説明

わら用コンディショナ及び自脱式コンバイン。

【課題】牧草用の収集機械などを利用して稲わらを効率的に収集するために、稲わらを傷つけて折り目をつけることができるとともに、稲わらの飛散を防止して堆積させやすい稲わら用コンディショナ、及びこの稲わら用コンディショナを備えた自脱式コンバインを提供する。
【解決手段】稲わらに折り目をつけるためのわら用コンディショナ11であって、稲わらが叩き付けられるコンディショニングアーム3と、このコンディショニングアーム3に稲わらを叩き付けるための、同一の軸線を中心にして同一方向に回転する一対のスターホイル2R,2Lと、を備え、前記コンディショニングアーム3が、前記一対のスターホイル2R,2Lの間の空間を貫通するように配設されている、稲わら用コンディショナ11等とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、わらに折り目をつけるためのわら用コンディショナに関する。また、このわら用コンディショナを備えた自脱式コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、稲わらは年間929万tもの量が国内で生産されており、これをバイオエネルギー原料や、飼料として利用することが注目されている。しかし、稲わらの約78%が「焼却・その他」として処理されているという現実がある。これは、コンバインの普及により細かく裁断されて圃場に落とされる稲わらの割合が増えて収集が困難になってきたことや、農家の高齢化により稲わらを収集する人手の確保が困難になってきたことなどが原因として挙げられる。
【0003】
この課題を解決するために、例えば、稲わらを結束して放出する装置があるが、結束した稲わらの回収は、やはり人手に頼らざるを得ない。また、細かく裁断された稲わらを袋詰めする方法が検討されたこともあるが、袋への充填効率や充填した袋の回収などの問題があり、普及していない。
【0004】
一方、牧草用の収集機械を利用して稲わらを収集することが考えられる。しかし、細かく裁断されてしまった稲わらは収集が困難であり、また、稲わらが真っ直ぐなままであると、圃場との接触面積が増えるなどして効率的な収集ができなかった。さらに、わらが裁断されていない場合であっても、広範囲に飛散していると効率的な収集ができなかった。
【0005】
【特許文献1】特開昭58−134908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、牧草用の収集機械などを利用してわらを効率的に収集するために、わらを傷つけて折り目をつけることができるとともに、わらの飛散を防止して堆積させやすい、わら用コンディショナ、及びこのわら用コンディショナを備えた自脱式コンバインを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、わらに折り目をつけるためのわら用コンディショナであって、
わらが叩き付けられるコンディショニングアームと、コンディショニングアームにわらを叩き付けるための、同一の軸線を中心にして同一方向に回転する一対のスターホイルと、を備え、コンディショニングアームが、一対のスターホイルの間の空間を貫通するように配設されている、わら用コンディショナ、とした。
【0008】
このわら用コンディショナは、回転する一対のスターホイルがコンディショニングアームにわらを叩き付けるため、これによって、わらを傷つけて折り目をつけることができる。
また、コンディショニングアームが、一対のスターホイルの間の空間を貫通するように配設されているため、わらを傷つけて折り目をつけた後、一対のスターホイルの回転に伴って、大きくわらを折り曲げることができるとともに、折り曲げられたわらの飛散が防止されて、わらを堆積させやすい。わらは、牧草よりも柔らかいため、大きく折り曲げやすく、これによって、わらに確実に折り目をつけることができる。
わらは、一対のスターホイルそれぞれの谷部に抱え込まれて架設状態で支持され、スターホイルの回転に伴って、コンディショニングアームに叩き付けられるのである。
【0009】
コンディショニングアームが、一対のスターホイルの軸線を向く側に突起を有している、わら用コンディショナ、とすることができる。
【0010】
これによって、わらが突起に引っ掛かるなどして、わらに折り目をつけやすくなる。わらは、コンディショニングアームにおける一対のスターホイルの軸線を向く側に直接叩き付けられる。
【0011】
