説明

アイスリンクの冷却配管装置

【課題】部材の製造や配送・搬入、あるいは施工が容易で、且つアイスリンクの均一な冷却が可能なアイスリンクの冷却配管装置を提供する。
【解決手段】アイスリンクの底部に配設され、該アイスリンクを冷却するアイスリンクの冷却配管装置において、内部に冷ブラインが通流する複数の冷却管部と、複数の冷却管部の上部にそれぞれ設けられ、該冷却管部の長さに対応して長尺に形成されている複数の伝熱用平板部と、各々の冷却管部の端部に設けられ、隣接する冷却管部同士を連結する冷却管連結手段と、各々の伝熱用平板部の幅方向端部に設けられ、隣接する伝熱用平板部同士を連結する平板連結手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広い面積の被冷却エリアを擁するアイスリンクの冷却に用いられるアイスリンクの冷却配管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、アイススケートなどに利用されるアイスリンクには、特許文献1(特開平09−303920号公報)等に開示されるように、アイスリンクの基盤となる床部に複数の冷却管を敷設し、この冷却管にブラインクーラ等の冷凍装置で冷却したブラインを循環させてアイスリンク内を冷却し、製氷又は氷温調整を行うようになっている。
【0003】
アイスリンクは広い面積の被冷却エリアを擁するため、アイスリンクの氷結状態を維持するには多数の冷却管を互いに近接して配置し、冷凍装置を常時駆動させ冷却管にブラインを循環させる必要があった。
例えば、特許文献2(特開平05−309256号公報)には、可撓性樹脂チューブからなる、一対の冷媒送給配管と冷媒戻し配管とを有する冷却配管装置の構成が開示されている。この装置は、冷媒送給配管の断面積を冷媒戻し配管の断面積より小さくし、冷媒送給配管の表面積を大きくすることで、冷却性能を向上させるようにしている。
【0004】
また、特許文献3(特開昭62−19668号公報)には、隣り合う冷却管同士の間に、内部に蓄冷剤が収容された保冷具なるパイプを配設して、蓄冷剤の潜熱を利用して氷結状態を維持するようにした構成が開示されている。これにより冷却管本数を低減でき、且つ冷却媒体の循環に伴う冷凍機の運転等のランニングコストを低減させることが可能となる。
一般的にアイスリンクに配設される冷却管は、冷却管本数が多くなるなどの点からアイスリンクの幅方向に配設せずにアイスリンクの長さ方向に沿って100mm間隔で配設されることが多いが、上記した特許文献3のように隣り合う冷却管同士の間に蓄冷剤を使用する場合は、冷却管の間隔を100mm間隔以上にすることも可能である。
【0005】
一方、管内を通流する冷媒により被冷却対象を冷却する装置として、特許文献4(実開昭56−85180号公報)に熱交換用管棚が開示されている。この管棚は、アルミ押出し型材により管と棚板が一体に形成されており、これにより棚板上に置かれた被冷却物を効率的に冷却可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09−303920号公報
【特許文献2】特開平05−309256号公報
【特許文献3】特開昭62−19668号公報
【特許文献4】実開昭56−85180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように、アイスリンクの冷却においては、リンク面を平坦に保持するために均一な冷却が求められるが、特許文献1等に開示される従来の冷却配管構造では、十分に均一な冷却を行なえるとは言い難かった。ここで、特許文献2に開示されるような冷却配管の構成とすることで冷却性能を向上させることは可能であるが、冷却配管同士の間に隙間が存在することで、やはり均一な冷却は困難であった。
また、特許文献3に開示される冷却設備は、アイスリンクを氷結させた後で氷結状態を維持する場合に蓄冷剤の潜熱を利用して冷凍機の運転を長時間停止でき経済性を向上させているが、最初に氷結する場合に冷却管の周囲と蓄冷剤の周囲で潜熱の相違から氷の形成が不均一となるという問題があった。さらに、冷却管の間に蓄冷剤が収容された保冷具なるパイプを配設する必要があるため、冷却管の配設にはコストの増大が見込まれる。
