説明

ねじ用穴

【課題】 ねじを穴部に螺着する場合に、ねじの不安定さを解消する。
【解決手段】 案内突起3aを有するねじ3に螺着される穴部10であって、穴部がねじのねじ山3bを受け入れる大径穴11を有すると共に、案内突起を受け入れる小径穴12を大径穴の底壁面からねじ螺着方向へ形成し、大径穴と小径穴とを二段重ねした構造である。また、大径穴11の内径寸法A1 とねじ山3bの径寸法Cとが略等しく設定されている。更に、大径穴の周壁面がねじ螺着方向へ先細りした形状に形成されている。その上、大径穴の開口の内径寸法とねじ山の径寸法とが略等しくかつ、底壁面と小径穴との内径寸法とがそれぞれねじの谷底の径寸法と略等しく設定されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ねじに螺着されるねじ用穴に関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば、図6に示すように、雌型ハウジング1をプリント配線板2に固定する場合、図7のように、円筒状の案内突起3aを有するねじ3を雌型ハウジング1の取付部4の孔5に通し(図8(a))、プリント配線板2の穴部6(図8(a))にねじ3を螺着する。その場合、従来の穴部6の構造は、例えば図8(a)のようなものが提案されている。
【0003】すなわち、図8(a)において、穴部6は内径寸法Aを案内突起3a先端の径寸法Bより大きく且つ、ねじ3のねじ山3bの径寸法Cより小さい、ずなわちB<A<Cに設定して成る。なお、穴部6の深さHはねじの長さL1 より短い、すなわちH<L1 である。
【0004】しかしながら、ねじ3を穴部6に仮固定(すなわち、ねじ3を穴部6に挿入できるところまで挿入してねじ3を起立させた状態)し、図示しない電動ドライバ等でねじ3を穴部6に螺着させようとすると、A<Cであるから、ねじが倒れ易く、確実な仮固定ができないために作業性が悪いという欠点があった。
【0005】そこで、ねじ3をプリント配線板2に仮固定し易くするために、図8(b)に示すような穴部6′が提案されている。すなわち、穴部6′は内径寸法A′をねじ山3bの径寸法Cに略等しくすると共に、案内突起3a先端の径寸法Bより大、ずなわちB<A′≒Cに設定して成る。また、穴部6′の深さH′もねじの長さL1 より短い。
【0006】しかしながら、ねじ3を電動ドライバ等で穴部6′に螺着する場合、ねじ3が高トルクで締めつけられるから、樹脂製のプリント配線板2が案内突起3a等によって破壊されてねじ3が穴部6′内で空転し、雌型ハウジング1をプリント配線板2に固定することができないという問題点があった。そこで、プリント配線板2が破壊されず、ねじ3が穴部6′内で空転しない、図8R>8(c)のような穴部6″が従来提案されている。
【0007】すなわち、この穴部6″は、内径寸法A″をねじ3の案内突起3a先端の径寸法Bに略等しくすると共に、ねじ山3bの径寸法Cより小、すなわちB≒A″<Cに設定して成る。穴部6″の深さH″もねじ3の長さL1 より短い。しかしながら、ねじ山3bを受け入れる部分が穴部6″内に存在しないから、穴部6″に対するねじ3の螺着性が悪くなる。それによって、ねじ3に高トルクが負荷されるから、プリント配線板2が割れる恐れがあった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記した点に鑑み、ねじを穴部に螺着する場合、ねじを確実に穴部に仮固定することができ、またねじに高トルクを与えず、更に穴部を有する例えばプリント配線板を破壊することなく容易にねじを穴部に螺着することができるねじ用穴を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、案内突起を有するねじに螺着される穴部であって、前記穴部が前記ねじのねじ山を受け入れる大径穴を有すると共に、前記案内突起を受け入れる小径穴を該大径穴の底壁面からねじ螺着方向へ形成し、該大径穴と小径穴とを二段重ねしたねじ用穴を基本とする。前記大径穴の内径寸法と前記ねじ山の径寸法とが略等しく設定されているねじ用穴を採用する。また、前記大径穴の周壁面がねじ螺着方向へ先細りした形状に形成されているねじ用穴も有効である。前記大径穴の開口の内径寸法と前記ねじ山の径寸法とが略等しくかつ、前記底壁面と小径穴との内径寸法とがそれぞれ前記ねじの谷底の径寸法に略等しく設定されているねじ用穴も更に有効である。