このとき、突起が、一対のスターホイルの間の空間に位置している、わら用コンディショナ、とすることが好ましい。
【0012】
これによって、わらが突起に引っ掛かりやすくなり、一層、わらに折り目をつけやすくなる。
【0013】
一対のスターホイルの両外側に、補助コンディショニングアームをそれぞれ備えた、わら用コンディショナ、とすることもできる。
【0014】
これによって、わらの両端部が補助コンディショニングアームに叩き付けられることになり、わらに多くの折り目をつけやすくなる。補助コンデイショニングアームは、コンデイショニングアームとほぼ平行に配設することが好ましい。
【0015】
一対のスターホイルが、周方向に均等に割り振って配置された2〜15個の羽部を有する、わら用コンディショナ、とすることもできる。
【0016】
これによって、スターホイルにおける羽部と羽部の間の谷部が大きくなり、一対のスターホイルの谷部にわらを抱え込みやすくなるため、わらをコンディショニングアームに安定的に叩き付けることができ、わらに折り目をつけやすくなる。
【0017】
コンディショニングアームの後端部から下方に伸びて、折り目をつけられたわらが後方に飛び散るのを防止する散乱防止手段を備えた、わら用コンディショナ、とすることもできる。
【0018】
これによって、より、わらの飛散を防止して堆積させやすくなるため、わらの回収作業をしやすくなる。
【0019】
散乱防止手段の下方に集草板を備えた、わら用コンディショナ、とすることもできる。
【0020】
これによって、わらを厚く堆積させやすくなるため、一層、わらの回収作業をしやすくなる。
【0021】
一対のスターホイルを回転させるための動力装置を備えた、わら用コンディショナ、とすることもできる。
【0022】
上記いずれか記載のわら用コンディショナを備え、排わらに折り目をつけて排出する、自脱式コンバイン、とすることもできる。
具体的には、稲を刈り取る刈り取り部と、刈り取った稲を脱穀する脱穀部と、脱穀済みの排わらを搬送する排わら搬送部と、排わら搬送部によって搬送された排わらを処理する排わら処理部とを備え、排わら処理部を上記いずれか記載のわら用コンディショナで構成し、排わらに折り目をつけて排出するようにした、自脱式コンバインとするのである。
【0023】
これによって、収穫から、わらのコンディショニング(折り目つけ)まで、一連の工程で可能になる。このとき、自脱式コンバインの駆動源と一対のスターホイルとを連動させる連動機構を設けて、一対のスターホイルを回転させるための動力を自脱式コンバインから得るようにすることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によって、わらを傷つけて折り目をつけることができるとともに、わらの飛散を防止して堆積させやすい、わら用コンディショナ、及びこのわら用コンディショナを備えた自脱式コンバインを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明する。図1〜図9は、わら用コンディショナを説明するための図であり、図10は自脱式コンバインの側面図である。
まず、図1〜図9を用いて、本発明のわら用コンディショナを例示説明する。
【0026】
図1は、わら用コンディショナを左側後方から見た斜視図であり、図2は同左側面図、図3は同正面図である。また、図4は、図3のA-A’線に沿う断面を矢印方向から見た断面図であり、図5は、わら用コンディショナを使用している様子を示す図である。また、図6は別例のわら用コンディショナを左側後方から見た斜視図である。なお、図1及び図6において、わら用コンディショナにわらを投入するためのコンベアを二点鎖線で示してある。
一方、図7はコンデイショニングアームにおける突起の有無と、わらの損傷割合との関係を示すグラフであり、図8はスターホイルを示す写真、図9はスターホイルの羽部の数と、わらの損傷割合との関係を示すグラフである。
【0027】
本実施形態のわら用コンディショナ11は、図1等に示すように、一対のスターホイル2R,2Lと、コンデイショニングアーム3とを備え、さらに、二つの補助コンデイショニングアーム4R,4Lと、散乱防止手段としてのストップアーム5と、動力装置としての電動モータ7も備えている。
【0028】
[スターホイル]
スターホイル2R,2Lは、後述するコンデイショニングアーム3と補助コンデイショニングアーム4R,4Lに、わらを叩き付けるものであり、左右一対で構成されている。本例では、一対のスターホイル2R,2Lは、回転軸20を共用しており、これによって同一方向に同一速度で回転することになる。
