ろう付方法及びその方法による接合部材
【課題】セラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅を、エロージョンを抑制しつつ簡易にろう付するろう付方法及びそのろう付方法を用いる接合部材を提供する。
【解決手段】セラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅から成る複数の部材のそれぞれの表面に、めっき処理にて第1の金属の第1のめっき層7を形成し、前記第1のめっき層7の上に、めっき処理にて第2の金属の第2のめっき層8をそれぞれ形成し、前記第1のめっき層7及び前記第2のめっき層8が形成された前記複数の部材をそれぞれ密着させて熱処理して接合することを特徴とするろう付方法が提供される。
【解決手段】セラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅から成る複数の部材のそれぞれの表面に、めっき処理にて第1の金属の第1のめっき層7を形成し、前記第1のめっき層7の上に、めっき処理にて第2の金属の第2のめっき層8をそれぞれ形成し、前記第1のめっき層7及び前記第2のめっき層8が形成された前記複数の部材をそれぞれ密着させて熱処理して接合することを特徴とするろう付方法が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属の接合に関し、特に、アルミナ分散強化銅等をろう付によって接合する方法、及びこの接合方法によって接合した接合部材に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の貫通孔を有する磁性のあるケイ素鋼板(第2構成要素)を、前記貫通孔を貫通する複数の貫通バー(第1構成要素)を介して複数積層し、両端にストッパとしてエンドリング(第3構成要素)を配設して、前記エンドリングと前記貫通バーとをろう付接合(以下、本明細書においては、単にろう付と記す。)して形成する部材(例えば、ロータ等。)がある。例えば、図7に示すような部材である。図7は、複数積層したケイ素鋼板を、貫通バーを介して複数積層し、両端にエンドリングを配設して接合した部材の一例を示す図である。
【0003】
図7に示したような部材を形成する場合、使用目的によって材質は適宜選択されるが、一般的な加工においては、加工の容易性及びコストの観点からエンドリング203及び貫通バー202は、鋳型を用いて一体的に形成されるアルミニウム鋳造品である場合が多い。ところが、かかる部材200が、例えば2万〜3万rpmといった高速回転環境下で使用される場合、アルミニウム鋳造品は強度の問題で変形してしまう場合がある。従って、この部材がかかる高速回転環境下で使用される場合には、エンドリング203及び貫通バー202の材質としてアルミニウム以外の高強度な材質が求められる。また更に、この部材200には、電気抵抗が低いことが求められる場合もある。
【0004】
上述したような高速回転で使用され、かつ低電気抵抗が求められる場合、エンドリング203及び貫通バー202の材質としては、無酸素銅、及びアルミナ分散強化銅(Oxide_Dispersion_Strengthened_Copper_Alloy。以下、ODSと記す場合がある。)に代表されるセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅(以下、本明細書においては、セラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた強化銅を、分散強化銅と記す場合がある。)が考えられる。ところが、いずれの材質を用いる場合であっても、例えばエンドリング203をこれらの材質を用いて鋳造で形成することは難しい。そこで、これらの材質を用いて形成する場合、積層したケイ素鋼板の両端に、これらの材質からなる薄板で形成したエンドリング203を、ろう材を介して複数枚積層し、前記複数のエンドリング203相互間及び前記複数のエンドリング203と前記貫通バー202とをろう付接合することが必要になる。
【0005】
しかし、エンドリング203の材質として無酸素銅を用いた場合、無酸素銅は炉中ろう付によって鈍ってしまい、所望の強度を確保することができない。一方、エンドリング203の材質としてアルミナ分散強化銅を用いる場合には、炉中ろう付で鈍ることがない。ここで、アルミナ分散強化銅からなる薄板をろう付する場合、積層したケイ素鋼板201の磁性を保つために、ろう付温度が830℃以下に限定される場合がある。このような条件を満たすろう材としては、銀ろう材(銀、銅、亜鉛を主成分とする硬ろうで、いわゆる活性銀ろう材も含む。以下、Agろう材と記す。)が有る。ところが、Agろう材を用いてアルミナ分散強化銅をろう付する場合、ろう材中の銀がエロージョン(母材金属の溶融ろうへの溶解及びろう成分の母材への拡散。)を起こして接合部分が変形し、接合部の密着不良が発生するという問題がある。図8に、図7に示した部材の接合部分の変形例を示す図である。図8(A)が、接合部分がエロージョンに起因して変形した例であり、図8(B)が、正常な接合部分である。このような接合不良箇所は、破損の原因ともなる。
【0006】
そこで、アルミナ分散強化銅を、Agろう材を用いてろう付する場合に、銀がアルミナ分散強化銅にしみ込みエロージョンを起こすことを防止するため、特許文献1に開示されたように、接合面にニッケルめっき層を形成し、ニッケルめっき層をバリア層として、銀のアルミナ分散強化銅内部へのしみ込みを防止することが提案されている。
【0007】
図を基により詳細に説明する。図9は、図7に示した部材のエンドリングの材質としてアルミナ分散強化銅を用いた場合の、従来のろう付方法によりAgろう材でろう付する例を示す図であり、図9(A)はろう付方法の概略図、図9(B)は図7に示した部材のろう付前の状態を示す概略断面図、図9(C)はろう付においてエロージョンが発生した例を示す模式断面図である。更に図10は、特許文献1に示されたろう付方法により、Agろう材でろう付する例を示す図であり、図10(A)はろう付方法の概略図、図10(B)は図7に示した部材のろう付前の状態を示す概略断面図、図10(C)は正常にろう付された状態を示す概略断面図である。図9及び図10においては、ろう付による接合状況を判りやすくするために、図7に破線で示した部分αに相当する箇所を拡大して示している。また、ろう付方法の概略図においては、判りやすくするために、接合面以外の面のめっき層を省略して図示している。なお、エンドリングの材質がアルミナ分散強化銅になるためエンドリングが複数から構成されているが、これは後述する理由により、機能としては同様である。
【0008】
図7に示した部材200のエンドリング203の材質としてアルミナ分散強化銅を、貫通バー202の材質として無酸素銅を用い、Agろう材を用いてろう付する場合、接合面の状態は、図9(A)に示すようになる。そして、図9(B)に示すように、実際の部材においては、アルミナ分散強化銅から成るエンドリング303相互間及びエンドリング303と無酸素銅からなる貫通バー302との間に、Agろう材305を配設して、830℃以下の温度で炉中ろう付される。ろう付が完璧に行われた場合、エンドリング303相互間及びエンドリング303と貫通バー302との間に、Agろう材305が完全に充填され、冷却されることでAgろう接部305aが形成される。ところが、上述したように、Agろう材305中の銀がエロージョンを起こして、アルミナ分散強化銅から成るエンドリング303内に拡散してしまい、図9(C)に示すように、エンドリング303の変形及びエンドリング303相互間及びエンドリング303と貫通バー302との間に隙間が生じ、Agろう接部305aの密着不良が発生するのである。
【0009】
そこで、特許文献1の方法によれば、図10(A)に示したように、アルミナ分散強化銅303の表面にニッケルめっきを施してニッケルめっき層306を形成し、Agろう材を用いてろう付する。実際の部品においては、図10(B)に示すようろう付前の状態となる。そして図10(C)に示すように、Agろう接部305aを形成して接合する。ニッケルめっき層306が、銀のアルミナ分散強化銅への拡散を防止するエロージョン防止層としての役割を果し、接合不良の発生を抑制できるのである。なお、Agろう材は接合面に直接塗布するのではなく、Agろう材からなるシートを形成し、ニッケルめっきを施したアルミナ分散強化銅303上にAgろう材シートを配設してろう付される。
【0010】
ところが、特許文献1の方法では、ニッケルめっきの膜厚の制御が難しい。例えば、エンドリング303表面にニッケルめっきする場合、ニッケルめっき膜306の膜厚は、形成された部材の高さに直接的に影響する。従って、ニッケルめっき層306の膜厚は、エロージョン防止効果を発揮できる膜厚であれば、薄い程よい。ところが、ニッケルめっき層306の膜厚は薄くすることが難しく、例えば、膜厚10μm以下とした場合、ニッケルめっき層306が破れてしまうケースが発生する。また、特許文献1の方法においては、Agろう材のシートを使用するが、例えば貫通孔304や凹部を有する場合、貫通孔側壁部304aや凹部内にAgろう材シート305を配設することが困難な場合がある。エンドリング303相互間にAgろう材シート305を配設するのは容易であるが、貫通孔304の径が小さい場合には、貫通孔側壁部304aにAgろう材シート305を配設すること容易ではなく、作業に長時間を要する場合が生じる。以上のような理由から、無酸素銅、あるいはアルミナ分散強化銅に代表されるセラミックス粒子あるいは第2元素を分散した分散強化銅から成る部材を、エロージョンを抑制しつつ簡易にろう付可能なろう付方法が求められる。
【特許文献1】特開2003−45264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、アルミナ分散強化銅に代表されるセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅を、エロージョンを抑制しつつ簡易にろう付するろう付方法及びそのろう付方法を用いる接合部材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態によれば、セラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅から成る複数の部材のそれぞれの表面に、めっき処理にて第1の金属の第1のめっき層を形成し、前記第1のめっき層の上に、めっき処理にて第2の金属の第2のめっき層をそれぞれ形成し、前記第1のめっき層及び前記第2のめっき層が形成された前記複数の部材をそれぞれ密着させて熱処理して接合することを特徴とするろう付方法が提供される。
【0013】
本発明の別の実施形態によれば、セラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅から成る複数の部材のそれぞれの表面に、めっき処理にて第1の金属の第1のめっき層を形成し、前記第1のめっき層の上に、めっき処理にて第2の金属の第2のめっき層をそれぞれ形成し、前記第1のめっき層及び前記第2のめっき層が形成された前記複数の部材を、それぞれの間に銀ろう材を配置してそれぞれ密着させて熱処理して接合することを特徴とするろう付方法が提供される。
【0014】
本発明のさらに別の実施形態によれば、無酸素銅から形成された複数の円柱状の第1の構成要素と、前記第1の構成要素に対応する複数の第1貫通孔を有する複数のドーナツ状の第2の構成要素と、セラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅から形成され、前記第1の構成要素に対応する複数の第2貫通孔を有する複数のドーナツ状の第3の構成要素と、を備え、前記複数の第1の構成要素及び前記複数の第3の構成要素のそれぞれは、表面に銅めっき層が形成され、更に、前記銅めっき層の表面に第2の金属からなる第2のめっき層が形成され、前記複数の第2の構成要素は、それぞれの前記第1貫通孔に前記銅めっき層及び第2のめっき層が形成された前記複数の第1の構成要素がそれぞれ貫通されて積層され、前記積層された複数の第2の構成要素の両端に、それぞれの前記第2貫通孔に前記複数の第1の構成要素が貫通された前記銅めっき層及び第2めっき層が形成された前記複数の第3の構成要素が、少なくとも1つ以上それぞれ配設され、熱処理されて、前記複数の第3の構成要素のそれぞれの第2貫通孔の側壁部と前記複数の第1の構成要素のそれぞれとが接合されることを特徴とする部材が提供される。
【0015】
前記セラミックス粒子あるいは第2元素は、Al2O3、SiC、AlN、Si3N4、C、TiO2、W又はMoのいずれか一つであってもよい。
【0016】
前記第1の金属は、銅であってもよい。
【0017】
前記第2の金属は、銀であってもよい。
【0018】
前記第2の金属は、ニッケル又は金であってもよい。
【0019】
前記第1のめっき層の膜厚は、5μm以上であってもよい。
【0020】
前記第2のめっき層の膜厚は、5μm以上であってもよい。
【0021】
前記第2のめっき層の膜厚は、1μm以上であってもよい。
【0022】
前記めっき処理は、電気めっき処理であってもよい。
【0023】
前記熱処理の温度は、830℃以下であってもよい。
【0024】
前記銀ろう材は、BAg−8銀ろう材であってもよい。
【0025】