【0008】
特許文献4に開示される管棚は、アルミ押出し型材により管と棚板が一体に形成されているので、棚板を介して冷熱が被冷却物に効率的に伝わるが、アイスリンクのような広い面積の被冷却エリアを擁する場合には、各部材が大型化し、製造や配送・搬入、あるいは施工が極めて困難となるため適していなかった。
本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、部材の製造や配送・搬入、あるいは施工が容易で、且つアイスリンクの均一な冷却が可能なアイスリンクの冷却配管装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明に係るアイスリンクの冷却配管装置は、アイスリンクの底部に配設され、該アイスリンクを冷却するアイスリンクの冷却配管装置において、内部に冷ブラインが通流する複数の冷却管部と、前記複数の冷却管部の上部にそれぞれ設けられ、該冷却管部の長さに対応して長尺に形成されている複数の伝熱用平板部と、各々の前記冷却管部の端部に設けられ、隣接する前記冷却管部同士を連結する冷却管連結手段と、各々の前記伝熱用平板部の幅方向端部に設けられ、隣接する前記伝熱用平板部同士を連結する平板連結手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
このアイスリンクの冷却配管装置では、冷ブラインが通流する冷却管部と板状の伝熱用平板部とを一体化し、これを冷却管連結手段及び平板連結手段で複数連結する構成としている。これにより、広い面積のアイスリンクに設置する場合であっても、各部材を小型化でき、部材の製造や配送・搬入が容易となる。また、施工においては、冷却管部と伝熱用平板部とが一体化された配管ユニットを冷却管連結手段及び平板連結手段で連結して組み立てるのみであるため、簡単に施工可能である。さらにまた、冷却管部に不具合が生じた際に、配管ユニット単位で部分的に交換することも可能となる。なお、冷却管部と伝熱用平板部とは、製造時に一体成形されていてもよいし、別部材で製造してこれらを溶接したり固定部材により固定して一体化するようにしてもよい。
【0011】
また、このアイスリンクの冷却配管装置では、冷却管部の上部に伝熱用平板部が設けられているので、冷却管部を通流する冷ブラインの冷熱が伝熱用平板部を介してアイスリンクに伝わり、アイスリンクを略均一に冷却することが可能となる。さらに、伝熱用平板部により平面状になだらかな温度分布としてアイスリンクを略均一に冷却できるため、アイスリンクの氷層厚さを均一にすることができる。
【0012】
上記のアイスリンクの冷却配管装置において、前記伝熱用平板部は、上面に微小な表面凹凸を有していることが好ましい。
このように、伝熱用平板部の上面が微小な表面凹凸を有しているので、この凹凸の溝の中にも氷が形成され、氷と伝熱用平板部とを剥離しにくくすることができる。
【0013】
上記のアイスリンクの冷却配管装置において、前記伝熱用平板部は、上面に微小な表面凹凸を有し、その凹凸表面は、伝熱用平板部の幅方向に波状に形成されていることが好ましい。
このように、伝熱用平板部の上面が微小な表面凹凸を有しているので、この凹凸の溝の中にも氷が形成され、氷と伝熱用平板部とを剥離しにくくすることができる。
また、凹凸表面は、伝熱用平板部の幅方向に波状に形成されているので、凹凸の加工が容易となる。
【0014】
上記のアイスリンクの冷却配管装置において、前記冷却管連結手段は、外径が前記冷却管部の内径と一致する接続管と、前記接続管が挿入された状態で前記隣接する冷却管部同士の連結部分を溶接した溶接部とを含むことが好ましい。
このように、冷却管部同士の連結部分に接続管を挿入し、連結部分を溶接することにより、冷却管部の内部を通流する冷ブラインが漏出することを確実に防止できる。
【0015】
上記のアイスリンクの冷却配管装置において、前記平板連結手段は、前記伝熱用平板部の一側の端部に設けられ、該伝熱用平板部から下方に突出した突出部と、前記伝熱用平板部の他側の端部に設けられ、前記突出部に係合する係合部とを含むことが好ましい。
