説明

ひび入りゆで卵の殻剥取り装置

【課題】ゆで卵の卵白に強固に貼りついている卵殻膜を卵白から分離して確実に剥離除去する。
【解決手段】機枠3に、相対向する周面が下方へ向け回動するよう互いに反対方向に回転する一対のロール4,5を卵受入れ間隔をおいて平行に軸承し、これらロールの少なくとも一方を偏心ロール4とするとともに両ロール間の中間位置の下方部に卵受け部材6を配設し、ロールの少くとも一方の周面に摩擦性を有する螺旋状突条7を設けてなるゆで卵揉みほぐし装置1を備え、両ロール4,5間に供給されるひび入りゆで卵Eを偏心ロール4の偏心回転により揉みほぐして殻剥取り部2へ移行させて殻を剥取る。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、予め殻にひびが入れられたゆで卵の殻を自動的に剥取るためのひび入りゆで卵の殻剥取り装置に関する。
【0002】
【従来の技術】ゆでた卵の殻を自動的に剥取るための装置としては従来から種々提供されているが、ゆで卵の形を損わずに殻を剥取る手段として、一般には適宜手段により殻にひびが入れられたゆで卵を一対のロール上に供給して動転させ、その上部に設けられた移送用ロールによって移送される間に卵の殻を前記ロール間にくいつかせ、殻を剥取るようになされたもの(例えば実公昭46−2450号、同48−5181号、実公平2−42154号公報)が知られている。
【0003】しかして上記従来の殻剥取り装置は、予め殻にひびを入れたゆで卵を一対のロール間上に落下供給し、一方のロールの長手方向側部にそって配設され周面にゴム紐等の紐条を中央から端部にかけて逆巻きした移送ロールによりゆで卵を長手方向に移動させ、その間に一対のロール間に殻をくいつかせて剥取るようになされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかるに上記従来のいずれの殻剥取り装置も、ゆで卵が一対のロール間を軸方向に移動する間に殻をロール間にくいつかせて剥取るものであるから、卵殻膜が卵白の表面に強固に密着している場合にはローラ間にくいつかず、剥れないままに残存してしまい、そのため後工程において人手により卵殻膜を剥離させる補助作業が欠かせぬものとなっており、大量のゆで卵を処理する場合には上記補助作業が容易でないという問題点があった。
【0005】また従来の技術では、一対のロール間に位置するひび入りゆで卵をその上部に位置する送りロールで押えて送るだけであるから、当該ひび入りゆで卵に大小の差があると一対のロール間に押しつけられる押圧力にばらつきが生じ、そのため殻の剥取りが不十分になるもの、あるいは卵白までも引き千切ぎられるものなどが生じて均質の製品を得ることができなかった。
【0006】さらに従来の装置では、前工程においてゆで卵にひびを入れる際にゆで卵に衝撃を加えて細かくひびを入れるようになされており、そのため細かくなりすぎた卵殻が卵白に付き刺って卵白内に入り込むことがあり、製品となった後におけるクレームの発生原因となることが多かった。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、ゆで卵の卵白の表面に強固に貼りついている卵殻膜をも効果的に剥離し、殻とともに確実に剥取るようにすることおよび卵の大小に拘らず良好な剥取りができるようにすることを課題としてなされたもので、その解決手段として本発明においては、機枠に、相対向する周面が下方へ向け回動するよう互いに反対方向に回転する一対のロールを卵受入れ間隔をおいて平行に軸承し、これらロールの少なくとも一方を偏心ロールとするとともに両ロール間の中間位置の下方部に卵受け部材を配設し、前記ロールの少くとも一方の周面に摩擦性を有する螺旋状突条を設けてなるゆで卵揉みほぐし装置を備え、前記両ロール間に供給されるひび入りゆで卵を偏心ロールの偏心回転により揉みほぐして殻剥取り部へ移行させるようにしたことにある。好ましくは、前記偏心ローラが大径とされ、他方のロールがそれより小径とされる。そして前記偏心ロールの周面に螺旋状突条を設けるとともにその突条の1ピッチごとに偏心方向を異ならせるのがよい。
