説明

やすり

【課題】十分な長さの研磨部を持っているにもかかわらず持ち運びがしやすく、平面は勿論のこと、曲線上の刃を研磨することが可能なやすりを提供すること。
【手段】やすり本体1の表面に砥材を付着させて成るやすりにおいて、厚みが徐々に変化していく偏平なやすり1本体の表裏面30,31と、前記表裏面30,31相互を繋ぐ両側面であって前記厚みの変化に伴い徐々に変化していく突状の湾曲面32,33とを有する。前記表裏面30,31の厚みはやすり本体3の先端側に向かって徐々に薄くなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、やすり本体の表面に、微細なダイヤモンド粒子等の砥材を付着させた手持ち式のやすりに関するものである。
【背景技術】
【0002】
やすり本体の表面にダイヤモンド粒子を電着などの手段によって付着させる、手持ち式のやすり(通常ダイヤモンドやすり)が知られている。
【0003】
従来のダイヤモンドやすりには、円形断面や方形断面のものが知られている。やすり本体の表面に研磨剤を付着させた手持ち式のやすりとして、特許文献1にはやすり本体の断面形状が円形、楕円形、ひし形のものが開示されている。特許文献2には、棒状の研磨部を陶磁器とし、その断面形状を楕円形とするもの、特許文献3にはやすり本体に紙やすりを貼着する手持ち式のやすりであって、その断面形状を円形や円弧状のほか、三角形とするものが開示されている。
【0004】
しかしながら、従来の手持ち式のやすりは、その断面形状が円形や方形、あるいは楕円形であるため、その使用範囲が、例えば円形断面のやすりでは貫通孔の内面、方形断面のやすりでは平面というように限定されていた。また、凹弧のような曲面の研磨を行う場合に、研磨面の曲面に一致させて正確に研磨、研磨を行うようなことはできなかった。すなわち、切れ刃の逃げ面が凹状の湾曲面で形成されている鎌やナタなどの刃物の場合には、山仕事の途中などので、湾曲面状を維持する状態に正確に研磨することは出来なかった。
【特許文献1】実開昭52−150888号公報
【特許文献2】実開平52−59058号公報
【特許文献3】実開昭52−126287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明では、十分な長さの研磨部を持っているにもかかわらず持ち運びがしやすく、平面は勿論のこと、曲線状の刃であっても正確に研磨することが可能なやすりを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(請求項1記載の発明)
この発明は、やすり本体の表面に砥材を付着させて成るやすりにおいて、厚みが徐々に変化していく平面状のやすり本体の表裏面と、前記表裏面相互を繋ぐ両側面であって前記厚みの変化に伴い徐々に円弧径が変化していく突状の湾曲面とを有することを特徴とするやすり。
【0007】
この発明のやすりを使用した場合、刃物の平面部分の厚みが徐々に変化していく表裏面を用いることで平面部の研磨することができ、曲線状の刃の部分等は前記表裏面を繋ぐ両側面であって厚みの変化に伴い徐々に変化していく突状の湾曲面を用いることで凹状の湾曲等を研磨することができる。
【0008】
しかもこの発明のやすりでは、表裏面の研磨部と、前記表裏面を繋ぐ両側面部とが、同一周面上に形成されているのでやすりの長さが短く、山仕事のような場合でも持ち歩くことが困難ではない。
【0009】
(請求項2記載の発明)
この発明は、上記請求項1記載の発明に関し、前記表裏面の厚みはやすり本体の基端部から先端側に向かって徐々に薄くなっている。
【0010】
(請求項3記載の発明)
この発明は、上記請求項1又は2記載の発明に関し、やすり本体の表裏面のうち、一方面に粒子の粗い砥材を、他方面に粒子の細かい砥材を、それぞれ付着させ、更に二つの突状の湾曲面うち、一方面に粒子の粗い砥材を、他方面に粒子の細かい砥材を、それぞれ付着させてある。
【0011】
(請求項4記載の発明)
この発明は、上記請求項1乃至3のいずれかに記載の発明に関し、砥材は、ダイヤモンド粒子である。
【0012】
(請求項5記載の発明)
この発明は、上記請求項1乃至4のいずれかに記載の発明に関し、前記表裏面を繋ぐ両側面であって前記厚みの変化に伴い徐々に変化していく突状の湾曲面は、円弧形状である。
