アクチュエータ
【課題】作動時に、ピストンを迅速に前進移動可能なアクチュエータを提供すること。
【解決手段】アクチュエータA1は、ガス発生器42から発生する作動用ガスにより、シリンダ22内に配置されたピストン54を、支持ロッド64とともに移動させるピストンシリンダタイプである。ガス発生器42が、ガス発生剤46を内部に充填させたハウジング47と、スクイブ43と、を有する。ハウジング47において、作動前のピストン54の底面部55と対向して配置される天井壁49が、スクイブ43の作動時に、中央付近の部位を開き時の先端側として開く複数の扉部50を有する。ピストン54の底面部55が、中央付近に、表面を凹ませるような凹部56を、有し、扉部50の開き時に、扉部50の先端50aを凹部56内に進入させるようにして、扉部50の先端50aを当接可能に、構成されている。
【解決手段】アクチュエータA1は、ガス発生器42から発生する作動用ガスにより、シリンダ22内に配置されたピストン54を、支持ロッド64とともに移動させるピストンシリンダタイプである。ガス発生器42が、ガス発生剤46を内部に充填させたハウジング47と、スクイブ43と、を有する。ハウジング47において、作動前のピストン54の底面部55と対向して配置される天井壁49が、スクイブ43の作動時に、中央付近の部位を開き時の先端側として開く複数の扉部50を有する。ピストン54の底面部55が、中央付近に、表面を凹ませるような凹部56を、有し、扉部50の開き時に、扉部50の先端50aを凹部56内に進入させるようにして、扉部50の先端50aを当接可能に、構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用安全装置に使用されるアクチュエータに関し、例えば、保護対象物としての歩行者を受け止める際のフードパネルを持ち上げる等の作動に使用されるアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用安全装置に使用されるアクチュエータとしては、筒状のシリンダ内に設けたガス発生器から発生する作動用ガスにより、シリンダ内に配置されたピストンを、ピストンに連結された支持ロッドとともに移動させるピストンシリンダタイプのものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−173391公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来のアクチュエータでは、作動用ガスの押圧力を利用して、ピストンを移動させる構成であり、自動車用安全装置に使用する場合、支持ロッドを瞬時に移動させる必要があることから、ピストンを極力迅速に移動させることが望まれている。特に、このタイプのアクチュエータを、車両のフードパネルの後端側の下方に配置させて、作動時に、フードパネルの後端側を上昇させる場合、支持ロッドによって、板金製のフードパネルを上方に押し上げることから、作動用ガスの押圧力によって、効率よくピストンを押圧する必要がある。しかしながら、従来のアクチュエータでは、ガス発生器とピストンの底面との間の距離が大きく、ガス発生器から発生する作動用ガスは、ガス発生器とピストン底面との間に、放射状に流出し、直接シリンダ内周面に向かうものも存在することから、作動用ガスの押圧力を瞬時にピストンの底面に作用させ難く、ピストンを迅速に移動させる点に改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、作動時に、ピストンを迅速に前進移動可能なアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るアクチュエータは、自動車用安全装置に使用されて、
筒状のシリンダ内に設けたガス発生器から発生する作動用ガスにより、シリンダ内に配置されたピストンを、ピストンに連結された支持ロッドとともに移動させるピストンシリンダタイプのアクチュエータであって、
ガス発生器が、燃焼時に作動用ガスを発生するガス発生剤を内部に充填させたハウジングと、ガス発生剤に点火可能とされるスクイブと、を有する構成とされ、
ハウジングにおいて、作動前のピストンの底面部と対向して配置される天井壁が、スクイブの作動時に、周囲に配置される破断予定部を破断させて、中央付近に位置する部位を、開き時の先端側として開く複数の扉部を有する構成とされ、
ピストンの底面部が、中央付近に、表面を凹ませるような凹部を、有し、扉部の開き時に、扉部の先端を凹部内に進入させるようにして、扉部の先端を当接可能、若しくは、各扉部の先端に対して、底面部における凹部周縁を構成する周壁部を、ピストンの中心軸から放射方向の外方側で、重ね可能に、構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るアクチュエータでは、作動時に、ガス発生器のスクイブが点火されれば、ガス発生剤を充填させているハウジングの天井壁に形成される破断予定部が破断され、扉部が、それぞれ、中央付近に位置する部位を開き時の先端側として開いて、ガス発生剤が燃焼して発生された作動用ガスが、シリンダ内に流出されることとなり、シリンダ内に収納されたピストンが、作動用ガスに押されて、支持ロッドとともに前進移動することとなる。そして、本発明のアクチュエータでは、ガス発生器のハウジングにおいて、破断予定部を配設させた天井壁が、作動前のピストンの底面部と対向して配置されるとともに、ピストンの底面部が、中央付近に、表面を凹ませるような凹部を、有し、扉部の開き時に、扉部の先端を凹部内に進入させるようにして、扉部の先端を当接可能、若しくは、各扉部の先端に対して、底面部における凹部周縁を構成する周壁部を、ピストンの中心軸から放射方向の外方側で、重ね可能に、構成されている。そのため、作動時に扉部が開けば、扉部は、凹部内に先端を進入させつつ開くことから、ガス発生器とピストンの底面部との間の空間が、開いた扉部とピストンの底面部に設けられた凹部とにより、軸直交方向側を略全面(略全周)にわたって覆われるような態様となって、ガス発生剤が燃焼して発生した作動用ガスが、軸直交方向側、換言すれば、シリンダの内周面側に向かうように、流れることを抑えて、ピストンの底面部側に向かうように流れることとなる。このとき、開いた扉部の先端が凹部内において、ピストンの底面部と当接している構成であれば、開いた扉部とピストンの底面部とによって囲まれる領域に作動用ガスが充満され、この領域内の内圧を迅速に増大させることができることから、作動用ガスの押圧力を、瞬時に、ピストンの移動方向に沿って、底面部に作用させることができる。また、ピストンの底面部が、各扉部の先端に対して、底面部における凹部周縁を構成する周壁部を、ピストンの中心軸から放射方向の外方側で、重ねている構成であれば、仮に、開いた扉部とピストンの底面部との間に隙間が生じ、この隙間から、作動用ガスが、放射方向の外方に向かうように流れることとなっても、ピストンの底面部における凹部周縁の周壁部が、開いた扉部の先端の外方側を覆っていることから、このピストンの底面部の凹部周縁の周壁部において、開いた扉部と重なっている領域に、作動用ガスが充満されるような態様となって、充満された作動用ガスの押圧力を、瞬時に、ピストンの移動方向に沿って、底面部に作用させることができる。その結果、作動用ガスの押圧力を、瞬時にピストンの底面部に作用させることができて、ピストンを迅速に前進移動させることができる。
【0008】
したがって、本発明のアクチュエータでは、作動時に、ピストンを迅速に前進移動させることが可能となる。
【0009】
特に、本発明のアクチュエータでは、扉部を、開き時に、先端を凹部内に進入させる構成であることから、開いた扉部が、先端側を凹部内に進入させたガイド筒を構成するような態様となって、発生する作動用ガスを、確実に凹部内に向かうように流出させることができ、作動用ガスの押圧力を、無駄なくピストンの底面部に作用させることができる。
【0010】
また、本発明のアクチュエータにおいて、天井壁に形成される各扉部を、開き時の外形形状を略同一として、放射状に開く構成とすれば、開いた扉部によって、ガス発生器とピストンの底面部との間の空間の軸直交方向側を、略全面(全周)にわたって、略均等に覆うことができる。そのため、作動用ガスの押圧力を、ピストンの底面部に対して、底面部の中心を基準とした略円形のエリアに作用させることができ、作動当初に、より直線的に、ピストンを前進移動させることが可能となって、好ましい。
【0011】
さらに、本発明のアクチュエータにおいて、天井壁に形成される各扉部を、開き時の回転中心となる元部側の部位を凹部の外周縁より外方に位置させるように構成すれば、開き時の各扉部が、開き角度を90°未満の状態で、先端を、凹部の内周面(軸直交方向側の側面)に当接させることとなる。そのため、上記構成のアクチュエータでは、各扉部が、大きな開き角度で開くことを抑制されて、開き時に各扉部間に生じる隙間を極力小さくすることができることから、各扉部間から作動用ガスが漏れることを極力抑えることができ、作動当初に、効率よくピストンを前進移動させることができて、好ましい。
【0012】
さらに、上記構成のアクチュエータにおいて、ピストンの外周面に、シリンダ内周面と摺接されて、ゴム状弾性体からなるOリングを、配設させる構成とすれば、ピストンとシリンダとの間の気密性を向上させることができ、作動時におけるピストンの移動前に、ピストンとシリンダとの間から作動用ガスが漏れることを防止できて、ピストンを迅速に前進移動させることができて、好ましい。さらに、このOリングは、ピストンの外周面側に配置され、作動前の状態において、ガス発生器の近傍に配置される構成であるものの、上記構成のアクチュエータでは、ガス発生器の作動初期において、発生する作動用ガスが、軸直交方向側となるシリンダの内周面側に向かうことを抑えられることから、この作動初期に、Oリングに高温の作動用ガスが当たることを極力抑制することができ、ピストンとシリンダとの間の気密性を低下させるようなOリングの劣化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態であるアクチュエータを使用したフード跳ね上げ装置を搭載させた車両の斜視図である。
【図2】実施形態のアクチュエータを使用したフード跳ね上げ装置を搭載させた車両の部分拡大平面図である。
【図3】実施形態のフード跳ね上げ装置と車両のヒンジ部とを示す前後方向に沿った概略縦断面図であり、図2のIII−III部位に対応する。
【図4】実施形態のアクチュエータを使用したフード跳ね上げ装置の作動時を示す概略断面図である。
【図5】実施形態のアクチュエータの概略縦断面図であり、作動前と作動完了時とを示す。
【図6】実施形態のアクチュエータにおけるシリンダの先端壁部の部位を示す部分拡大概略縦断面図である。
