説明

ねじ締め装置、ねじの締結方法、および、ねじの取り外し方法

【課題】強度が弱い被締結雄ねじ部材でも、その被締結雄ねじ部材を殆ど損傷させずに、その被締結雄ねじ部材を強く締め込むことができるねじ締め装置を提供すること。
【解決手段】ねじ締め装置を、雌ねじ11を有する筒状の締結雌ねじ部材1と、締結雌ねじ部材1の軸方向の一方の端面80に軸方向に重なる接離端面24と、接離端面24と同じ側にあって、雌ねじ11の内接円の内側に軸方向に重なる押圧面25とを有する押圧部材2と、締結雌ねじ部材1と押圧部材2とを締結雌ねじ部材1の周方向に互いに相対回転不可な状態で軸方向に連結可能であると共に、締結雌ねじ部材1に対する押圧部材2の軸方向の相対位置を変動可能なボルト3とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ締め装置、ねじの締結方法、および、ねじの取り外し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ピンタイプ保持器においては、環状のねじ部材が締め込まれる構成を有しているものがある。
【0003】
例えば、実開昭56−115033号公報(特許文献1)に記載のピンタイプ保持器は、リングのねじ穴とピンのテーパ外周面との間に、雄ねじを有する外周面とテーパ内周面とを有する環状のねじ部材が締め込まれ、その後、上記リング、上記ピンおよび上記ねじ部材が、溶接によって一体化される構成を有している。
【0004】
ここで、このような環状のねじ部材を締め込む方法としては、従来、ねじ部材の挿入側と反対側の端面に直線状の溝を形成し、マイナストライバーを、その溝に係合して、マイナスドライバーによって、ねじ部材に回転トルクを付与して、ねじ部材を締め込む方法がある。
【0005】
しかしながら、上記ピンタイプ保持器の上記環状のねじ部材のように、端面の面積が小さくて、端面の強度が小さいねじ部材の場合、この方法を用いて端面の溝に大きなトルクを付与した場合、その回転トルクにより端面の溝が大きく変形して、製品として出荷できなくなることがある。
【0006】
一方、上記ねじ部材の端面の溝の変形を回避するため、弱い回転トルクで上記ねじ部材を締め込んだ場合、ねじ部材を強く締め込むことができないから、ピンタイプ保持器の強度を、問題がない程度に大きくすることができなくなる。
【特許文献1】実開昭56−115033号公報(第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の課題は、強度が弱い被締結雄ねじ部材でも、その被締結雄ねじ部材を殆ど損傷させずに、その被締結雄ねじ部材を強く締め込むことができるねじ締め装置およびねじの締結方法を提供することにある。
【0008】
また、本発明の課題は、被雌ねじ締結部材に締め込まれている被締結雄ねじ部材を、殆ど損傷させずに被雌ねじ締結部材から取り外しできるねじの取り外し方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、この発明のねじ締め装置は、
内周に雌ねじを有する環状の締結雌ねじ部材と、
上記締結雌ねじ部材の軸方向の一方の端面に、接離可能に重なる接離端面と、上記接離端面と同じ側にあって、上記雌ねじの内接円の内側に上記軸方向に重なる押圧面とを有する押圧部材と、
上記締結雌ねじ部材と上記押圧部材とを上記締結雌ねじ部材の周方向に互いに相対回転不可な状態で上記軸方向に連結可能であると共に、上記締結雌ねじ部材と上記押圧部材の上記軸方向の相対位置を変動可能な締結部材と
を備えることを特徴としている。
【0010】
尚、上記「雌ねじの内接円の内側に上記軸方向に重なる押圧面」という文言は、上記押圧面が、上記締結雌ねじ部材に径方向に重なる位置に存在している場合と、上記押圧面が、上記締結雌ねじ部材に径方向に重ならない位置に存在している場合の二つの場合を含む。
【0011】
また、上記締結部材は、上記締結雌ねじ部材と上記押圧部材とを上記締結雌ねじ部材の周方向に互いに相対回転不可な状態にする機能と、上記締結雌ねじ部材と上記押圧部材とを軸方向に連結する機能との両方を有する部材で構成されても良い。
【0012】
また、上記締結部材は、上記締結雌ねじ部材と上記押圧部材とを上記締結雌ねじ部材の周方向に互いに相対回転不可な状態にする機能を有する一方、上記締結雌ねじ部材と上記押圧部材とを軸方向に連結する機能を有さない第1部材と、上記締結雌ねじ部材と上記押圧部材とを上記締結雌ねじ部材の周方向に互いに相対回転不可な状態にする機能を有さない一方、上記締結雌ねじ部材と上記押圧部材とを軸方向に連結する機能を有する第2部材とで構成されても良い。
【0013】
本発明によって、被締結雄ねじ部材を、例えば、次のように締め込む。
【0014】
先ず、上記締結部材によって、上記締結雌ねじ部材と上記押圧部材とを上記締結雌ねじ部材の周方向に互いに相対回転不可な状態で上記軸方向に連結する。
【0015】
その後、被締結雄ねじ部材の軸方向の端面が、押圧部材の上記押圧面に当接するまで、被締結雄ねじ部材の雄ねじを、締結雌ねじ部材の雌ねじに螺合する。
【0016】
続いて、押圧部材に回転トルクを付与することによって、押圧面に当接している上記被締結雄ねじ部材の上記端面に摩擦力によって回転トルクを付与して、上記被締結雄ねじ部材の締め込みを行う。
【0017】
