説明

めっき方法

【課題】めっき液の劣化を防止するめっき方法を提供する。
【解決手段】めっき方法は、第1面と前記第1面の反対側の面となる第2面を有するワークを、前記第1面と前記第2面との間に隙間を有するように、螺旋状に巻くワーク巻取り工程と、前記螺旋状に巻かれた前記ワークの幅方向の両端部を蓋部材で挟持して、前記隙間と前記蓋部材とで構成される流路を形成する流路形成工程と、前記流路にめっき液を導入するめっき液導入工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、めっきを施す部品をテープ部材に搭載し、次いで、テープ部材をリールに巻き、次いで、リールに巻いた状態で、テープ部材をめっき液が貯留されためっき槽に浸漬させて、部品にめっきを施すめっき方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−3178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の方法では、めっき液が大気に触れるため、たとえば、コバルトを還元剤とした無電解銅めっきなどは、めっき液中の還元剤が酸化により劣化してしまう、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかるめっき方法は、第1面と前記第1面の反対側の面となる第2面を有するワークを、前記第1面と前記第2面との間に隙間を有するように、螺旋状に巻くワーク巻取り工程と、前記螺旋状に巻かれた前記ワークの幅方向の両端部を蓋部材で挟持して、前記隙間と前記蓋部材とで構成される流路を形成する流路形成工程と、前記流路にめっき液を導入するめっき液導入工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、螺旋状の流路が形成される。当該流路内の空間(隙間)は、大気と遮断された密閉空間である。このため、流路内へめっき液を導入して、めっき処理が行われる過程において、めっき液と大気との接触が低減される。従って、めっき液の劣化を防止することができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかるめっき方法の前記ワーク巻取り工程では、前記ワークに施される所定量のめっき液量に基づいて、前記隙間を規定し、規定された前記隙間を有するように、前記ワークを前記螺旋状に巻くことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、ワークにめっきを施すために必要な最低限のめっき液量に対する隙間が規定できるため、確実にめっき量を削減することができる。また、螺旋状に巻かれた状態でめっき処理が行われるため、めっき装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】めっき方法を示す工程図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材ごとに縮尺を異ならせて図示している。
【0012】
図1は、めっき方法を示す工程図である。本実施形態のめっき方法は、第1面と第1面の反対側の面となる第2面とを有するワークを、第1面と第2面との間に隙間を有するように、螺旋状に巻くワーク巻取り工程と、螺旋状に巻かれたワークの幅方向の両端部を蓋部材で挟持して、隙間と蓋部材とで構成される流路を形成する流路形成工程と、流路内にめっき液を導入するめっき液導入工程と、を含むものである。以下、具体的に説明する。
【0013】
まず、ワーク巻取り工程では、第1面10aと第1面10aの反対側の面となる第2面10bを有するワーク10を準備する。ワーク10は、例えば、フレキシブル基板等の長尺基板である。なお、本実施形態におけるワーク10は、後に、めっきが施される部分に、予め触媒が塗布され、塗布された触媒が焼成されたものである。そして、図1(a)に示すように、ワーク10の長さ方向(長尺方向)の一端部から他端部方向に向けて螺旋状(コイル状)にワーク10を巻く。このとき、第1面10aと第2面10bとの間に隙間20を有するように巻いていく。なお、必要に応じて、ワーク10の螺旋形状を保持するための保持部材を用いて、ワーク10を巻いてもよい。このようにして、図1(b)に示すように、螺旋状に巻かれ、第1面10aと第2面10bとの間に隙間20を有するワーク10が形成される。
【0014】