前記銀ろう材は、シート状に形成された箔であってもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、に代表されるセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅を、エロージョンを抑制しつつ簡易にろう付するろう付方法及びそのろう付方法を用いる接合部材が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法及びそのろう付方法を用いた接合部品の製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるわけではない。また、各実施形態において、同様の構成については同じ符号を付し、改めて説明しない場合がある。更に、ろう付方法を説明する概略図においては、判りやすくするために、接合面側のめっき層のみを表示し、他の面のめっき層を省略して図示している。
【0028】
(本発明に至る経緯)
上述したように、ODSを、Agろう材を用いてろう付する場合、エロージョンが発生する場合がある。このエロージョンが発生すると、密着不良が発生するだけでなく、接合部分の強度が低下し破損の原因ともなる。そこで、特許文献1に示されたような、ニッケルめっき層からなるエロージョン防止層を設けるODSのろう付方法が提案されている。しかし、上述したように、この方法はニッケルめっき層の膜厚の管理が難しい。図11、図12に基づいて説明する。図11は、ニッケルめっき層からなるエロージョン防止層を設けた場合の効果を示す接合面の電子顕微鏡像であり、図11(A)は、それぞれ10μm及び30μmの膜厚でニッケルめっき層を形成したODSを、Agろう材を用いてろう付した場合の接合面の電子顕微鏡像であり、図11(B)は、同様に20μm及び30μmの膜厚でニッケルめっき層を形成したODSを、ろう付した場合の接合面の電子顕微鏡像である。また、図12は、図11(A)及び(B)に示したそれぞれの断面における銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)の分布状況を示す図である。
【0029】
図11(A)及び(B)から把握されるように、ニッケルめっき層の膜厚が10μmの場合、粒界に銀が拡散しているが、めっき層の膜厚が20μm及び30μmの場合には、銀の拡散が見られない。図12(A)からも、めっき層の膜厚が10μmの場合に銀がODS内部に拡散していることが把握される。一方、図12(B)において、ニッケルめっき層の膜厚が20μmと30μmのものを接合した場合には、ODS内部への銀の拡散が見られない。図12(A)及び(B)に示すように、銅及びニッケルの分布については、いずれのめっき膜厚であっても相違が見られない。以上から、ODSを、ニッケルめっき層を設けて銀ろう材を用いてろう付する場合、少なくともニッケルめっき層の膜厚を10μm超、より好適には20μm以上に管理することが必要になり、めっき層の膜厚管理が容易でないことが把握される。
【0030】
そこで、本発明者は、ニッケルめっき層に変えて、銅めっき層を設けることでエロージョンを防止することを思考し、かかる方法についてテスト実施した。このテスト実施例について、以下に説明する。なお、以下のテスト実施においては、分散強化銅として、アルミナ分散強化銅を用いた。
【0031】
図を基に説明する。図13は、アルミナ分散強化銅に銅めっき層307を設けて、エロージョンを抑制しつつODSをAgろう材でろう付したテスト実施例を示す図である。図13(A)は、ろう付方法を示す概略断面図であり、図13(B)は、ろう付後の接合断面の電子顕微鏡像である。また、図14は、テスト実施例及び従来のろう付方法によるろう付の場合の銀及び銅の分布を示す図であり、図14(A)は、図13に示した接合断面の更に拡大した電子顕微鏡像、図14(B)は、めっき層を設けないでアルミナ分散強化銅をAgろう材でろう付した場合の接合断面の電子顕微鏡像を比較例として示している。
【0032】
上述したように、エロージョン防止層としてニッケルめっき層を設ける場合、めっき膜の膜厚の管理が難しく、特に膜厚を薄く形成することが難しい。そこで、図13(A)に示すように、本テスト実施例においては、ニッケルめっき層に変えて、アルミナ分散強化銅から成る部材303の表面にめっき処理にて銅めっき層307を形成し、Agろう材305を用いてろう付した。本テスト実施例においては、銅めっき層307の膜厚の効果を検証するために、10μmの膜厚の銅めっき層307を形成したアルミナ分散強化銅部材303と、膜厚5μmの銅めっき層307を形成したアルミナ分散強化銅部材303とをろう付した。Agろう材305は、BAg−8の銀ろう材を厚さ100μmのシート状(箔)に形成したものを用いた。ろう付温度は830℃以下に制御し、炉中ろう付を行った。なお、ろう付温度については、本ろう付方法を適用して製造される部材の、他の構成要素の磁性を確保するために必要な温度に制御したものである。また、Agろう材の規格も同様の理由によって選択されたものである。
【0033】
その結果を、図13(B)に示す接合断面電子顕微鏡像によって分析したところ、膜厚5μmの銅めっき層側では、銅めっき層を超えてアルミナ分散強化銅部材内部まで、Agろう材がしみ込んでいる部分が一部に見受けられる。一方、膜厚10μmの銅めっき層側においては、Agろう材がしみ込んでいるものの、しみ込みはほとんど銅めっき層の部分までであり、アルミナ分散強化銅部材内部まではしみ込んでいない。
以上から、銅めっき層の膜厚を適切に管理すれば、銅めっき層がエロージョン防止層として有効に機能することが把握される。銅めっき層の効果については、図14に示した、銀、銅それぞれの分布状況からも理解できる。めっき層を設けないでAgろう材でろう付した場合、図14(B)に示すように、画像中に赤色で表示される銀は、画像中に黒色で表示されるアルミナ分散強化銅部材内部までほぼ同じ様に拡散している。一方、図14(A)に示す本テスト実施例においては、銀は、Agろう材を配設した箇所にほぼ集中して分布しており、銀の拡散が少ない。一方銅については、図14(A)及び(B)のいずれにおいても、ほとんど変わらない。以上説明したように、アルミナ分散強化銅表面に銅めっき層を設けてAgろう材でろう付することで、Agろう材中の銀のエロージョンを防止できるとの感触を得た。
【0034】
ところが、実験を重ねるなかで、銅めっき層を設けた場合、ニッケルめっき層に比してAgろう材の濡れ性が低下し、ろう材の濡れ性が悪いためにAgろう材が充填されない箇所が発生した。即ち密着不良が発生したのである。
【0035】
そこで、銅めっき層とニッケルめっき層における銀ろう材の濡れ性を検証する比較テストを行った。図15は、銅めっき層及びニッケルめっき層におけるAgろう材の濡れ性テスト方法及びテスト結果を示す図であり、図15(A)はテスト方法の概略を示す模式図、図15(B)及び(C)は、それぞれ銅めっき層及びニッケルめっき層におけるAgろう材の濡れ広がり状況を示す写真像である。テストは、図15(A)に示すように、シート状に形成したAgろう材を使用し、該Aろう材シートをめっき層の同一の位置に配設してろう付温度に加熱し、ろう材の濡れ広がり状況を確認することによって行った。図15(B)に示すように、銅めっき層上においては、ろう材をセットした範囲からろう材が濡れ広がっていないのが把握される。一方、ニッケルめっき層上においては、図15(C)に示すように、ろう材が濡れ広がっているのが把握される。以上のテストの結果、アルミナ分散強化銅表面に銅めっき層を設けてAgろう材でろう付する方法では、Agろう材の銀のエロージョンを防止できるが、一方で、Agろう材の濡れ性が悪くなることが確認された。
【0036】
そこで、本発明者は更に研究を重ね、本発明を創作するに至った。以下、本発明に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法及びその方法を用いた接合部材について説明する。
【0037】
(第1の実施形態)
[ろう付方法]
本発明の第1の実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法について、図を基に説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法を示す概略断面図である。図1(A)はろう付前の状態を示し、図1(B)はろう付後の状態を示す。
【0038】
図1(A)に示すように、本実施形態に係るろう付方法においては、ろう付する前に、アルミナ分散強化銅3の表面に銅めっき層(第1の金属の第1のめっき層)7を形成し、更にその銅めっき層7の上にニッケルめっき層(第2の金属の第2のめっき層)6を形成する。即ち、アルミナ分散強化銅3を、アルミナ分散強化銅3の上に銅めっき層7が配設され更に銅めっき層7の上にニッケルめっき層6が配設される2層めっき構造とする。本実施形態においては、銅めっき層7の膜厚は5μm以上に形成し、ニッケルめっき層6の膜厚は1μm以上に形成した。第1のめっき層はろう材中の銀のエロージョン防止層であり、第2のめっき層はろう材の濡れ性改善層である。
【0039】
ここで、銅めっき層7の膜厚は、図13及び図14に示したテスト実施結果から、Agろう材中の銀のエロージョンを防止できる膜厚として5μmとしたものである。従って、この膜厚以上であれば、Agろう材中の銀のエロージョンを防止する効果が発揮できる。また、ニッケルめっき層6の膜厚は、該ニッケルめっき層6がAgろう材5の濡れ性を改善するための層で膜厚を厚くする必要がないため、最小限の膜厚として1μmとしたものである。従って、これ以上の膜厚であれば、Agろう材5の濡れ性を改善する効果が確保できる。なお、銅めっき層7及びニッケルめっき層6は、膜厚の管理を考慮してそれぞれ電気めっき法によって形成したが、両めっき層の形成方法は、これに限定される訳ではない。
【0040】
次に、2層めっき構造としたアルミナ分散強化銅3の上にシート(箔)状に形成したAgろう材5を配設する。本実施形態においては、シート(箔)状に形成したAgろう材5の厚さは、100μmとした。なお、Agろう材として、BAg−8の規格のAgろう材を用いた。
【0041】
更にAgろう材5の上に2層めっき構造としたアルミナ分散強化銅3を積層する。その後、炉中にて所定のろう付温度にて熱処理を行う。本実施形態においては、ろう付温度を830℃以下に制御してろう付を行った。なお、これは一例であり、本実施形態に係るアルミナ分散強化銅のろう付方法は、上記のろう付温度及びAgろう材の規格に限定されるものではない。ろう付温度及びAgろう材5の規格については、ろう付対象部材及び当該部材と共に炉中にて熱処理される他の部材を考慮して、適宜選択される。
【0042】
熱処理後、図1(B)に示すように、Agろう材5は硬化してろう接部5aとなり、アルミナ分散強化銅3同士が接合される。
【0043】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法によって、アルミナ分散強化銅3同士を確実に接合することができる。なお、上述した説明においては、アルミナ分散強化銅3のろう付について説明したが、本発明の第1の実施形態に係るろう付方法によれば、無酸素銅からなる部材同士又はそれぞれ無酸素銅とアルミナ分散強化銅からなる部材同士を確実に接合することができる。材質が無酸素銅の場合であっても、銅めっき膜7及びニッケルめっき膜6を形成する点は同じである。
【0044】
また、本発明の第1の実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法においては、ろう材の濡れ性改善層として設ける第2のめっき層を、ニッケルめっき層6に変えて金めっき層とすることも可能である。金めっき層とした場合のめっき膜厚は、ニッケルめっき層6の場合と同様に1μmであり、又、熱処理温度も同様である。金めっき層によっても、Agろう材の濡れ性改善を図ることができる。
【0045】
なお、上述した分散強化銅として、銅にアルミナ(Al2O3)を分散させたアルミナ分散強化銅の変わりに、銅に、SiC(炭化シリコン)、AlN(窒化アルミニウム)、Si3N4(窒化ケイ素)、C(カーボン)、TiO2(酸化チタニウム)のセラミックス粒子、又はW(タングステン)、Mo(モリブデン)の第2元素のいずれか一つを分散させた分散強化銅を用いた場合であっても、本発明の第1の実施形態に係るろう付方法を用いることができる。
【0046】
[効果]
上述したように、本発明の第1の実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法においては、Agろう材5中の銀の分散強化銅3への拡散(エロージョン)を防止するために、エロージョン防止層として分散強化銅3の表面に銅めっき層7を設け、更にこの銅めっき層7の全面に、Agろう材5の濡れ性改善層としてニッケルめっき層6又は金めっき層を設ける。このように分散強化銅3の表面に二重のめっき層を設けることによって、Agろう材5の分散強化銅3内へのエロージョンを防止するとともに、Agろう材5の濡れ性を改善し、Agろう材5が充填されないことに起因して発生する密着不良を防止することができる。
【0047】