本発明によれば、被締結雄ねじ部材の端面と、上記押圧部材の上記押圧面との静止摩擦力によって、被締結雄ねじ部材に回転トルクを付与する構成であって、従来例のように、被締結雄ねじ部材の端面に形成された溝に局所的な大きな回転トルクを付与する構成ではなく、被締結雄ねじ部材の端面全面に略均等に大局的に回転トルクを付与する構成であるから、被締結雄ねじ部材に回転トルクが付与されたことによって、被締結雄ねじ部材の端面に変形や損傷が起こることを略完全に防止できる。
【0018】
また、本発明によれば、被締結雄ねじ部材の端面全面に回転トルクを付与することができるから、被締結雄ねじ部材に大きい回転トルクを付与することができる。したがって、被締結雄ねじ部材を強く締め込むことができる。
【0019】
また、一実施形態では、
上記押圧部材は、
上記接離端面を有する円板状部と、
上記円板状部の上記接離端面側から上記軸方向に突出すると共に、上記押圧面を有する突出部と
を有する。
【0020】
上記実施形態によれば、被締結雄ねじ部材を、被締結雌ねじ部材に締め込んだ状態において、被締結雄ねじ部材において被締結雌ねじ部材から突出する部分の軸方向の寸法を小さくすることができる。
【0021】
また、一実施形態では、
上記締結雌ねじ部材の上記一方の端面は、複数のねじ穴を有し、
上記円板状部は、上記接離端面に開口すると共に、上記円板状部の周方向に互いに間隔をおいて位置する複数の貫通穴を有し、
上記締結部材は、複数のボルトであり、
上記締結雌ねじ部材と上記押圧部材とが、上記軸方向に連結されている状態で、上記各ボルトは、上記円板状部の上記貫通穴に挿通されて、上記一方の端面の上記ねじ穴に螺合している。
【0022】
上記実施形態によれば、上記周方向に互いに間隔をおいて位置する複数のボルトによって、上記締結雌ねじ部材と上記押圧部材とが、上記締結雌ねじ部材の周方向に互いに相対回転不可な状態で上記軸方向に連結されるから、被締結雄ねじ部材の締め込みを行っている最中に、締結雌ねじ部材に対する押圧部材の相対位置が変わることを確実に防止できる。したがって、被締結雄ねじ部材の締め込みの最中において、被締結雄ねじ部材に大きい回転トルクを持続的に付与することができる。
【0023】
また、本発明のねじの締結方法は、
雌ねじを有する被締結雌ねじ部材に、雄ねじを有する被締結雄ねじ部材の一端部をねじ込み、
雌ねじを有する締結雌ねじ部材に、上記被締結雄ねじ部材の他端部をねじ込み、
上記締結雌ねじ部材と、その締結雌ねじ部材の上記雌ねじの内接円の内側に軸方向に重なる押圧面を有する押圧部材とを、上記締結雌ねじ部材の周方向に互いに相対回転不可な状態で上記軸方向に連結し、
上記押圧部材と上記締結雌ねじ部材とが、上記締結雌ねじの周方向に互いに相対回転不可な状態で上記軸方向に連結している状態で、上記押圧面と、上記被締結雄ねじ部材の上記他端部の端面とを当接させ、
その後、上記押圧部材に回転トルクを付与して、上記締結雌ねじ部材と上記押圧部材を上記締結雌ねじ部材の周方向に回転させることにより、上記押圧面に当接している上記被締結雄ねじ部材の上記他端部の端面に摩擦力により回転トルクを付与して、上記被締結雄ねじ部材を、上記被締結雌ねじ部材に締め込むことを特徴としている。
【0024】
本発明によれば、被締結雄ねじ部材の端面全面に略均等に大局的に回転トルクを付与することができて、従来例のように、被締結雄ねじ部材の端面に形成された溝に局所的な大きな回転トルクが付与されることがない。したがって、被締結雄ねじ部材の締め込みの最中に、被締結雄ねじ部材の端面が変形したり、損傷したりして、製品が出荷できなくなることがない。
【0025】
また、本発明によれば、被締結雄ねじ部材の端面全面に回転トルクを付与することができるから、被締結雄ねじ部材に大きい回転トルクを付与することができて、被締結雄ねじ部材を強く締め込むことができる。
【0026】
また、一実施形態では、
上記被締結雄ねじ部材を、上記被締結雌ねじ部材に締め込んだ後、
上記被締結雄ねじ部材の上記他端部の端面と、上記押圧面とを離間させ、
その後、上記被締結雄ねじ部材と上記締結雌ねじ部材との螺合を解除して、上記被締結雄ねじ部材と、上記締結雌ねじ部材および上記押圧部材とを分離する。
【0027】
上記実施形態によれば、
上記押圧部材の上記押圧面に対して被締結雄ねじ部材を離間させた後、被締結雄ねじ部材と、締結雌ねじ部材および上記押圧部材とを分離するから、その分離の最中に、締め込んだ被締結雄ねじ部材が被締結雌ねじ部材から引き出される回転トルクが被締結雄ねじ部材にかかることが殆どない。
【0028】
また、本発明のねじの取り外し方法は、
被締結雌ねじ部材の雌ねじに螺合している被締結雄ねじ部材における、ねじ込み側である一端部とは反対側の他端部に、雌ねじを有する締結雌ねじ部材をねじ込み、
上記締結雌ねじ部材と、その締結雌ねじ部材の上記雌ねじの内接円の内側に軸方向に重なる押圧面を有する押圧部材とを、上記締結雌ねじ部材の周方向に互いに相対回転不可な状態で上記軸方向に連結し、
上記被締結雌ねじ部材の上記他端部の端面と、上記押圧面とを当接し、
その後、上記押圧部材に回転トルクを付与して、上記押圧部材と上記締結雌ねじ部材を上記締結雌ねじ部材の周方向に回転させることにより、上記押圧面に当接している上記被締結雄ねじ部材の上記端部の端面に摩擦力により回転トルクを付与して、上記被締結雄ねじ部材を、上記被締結雌ねじ部材から取り出すことを特徴としている。
【0029】