このように、隣接する伝熱用平板部同士を、突出部と係合部とで連結する構成とすることで、冷却管部と伝熱用平板部とが一体化された配管ユニットを幅方向に簡単に連結することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上記載のように本発明によれば、冷ブラインが通流する冷却管部と伝熱用平板部とを一体化し、これを冷却管連結手段及び平板連結手段で複数連結する構成としている。これにより、広い面積のアイスリンクに設置する場合であっても、各部材を小型化でき、部材の製造や配送・搬入が容易となる。また、施工においては、冷却管部と伝熱用平板部とが一体化された配管ユニットを冷却管連結手段及び平板連結手段で連結して組み立てるのみであるため、簡単に施工可能である。さらにまた、冷却管部に不具合が生じた際に、配管ユニット単位で部分的に交換することも可能となる。
【0017】
また、このアイスリンクの冷却配管装置では、冷却管部の上部に伝熱用平板部が設けられているので、冷却管部を通流する冷ブラインの冷熱が伝熱用平板部を介してアイスリンクに伝わり、アイスリンクを略均一に冷却することが可能となる。さらに、伝熱用平板部により平面状になだらかな温度分布としてアイスリンクを略均一に冷却できるため、アイスリンクの氷層厚さを均一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る冷却配管装置を含むアイスリンク設備の全体構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る冷却配管装置の具体的構成を示す斜視図である。
【図3】(A)は図2のA−A断面図で、(B)は図2のB−B断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る冷却配管装置における配管ユニットを示す平面図である。
【図5】(A)は図4のC−C断面図で、(B)は平板連結手段の連結状態を示す図である。
【図6】本発明の実施形態における冷却管連結手段を示す断面図である。
【図7】本発明の実施形態における凹凸表面の構成例を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る冷却配管装置の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0020】
まず最初に、本実施形態に係る冷却配管装置が適用されるアイスリンク設備について説明する。
アイスリンク設備100は、アイスリンクの底部に配設され、該アイスリンクを冷却する冷却配管装置1と、CO循環回路51およびアンモニア冷凍サイクルを含む冷凍装置5とを備える。
なお、本実施形態に適用できるアイスリンクは、スケートリンク、カーリング用リンク、アイスホッケー用リンク等のアイスリンク全般である。
【0021】
冷却配管装置1は、アイスリンクの底部(床部)に複数配設された冷却管を有し、該冷却管内を通流するCOブライン液の蒸発潜熱を利用してアイスリンクを冷却し、アイスリンクの水を氷結させて氷を形成したり、氷結した氷の温度調整を行う。本実施形態における冷却管は、複数の冷却管部11が連結されて構成されるが、この冷却管部11を含む冷却配管装置1の具体的な構成は後述する。
【0022】
冷凍装置5は、前記冷却管に接続され、COブラインが循環するCO循環回路51と、主冷凍機52を含み、アンモニア冷媒が循環するアンモニア冷凍サイクルと、COブラインとアンモニア冷媒とを熱交換し、アンモニア冷媒によりCOブラインを冷却して再液化するカスケードコンデンサ56とを有する。
【0023】
CO循環回路51は、CO受液器57から冷却管にCOブライン液を送るCO送りライン51Aと、冷却管から排出されるCOブラインの気液混合体をCO受液器57に戻すCO戻りライン51Bとから構成される。さらに、CO送りライン51A上には、COブライン液を圧送するCO液ポンプが設けられている。
【0024】