図4は、本発明の第1の実施形態に係るろう付方法の効果を示す図であり、図4(A)は、本ろう付によって接合した接合断面の電気顕微鏡像、図4(B)及び図4(C)は、それぞれの断面における銀(Ag)、ニッケル(Ni)の分布状況を示す図である。図4(A)に示すように、本ろう付方法によれば、中央部の色の薄い部分である接合面と色の濃い部分であるODSの境界が明確であり、図13(B)に示したような銀(Ag)のODS内へのエロージョンがほとんど見られない。また、図4(B)の画像上において赤色で示されている銀(Ag)が、中央部の接合部分に集中し、ODS内部にあまり拡散していないことが把握される。また、図4(C)に示すニッケル(Ni)の分布についても、接合面部分に集中していることが把握される。以上説明したように、本発明の第1の実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法によれば、銅めっき層及び銀めっき層の二つのめっき層が銀ろう材の代替の役割を果し、銀の分散強化銅等の内部へのエロージョンを防止しつつ、分散強化銅等を確実にろう付することができる。
【0048】
また、本発明の第1の実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法は、上述したように、エロージョン防止層が、膜厚の管理が容易な銅めっき層7によって形成されているため製造が容易であり、ニッケルめっき層を設ける方法に比してコスト削減を図ることができる。また、密着不良を防止できるため歩留まりが向上し、この点でもコスト削減効果がある。
【0049】
[実施例1]
次に、本発明の第1の実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法を用いた実施例について説明する。以下の実施例においては、材質としてアルミナ分散強化銅を用いた部材の実施例について示すが、本実施例1はこれに限定されるものではない。実施例1は、本ろう付方法によって図7に示した部材を形成した例である。図2は、本ろう付方法によって形成した部材100の断面図である。また、図3は、図2に示した部材100の部分αの拡大模式図である。図3(A)は、ろう付前の状態、図3(B)はろう付後の状態を示す。
【0050】
図2に示すように、本部材100は、ドーナツ状の第2構成要素(ケイ素鋼板)1を、無酸素銅からなる第1構成要素(貫通バー)2を貫通させて複数積層し、その両端部に、アルミナ分散強化銅からなるドーナツ状の第3構成要素(エンドリング)3を、それぞれ前記第1構成要素2に貫通させてそれぞれ複数積層した構造である。積層した複数の第3構成要素3の相互間及び第3構成要素3と第1構成要素2との間は、それぞれろう付されている。図2においては、第3構成要素3は、第1構成要素2の両端部にそれぞれ4枚ずつ積層されているが、これに限定されるものではなく、部材に求められる強度等に応じて、その数は適宜変更され得る。
【0051】
上述した部材のろう付箇所は、上述した本発明の第1の実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法によってろう付される。即ち、まず、第1構成要素2及び第3構成要素3の表面に、めっき処理によって銅めっき層7を、5μmの膜厚で形成する。次に、銅めっき層7を形成した第1構成要素2及び第3構成要素3の銅めっき層7の全面に、めっき処理によってニッケルめっき層6を形成する。本実施例1においては、ニッケルめっき層6の膜厚は1μmで形成した。これによって、第1構成要素2及び第3構成要素3は、2層のめっき層(6、7)を有する構造となる。
【0052】
以上のような処理を行った後、第3項構成要素3については、該第3構成要素3の複数の第2貫通孔側壁部4aのそれぞれに、シート状(箔)に形成したAgろう材5を密着させて配設する。
【0053】
以上の処理を行った後、複数の第2構成要素1を、該第2構成要素1の複数の第1貫通孔10に複数の第1構成要素2をそれぞれ貫通させて積層する。次に、Agろう材5を配設した前記第3構成要素3を、該第3構成要素3の複数の第2貫通孔4のそれぞれに前記複数の第1構成要素2を貫通させて、前記複数の第1構成要素2の両端部にそれぞれ一つずつ配設する。そして、前記第3構成要素3と同様のドーナツ状に形成し所定の位置に貫通孔を設けたシート状のAgろう材5を、前記第3構成要素3の上に配設し、さらにその上に、Agろう材5を配設した前記第3構成要素3を第1構成要素2の両端部にそれぞれ一つずつ配設する。シート状のAgろう材5と第3構成要素3とを同様に繰り返して配設し、第1構成要素2の両端部に、それぞれの間にAgろう材5を挟んで第3構成要素3を所望の枚数配設する。これを炉中にて所定の温度にて熱処理してろう付する。Agろう材5のシートの厚さ及び規格並びにろう付の熱処理温度は、それぞれの構成要素(1〜3)の材質及び磁性等の性質に応じて適宜選択される。本実施例1においては、Agろう材シート(箔)5は、規格BAg−8のろう材を用い100μmの厚さに形成したものを使用し、熱処理温度は、830℃以下に制御して処理を行った。
【0054】
これによって、第3構成要素3の第2貫通孔側壁部4aと第1構成要素2とが接合され、また、第3構成要素3同士が接合され、所望の強度を有する部材100を、アルミナ分散強化銅によって形成することができる。
【0055】
また、図3に示すように、製造された部材100は、Agろう材5の濡れ性が改善される本発明の第1の実施形態に係るろう付方法によってろう付されているため、第3構成要素3の第2貫通孔側壁部4aと第1構成要素2との間及び第3構成要素3同士の間に、Agろう材5が充分に充填され、隙間なく接合される。従って、密着不良に起因する破損等が少ない部材100を得ることができる。このような部材は、例えばロータとして用いることができる。
【0056】
なお、本実施例1においては、第3構成要素(エンドリング)3は、アルミナ分散強化銅からなる薄板を所望の開口を有するドーナツ状に形成し、且つ複数の第2貫通孔4を貫通させて形成した。そして、この薄板の第3構成要素3に上述した2層のめっき層(6、7)を形成し、所望の枚数の第3構成要素3をAgろう材シート(箔)5を介して積層してろう付して接合することで、所望の強度を有する一体の第3構成要素3を形成した。このように薄板の第3構成要素3を積層するのは、該第3構成要素3と第1構成要素2との接合面である第3構成要素3の第2貫通孔側壁部4aに、ろう材を充分に充填するためである。即ち、第2貫通孔側壁部4aの深さが深いほど、第2貫通孔側壁部4a中央部分にシート状のAgろう材5を配設することが難しくなる。また、熱処理の際に、Agろう材5は垂直方向に垂れてくるため、垂直方向上部側にAgろう材5が充分充填されない箇所(即ち、接合不良部分。)が形成され易くなる。第3構成要素3を薄板に形成して、第2貫通孔側壁部4a及びそれぞれの第3構成要素3の間にろう材5を配設することで、ろう材5が垂直方向に垂れてもそれぞれの第3構成要素3間に配設したろう材5が充填され、上述した接合不良部分の形成を抑制することができる。
【0057】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法について説明する。なお、以下の説明において、上述した第1の実施形態に係るろう付方法と共通する部分については、説明を省略する場合がある。
【0058】
上述した本発明の第1の実施形態に係るろう付方法は、被接合部材であるアルミナ分散強化銅又は無酸素銅からなる構成要素を、シート状(箔)に形成したAgろう材を用いてろう付する。本第2の実施形態に係るろう付方法は、Agろう材用いずにろう付することを特徴とする。
【0059】
第1の実施形態に係るろう付方法において部材を製造する場合、例えば、図2等に示した第3構成要素3の第2貫通孔側壁部4aに、シート状のAgろう材を配設する必要がある。しかし、このような微細な凹所に、適切にシート状のろう材を配設することは容易ではない。また、接合箇所の面積が微細な場合には、より困難性が増す。そこで、本第2の実施形態に係るろう付方法においては、ろう材の替わりに、所望の金属からなる第2のめっき層を形成する。なお、本明細書においては、「ろう材を用いず」とは、前処理を施した被接合部材以外に、別途ろう材を配設しないことを意味する。
【0060】
より詳細に、図を用いて説明するが、以下の実施形態においては、被接合部材としてアルミナ分散強化銅から成る部材を用いた例を示す。図5は、本発明の第2の実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法を示す概略断面図である。図5(A)はろう付前の状態を示し、図5(B)はろう付後の状態を示す。また、図6は、本発明の第2の実施形態に係るろう付方法の効果を示す図である。図6(A1)及び(B1)に、本ろう付によって接合した接合断面の電気顕微鏡像及び銀の分布状況を示し、図6(B1)及び(B2)に、比較例として従来のろう付方法によって接合した接合断面の電気顕微鏡像及び銀の分布状況を示している。
【0061】
図5(A)に示すように、本第2の実施形態に係るろう付方法においては、ろう付する前に、アルミナ分散強化銅3の表面に銅めっき層7を形成する。これは、上述した第1の実施形態に係るろう付方法と同一である。
【0062】
本第2の実施形態においては、更にその銅めっき層7の上に銀めっき層8を形成する。即ち、アルミナ分散強化銅3を、アルミナ分散強化銅3の上に銅めっき層7が配設され、更に銅めっき層7の上に銀めっき層8が配設される2層めっき構造とする。言い換えれば、本発明の第1の実施形態のニッケルめっき層6に変えて銀めっき層8を形成する。
【0063】
次に、2層めっき構造としたアルミナ分散強化銅3を密着させ、その後、炉中にて所定のろう付温度にて熱処理を行う。ろう付温度は、ろう付対象部材及び当該部材と共に炉中にて熱処理される他の部材を考慮して、適宜選択される。
【0064】
熱処理後、図5(B)に示すように、銅めっき層7の膜厚は減少し、銀めっき層8が硬化してろう接部5aを形成される。即ち、銅めっき層7の銅の一部及び銀めっき層8が溶融され、溶融されたそれぞれの金属が接合面に拡散することによって、Agろう材が溶融された状態と同一となり、それが硬化することで、ろう接部5aが形成されるのである。即ち、本第2の実施形態に係るろう付方法においては、2層のめっき層(7、8)が、熱処理によって溶融して、めっき層(7、8)自身がろう材の役割を果す。
【0065】
なお、膜厚が薄くなった銅めっき層7は、第1の実施形態の銅めっき層7と同様に、銀メッキ層8から溶け出した銀のアルミナ分散強化銅3内部への拡散を防止するエロージョン層として機能する。従って、本実施形態においては、銅めっき層7は、エロージョン防止層としての機能とAgろう材成分としての機能を兼ねるものである。なお、図5(B)において、ろう接部5aの垂直方向中央に、破線で接合面を示しているが、実際には、このような接合面が形成されるわけではなく、ろう接部5aが一体的に形成される。
【0066】
本実施形態においては、銅めっき層7の膜厚は5μm以上に形成し、銀めっき層8の膜厚も5μm以上に形成した。銅めっき層7の膜厚は、エロージョンを防止でき、かつAgろう材の成分となるのに充分な膜厚とされる。この膜厚以上であれば、エロージョンを防止する効果が発揮でき、また溶融した銀メッキ層8の銀とともに実質的にAgろう材として機能する。また、銀めっき層8は、溶融した銅めっき層7の銅とともに実質的にAgろう材として機能する層であり、これ以上の膜厚であれば、実質的にAgろう材としての効果が確保できる。そして、銅めっき層7及び銀めっき層8は、膜厚の管理を考慮してそれぞれ電気めっき法によって形成したが、これに限定される訳ではない。なお、上述した第1の実施形態においては、銅めっき層7上におけるAgろう材の濡れ性を改善するために、ニッケルめっき層6を設けたが、本実施形態においては、銅めっき層7及び銀めっき層8が、熱処理によってともに溶融し、溶融した銅中に、銀がほぼ均一に拡散する。従って、濡れ性の改善を図る必要がないため、ニッケルめっき層6又は金めっき層を設ける必要がない。
【0067】
本実施形態においては、ろう付温度を830℃以下に制御してろう付を行った。但し、これは、ろう付対象部材と共に炉中にて熱処理される他の部材の特性等を考慮して選択された一例であり、本実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法は、上記のろう付温度に限定されるものではない。
【0068】
本発明の第2の実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法は、上述した実施例1に示した部材等の製造に応用することができる。即ち、実施例1で説明した第1構成要素2及び第3構成要素3のろう付に応用することができる。詳細な説明は省略するが、第1構成要素2及び第3構成要素3の表面に、5μm以上の膜厚の銅めっき層7を形成した後、更に銅めっき層7の全面に、5μm以上の膜厚で銀めっき層8を形成する。そして、Agろう材シートを用いずに、それぞれの構成要素を実施例1と同様に積層して、所望の温度で熱処理を行い、ろう付接合する。これによって、実施例1と同様に、ろう材を用いずに上述した部材をろう付接合して形成することができる。
【0069】
なお、本実施形態2に係るろう付方法を用いた場合、第3構成要素3の第2貫通孔側壁部4aにも、確実にろう材を充填できる。即ち、実質的にろう材となる2つのめっき層(7、8)を、めっき処理にて確実に第2貫通孔側壁部4aにも形成できるからである。
【0070】
なお、上述したアルミナ分散強化銅の変わりに、銅に、SiC(炭化シリコン)、AlN(窒化アルミニウム)、Si3N4(窒化ケイ素)、C(カーボン)、TiO2(酸化チタニウム)、W(タングステン)、又はMo(モリブデン)のいずれかを分散させた分散散強化銅を用いた場合であっても、本発明の第2の実施形態に係るろう付方法を用いることができる。