本発明によれば、強度が弱い被締結雄ねじ部材でも、その被締結雄ねじ部材を殆ど損傷させずに、その被締結雄ねじ部材を被締結雌ねじ部材から取り出すことができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明のねじ締め装置およびねじの締結方法によれば、強度が弱い被締結雄ねじ部材でも、その被締結雄ねじ部材を殆ど損傷させずに、その被締結雄ねじ部材を強く締め込むことができる。
【0031】
また、本発明のねじの取り外し方法によれば、強度が弱い被締結雄ねじ部材でも、その被締結雄ねじ部材を殆ど損傷させずに、その被締結雄ねじ部材を被締結雌ねじ部材から取り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明を図示の形態により詳細に説明する。
【0033】
図1は、本発明の一実施形態のねじ締め装置を示す模式図である。
【0034】
このねじ締め装置は、筒状の締結雌ねじ部材1と、軸方向の半断面図において、L字状の形状を有する環状の押圧部材2と、締結部材の一例としての複数のボルト3とを備える。
【0035】
上記締結雌ねじ部材1は、雌ねじ11と、複数のねじ穴12とを有する。上記雌ねじ11は、締結雌ねじ部材1の内周面に形成されている。上記複数のねじ穴12は、締結雌ねじ部材1の軸方向の一方の端面80に、周方向に互いに間隔をおいて形成されている。上記各ねじ穴12は、締結雌ねじ部材1の軸方向に延在している。
【0036】
一方、上記押圧部材2は、円板状部21と、突出部22とを有し、突出部22は、円板状部21の軸方向の一方側の端面の中央部から軸方向に突出している。上記円板状部21は、接離端面24と、複数の貫通穴29とを有する。上記接離端面24は、環状である。上記接離端面24は、円板状部21の軸方向の突出部22側の端面である。上記接離端面24は、突出部22よりも径方向の外方に位置している。上記接離端面24は、締結雌ねじ部材1の軸方向の上記一方の端面80に軸方向に重なっている。一方、上記各貫通穴29は、軸方向に延在し、接離端面24に開口している。上記複数の貫通穴29は、円板状部21の周方向に互いに間隔をおいて配置されている。上記貫通穴29の数は、締結雌ねじ部材1のねじ穴12の数およびボルト3の数と一致している。
【0037】
上記締結雌ねじ部材1の軸中心と、円板状部21の軸中心とを、一致させた状態において、締結雌ねじ部材1のねじ穴12の径方向の位置は、円板状部21の貫通穴29の径方向の位置と略一致している。
【0038】
上記突出部22は、突出部の先端を構成する押圧面25を有する。上記各ボルト3を、円板状部21の貫通穴29に挿通した後、各ボルト3の先端を、締結雌ねじ部材1のねじ穴12に螺合して、円板状部21の接離端面24を、締結雌ねじ部材1の上記一方の端面80に当接させて締め付けて、押圧部材2を、締結雌ねじ部材1に固定するようになっている。
【0039】
上記締結雌ねじ部材1と押圧部材2との固定状態において、締結雌ねじ部材1の上記一方の端面80と、押圧部材2の接離端面24とは当接し、ボルト3の頭部は、円板状部21の接離端面24とは反対側の端面に当接している。
【0040】
図1は、上記締結雌ねじ部材1を押圧部材2にボルト3で固定している最中のねじ締め装置を示している。尚、上記締結雌ねじ部材1を押圧部材2に固定するのに使用するボルト3の数は、少なくとも1以上、好ましくは、2以上であれば良いが、3以上のボルト3を使用し、その3以上のボルト3を周方向に等間隔に配置すればより好ましい。
【0041】
上記締結雌ねじ部材1の上記一方の端面80と、押圧部材2の接離端面24とが当接している状態において、押圧部材2の突出部22の押圧面25は、締結雌ねじ部材1に径方向に重なっている。言い換えると、上記締結雌ねじ部材1の上記一方の端面80と、押圧部材2の接離端面24とが当接している状態において、押圧部材2の突出部22の押圧面25は、締結雌ねじ部材1の雌ねじ11を有する貫通穴内に位置している。また、上記締結雌ねじ部材1と押圧部材2が、ボルト3で固定されている状態で、押圧部材2の突出部22は、締結雌ねじ部材1に対して径方向に間隔をおいて位置している。
【0042】
図2は、上記ねじ締め装置によって、締め込み可能な被締結雄ねじ部材40と、この被締結雄ねじ部材40が締め込まれる被締結雌ねじ部材41の一例を示す模式断面図である。
【0043】
図2に示すように、この例では、上記被締結雄ねじ部材40は、環状の部材であって、外周面に雄ねじ50を有している。また、上記被締結雌ねじ部材41は、有底の穴を有し、その穴の内周面は、雌ねじ60を有している。
【0044】
上記被締結雄ねじ部材40の雄ねじ50は、被締結雌ねじ部材41の雌ねじ60に螺合している。上記被締結雄ねじ部材40は、被締結雄ねじ部材40の先端45が被締結雌ねじ部材41の有底の穴の底46に接触するまで、被締結雌ねじ部材41に締め込まれるようになっている。
【0045】
図3および図4は、上記ねじ締め装置で、被締結雌ねじ部材41に固定されている最中の被締結雄ねじ部材40を示す模式図である。
【0046】
以下、上記ねじ締め装置で、被締結雄ねじ部材40を被締結雌ねじ部材41に締め込む手順の一例を説明する。
【0047】
先ず、上記ねじ締め装置を組み立てる。具体的には、上記締結雌ねじ部材1の上記一方の端面80と、押圧部材2の接離端面24とが当接するまで、ボルト3を、締結雌ねじ部材1のねじ穴12に締め込み、押圧部材2を締結雌ねじ部材1に固定する。この固定状態において、上記ボルト3の頭部は、押圧部材2の軸方向の端面に当接した状態になっている。