【0008】一方、殻の剥取り手段として、周面に摩擦性を有する螺旋状突条が設けられた卵送りロールと、このロールに対し卵受入れ間隔をおいて平行に配設された台板と、この台板と前記卵送りロールとの中間位置の下方部に回転自在に設けられた卵受けロールとを備え、前記台板には前記卵受けロール上に位置するゆで卵の下部に接触する剥取り板を突出長さ調整可能に設け、この剥取り板により卵白から卵殻膜を剥取るようにしたことにある。
【0009】そして請求項5は、上記ひび入りゆで卵の揉みほぐし装置と剥取り装置とを組合わせたものである。さらに請求項6は、少ない設置面積により大量のゆで卵の殻取りを効率よく行えるようにするため、前記請求項5における揉みほぐし装置を中心方向としてひび入りゆで卵供給部から放射方向に複数配設したことにある。
【0010】したがって揉みほぐし装置の一対のロール間に供給されるひび入りゆで卵は、偏心しているロールの回転により他側のロールとの間で圧迫作用を受けて揉まれ、これにより卵白に強固に貼りつている卵殻膜も卵白から剥離され、後工程において卵殻を剥取る際に卵殻膜も一緒に剥取られ、手作業による卵殻膜の除去作業を大幅に低減することができるとともに、前工程において細かくひびを入れずとも卵殻の剥離が確実にできるため、卵殻の細片が卵白に付き刺さることもなく、クレームの原因を除去することができる。
【0011】また、請求項4の殻剥取り装置では、剥取り板の突出長さを選定することによりその先端縁で卵白の周面に付着している卵殻膜も共に剥離することができ、前記揉みほぐし装置と組合わせれば一層卵殻および卵殻膜の殻剥取りが確実にできる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図面に示す実施の形態を参照して説明する。図1はひび入りゆで卵の揉みほぐし装置1と殻剥取り装置2とを軸方向に一連に組合わせ、かつ2基を並設した場合の一実施形態を示しており、図2は図1のA矢視相当、図3は同B矢視相当の断面的配置構成を示している。図2、図3において符号Cで示す中心位置に対し左右対称であるから、一側のみについて説明し、他側にはこれと同一符号を付すに留める。
【0013】上記ひび入りゆで卵Eの揉みほぐし装置1部分は、機枠3に軸承される大径の偏心ロール4と、この偏心ロール4に対し卵受入れ間隔をおいて平行に軸承され軸心が前記偏心ロール4の軸心よりも下位に位置する小径の偏心ロール5と、これら両ロール4,5の中間位置の下方部にあってひび入りゆで卵Eの下端を支える卵受け部材としての卵受けロール6とを有し、大径の偏心ロール4の外周には、1ピッチ内に1個の卵Eが納まる寸法とされた螺旋状突条7が設けられている。この突条7は、偏心ロール4と一体に成形してもよいが、ひび入りゆで卵Eを確実に移送するためゴム等の摩擦力の大きい材料からなる紐状材を巻付けて形成することが望ましい。
【0014】前記大径の偏心ロール4は、その軸方向全域が同一方向に偏心しているもの、あるいは図1に示しているように螺旋状突条7の1ピッチごとに偏心方向を違えるようにしたもののいずれであってもよい。ちなみに上記大径の偏心ロール4の偏心部分の外径は60〜70mm程度、小径の偏心ロール5の外径は25mm前後とされ、上記偏心ロール4,5の偏心に基づくゆで卵Eの左右方向への移動距離は7mm前後となるように形成されている。
【0015】前記各ロール4,5,6にはそれぞれプーリー8,9,10があって、機枠3に設置されたモータ11によりベルト12、プーリー13を介して回動されるシャフト14上のプーリー15,16からそれぞれベルト17,18を介して回転が伝達され、その回転方向は、偏心ロール4,5の相対向する周面が下方(矢印方向)に回転するよう互いに逆方向への回転が与えられ、卵受けロール6は大径の偏心ロール4と同方向(矢印方向)への回転が与えられるようになっている。