【図7】実施形態のアクチュエータにおいて、ロック機構の作動を順に説明する概略部分拡大縦断面図である。
【図8】実施形態のアクチュエータにおけるガス発生器とピストンとを示す部分拡大概略縦断面図である。
【図9】実施形態のアクチュエータのガス発生器に使用されるハウジングの天井壁付近を示す部分拡大断面図である。
【図10】実施形態のアクチュエータのガス発生器に使用されるハウジングの天井壁付近を示す概略斜視図である。
【図11】実施形態のアクチュエータにおいて、ガス発生器のスクイブが作動した状態を示す部分拡大断面図である。
【図12】本発明の他の実施形態であるアクチュエータのガス発生器とピストンとを示す部分拡大概略縦断面図である。
【図13】図12のアクチュエータにおいて、ガス発生器のスクイブが作動した状態を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態のアクチュエータA1は、図1〜3に示すように、車両Vに搭載される自動車用安全装置としてのフード跳ね上げ装置(以下「跳ね上げ装置」と省略する)Uに使用されるものである。跳ね上げ装置Uは、フードパネル10の後端10c側に配設されるもので、アクチュエータA1の作動時に、フードパネル10の後端10cを跳ね上げる構成とされている。実施形態の場合、車両Vのフロントバンパ5には、図1に示すように、歩行者との衝突を検知若しくは予測可能なセンサ6が、配設されており、センサ6からの信号を入力させている図示しない作動回路が、センサ6からの信号に基づいて車両Vと歩行者との衝突を検知若しくは予測した際に、アクチュエータA1のガス発生器42(図8参照)を作動させるように、構成されている。
【0015】
フードパネル10は、図1,2に示すように、車両VにおけるエンジンルームERの上方を覆うように配設されるもので、左右方向の両縁側における後端10c近傍に配置されるヒンジ部11により、車両Vのボディ1側に対して、前開きで開閉可能に連結されている。フードパネル10は、アルミニウム(アルミニウム合金)等からなる板金製として、図3に示すように、上面側のアウタパネル10aと、下面側に位置してアウタパネル10aより強度を向上させたインナパネル10bと、から構成されている。フードパネル10は、歩行者を受け止めた際に、歩行者の運動エネルギーを吸収できるように、塑性変形可能に構成されている。そして、実施形態では、車両Vと歩行者との衝突時に、アクチュエータA1が作動されて、図4に示すように、フードパネル10の後端10cが上方に押し上げられ、フードパネル10の後端10cと、エンジンルームERと、の間に、変形スペースDSを形成できることから、塑性変形時の塑性変形量を増大させることができる。さらには、実施形態の場合、フードパネル10の後端10cを上昇移動させた支持ロッド64の軸部65が、歩行者の受け止め時に、フードパネル10の下降移動に伴って曲げ塑性変形されることとなる(図4の二点鎖線参照)。そのため、実施形態の場合、歩行者の運動エネルギーが大きくとも、フードパネル10自体の塑性変形と、支持ロッド64における軸部65の曲げ塑性変形と、によって、歩行者の運動エネルギーを多く吸収することができる。
【0016】
ヒンジ部11は、フードパネル10の後端10c側における左縁10dと右縁10eとに配設され(図1,2参照)、それぞれ、ボディ1側のフードリッジリインホース2に連結される取付フランジ2aに固定されるヒンジベース12と、フードパネル10側に固定されるヒンジアーム14と、を備えて構成されている(図2,3参照)。各ヒンジアーム14は、図3に示すように、板金製のアングル材を下向きに突出させるように略半円弧状に湾曲させた形状として構成され、ヒンジベース12側の元部端14aが、支持軸13を利用して、ヒンジベース12に対して回動可能に連結されている。また、各ヒンジアーム14は、元部端14aから離れる先端14b側に、先端14bからフードパネル10の下面に沿うように延びる連結板部15を備える構成とされ、この連結板部15が、フードパネル10の後端10cにおける下面側に、溶接等を利用して結合されている。また、ヒンジアーム14の先端14b付近には、下縁を略円形状に切り欠くようにして構成される切欠凹部14cが、形成されており、この切欠凹部14cの周囲の部位が、アクチュエータA1の作動時において支持ロッド64がフードパネル10の後端10cを押し上げた際に、塑性変形する塑性変形部14dとされて、フードパネル10の上昇を許容することとなる(図3,4参照)。
【0017】
各支持軸13は、それらの軸方向を、車両Vの左右方向に沿わせるように、配設されている。そして、フードパネル10を開く際には、図3の実線から二点鎖線で示すように、左右の支持軸13を回転中心として、各ヒンジアーム14の先端14b側とともに、フードパネル10の前端10f側(図1参照)を前開きで上昇させれば、フードパネル10を前開きで開くことができる。ちなみに、フードパネル10の後端10cの上昇時には、フードパネル10の前端10f側は、前端10fに配置されている通常閉塞用の図示しないフードロックストライカを係止するラッチ機構により、ボディ1側から外れることはない。
【0018】
フードパネル10の後方には、図2,3に示すように、ボディ1側の剛性の高いカウルパネル7aと、カウルパネル7aの上方の合成樹脂製のカウルルーバ7bと、からなるカウル7が、配設されている。カウルルーバ7bは、後端側をフロントウィンドシールド3の下部3a側に連ならせるように、配設されている。また、フロントウィンドシールド3の左右には、図1,2に示すように、フロントピラー4,4が、配設されている。
【0019】
跳ね上げ装置Uは、図3,4に示すように、フードパネル10における左右のヒンジ部11の近傍に配設されるもので、フードパネル10の後端10cの下方に配設されるアクチュエータA1と、各アクチュエータA1に対応してアクチュエータA1の上方のフードパネル10側に配設される受け座16と、から、構成されている。受け座16は、実施形態の場合、フードパネル10の後端10cの下面に配設されたヒンジアーム14の先端14b側に設けられた連結板部15の下面から、構成されている。
【0020】
実施形態のアクチュエータA1は、図2,3に示すように、フードリッジリインホース2に連結された取付フランジ2bに対してボルト19止めされる断面略U字形状の取付ブラケット18により保持されて、フードパネル10の後端10c側における左縁10d及び右縁10eの下方となる各ヒンジ部11の下方に、配設されている(図1〜3参照)。各アクチュエータA1は、図5に示すように、ガス発生器42の作動時に発生する作動用ガスGを駆動源とするピストンシリンダタイプとされるもので、実施形態の場合、円筒状のシリンダ22と、シリンダ22内に配置されて、作動時に作動用ガスGを発生させるガス発生器42と、シリンダ22内に摺動可能に収納したピストン54と、ピストン54に連結される支持ロッド64と、前進移動(実施形態の場合には、上昇移動)した支持ロッド64の後退移動(実施形態の場合には、下降移動)を規制するロック機構Rと、を備えて構成されている。ロック機構Rは、実施形態の場合、図7に示すように、係止リング61と、ピストン54の外周側に設けられて係止リング61を収納する収納溝59と、シリンダ22の内周面24aに設けられて係止リング61の一部を進入させて係止する係止段部26と、を備えて構成されている。
【0021】
シリンダ22は、軸方向を上下方向に略沿わせて配置されるもので、図5に示すように、上端側の先端壁部31と下端側の元部端壁部38との間に、ピストン54を摺動させる円筒状の本体部23を、配設させて構成されている。なお、シリンダ22は、本体部23を構成する鋼製のパイプ材29の上下にキャップ30,37を結合させて構成されており、先端壁部31は、パイプ材29の上端側外周面に設けられた雄ねじ29aに螺合して結合されたキャップ30に配設され、元部端壁部38は、パイプ材29の下端側外周面に設けられた雄ねじ29bに螺合して結合されたキャップ37に配設されている。
【0022】
本体部23は、ピストン54の外形形状に対応して軸直交方向の断面形状を略円形の開口とした摺動孔24を、上下方向に貫通させており、アクチュエータA1の作動時、ピストン54は、摺動孔24の内周面24aを摺動して、上昇移動(前進移動)することとなる。
【0023】
シリンダ22において、本体部23における先端壁部31近傍には、図6に示すように、ピストン54を摺動させる本体部23の内周面(摺動孔24の内周面24a)より拡径して凹む係止段部26が、形成されている。この係止段部26は、ロック機構Rを構成するもので、ピストン54の上昇移動後(前進移動後)の後述する係止リング61付近に配置されて、係止リング61の後退移動(下降移動)を規制する部位であり、係止規制面27と外周規制面28とを備えて構成されている。実施形態の場合、係止規制面27は、パイプ材29の上端面29cから構成されるもので、ロック機構Rを構成する係止リング61の下降移動(後退移動)を規制可能に、係止リング61の後退移動側の部位(後退側面)に当接するように、構成されている(図7のB,C参照)。外周規制面28は、実施形態の場合、キャップ30における後述する収納凹部33の内周面33aから構成されるもので、係止規制面27の外周縁から本体部23の軸方向(ピストン54の前進移動方向)に沿うように延びて、係止リング61の後退移動の規制時に、拡径した係止リング61の外周面に当接するように、構成されている(図7のB,C参照)。
【0024】
シリンダ22における本体部23の上端側に配置されるキャップ30は、図5,6に示すように、シリンダ22の上端を塞ぐ先端壁部31と、先端壁部31の下端側(パイプ材29側)から下方に延びる略円筒状の周壁部35と、を、備えている。周壁部35の内周面には、パイプ材29に設けられた雄ねじ29aに螺合される雌ねじ35aが形成されている。先端壁部31は、略円柱状とされるもので、中央に、支持ロッド64の軸部65を挿通可能に上下方向に沿って貫通した挿通孔32を備えるとともに、下端側に、上昇移動(前進移動)後のピストン54を収納させるための収納凹部33を、備えている。挿通孔32は、内径寸法D1を、支持ロッド64の軸部65の外径寸法D2より僅かに大径として、軸部65との間に隙間を設けるように構成されている(図6参照)。この挿通孔32における軸部65との間の隙間は、作動時に、ピストン54とシリンダ22との間の空気を外部に放出させて、ピストン54を円滑に前進移動(上昇移動)可能とし、かつ、ピストン54の上昇移動(前進移動)後において、シリンダ22内に充満された作動用ガスGを、外部に放出させるために、形成されている。なお、挿通孔32の上端側には、周縁をテーパ状に切り欠かれた凹部32aが、形成されている。この凹部32aは、支持ロッド64における軸部65の上端外周側に配置されて、車両搭載状態における作動前の気密性を確保するためのOリング67を収納させるためのものである。