【0048】
次に、上記被締結雄ねじ部材40のねじ込み側とは反対側の端面64が押圧面25に当接するまで、被締結雄ねじ部材40の雄ねじ50を、ねじ締め装置の締結雌ねじ部材1の雌ねじ11に螺合させる。続いて、上記被締結雄ねじ部材40の先端側の雄ねじ50を、被締結雌ねじ部材41の有底の穴の雄ねじ60に噛み合わせる。
【0049】
続いて、図3に示すように、上記押圧部材2の円板状部21に、図3に矢印Aで示す方向に、手でトルクを付与して回転させて、押圧面25からこの押圧面25に当接している被締結雄ねじ部材40の端面64に、静止摩擦力によって、矢印Aに示す方向にトルクを付与する。そして、このトルクによって、上記被締結雄ねじ部材40を、矢印Aの方向に回転させて、被締結雄ねじ部材40の先端45が被締結雌ねじ部材41の有底の穴の底46に接触するまで、被締結雄ねじ部材40を、被締結雌ねじ部材41に螺合させる。この状態を図5(a)に示す。
【0050】
さらに、レンチなどを上記押圧部材2の円板状部21に取り付けて、上記押圧部材2の円板状部21に、矢印Aで示す方向に、手でレンチを介してより強い回転トルクを付与し、押圧面25からこの押圧面25に当接している被締結雄ねじ部材40の端面64に、静止摩擦力によって、矢印Aに示す方向に回転トルクを付与してねじ締め装置を被締結雄ねじ部材40に対して締め込むとともに、被締結雄ねじ部材40を被締結雌ねじ部材41に締め込む。
【0051】
このことで、図5(b)に示すように、先端45と有底の穴の底46との押圧により、被締結雄ねじ部材40の雄ねじ50のねじ山の軸方向の他方側のフランク55と、被締結雌ねじ部材41の雌ねじ60のねじ山の軸方向の一方側のフランク65とが軸方向に付勢された状態になるとともに、押圧面25と端面64との押圧により、被締結雄ねじ部材40の雄ねじ50のねじ山の軸方向の一方側のフランク56と、ねじ締め装置の締結雌ねじ部材1の雌ねじ11のねじ山の軸方向の他方側のフランク16とが軸方向に付勢された状態になる。
【0052】
その後、ボルト3を図4に矢印Bに示す方向に回転させて、ボルト3を、締結雌ねじ部材1のねじ穴12からある程度取り出して、図4に示すように、押圧部材2の接離端面24と、締結雌ねじ部材1の円板状部側の端面80とを離間させると共に、押圧部材2の押圧面25と、被締結雄ねじ部材40の突出部22側の端面64との押圧を緩める。このようにして、上記押圧部材2の押圧面25と、被締結雄ねじ部材40の押圧部材2側の端面64との摩擦力を遮断する。このことで、図5(c)に示すように、被締結雄ねじ部材40の雄ねじ50のねじ山の軸方向の他方側のフランク55と、被締結雌ねじ部材41の雌ねじ60のねじ山の軸方向の一方側のフランク65とが軸方向に付勢された状態を保つとともに、押圧面25と端面64との押圧が緩くなることにより、被締結雄ねじ部材40の雄ねじ50のねじ山の軸方向の両方側のフランク55,56と、ねじ締め装置の締結雌ねじ部材1の雌ねじ11のねじ山の軸方向の両方側のフランク15,16とが軸方向に付勢されない状態になる。
【0053】
最後に、上記押圧部材2の円板状部21に、図4に矢印Cで示す方向に、手でトルクを付与し、押圧部材2にボルト3でもって連結している締結雌ねじ部材1を矢印Cで示す方向に回転させて、締結雌ねじ部材1を、被締結雄ねじ部材40から取り外して、ねじ締め装置を、被締結雄ねじ部材40から取り外し、被締結雄ねじ部材40の被締結雌ねじ部材41への締め込みを完了する。
【0054】
尚、上記押圧部材2の押圧面25と、被締結雄ねじ部材40の押圧部材2側の端面64との摩擦力が遮断された後では、被締結雄ねじ部材40の雄ねじは、締結雌ねじ部材1の雌ねじに単にぶらさがっている状態である。図5(c)に示すように、被締結雄ねじ部材40の雄ねじ50のねじ山の軸方向の両方側のフランク55,56と、ねじ締め装置の締結雌ねじ部材1の雌ねじ11のねじ山の軸方向の両方側のフランク15,16とが軸方向に付勢されない状態である。したがって、非常に小さい回転トルクを付与するだけで、被締結雄ねじ部材40を締結雌ねじ部材1から簡単に抜くことができる。
【0055】
一方、上記被締結雌ねじ部材41へ締め込まれている被締結雄ねじ部材40は、例えば、次のようにして、被締結雌ねじ部材41から取り外すことができる。
【0056】
先ず、上記締結雌ねじ部材1と押圧部材2とを、ボルト3によって締結雌ねじ部材1の周方向に互いに相対回転不可な状態で軸方向に連結し、ねじ締め装置を組み立てる。ここで、組み立てられたねじ締め装置においては、締結雌ねじ部材1の軸方向の一方の端面80が、押圧部材2の接離端面24と隙間を有して対向し、ボルト3の頭部が、円板状部21と当接している。
【0057】
次に、ねじ締め装置の締結雌ねじ部材1の雌ねじ11を、被締結雄ねじ部材40の雄ねじ50に螺合させて、押圧部材2の押圧面25を、被締結雄ねじ部材40のねじ込み側とは反対側の端面64に当接させて、さらに、ボルト3を締結雌ねじ部材1に強く締め込み、押圧面25と被締結雄ねじ部材40の上記端面64との間に大きな静止摩擦力を発生させる。このことで、図6(a)に示すように、押圧面25と端面64との押圧により、被締結雄ねじ部材40の雄ねじ50のねじ山の軸方向の一方側のフランク56と、ねじ締め装置の締結雌ねじ部材1の雌ねじ11のねじ山の軸方向の他方側のフランク16とが軸方向に付勢された状態になる。