【0016】図1では前記のように揉みほぐし装置1と殻剥取り装置2とが一連とされているので、前記大径の偏心ロール4の回転軸心に軸心を有する卵送りロール19が該偏心ロール4と一体的に設けられており、この卵送りロール19の外周にも前記偏心ロール4の螺旋状突条7に連なる一連の螺旋状突条20が設けられている。
【0017】前記殻剥取り装置2部分においては、揉みほぐし装置1部分の小径の偏心ロール5の位置にひび入りゆで卵Eの側部を受ける略台形状断面を有する台板21が設置され、この台板21の下部には前記卵受けロール6の上面に向けて延びる剥取り板22が設けられている。この剥取り板22はその先端縁がナイフエッジ状の刃先22aとされており、卵受けロール6とその上に載るひび入りゆで卵Eとの間に刃先22aが位置するようになっている。そしてこの剥取り板22は、台板21の下部にネジ23によりその刃先22aの突出位置を調整可能に取付けられ、ひび入りゆで卵Eの大きさ等に応じ最適な突出長さが得られるようになされている。
【0018】なお、図1は前記のように揉みほぐし装置1部分と殻剥取り装置2部分とが一連となっているが、これを分離してその間に例えば実公平2−42154号公報に示されるような殻剥取り装置を介在させ、一対のローラの間に殻をくいつかせて引き剥ぎ、上記殻剥取り装置2部分で卵白に付着残存する卵殻膜を剥取るようにそれぞれ分担させるようにすることができる。この場合には偏心ロール4と卵送りロール19との駆動系は各別となる。またこのように揉みほぐし装置1と殻剥取り装置2とを切離して構成する場合、あるいは分離させない場合でも、前記揉みほぐし装置1部分における卵受けロール6は滑り板等の固定部材としてもよい。
【0019】次に上記実施の形態の作用を説明する。
【0020】予めひびが入れられたゆで卵Eが揉みほぐし装置1部分の始端位置の大径の偏心ロール4と小径の偏心ロール5との間に供給されると、両ロール4,5の互いに逆方向への回転によりひび入りゆで卵Eは脱落することなく卵受けロール6上に受け止められた状態で偏心ロール4の螺旋状突条7のリードによって下流方向へ移送される。
【0021】その間に大径の偏心ロール4と小径の偏心ロール5との偏心回転によってひび入りゆで卵Eは回転しながら両ロール4,5に挟まれて揉まれる。この際に卵白は自己の弾性により形が壊れることはないが、卵白に貼りついている卵殻膜は揉みほぐされて卵白から分離する。
【0022】こうして卵殻および卵殻膜が揉みほぐされたゆで卵Eは殻剥取り装置2の領域に入り、ここで卵送りロール19と台板21の側面との間を送られる間にゆで卵Eは卵受けロール6の回転に伴い剥取り板22の刃先22aに逆う方向に回転することによりその刃先22aで卵殻および卵殻膜が剥取られる。殻が除去されたゆで卵Eは各ロール19,6の末端から下方へ排出され、回収される。
【0023】図示の実施の形態のように左右2基を並設し、大径の偏心ロール4,4を外側に、小径ロール5,5を内側に位置する配置構成とすれば、2基並列しても幅方向のスペースをとらず、小型に構成することができるので好ましい形態とすることができる。
【0024】図4は、本発明を大量のゆで卵処理に適する形態とした場合の実施形態を示すもので、中央にひび入りゆで卵を受入れる分配用のホッパ24を有するゆで卵供給部が設けられ、このホッパ24の周囲に前記揉みほぐし装置1をホッパ24側として放射方向に複数基(図では8基)が配設されている。
【0025】このように構成することにより、同一箇所のホッパ24にひび入りゆで卵をまとめて供給することによりそれぞれの揉みほぐし装置1へ分配して供給することができ、小さい設置面積の使用により大量のゆで卵の殻剥取り処理を行うことができる。
【0026】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、一対のロール間にひび入りゆで卵を受入れ、そのロールの偏心回転によりゆで卵を揉みほぐすようにしたので、卵白や卵黄を傷めることなく卵白に強固に貼りついている卵殻膜を剥すことができ、殻剥取り時に卵殻膜が残ることなく確実に除去することができ、従来のように手作業の介入量を大幅に低減することができる。