【0029】
一対のスターホイル2R,2Lは、両者同じ形状および大きさであり、羽部21及び谷部22の向きが同じになるように両者を対応させた状態で、機体8に軸支された回転軸20に固着されている。本実施形態では、一対のスターホイル2R,2Lは、それぞれ周方向に均等に割り振った5個の羽部21を有するものである。
【0030】
スターホイル2R,2Lは、2×n個のスターホイルの羽部を間引いてn個の羽部にすることで得られうる、隣り合う羽部の間隔が広い形状のものとすることが好ましい。これによって、わらに折り目をつけやすくなる。
また、スターホイル2R,2Lの羽部の数は特に制限されないが、2〜15個であることが好ましい。羽部の数が2個以上であると、多くのわらを処理できる。一方、羽部の数が15個以下であると、わらに傷をつけやすくなり、また、わらがスターホイルや軸に絡まりにくくなる。スターホイル2R,2Lの羽部の数は、より好ましくは2〜10個であり、最も好ましくは2〜6個である。
【0031】
わらは、一対のスターホイル2R,2Lそれぞれの谷部22に抱え込まれて架設状態で支持され、電動モータ(後述)などによるスターホイル2R,2Lの回転に伴って、コンディショニングアーム(後述)に叩き付けられる。一対のスターホイル2R,2Lは、わらをすくい上げるような方向に回転して、コンディショニングアームにわらを叩き付ける。
【0032】
一対のスターホイル2R,2Lの間隔は、それぞれの谷部22に、わらを架設状態で支持できる範囲であれば特に制限されない。
当然のことながら、コンディショニングされるわらの長さよりも広い間隔にすることは避けるべきである。また、わらを架設状態で支持できる間隔であっても、広すぎる場合には、わらに折り目をつけにくくなる。この点を考慮すると、一対のスターホイル2R,2Lの間隔は、500mm以下であることが好ましい。
【0033】
[コンデイショニングアーム]
コンディショニングアーム3は、前述した一対のスターホイル2R,2Lによってわらが叩き付けられる対象であり、一対のスターホイル2R,2Lの間で、回転軸20の上を通り、わらの搬送方向に延びるように配設された棒状体である。また、コンディショニングアーム3は、一対のスターホイル2R,2Lの回転軸20と垂直な方向に延びるように配設されている。
【0034】
本例では、コンデイショニングアーム3は、本体プレート31の背面側に補強桟35を備えた縦断面逆T字状であり、わらを受け入れる側である先端側を上方に向けてカールさせてある。そして、コンデイショニングアーム3は、スターホイル2R,2Lの回転軸20の方を向いた正面側となる平面部が、わらが叩き付けられる被叩面310(図4参照)になっている。この被叩面310には、長さ方向のほぼ中央部に、下方に向けて突出した三角形状の突起32が取り付けられている。
【0035】
一方、図1に示すように、コンデイショニングアーム3の後端には、散乱防止手段としてのストップアーム5が下方に伸びるように取り付けられている。このストップアーム5は、機体8の後部からはみ出すように設けられた、コの字型で上下二段の取付枠81に固定されている。この状態で、図3及び図4に示すように、コンディショニングアーム3は、一対のスターホイル2R,2Lの間の空間を貫通している。詳しくは、コンディショニングアーム3は、その被叩面310が、一対のスターホイル2R,2Lの間の空間を貫通している。一対のスターホイル2R,2Lの間の空間とは、一対のスターホイル2R,2Lが回転した際における、それぞれの円状軌跡を左右の面とした円柱状空間領域のことを指す。本実施例では、図4に示すように、被叩面310が、スターホイル2R,2Lの谷部22の底よりも若干内周側に位置している。
また、被叩面310の突起32も、一対のスターホイル2R,2Lの間の空間に位置している。さらに、被叩面310の突起32は、その先端が、スターホイル2R,2Lの谷部22の底よりも内周側に位置しており、これによって、わらが突起32に引っ掛かりやすくなるため、より一層、わらに折り目をつけやすくなっている。
【0036】
[補助コンデイショニングアーム]
補助コンディショニングアーム4R,4Lも、図1等に示すように、コンデイショニングアーム3同様、一対のスターホイル2R,2Lによってわらが叩き付けられる対象の棒状体である。しかし、一対のスターホイル2R,2Lの左右両外側にそれぞれ配設されている点でコンデイショニングアーム3とは大きく異なる。
【0037】