【0010】請求項1及び2によれば、穴部がねじ山用の大径穴と案内突起用の小径穴とを有するから、穴部にねじを挿入すると、案内突起が小径穴に進入または小径穴の開口を塞いで大径穴の底壁面に突き当たり、ねじ山が大径穴の周壁面に接触する。これにより、ねじが傾くと、ねじ山が大径穴の周壁面に突き当たるから、ねじが傾かない。請求項3及び4によれば、大径穴の周壁面がねじ螺着方向へ徐々に細くなる形状を有するから、穴部にねじを挿入すると、案内突起又はねじ山が周壁面に突き当たり、周壁面と、案内突起又はねじ山とが接触する。大径穴の開口の内径寸法とねじ山の径寸法とを略等しくかつ、底壁面と小径穴との内径寸法とを略等しく設定するから、ねじを挿入すると、ねじ山が周壁面に突き当たると共に、案内突起が小径穴に進入する。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、発明の実施の形態の具体例を図面を参照して説明する。なお、従来例と同様にプリント配線板に形成されたねじ用穴について説明するが、プリント配線板のみに限定されるものではない。また、従来例と同一構成部材には同一名称と同一番号とを付けて詳細な説明を省略する。
【0012】図1〜4は本発明に係るねじ用穴の第一実施例を示すものである。図1において、このねじ用穴9は、ねじ山3bを受け入れる大径穴11と、大径穴11の底壁面11aからねじ螺着方向へ形成された、案内突起3aを受け入れる小径穴12とから成る穴部10を有する。
【0013】大径穴11と小径穴12とは相互の中心軸13が一致し、プリント配線板2(図4)の一方の壁面から他方の壁面へ向けてこの順序に二段重ねされている。そして、大径穴11の内径寸法A1 がねじ山3bの径寸法C(図6参照)に略等しくされると共に、小径穴12の内径寸法A2 が案内突起3a先端の径寸法B(図6R>6参照)より大きく、ねじ山3bの径寸法Cより小に設定されている、すなわちB<A2 <C≒A1 である。なお、大径穴11の深さ寸法H1 は案内突起3aの長さ寸法L2 に等しいか、または長い、すなわちH1 ≧L2 である。
【0014】次に、ねじ3で雌型ハウジング1(図4)をプリント配線板2(図4)に螺着する場合を説明する。図2に示す如くに、ねじ3の案内突起3aを取付部4の孔5を貫通させたのち、大径穴11を通して小径穴12へ進入させ、ねじ3の先端部3cを大径穴11の底壁面11aに突き当てる。突き当たった状態が、ねじ3の仮固定状態である。案内突起3aが小径穴12に挿入され、先端部3cが底壁面11aに突き当たり、ねじ山3bが大径穴11の周壁面11bに接触しているから、ねじ3の傾きが大径穴11の周壁面11bによって阻止され、ねじ3が安定した状態で仮固定される。
【0015】これにより、ねじ3を穴部10に螺着する場合、電動ドライバ等(図示せず)でねじ3を締めてもねじ3に高トルクが負荷されないから、プリント配線板2を破壊する心配をせずに容易にねじ3を穴部10に螺着するとができる。この状態で、ねじ3を電動ドライバ等で回転させると、図3に示すように、ねじ山が大径穴11の周壁面11bと小径穴12の周壁面12bとからプリント配線板2の肉部分2aへ螺旋状に食い込む。これにより、ねじ3がプリント配線板2に螺着されて取付部4がプリント配線板2に固定される。
【0016】第二実施例として、図4に示すように、大径穴11の内径寸法A′1 をねじ山3bの径寸法Cに略等しくし、小径穴12の内径寸法A′2 を案内突起3aの径寸法Bより小に設定、すなわちA′2 <B<C≒A′1 にすることも可能である。この場合、ねじ3を穴部10に挿入すると、案内突起3aが小径穴12の開口12aを塞いで大径穴11の底壁面11aに突き当たる。なお、ねじ3が軸方向に案内突起3aを有していれば、ねじ3の形状は任意である。また、案内突起3aの形状も任意である。
【0017】第三実施例として、図5に示すように、大径穴11の周壁面11b′が、ねじ螺着方向へ先細りした形状に形成されている。本実施例では、周壁面11b′が大径穴11の開口11cから底壁面11a(図1R>1)に至まで徐々に狭くなるように形成されている、すなわち周壁面11b′には、周壁面11b(図1)にテーパが形成されている。そして、開口11cの内径寸法A3 とねじ山3bの径寸法Cとを略等しく設定し且つ、底壁面11aの内径寸法A4 と小径穴12の内径寸法A2 ″とをねじ3の谷底3dの径寸法Dに略等しく設定する、すなわちA3 ≒C且つA4 =A2 ″≒Dである。なお、小径穴12に周壁面12bにテーパを形成することも可能である。
