説明

ろ過装置

【課題】粘着性や付着性が強い特殊な性質をもつ粉塵類の除去を目的とするろ過装置のフィルタを提供する。
【解決手段】粉塵類をろ過する筒状のフィルタ5の中に収容されると共にろ過装置天板面11で支持される逆洗ノズル1は、内管2と外管3と外管3に形成したノズル4とで構成し、内管2と外管3の間に筒状の緩衝空間を、外管3とノズル4の間に緩衝空間を形成し、内管2の外周面には内孔を、外管3からノズル4へ通じる面には外孔を、ノズル4には逆洗用流体をフィルタ内筒面51に向って吹き出すようにエジェクターをそれぞれ形成し、外管3を内管2に対して回転軸線Cを中心にして回転するように駆動手段6を備えている。この逆洗ノズル1の外管3を連続的に回転させながら逆洗用流体を吹き出し、フィルタ全面に薄く付着する粉塵類をフィルタ5に固着しないうちに除去するので、粉塵類のろ過抵抗による圧力損失の上昇も小さくフィルタ面積を小さくできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタの目詰まりを解消するろ過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製薬会社の製造装置には、図7に示すように給気ファン71、空調設備72、流動造粒機73、集塵機74、排気ファン75から構成された造粒設備がある。この製造装置は、給気ファン71と排気ファン75及び空調設備72により空気調和された空気を流動造粒機73内に送風し、装置内で粉を流動化させ、その中に造粒液をスプレーして粉同士を付着させて所望の大きさの粒にする。このときに、流動造粒機73のフィルタ5は流動化している薬粉が飛散しないようにし、空気のみを通過させる。また、流動造粒機73のフィルタ5の破損などにより薬粉が屋外に放出しないように集塵機74を設置し、その装置に取付けられたフィルタ5にて薬粉をろ過し、空気のみを排気ファン75にて屋外に排気する。
【0003】
この製造装置を連続的に稼動する場合は、流動造粒機73や集塵機74に複数のフィルタ5を配置する。そして、夫々のフィルタ5の上部に配置したノズル77より逆洗用のジェット気流を定期的に順次噴射してフィルタ5に積層した薬粉を払い落とすのである。
【0004】
また、フィルタ5が単独の場合、定期的にこの製造装置の空気の流れを止めて、フィルタ5の上部に設置したノズル77より逆洗用のジェット気流を噴射したり、フィルター5自体を揺り動かしてフィルタ5に積層した薬粉を払い落とすのである。
【0005】
しかしながら、いずれの場合も図5(ロ)(ハ)に示すように、筒状に形成されたフィルタ5に積層した薬粉が粘着性や付着性の強い特殊な性質をもつ場合は、稼働を続けるうちに徐々にろ布に固着して目詰まりが起こり使用できなくなる。
【0006】
逆洗装置に関する次の特許文献1がある。粉塵等をろ過する筒状のフィルタの中に内管と外管とで双方の軸線が一致する二重管構造の逆洗ノズルを挿入し、内管と外管の間に筒状の緩衝空間を、内管の外周面には内孔を、外管の外周面には一直線上に多数の外孔をあけ、回転軸線を中心にして外管を内管に対して回転可能に設けてある。一方、逆洗用流体は内管より外管に供給され、外管を回転させて外孔より逆洗用流体が吹き出される。
【0007】
このようにフィルタの内部に二重管構造の逆洗ノズルを同心円状に有し、緩衝空間を有していると、回転する外管に設けられた外孔から指向性をもって、均一な逆洗用流体がフィルタ内筒のろ過部全面に勢よく吹き出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−221172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような内管と回転可能な外管で構成される二重管構造の逆洗装置は、逆洗の除塵効果を高めるには、外管の外径をフィルタの内筒径に近いサイズにするのが望ましい。しかしながら、外管の外径をフィルタの内筒径に近いサイズにすればするほど、フィルタでろ過された流体の流速は速くなり、フィルタの内筒の出口部で圧力損失が大きくなる。
【0010】
例えば、フィルタの内筒径が200mmの筒状のフィルタで20m/分の空気をろ過し、逆洗効果を高めるために外管の外径を180mmにするとフィルタの内筒出口部での流速は55m/秒にも達するため、圧力損失が大きくなりエネルギー効率が悪くなる。
【0011】
逆に外径を80mmにするとフィルタの内筒出口部での流速は13m/秒に下がることになるが、内筒と外管に形成されたノズル孔との距離が60mmと大きくなり、その分だけ逆洗用流体の噴射圧を高くして流量を増大しても効率よく除塵できなくなる。