【発明の効果】
【0013】
この発明のやすりは、持ち運びがしやすく、平面は勿論のこと、曲線上の刃であっても正確に研磨することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下にこの発明のやすりを実施するための最良の形態としての実施例について詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
図1はこの発明の実施例のやすり1の斜視図、図2は前記やすり1の正面図、図3は前記やすり1の側面図、図4は前記やすり1の先端から見た図、図5は前記鎌9の切り刃93付近の断面図、図6は鎌9の切り刃93の付近の断面図、鎌の切り刃93にやすり本体3の湾曲面が接触した状態を示す断面図。図6は鎌9の凹弧面92にやすり1の湾曲面32が接触した状態を示す正面図を示している。
【0016】
(やすり1の基本的構成について)
この実施例のやすり1は、図1〜図4に示すように、やすり本体3の基端部側に、鍔部20を備えた把手2を固定して成るものであり、前記やすり本体3は基端部から先端部側に向かって厚みが徐々に小さくなる偏平なやすり本体3の表裏面30,31と、前記表裏面30,31相互を繋ぐ両側面であって前記厚みの変化に伴い徐々に円弧径が変化していく突状の湾曲面32,33とを有している。
【0017】
なお、やすり本体3の表裏面30,31及び突状の湾曲面32,33には、砥材としてのダイヤモンド粒子を付着させてあり、超硬チップ等の研磨ができるようにしてある。
【0018】
(やすり1のサイズについて)
このやすり1は、図1〜図3に示すように、把手2と、前記把手2に差し込まれる態様で一体化されているやすり本体3とから構成されている。
【0019】
ここで、把手2は、長さ115mm、幅29mm、厚み24mm、鍔部の外寸法39mm×34mm程度に設定されており、やすり本体3は、長さ150mm、幅23mm、基端部厚み19mm、先端部厚み4mm程度に設定してある。 つまり、このやすり1の全長は265mmと短く、把手2の最大径と無理なく握り易く、山仕事のような場合でも持ち歩くことが困難ではなく、使い勝手が非常に良い。
【0020】
なお、このやすり1のサイズは、上記のものに限定されることなく、適宜設定できる。
【0021】
(やすり本体3の構成とそれに伴う機能について)
このやすり本体3は、図2に示す上面視において、中央部である平面の幅34を一定幅とすると共に、これの両側面に突出する突状の湾曲面の幅35を一定幅とし、図1、図3、図4に示すように、やすり本体3の基端部では大きな円弧径の湾曲面を、先端部では小さな円弧径の湾曲面を、それぞれ形成してある。つまり、このやすり本体1は、図1や図4に示す如き、基端部から先端部に向かって大きな円弧径の湾曲面から小さな円弧径の湾曲面に徐々に変化している。
【0022】
また、このやすり本体3では、表裏面30,31のうち一方に粗いダイヤモンド粒子を、他方に細かいダイヤモンド粒子を、それぞれ付着させてあり、また側面にある湾曲面32,33のうち一方に粗いダイヤモンド粒子を、他方を細かいダイヤモンド粒子に、それぞれ付着させてある。
【0023】
したがって、表裏面30,31の研磨部と、前記表裏面30,31を繋ぐ両側面の湾曲面32,33の研磨部とが、同一周面上に形成されているので、上記した如くやすり1の全長は短いが、表裏面30,31の研磨部及び湾曲面32,33の研磨部の長さは全て、やすり本体3の全長を用いたものとなっている。つまり、このやすり1は、刃物の研磨をするための十分な長さをもっていると言える。
【0024】
なお、このやすり本体2では、図3に示す側面視において、表裏面30,31は同等のテーパー角度で先細にしている。
【0025】
(このやすり1における実際の研磨作業について)
農作業や山仕事を行う場合に使用する鎌は、切れ刃の逃げ面が凹弧面で形成されているのが普通である。この実施例のやすりを使用して、鎌9の刃面を研磨する状況を図5に基づいて説明する。
【0026】
鎌9の断面は、刃板90の片面に刃物材91を鍛造などによって接合し、刃板90の刃付け部分を凹弧面92で形成することによって、鋭利な切り刃93を形成している。
【0027】