本例では、補助コンデイショニングアーム4R,4Lは、スターホイル2R,2Lの回転軸の方を向いた正面側となる平面部に、被叩桟43R,43Lを備えた縦断面T字状であり、コンデイショニングアーム3同様、わらを受け入れる側である先端側を上方に向けてカールさせてある。そして、補助コンディショニングアーム4R,4Lは、コンデイショニングアーム3とほぼ平行に配設されている。補助コンディショニングアーム4R,4Lは、被叩桟43R,43Lの側縁部430(図2参照)に、わらが叩き付けられる。
【0038】
一方、補助コンディショニングアーム4R,4Lの後端にも、コンデイショニングアーム3同様、補助ストップアーム5R,5Lが下方に伸びるように取り付けられている。この補助ストップアーム5R,5Lは、機体8の後部からはみ出すように設けられた、コの字型で上下二段の取付枠81に固定されている。この状態で、図1及び図2に示すように、補助コンディショニングアーム4R,4Lは、一対のスターホイル2R,2Lの左右両外側にそれぞれ配設されており、一対のスターホイル2R,2Lの左右両側方に位置する空間をそれぞれ貫通して、わらに折り目をつけやすくなっている。詳しくは、被叩桟43R,43Lの側縁部430が、スターホイル2R,2Lの左右両側方に位置する空間をそれぞれ貫通している。
【0039】
[動力装置]
動力装置である電動モータ7は、一対のスターホイル2R,2Lを回転運動させるものであり、機体8の下部に設置されている。電動モータ7の回転軸には駆動プーリ71が固着され、巻掛けベルト72によって、一対のスターホイル2R,2Lの回転軸20に固着された従動プーリ25に電動モータ7の出力が伝達されて、一対のスターホイル2R,2Lが回転するように構成されている。なお、電動モータ7などの動力装置を設けることなく、外部からの動力を回転軸に伝達する機構を設けてもよい。
【0040】
[わら用コンディショナの使用方法]
上記構成のわら用コンディショナ11を使用して、わらSに折り目をつける手順を例示説明する。まず、電動モータ7の図示しないスイッチを入れて、一対のスターホイル2R,2Lを回転させる。
次に、図5に示すように、わら用コンディショナ11に、コンベアC等の搬送手段でわらSを投入する。このとき、一対のスターホイル2R,2Lの軸線としての回転軸20の方向と平行にわらSが投入されるようにしてある。即ち、コンベアCの搬送方向が一対のスターホイル2R,2Lの回転軸20の方向と垂直になるようにコンベアCを設置し、このコンベアCの搬送方向と垂直になるようにわらSを並べて、一対のスターホイル2R,2Lの回転軸20の方向と、わらSの長手方向とが、ほぼ平行になるようにしてある。また、このとき、コンデイショニングアーム3の下側近傍で、かつ、回転する一対のスターホイル2R,2Lに出来るだけ近い位置から、わらSを投入することが好ましい。
わらSを投入すると、回転する一対のスターホイル2R,2Lにおける谷部22にわらが移動して抱き込まれたようになり、わらSの左右が支持されて架設状態になる。一対のスターホイル2R,2LがわらSをすくい上げる方向に回転しているため、この回転に伴い、わらSが、中央のコンデイショニングアーム3と左右の補助コンディショニングアーム4R,4Lに叩き付けられて傷つき、折れ曲がる。
折れ曲がったわらSは、一対のスターホイルの回転に伴って大きく折り曲げられた後、コンデイショニングアーム3及び左右の補助コンディショニングアーム4R,4L、並びにストップアーム5及び補助ストップアーム5R,5Lに遮られて、散乱することなく下方に落下して堆積するのである。
【0041】
ここで、図6に示す、別例のわら用コンディショナ12のように、散乱防止手段としてのストップアーム5の下方、ストップアーム5から落下するわらを受け止めることができる位置に、集草手段としての集草板6を設けてもよい。本実施例では、集草板6を、ストップアーム5の下方に斜めに設けてある。
また、集草板6は下方に向けて絞られた形状、即ち、出口幅が入口幅より狭くなった形状をしており、これによって、折れ曲がったわらSを、厚く堆積させやすくなる。集草板6は、例えば、落下するわらの量にあわせた出口幅のものを使用することができる。折れ曲がったわらは、ストップアーム5等に遮られて散乱することなく集草板6の上に落下し、出口側で厚く堆積されるのである。
なお、集草板6の代わりに、例えば集草ホッパを設けてもよい。
【0042】
[実験1:コンディショニングアームにおける突起の有無に関して]
上記わら用コンディショナ11、12はコンディショニングアーム3に突起32を有しており、その有効性について試験を行った。