【0025】
収納凹部33は、上昇移動(前進移動)後に、係止リング61を係止規制面27に係止させて、下降移動(後退移動)を規制された状態のピストン54を、内部に収納可能に構成されるもので、内周面33aの下端付近の部位が、拡径した係止リング61の外周面に当接する外周規制面28を構成している。収納凹部33は、内径寸法を、摺動孔24の内径寸法より大きくして、拡径した係止リング61の外周面に当接可能な寸法に、設定されている。また、収納凹部33内における上面33b側には、作動前の支持ロッド64(ピストン54)の上下動を規制するためのCリング34が、上面33bと当接するようにして、配置されている(図6参照)。このCリング34は、支持ロッド64の軸部65に形成される凹溝65aに係止されて、作動前の支持ロッド64(ピストン54)の上下方向への移動を防止しており、ガス発生器42の作動時に、ピストン54が作動用ガスGによって強く押し上げられた際に、凹溝65aとの係止状態を解除されて、ピストン54の上昇移動を許容するように、構成されている。
【0026】
シリンダ22における本体部23の下端側に配置されるキャップ37は、図5,8に示すように、本体部23の下端側を塞ぐように配設される略円板状の元部端壁部38と、元部端壁部38の外周縁から上方に延びる略円筒状の周壁部39と、を備えて構成されている。元部端壁部38には、ガス発生器42の後述するスクイブ43のターミナル43cを挿通可能な挿通孔38aが、形成され、この挿通孔38aの周縁の部位と、周壁部39における下部側の部位と、を利用して、ガス発生器42が、元部端壁部38に取り付けられて、シリンダ22内に配設されている。周壁部39は、上端側内周面に、パイプ材29に設けられた雄ねじ29bに螺合される雌ねじ39aを備え、キャップ37は、元部端壁部38にガス発生器42を取り付けた状態で、雌ねじ39aを雄ねじ29bに螺合させて、本体部23に取り付けられている。
【0027】
ガス発生器42は、図8に示すように、燃焼時に作動用ガスを発生するガス発生剤46を内部に充填させたハウジング47と、ガス発生剤46に点火可能とされるスクイブ43と、を備えている。実施形態の場合、ガス発生器42は、ハウジング47の後述する天井壁49をピストン54と対向させつつ、ハウジング47とスクイブ43とを、シリンダ22の軸方向に沿って直列的に配置させるようにして、シリンダ22内に配設されている。
【0028】
スクイブ43は、ガス発生剤46と対向するように上側(ピストン54側)に配置される略円柱状の点火部43aと、点火部43aの下側に配置されて点火部43aより大径とされるフランジ部43bと、フランジ部43bの下側に配置されてフランジ部43bより小径とされるターミナル43cと、を備える構成とされている。ターミナル43cは、キャップ37の元部端壁部38に形成される挿通孔38aに挿通可能な寸法に設定され、元部端壁部38から露出される構成である。このスクイブ43のターミナル43cは、図8に示すように、車両の図示しない制御装置から延びるリード線44を結線されることとなる。そして、スクイブ43は、この図示しない制御装置からの作動信号を受けて、点火部43aから火炎を発生させるように作動して、ハウジング47内に充填されたガス発生剤46を燃焼させる構成である。
【0029】
ガス発生剤46は、燃焼時に作動用ガスGを発生可能な所定の薬剤を、所定形状に成形して構成されるもので、実施形態の場合、略球状とされて、ハウジング47内におけるハウジング47とスクイブ43との間の隙間に、充填されている。
【0030】
ハウジング47は、スクイブ43から延びるように構成される略円筒状の周壁48と、周壁48の先端側(上端側であってピストン54側)を塞ぐように構成される略円板状の天井壁49と、を備える構成とされている。ハウジング47は、中心をシリンダ22の中心軸C1(図5参照)と一致させるように、形成されている。そして、周壁48は、実施形態の場合、元部側の大径部48aと、大径部48aより小径とされる先端側の小径部48bと、から構成されている(図8参照)。実施形態の場合、ハウジング47は、アルミニウム合金等の金属製とされており、周壁48における大径部48aの元部側(下端側)を、スクイブ43のフランジ部43bに連結させるようにして、スクイブ43と一体化されている。
【0031】
天井壁49は、周壁48における小径部48bの先端側(上端側)を塞ぐような略円形として、構成されるもので、外径寸法を、小径部48bの外径寸法D3(図9参照)と一致させた構成とされている。天井壁49は、作動前のピストン54の後述する底面部55と対向して配置されるもので、スクイブ43の作動時に、周囲に配置される破断予定部51を破断させて、中央付近に位置する部位を、開き時の先端50a側として開く複数の扉部50を有する構成とされている。実施形態の場合、破断予定部51は、天井壁49の中央C2(シリンダ22の中心軸C1と一致、図10参照)から略放射状に延びる線状として、複数箇所(実施形態の場合、6箇所)に、形成され、扉部50は、放射状に開く構成とされている。実施形態の場合、破断予定部51は、天井壁49に、内面側から、肉厚の1/2程度の深さの切込みを連続的に設けるようにして構成されている(図9参照)。扉部50は、この破断予定部51間の部位から構成されるもので、実施形態の場合、外形形状を略同一の略三角板状とした6枚とされて、放射状に開く構成とされている。各扉部50は、それぞれ、周壁48との境界部位付近(元部50b側)を開き時の回転中心として、開き前の中央付近に位置する先端50a相互を離隔させるように、放射状に開くこととなる(図9,10の二点鎖線参照)。具体的には、各扉部50は、中央付近となる先端50a側をピストン54側に向けるように開くこととなる。実施形態の場合、各扉部50は、先端50aを、ピストン54の底面部55に形成される後述する凹部56内に進入させるようにして、開くこととなる。具体的には、各扉部50は、開き前における軸直交方向側の長さ寸法L1(周壁48における小径部48bの外径寸法D3の1/2と略一致、図9参照)を、作動前のガス発生器42の天井壁49表面とピストン54の底面部55表面との離隔距離W1より、大きくするように、構成されている(図8,9参照)。
【0032】
ピストン54は、シリンダ22の本体部23における摺動孔24の内周面24aに対して摺動可能な外径寸法を有した略円柱状とされるもので、ガス発生器42側となる下面側の底面部55の中央付近に、表面を支持ロッド64側となる上方へ凹ませるような凹部56を、配設させている。ピストン54は、作動前の状態において、底面部55をガス発生器42の天井壁49近傍に位置させるように、シリンダ22内に、配置されている。ピストン54の底面部55とガス発生器42の天井壁49との間の離隔距離W1は、上述したごとく、ガス発生器42の各扉部50の長さ寸法L1より小さく設定されており、具体的には、離隔距離W1は、長さ寸法L1の1/3程度に設定されている。このピストン54の底面部55とガス発生器42の天井壁49との離隔距離W1は、小さすぎても好ましくなく、作動初期における作動用ガスGの流入開始時に、内部に充満した作動用ガスGによって、ピストン54を円滑に前進移動開始可能とするように、設定することが望ましい。
【0033】
底面部55に形成される凹部56は、中央C3を、シリンダ22の中心軸C1(ピストン54の中心軸と一致)、すなわち、ガス発生器42のハウジング47における天井壁49の中央C2、と一致させるように構成されており、開口幅寸法W2(図8参照)を、天井壁49の外径寸法(周壁48の外径寸法D3と略一致)より小さくするように、構成されている。具体的には、凹部56の開口幅寸法W2は、天井壁49の外径寸法(周壁48の外径寸法D3)の1/2程度に設定されている。換言すれば、天井壁49に形成される各扉部50が、開き時の回転中心となる元部50b側の部位を、凹部56の外周縁を構成する周壁部57の内周面57aより外方に位置させるように、構成されている。そして、実施形態では、扉部50が、先端50aを凹部56内に進入させるようにして開くことから、底面部55における凹部56の周縁を構成する周壁部57が、開いた各扉部50の先端50aに対して、ピストン54の中心軸(シリンダ22の中心軸C1と一致)から放射方向の外方側で重なることとなる。さらに、実施形態では、この周壁部57における内周面57aは、開いた各扉部50の先端50aと当接して、扉部50の開きを規制するストッパの役目も奏することとなる。なお、実施形態の場合、底面部55に形成される凹部56は、ピストン54から延びる支持ロッド64における後述する軸部65の上端側に頭部66を締結させる際に使用する六角レンチを嵌合させるためのものであり、六角レンチを嵌合可能に、六角柱状に開口して構成されている。底面部55における凹部56の深さ(凹部56の容積)は、作動初期における作動用ガスGの流入開始時に、内部に充満した作動用ガスGによって、ピストン54を円滑に前進移動開始可能な深さ(容積)に、設定されている。
【0034】
そして、実施形態のアクチュエータA1では、各扉部50の長さ寸法L1は、ピストン54の底面部55とガス発生器42の天井壁49との間の離隔距離W1の略3倍に設定されて、開き時に、先端50aを底面部55に形成される凹部56内に進入させることとなり、また、この凹部56は、開口幅寸法W2を、天井壁49の外径寸法(周壁48の外径寸法D3)の1/2程度に設定されている。換言すれば、凹部56の開口幅寸法W2は、各扉部50の長さ寸法L1と略一致させるように、構成されている。そして、各扉部50は、開き時に、凹部56内に進入させた先端50aを、凹部56の周縁を構成する周壁部57の内周面57a(凹部56の側面)に当接されるようにして、先端50aを放射方向の外方側へ向けるような開きを停止されることとなり、実施形態の場合、水平方向(シリンダ22の中心軸C1と直交する方向)に対しての傾斜角度θ(図11参照)を、45°程度として、瞬間的に開きを停止されることとなる。
【0035】
ピストン54における外周面54aには、図7,8に示すように、底面部55側に、Oリング62を嵌合させる嵌合溝58が形成され、底面部55から離れる嵌合溝58の上方に、係止リング61を収納可能な収納溝59が形成されている。収納溝59は、ロック機構Rを構成するものであり、係止リング61を収納した状態で、ピストン54の上昇移動(前進移動)を可能にするとともに、ピストン54の上昇移動(前進移動)後において、係止段部26における外周規制面28と当接するように拡径された係止リング61の係止規制面27との係止状態を維持可能とするように、構成されている(図7参照)。換言すれば、収納溝59は、ピストン54の上昇移動(前進移動)後に、拡径された係止リング61の戻りを防止するように、構成されている。