CO受液器57の下部にはCO循環回路3のCO送りライン51Aが接続され、該CO送りライン51Aを介してCO受液器57からCOブライン液が冷却管に給送される。冷却管を通り一部ガス化され気液混合体となったCOブラインは、CO受液器57の上部に接続されたCO戻りライン51Bを介してCO受液器57に戻る。
また、CO受液器57の上部には再液化ライン58が接続され、CO受液器57からCOブラインガスが再液化ライン58を通って再液化され、COブライン液はCO受液器57に戻る。
再液化ライン58は、CO受液器57からのCOブラインがカスケードコンデンサ56に導入され、カスケードコンデンサ56にてCOブラインがアンモニア冷媒により冷却された後CO受液器57に戻る。
【0025】
アンモニア冷凍サイクルは、カスケードコンデンサ56と、圧縮機である主冷凍機52と、凝縮器53と、アンモニア高圧受液器54と、膨張弁55とが順に配置された閉回路を形成して構成されている。
カスケードコンデンサ56でCOブラインの熱により蒸発したアンモニア冷媒ガスは主冷凍機52で圧縮され、高温高圧のアンモニア冷媒ガスは凝縮器53で冷却されて凝縮し、液化したアンモニア冷媒液はアンモニア高圧受液器54に貯留され、アンモニア高圧受液器54のアンモニア冷媒液は適宜膨張弁55に送られてここで膨張減圧され、低圧のアンモニア冷媒液はカスケードコンデンサ56に送られてCOブラインガスの冷却に用いられる。なお、凝縮器53には、密閉式冷却塔59で冷却された温ブラインがポンプにより循環するようになっている。
【0026】
上記した構成を備えるアイスリンク設備100の作用を説明する。
アイスリンクの製氷時、アンモニア冷凍サイクルにおいては、カスケードコンデンサ56でCOブラインと熱交換して蒸発したアンモニア冷媒ガスは主冷凍機52で圧縮される。そして高温高圧のアンモニア冷媒ガスは凝縮器53で冷却されて凝縮する。凝縮により液化したアンモニア冷媒液はアンモニア高圧受液器54を介して膨張弁55に送られ、膨張弁55で膨張して低圧のアンモニア冷媒液となる。この低圧のアンモニア冷媒液はカスケードコンデンサ56に送られてCOブラインガスの冷却に用いられる。
【0027】
カスケードコンデンサ56でアンモニア冷媒により冷却され再液化したCOブライン液は、CO受液器57に貯留される。CO受液器57の−8℃程度のCOブライン液は、CO液ポンプによりCO送りライン51Aを通ってアイスリンクに配設された冷却管に送られる。冷却管に送られたCOブライン液は、氷を冷却して、ほぼ−8℃程度の温度の一部に気体を含む液、すなわちCOブラインの気液混合体としてCO戻りライン51Bを通ってCO受液器57に戻る。
【0028】
次に、図2乃至図4を参照して、本実施形態に係る冷却配管装置1の具体的構成を説明する。ここで、図2は本発明の実施形態に係る冷却配管装置の具体的構成を示す斜視図で、図3(A)は図2のA−A断面図で、(B)は図2のB−B断面図で、図4は本発明の実施形態に係る冷却配管装置における配管ユニットを示す平面図である。
この冷却配管装置1は、主として、複数の冷却管部11と、これに対応した複数の伝熱用平板部12と、各々の冷却管部11の端部に設けられる冷却管連結手段14と、各々の伝熱用平板部12の幅方向端部に設けられる平板連結手段13とを備える。
【0029】
上記のCO送りライン51Aは送りヘッダ15に接続され、この送りヘッダ15から冷却管にCOブラインが供給される。一方、上記のCO戻りライン51Bは戻りヘッダ16に接続され、冷却管を通過したCOブラインはこの戻りヘッダ16を介してCO戻りライン51Bに戻される。
送りヘッダ15と戻りヘッダ16とには複数本の冷却管が接続され、各々の冷却管は、複数の冷却管部11(11a〜11d)が連結されて構成されている。
このうち、実質的にアイスリンクの冷却に用いられる部位には、直管で形成される冷却管部11bが配設される。
【0030】
伝熱用平板部12は、複数の冷却管部11bの上部にそれぞれ設けられ、冷却管部11bの長さに対応して長尺に形成されている。この伝熱用平板部12は、熱伝導率が高く且つ強度が高い材質で形成されており、例えば、銅、アルミ等の金属材料が用いられる。