【0071】
[効果]
本発明の第2の実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法の効果について、図を基に説明する。図6は、本発明の第2の実施形態に係るろう付方法によって接合した接合断面の電気顕微鏡像であり、図6(A1)及び(A2)は、本第2の実施形態に係るろう付方法によってろう付した場合の電子顕微鏡像であり、図6(B1)及び(B2)は、比較例として、従来のAgろう材によって接合した場合の電子顕微鏡像を示す。なお、比較例においては、Agろう材を100μmの厚さのシート状に形成したものを用いてろう付した。また、図6(A1)の本第2の実施例形態に係るろう付接合断面においては、銅めっき及び銀めっきを施したODSを3段接合した断面を示しており、上下に2つ見られる色の薄い部分が、それぞれ接合部分である。一方、図6(B1)の従来のろう付方法の断面は、ODSを、Agろう材を介して2段接合した断面を示し、中央が接合部分である。図6(A2)及び図6(B2)においては、画像上で、赤色で示されている部分が銀であり、一方、黒色で示されている部分がODS(及び銅)の部分である。
【0072】
図6(A1)において、ろう付後の拡散層幅は、それぞれ0.3mmであり、一方、図6(B1)の拡散層幅は、1mmである。また、図6(A2)においては、画像上に赤色の箇所が非常に少なく、一方、図6(B2)においては、赤色の箇所が全体に同じように分散して非常に多く見受けられる。即ち、本第2の実施形態に係るろう付方法によれば、銀のODS内部への拡散が非常に少ないことが把握される。以上説明したように、本発明の第2の実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法の効果は、第1に、エロージョンを抑制しながら確実にろう付できることである。なお、拡散層の幅が大きく異なるのは、本第2の実施形態に係るろう付方法が、銅めっき層7及び銀めっき層8をそれぞれ5μmずつ形成してろう付するのに対して、従来のAgろう材を使用したろう付方法では、100μmの厚さのシート状のAgろう材を用いたことによる。従って、本発明の第2の実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法によれば、第2に、接合面の高さを抑制して接合することができ、複数層をろう付した場合製品の高さを抑制することができる副次的な効果がある。
【0073】
更に、本発明の第2の実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法によれば、高価なAgろう材(Agろう箔)をまったく使用せず、銀めっき層8の形成によってろう付するため、第3の効果として、製品コストを大幅に引き下げることができる効果が得られる。更に、上述したように、銀めっき層8は膜厚5μm以上で形成するが、非常に薄い膜厚で良いため、めっき時間が短時間で済み、且つ、微細な凹部が存在しても短時間で済む。従って、本発明の第2の実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法によれば、第4に、Agろう箔5を微細な凹部に配設するのに長時間を要する従来のろう付方法に比して、製造時間を大幅に短縮することができる効果が得られる。
【0074】
また更に、ろう材を用いず、銅めっき層7及び銀めっき層8を形成してろう付するため、微細な凹部や微小な接合面にも両めっき層(7、8)が確実に形成される。従って、例えば、ろう材量を確保するために薄板に形成していた上述した実施例1で説明した部材の第3構成要素3を、一体形成することが可能になる。或いは、第3の構成要素3の分割数を大幅に減少させることができる。従って、第3構成要素3を積層して配置する工程が省略でき、或いは減少させることができるため、製造時間の短縮及びコスト削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1の実施形態にセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法を示す概略断面図であり、図1(A)はろう付前の状態を示し、図1(B)はろう付後の状態を示す。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る本ろう付方法によって形成した部材100の断面図である。
【図3】図2に示した部材100の部分αの拡大模式図であり、図3(A)は、ろう付前の状態、図3(B)はろう付後の状態を示す。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るろう付方法の効果を示す図であり、図4(A)は、本ろう付によって接合した接合断面の電気顕微鏡像、図4(B)及び図4(C)は、それぞれの断面における銀(Ag)、ニッケル(Ni)の分布状況を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法を示す概略断面図であり、図5(A)はろう付前の状態を示し、図5(B)はろう付後の状態を示す。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るろう付方法の効果を示す図であり、図6(A1)及び(B1)は、本ろう付によって接合した接合断面の電気顕微鏡像及び銀の分布状況、図6(B1)及び(B2)は、比較例として従来のろう付方法によって接合した接合断面の電気顕微鏡像及び銀の分布状況である。
【図7】複数積層したケイ素鋼板を、貫通バーを介して複数積層し、両端にエンドリングを配設して接合した部材の一例を示す図である。
【図8】図7に示した部材の接合部分の変形例を示す図であり、図8(A)は、接合部分がエロージョンに起因して変形した例であり、図8(B)は、正常な接合部分を示す。
【図9】図7に示した部材のエンドリングの材質としてアルミナ分散強化銅を用いた場合の、従来のろう付方法によりAgろう材でろう付する例を示す図であり、図9(A)はろう付方法の概略図、図9(B)は図7に示した部材のろう付前の状態を示す概略断面図、図9(C)はろう付においてエロージョンが発生した例を示す模式断面図である。
【図10】特許文献1に示されたろう付方法により、Agろう材でろう付する例を示す図であり、図10(A)はろう付方法の概略図、図10(B)は図7に示した部材のろう付前の状態を示す概略断面図、図10(C)は正常にろう付された状態を示す概略断面図である。
【図11】ニッケルめっき層からなるエロージョン防止層を設けた場合の効果を示す接合面の電子顕微鏡像であり、図11(A)は、それぞれ10μm及び30μmの膜厚でニッケルめっき層を形成したODSを、Agろう材を用いてろう付した場合の接合面の電子顕微鏡像であり、図11(B)は、同様に20μm及び30μmの膜厚でニッケルめっき層を形成したODSを、ろう付した場合の接合面の電子顕微鏡像である。
【図12】図11(A)及び(B)に示したそれぞれの断面における銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)の分布状況を示す図である。
【図13】アルミナ分散強化銅に銅めっき層307を設けて、エロージョンを抑制しつつODSをAgろう材でろう付したテスト実施例を示す図であり、図13(A)はろう付方法を示す概略断面図、図13(B)はろう付後の接合断面の電子顕微鏡像である。
【図14】テスト実施例及び従来のろう付方法によるろう付の場合の銀及び銅の分布を示す図であり、図14(A)は図13に示した接合断面の更に拡大した電子顕微鏡像、図14(B)は従来のろう付方法によりろう付した場合の接合断面の電子顕微鏡像である。
【図15】銅めっき層及びニッケルめっき層におけるAgろう材の濡れ性テスト方法及びテスト結果を示す図であり、図15(A)はテスト方法の概略を示す模式図、図15(B)及び(C)は、それぞれ銅めっき層及びニッケルめっき層におけるAgろう材の濡れ広がり状況を示す写真像である。
【符号の説明】
【0076】
1、201、301:第2構成要素(ケイ素鋼板)
2、302:第1構成要素(無酸素銅貫通バー)
3、303:第3構成要素(アルミナ分散強化銅エンドリング)
4、204、304:第2貫通孔
4a、304a:第2貫通孔側壁部
5、205、305:銀ろう材(銀ろう材シート)
5a、205a、305a:ろう付後のろう接部
6、206、306:ニッケルめっき層
7、307:銅めっき層
8:銀めっき層
10、210、310:第1貫通孔
100、200、300:部材
202:アルミニウム貫通バー
203:アルミニウムエンドリング
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属の接合に関し、特に、アルミナ分散強化銅等をろう付によって接合する方法、及びこの接合方法によって接合した接合部材に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の貫通孔を有する磁性のあるケイ素鋼板(第2構成要素)を、前記貫通孔を貫通する複数の貫通バー(第1構成要素)を介して複数積層し、両端にストッパとしてエンドリング(第3構成要素)を配設して、前記エンドリングと前記貫通バーとをろう付接合(以下、本明細書においては、単にろう付と記す。)して形成する部材(例えば、ロータ等。)がある。例えば、図7に示すような部材である。図7は、複数積層したケイ素鋼板を、貫通バーを介して複数積層し、両端にエンドリングを配設して接合した部材の一例を示す図である。
【0003】
図7に示したような部材を形成する場合、使用目的によって材質は適宜選択されるが、一般的な加工においては、加工の容易性及びコストの観点からエンドリング203及び貫通バー202は、鋳型を用いて一体的に形成されるアルミニウム鋳造品である場合が多い。ところが、かかる部材200が、例えば2万〜3万rpmといった高速回転環境下で使用される場合、アルミニウム鋳造品は強度の問題で変形してしまう場合がある。従って、この部材がかかる高速回転環境下で使用される場合には、エンドリング203及び貫通バー202の材質としてアルミニウム以外の高強度な材質が求められる。また更に、この部材200には、電気抵抗が低いことが求められる場合もある。
【0004】
上述したような高速回転で使用され、かつ低電気抵抗が求められる場合、エンドリング203及び貫通バー202の材質としては、無酸素銅、及びアルミナ分散強化銅(Oxide_Dispersion_Strengthened_Copper_Alloy。以下、ODSと記す場合がある。)に代表されるセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅(以下、本明細書においては、セラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた強化銅を、分散強化銅と記す場合がある。)が考えられる。ところが、いずれの材質を用いる場合であっても、例えばエンドリング203をこれらの材質を用いて鋳造で形成することは難しい。そこで、これらの材質を用いて形成する場合、積層したケイ素鋼板の両端に、これらの材質からなる薄板で形成したエンドリング203を、ろう材を介して複数枚積層し、前記複数のエンドリング203相互間及び前記複数のエンドリング203と前記貫通バー202とをろう付接合することが必要になる。
【0005】
しかし、エンドリング203の材質として無酸素銅を用いた場合、無酸素銅は炉中ろう付によって鈍ってしまい、所望の強度を確保することができない。一方、エンドリング203の材質としてアルミナ分散強化銅を用いる場合には、炉中ろう付で鈍ることがない。ここで、アルミナ分散強化銅からなる薄板をろう付する場合、積層したケイ素鋼板201の磁性を保つために、ろう付温度が830℃以下に限定される場合がある。このような条件を満たすろう材としては、銀ろう材(銀、銅、亜鉛を主成分とする硬ろうで、いわゆる活性銀ろう材も含む。以下、Agろう材と記す。)が有る。ところが、Agろう材を用いてアルミナ分散強化銅をろう付する場合、ろう材中の銀がエロージョン(母材金属の溶融ろうへの溶解及びろう成分の母材への拡散。)を起こして接合部分が変形し、接合部の密着不良が発生するという問題がある。図8に、図7に示した部材の接合部分の変形例を示す図である。図8(A)が、接合部分がエロージョンに起因して変形した例であり、図8(B)が、正常な接合部分である。このような接合不良箇所は、破損の原因ともなる。
【0006】
そこで、アルミナ分散強化銅を、Agろう材を用いてろう付する場合に、銀がアルミナ分散強化銅にしみ込みエロージョンを起こすことを防止するため、特許文献1に開示されたように、接合面にニッケルめっき層を形成し、ニッケルめっき層をバリア層として、銀のアルミナ分散強化銅内部へのしみ込みを防止することが提案されている。
【0007】