わら用コンディショナは、上記わら用コンディショナ11をベースとし、最外周直径が335mmで5個の羽部を有するスターホイルを用い、一対のスターホイルの間隔は120mmに設定した。また、三角形状で高さが約15mmの突起をコンディショニングアームに設けたものと、設けていないものとを準備し、両者を比較した。また、スターホイルの回転数を116〜460rpmで変化させ、それぞれの条件で試験を行った。
稲わらは、“おまちかね”のものを使用した。平均含水率は23.6%、平均桿長は、80.2cmであった。
そして、稲わらをコンベアの上に30cm幅で200g並べたのち、コンベアを0.56cm/sの速度で動作させ、稲わらをわら用コンディショナまで搬送した。コンディショニングアームに叩き付けられ堆積した稲わらから無作為に10本抽出し、与えられた傷の数(折り目の数)を目視確認した。それぞれの回転数において、与えられた傷の数(1〜3箇所)の占める割合を求め、これを損傷割合とした。
【0043】
実験結果を図7に示す。突起を有するコンディショニングアームを用いた方が、そうでないものと比べて、低回転数から高回転数まで安定して多くの傷(折り目)をつけることができていることがわかる。
【0044】
[実験2:スターホイルの羽部の数に関して]
次に、スターホイル2R,2Lの羽部の数と、わらについた傷の数との関係に関して試験を行った。図8に示すような、10個の羽部を有するスターホイルと5個の羽部を有するスターホイルとを準備し、それぞれ比較試験を行った。5個の羽部を有するスターホイルは、10個の羽部を有するスターホイルの羽部を間引いて、5個の羽部にしたものであり隣り合う羽部の間隔が広いものである。なお、それ以外の条件は、上記突起の有無に関する試験と同一条件であり、また、突起32を有しているものを用いた。
【0045】
実験結果を図9に示す。5個の羽部を有するスターホイルを用いた方が、10個の羽部を有するものと比較して、全体的に多くの傷(折り目)を稲わらにつけていることがわかる。また、図示していないが、5個の羽部を有するスターホイルを用いた方が、10個の羽部のものと比較して、スターホイルや軸に絡まる稲わらが少なかった。
【0046】
最後に、図10を用いて、本発明のわら用コンディショナを備えた、自脱式コンバインを説明する。
【0047】
自脱式コンバイン9は、通常、稲を刈り取る刈り取り部91と、刈り取った稲を搬送する稲搬送部(92)と、稲搬送部によって搬送された稲を脱穀する脱穀部93と、脱穀済みの排わらを搬送する排わら搬送部(92)と、排わら搬送部によって搬送された排わらを処理する排わら処理部94とで構成されている。稲搬送部と排わら搬送部は、図10に示すように、一本の長いコンベアを用いた搬送部92として共通化されていることが多い。
【0048】
そして、一般的に、排わら処理部94では、カッターによって排わらを裁断したり、ドロッパーによって一定間隔毎に排わらを落下させたりしている。本発明の自脱式コンバインは、この排わら処理部94に、前記本発明のわら用コンディショナを用いたものである。具体的には、例えば、排わら搬送部(搬送部92)から排出される排わらに対して一対のスターホイルの軸線(回転軸)の方向が平行になるように、また、わらを、コンデイショニングアームの下側近傍で、かつ回転する一対のスターホイルに出来るだけ近い位置から投入することができるように、前記本発明のわら用コンディショナを自脱式コンバイン9に取り付けるのである。
【0049】
このとき、わら用コンディショナ自体に動力装置を取り付けてもよいが、自脱式コンバイン9の駆動源と一対のスターホイルとを連動させる連動機構を設けて、一対のスターホイルを回転させるための動力をコンバインから得るようにすることが好ましい。
【0050】
以上、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、当該技術分野における熟練者等により、本出願の願書に添付された特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変更及び修正が可能である。
【0051】
例えば、上記実施形態では、一対のスターホイルは同一の回転軸に固着されていたが、これに限定されず、各々異なる回転軸に固着してもよい。このとき、一対のスターホイルが同一の軸線を中心にして回転するように、それぞれの回転軸を同一の直線上(軸線上)に設ける。また、一対のスターホイルが、同一方向かつ同一速度で回転するように構成する。