冷却管部11bと伝熱用平板部12とは一体的に構成されている。ここで、一体化された冷却管部11b及び伝熱用平板部12を配管ユニットと呼ぶ。この配管ユニットは、製造時に押出し成形等により一体成形されていてもよいし、冷却管部11bと伝熱用平板部12とを別部材で製造して、これらを溶接したり固定部材により固定して一体化するようにしてもよい。好ましくは、冷却管部11bと伝熱用平板部12と平板連結手段13とを押出し成形により一体的に製造する。また、配管ユニットの表面は酸化処理されていてもよく、アルミ材料で形成する場合にはアルマイト処理を施すことが好適である。
【0031】
平板連結手段13は、伝熱用平板部12の幅方向端部に設けられ、隣接する伝熱用平板部12同士、すなわち配管ユニット同士を幅方向に連結する。また、平板連結手段13は、伝熱用平板部12と同様に熱伝導率が高く且つ強度が高い材質で形成されていることが好ましい。
この平板連結手段13の具体的構成例を図5に示す。ここで、図5(A)は図4のC−C断面図で、(B)は平板連結手段の連結状態を示す図である。
【0032】
図5(A)に示すように、平板連結手段13は、伝熱用平板部12の一側の端部に設けられ、該伝熱用平板部12から下方に突出した突出部13aと、伝熱用平板部12の他側の端部に設けられ、突出部13aに係合する係合部13bとを含む。そして、突出部13aを係合部13b内に挿入することにより、伝熱用平板部12同士を連結する。好ましくは、突出部13aを挿入した後に、図5(B)に示すように係合部13bを突出部13aに密着させるように変形させてもよく、これにより伝熱用平板部12の連結部を安定して固定することができる。また、挿入部13aに凹部13a1、13a2を設け、これに対応して、係合部13bに凸部13b1、13b2を設けてもよい。もちろん、凸部と凹部とを逆に配置してもよい。これにより、伝熱用平板部12の連結部が外れることを防止し、より安定して固定することが可能となる。
なお、平板連結手段13は上記構成に限定されるものではなく、伝熱用平板部12同士を溶接による連結する手段であったり、別体で構成される固定部材により連結する手段であってもよい。
【0033】
図2乃至図4に戻り、冷却管連結手段14は、冷却管部11bの端部に設けられ、隣接する冷却管部11b同士、すなわち配管ユニット同士を長手方向に連結する。
この冷却管連結手段14の具体的構成例を図6に示す。ここで、図6は本発明の実施形態における冷却管連結手段を示す断面図である。
図6に示すように、冷却管連結手段14は、外径が冷却管部11bの内径と一致する接続管141と、この接続管141が挿入された状態で、隣接する冷却管部11b同士の連結部分を溶接した溶接部142とを含む。なお、冷却管連結手段14は上記構成に限定されるものではなく、接続管141を用いずに、隣接する冷却管部11b同士を溶接する手段であったり、内径が冷却管部11bの外径と一致する接続管を用いて、この接続管の両端に冷却管部11bを挿入し、これらを溶接する手段であってもよい。
【0034】
なお、図4に示すように、冷却管連結手段14による冷却管部11同士の連結作業がしやすいように、冷却管連結部周囲の伝熱用平板部12に切欠部122を設けてもよい。
また、アイスリンクの端部に設けられる冷却管部11cは屈曲しており、隣り合う冷却管部11b同士を連結するようになっている。この屈曲した冷却管部11cと、配管ユニットを構成する冷却管部11bとは、上記と同様に、冷却管連結手段14により接続することができる。また、各ヘッダ15、16と冷却管部11bとを接続する冷却管11a、11dも同様に接続できる。
さらにまた、屈曲した冷却管部11cを設けずに、直管からなる冷却管部11bの両端に送りヘッダと戻りヘッダを一対ずつ設けるようにしてもよい。
【0035】
また、図5(A)に示すように、伝熱用平板部12は、上面に微小な表面凹凸を有して、粗い面を形成していることが好ましい。このように、伝熱用平板部12の上面が微小な表面凹凸を有することで、この凹凸の溝の中にも氷が形成され、氷と伝熱用平板部12とを剥離しにくくすることができる。