鎌9の切り刃93を研磨する場合、図6に示すように、切り刃93に対してやすり本体3の湾曲面32を押し当てるようにして手前から奥側(又はその逆)に移動させる。ここで、前記湾曲面32は凸状の円弧であるから、鎌9の凹弧状に延びる切り刃93を円滑に形成できることになる。
【0028】
なお、やすり本体3をこれの長手方向に位置ズレさせると、凸状の湾曲面の円弧径は変化するから、様々な凹弧径の切り刃に対応できる。
(このやすり1の優れた機能のまとめ)
このやすり1は、以下に示すように優れた機能を有している。
(1)このやすり1の全長は265mmと短く、把手2の最大径と無理なく握り易く、山仕事のような場合でも持ち歩くことが困難ではなく、使い勝手が非常に良い。
(2)表裏面30,31の研磨部と、前記表裏面30,31を繋ぐ両側面の湾曲面32,33の研磨部とが、同一周面上に形成されているので、上記した如くやすり1の全長は短いが、表裏面30,31の研磨部及び湾曲面32,33の研磨部の長さは全て、やすり本体3の全長を用いたものとなっている。つまり、このやすり1は、刃物の研磨をするための十分な長さをもっている。
(3)やすり本体3をこれの長手方向に位置ズレさせると、凸状の湾曲面の円弧径は変化するから、様々な凹弧径状の切り刃に対応できので、もっとも適切な位置で研磨すればよい。
(4)やすり本体3の表裏面のうち、一方面に粒子の粗い砥材を、他方面に粒子の細かい砥材を、それぞれ付着させ、更に二つの突状の湾曲面うち、一方面に粒子の粗い砥材を、他方面に粒子の細かい砥材を、それぞれ付着させてあるから、粒子の粗い砥材を有する面で粗仕上げをした後、粒子の細かい砥材を有する面で本仕上げをすれば、綺麗な仕上げ面が素早くできる。
【0029】
(その他の構成について)
上記実施例1のやすり1に変えて、図7に示すように、やすり本体3を中程等から平面視で幅を徐々に狭めていく構成を採ることができる。
【0030】
上記実施例1のやすり1では、砥材をダイヤモンド粒子としてあるが、超硬チップ等の硬質のものであればその他の材質を使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の実施例のやすりの斜視図。
【図2】前記やすりの平面図。
【図3】前記やすりの側面図。
【図4】前記やすりの先端から見た図。
【図5】鎌の切り刃付近の断面図。
【図6】鎌の切り刃にやすり本体の湾曲面が接触した状態を示す断面図。
【図7】その他の実施例のやすりの斜視図。
【符号の説明】
【0032】
1 やすり
2 把手
20 鍔部
3 やすり本体
30 表面
31 裏面
32 湾曲面
33 湾曲面
34 幅
35 幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
やすり本体の表面に砥材を付着させて成るやすりにおいて、厚みが徐々に変化していく平面状のやすり本体の表裏面と、前記表裏面相互を繋ぐ両側面であって前記厚みの変化に伴い徐々に円弧径が変化していく突状の湾曲面とを有することを特徴とするやすり。
【請求項2】
前記表裏面の厚みはやすり本体の基端部から先端側に向かって徐々に薄くなっていることを特徴とする請求項1記載のやすり。
【請求項3】
やすり本体の表裏面のうち、一方面に粒子の粗い砥材を、他方面に粒子の細かい砥材を、それぞれ付着させ、更に二つの突状の湾曲面うち、一方面に粒子の粗い砥材を、他方面に粒子の細かい砥材を、それぞれ付着させてあることを特徴とする請求項1又は2記載のやすり。
【請求項4】
砥材は、ダイヤモンド粒子であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のやすり。
【請求項5】
前記表裏面を繋ぐ両側面であって前記厚みの変化に伴い徐々に変化していく突状の湾曲面は、円弧形状であることを特徴とする請求項1乃至4記載のやすり。





















【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−262269(P2009−262269A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114238(P2008−114238)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(592232971)有限会社高芝ギムネ製作所 (4)
【Fターム(参考)】