【0012】
本発明は、上記不都合を解消するものであり、その解決課題は、粘着性のある粉などがフィルタに固着するのを防ぎ、フィルタ内筒の全域に均一な圧力で逆洗用流体を吹き出して効率良く除塵することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、筒状のフィルタの中に逆洗ノズルが収容されるろ過装置を前提とする。
【0014】
そして、請求項1の発明は、粉塵類をろ過する筒状のフィルタ5の中に収容されると共にろ過装置天板面11で支持される逆洗ノズル1は、内管2と外管3と外管3に形成したノズル4とで構成し、内管2と外管3の間に筒状の緩衝空間22を、外管3とノズル4の間に緩衝空間42を形成し、内管2の外周面には内孔21を、外管3からノズル4へ通じる面には外孔31を、ノズル4にはエジェクター41を逆洗用流体とベンチュリー効果により吸い込まれる流体がノズル孔43からフィルタ内筒面51に向って吹き出すようにそれぞれ形成し、回転軸線Cを中心に外管3を内管2に対して回転するように上部軸受62と下部軸受63とを備え、外管3を回転させる駆動手段6を備えている。
【0015】
また、請求項2のように、フィルタ内筒面51に向って逆洗用流体をスリット状に吹き出すように、外管3にフィルタ5の高さ相当の長さを有し、回転によりにフィルタ5に接触しないフィルタ内筒面51の近辺まで伸ばしたノズル4を形成し、吹き出す方向やスリット幅が調整できるエジェクター41を備えている
【0016】
また、請求項3のように、逆洗用流体が流通する内管2の複数の内孔21の総開口面積が、外管3の複数の外孔31の総開口面積より大きく形成し、外管3の複数の外孔31の総開口面積が、エジェクター41のノズル孔43の総開口面積より大きく形成することである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、内管2と外管3の間に筒状の緩衝空間22を設け、さらに、外管3とノズル2の間にも緩衝空間42を設けたので、内管2の複数の内孔21や外管3の複数の外孔31を通過した逆洗用流体が、それぞれの緩衝空間で衝突しあって撹拌され、ノズル4に形成されたエジェクター41のベンチュリー効果により吸い込み流体がさらに加わり、その結果、ノズル孔43からの吹き出し速度が増大し、外管3が内管2に対して回転することにより、フィルタ5の内筒面の全域に逆洗用流体が吹き出されて除塵効果の高いものとなる。
【0018】
また、外管3を連続的に高速回転させることにより、フィルタの全面に積層する粉塵類は極めて薄くなり、ろ過抵抗が上昇しない分だけフィルタ面積を小さくできる。
【0019】
請求項2の発明は、フィルタ内筒面51に向って逆洗用流体をスリット状に吹き出すように、外管3にフィルタ5の高さ相当の長さを有し、回転によりにフィルタ5に接触しないフィルタ内筒面51の近辺まで伸ばしたノズル4を形成し、吹き出す方向やスリット幅が調整できるエジェクタ−41を備えている。フィルタ内筒面51の近辺でスリット状の逆洗用流体を吹き出すことにより、フィルタ内筒面51への噴射圧が局部的に大きく掛かかり、それによってフィルタ5に微振動も発生させるので、少ない逆洗用流体でフィルタ5に固着しやすい粉塵類の除去ができる。
【0020】
また、スリット状の逆洗用流体を吹き出す方向を、外管3の回転力への補助作用が働くように外管3を回転方向32の反対方向に向けることで、駆動手段6の動力の低減になる。さらに、フィルタ5に積層する各種の粉塵類は、それぞれ固着性等の性質が異なるので、その性質に合わせてエジェクター41のスリット幅を調整する。逆洗用流体流量Nを一定とした場合、スリット幅を狭くするとベンチュリ効果による吸込流体流量nが増えると共にノズル孔43からの吹き出し流量が(N+n)と増加し、速度が速くなって固着しやすい粉塵類の除去が効率的にできる。
【0021】
請求項3の発明は、逆洗用流体が流通する内管2の複数の内孔21の総開口面積が、外管3の複数の外孔31の総開口面積より大きく形成し、外管3の複数の外孔31の総開口面積が、エジェクター41のノズル孔43の総開口面積より大きく形成してある。これにより、内管2と外管3の間の緩衝空間22や外管3とノズル4の間の緩衝空間42の圧力が高まり、逆洗用流体が撹拌され易く、ノズル孔43からの吹き出し圧力が一段と均一化される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のろ過装置の内部構造を説明した構成図である。