さらに好ましくは、伝熱用平板部12の凹凸表面121は、伝熱用平板部12の幅方向に波状となるように形成する。このように、凹凸表面121を、伝熱用平板部12の幅方向に波状に形成することで、凹凸の加工が容易となる。例えば、配管ユニットを押出し成形する場合、通常、材料を長手方向に押出していくが、このとき、型に凹凸を設けておくことで波状の凹凸表面121を形成することができる。
【0036】
図7に凹凸表面121の構成例を示す。
図7(A)は、凹凸表面121Aの断面が鋸刃状に形成されている。具体的に、凹凸表面121Aの凸部は角度を有して尖った形状となっており、凹部は凸部の反転形状を有している。このとき、凸部(または凹部)間のピッチPは、0.3cm以上1.0cm以下であることが好ましい。また、凹部底面から凸部頂点までの高さHは、0.3cm以上1.0cm以下であることが好ましい。例えば、伝熱用平板部12の肉厚dが1.5cmの場合、凸部間のピッチPは0.6cmとし、高さHは0.5cmとする。凹凸表面121Aの設計値を上記した範囲に設定することで、氷と伝熱用平板12との密着性を高く保つことが可能である。
【0037】
図7(B)は、凹凸表面121Bの断面が段差状に形成されている。具体的に、凹凸表面121Bの凸部は、上面が平坦で、側面が傾斜して下部に向けて広がる形状となっている。また、凹部は凸部の反転形状を有している。このとき、凸部の上面(または凹部の底面)の幅WB1は0.5cm以上1.5cm以下であることが好ましい。また、凸部の基部幅WB2は、1.5cm以上2.5cm以下であることが好ましい。ただし、幅WB1は幅WB2はより小さい。さらに、凹部底面から凸部頂点までの高さHは、0.3cm以上1.0cm以下であることが好ましい。例えば、伝熱用平板部12の肉厚dが1.5cmの場合、凸部の上面の幅WB1は1.0cmとし、凸部の基部幅WB2は2.0cmとし、高さHは0.5cmとする。凹凸表面121の設計値Bを上記した範囲に設定することで、氷と伝熱用平板12との密着性を高く保つことが可能である。
【0038】
図7(C)は、凹凸表面121Cの断面が、半円状に切り欠かれた形状となっている。具体的に、凹凸表面121Bの凸部は平坦で、凹部が半円状に切り欠かれた形状となっている。このとき、凸部の上面の幅Wは1.5cm以上2.5cm以下であることが好ましい。また、凹部の曲率半径Rは、0.4cm以上0.6cm以下であることが好ましい。例えば、伝熱用平板部12の肉厚dが1.5cmの場合、凸部の上面の幅Wは2.0cmとし、凹部の曲率半径Rは0.5cmとする。凹凸表面121Cの設計値を上記した範囲に設定することで、氷と伝熱用平板12との密着性を高く保つことが可能である。
【0039】
図7(D)は、凹凸表面121Dの断面において、凸部と凹部がそれぞれ曲率を有する波形状となっている。このとき、凸部間(凹部間)のピッチPは0.5cm以上1.5cm以下であることが好ましい。また、凸部及び凹部の曲率半径Rは、0.4cm以上0.6cm以下であることが好ましい。例えば、伝熱用平板部12の肉厚dが1.5cmの場合、凸部間のピッチPは2。0cmとし、凸部及び凹部の曲率半径Rは0.5cmとする。凹凸表面121Dの設計値を上記した範囲に設定することで、氷と伝熱用平板12との密着性を高く保つことが可能である。
【0040】
上述したように本実施形態によれば、冷ブラインが通流する冷却管部11と伝熱用平板部12とを一体化し、これを冷却管連結手段14及び平板連結手段13で複数連結する構成としている。これにより、広面積のアイスリンクに設置する場合であっても、各部材を小型化でき、部材の製造や配送・搬入が容易となる。また、施工においては、冷却管部11と伝熱用平板部12とが一体化された配管ユニットを冷却管連結手段14及び平板連結手段13で連結して組み立てるのみであるため、簡単に施工可能である。さらにまた、冷却管部11に不具合が生じた際に、配管ユニット単位で部分的に交換することも可能となる。
【0041】
また、冷却管部11の上部に伝熱用平板部12が設けられているので、冷却管部11を通流する冷ブラインの冷熱が伝熱用平板部12を介してアイスリンクに伝わり、アイスリンクを略均一に冷却することが可能となる。さらに、伝熱用平板部11により平面状になだらかな温度分布としてアイスリンクを略均一に冷却できるため、アイスリンクの氷層厚さを均一にすることができる。