【0036】
ロック機構Rを構成する係止リング61は、断面を円形としたばね鋼からなる線材を円環状(略C字形状)に曲げ加工して形成されるもので、作動前においては、縮径された状態で、ピストン54に設けられた収納溝59内に収納され、ピストン54の上昇移動(前進移動)後に、係止段部26の外周規制面28と当接するように、復元されて、拡径される構成とされている。
【0037】
Oリング62は、ゴム状弾性体からなるもので、嵌合溝58内に収納された状態で、外周面を、シリンダ22における摺動孔24の内周面24aと摺接させるように、構成されている。このOリング62は、ピストン54とシリンダ22の本体部23との間の気密性を向上させて、ガス発生器42の作動時に、ピストン54と本体部23との間から作動用ガスGが漏れることを防止するために配設されるもので、実施形態の場合、良好な耐熱性を有したシリコンゴムから、構成されている。
【0038】
支持ロッド64は、シリンダ22の軸方向(上下方向)に沿って配設される丸棒状の軸部65と、軸部65の上端側に配設される頭部66と、を備えている。軸部65は、実施形態の場合、ピストン54から延びるように、ピストン54と一体的に構成されている。頭部66は、実施形態の場合、軸部65と別体とされて、軸部65の上端側に締結される袋ナットから、構成されている。軸部65における上端近傍部位には、キャップ30に形成された収納凹部33内に配置されるCリング34を係止可能な凹溝65aが、形成されている(図5参照)。また、支持ロッド64における軸部65と頭部66との境界部位には、Oリング67が、嵌着されている。このOリング67は、作動前に、キャップ30の先端壁部31に設けられた挿通孔32の上端側に形成される凹部32a内に、収納されている(図5参照)。このOリング67は、ゴム状弾性体からなるもので、車両搭載状態における作動前のシリンダ22内の気密性を確保するために、配設されている。具体的には、実施形態の場合、Oリング67は、クロロプレンゴム等の汎用のゴム材料から、形成されている。
【0039】
実施形態の跳ね上げ装置Uでは、センサ6からの信号により、図示しない作動回路が、車両Vと歩行者との衝突を検知若しくは予測した際に、アクチュエータA1におけるガス発生器42が作動されることとなり、図5に示すように、発生した作動用ガスGが、シリンダ22における本体部23内のピストン54を押し上げ、支持ロッド64の頭部66を、受け座16の下面に当接させて、フードパネル10の後端10cを、下方のカウル7との間に隙間を広げるように、上昇させることとなる。そして、上昇移動したフードパネル10の後端10cが、図4に示すように、支持ロッド64の頭部66により下面側を支持された状態で、上方から斜め後下方向に移動する歩行者を受け止めれば、歩行者の運動エネルギーFを受け止めて、フードパネル10の後端10cが塑性変形しつつ下降移動するとともに、このフードパネル10の下降移動に伴って、受け座16に頭部66を当接させている支持ロッド64の軸部65が、歩行者の運動エネルギーFを吸収しつつ、上端側の頭部66を後方に向けるように、曲げ塑性変形されることとなる(図4の二点鎖線参照)。
【0040】
そして、実施形態のアクチュエータA1では、作動時に、ガス発生器42のスクイブ43が点火されれば、ガス発生剤46を充填させているハウジング47の天井壁49に形成される破断予定部51が破断され、扉部50が放射状に開いて、ガス発生剤46が燃焼して発生された作動用ガスGが、シリンダ22内に流出されることとなる。そして、シリンダ22内に収納されたピストン54が、作動用ガスGに押されて、支持ロッド64とともに前進移動(上昇移動)することとなる。また、実施形態のアクチュエータA1では、ガス発生器42のハウジング47において、破断予定部51を配設させた天井壁49が、作動前のピストン54の底面部55と対向して配置されるとともに、ピストン54の底面部55が、中央付近に、表面を凹ませるような凹部56を有し、扉部50の開き時の先端50aを、凹部56内に進入させつつ、凹部56の周縁を構成する周壁部57の内周面57aに当接可能に、構成されている。そのため、作動時に扉部50が開けば、扉部50は、凹部56内に先端50aを進入させつつ開くことから、ガス発生器42とピストン54の底面部55との間の空間Sが、開いた扉部50とピストン54の底面部55に設けられた凹部56(凹部56の周縁を構成する周壁部57)とにより、軸直交方向側を略全面(略全周)にわたって覆われるような態様となって(図11参照)、ガス発生剤46が燃焼して発生した作動用ガスGが、軸直交方向側、換言すれば、シリンダ22の内周面(摺動孔24の内周面24a)側に向かうように、流れることを抑えて、ピストン54の底面部55側に向かうように流れることとなる。
【0041】
このとき、実施形態のアクチュエータA1では、開いた扉部50の先端50aが、それぞれ、凹部56内において、周縁を構成する周壁部57の内周面57aと当接していることから、この開いた扉部50とピストン54の底面部55(凹部56)とによって囲まれる領域(空間S)に作動用ガスGが充満され、この空間S内の内圧を迅速に増大させることができて、作動用ガスGの押圧力を、瞬時に、ピストン54の移動方向に沿って底面部55(凹部56における上面(天井面)56a)に作用させることができる。その結果、作動用ガスGの押圧力を、瞬時にピストン54の底面部55に作用させることができて、ピストン54を迅速に前進移動させることができる。
【0042】
したがって、実施形態のアクチュエータA1では、作動時に、ピストン54を迅速に前進移動させることが可能となる。
【0043】
なお、実施形態のアクチュエータA1では、ピストン54の前進移動に伴って、開いた扉部50の先端50aの周壁部57の内周面57aとの当接状態が解除されれば、扉部50は、先端50aを軸直交方向側に向けるように大きく開くこととなる。
【0044】
そして、特に、実施形態のアクチュエータA1では、ピストン54の底面部55における中央付近に、表面を凹ませるような凹部56を、配設させていることから、作動用ガスGの押圧力を受ける底面部55の受圧面積を広く確保することができる。具体的には、実施形態のアクチュエータA1では、作動当初においては、作動用ガスGの押圧力は、底面部55における凹部56の周縁の部位にはほとんど作用せず、凹部56の上面(天井面)56aと周壁部57における内周面57aの一部とのみに作用することとなるが、ピストン54が前進移動(上昇移動)して、扉部50の凹部56における周壁部57の内周面57aとの当接状態が解除されれば、ピストン54とシリンダ22の本体部23とに囲まれる空間全体に、作動用ガスGが充満されることとなり、作動用ガスGの押圧力は、底面部55における凹部56の周縁の部位と、凹部56の側面(周壁部57の内周面57a)及び上面(天井面)56aの全域と、に作用することとなる。そのため、凹部を設けない場合と比較して、底面部の受圧面積を広く確保することができ、ピストン54を迅速に前進移動(上昇移動)させることができる。
【0045】
また、実施形態のアクチュエータA1では、扉部50を、開き時に、先端50aを凹部56内に進入させる構成であることから、開いた扉部50が、先端50a側を凹部56内に進入させたガイド筒を構成するような態様となる。そのため、発生する作動用ガスGを、確実に凹部56内に向かうように流出させることができ、作動用ガスGの押圧力を、無駄なくピストン54の底面部55(凹部56の上面56b)に作用させることができる。
【0046】
さらに、実施形態のアクチュエータA1では、天井壁49に形成される扉部50は、周囲に、天井壁49の中央C2から略放射状に延びる線状の破断予定部51を配置させて、開き時の外形形状を略同一の略三角板状として、放射状に開く構成とされていることから、開いた扉部50によって、ガス発生器42とピストン54の底面部55との間の空間Sの軸直交方向側を、略全面(全周)にわたって、略均等に覆うことができる。そのため、作動用ガスGの押圧力を、ピストン54の底面部55に対して、底面部55の中心を基準とした略円形のエリアに作用させることができ、作動当初に、より直線的に、ピストン54を前進移動(上昇移動)させることが可能となる。勿論、このような点を考慮しなければ、各扉部が、中央付近の部位を、先端側として開く構成であれば、扉部の形状及び破断予定部の形状はこれに限られるものではなく、例えば、天井壁に、略H字形状の破断予定部を設けて、破断予定部に囲まれる領域を扉部として開かせる構成としてもよい。
【0047】
さらにまた、実施形態のアクチュエータA1では、天井壁49に形成される各扉部50が、開き時の回転中心となる元部50b側の部位を、凹部56の外周縁(周壁部57における内周面57a)より外方に位置させるように構成されて、開き時に、先端50aを凹部56内に進入させる構成とされている。そのため、実施形態のアクチュエータA1では、開き時の各扉部50が、開き角度を90°未満の状態で、先端50aを、凹部56の外周縁を構成する周壁部57の内周面57a(軸直交方向側の側面)に当接されることとなる。その結果、実施形態のアクチュエータA1では、各扉部50が、大きな開き角度で開くことを抑制されて、開き時に各扉部50間に生じる隙間を極力小さくすることができることから、各扉部50間から作動用ガスGが漏れることを極力抑えることができ、作動当初に、効率よくピストン54を前進移動(上昇移動)させることができる。勿論、このような点を考慮しなければ、底面部に凹部を配設させる構成であっても、凹部の開口幅寸法を、天井壁の外径寸法と略一致、もしくは、天井壁の外径寸法より大きくするように、構成してもよい。
【0048】
さらにまた、実施形態のアクチュエータA1では、ピストン54の外周面54aに、シリンダ22の内周面(本体部23における摺動孔24の内周面24a)と摺接されて、ゴム状弾性体からなるOリング62を、配設させていることから、ピストン54とシリンダ22との間の気密性を向上させることができ、作動時におけるピストン54の移動前に、ピストン54とシリンダ22との間から作動用ガスGが漏れることを防止できて、ピストン54を迅速に前進移動させることができる。さらに、このOリング62は、ピストン54の外周面54a側に配置され、作動前の状態において、ガス発生器42の近傍に配置される構成であるものの、実施形態のアクチュエータA1では、ガス発生器42の作動初期において、発生する作動用ガスGが、軸直交方向側となるシリンダ22の内周面側(摺動孔24の内周面24a)側に向かうことを抑えられることから、この作動初期に、Oリング62に高温の作動用ガスGが当たることを極力抑制することができ、ピストン54とシリンダ22との間の気密性を低下させるようなOリング62の劣化を抑えることができる。
【0049】