【0058】
続いて、レンチなどを上記押圧部材2の円板状部21に取り付けて、上記押圧部材2の円板状部21に、図3に矢印Aで示す方向と反対方向に、手でレンチを介してより回転トルクを付与し、押圧面25からこの押圧面25に当接している被締結雄ねじ部材40の端面64に、静止摩擦力によって、矢印Aに示す方向と反対方向に回転トルクを付与して被締結雄ねじ部材40を、被締結雌ねじ部材41に対して緩める。
【0059】
このことで、図6(b)に示すように、先端45と有底の穴の底46との押圧が緩くなることにより、被締結雄ねじ部材40の雄ねじ50のねじ山の軸方向の両方側のフランク55,56と、被締結雌ねじ部材41の雌ねじ60のねじ山の軸方向の両方側のフランク65,66とが軸方向に付勢されない状態になるとともに、押圧面25と端面64との押圧により、被締結雄ねじ部材40の雄ねじ50のねじ山の軸方向の一方側のフランク56と、ねじ締め装置の締結雌ねじ部材1の雌ねじ11のねじ山の軸方向の他方側のフランク16とが軸方向に付勢された状態を保つ。そして、上記押圧部材2の円板状部21に、矢印Aで示す方向と反対方向に手でトルクを付与して回転させて、被締結雄ねじ部材40を被締結雌ねじ部材41から取り出す。
【0060】
最後に、ねじ締め装置のボルト3を緩めて、押圧部材2の押圧面25と被締結雄ねじ部材40の上記端面64とを離間させて、押圧面25と被締結雄ねじ部材40の端面64との摩擦力を遮断する。このことで、図6(c)に示すように、押圧面25と端面64との押圧が緩くなることにより、被締結雄ねじ部材40の雄ねじ50のねじ山の軸方向の両方側のフランク55,56と、ねじ締め装置の締結雌ねじ部材1の雌ねじ11のねじ山の軸方向の両方側のフランク15,16とが軸方向に付勢されない状態になる。その後、被締結雄ねじ部材40を締結雌ねじ部材1から取り外して、被締結雄ねじ部材40の被締結雌ねじ部材41からの取り外しを完了する。
【0061】
上記実施形態のねじ締め装置によれば、上記被締結雄ねじ部材40の締め込み側とは反対側の端面64と、上記押圧部材2の押圧面25との静止摩擦力によって、被締結雄ねじ部材40に回転トルクを付与する構成であって、従来例のように、ドライバーによって被締結雄ねじ部材の端面に形成された溝に局所的な大きな回転トルクを付与する構成ではなく、被締結雄ねじ部材40の端面64全面に略均等に大局的に回転トルクを付与する構成であるから、被締結雄ねじ部材40に回転トルクが付与されたことによって、被締結雄ねじ部材40の端面64に変形や損傷が起こることを略完全に防止できる。
【0062】
また、上記実施形態のねじ締め装置によれば、被締結雄ねじ部材40の端面64全面に回転トルクを付与することができるから、被締結雄ねじ部材40に大きい回転トルクを付与することができる。したがって、被締結雄ねじ部材40を強く締め込むことができる。
【0063】
また、上記実施形態のねじ締め装置によれば、ねじ締め装置が組み立てられた状態、すなわち、締結雌ねじ部材1の円板状部21側の端面80と押圧部材2の押圧面24とが当接し、ボルト3の頭部が円板状部21の接離端面24側とは反対側の端面に当接している状態において、突出部22の押圧面25が締結雌ねじ部材1に径方向に重なっているから、上記被締結雄ねじ部材40を、被締結雌ねじ部材41に締め込んだ状態において、被締結雄ねじ部材40において被締結雌ねじ部材41から突出する部分の軸方向の寸法を小さくすることができる。
【0064】
尚、このねじ締め装置においては、締結雌ねじ部材1の円板状部21側の端面80と押圧部材2の押圧面24とが当接し、ボルト3の頭部が円板状部21の接離端面24側とは反対側の端面に当接している状態において、締結雌ねじ部材1の円板状部21側とは反対側の端面と、押圧部材2の押圧面25との軸方向の距離に相当する長さ分、被締結雄ねじ部材40の締め込み後、被締結雄ねじ部材40が、被締結雌ねじ部材41から突出することになる。
【0065】
ここで、上記軸方向の距離、すなわち、上記被締結雄ねじ部材40の突出する部分の距離は、締結雌ねじ部材1のねじの一山または二山程度に相当する軸方向の距離があれば十分である。この場合、被締結雄ねじ部材40の被締結雌ねじ部材41からの突出分は、非常に小さいものになる。
【0066】
また、上記実施形態のねじ締め装置によれば、周方向に互いに間隔をおいて位置する複数のボルト3によって、締結雌ねじ部材1と押圧部材2とが、締結雌ねじ部材1の周方向に互いに相対回転不可な状態で軸方向に連結されるから、被締結雄ねじ部材40の締め込みを行っている最中に、締結雌ねじ部材1に対する押圧部材2の相対位置が変わることを防止できる。したがって、ねじの締め込みの最中において、被締結雄ねじ部材40に大きい回転トルクを持続的に付与することができる。
【0067】
また、上記実施形態のねじの締結方法によれば、被締結雄ねじ部材40の端面64全面に略均等に大局的に回転トルクを付与することができて、従来例のように、ねじ部材の端面に形成された溝に局所的な大きな回転トルクが付与されることがない。したがって、上記被締結雄ねじ部材40の締め込みの最中に被締結雄ねじ部材40の端面64が変形したり、損傷したりして、製品が出荷できなくなることがない。
【0068】