図を基により詳細に説明する。図9は、図7に示した部材のエンドリングの材質としてアルミナ分散強化銅を用いた場合の、従来のろう付方法によりAgろう材でろう付する例を示す図であり、図9(A)はろう付方法の概略図、図9(B)は図7に示した部材のろう付前の状態を示す概略断面図、図9(C)はろう付においてエロージョンが発生した例を示す模式断面図である。更に図10は、特許文献1に示されたろう付方法により、Agろう材でろう付する例を示す図であり、図10(A)はろう付方法の概略図、図10(B)は図7に示した部材のろう付前の状態を示す概略断面図、図10(C)は正常にろう付された状態を示す概略断面図である。図9及び図10においては、ろう付による接合状況を判りやすくするために、図7に破線で示した部分αに相当する箇所を拡大して示している。また、ろう付方法の概略図においては、判りやすくするために、接合面以外の面のめっき層を省略して図示している。なお、エンドリングの材質がアルミナ分散強化銅になるためエンドリングが複数から構成されているが、これは後述する理由により、機能としては同様である。
【0008】
図7に示した部材200のエンドリング203の材質としてアルミナ分散強化銅を、貫通バー202の材質として無酸素銅を用い、Agろう材を用いてろう付する場合、接合面の状態は、図9(A)に示すようになる。そして、図9(B)に示すように、実際の部材においては、アルミナ分散強化銅から成るエンドリング303相互間及びエンドリング303と無酸素銅からなる貫通バー302との間に、Agろう材305を配設して、830℃以下の温度で炉中ろう付される。ろう付が完璧に行われた場合、エンドリング303相互間及びエンドリング303と貫通バー302との間に、Agろう材305が完全に充填され、冷却されることでAgろう接部305aが形成される。ところが、上述したように、Agろう材305中の銀がエロージョンを起こして、アルミナ分散強化銅から成るエンドリング303内に拡散してしまい、図9(C)に示すように、エンドリング303の変形及びエンドリング303相互間及びエンドリング303と貫通バー302との間に隙間が生じ、Agろう接部305aの密着不良が発生するのである。
【0009】
そこで、特許文献1の方法によれば、図10(A)に示したように、アルミナ分散強化銅303の表面にニッケルめっきを施してニッケルめっき層306を形成し、Agろう材を用いてろう付する。実際の部品においては、図10(B)に示すようろう付前の状態となる。そして図10(C)に示すように、Agろう接部305aを形成して接合する。ニッケルめっき層306が、銀のアルミナ分散強化銅への拡散を防止するエロージョン防止層としての役割を果し、接合不良の発生を抑制できるのである。なお、Agろう材は接合面に直接塗布するのではなく、Agろう材からなるシートを形成し、ニッケルめっきを施したアルミナ分散強化銅303上にAgろう材シートを配設してろう付される。
【0010】
ところが、特許文献1の方法では、ニッケルめっきの膜厚の制御が難しい。例えば、エンドリング303表面にニッケルめっきする場合、ニッケルめっき膜306の膜厚は、形成された部材の高さに直接的に影響する。従って、ニッケルめっき層306の膜厚は、エロージョン防止効果を発揮できる膜厚であれば、薄い程よい。ところが、ニッケルめっき層306の膜厚は薄くすることが難しく、例えば、膜厚10μm以下とした場合、ニッケルめっき層306が破れてしまうケースが発生する。また、特許文献1の方法においては、Agろう材のシートを使用するが、例えば貫通孔304や凹部を有する場合、貫通孔側壁部304aや凹部内にAgろう材シート305を配設することが困難な場合がある。エンドリング303相互間にAgろう材シート305を配設するのは容易であるが、貫通孔304の径が小さい場合には、貫通孔側壁部304aにAgろう材シート305を配設すること容易ではなく、作業に長時間を要する場合が生じる。以上のような理由から、無酸素銅、あるいはアルミナ分散強化銅に代表されるセラミックス粒子あるいは第2元素を分散した分散強化銅から成る部材を、エロージョンを抑制しつつ簡易にろう付可能なろう付方法が求められる。
【特許文献1】特開2003−45264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、アルミナ分散強化銅に代表されるセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅を、エロージョンを抑制しつつ簡易にろう付するろう付方法及びそのろう付方法を用いる接合部材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態によれば、セラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅から成る複数の部材のそれぞれの表面に、めっき処理にて第1の金属の第1のめっき層を形成し、前記第1のめっき層の上に、めっき処理にて第2の金属の第2のめっき層をそれぞれ形成し、前記第1のめっき層及び前記第2のめっき層が形成された前記複数の部材をそれぞれ密着させて熱処理して接合することを特徴とするろう付方法が提供される。
【0013】
本発明の別の実施形態によれば、セラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅から成る複数の部材のそれぞれの表面に、めっき処理にて第1の金属の第1のめっき層を形成し、前記第1のめっき層の上に、めっき処理にて第2の金属の第2のめっき層をそれぞれ形成し、前記第1のめっき層及び前記第2のめっき層が形成された前記複数の部材を、それぞれの間に銀ろう材を配置してそれぞれ密着させて熱処理して接合することを特徴とするろう付方法が提供される。
【0014】
本発明のさらに別の実施形態によれば、無酸素銅から形成された複数の円柱状の第1の構成要素と、前記第1の構成要素に対応する複数の第1貫通孔を有する複数のドーナツ状の第2の構成要素と、セラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅から形成され、前記第1の構成要素に対応する複数の第2貫通孔を有する複数のドーナツ状の第3の構成要素と、を備え、前記複数の第1の構成要素及び前記複数の第3の構成要素のそれぞれは、表面に銅めっき層が形成され、更に、前記銅めっき層の表面に第2の金属からなる第2のめっき層が形成され、前記複数の第2の構成要素は、それぞれの前記第1貫通孔に前記銅めっき層及び第2のめっき層が形成された前記複数の第1の構成要素がそれぞれ貫通されて積層され、前記積層された複数の第2の構成要素の両端に、それぞれの前記第2貫通孔に前記複数の第1の構成要素が貫通された前記銅めっき層及び第2めっき層が形成された前記複数の第3の構成要素が、少なくとも1つ以上それぞれ配設され、熱処理されて、前記複数の第3の構成要素のそれぞれの第2貫通孔の側壁部と前記複数の第1の構成要素のそれぞれとが接合されることを特徴とする部材が提供される。
【0015】
前記セラミックス粒子あるいは第2元素は、Al2O3、SiC、AlN、Si3N4、C、TiO2、W又はMoのいずれか一つであってもよい。
【0016】
前記第1の金属は、銅であってもよい。
【0017】
前記第2の金属は、銀であってもよい。
【0018】
前記第2の金属は、ニッケル又は金であってもよい。
【0019】
前記第1のめっき層の膜厚は、5μm以上であってもよい。
【0020】
前記第2のめっき層の膜厚は、5μm以上であってもよい。
【0021】
前記第2のめっき層の膜厚は、1μm以上であってもよい。
【0022】
前記めっき処理は、電気めっき処理であってもよい。
【0023】
前記熱処理の温度は、830℃以下であってもよい。
【0024】
前記銀ろう材は、BAg−8銀ろう材であってもよい。
【0025】
前記銀ろう材は、シート状に形成された箔であってもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、に代表されるセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅を、エロージョンを抑制しつつ簡易にろう付するろう付方法及びそのろう付方法を用いる接合部材が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法及びそのろう付方法を用いた接合部品の製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるわけではない。また、各実施形態において、同様の構成については同じ符号を付し、改めて説明しない場合がある。更に、ろう付方法を説明する概略図においては、判りやすくするために、接合面側のめっき層のみを表示し、他の面のめっき層を省略して図示している。
【0028】
(本発明に至る経緯)
上述したように、ODSを、Agろう材を用いてろう付する場合、エロージョンが発生する場合がある。このエロージョンが発生すると、密着不良が発生するだけでなく、接合部分の強度が低下し破損の原因ともなる。そこで、特許文献1に示されたような、ニッケルめっき層からなるエロージョン防止層を設けるODSのろう付方法が提案されている。しかし、上述したように、この方法はニッケルめっき層の膜厚の管理が難しい。図11、図12に基づいて説明する。図11は、ニッケルめっき層からなるエロージョン防止層を設けた場合の効果を示す接合面の電子顕微鏡像であり、図11(A)は、それぞれ10μm及び30μmの膜厚でニッケルめっき層を形成したODSを、Agろう材を用いてろう付した場合の接合面の電子顕微鏡像であり、図11(B)は、同様に20μm及び30μmの膜厚でニッケルめっき層を形成したODSを、ろう付した場合の接合面の電子顕微鏡像である。また、図12は、図11(A)及び(B)に示したそれぞれの断面における銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)の分布状況を示す図である。
【0029】
図11(A)及び(B)から把握されるように、ニッケルめっき層の膜厚が10μmの場合、粒界に銀が拡散しているが、めっき層の膜厚が20μm及び30μmの場合には、銀の拡散が見られない。図12(A)からも、めっき層の膜厚が10μmの場合に銀がODS内部に拡散していることが把握される。一方、図12(B)において、ニッケルめっき層の膜厚が20μmと30μmのものを接合した場合には、ODS内部への銀の拡散が見られない。図12(A)及び(B)に示すように、銅及びニッケルの分布については、いずれのめっき膜厚であっても相違が見られない。以上から、ODSを、ニッケルめっき層を設けて銀ろう材を用いてろう付する場合、少なくともニッケルめっき層の膜厚を10μm超、より好適には20μm以上に管理することが必要になり、めっき層の膜厚管理が容易でないことが把握される。
【0030】
そこで、本発明者は、ニッケルめっき層に変えて、銅めっき層を設けることでエロージョンを防止することを思考し、かかる方法についてテスト実施した。このテスト実施例について、以下に説明する。なお、以下のテスト実施においては、分散強化銅として、アルミナ分散強化銅を用いた。
【0031】
図を基に説明する。図13は、アルミナ分散強化銅に銅めっき層307を設けて、エロージョンを抑制しつつODSをAgろう材でろう付したテスト実施例を示す図である。図13(A)は、ろう付方法を示す概略断面図であり、図13(B)は、ろう付後の接合断面の電子顕微鏡像である。また、図14は、テスト実施例及び従来のろう付方法によるろう付の場合の銀及び銅の分布を示す図であり、図14(A)は、図13に示した接合断面の更に拡大した電子顕微鏡像、図14(B)は、めっき層を設けないでアルミナ分散強化銅をAgろう材でろう付した場合の接合断面の電子顕微鏡像を比較例として示している。
【0032】
上述したように、エロージョン防止層としてニッケルめっき層を設ける場合、めっき膜の膜厚の管理が難しく、特に膜厚を薄く形成することが難しい。そこで、図13(A)に示すように、本テスト実施例においては、ニッケルめっき層に変えて、アルミナ分散強化銅から成る部材303の表面にめっき処理にて銅めっき層307を形成し、Agろう材305を用いてろう付した。本テスト実施例においては、銅めっき層307の膜厚の効果を検証するために、10μmの膜厚の銅めっき層307を形成したアルミナ分散強化銅部材303と、膜厚5μmの銅めっき層307を形成したアルミナ分散強化銅部材303とをろう付した。Agろう材305は、BAg−8の銀ろう材を厚さ100μmのシート状(箔)に形成したものを用いた。ろう付温度は830℃以下に制御し、炉中ろう付を行った。なお、ろう付温度については、本ろう付方法を適用して製造される部材の、他の構成要素の磁性を確保するために必要な温度に制御したものである。また、Agろう材の規格も同様の理由によって選択されたものである。
【0033】
その結果を、図13(B)に示す接合断面電子顕微鏡像によって分析したところ、膜厚5μmの銅めっき層側では、銅めっき層を超えてアルミナ分散強化銅部材内部まで、Agろう材がしみ込んでいる部分が一部に見受けられる。一方、膜厚10μmの銅めっき層側においては、Agろう材がしみ込んでいるものの、しみ込みはほとんど銅めっき層の部分までであり、アルミナ分散強化銅部材内部まではしみ込んでいない。
以上から、銅めっき層の膜厚を適切に管理すれば、銅めっき層がエロージョン防止層として有効に機能することが把握される。銅めっき層の効果については、図14に示した、銀、銅それぞれの分布状況からも理解できる。めっき層を設けないでAgろう材でろう付した場合、図14(B)に示すように、画像中に赤色で表示される銀は、画像中に黒色で表示されるアルミナ分散強化銅部材内部までほぼ同じ様に拡散している。一方、図14(A)に示す本テスト実施例においては、銀は、Agろう材を配設した箇所にほぼ集中して分布しており、銀の拡散が少ない。一方銅については、図14(A)及び(B)のいずれにおいても、ほとんど変わらない。以上説明したように、アルミナ分散強化銅表面に銅めっき層を設けてAgろう材でろう付することで、Agろう材中の銀のエロージョンを防止できるとの感触を得た。