また、実施形態では、ガス発生器42のハウジング47に形成される扉部50が、開き時に、ピストン54の底面部55に形成される凹部56の周縁を構成する周壁部57の内周面57aと当接可能に、構成されているが、アクチュエータA2として、図12に示すような構成のものを使用してもよい。図12のアクチュエータA2では、ピストン54Aの底面部55Aに形成される凹部56Aの開口幅寸法W3が、ガス発生器42Aにおける天井壁49Aの外径寸法D4より大きく、かつ、ピストン54Aの底面部55Aとガス発生器42Aの天井壁49Aとの離隔距離W4も大きく設定されている。具体的には、扉部50Aは、開き時に、先端50aを、凹部56A内に進入可能な構成とされているものの、この凹部56A内に進入させた先端50aを、凹部56Aの周縁を構成する周壁部57Aの内周面57aと当接させない構成とされている。
【0050】
このようなアクチュエータA2を使用した場合にも、ガス発生器42Aの作動時に、扉部50Aが開けば、ガス発生器42Aとピストン54Aの底面部55Aとの間の空間が、開いた扉部50Aとピストン54Aの底面部55Aとにより、軸直交方向側を略全面(略全周)にわたって覆われるような態様となる(図13参照)。そして、このアクチュエータA2では、図13に示すように、ピストン54Aの底面部55Aに形成される凹部56Aの周縁を構成する周壁部57Aの内周面57aが、一時的に、開いた各扉部50Aの先端50aに対してピストン54Aの中心軸から放射方向の外方側で重なっている構成である。そのため、作動直後の重なり時に、開いた扉部50Aと凹部56Aの上面56a(天井面)との間の隙間から、作動用ガスGが、放射方向の外方に向かうように流れることとなっても、凹部56Aの周縁を構成する周壁部57Aが、開いた扉部50Aの先端50aの外方側を覆っていることから、この凹部56Aにおける開いた扉部50Aと重なっている領域に、作動用ガスGが充満されるような態様となって、充満された作動用ガスGの押圧力を、瞬時に、ピストン54Aの移動方向に沿って、底面部55Aに作用させることができる。その結果、このような構成のアクチュエータA2であっても、作動用ガスGの押圧力を、瞬時にピストン54Aの底面部55Aに作用させることができて、ピストン54Aを迅速に前進移動させることができる。なお、このような構成のアクチュエータA2においても、ピストン54Aの前進移動に伴って、開いた扉部50Aの先端50aの周壁部57Aの内周面57aとの重なり状態が解除されれば、扉部50Aは、先端50aを軸直交方向側に向けるように大きく開くこととなる。
【0051】
さらに、実施形態のアクチュエータA1,A2では、前進移動を上昇させる移動とし、後退移動を下降させる移動とした場合を示したが、作動方向はこれに限定されず、例えば、水平方向の作動方向に、本発明のアクチュエータを使用してもよい。また、本発明のアクチュエータが使用される自動車用安全装置は、フードパネル10を上昇させる跳ね上げ装置U以外でもよい。例えば、運転者や助手席に着座した乗員の膝をニーパネルにより受け止める自動車用安全装置としての膝保護装置のアクチュエータに、本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0052】
10…フードパネル、
22…シリンダ、
42,42A…ガス発生器、
47,47A…ハウジング、
49,49A…天井壁、
50,50A…扉部、
50a…先端、
51…破断予定部、
54,54A…ピストン、
55,55A…底面部、
56,56A…凹部、
57,57A…周壁部、
57a…内周面、
64…支持ロッド、
G…作動用ガス、
U…フード跳ね上げ装置、
A1,A2…アクチュエータ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用安全装置に使用されるアクチュエータに関し、例えば、保護対象物としての歩行者を受け止める際のフードパネルを持ち上げる等の作動に使用されるアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用安全装置に使用されるアクチュエータとしては、筒状のシリンダ内に設けたガス発生器から発生する作動用ガスにより、シリンダ内に配置されたピストンを、ピストンに連結された支持ロッドとともに移動させるピストンシリンダタイプのものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−173391公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来のアクチュエータでは、作動用ガスの押圧力を利用して、ピストンを移動させる構成であり、自動車用安全装置に使用する場合、支持ロッドを瞬時に移動させる必要があることから、ピストンを極力迅速に移動させることが望まれている。特に、このタイプのアクチュエータを、車両のフードパネルの後端側の下方に配置させて、作動時に、フードパネルの後端側を上昇させる場合、支持ロッドによって、板金製のフードパネルを上方に押し上げることから、作動用ガスの押圧力によって、効率よくピストンを押圧する必要がある。しかしながら、従来のアクチュエータでは、ガス発生器とピストンの底面との間の距離が大きく、ガス発生器から発生する作動用ガスは、ガス発生器とピストン底面との間に、放射状に流出し、直接シリンダ内周面に向かうものも存在することから、作動用ガスの押圧力を瞬時にピストンの底面に作用させ難く、ピストンを迅速に移動させる点に改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、作動時に、ピストンを迅速に前進移動可能なアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るアクチュエータは、自動車用安全装置に使用されて、
筒状のシリンダ内に設けたガス発生器から発生する作動用ガスにより、シリンダ内に配置されたピストンを、ピストンに連結された支持ロッドとともに移動させるピストンシリンダタイプのアクチュエータであって、
ガス発生器が、燃焼時に作動用ガスを発生するガス発生剤を内部に充填させたハウジングと、ガス発生剤に点火可能とされるスクイブと、を有する構成とされ、
ハウジングにおいて、作動前のピストンの底面部と対向して配置される天井壁が、スクイブの作動時に、周囲に配置される破断予定部を破断させて、中央付近に位置する部位を、開き時の先端側として開く複数の扉部を有する構成とされ、
ピストンの底面部が、中央付近に、表面を凹ませるような凹部を、有し、扉部の開き時に、扉部の先端を凹部内に進入させるようにして、扉部の先端を当接可能、若しくは、各扉部の先端に対して、底面部における凹部周縁を構成する周壁部を、ピストンの中心軸から放射方向の外方側で、重ね可能に、構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るアクチュエータでは、作動時に、ガス発生器のスクイブが点火されれば、ガス発生剤を充填させているハウジングの天井壁に形成される破断予定部が破断され、扉部が、それぞれ、中央付近に位置する部位を開き時の先端側として開いて、ガス発生剤が燃焼して発生された作動用ガスが、シリンダ内に流出されることとなり、シリンダ内に収納されたピストンが、作動用ガスに押されて、支持ロッドとともに前進移動することとなる。そして、本発明のアクチュエータでは、ガス発生器のハウジングにおいて、破断予定部を配設させた天井壁が、作動前のピストンの底面部と対向して配置されるとともに、ピストンの底面部が、中央付近に、表面を凹ませるような凹部を、有し、扉部の開き時に、扉部の先端を凹部内に進入させるようにして、扉部の先端を当接可能、若しくは、各扉部の先端に対して、底面部における凹部周縁を構成する周壁部を、ピストンの中心軸から放射方向の外方側で、重ね可能に、構成されている。そのため、作動時に扉部が開けば、扉部は、凹部内に先端を進入させつつ開くことから、ガス発生器とピストンの底面部との間の空間が、開いた扉部とピストンの底面部に設けられた凹部とにより、軸直交方向側を略全面(略全周)にわたって覆われるような態様となって、ガス発生剤が燃焼して発生した作動用ガスが、軸直交方向側、換言すれば、シリンダの内周面側に向かうように、流れることを抑えて、ピストンの底面部側に向かうように流れることとなる。このとき、開いた扉部の先端が凹部内において、ピストンの底面部と当接している構成であれば、開いた扉部とピストンの底面部とによって囲まれる領域に作動用ガスが充満され、この領域内の内圧を迅速に増大させることができることから、作動用ガスの押圧力を、瞬時に、ピストンの移動方向に沿って、底面部に作用させることができる。また、ピストンの底面部が、各扉部の先端に対して、底面部における凹部周縁を構成する周壁部を、ピストンの中心軸から放射方向の外方側で、重ねている構成であれば、仮に、開いた扉部とピストンの底面部との間に隙間が生じ、この隙間から、作動用ガスが、放射方向の外方に向かうように流れることとなっても、ピストンの底面部における凹部周縁の周壁部が、開いた扉部の先端の外方側を覆っていることから、このピストンの底面部の凹部周縁の周壁部において、開いた扉部と重なっている領域に、作動用ガスが充満されるような態様となって、充満された作動用ガスの押圧力を、瞬時に、ピストンの移動方向に沿って、底面部に作用させることができる。その結果、作動用ガスの押圧力を、瞬時にピストンの底面部に作用させることができて、ピストンを迅速に前進移動させることができる。
【0008】
したがって、本発明のアクチュエータでは、作動時に、ピストンを迅速に前進移動させることが可能となる。
【0009】
特に、本発明のアクチュエータでは、扉部を、開き時に、先端を凹部内に進入させる構成であることから、開いた扉部が、先端側を凹部内に進入させたガイド筒を構成するような態様となって、発生する作動用ガスを、確実に凹部内に向かうように流出させることができ、作動用ガスの押圧力を、無駄なくピストンの底面部に作用させることができる。
【0010】
また、本発明のアクチュエータにおいて、天井壁に形成される各扉部を、開き時の外形形状を略同一として、放射状に開く構成とすれば、開いた扉部によって、ガス発生器とピストンの底面部との間の空間の軸直交方向側を、略全面(全周)にわたって、略均等に覆うことができる。そのため、作動用ガスの押圧力を、ピストンの底面部に対して、底面部の中心を基準とした略円形のエリアに作用させることができ、作動当初に、より直線的に、ピストンを前進移動させることが可能となって、好ましい。
【0011】