さらに、ワーク巻取り工程では、ワーク10に施される所定量のめっき液量に基づいて、隙間20を規定し、規定された隙間を有するように、ワーク10を螺旋状に巻いてもよい。例えば、ワーク10の第1面10aの一部にめっきが施されるめっき表面積Aとめっき表面積Aにめっきを施す所定量のめっき液量Vとの関係を、V/A=10と規定する。そして、ワーク10の幅を500mm、長さを20mとし、第1面10aのうち15%の領域にめっき処理を行う場合において、めっき表面積Aは、50cm×2000cm×0.15%=15000cm2となる。そして、めっき液量Vは、15000cm2×10=150000cm3となる。よって、第1面10aと第2面10bとの最短距離(ギャップ)Gは、150000cm3/(50cm×2000cm)=1.5cmと求められる。従って、上記の例では、第1面10aと第2面10bとの最短距離(ギャップ)Gが1.5cmとなる隙間20を有するように、ワーク10を螺旋状に巻く。
【0015】
流路形成工程では、図1(c)に示すように、螺旋状に巻かれたワーク10の幅方向の両端部を蓋部材で挟み込む。本実施形態では、螺旋状に巻かれたワーク10の幅方向の両端部の全体を平面部材31,32で挟持して、隙間20と平面部材31,32とで構成される流路40を形成する。また、螺旋状に巻かれたワーク10の最外周の端部には、めっき液を導入する導入口21が形成される。なお、本実施形態では、螺旋状に巻かれたワーク10の中央部に対応する平面部材32には、貫通穴32aが形成されている。
【0016】
めっき液導入工程では、流路40にめっき液を導入する。本実施形態では、無電解めっきにてめっきを施す。具体的には、導入口21からめっき液を導入する。導入する際のめっき液の流速は適宜設定する。そして、導入されためっき液は、螺旋状に形成された流路40を通って貫通穴32aから回収される。なお、貫通穴32aから回収しためっき液を導入口21に移動させて、再び導入口21からめっき液を導入してもよい。この場合、めっき液の回収から再導入までの間を密閉空間とすればよい。その後、ワーク10を洗浄し、次いで、焼成することにより、めっきが施されたワーク10が形成される。
【0017】
従って、上記実施形態によれば、以下に示す効果がある。
【0018】
めっき液は、密閉された流路40内に導入される。このため、めっき液と大気との接触機会が減るため、めっき液の劣化を防止することができる。さらに、ワーク10が螺旋状に巻かれた状態でめっき処理されるため、使用するめっき液の量を削減することができる。また、めっき装置自体を小型化することができる。
【0019】
なお、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下のような変形例が挙げられる。
【0020】
(変形例1)上記実施形態では、導入口21からめっき液を導入し、貫通穴32aから回収したが、これに限定されない。例えば、貫通穴32aからめっき液を導入し、導入口21から回収してもよい。このようにしても、密閉された流路40にめっき液が導入されるため、上記同様の効果を得ることができる。
【0021】
(変形例2)上記実施形態では、導入口21からめっき液を導入し、貫通穴32aから回収し、さらに、回収されためっき液を導入口21から再び流路40に向けて導入したが、これに限定されない。導入口21からめっき液を導入し、貫通穴32aから回収し、さらに、回収されためっき液を貫通穴32aから再び流路40に向けて導入し、導入口21からめっき液を回収してもよい。このようにすれば、めっき厚を均一化することできる。
【0022】
(変形例3)上記実施形態では、平面部材32に貫通穴32aを設けたが、貫通穴32aを設けなくてもよい。この場合、導入口21から流路40に向けてめっき液を導入し、流路40にて所要時間めっき液を保持し、その後、導入口21からめっき液を回収すればよい。このようにしても、上記同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0023】
10…ワーク、10a…第1面、10b…第2面、20…隙間、21…導入口、31,32…蓋部材としての平面部材、40…流路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と前記第1面の反対側の面となる第2面を有するワークを、前記第1面と前記第2面との間に隙間を有するように、螺旋状に巻くワーク巻取り工程と、
前記螺旋状に巻かれた前記ワークの幅方向の両端部を蓋部材で挟持して、前記隙間と前記蓋部材とで構成される流路を形成する流路形成工程と、
前記流路にめっき液を導入するめっき液導入工程と、を含むことを特徴とするめっき方法。
【請求項2】
請求項1に記載のめっき方法において、
前記ワーク巻取り工程では、
前記ワークに施される所定量のめっき液量に基づいて、前記隙間を規定し、規定された前記隙間を有するように、前記ワークを前記螺旋状に巻くことを特徴とするめっき方法。

【図1】
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