【0034】
ところが、実験を重ねるなかで、銅めっき層を設けた場合、ニッケルめっき層に比してAgろう材の濡れ性が低下し、ろう材の濡れ性が悪いためにAgろう材が充填されない箇所が発生した。即ち密着不良が発生したのである。
【0035】
そこで、銅めっき層とニッケルめっき層における銀ろう材の濡れ性を検証する比較テストを行った。図15は、銅めっき層及びニッケルめっき層におけるAgろう材の濡れ性テスト方法及びテスト結果を示す図であり、図15(A)はテスト方法の概略を示す模式図、図15(B)及び(C)は、それぞれ銅めっき層及びニッケルめっき層におけるAgろう材の濡れ広がり状況を示す写真像である。テストは、図15(A)に示すように、シート状に形成したAgろう材を使用し、該Aろう材シートをめっき層の同一の位置に配設してろう付温度に加熱し、ろう材の濡れ広がり状況を確認することによって行った。図15(B)に示すように、銅めっき層上においては、ろう材をセットした範囲からろう材が濡れ広がっていないのが把握される。一方、ニッケルめっき層上においては、図15(C)に示すように、ろう材が濡れ広がっているのが把握される。以上のテストの結果、アルミナ分散強化銅表面に銅めっき層を設けてAgろう材でろう付する方法では、Agろう材の銀のエロージョンを防止できるが、一方で、Agろう材の濡れ性が悪くなることが確認された。
【0036】
そこで、本発明者は更に研究を重ね、本発明を創作するに至った。以下、本発明に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法及びその方法を用いた接合部材について説明する。
【0037】
(第1の実施形態)
[ろう付方法]
本発明の第1の実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法について、図を基に説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法を示す概略断面図である。図1(A)はろう付前の状態を示し、図1(B)はろう付後の状態を示す。
【0038】
図1(A)に示すように、本実施形態に係るろう付方法においては、ろう付する前に、アルミナ分散強化銅3の表面に銅めっき層(第1の金属の第1のめっき層)7を形成し、更にその銅めっき層7の上にニッケルめっき層(第2の金属の第2のめっき層)6を形成する。即ち、アルミナ分散強化銅3を、アルミナ分散強化銅3の上に銅めっき層7が配設され更に銅めっき層7の上にニッケルめっき層6が配設される2層めっき構造とする。本実施形態においては、銅めっき層7の膜厚は5μm以上に形成し、ニッケルめっき層6の膜厚は1μm以上に形成した。第1のめっき層はろう材中の銀のエロージョン防止層であり、第2のめっき層はろう材の濡れ性改善層である。
【0039】
ここで、銅めっき層7の膜厚は、図13及び図14に示したテスト実施結果から、Agろう材中の銀のエロージョンを防止できる膜厚として5μmとしたものである。従って、この膜厚以上であれば、Agろう材中の銀のエロージョンを防止する効果が発揮できる。また、ニッケルめっき層6の膜厚は、該ニッケルめっき層6がAgろう材5の濡れ性を改善するための層で膜厚を厚くする必要がないため、最小限の膜厚として1μmとしたものである。従って、これ以上の膜厚であれば、Agろう材5の濡れ性を改善する効果が確保できる。なお、銅めっき層7及びニッケルめっき層6は、膜厚の管理を考慮してそれぞれ電気めっき法によって形成したが、両めっき層の形成方法は、これに限定される訳ではない。
【0040】
次に、2層めっき構造としたアルミナ分散強化銅3の上にシート(箔)状に形成したAgろう材5を配設する。本実施形態においては、シート(箔)状に形成したAgろう材5の厚さは、100μmとした。なお、Agろう材として、BAg−8の規格のAgろう材を用いた。
【0041】
更にAgろう材5の上に2層めっき構造としたアルミナ分散強化銅3を積層する。その後、炉中にて所定のろう付温度にて熱処理を行う。本実施形態においては、ろう付温度を830℃以下に制御してろう付を行った。なお、これは一例であり、本実施形態に係るアルミナ分散強化銅のろう付方法は、上記のろう付温度及びAgろう材の規格に限定されるものではない。ろう付温度及びAgろう材5の規格については、ろう付対象部材及び当該部材と共に炉中にて熱処理される他の部材を考慮して、適宜選択される。
【0042】
熱処理後、図1(B)に示すように、Agろう材5は硬化してろう接部5aとなり、アルミナ分散強化銅3同士が接合される。
【0043】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法によって、アルミナ分散強化銅3同士を確実に接合することができる。なお、上述した説明においては、アルミナ分散強化銅3のろう付について説明したが、本発明の第1の実施形態に係るろう付方法によれば、無酸素銅からなる部材同士又はそれぞれ無酸素銅とアルミナ分散強化銅からなる部材同士を確実に接合することができる。材質が無酸素銅の場合であっても、銅めっき膜7及びニッケルめっき膜6を形成する点は同じである。
【0044】
また、本発明の第1の実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法においては、ろう材の濡れ性改善層として設ける第2のめっき層を、ニッケルめっき層6に変えて金めっき層とすることも可能である。金めっき層とした場合のめっき膜厚は、ニッケルめっき層6の場合と同様に1μmであり、又、熱処理温度も同様である。金めっき層によっても、Agろう材の濡れ性改善を図ることができる。
【0045】
なお、上述した分散強化銅として、銅にアルミナ(Al2O3)を分散させたアルミナ分散強化銅の変わりに、銅に、SiC(炭化シリコン)、AlN(窒化アルミニウム)、Si3N4(窒化ケイ素)、C(カーボン)、TiO2(酸化チタニウム)のセラミックス粒子、又はW(タングステン)、Mo(モリブデン)の第2元素のいずれか一つを分散させた分散強化銅を用いた場合であっても、本発明の第1の実施形態に係るろう付方法を用いることができる。
【0046】
[効果]
上述したように、本発明の第1の実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法においては、Agろう材5中の銀の分散強化銅3への拡散(エロージョン)を防止するために、エロージョン防止層として分散強化銅3の表面に銅めっき層7を設け、更にこの銅めっき層7の全面に、Agろう材5の濡れ性改善層としてニッケルめっき層6又は金めっき層を設ける。このように分散強化銅3の表面に二重のめっき層を設けることによって、Agろう材5の分散強化銅3内へのエロージョンを防止するとともに、Agろう材5の濡れ性を改善し、Agろう材5が充填されないことに起因して発生する密着不良を防止することができる。
【0047】
図4は、本発明の第1の実施形態に係るろう付方法の効果を示す図であり、図4(A)は、本ろう付によって接合した接合断面の電気顕微鏡像、図4(B)及び図4(C)は、それぞれの断面における銀(Ag)、ニッケル(Ni)の分布状況を示す図である。図4(A)に示すように、本ろう付方法によれば、中央部の色の薄い部分である接合面と色の濃い部分であるODSの境界が明確であり、図13(B)に示したような銀(Ag)のODS内へのエロージョンがほとんど見られない。また、図4(B)の画像上において赤色で示されている銀(Ag)が、中央部の接合部分に集中し、ODS内部にあまり拡散していないことが把握される。また、図4(C)に示すニッケル(Ni)の分布についても、接合面部分に集中していることが把握される。以上説明したように、本発明の第1の実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法によれば、銅めっき層及び銀めっき層の二つのめっき層が銀ろう材の代替の役割を果し、銀の分散強化銅等の内部へのエロージョンを防止しつつ、分散強化銅等を確実にろう付することができる。
【0048】
また、本発明の第1の実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法は、上述したように、エロージョン防止層が、膜厚の管理が容易な銅めっき層7によって形成されているため製造が容易であり、ニッケルめっき層を設ける方法に比してコスト削減を図ることができる。また、密着不良を防止できるため歩留まりが向上し、この点でもコスト削減効果がある。
【0049】
[実施例1]
次に、本発明の第1の実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法を用いた実施例について説明する。以下の実施例においては、材質としてアルミナ分散強化銅を用いた部材の実施例について示すが、本実施例1はこれに限定されるものではない。実施例1は、本ろう付方法によって図7に示した部材を形成した例である。図2は、本ろう付方法によって形成した部材100の断面図である。また、図3は、図2に示した部材100の部分αの拡大模式図である。図3(A)は、ろう付前の状態、図3(B)はろう付後の状態を示す。
【0050】
図2に示すように、本部材100は、ドーナツ状の第2構成要素(ケイ素鋼板)1を、無酸素銅からなる第1構成要素(貫通バー)2を貫通させて複数積層し、その両端部に、アルミナ分散強化銅からなるドーナツ状の第3構成要素(エンドリング)3を、それぞれ前記第1構成要素2に貫通させてそれぞれ複数積層した構造である。積層した複数の第3構成要素3の相互間及び第3構成要素3と第1構成要素2との間は、それぞれろう付されている。図2においては、第3構成要素3は、第1構成要素2の両端部にそれぞれ4枚ずつ積層されているが、これに限定されるものではなく、部材に求められる強度等に応じて、その数は適宜変更され得る。
【0051】
上述した部材のろう付箇所は、上述した本発明の第1の実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法によってろう付される。即ち、まず、第1構成要素2及び第3構成要素3の表面に、めっき処理によって銅めっき層7を、5μmの膜厚で形成する。次に、銅めっき層7を形成した第1構成要素2及び第3構成要素3の銅めっき層7の全面に、めっき処理によってニッケルめっき層6を形成する。本実施例1においては、ニッケルめっき層6の膜厚は1μmで形成した。これによって、第1構成要素2及び第3構成要素3は、2層のめっき層(6、7)を有する構造となる。
【0052】
以上のような処理を行った後、第3項構成要素3については、該第3構成要素3の複数の第2貫通孔側壁部4aのそれぞれに、シート状(箔)に形成したAgろう材5を密着させて配設する。
【0053】
以上の処理を行った後、複数の第2構成要素1を、該第2構成要素1の複数の第1貫通孔10に複数の第1構成要素2をそれぞれ貫通させて積層する。次に、Agろう材5を配設した前記第3構成要素3を、該第3構成要素3の複数の第2貫通孔4のそれぞれに前記複数の第1構成要素2を貫通させて、前記複数の第1構成要素2の両端部にそれぞれ一つずつ配設する。そして、前記第3構成要素3と同様のドーナツ状に形成し所定の位置に貫通孔を設けたシート状のAgろう材5を、前記第3構成要素3の上に配設し、さらにその上に、Agろう材5を配設した前記第3構成要素3を第1構成要素2の両端部にそれぞれ一つずつ配設する。シート状のAgろう材5と第3構成要素3とを同様に繰り返して配設し、第1構成要素2の両端部に、それぞれの間にAgろう材5を挟んで第3構成要素3を所望の枚数配設する。これを炉中にて所定の温度にて熱処理してろう付する。Agろう材5のシートの厚さ及び規格並びにろう付の熱処理温度は、それぞれの構成要素(1〜3)の材質及び磁性等の性質に応じて適宜選択される。本実施例1においては、Agろう材シート(箔)5は、規格BAg−8のろう材を用い100μmの厚さに形成したものを使用し、熱処理温度は、830℃以下に制御して処理を行った。
【0054】
これによって、第3構成要素3の第2貫通孔側壁部4aと第1構成要素2とが接合され、また、第3構成要素3同士が接合され、所望の強度を有する部材100を、アルミナ分散強化銅によって形成することができる。
【0055】
また、図3に示すように、製造された部材100は、Agろう材5の濡れ性が改善される本発明の第1の実施形態に係るろう付方法によってろう付されているため、第3構成要素3の第2貫通孔側壁部4aと第1構成要素2との間及び第3構成要素3同士の間に、Agろう材5が充分に充填され、隙間なく接合される。従って、密着不良に起因する破損等が少ない部材100を得ることができる。このような部材は、例えばロータとして用いることができる。
【0056】