【0027】また剥取り装置は、剥取り板の先端縁を回転卵に接触させて卵殻を剥取るので、卵の大小に拘りなくナイフで果物の皮をむくようにきれいに剥取ることができ、前記の揉みほぐし装置と組合わせれば一層効果を挙げることができる。これらにより殻剥ぎゆで卵を安価に供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態を示す斜視図。
【図2】図1のA矢視相当の断面相当図。
【図3】図1のB矢視相当の断面相当図。
【図4】本発明の他の実施形態を示す略示平面図。
【符号の説明】
1 揉みほぐし装置
2 殻剥取り装置
3 機枠
4,5 ロール(偏心ロール)
6 卵受けロール
7,20 螺旋状突条
11 モータ
19 卵送りロール
21 台板
22 剥取り板
24 ホッパ(ひび入りゆで卵供給部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】機枠に、相対向する周面が下方へ向け回動するよう互いに反対方向に回転する一対のロールを卵受入れ間隔をおいて平行に軸承し、これらロールの少なくとも一方を偏心ロールとするとともに両ロール間の中間位置の下方部に卵受け部材を配設し、前記ロールの少くとも一方の周面に摩擦性を有する螺旋状突条を設けてなるゆで卵揉みほぐし装置を備え、前記両ロール間に供給されるひび入りゆで卵を偏心ロールの偏心回転により揉みほぐして殻剥取り部へ移行させ、殻を剥取るようにしたことを特徴とするひび入りゆで卵の殻剥取り装置。
【請求項2】前記偏心ロールが大径とされ、他方のロールがそれより小径とされている請求項1記載のひび入りゆで卵の殻剥取り装置。
【請求項3】前記偏心ロールは、その周面に螺旋状突条を設けるとともにその突条の1ピッチごとに偏心方向が異ならせてある請求項1記載のひび入りゆで卵の殻剥取り装置。
【請求項4】周面に摩擦性を有する螺旋状突条が設けられた卵送りロールと、このロールに対し卵受入れ間隔をおいて平行に配設された台板と、この台板と前記卵送りロールとの中間位置の下方部に回転自在に設けられた卵受けロールとを備え、前記台板には前記卵受けロール上に位置するゆで卵の下部に接触する剥取り板を突出長さ調整可能に設け、この剥取り板により卵白から卵殻膜を剥取るようにしたことを特徴とするひび入りゆで卵の殻剥取り装置。
【請求項5】機枠に、相対向する周面が下方へ向け回動するよう互いに反対方向に回転する一対のロールを卵受入れ間隔をおいて平行に軸承し、これらロールの少なくとも一方を偏心ロールとするとともに両ロール間の中間位置の下方部に卵受け部材を配設し、前記ロールの少くとも一方の周面に摩擦性を有する螺旋状突条を設けてなるゆで卵揉みほぐし装置と、前記一方のロールの軸線の延長上に周面に摩擦性を有する螺旋状突条が設けられた卵送りロールを配設するとともにこのロールとの間に卵受入れ間隔をおいて台板を平行に配設し、該台板と前記卵送りロールとの中間位置の下方部に回転自在に設けられた卵受けロールを備え、前記台板には前記卵受けロール上に位置するゆで卵の下部に接触する剥取り板を突出長さ調整可能に設けてなる卵殻剥取り部とからなり、前記偏心ロールの偏心回転によりひび入りゆで卵を揉みほぐして卵殻膜を卵白から分離させ、前記剥取り板により卵白から卵殻膜を剥取るようにしたことを特徴とするひび入りゆで卵の殻剥取り装置。
【請求項6】前記ゆで卵揉みほぐし装置を中心方向としてひび入りゆで卵供給部から放射方向に複数配設されている請求項5記載のひび入りゆで卵の殻剥取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平9−201178
【公開日】平成9年(1997)8月5日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−11218
【出願日】平成8年(1996)1月25日
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)