【0018】この場合、ねじ山3を穴部10に挿入すると、ねじ山3bと周壁面11b′とが接触し、案内突起3aが小径穴12に進入した状態になる。周壁面11b′にテーパが形成されているだけ、ねじを穴部に螺着する場合に、ねじに負荷されるトルクを減少させることができる。
【0019】
【発明の効果】以上の如くに、本発明によれば、ねじ山用の大径穴と案内突起用の小径穴とを有する穴部へねじを挿入すると、案内突起が小径穴に進入または小径穴の開口を塞いで大径穴の底壁面に突き当たり、ねじ山が大径穴の周壁面に接触するから、ねじの傾きが大径穴の周壁面によって阻止される。これにより、ねじを穴部に螺着する場合、ねじに高トルクが負荷されず、例えば穴部を有するプリント配線板が破壊されない。従って、安心かつ容易にねじを穴部に螺着することができる。
【0020】また、ねじ螺着方向へ先細り周壁面を有する穴部にねじを挿入すると、案内突起又はねじ山が周壁面に突き当たり、周壁面と、案内突起又はねじ山とが接触するから、僅かな力でねじを穴部に螺着することができる。これにより、ねじを穴部に螺着する場合、ねじに高トルクが負荷されない。
【0021】更に、大径穴の開口の内径寸法とねじ山との径寸法とが略等しく且つ、底壁面と小径穴との内径寸法とが略等しく設定されているから、ねじを穴部に挿入すると、案内突起が小径穴に進入すると共に、ねじ山と周壁面とが接触する。これにより、もっと僅かな力でねじを穴部に螺着することができるから、ねじを穴部に螺着する場合、ねじに負荷されるトルクを更に小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るねじ用穴の第一実施例を示す縦断面図である。
【図2】ねじが穴部に仮固定された状態を示す縦断面図である。
【図3】ねじが穴部に螺着された状態を示す縦断面図である。
【図4】本発明に係るねじ用穴の第二実施例を示す縦断面図である。
【図5】本発明に係るねじ用穴の第三実施例を示す縦断面図である。
【図6】雌型ハウジングをプリント配線板にねじを用いて固定した状態を示す斜視図である。
【図7】従来のねじの縦断面図である。
【図8】プリント配線板に形成された穴部とねじとの関係を示す縦断面図であり、(a)は穴部の内径が案内突起の径より大且つねじ山の径より小の場合、(b)は穴部の内径がねじ山の径と略同じ場合、(c)は穴部の径が案内突起の径と略同じ場合をそれぞれ示す。
【符号の説明】
3 ねじ
3a 案内突起
3b ねじ山
10 穴部
11 大径穴
11a 底壁面
12 小径穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】 案内突起を有するねじに螺着される穴部であって、前記穴部が前記ねじのねじ山を受け入れる大径穴を有すると共に、前記案内突起を受け入れる小径穴を該大径穴の底壁面からねじ螺着方向へ形成し、該大径穴と小径穴とを二段重ねした構造であることを特徴とするねじ用穴。
【請求項2】 前記大径穴の内径寸法と前記ねじ山の径寸法とが略等しく設定されていることを特徴する請求項1記載のねじ用穴。
【請求項3】 前記大径穴の周壁面がねじ螺着方向へ先細りした形状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のねじ用穴。
【請求項4】 前記大径穴の開口の内径寸法と前記ねじ山の径寸法とが略等しくかつ、前記底壁面と小径穴との内径寸法とがそれぞれ前記ねじの谷底の径寸法に略等しく設定されていることを特徴とする請求項3記載のねじ用穴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【公開番号】特開平9−210035
【公開日】平成9年(1997)8月12日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−13584
【出願日】平成8年(1996)1月30日
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)