なお、本実施例1においては、第3構成要素(エンドリング)3は、アルミナ分散強化銅からなる薄板を所望の開口を有するドーナツ状に形成し、且つ複数の第2貫通孔4を貫通させて形成した。そして、この薄板の第3構成要素3に上述した2層のめっき層(6、7)を形成し、所望の枚数の第3構成要素3をAgろう材シート(箔)5を介して積層してろう付して接合することで、所望の強度を有する一体の第3構成要素3を形成した。このように薄板の第3構成要素3を積層するのは、該第3構成要素3と第1構成要素2との接合面である第3構成要素3の第2貫通孔側壁部4aに、ろう材を充分に充填するためである。即ち、第2貫通孔側壁部4aの深さが深いほど、第2貫通孔側壁部4a中央部分にシート状のAgろう材5を配設することが難しくなる。また、熱処理の際に、Agろう材5は垂直方向に垂れてくるため、垂直方向上部側にAgろう材5が充分充填されない箇所(即ち、接合不良部分。)が形成され易くなる。第3構成要素3を薄板に形成して、第2貫通孔側壁部4a及びそれぞれの第3構成要素3の間にろう材5を配設することで、ろう材5が垂直方向に垂れてもそれぞれの第3構成要素3間に配設したろう材5が充填され、上述した接合不良部分の形成を抑制することができる。
【0057】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法について説明する。なお、以下の説明において、上述した第1の実施形態に係るろう付方法と共通する部分については、説明を省略する場合がある。
【0058】
上述した本発明の第1の実施形態に係るろう付方法は、被接合部材であるアルミナ分散強化銅又は無酸素銅からなる構成要素を、シート状(箔)に形成したAgろう材を用いてろう付する。本第2の実施形態に係るろう付方法は、Agろう材用いずにろう付することを特徴とする。
【0059】
第1の実施形態に係るろう付方法において部材を製造する場合、例えば、図2等に示した第3構成要素3の第2貫通孔側壁部4aに、シート状のAgろう材を配設する必要がある。しかし、このような微細な凹所に、適切にシート状のろう材を配設することは容易ではない。また、接合箇所の面積が微細な場合には、より困難性が増す。そこで、本第2の実施形態に係るろう付方法においては、ろう材の替わりに、所望の金属からなる第2のめっき層を形成する。なお、本明細書においては、「ろう材を用いず」とは、前処理を施した被接合部材以外に、別途ろう材を配設しないことを意味する。
【0060】
より詳細に、図を用いて説明するが、以下の実施形態においては、被接合部材としてアルミナ分散強化銅から成る部材を用いた例を示す。図5は、本発明の第2の実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法を示す概略断面図である。図5(A)はろう付前の状態を示し、図5(B)はろう付後の状態を示す。また、図6は、本発明の第2の実施形態に係るろう付方法の効果を示す図である。図6(A1)及び(B1)に、本ろう付によって接合した接合断面の電気顕微鏡像及び銀の分布状況を示し、図6(B1)及び(B2)に、比較例として従来のろう付方法によって接合した接合断面の電気顕微鏡像及び銀の分布状況を示している。
【0061】
図5(A)に示すように、本第2の実施形態に係るろう付方法においては、ろう付する前に、アルミナ分散強化銅3の表面に銅めっき層7を形成する。これは、上述した第1の実施形態に係るろう付方法と同一である。
【0062】
本第2の実施形態においては、更にその銅めっき層7の上に銀めっき層8を形成する。即ち、アルミナ分散強化銅3を、アルミナ分散強化銅3の上に銅めっき層7が配設され、更に銅めっき層7の上に銀めっき層8が配設される2層めっき構造とする。言い換えれば、本発明の第1の実施形態のニッケルめっき層6に変えて銀めっき層8を形成する。
【0063】
次に、2層めっき構造としたアルミナ分散強化銅3を密着させ、その後、炉中にて所定のろう付温度にて熱処理を行う。ろう付温度は、ろう付対象部材及び当該部材と共に炉中にて熱処理される他の部材を考慮して、適宜選択される。
【0064】
熱処理後、図5(B)に示すように、銅めっき層7の膜厚は減少し、銀めっき層8が硬化してろう接部5aを形成される。即ち、銅めっき層7の銅の一部及び銀めっき層8が溶融され、溶融されたそれぞれの金属が接合面に拡散することによって、Agろう材が溶融された状態と同一となり、それが硬化することで、ろう接部5aが形成されるのである。即ち、本第2の実施形態に係るろう付方法においては、2層のめっき層(7、8)が、熱処理によって溶融して、めっき層(7、8)自身がろう材の役割を果す。
【0065】
なお、膜厚が薄くなった銅めっき層7は、第1の実施形態の銅めっき層7と同様に、銀メッキ層8から溶け出した銀のアルミナ分散強化銅3内部への拡散を防止するエロージョン層として機能する。従って、本実施形態においては、銅めっき層7は、エロージョン防止層としての機能とAgろう材成分としての機能を兼ねるものである。なお、図5(B)において、ろう接部5aの垂直方向中央に、破線で接合面を示しているが、実際には、このような接合面が形成されるわけではなく、ろう接部5aが一体的に形成される。
【0066】
本実施形態においては、銅めっき層7の膜厚は5μm以上に形成し、銀めっき層8の膜厚も5μm以上に形成した。銅めっき層7の膜厚は、エロージョンを防止でき、かつAgろう材の成分となるのに充分な膜厚とされる。この膜厚以上であれば、エロージョンを防止する効果が発揮でき、また溶融した銀メッキ層8の銀とともに実質的にAgろう材として機能する。また、銀めっき層8は、溶融した銅めっき層7の銅とともに実質的にAgろう材として機能する層であり、これ以上の膜厚であれば、実質的にAgろう材としての効果が確保できる。そして、銅めっき層7及び銀めっき層8は、膜厚の管理を考慮してそれぞれ電気めっき法によって形成したが、これに限定される訳ではない。なお、上述した第1の実施形態においては、銅めっき層7上におけるAgろう材の濡れ性を改善するために、ニッケルめっき層6を設けたが、本実施形態においては、銅めっき層7及び銀めっき層8が、熱処理によってともに溶融し、溶融した銅中に、銀がほぼ均一に拡散する。従って、濡れ性の改善を図る必要がないため、ニッケルめっき層6又は金めっき層を設ける必要がない。
【0067】
本実施形態においては、ろう付温度を830℃以下に制御してろう付を行った。但し、これは、ろう付対象部材と共に炉中にて熱処理される他の部材の特性等を考慮して選択された一例であり、本実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法は、上記のろう付温度に限定されるものではない。
【0068】
本発明の第2の実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法は、上述した実施例1に示した部材等の製造に応用することができる。即ち、実施例1で説明した第1構成要素2及び第3構成要素3のろう付に応用することができる。詳細な説明は省略するが、第1構成要素2及び第3構成要素3の表面に、5μm以上の膜厚の銅めっき層7を形成した後、更に銅めっき層7の全面に、5μm以上の膜厚で銀めっき層8を形成する。そして、Agろう材シートを用いずに、それぞれの構成要素を実施例1と同様に積層して、所望の温度で熱処理を行い、ろう付接合する。これによって、実施例1と同様に、ろう材を用いずに上述した部材をろう付接合して形成することができる。
【0069】
なお、本実施形態2に係るろう付方法を用いた場合、第3構成要素3の第2貫通孔側壁部4aにも、確実にろう材を充填できる。即ち、実質的にろう材となる2つのめっき層(7、8)を、めっき処理にて確実に第2貫通孔側壁部4aにも形成できるからである。
【0070】
なお、上述したアルミナ分散強化銅の変わりに、銅に、SiC(炭化シリコン)、AlN(窒化アルミニウム)、Si3N4(窒化ケイ素)、C(カーボン)、TiO2(酸化チタニウム)、W(タングステン)、又はMo(モリブデン)のいずれかを分散させた分散散強化銅を用いた場合であっても、本発明の第2の実施形態に係るろう付方法を用いることができる。
【0071】
[効果]
本発明の第2の実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法の効果について、図を基に説明する。図6は、本発明の第2の実施形態に係るろう付方法によって接合した接合断面の電気顕微鏡像であり、図6(A1)及び(A2)は、本第2の実施形態に係るろう付方法によってろう付した場合の電子顕微鏡像であり、図6(B1)及び(B2)は、比較例として、従来のAgろう材によって接合した場合の電子顕微鏡像を示す。なお、比較例においては、Agろう材を100μmの厚さのシート状に形成したものを用いてろう付した。また、図6(A1)の本第2の実施例形態に係るろう付接合断面においては、銅めっき及び銀めっきを施したODSを3段接合した断面を示しており、上下に2つ見られる色の薄い部分が、それぞれ接合部分である。一方、図6(B1)の従来のろう付方法の断面は、ODSを、Agろう材を介して2段接合した断面を示し、中央が接合部分である。図6(A2)及び図6(B2)においては、画像上で、赤色で示されている部分が銀であり、一方、黒色で示されている部分がODS(及び銅)の部分である。
【0072】
図6(A1)において、ろう付後の拡散層幅は、それぞれ0.3mmであり、一方、図6(B1)の拡散層幅は、1mmである。また、図6(A2)においては、画像上に赤色の箇所が非常に少なく、一方、図6(B2)においては、赤色の箇所が全体に同じように分散して非常に多く見受けられる。即ち、本第2の実施形態に係るろう付方法によれば、銀のODS内部への拡散が非常に少ないことが把握される。以上説明したように、本発明の第2の実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法の効果は、第1に、エロージョンを抑制しながら確実にろう付できることである。なお、拡散層の幅が大きく異なるのは、本第2の実施形態に係るろう付方法が、銅めっき層7及び銀めっき層8をそれぞれ5μmずつ形成してろう付するのに対して、従来のAgろう材を使用したろう付方法では、100μmの厚さのシート状のAgろう材を用いたことによる。従って、本発明の第2の実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法によれば、第2に、接合面の高さを抑制して接合することができ、複数層をろう付した場合製品の高さを抑制することができる副次的な効果がある。
【0073】
更に、本発明の第2の実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法によれば、高価なAgろう材(Agろう箔)をまったく使用せず、銀めっき層8の形成によってろう付するため、第3の効果として、製品コストを大幅に引き下げることができる効果が得られる。更に、上述したように、銀めっき層8は膜厚5μm以上で形成するが、非常に薄い膜厚で良いため、めっき時間が短時間で済み、且つ、微細な凹部が存在しても短時間で済む。従って、本発明の第2の実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法によれば、第4に、Agろう箔5を微細な凹部に配設するのに長時間を要する従来のろう付方法に比して、製造時間を大幅に短縮することができる効果が得られる。
【0074】
また更に、ろう材を用いず、銅めっき層7及び銀めっき層8を形成してろう付するため、微細な凹部や微小な接合面にも両めっき層(7、8)が確実に形成される。従って、例えば、ろう材量を確保するために薄板に形成していた上述した実施例1で説明した部材の第3構成要素3を、一体形成することが可能になる。或いは、第3の構成要素3の分割数を大幅に減少させることができる。従って、第3構成要素3を積層して配置する工程が省略でき、或いは減少させることができるため、製造時間の短縮及びコスト削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1の実施形態にセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法を示す概略断面図であり、図1(A)はろう付前の状態を示し、図1(B)はろう付後の状態を示す。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る本ろう付方法によって形成した部材100の断面図である。
【図3】図2に示した部材100の部分αの拡大模式図であり、図3(A)は、ろう付前の状態、図3(B)はろう付後の状態を示す。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るろう付方法の効果を示す図であり、図4(A)は、本ろう付によって接合した接合断面の電気顕微鏡像、図4(B)及び図4(C)は、それぞれの断面における銀(Ag)、ニッケル(Ni)の分布状況を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るセラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅のろう付方法を示す概略断面図であり、図5(A)はろう付前の状態を示し、図5(B)はろう付後の状態を示す。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るろう付方法の効果を示す図であり、図6(A1)及び(B1)は、本ろう付によって接合した接合断面の電気顕微鏡像及び銀の分布状況、図6(B1)及び(B2)は、比較例として従来のろう付方法によって接合した接合断面の電気顕微鏡像及び銀の分布状況である。
【図7】複数積層したケイ素鋼板を、貫通バーを介して複数積層し、両端にエンドリングを配設して接合した部材の一例を示す図である。
【図8】図7に示した部材の接合部分の変形例を示す図であり、図8(A)は、接合部分がエロージョンに起因して変形した例であり、図8(B)は、正常な接合部分を示す。