【0042】
さらに、冷却管部11同士の連結部分に接続管を挿入し、連結部分を溶接することにより、冷却管部11の内部を通流する冷ブラインが漏出することを確実に防止できる。
さらにまた、隣接する伝熱用平板部12同士を、突出部13aと係合部13bとで連結する構成とすることで、冷却管部11と伝熱用平板部12とが一体化された配管ユニットを幅方向に簡単に連結することが可能となる。
【0043】
図8は、本発明の実施形態に係る冷却配管装置の変形例を示す断面図である。
この変形例における冷却配管装置1’は、主として、複数の冷却管部11’と、これに対応した複数の伝熱用平板部12’と、各々の冷却管部11’の端部に設けられる冷却管連結手段14’と、各々の伝熱用平板部12’の幅方向端部に設けられる平板連結手段13’とを備える点で、上記した構成と同一である。
この変形例では、冷却管部11’をマイクロチャンネル構造とした点で上記した構成と異なる。マイクロチャンネル構造は、COブラインが通流する複数の微小冷媒流路を有している。このように冷却管部11’にマイクロチャンネル構造を採用することで、冷却効率を向上させることができる。なお、マイクロチャンネル構造の冷却管部11’とした場合、通常、COブラインが通流する冷媒流路は小径となるため、冷却管連結手段には、冷却管部11’の外周に嵌合する接続管を用いることが好ましい。
【符号の説明】
【0044】
1、1’ 冷却配管装置
11、11’ 冷却管部
12、12’ 伝熱用平板部
13、13’ 平板連結手段
13a 挿入部
13b 係合部
14 冷却管連結手段
15 送りヘッダ
16 戻りヘッダ
51 CO循環回路
51A CO送りライン
51B CO戻りライン
52 主冷凍機
53 凝縮器
54 アンモニア高圧受液器
55 膨張弁
56 カスケードコンデンサ
57 CO受液器
58 再液化ライン
100 アイスリンク設備
121、121A〜121D 凹凸表面
122 切欠部
141 接続管
142 溶接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイスリンクの底部に配設され、該アイスリンクを冷却するアイスリンクの冷却配管装置において、
内部に冷ブラインが通流する複数の冷却管部と、
前記複数の冷却管部の上部にそれぞれ設けられ、該冷却管部の長さに対応して長尺に形成されている複数の伝熱用平板部と、
各々の前記冷却管部の端部に設けられ、隣接する前記冷却管部同士を連結する冷却管連結手段と、
各々の前記伝熱用平板部の幅方向端部に設けられ、隣接する前記伝熱用平板部同士を連結する平板連結手段とを備えることを特徴とするアイスリンクの冷却配管装置。
【請求項2】
前記伝熱用平板部は、上面に微小な表面凹凸を有していることを特徴とする請求項1に記載のアイスリンクの冷却配管装置。
【請求項3】
前記伝熱用平板部は、上面に微小な表面凹凸を有し、
その凹凸表面は、伝熱用平板部の幅方向に波状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のアイスリンクの冷却配管装置。
【請求項4】
前記冷却管連結手段は、外径が前記冷却管部の内径と一致する接続管と、前記接続管が挿入された状態で前記隣接する冷却管部同士の連結部分を溶接した溶接部とを含むことを特徴とする請求項1に記載のアイスリンクの冷却配管装置。
【請求項5】
前記平板連結手段は、前記伝熱用平板部の一側の端部に設けられ、該伝熱用平板部から下方に突出した突出部と、前記伝熱用平板部の他側の端部に設けられ、前記突出部に係合する係合部とを含むことを特徴とする請求項1に記載のアイスリンクの冷却配管装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−7502(P2013−7502A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138687(P2011−138687)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000148357)株式会社前川製作所 (267)