また、上記実施形態のねじの締結方法によれば、被締結雄ねじ部材40の端面64全面に回転トルクを付与することができるから、被締結雄ねじ部材40に大きい回転トルクを付与することができて、被締結雄ねじ部材40を強く締め込むことができる。
【0069】
また、上記実施形態のねじの締結方法によれば、上記押圧部材2の押圧面25に対して被締結雄ねじ部材40を離間させた後、被締結雄ねじ部材40とねじ締め装置とを分離するから、被締結雄ねじ部材40とねじ締め装置とを分離している最中に、締め込んだ被締結雄ねじ部材40が被締結雌ねじ部材41から引き出される回転トルクが、被締結雄ねじ部材40にかかることが殆どない。
【0070】
また、上記実施形態のねじの取り外し方法によれば、被締結雄ねじ部材40を殆ど損傷させずに、被締結雌ねじ部材41から取り出すことができる。
【0071】
尚、上記実施形態のねじ締め装置では、押圧部材2が、円板状部21から突出する突出部22を有していたが、この発明では、押圧部材は、円板状部から突出する部分を有していなくても良く、押圧部材は、径方向において、筒状の締結雌ねじ部材の径方向の内方に位置する押圧面(押圧面は、締結雌ねじ部材に、径方向に重なっていても、径方向に重なっていなくても、どちらでも良い)を有していさえすれば良い。
【0072】
また、上記実施形態のねじ締め装置では、締結部材が、締結雌ねじ部材1と押圧部材2とを締結雌ねじ部材1の周方向に互いに相対回転不可にする機能と、締結雌ねじ部材1と押圧部材2とを軸方向に連結する機能の両方を有するボルト3であった。しかしながら、この発明では、締結部材は、締結雌ねじ部材と押圧部材とを締結雌ねじ部材の周方向に互いに相対回転不可にする機能を有する一方、締結雌ねじ部材と押圧部材とを軸方向に連結する機能を有しない第1部材と、締結部材は、締結雌ねじ部材と押圧部材とを締結雌ねじ部材の周方向に互いに相対回転不可にする機能を有しない一方、締結雌ねじ部材と押圧部材とを軸方向に連結する機能を有する第2部材とからなっていても良い。そして、例えば、この場合において、第1部材は、頭部を有さないボルトや、ピン、あるいは、締結雌ねじ部材の例えば外径側に形成された第一凸部と円板状部の例えば外径側に第一凸部と周方向に接触可能な第二凸部とを備えた構成であっても良い。また、第2部材は、クランプであっても良い。
【0073】
また、上記実施形態のねじ締め装置では、上記押圧部材2が、環状部材であって、円板状部21が、円筒構造を有していたが、この発明では、押圧部材2は、環状部材でなくても良い。例えば、押圧部材が、第1円柱部と、第1円柱部よりも小径の第2円柱部とを有し、第2円柱部が、第1円柱部の一方の端面の中央部から軸方向に突出し、第1円柱部の第2円柱部側の端面が接離端面であり、第2円柱部の先端の端面が押圧面である構成であっても良い。
【0074】
また、上記実施形態のねじ締め装置では、締結雌ねじ部材1が右ねじであると共に、ボルト3が右ねじであった。すなわち、締結雌ねじ部材1を、図3に矢印Aで示す方向、すなわち、時計回りに回転させると、被締結雄ねじ部材40を締め付けることができ、かつ、締結部材としてのボルト3を、図4にBで示す方向、すなわち、反時計回りに回転させると、ボルト3の締結雌ねじ部材1への螺合を緩めることができるようになっていた。しかしながら、この発明では、締結雌ねじ部材および締結部材としてのボルトの両方が左ねじであっても良く、締結雌ねじ部材および締結部材としてのボルトの一方が右ねじであって、他方が左ねじであっても良い。
【0075】
上記締結雌ねじ部材1および締結部材としてのボルトの一方が右ねじであって他方が左ねじである場合には、ボルトを緩める際に締結雌ねじ部材に付与される回転トルクが、被締結雄ねじ部材を被締結雌ねじ部材に締め付ける方向のトルクであるから、ねじ締め装置を、被締結雄ねじ部材から取り外す際に、万が一ボルトを緩める際に間違って締結雌ねじ部材の軸心を中心に回転させてしまっても、締め込まれた被締結雄ねじ部材が、被締結雌ねじ部材から外れることがなく、好ましい。
【0076】
尚、締結雌ねじ部材および締結部材としてのボルトの両方が右ねじである場合、および、締結雌ねじ部材および締結部材としてのボルトの両方が左ねじである場合においても、締結雌ねじ部材のねじの回転軸と、締結部材としてのボルトの回転軸とが、異なる軸であるから、ボルトを緩める回転トルクによって、押圧部材を介して被締結雄ねじ部材に作用するトルク、すなわち、締め付けた被締結雄ねじ部材が被締結雌ねじ部材から外れるトルクは、ほとんどなく、このトルクによって締め付けた被締結雄ねじ部材が被締結雌ねじ部材から外れることはない。
【0077】
また、上記実施形態のねじ締め装置では、ねじ締め装置の組立状態で、締結雌ねじ部材1の軸方向の一方の端面80と、押圧部材2の接離端面24とが当接していたが、この発明では、ねじ締め装置の組立状態で、締結雌ねじ部材における軸方向の押圧部材の接離端面側の端面と、押圧部材の接離端面とは、当接している必要はない。ねじ締め装置は、組立状態において、締結雌ねじ部材と押圧部材とを締結雌ねじ部材の周方向に互いに相対回転不可な状態で軸方向に連結可能でありさえすれば、締結雌ねじ部材における軸方向の押圧部材の接離端面側の端面と、押圧部材の接離端面とが、当接している必要はないのである。
【0078】