【図2】本発明の逆洗ノズルのA−A線断面図である。
【図3】本発明のノズル4の斜視図であり、(イ)はスリット型のエジェクターを示し、(ロ)は複数の丸型のエジェクターを示し、(ハ)はスリット状のノズルを示す。
【図4】本発明の逆洗用流体が通過する各孔を示す斜視図であり、(イ)はノズル4のノズル孔43を示し、(ロ)は外管3の外孔31を示し、(ハ)は内管2の内孔21を示す。
【図5】各種のフィルタ及び粉が積層した状態を示す正断面図であり、(イ)プリーツフィルタに薄く付着した状態を示し、(ロ)プリーツフィルタに厚く積層した状態を示し、(ハ)は円筒状のフィルタに積層した状態を示す。
【図6】本発明の逆洗ノズルが使用される実施例を示した説明図である。
【図7】薬の製造装置に使用されるろ過装置についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
粘着性のある粉などがフィルタに固着するのを防ぎ、フィルタ内筒の全域に均一な圧力で逆洗用流体を吹き出して効率良く除塵する目的を、内管と外管の間に設けた筒状の緩衝空間と、外管とノズルの間に設けた緩衝空間と、により実現した。
【実施例1】
【0024】
以下、図面に基づいて本発明のろ過装置について詳細に説明する。
【0025】
図1に示すように、粉塵類を含む流体は流体輸送装置によりろ過装置入口部から入り、粉塵類はフィルタ5に付着する。ろ過された流体は、流体出口部より排出される。フィルタ5に付着した粉塵類は、フィルタ5の内部に収容された逆洗ノズル1から吹き出される逆洗用流体により剥離され、ろ過装置の下部に配置した受容器W2に収容される。
【0026】
フィルタ5は、筒型で内筒の上部面は開放され下部面は閉止された構造となっていて、フランジ51と仕切板12の間のガスケット52にて流体が漏れないように固定部材13により固定されている。流体はフィルタ5の内筒を経由し、ろ過装置出口部に流れる。
【0027】
逆洗ノズル1は、ろ過装置の天面部よりフィルタ5の内筒内に収容し、内管2と内管2の外周を囲む外管3と外管3にノズル4を備え、内管2と外管3の間に筒状の緩衝空間22を、外管3とノズル4の間に緩衝空間42をそれぞれ形成してある。
【0028】
内管2は、ろ過装置天面11にて支持し、下部開口端を閉鎖し上部開口端を逆洗用流体の入口とし、図4に示すように、外周面には複数の内孔21を円周方向に対して等角度で上下に縦列に形成し、内孔21の孔径と孔数は、逆洗用流体が流通する総開口面積が外管3の複数の外孔31の総開口面積より大きくなるようにする。
【0029】
外管3は、内管2の上部軸受62と下部軸受63にて回転軸線Cを中心に回転可能に支持し、かつ、閉鎖してある。また、逆洗用流体がノズル4に通じる面に複数の外孔31を上下に縦列に形成し、外管3とノズル4の間の緩衝空間42を形成する。これにより、逆洗用流体が撹拌され、ノズル孔43からの吹き出し圧力は一段と均一化される。
【0030】
外管3は、その上部に回転させる駆動手段6を備えている。駆動手段6は、駆動モーターと駆動ベルト61とで構成し、逆洗ノズル1の外管3を回転軸線Cを中心に回転させる。複数の逆洗ノズル1を備える場合、それぞれ単独で回転する駆動手段6を備えても良いが、共通に備えても良い。また、外管3に流体の流れを受ける羽根を備えることで外管3を回転させることでも良い。
【0031】
ノズル4は、図2や図3(イ)に示すようにフィルタ内筒面51に向って逆洗用流体をスリット状に吹き出すように、外管3にフィルタ5の高さ相当の長さにして、回転によりフィルタ5に接触しないフィルタ内筒面51の近辺まで伸ばした寸法とし、吹き出す方向やスリット幅が調整できるエジェクタ−41を形成する。
【0032】
吹き出し方向の調整は、エジェクタ−41の外管3の回転方向側に備えるスペーサ44の厚さを変えて行う。また、スリット幅の調整は、左側エジェクター41L及び右側エジェクター41Rをスライドして行う。
【0033】
また、ノズル4に備えるエジェクター41は、図3(ロ)に示すように複数の丸型エジェクターを配置することでも良く、(ハ)に示すようなスリット状のノズルでも良い。更に、外管3の回転バランスや回転速度を下げて駆動手段6の動力を下げることなどを考慮してノズル4を一対に備えても良い。
【実施例2】
【0034】