【0052】
また、上記実施形態では、補助コンデイショニングアームを、正面側に被叩桟を備えた縦断面T字状としたがこれに限定されず、コンデイショニングアームと同様、背面側に補強桟を備えた縦断面逆T字状にしてもよい。このとき、その正面側には、コンデイショニングアームと同様、長さ方向のほぼ中央部に、下方に向けて突出した三角形状の突起を設けてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、散乱防止手段として棒状のストップアームを使用したがこれに限定されず、コンディショニングアームの後端部から下方に伸びる板状のストッププレートを使用してもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、二つのスターホイルを用いたがこれに限定されず、二つ以上のスターホイルを用いてもよい。この場合、コンデイショニングアームは、スターホイルの数に応じた個数取り付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】わら用コンディショナを左側後方から見た斜視図である。
【図2】図1のわら用コンディショナの左側面図である。
【図3】図1のわら用コンディショナの正面図である。
【図4】図3のA-A’線に沿う断面を矢印方向から見た断面図である。
【図5】図1のわら用コンディショナを使用している様子を示す図である。
【図6】別例のわら用コンディショナを左側後方から見た斜視図である。
【図7】コンデイショニングアームにおける突起の有無と、わらの損傷割合との関係を示すグラフである。
【図8】スターホイルを示す写真である。
【図9】スターホイルの羽部の数と、わらの損傷割合との関係を示すグラフである。
【図10】自脱式コンバインの側面図である。
【符号の説明】
【0056】
11,12 わら用コンディショナ

2R,2L スターホイル
20 回転軸(軸線)
21 羽部
22 谷部

3 コンディショニングアーム
32 突起

4R,4L 補助コンディショニングアーム
5 ストップアーム(散乱防止手段)
5R,5L 補助ストップアーム
6 集草板
7 電動モータ(動力装置)
8 機体

9 自脱式コンバイン
S わら
C コンベア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
わらに折り目をつけるためのわら用コンディショナであって、
わらが叩き付けられるコンディショニングアームと、
このコンディショニングアームにわらを叩き付けるための、同一の軸線を中心にして同一方向に回転する一対のスターホイルと、
を備え、
前記コンディショニングアームが、
前記一対のスターホイルの間の空間を貫通するように配設されている、
わら用コンディショナ。
【請求項2】
コンディショニングアームが、
一対のスターホイルの軸線を向く側に突起を有している、
請求項1記載のわら用コンディショナ。
【請求項3】
突起が、
一対のスターホイルの間の空間に位置している、
請求項2記載のわら用コンディショナ。
【請求項4】
一対のスターホイルの両外側に、
補助コンディショニングアームをそれぞれ備えた、
請求項1〜3いずれか記載のわら用コンディショナ。
【請求項5】
一対のスターホイルが、
周方向に均等に割り振って配置された2〜15個の羽部を有する、
請求項1〜4いずれか記載のわら用コンディショナ。
【請求項6】
コンディショニングアームの後端部から下方に伸びて、
折り目をつけられたわらが後方に飛び散るのを防止する散乱防止手段を備えた、
請求項1〜5いずれか記載のわら用コンディショナ。
【請求項7】
散乱防止手段の下方に集草板を備えた、
請求項6記載のわら用コンディショナ。
【請求項8】
一対のスターホイルを回転させるための動力装置を備えた、
請求項1〜7いずれか記載のわら用コンディショナ。
【請求項9】
請求項1〜8いずれか記載のわら用コンディショナを備え、排わらに折り目をつけて排出する、自脱式コンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−213378(P2009−213378A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58514(P2008−58514)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(504150461)国立大学法人鳥取大学 (271)
【Fターム(参考)】