さらに、本発明のアクチュエータにおいて、天井壁に形成される各扉部を、開き時の回転中心となる元部側の部位を凹部の外周縁より外方に位置させるように構成すれば、開き時の各扉部が、開き角度を90°未満の状態で、先端を、凹部の内周面(軸直交方向側の側面)に当接させることとなる。そのため、上記構成のアクチュエータでは、各扉部が、大きな開き角度で開くことを抑制されて、開き時に各扉部間に生じる隙間を極力小さくすることができることから、各扉部間から作動用ガスが漏れることを極力抑えることができ、作動当初に、効率よくピストンを前進移動させることができて、好ましい。
【0012】
さらに、上記構成のアクチュエータにおいて、ピストンの外周面に、シリンダ内周面と摺接されて、ゴム状弾性体からなるOリングを、配設させる構成とすれば、ピストンとシリンダとの間の気密性を向上させることができ、作動時におけるピストンの移動前に、ピストンとシリンダとの間から作動用ガスが漏れることを防止できて、ピストンを迅速に前進移動させることができて、好ましい。さらに、このOリングは、ピストンの外周面側に配置され、作動前の状態において、ガス発生器の近傍に配置される構成であるものの、上記構成のアクチュエータでは、ガス発生器の作動初期において、発生する作動用ガスが、軸直交方向側となるシリンダの内周面側に向かうことを抑えられることから、この作動初期に、Oリングに高温の作動用ガスが当たることを極力抑制することができ、ピストンとシリンダとの間の気密性を低下させるようなOリングの劣化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態であるアクチュエータを使用したフード跳ね上げ装置を搭載させた車両の斜視図である。
【図2】実施形態のアクチュエータを使用したフード跳ね上げ装置を搭載させた車両の部分拡大平面図である。
【図3】実施形態のフード跳ね上げ装置と車両のヒンジ部とを示す前後方向に沿った概略縦断面図であり、図2のIII−III部位に対応する。
【図4】実施形態のアクチュエータを使用したフード跳ね上げ装置の作動時を示す概略断面図である。
【図5】実施形態のアクチュエータの概略縦断面図であり、作動前と作動完了時とを示す。
【図6】実施形態のアクチュエータにおけるシリンダの先端壁部の部位を示す部分拡大概略縦断面図である。
【図7】実施形態のアクチュエータにおいて、ロック機構の作動を順に説明する概略部分拡大縦断面図である。
【図8】実施形態のアクチュエータにおけるガス発生器とピストンとを示す部分拡大概略縦断面図である。
【図9】実施形態のアクチュエータのガス発生器に使用されるハウジングの天井壁付近を示す部分拡大断面図である。
【図10】実施形態のアクチュエータのガス発生器に使用されるハウジングの天井壁付近を示す概略斜視図である。
【図11】実施形態のアクチュエータにおいて、ガス発生器のスクイブが作動した状態を示す部分拡大断面図である。
【図12】本発明の他の実施形態であるアクチュエータのガス発生器とピストンとを示す部分拡大概略縦断面図である。
【図13】図12のアクチュエータにおいて、ガス発生器のスクイブが作動した状態を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態のアクチュエータA1は、図1〜3に示すように、車両Vに搭載される自動車用安全装置としてのフード跳ね上げ装置(以下「跳ね上げ装置」と省略する)Uに使用されるものである。跳ね上げ装置Uは、フードパネル10の後端10c側に配設されるもので、アクチュエータA1の作動時に、フードパネル10の後端10cを跳ね上げる構成とされている。実施形態の場合、車両Vのフロントバンパ5には、図1に示すように、歩行者との衝突を検知若しくは予測可能なセンサ6が、配設されており、センサ6からの信号を入力させている図示しない作動回路が、センサ6からの信号に基づいて車両Vと歩行者との衝突を検知若しくは予測した際に、アクチュエータA1のガス発生器42(図8参照)を作動させるように、構成されている。
【0015】
フードパネル10は、図1,2に示すように、車両VにおけるエンジンルームERの上方を覆うように配設されるもので、左右方向の両縁側における後端10c近傍に配置されるヒンジ部11により、車両Vのボディ1側に対して、前開きで開閉可能に連結されている。フードパネル10は、アルミニウム(アルミニウム合金)等からなる板金製として、図3に示すように、上面側のアウタパネル10aと、下面側に位置してアウタパネル10aより強度を向上させたインナパネル10bと、から構成されている。フードパネル10は、歩行者を受け止めた際に、歩行者の運動エネルギーを吸収できるように、塑性変形可能に構成されている。そして、実施形態では、車両Vと歩行者との衝突時に、アクチュエータA1が作動されて、図4に示すように、フードパネル10の後端10cが上方に押し上げられ、フードパネル10の後端10cと、エンジンルームERと、の間に、変形スペースDSを形成できることから、塑性変形時の塑性変形量を増大させることができる。さらには、実施形態の場合、フードパネル10の後端10cを上昇移動させた支持ロッド64の軸部65が、歩行者の受け止め時に、フードパネル10の下降移動に伴って曲げ塑性変形されることとなる(図4の二点鎖線参照)。そのため、実施形態の場合、歩行者の運動エネルギーが大きくとも、フードパネル10自体の塑性変形と、支持ロッド64における軸部65の曲げ塑性変形と、によって、歩行者の運動エネルギーを多く吸収することができる。
【0016】
ヒンジ部11は、フードパネル10の後端10c側における左縁10dと右縁10eとに配設され(図1,2参照)、それぞれ、ボディ1側のフードリッジリインホース2に連結される取付フランジ2aに固定されるヒンジベース12と、フードパネル10側に固定されるヒンジアーム14と、を備えて構成されている(図2,3参照)。各ヒンジアーム14は、図3に示すように、板金製のアングル材を下向きに突出させるように略半円弧状に湾曲させた形状として構成され、ヒンジベース12側の元部端14aが、支持軸13を利用して、ヒンジベース12に対して回動可能に連結されている。また、各ヒンジアーム14は、元部端14aから離れる先端14b側に、先端14bからフードパネル10の下面に沿うように延びる連結板部15を備える構成とされ、この連結板部15が、フードパネル10の後端10cにおける下面側に、溶接等を利用して結合されている。また、ヒンジアーム14の先端14b付近には、下縁を略円形状に切り欠くようにして構成される切欠凹部14cが、形成されており、この切欠凹部14cの周囲の部位が、アクチュエータA1の作動時において支持ロッド64がフードパネル10の後端10cを押し上げた際に、塑性変形する塑性変形部14dとされて、フードパネル10の上昇を許容することとなる(図3,4参照)。
【0017】
各支持軸13は、それらの軸方向を、車両Vの左右方向に沿わせるように、配設されている。そして、フードパネル10を開く際には、図3の実線から二点鎖線で示すように、左右の支持軸13を回転中心として、各ヒンジアーム14の先端14b側とともに、フードパネル10の前端10f側(図1参照)を前開きで上昇させれば、フードパネル10を前開きで開くことができる。ちなみに、フードパネル10の後端10cの上昇時には、フードパネル10の前端10f側は、前端10fに配置されている通常閉塞用の図示しないフードロックストライカを係止するラッチ機構により、ボディ1側から外れることはない。
【0018】
フードパネル10の後方には、図2,3に示すように、ボディ1側の剛性の高いカウルパネル7aと、カウルパネル7aの上方の合成樹脂製のカウルルーバ7bと、からなるカウル7が、配設されている。カウルルーバ7bは、後端側をフロントウィンドシールド3の下部3a側に連ならせるように、配設されている。また、フロントウィンドシールド3の左右には、図1,2に示すように、フロントピラー4,4が、配設されている。
【0019】
跳ね上げ装置Uは、図3,4に示すように、フードパネル10における左右のヒンジ部11の近傍に配設されるもので、フードパネル10の後端10cの下方に配設されるアクチュエータA1と、各アクチュエータA1に対応してアクチュエータA1の上方のフードパネル10側に配設される受け座16と、から、構成されている。受け座16は、実施形態の場合、フードパネル10の後端10cの下面に配設されたヒンジアーム14の先端14b側に設けられた連結板部15の下面から、構成されている。
【0020】
実施形態のアクチュエータA1は、図2,3に示すように、フードリッジリインホース2に連結された取付フランジ2bに対してボルト19止めされる断面略U字形状の取付ブラケット18により保持されて、フードパネル10の後端10c側における左縁10d及び右縁10eの下方となる各ヒンジ部11の下方に、配設されている(図1〜3参照)。各アクチュエータA1は、図5に示すように、ガス発生器42の作動時に発生する作動用ガスGを駆動源とするピストンシリンダタイプとされるもので、実施形態の場合、円筒状のシリンダ22と、シリンダ22内に配置されて、作動時に作動用ガスGを発生させるガス発生器42と、シリンダ22内に摺動可能に収納したピストン54と、ピストン54に連結される支持ロッド64と、前進移動(実施形態の場合には、上昇移動)した支持ロッド64の後退移動(実施形態の場合には、下降移動)を規制するロック機構Rと、を備えて構成されている。ロック機構Rは、実施形態の場合、図7に示すように、係止リング61と、ピストン54の外周側に設けられて係止リング61を収納する収納溝59と、シリンダ22の内周面24aに設けられて係止リング61の一部を進入させて係止する係止段部26と、を備えて構成されている。
【0021】
シリンダ22は、軸方向を上下方向に略沿わせて配置されるもので、図5に示すように、上端側の先端壁部31と下端側の元部端壁部38との間に、ピストン54を摺動させる円筒状の本体部23を、配設させて構成されている。なお、シリンダ22は、本体部23を構成する鋼製のパイプ材29の上下にキャップ30,37を結合させて構成されており、先端壁部31は、パイプ材29の上端側外周面に設けられた雄ねじ29aに螺合して結合されたキャップ30に配設され、元部端壁部38は、パイプ材29の下端側外周面に設けられた雄ねじ29bに螺合して結合されたキャップ37に配設されている。
【0022】
本体部23は、ピストン54の外形形状に対応して軸直交方向の断面形状を略円形の開口とした摺動孔24を、上下方向に貫通させており、アクチュエータA1の作動時、ピストン54は、摺動孔24の内周面24aを摺動して、上昇移動(前進移動)することとなる。
【0023】