更に述べると、締結部材としてのボルトの締め込み量を調整することによって、締結雌ねじ部材における軸方向の押圧部材の接離端面側の端面と、押圧部材の接離端面との隙間を適切に調整することによって、締結雌ねじ部材における押圧部材の接離端面側とは反対側の端面と、押圧部材の押圧面との軸方向の距離を調整できる。このようにすれば、被締結雄ねじ部材の被締結雌ねじ部材への締め込み状態において、被締結雄ねじ部材において、被締結雌ねじ部材から突出している部分の長さを容易かつ正確に調整できる。
【0079】
また、上記実施形態のねじの締結方法においては、ねじ締め装置を組み立てた後に、被締結雄ねじ部材40を、ねじ締め装置の締結雌ねじ部材1に螺合したが、この発明では、締結雌ねじ部材を押圧部材にボルトによってある程度係合させた後に、締結雌ねじ部材にねじ部材を螺合して、その後、ボルトを最後まで締め込んで、押圧部材とねじ部材とを摩擦係合しても良い。要は、押圧部材の押圧面からの摩擦力によって、被締結雄ねじ部材に付与された回転トルクによって、被締結雄ねじ部材が被締結雌ねじ部材に締め込まれる構成であれば、工程の順序や細部は如何なるものであっても良いのである。
【0080】
また、上記実施形態のねじの締結方法においては、被締結雄ねじ部材40の先端45と被締結雌ねじ部材41の有底の穴の底46との押圧によって、被締結雄ねじ部材40の雄ねじ50のねじ山の軸方向の他方側のフランク55と、被締結雌ねじ部材41の雌ねじ60のねじ山の軸方向の一方側のフランク65とが軸方向に付勢させることで、被締結雄ねじ部材40と被締結雌ねじ部材41とを強く締め込ませ、締結した。しかし、この発明においては、締結雄ねじ部材に段部を形成し、締結雌ねじ部材41の軸方向の他方側の端面に、締結雄ねじ部材の段部の端面を押圧させて、被締結雄ねじ部材の雄ねじ50のねじ山の軸方向の他方側のフランク55と、被締結雌ねじ部材41の雌ねじ60のねじ山の軸方向の一方側のフランク65とを軸方向に付勢させてもよい。また、この発明においては、好ましくはないが、被締結雌ねじ部材41の不完全ねじ部と被締結雌ねじ部材40の雄ねじ50との噛み合わせによって、被締結雌ねじ部材41と被締結雄ねじ部材40とを締結してもよい。
【0081】
図7は、本発明のねじ締め装置の用途の一例を示す図であり、本発明のねじ締め装置によって、被締結雌ねじ部材が締め込まれている最中のピンタイプ保持器を示す断面図である。
【0082】
図7において、100は、ねじ締め装置を示し、130は、筒状の締結雌ねじ部材を示し、131は、押圧部材を示し、132は、ボルトを示し、150は、ピンタイプ保持器を示す。
【0083】
上記ピンタイプ保持器150は、第1リング110と、被締結雌ねじ部材としての第2リング112と、複数のピン111と、割りピン構造を有する第1テーパ部材113と、第2テーパ部材114と、被締結雄ねじ部材101とを有する。
【0084】
上記各ピン111の一端部は、第1リング110のねじ穴に螺合している。上記第2リング112の貫通穴の円筒内周面には、第1テーパ部材113の円筒外周面が当接し、第1テーパ部材113の円錐内周面には、第2テーパ部材114の円錐外周面が当接している。上記第2テーパ部材114の円筒内周面には、ピン111の他端部の円筒外周面が当接している。
【0085】
上記第1テーパ部材113の円錐内周面の小径側の端面は、第2リング112の貫通穴内の段部に当接している。上記第2テーパ部材114の円錐外周面の大径側の端面には、被締結雄ねじ部材101の押圧部材131とは反対側の端面が当接している。このピンタイプ保持器は、第2テーパ部材114を被締結雄ねじ部材101で締め込んで、第2テーパ部材114の円錐外周面で第1テーパ部材113の円錐内周面を押圧して、第1テーパ部材113の円筒外周面の外径を拡径して、第1テーパ部材113の円筒外周面を、第2リング112の貫通穴の円筒内周面に押圧して、ピン111の他端部を第2リング112に固定し、ピン111の他端部と第2リング112との固定の剛性を予め定められた剛性に調整するようになっている。そして、被締結雄ねじ部材101の締め込みの後、ねじ締め装置を外して、第2リング112の第1リング110とは反対側において、溶接を行うことにより、ピンタイプ保持器の製造を完了するようになっている。
【0086】
図7に示すように、上記第2リング112の貫通穴の第1リング110側とは反対側の部分には、雌ねじが形成されており、被締結雄ねじ部材101の外周面の雄ねじに螺合するようになっている。
【0087】
この例で示すピンタイプ保持器で使用する円筒形状の被締結雄ねじ部材101のように、剛性が弱いねじ部材の場合には、従来のドライバーを使用する締め付けでは、被締結雄ねじ部材101が大きな損傷を受けて、製品としてのピンタイプ保持器が使い物にならなくなる場合がある。しかしながら、本発明のねじ締め装置を使用して、被締結雄ねじ部材101の締め込みを行えば、被締結雄ねじ部材101に変形等の損傷が殆ど生じることがなく、かつ、大きな回転トルクで、被締結雄ねじ部材101を締め込むことができるのである。
【0088】
尚、上記実施形態では、本発明のねじ締め装置で筒状の被締結雄ねじ部材40,101を締め込んだ。しかしながら、本発明のねじ締め装置で締め込まれる被締結雄ねじ部材は、筒状でなくても良く、本発明のねじ締め装置で締め込まれる被締結雄ねじ部材には一切制限がなく、本発明のねじ締め装置で如何なる被締結雄ねじ部材でも締め込むことができることは、言うまでもない。例えば、本発明のねじ締め装置は、建築現場で使用されるアンカーネジの締め込み等に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の一実施形態のねじ締め装置を示す模式図である。
