Fの受石10Fの部分球面状のほぞ受面11Fと当接し、該位置CaVを中心として中心軸線Cのまわりで回転される。なお、ほぞ受面11Fが穴石・穴石枠一体構造体9Fの円錐台状内周面部26に沿ってずれても状況は同じである。
【0071】
すなわち、部分球状の凸状湾曲ほぞ受面11F,11Rを備えた耐振軸受機構1F,1Rを具備するてんぷ3を有する機械式時計2では、図4の(a)及び(b)に示したように、てんぷ受5側ないし裏蓋側の受石10Fが少し(例えば1度程度)傾いた状態で押さえばね37Fによって穴石・穴石枠一体構造体9Fに取付けられた状態S1では、図4の(a)に示したように時計2が平姿勢P1を採る場合と、図4の(b)に示したように時計2が裏平姿勢P2を採る場合とでは、厳密にはてんぷ3の状態が多少なりとも異なる状況になるけれども、実際には、裏平姿勢P2を採った場合でも、耐振軸受機構1Fの部分球状の凸状湾曲ほぞ受面11Fがてん真40のほぞ部1Fの端面45Fに当接する部位は、概ね中心軸線C上の位置CaVにある。従って、平姿勢P1及び裏平姿勢P2で、てんぷ3は実際上同様に動作し得、歩度の差異が、図14の(a)及び(b)の場合よりもかなり小さくなる。
【0072】
一方、図5の(a)及び(b)(特に図5の(b))に示したように、裏平姿勢P2において、てん真40の中心軸線Cが多少(例えば、0.2度程度)傾く場合S2、てん真40のほぞ部41Fの端面45Fが、てん真40の中心軸線Cから多少離れた部位Cbにおいてその下側に位置するてんぷ受5側の耐振軸受機構1Fの受石10Fのほぞ受面11Fと当接する。ここで、部位Cbは、受石10Fのほぞ受面11Fの接平面が、傾斜した中心軸線Cを有するてん真40のほぞ部41Fの端面45Fと平行になる部位(一致し得る部位)に相当する。
【0073】
従って、てん真40の回転中心Cbは、該てん真40の中心軸線Cとは異なり該中心軸線Cの通る部位からΔr(ほぞ部41の半径の数分の1で10μm程度である)離れたところに位置し、てん真40は点Cbを中心に回転することになる。
【0074】
この状態S2にある場合には、時計2が平姿勢P1を採るときと裏平姿勢P2を採るときとで、てんぷ4の動作が実際上異なり、多少の歩度の差が生じるのを避け難い。但し、裏平姿勢P2を採るときの中心位置Cbの中心Cからのズレはてん真40のほぞ部41の半径の数分の1程度になる点で、てん真40のほぞ部41の半径程度のズレが生じる(図15の(b))従来の時計102と比較して、裏平姿勢P2と平姿勢P1との歩度の差異が大幅に低減され得る。
【0075】
なお、てん真40の中心軸線Cが傾くのは、種々の原因がある。すなわち、てん真40の中心軸線Cが傾く現象が生じる場合には、時計2の姿勢にかかわらず、従来の時計102と比較して、歩度に大きな差異が生じる虞れを低減させ得ることになる。そのような例としては、例えば、てんわ50の重量のバランスが崩れていててんわ50が傾く場合がある。また、厳密に言えば、例えば、ひげぜんまい55の渦巻きが巻かれたりほどけたりする際にひげぜんまい55からひげ玉43を介しててん真40にかかる力の故に、てん真40の中心軸線Cの軸が多少なりとも傾くこともあり得る。そのような場合であっても、この耐振軸受機構1,1をてん真40の両端に備えたてんぷ3では、従来のてんぷ102ようにほぞ受面111が平面である場合と異なってほぞ受面11が部分球面であるので、てん真40のほぞ部41の端面45の側縁ではなくて該端面45のうち中心軸線Cの近傍の部位がほぞ受面11の対応する傾斜の接平面の部位と当接し得る。従って、てん真40の回転の中心が中心軸線Cからずれる程度が最低限に抑えられ得る。
【0076】