シリンダ22において、本体部23における先端壁部31近傍には、図6に示すように、ピストン54を摺動させる本体部23の内周面(摺動孔24の内周面24a)より拡径して凹む係止段部26が、形成されている。この係止段部26は、ロック機構Rを構成するもので、ピストン54の上昇移動後(前進移動後)の後述する係止リング61付近に配置されて、係止リング61の後退移動(下降移動)を規制する部位であり、係止規制面27と外周規制面28とを備えて構成されている。実施形態の場合、係止規制面27は、パイプ材29の上端面29cから構成されるもので、ロック機構Rを構成する係止リング61の下降移動(後退移動)を規制可能に、係止リング61の後退移動側の部位(後退側面)に当接するように、構成されている(図7のB,C参照)。外周規制面28は、実施形態の場合、キャップ30における後述する収納凹部33の内周面33aから構成されるもので、係止規制面27の外周縁から本体部23の軸方向(ピストン54の前進移動方向)に沿うように延びて、係止リング61の後退移動の規制時に、拡径した係止リング61の外周面に当接するように、構成されている(図7のB,C参照)。
【0024】
シリンダ22における本体部23の上端側に配置されるキャップ30は、図5,6に示すように、シリンダ22の上端を塞ぐ先端壁部31と、先端壁部31の下端側(パイプ材29側)から下方に延びる略円筒状の周壁部35と、を、備えている。周壁部35の内周面には、パイプ材29に設けられた雄ねじ29aに螺合される雌ねじ35aが形成されている。先端壁部31は、略円柱状とされるもので、中央に、支持ロッド64の軸部65を挿通可能に上下方向に沿って貫通した挿通孔32を備えるとともに、下端側に、上昇移動(前進移動)後のピストン54を収納させるための収納凹部33を、備えている。挿通孔32は、内径寸法D1を、支持ロッド64の軸部65の外径寸法D2より僅かに大径として、軸部65との間に隙間を設けるように構成されている(図6参照)。この挿通孔32における軸部65との間の隙間は、作動時に、ピストン54とシリンダ22との間の空気を外部に放出させて、ピストン54を円滑に前進移動(上昇移動)可能とし、かつ、ピストン54の上昇移動(前進移動)後において、シリンダ22内に充満された作動用ガスGを、外部に放出させるために、形成されている。なお、挿通孔32の上端側には、周縁をテーパ状に切り欠かれた凹部32aが、形成されている。この凹部32aは、支持ロッド64における軸部65の上端外周側に配置されて、車両搭載状態における作動前の気密性を確保するためのOリング67を収納させるためのものである。
【0025】
収納凹部33は、上昇移動(前進移動)後に、係止リング61を係止規制面27に係止させて、下降移動(後退移動)を規制された状態のピストン54を、内部に収納可能に構成されるもので、内周面33aの下端付近の部位が、拡径した係止リング61の外周面に当接する外周規制面28を構成している。収納凹部33は、内径寸法を、摺動孔24の内径寸法より大きくして、拡径した係止リング61の外周面に当接可能な寸法に、設定されている。また、収納凹部33内における上面33b側には、作動前の支持ロッド64(ピストン54)の上下動を規制するためのCリング34が、上面33bと当接するようにして、配置されている(図6参照)。このCリング34は、支持ロッド64の軸部65に形成される凹溝65aに係止されて、作動前の支持ロッド64(ピストン54)の上下方向への移動を防止しており、ガス発生器42の作動時に、ピストン54が作動用ガスGによって強く押し上げられた際に、凹溝65aとの係止状態を解除されて、ピストン54の上昇移動を許容するように、構成されている。
【0026】
シリンダ22における本体部23の下端側に配置されるキャップ37は、図5,8に示すように、本体部23の下端側を塞ぐように配設される略円板状の元部端壁部38と、元部端壁部38の外周縁から上方に延びる略円筒状の周壁部39と、を備えて構成されている。元部端壁部38には、ガス発生器42の後述するスクイブ43のターミナル43cを挿通可能な挿通孔38aが、形成され、この挿通孔38aの周縁の部位と、周壁部39における下部側の部位と、を利用して、ガス発生器42が、元部端壁部38に取り付けられて、シリンダ22内に配設されている。周壁部39は、上端側内周面に、パイプ材29に設けられた雄ねじ29bに螺合される雌ねじ39aを備え、キャップ37は、元部端壁部38にガス発生器42を取り付けた状態で、雌ねじ39aを雄ねじ29bに螺合させて、本体部23に取り付けられている。
【0027】
ガス発生器42は、図8に示すように、燃焼時に作動用ガスを発生するガス発生剤46を内部に充填させたハウジング47と、ガス発生剤46に点火可能とされるスクイブ43と、を備えている。実施形態の場合、ガス発生器42は、ハウジング47の後述する天井壁49をピストン54と対向させつつ、ハウジング47とスクイブ43とを、シリンダ22の軸方向に沿って直列的に配置させるようにして、シリンダ22内に配設されている。
【0028】
スクイブ43は、ガス発生剤46と対向するように上側(ピストン54側)に配置される略円柱状の点火部43aと、点火部43aの下側に配置されて点火部43aより大径とされるフランジ部43bと、フランジ部43bの下側に配置されてフランジ部43bより小径とされるターミナル43cと、を備える構成とされている。ターミナル43cは、キャップ37の元部端壁部38に形成される挿通孔38aに挿通可能な寸法に設定され、元部端壁部38から露出される構成である。このスクイブ43のターミナル43cは、図8に示すように、車両の図示しない制御装置から延びるリード線44を結線されることとなる。そして、スクイブ43は、この図示しない制御装置からの作動信号を受けて、点火部43aから火炎を発生させるように作動して、ハウジング47内に充填されたガス発生剤46を燃焼させる構成である。
【0029】
ガス発生剤46は、燃焼時に作動用ガスGを発生可能な所定の薬剤を、所定形状に成形して構成されるもので、実施形態の場合、略球状とされて、ハウジング47内におけるハウジング47とスクイブ43との間の隙間に、充填されている。
【0030】
ハウジング47は、スクイブ43から延びるように構成される略円筒状の周壁48と、周壁48の先端側(上端側であってピストン54側)を塞ぐように構成される略円板状の天井壁49と、を備える構成とされている。ハウジング47は、中心をシリンダ22の中心軸C1(図5参照)と一致させるように、形成されている。そして、周壁48は、実施形態の場合、元部側の大径部48aと、大径部48aより小径とされる先端側の小径部48bと、から構成されている(図8参照)。実施形態の場合、ハウジング47は、アルミニウム合金等の金属製とされており、周壁48における大径部48aの元部側(下端側)を、スクイブ43のフランジ部43bに連結させるようにして、スクイブ43と一体化されている。
【0031】
天井壁49は、周壁48における小径部48bの先端側(上端側)を塞ぐような略円形として、構成されるもので、外径寸法を、小径部48bの外径寸法D3(図9参照)と一致させた構成とされている。天井壁49は、作動前のピストン54の後述する底面部55と対向して配置されるもので、スクイブ43の作動時に、周囲に配置される破断予定部51を破断させて、中央付近に位置する部位を、開き時の先端50a側として開く複数の扉部50を有する構成とされている。実施形態の場合、破断予定部51は、天井壁49の中央C2(シリンダ22の中心軸C1と一致、図10参照)から略放射状に延びる線状として、複数箇所(実施形態の場合、6箇所)に、形成され、扉部50は、放射状に開く構成とされている。実施形態の場合、破断予定部51は、天井壁49に、内面側から、肉厚の1/2程度の深さの切込みを連続的に設けるようにして構成されている(図9参照)。扉部50は、この破断予定部51間の部位から構成されるもので、実施形態の場合、外形形状を略同一の略三角板状とした6枚とされて、放射状に開く構成とされている。各扉部50は、それぞれ、周壁48との境界部位付近(元部50b側)を開き時の回転中心として、開き前の中央付近に位置する先端50a相互を離隔させるように、放射状に開くこととなる(図9,10の二点鎖線参照)。具体的には、各扉部50は、中央付近となる先端50a側をピストン54側に向けるように開くこととなる。実施形態の場合、各扉部50は、先端50aを、ピストン54の底面部55に形成される後述する凹部56内に進入させるようにして、開くこととなる。具体的には、各扉部50は、開き前における軸直交方向側の長さ寸法L1(周壁48における小径部48bの外径寸法D3の1/2と略一致、図9参照)を、作動前のガス発生器42の天井壁49表面とピストン54の底面部55表面との離隔距離W1より、大きくするように、構成されている(図8,9参照)。
【0032】
ピストン54は、シリンダ22の本体部23における摺動孔24の内周面24aに対して摺動可能な外径寸法を有した略円柱状とされるもので、ガス発生器42側となる下面側の底面部55の中央付近に、表面を支持ロッド64側となる上方へ凹ませるような凹部56を、配設させている。ピストン54は、作動前の状態において、底面部55をガス発生器42の天井壁49近傍に位置させるように、シリンダ22内に、配置されている。ピストン54の底面部55とガス発生器42の天井壁49との間の離隔距離W1は、上述したごとく、ガス発生器42の各扉部50の長さ寸法L1より小さく設定されており、具体的には、離隔距離W1は、長さ寸法L1の1/3程度に設定されている。このピストン54の底面部55とガス発生器42の天井壁49との離隔距離W1は、小さすぎても好ましくなく、作動初期における作動用ガスGの流入開始時に、内部に充満した作動用ガスGによって、ピストン54を円滑に前進移動開始可能とするように、設定することが望ましい。
【0033】
底面部55に形成される凹部56は、中央C3を、シリンダ22の中心軸C1(ピストン54の中心軸と一致)、すなわち、ガス発生器42のハウジング47における天井壁49の中央C2、と一致させるように構成されており、開口幅寸法W2(図8参照)を、天井壁49の外径寸法(周壁48の外径寸法D3と略一致)より小さくするように、構成されている。具体的には、凹部56の開口幅寸法W2は、天井壁49の外径寸法(周壁48の外径寸法D3)の1/2程度に設定されている。換言すれば、天井壁49に形成される各扉部50が、開き時の回転中心となる元部50b側の部位を、凹部56の外周縁を構成する周壁部57の内周面57aより外方に位置させるように、構成されている。そして、実施形態では、扉部50が、先端50aを凹部56内に進入させるようにして開くことから、底面部55における凹部56の周縁を構成する周壁部57が、開いた各扉部50の先端50aに対して、ピストン54の中心軸(シリンダ22の中心軸C1と一致)から放射方向の外方側で重なることとなる。さらに、実施形態では、この周壁部57における内周面57aは、開いた各扉部50の先端50aと当接して、扉部50の開きを規制するストッパの役目も奏することとなる。なお、実施形態の場合、底面部55に形成される凹部56は、ピストン54から延びる支持ロッド64における後述する軸部65の上端側に頭部66を締結させる際に使用する六角レンチを嵌合させるためのものであり、六角レンチを嵌合可能に、六角柱状に開口して構成されている。底面部55における凹部56の深さ(凹部56の容積)は、作動初期における作動用ガスGの流入開始時に、内部に充満した作動用ガスGによって、ピストン54を円滑に前進移動開始可能な深さ(容積)に、設定されている。