【図9】図7に示した部材のエンドリングの材質としてアルミナ分散強化銅を用いた場合の、従来のろう付方法によりAgろう材でろう付する例を示す図であり、図9(A)はろう付方法の概略図、図9(B)は図7に示した部材のろう付前の状態を示す概略断面図、図9(C)はろう付においてエロージョンが発生した例を示す模式断面図である。
【図10】特許文献1に示されたろう付方法により、Agろう材でろう付する例を示す図であり、図10(A)はろう付方法の概略図、図10(B)は図7に示した部材のろう付前の状態を示す概略断面図、図10(C)は正常にろう付された状態を示す概略断面図である。
【図11】ニッケルめっき層からなるエロージョン防止層を設けた場合の効果を示す接合面の電子顕微鏡像であり、図11(A)は、それぞれ10μm及び30μmの膜厚でニッケルめっき層を形成したODSを、Agろう材を用いてろう付した場合の接合面の電子顕微鏡像であり、図11(B)は、同様に20μm及び30μmの膜厚でニッケルめっき層を形成したODSを、ろう付した場合の接合面の電子顕微鏡像である。
【図12】図11(A)及び(B)に示したそれぞれの断面における銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)の分布状況を示す図である。
【図13】アルミナ分散強化銅に銅めっき層307を設けて、エロージョンを抑制しつつODSをAgろう材でろう付したテスト実施例を示す図であり、図13(A)はろう付方法を示す概略断面図、図13(B)はろう付後の接合断面の電子顕微鏡像である。
【図14】テスト実施例及び従来のろう付方法によるろう付の場合の銀及び銅の分布を示す図であり、図14(A)は図13に示した接合断面の更に拡大した電子顕微鏡像、図14(B)は従来のろう付方法によりろう付した場合の接合断面の電子顕微鏡像である。
【図15】銅めっき層及びニッケルめっき層におけるAgろう材の濡れ性テスト方法及びテスト結果を示す図であり、図15(A)はテスト方法の概略を示す模式図、図15(B)及び(C)は、それぞれ銅めっき層及びニッケルめっき層におけるAgろう材の濡れ広がり状況を示す写真像である。
【符号の説明】
【0076】
1、201、301:第2構成要素(ケイ素鋼板)
2、302:第1構成要素(無酸素銅貫通バー)
3、303:第3構成要素(アルミナ分散強化銅エンドリング)
4、204、304:第2貫通孔
4a、304a:第2貫通孔側壁部
5、205、305:銀ろう材(銀ろう材シート)
5a、205a、305a:ろう付後のろう接部
6、206、306:ニッケルめっき層
7、307:銅めっき層
8:銀めっき層
10、210、310:第1貫通孔
100、200、300:部材
202:アルミニウム貫通バー
203:アルミニウムエンドリング
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅から成る複数の部材のそれぞれの表面に、めっき処理にて第1の金属の第1のめっき層を形成し、
前記第1のめっき層の上に、めっき処理にて第2の金属の第2のめっき層をそれぞれ形成し、
前記第1のめっき層及び前記第2のめっき層が形成された前記複数の部材をそれぞれ密着させて熱処理して接合することを特徴とするろう付方法。
【請求項2】
セラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅から成る複数の部材のそれぞれの表面に、めっき処理にて第1の金属の第1のめっき層を形成し、
前記第1のめっき層の上に、めっき処理にて第2の金属の第2のめっき層をそれぞれ形成し、
前記第1のめっき層及び前記第2のめっき層が形成された前記複数の部材を、それぞれの間に銀ろう材を配置してそれぞれ密着させて熱処理して接合することを特徴とするろう付方法。
【請求項3】
前記セラミックス粒子あるいは第2元素は、Al2O3、SiC、AlN、Si3N4、C、TiO2、W又はMoのいずれか一つであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のろう付方法。
【請求項4】
前記第1の金属は、銅であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のろう付方法。
【請求項5】
前記第2の金属は、銀であることを特徴とする請求項1に記載のろう付方法。
【請求項6】
前記第2の金属は、ニッケル又は金であることを特徴とする請求項2に記載のろう付方法。
【請求項7】
前記第1のめっき層の膜厚は、5μm以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のろう付方法。
【請求項8】
前記第2のめっき層の膜厚は、5μm以上であることを特徴とする請求項1に記載のろう付方法。
【請求項9】
前記第2のめっき層の膜厚は、1μm以上であることを特徴とする請求項2に記載のろう付方法。
【請求項10】
前記めっき処理は、電気めっき処理であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のろう付方法。
【請求項11】
前記熱処理の温度は、830℃以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のろう付方法。
【請求項12】
前記銀ろう材は、BAg−8銀ろう材であることを特徴とする請求項2に記載のろう付方法。
【請求項13】
前記銀ろう材は、シート状に形成された箔であることを特徴とする請求項12に記載のろう付方法。
【請求項14】
無酸素銅から形成された複数の円柱状の第1の構成要素と、
前記第1の構成要素に対応する複数の第1貫通孔を有する複数のドーナツ状の第2の構成要素と、
セラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅から形成され、前記第1の構成要素に対応する複数の第2貫通孔を有する複数のドーナツ状の第3の構成要素と、を備え、
前記複数の第1の構成要素及び前記複数の第3の構成要素のそれぞれは、表面に銅めっき層が形成され、更に、前記銅めっき層の表面に第2の金属からなる第2のめっき層が形成され、
前記複数の第2の構成要素は、それぞれの前記第1貫通孔に前記銅めっき層及び第2のめっき層が形成された前記複数の第1の構成要素がそれぞれ貫通されて積層され、
前記積層された複数の第2の構成要素の両端に、それぞれの前記第2貫通孔に前記複数の第1の構成要素が貫通された前記銅めっき層及び第2めっき層が形成された前記複数の第3の構成要素が、少なくとも1つ以上それぞれ配設され、
熱処理されて、前記複数の第3の構成要素のそれぞれの第2貫通孔の側壁部と前記複数の第1の構成要素のそれぞれとが接合されることを特徴とする部材。
【請求項15】
前記セラミックス粒子あるいは第2元素は、Al2O3、SiC、AlN、Si3N4、C、TiO2、W又はMoのいずれか一つであることを特徴とする請求項14に記載の部材。
【請求項16】
前記銅めっき層の膜厚は5μm以上であることを特徴とする請求項15に記載の部材。
【請求項17】
前記第2の金属は銀であって、
前記第2のめっき層の膜厚は5μm以上であることを特徴とする請求項16に記載の部材。
【請求項18】
前記積層された複数の第2の構成要素の両端に、前記銅めっき層及び第2のめっき層が形成された前記複数の第3の構成要素が、それぞれの前記複数の第2貫通孔に銀ろう材を介して前記複数の第1の構成要素がそれぞれ貫通されかつ前記複数の第3の構成要素相互間に銀ろう材が配置されて複数個ずつ配設されることを特徴とする請求項16に記載の部材。
【請求項19】
前記第2の金属はニッケル又は金であって、
前記第2のめっき層の膜厚は1μm以上であることを特徴とする請求項18に記載の部材。
【請求項20】
前記熱処理の温度は、830℃以下であることを特徴とする請求項17又は請求項19に記載の部材。
【請求項1】
セラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅から成る複数の部材のそれぞれの表面に、めっき処理にて第1の金属の第1のめっき層を形成し、
前記第1のめっき層の上に、めっき処理にて第2の金属の第2のめっき層をそれぞれ形成し、
前記第1のめっき層及び前記第2のめっき層が形成された前記複数の部材をそれぞれ密着させて熱処理して接合することを特徴とするろう付方法。
【請求項2】
セラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅又は無酸素銅から成る複数の部材のそれぞれの表面に、めっき処理にて第1の金属の第1のめっき層を形成し、
前記第1のめっき層の上に、めっき処理にて第2の金属の第2のめっき層をそれぞれ形成し、
前記第1のめっき層及び前記第2のめっき層が形成された前記複数の部材を、それぞれの間に銀ろう材を配置してそれぞれ密着させて熱処理して接合することを特徴とするろう付方法。
【請求項3】
前記セラミックス粒子あるいは第2元素は、Al2O3、SiC、AlN、Si3N4、C、TiO2、W又はMoのいずれか一つであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のろう付方法。
【請求項4】
前記第1の金属は、銅であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のろう付方法。
【請求項5】
前記第2の金属は、銀であることを特徴とする請求項1に記載のろう付方法。
【請求項6】
前記第2の金属は、ニッケル又は金であることを特徴とする請求項2に記載のろう付方法。
【請求項7】
前記第1のめっき層の膜厚は、5μm以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のろう付方法。
【請求項8】
前記第2のめっき層の膜厚は、5μm以上であることを特徴とする請求項1に記載のろう付方法。
【請求項9】
前記第2のめっき層の膜厚は、1μm以上であることを特徴とする請求項2に記載のろう付方法。
【請求項10】
前記めっき処理は、電気めっき処理であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のろう付方法。
【請求項11】
前記熱処理の温度は、830℃以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のろう付方法。
【請求項12】
前記銀ろう材は、BAg−8銀ろう材であることを特徴とする請求項2に記載のろう付方法。
【請求項13】
前記銀ろう材は、シート状に形成された箔であることを特徴とする請求項12に記載のろう付方法。
【請求項14】
無酸素銅から形成された複数の円柱状の第1の構成要素と、
前記第1の構成要素に対応する複数の第1貫通孔を有する複数のドーナツ状の第2の構成要素と、
セラミックス粒子あるいは第2元素を分散させた分散強化銅から形成され、前記第1の構成要素に対応する複数の第2貫通孔を有する複数のドーナツ状の第3の構成要素と、を備え、
前記複数の第1の構成要素及び前記複数の第3の構成要素のそれぞれは、表面に銅めっき層が形成され、更に、前記銅めっき層の表面に第2の金属からなる第2のめっき層が形成され、
前記複数の第2の構成要素は、それぞれの前記第1貫通孔に前記銅めっき層及び第2のめっき層が形成された前記複数の第1の構成要素がそれぞれ貫通されて積層され、
前記積層された複数の第2の構成要素の両端に、それぞれの前記第2貫通孔に前記複数の第1の構成要素が貫通された前記銅めっき層及び第2めっき層が形成された前記複数の第3の構成要素が、少なくとも1つ以上それぞれ配設され、
熱処理されて、前記複数の第3の構成要素のそれぞれの第2貫通孔の側壁部と前記複数の第1の構成要素のそれぞれとが接合されることを特徴とする部材。
【請求項15】
前記セラミックス粒子あるいは第2元素は、Al2O3、SiC、AlN、Si3N4、C、TiO2、W又はMoのいずれか一つであることを特徴とする請求項14に記載の部材。
【請求項16】
前記銅めっき層の膜厚は5μm以上であることを特徴とする請求項15に記載の部材。
【請求項17】
前記第2の金属は銀であって、
前記第2のめっき層の膜厚は5μm以上であることを特徴とする請求項16に記載の部材。
【請求項18】
前記積層された複数の第2の構成要素の両端に、前記銅めっき層及び第2のめっき層が形成された前記複数の第3の構成要素が、それぞれの前記複数の第2貫通孔に銀ろう材を介して前記複数の第1の構成要素がそれぞれ貫通されかつ前記複数の第3の構成要素相互間に銀ろう材が配置されて複数個ずつ配設されることを特徴とする請求項16に記載の部材。
【請求項19】
前記第2の金属はニッケル又は金であって、
前記第2のめっき層の膜厚は1μm以上であることを特徴とする請求項18に記載の部材。
【請求項20】
前記熱処理の温度は、830℃以下であることを特徴とする請求項17又は請求項19に記載の部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−120034(P2010−120034A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−294444(P2008−294444)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
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