また、図6の(a)及び(b)に示したように、てんぷ受5側のほぞ41Fの端面45Fがてん真40の中心軸線Cに対して傾斜している状態S3では、裏平姿勢P2において、傾斜した端面45Fは、てんぷ受5側の耐振軸受機構1Fの受石10Fのほぞ受面11Fの傾斜が端面45Fの傾斜に一致する部位Cdで、受石10Fのほぞ受面11Fと当接する。この部位Cdは、図5で示した部位Cbと概ね一致する部位である。
【0077】
すなわち、この状態S3にある場合にも、時計02が平姿勢P1を採るときと裏平姿勢P2を採るときとで、てんぷ103の動作が異なるけれども、その差異は、図5の(a)及び(b)の場合と同様であって、図16の(a)及び(b)に示した従来の時計102と比較して、裏平姿勢P2と平姿勢P1との歩度の差異が大幅に低減され得る。
【0078】
従って、てん真40の回転中心Cdは、該てん真40の中心軸線Cとは異なり該中心軸線Cから概ねΔr(ほぞ部41の半径の数分の1で10μm程度である)離れた点Cdを中心に回転することになる。
【0079】
なお、以上の如く、時計2では、受石10の受面11が部分球状に形成されているので、種々の傾き等があっても、回転中心がてん真40の中心Cからズレるズレ量が小さくなるから、平姿勢P1や裏平姿勢P2等の姿勢による時計2の歩度の変動が最低限に抑えられ得る。
【0080】
また、この時計2では、部分球状に形成されるのは、てん真40のほぞ部41F,41Rの端面45F,45Rではなくて受石10のほぞ受面11F,11Rであってその部分球面の径が大きいから、てん真40の長さその他の量が大きく変動する虞れも少ない。
【0081】
受石が部分球状のほぞ受面を備える代わりに、図7の(a)及び(b)並びに図8に示したように、受石10Aが球体13からなっていてもよい。図7の(a)及び(b)並びに図8に示した耐振軸受構造体1Aを備えたてんぷ3Aにおいて、図1から図3に示した耐振軸受構造体1を備えたてんぷ3の要素と同一の要素には同一の符号が付され、対応するけれども異なるところのある要素には最後に添字Aが付されている。なお、裏蓋側ないしてんぷ受側であることを示す添字「F」及び文字板側であることを示す添字「R」がある場合には、該添字F,Rの前に添字Aが付される。
【0082】
てんぷ3Aの耐振軸受構造体1Aでは、受石10Aが球体13からなるので、受石10Aの寸法精度が高められ易い。また、てんぷ3Aの耐振軸受構造体1Aでは、受石10Aが球体13からなるが故に時計2Aの厚さ方向のサイズが大きくなるので、耐振座体30Aは、耐振座体30の大径筒状部32よりも大きい軸方向長さを備えた大径筒状部32Aを有する点を除いて、耐振座体30と実際上同様に構成されている。
【0083】
また、耐振軸受構造体1Aでは、受石10Aが球体13からなり、時計2Aの厚さ方向のサイズが大きくなるので、穴石・穴石枠構造体9Aは、穴石・穴石枠構造体9の大径側円筒状内面部27及び円錐台状内周面部26よりも深い(軸方向Aに沿ったサイズの大きい)大径側円筒状内面部27A及び円錐台状内周面部26Aを有する点、並びに受石10Aが球体13からなるが故に径方向サイズが小さくなって内径がより小さくなり穴石・穴石枠構造体9Aの壁部が厚い点を除いて、穴石・穴石枠構造体9と実際上同様に構成されている。
【0084】
なお、押さえばね37Aは外周側係合部38a,38a,38aで耐振座体30Aの係合部36に係合し、内周側のU字状係合部39,39,39で球体13の形態の受石10Aのうちほぞ受面11Aとは直径方向の反対側に位置する領域12Aを押圧する。
【0085】
以上の如く構成された耐振軸受構造体1Aでは、図8に示したように、てんぷ3の