図6は、本発明の逆洗ノズル1を取付けた実施例を示す。製薬会社の製造装置では、給気ファン71、空調設備72、流動造粒機73、集塵機74、排気ファン75から構成された造粒設備がある。この製造装置は、給気ファン71と排気ファン75及び空調設備72により空気調和された空気を流動造粒機73内に送風し、装置内で粉を流動化させ、その中に造粒液をスプレーして粉同士を付着させて所望の大きさの粒にする。この流動造粒機73や集塵機74のフィルタ5内に本発明の逆洗ノズル1を配置し、高圧ファン又は空気圧縮機76により逆洗用空気を逆洗ノズル1に送り、各フィルタ5に粉塵類が固着しないように、常時、駆動手段6により外管3を高速回転させて、図5(イ)に示すように薄く積層した状態で逆洗用空気を流して払い落とすのである。
【0035】
また、図5(ロ)や(ハ)のように粉塵類が十分に積層した状態でも固着せず目詰まりしない場合は、常に逆洗用空気を流して外管3を回転する必要はなく、定期的に数秒間外管を回転させて払い落すことでも良い。
【0036】
また、逆洗用空気が流れることで生じる圧力損失を小さくなるように、内菅や外管の内径を大きくして、さらに、逆洗用空気が流れる内管の内孔や外管の外孔の総開口面積も大きく形成してある。これにより、空気圧縮機の約1/10程度の動力の高圧ファンが使用できる。さらに、フィルタ5に粉塵類が殆ど積層しないうちに払い落とし、粉塵類のろ過抵抗による圧力損失の上昇を小さくして、その分だけフィルタ面積を小さく形成してある。
【0037】
また、本発明の逆洗ノズル1では単独のフィルタ5であっても、空気の流れを止める必要がなく連続的に動かすことが可能であり稼働率向上に通じる。さらに、空気の流れが一定となるため、製品品質の安定が見込める。
また、複数のフィルタを備えるなど逆洗用流体が多く必要となる場合、ろ過装置出口エリアから流体をリサイクルすることで、流体輸送機W1による流体流量Wの増大を避けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係るろ過装置は、粉体に最適であるが、流体のろ過のみならず空調用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0039】
1逆洗ノズル
11支持部材
12仕切板
13固定部材
2 内管
21内孔
22緩衝空間
3 外管
31外孔
32外管回転方向
4 ノズル
41エジェクター
41Lエジェクター(左側ノズル&ディフューザー)
41Rエジェクター(右側ノズル&ディフューザー)
42緩衝空間
43ノズル孔
44スペーサ
5 フィルタ
51フランジ
52ガスケット
6 駆動手段
61駆動ベルト
62上部軸受
63下部軸受
71給気ファン
72空調設備
73流動造粒機
74集塵機
75排気ファン
76高圧ファン又はコンプレッサー
77ノズル
AIR圧縮空気
C 回転軸線
N 逆洗用流体流量
n 吸込流体流量
N1逆洗流体輸送機
W 流体流量
W1流体輸送機
W2受容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉塵類をろ過する筒状のフィルタ5の中に収容されると共にろ過装置天板面11で支持される逆洗ノズル1は、内管2と外管3と外管3に形成したノズル4とで構成し、内管2と外管3の間に筒状の緩衝空間22を、外管3とノズル4の間に緩衝空間42を形成し、内管2の外周面には内孔21を、外管3からノズル4へ通じる面には外孔31を、ノズル4には逆洗用流体をフィルタ内筒面51に向って吹き出すようにエジェクター41をそれぞれ形成し、外管3を内管2に対して回転軸線Cを中心にして回転するように上部軸受62と下部軸受63と駆動手段6を備えていることを特徴とするろ過装置。
【請求項2】
フィルタ内筒面51に向って逆洗用流体をスリット状に吹き出すように、外管3にフィルタ5の高さ相当の長さを有し、回転によりにフィルタ5に接触しないフィルタ内筒面51の近辺まで伸ばしたノズル4を形成し、吹き出す方向やスリット幅が調整できるエジェクタ−41を備えていることを特徴とする請求項1記載のろ過装置。
【請求項3】
逆洗用流体が流通する内管2の複数の内孔21の総開口面積が、外管3の複数の外孔31の総開口面積より大きく形成し、外管3の複数の外孔31の総開口面積が、エジェクター41のノズル孔43の総開口面積より大きく形成してあることを特徴とする請求項1又は2記載のろ過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−187578(P2012−187578A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−52304(P2012−52304)
【出願日】平成24年2月21日(2012.2.21)
【出願人】(511062391)
【Fターム(参考)】