【図2】上記ねじ締め装置によって、締め込み可能な被締結雄ねじ部材と、この被締結雄ねじ部材が締め込まれる被締結雌ねじ部材の一例を示す模式断面図である。
【図3】上記ねじ締め装置で、被締結雌ねじ部材に固定されている最中の被締結雄ねじ部材を示す模式図である。
【図4】上記ねじ締め装置で、被締結雌ねじ部材に固定されている最中の被締結雄ねじ部材を示す模式図である。
【図5】上記ねじ締め装置で、被締結雄ねじ部材を被締結雌ねじ部材に締め込む手順の一例を説明する図である。
【図6】被締結雌ねじ部材へ締め込まれている被締結雄ねじ部材を、被締結雌ねじ部材から取り外す手順の一例を説明する図である。
【図7】本発明のねじ締め装置によって、被締結雌ねじ部材が締め込まれている最中のピンタイプ保持器を示す断面図である。
【符号の説明】
【0090】
1,130 締結雌ねじ部材
2,131 押圧部材
3,132 ボルト
11 締結雌ねじ部材の雌ねじ
12 ねじ穴
21 円板状部
22 突出部
24 接離端面
25 押圧面
29 貫通穴
40,101 被締結雄ねじ部材
41 被締結雌ねじ部材
50 被締結雄ねじ部材の雄ねじ
60 被締結雌ねじ部材の雌ねじ
64 被締結雄ねじ部材の押圧部材側の端面
80 締結雌ねじ部材における押圧部材の接離端面側の端面
100 ねじ締め装置
112 第2リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周に雌ねじを有する環状の締結雌ねじ部材と、
上記締結雌ねじ部材の軸方向の一方の端面に、接離可能に重なる接離端面と、上記接離端面と同じ側にあって、上記雌ねじの内接円の内側に上記軸方向に重なる押圧面とを有する押圧部材と、
上記締結雌ねじ部材と上記押圧部材とを上記締結雌ねじ部材の周方向に互いに相対回転不可な状態で上記軸方向に連結可能であると共に、上記締結雌ねじ部材と上記押圧部材の上記軸方向の相対位置を変動可能な締結部材と
を備えることを特徴とするねじ締め装置。
【請求項2】
請求項1に記載のねじ締め装置において、
上記押圧部材は、
上記接離端面を有する円板状部と、
上記円板状部の上記接離端面側から上記軸方向に突出すると共に、上記押圧面を有する突出部と
を有することを特徴とするねじ締め装置。
【請求項3】
請求項2に記載のねじ締め装置において、
上記締結雌ねじ部材の上記一方の端面は、複数のねじ穴を有し、
上記円板状部は、上記接離端面に開口すると共に、上記円板状部の周方向に互いに間隔をおいて位置する複数の貫通穴を有し、
上記締結部材は、複数のボルトであり、
上記締結雌ねじ部材と上記押圧部材とが、上記軸方向に連結されている状態で、上記各ボルトは、上記円板状部の上記貫通穴に挿通されて、上記一方の端面の上記ねじ穴に螺合していることを特徴とするねじ締め装置。
【請求項4】
雌ねじを有する被締結雌ねじ部材に、雄ねじを有する被締結雄ねじ部材の一端部をねじ込み、
雌ねじを有する締結雌ねじ部材に、上記被締結雄ねじ部材の他端部をねじ込み、
上記締結雌ねじ部材と、その締結雌ねじ部材の上記雌ねじの内接円の内側に軸方向に重なる押圧面を有する押圧部材とを、上記締結雌ねじ部材の周方向に互いに相対回転不可な状態で上記軸方向に連結し、
上記押圧部材と上記締結雌ねじ部材とが、上記締結雌ねじの周方向に互いに相対回転不可な状態で上記軸方向に連結している状態で、上記押圧面と、上記被締結雄ねじ部材の上記他端部の端面とを当接させ、
その後、上記押圧部材に回転トルクを付与して、上記締結雌ねじ部材と上記押圧部材を上記締結雌ねじ部材の周方向に回転させることにより、上記押圧面に当接している上記被締結雄ねじ部材の上記他端部の端面に摩擦力により回転トルクを付与して、上記被締結雄ねじ部材を、上記被締結雌ねじ部材に締め込むことを特徴とするねじの締結方法。
【請求項5】
請求項4に記載のねじの締結方法において、
上記被締結雄ねじ部材を、上記被締結雌ねじ部材に締め込んだ後、
上記被締結雄ねじ部材の上記他端部の端面と、上記押圧面とを離間させ、
その後、上記被締結雄ねじ部材と上記締結雌ねじ部材との螺合を解除して、上記被締結雄ねじ部材と、上記締結雌ねじ部材および上記押圧部材とを分離することを特徴とするねじの締結方法。
【請求項6】
被締結雌ねじ部材の雌ねじに螺合している被締結雄ねじ部材における、ねじ込み側である一端部とは反対側の他端部に、雌ねじを有する締結雌ねじ部材をねじ込み、
上記締結雌ねじ部材と、その締結雌ねじ部材の上記雌ねじの内接円の内側に軸方向に重なる押圧面を有する押圧部材とを、上記締結雌ねじ部材の周方向に互いに相対回転不可な状態で上記軸方向に連結し、
上記被締結雌ねじ部材の上記他端部の端面と、上記押圧面とを当接し、
その後、上記押圧部材に回転トルクを付与して、上記押圧部材と上記締結雌ねじ部材を上記締結雌ねじ部材の周方向に回転させることにより、上記押圧面に当接している上記被締結雄ねじ部材の上記端部の端面に摩擦力により回転トルクを付与して、上記被締結雄ねじ部材を、上記被締結雌ねじ部材から取り出すことを特徴とするねじの取り外し方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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