てん真40のほぞ部41が穴石17Aのほぞ孔18に嵌合されてジャーナル軸受として働く該ほぞ孔18の周面で支持され、ほぞ部41の端面45が球体13の形態でスラスト軸受けとして働く受石10Aのほぞ受面部11Aに当接して該ほぞ受面部11Aで支持される。
【0086】
図9は、図7の耐振軸受機構を有する図8のてんぷにおいて種々の条件下での回転中心の位置ズレの程度を示したものであり、図9の(a)はてん真及び受石が所定の状態にある基準の場合を示したものである。この場合、てん真40のほぞ部41がその端面45の位置C0で球体13の形態の受石10Aのほぞ受面11Aに当接する。この位置は、図4のC0Rに対応する位置であって、てん真40の中心軸線C上にある。
【0087】
図9の(b)は受石が傾いた状態にある場合を示したもので、球体13の形態の受石10Aが少し(例えば、1度程度)傾くとしても、受石10Aは球体13の環状領域14で穴石・穴石枠構造体9Aの円錐台状内周面部26Aで支持されているので、当該回転によっては、球体13の形態の受石10Aとてん真40のほぞ部41の端面45との当接位置Cfは変わらず、実際上位置C0に保たれる。従って、受石10Aが傾いても、平姿勢P1であっても裏平姿勢P2であってもてんぷ3Aが実際上同様に動作され得るから、姿勢が歩度に与える影響を最低限に抑え得る。
【0088】
図9の(c)はてん真が傾いた状態にある場合を示したもので、てん真40の傾斜に伴いほぞ部41の端面45が傾く。しかしながら、この耐振軸受機構1Aを備えたてんぷ3Aでは、耐振軸受機構1Aの受石10Aが比較的小径の球体13からなるので、当接位置が中心軸線C上の位置C0からわずかにずれるだけで接平面の傾きが大きく変わるから、多少傾斜したてん真40のほぞ部41の端面45と丁度当接する部位が中心軸線Cから僅かに離れたところCgになる。その結果、てん真40の傾きがてんぷ3Aの回転に与える影響が最低限に抑えられ得る。
【0089】
以上においては、従来の時計部品との関連がわかり易いように、従来の穴石と穴石枠とが一体成形されたもの9,9Aを穴石・穴石枠一体構造体と称したけれども、その代わりに、以上のすべてにおいて、「穴石・穴石枠一体構造体」と称する代わりに「穴石構造体」と称してもよい。その場合、「穴石構造体」とは、従来の穴石として機能するのみでなく従来の穴石枠としても機能し得るものを指すことになる。
【符号の説明】
【0090】
1,1A 耐振軸受機構
2,2A 機械式時計
3,3A てんぷ
4 調速脱進機
5 てんぷ受
6 アンクル
7 がんぎ車
8 地板
9,9A 穴石・穴石枠一体構造体
10,10F,10R,10A 耐振受石
11 部分球状端面(ほぞ受面)
11a 側部分
11F,11R,11A ほぞ受面
12 端面
12A 領域
13 球体
14 球状面部
17,17F,17R,17A 穴石部
17a 外周面
18 ほぞ孔
19 案内用凹部
20,20F,20R,20A 穴石枠部
21 中空円錐台状体
21a 領域(穴石部形成領域)
21b 領域(穴石枠部形成領域)
22 円錐台状外周面部
22a,22b 傾斜面部
23 小径側端面部
24 大径側円筒状部
25 大径側端面部
26 円錐台状内周面部
27 大径側円筒状内面部
30,30F,30R,30A 耐振座体
31 小径筒状部
32,32A 大径筒状部
33 端部フランジ状部
33a 端部軸部受容穴
34 接続フランジ状部
35a,35b 傾斜面部
36 径方向内向き係合部
37,37F,37R,37A 耐振押さえばね
38 大径部
38a 係合部
39 U字状係合部
40 てん真
41,41F,41R ほぞ部
42,42F,42R 端部軸部
43 ひげ玉
44 振り石
45,45F,45R 端面
50 てんわ
55 ひげぜんまい
61 ハコ先
62 がんぎ歯
64 かな部
70 四番車
A,A1,A2 方向
C てん真の中心軸線
C0R 接触位置
CaV 受石が傾いた際にほぞ受面が中心軸線に対して垂直になる部位
Cb てん真のほぞ部の端面が耐振軸受機構の受石のほぞ受面と当接する部位(回転中心)
Cd ほぞ部の傾斜した端面が受石のほぞ受面に当接する部位
Cf,Cg 球体の形態の受石がほぞ部の端面と当接する部位
P1 平姿勢
P2 裏平姿勢
S1 てんぷ受側の受石が傾いて取付けられた状態
S2 てん真の中心軸線が傾いた状態
S3 ほぞの端面がてん真の中心軸線に対して傾斜している状態
Δr 中心軸線から回転中心となる部位までの距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラスト軸受として働く受石と、ジャーナル軸受として働く穴石部及び該穴石部と一体の穴石枠部を備えた穴石・穴石枠一体構造体と、該穴石・穴石枠一体構造体を支えると共に大径の開口端側に係合部を備える耐振座体と、外周側において耐振座体の係合部で支持され内周側において受石を穴石・穴石枠一体構造体に弾性的に押付けて保持する押さえばねとを有するてんぷの耐振軸受機構であって、
受石のうち耐振軸受機構により支えられる軸の端面に対面し該軸の端面に当接する表面が外に突出するように湾曲した凸面からなるてんぷの耐振軸受機構。
【請求項2】
穴石・穴石枠一体構造体が広義のセラミック製で、耐振座体が金属製である請求項1に記載の耐振軸受機構。
【請求項3】
受石の凸面が球面の一部からなる請求項1又は2に記載のてんぷの耐振軸受機構。
【請求項4】
受石が凸レンズ様の形状を有し、
穴石・穴石枠一体構造体が円錐台状部を備え、該円錐台状部の大径端部のところで受石を支えるように構成され、
押さえばねが、外周側において耐振座体の係合部で支持され内周側において穴石・穴石枠一体構造体の大径端部のところに受石を弾性的に押付けて保持するように構成されている
請求項1から3までのいずれか一つの項に記載のてんぷの耐振軸受機構。
【請求項5】
受石が球体からなる請求項1から3までのいずれか一つの項に記載のてんぷの耐振軸受機構。
【請求項6】
球状の受石が穴石・穴石枠一体構造体の穴石部に当接可能に穴石・穴石枠一体構造体の穴石枠部の円筒状領域内に配置され、
押さえばねが、外周側において耐振座体の係合部で支持され内周側において穴石・穴石枠一体構造体の穴石枠部の円筒状領域内で穴石部の対向端面に受石を押付けることにより、受石を弾性的に保持するように構成されている
請求項5に記載のてんぷの耐振軸受機構。
【請求項7】
穴石・穴石枠一体構造体の穴石枠部のうち受石のほぞ受面を支える部位が円錐台状である請求項1から6までのいずれか一つの項に記載のてんぷの耐振軸受機構。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一つの項に記載の耐振軸受機構を有するてんぷ。
【請求項9】
耐振軸受機構により支えられる軸がてん真からなり、てん真の両端部にあり該てん真の本体部よりも小径のほぞ部の端面が実際上平面状である請求項7に記載のてんぷ。
【請求項10】
請求項1から7までのいずれか一つの項に記載の耐振軸受機構又は請求項8若しくは9に記載のてんぷを有する時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−88179(P2013−88179A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226910(P2011−226910)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)