【0034】
そして、実施形態のアクチュエータA1では、各扉部50の長さ寸法L1は、ピストン54の底面部55とガス発生器42の天井壁49との間の離隔距離W1の略3倍に設定されて、開き時に、先端50aを底面部55に形成される凹部56内に進入させることとなり、また、この凹部56は、開口幅寸法W2を、天井壁49の外径寸法(周壁48の外径寸法D3)の1/2程度に設定されている。換言すれば、凹部56の開口幅寸法W2は、各扉部50の長さ寸法L1と略一致させるように、構成されている。そして、各扉部50は、開き時に、凹部56内に進入させた先端50aを、凹部56の周縁を構成する周壁部57の内周面57a(凹部56の側面)に当接されるようにして、先端50aを放射方向の外方側へ向けるような開きを停止されることとなり、実施形態の場合、水平方向(シリンダ22の中心軸C1と直交する方向)に対しての傾斜角度θ(図11参照)を、45°程度として、瞬間的に開きを停止されることとなる。
【0035】
ピストン54における外周面54aには、図7,8に示すように、底面部55側に、Oリング62を嵌合させる嵌合溝58が形成され、底面部55から離れる嵌合溝58の上方に、係止リング61を収納可能な収納溝59が形成されている。収納溝59は、ロック機構Rを構成するものであり、係止リング61を収納した状態で、ピストン54の上昇移動(前進移動)を可能にするとともに、ピストン54の上昇移動(前進移動)後において、係止段部26における外周規制面28と当接するように拡径された係止リング61の係止規制面27との係止状態を維持可能とするように、構成されている(図7参照)。換言すれば、収納溝59は、ピストン54の上昇移動(前進移動)後に、拡径された係止リング61の戻りを防止するように、構成されている。
【0036】
ロック機構Rを構成する係止リング61は、断面を円形としたばね鋼からなる線材を円環状(略C字形状)に曲げ加工して形成されるもので、作動前においては、縮径された状態で、ピストン54に設けられた収納溝59内に収納され、ピストン54の上昇移動(前進移動)後に、係止段部26の外周規制面28と当接するように、復元されて、拡径される構成とされている。
【0037】
Oリング62は、ゴム状弾性体からなるもので、嵌合溝58内に収納された状態で、外周面を、シリンダ22における摺動孔24の内周面24aと摺接させるように、構成されている。このOリング62は、ピストン54とシリンダ22の本体部23との間の気密性を向上させて、ガス発生器42の作動時に、ピストン54と本体部23との間から作動用ガスGが漏れることを防止するために配設されるもので、実施形態の場合、良好な耐熱性を有したシリコンゴムから、構成されている。
【0038】
支持ロッド64は、シリンダ22の軸方向(上下方向)に沿って配設される丸棒状の軸部65と、軸部65の上端側に配設される頭部66と、を備えている。軸部65は、実施形態の場合、ピストン54から延びるように、ピストン54と一体的に構成されている。頭部66は、実施形態の場合、軸部65と別体とされて、軸部65の上端側に締結される袋ナットから、構成されている。軸部65における上端近傍部位には、キャップ30に形成された収納凹部33内に配置されるCリング34を係止可能な凹溝65aが、形成されている(図5参照)。また、支持ロッド64における軸部65と頭部66との境界部位には、Oリング67が、嵌着されている。このOリング67は、作動前に、キャップ30の先端壁部31に設けられた挿通孔32の上端側に形成される凹部32a内に、収納されている(図5参照)。このOリング67は、ゴム状弾性体からなるもので、車両搭載状態における作動前のシリンダ22内の気密性を確保するために、配設されている。具体的には、実施形態の場合、Oリング67は、クロロプレンゴム等の汎用のゴム材料から、形成されている。
【0039】
実施形態の跳ね上げ装置Uでは、センサ6からの信号により、図示しない作動回路が、車両Vと歩行者との衝突を検知若しくは予測した際に、アクチュエータA1におけるガス発生器42が作動されることとなり、図5に示すように、発生した作動用ガスGが、シリンダ22における本体部23内のピストン54を押し上げ、支持ロッド64の頭部66を、受け座16の下面に当接させて、フードパネル10の後端10cを、下方のカウル7との間に隙間を広げるように、上昇させることとなる。そして、上昇移動したフードパネル10の後端10cが、図4に示すように、支持ロッド64の頭部66により下面側を支持された状態で、上方から斜め後下方向に移動する歩行者を受け止めれば、歩行者の運動エネルギーFを受け止めて、フードパネル10の後端10cが塑性変形しつつ下降移動するとともに、このフードパネル10の下降移動に伴って、受け座16に頭部66を当接させている支持ロッド64の軸部65が、歩行者の運動エネルギーFを吸収しつつ、上端側の頭部66を後方に向けるように、曲げ塑性変形されることとなる(図4の二点鎖線参照)。
【0040】
そして、実施形態のアクチュエータA1では、作動時に、ガス発生器42のスクイブ43が点火されれば、ガス発生剤46を充填させているハウジング47の天井壁49に形成される破断予定部51が破断され、扉部50が放射状に開いて、ガス発生剤46が燃焼して発生された作動用ガスGが、シリンダ22内に流出されることとなる。そして、シリンダ22内に収納されたピストン54が、作動用ガスGに押されて、支持ロッド64とともに前進移動(上昇移動)することとなる。また、実施形態のアクチュエータA1では、ガス発生器42のハウジング47において、破断予定部51を配設させた天井壁49が、作動前のピストン54の底面部55と対向して配置されるとともに、ピストン54の底面部55が、中央付近に、表面を凹ませるような凹部56を有し、扉部50の開き時の先端50aを、凹部56内に進入させつつ、凹部56の周縁を構成する周壁部57の内周面57aに当接可能に、構成されている。そのため、作動時に扉部50が開けば、扉部50は、凹部56内に先端50aを進入させつつ開くことから、ガス発生器42とピストン54の底面部55との間の空間Sが、開いた扉部50とピストン54の底面部55に設けられた凹部56(凹部56の周縁を構成する周壁部57)とにより、軸直交方向側を略全面(略全周)にわたって覆われるような態様となって(図11参照)、ガス発生剤46が燃焼して発生した作動用ガスGが、軸直交方向側、換言すれば、シリンダ22の内周面(摺動孔24の内周面24a)側に向かうように、流れることを抑えて、ピストン54の底面部55側に向かうように流れることとなる。
【0041】
このとき、実施形態のアクチュエータA1では、開いた扉部50の先端50aが、それぞれ、凹部56内において、周縁を構成する周壁部57の内周面57aと当接していることから、この開いた扉部50とピストン54の底面部55(凹部56)とによって囲まれる領域(空間S)に作動用ガスGが充満され、この空間S内の内圧を迅速に増大させることができて、作動用ガスGの押圧力を、瞬時に、ピストン54の移動方向に沿って底面部55(凹部56における上面(天井面)56a)に作用させることができる。その結果、作動用ガスGの押圧力を、瞬時にピストン54の底面部55に作用させることができて、ピストン54を迅速に前進移動させることができる。
【0042】
したがって、実施形態のアクチュエータA1では、作動時に、ピストン54を迅速に前進移動させることが可能となる。
【0043】
なお、実施形態のアクチュエータA1では、ピストン54の前進移動に伴って、開いた扉部50の先端50aの周壁部57の内周面57aとの当接状態が解除されれば、扉部50は、先端50aを軸直交方向側に向けるように大きく開くこととなる。
【0044】
そして、特に、実施形態のアクチュエータA1では、ピストン54の底面部55における中央付近に、表面を凹ませるような凹部56を、配設させていることから、作動用ガスGの押圧力を受ける底面部55の受圧面積を広く確保することができる。具体的には、実施形態のアクチュエータA1では、作動当初においては、作動用ガスGの押圧力は、底面部55における凹部56の周縁の部位にはほとんど作用せず、凹部56の上面(天井面)56aと周壁部57における内周面57aの一部とのみに作用することとなるが、ピストン54が前進移動(上昇移動)して、扉部50の凹部56における周壁部57の内周面57aとの当接状態が解除されれば、ピストン54とシリンダ22の本体部23とに囲まれる空間全体に、作動用ガスGが充満されることとなり、作動用ガスGの押圧力は、底面部55における凹部56の周縁の部位と、凹部56の側面(周壁部57の内周面57a)及び上面(天井面)56aの全域と、に作用することとなる。そのため、凹部を設けない場合と比較して、底面部の受圧面積を広く確保することができ、ピストン54を迅速に前進移動(上昇移動)させることができる。
【0045】
また、実施形態のアクチュエータA1では、扉部50を、開き時に、先端50aを凹部56内に進入させる構成であることから、開いた扉部50が、先端50a側を凹部56内に進入させたガイド筒を構成するような態様となる。そのため、発生する作動用ガスGを、確実に凹部56内に向かうように流出させることができ、作動用ガスGの押圧力を、無駄なくピストン54の底面部55(凹部56の上面56b)に作用させることができる。
【0046】
さらに、実施形態のアクチュエータA1では、天井壁49に形成される扉部50は、周囲に、天井壁49の中央C2から略放射状に延びる線状の破断予定部51を配置させて、開き時の外形形状を略同一の略三角板状として、放射状に開く構成とされていることから、開いた扉部50によって、ガス発生器42とピストン54の底面部55との間の空間Sの軸直交方向側を、略全面(全周)にわたって、略均等に覆うことができる。そのため、作動用ガスGの押圧力を、ピストン54の底面部55に対して、底面部55の中心を基準とした略円形のエリアに作用させることができ、作動当初に、より直線的に、ピストン54を前進移動(上昇移動)させることが可能となる。勿論、このような点を考慮しなければ、各扉部が、中央付近の部位を、先端側として開く構成であれば、扉部の形状及び破断予定部の形状はこれに限られるものではなく、例えば、天井壁に、略H字形状の破断予定部を設けて、破断予定部に囲まれる領域を扉部として開かせる構成としてもよい。
【0047】
さらにまた、実施形態のアクチュエータA1では、天井壁49に形成される各扉部50が、開き時の回転中心となる元部50b側の部位を、凹部56の外周縁(周壁部57における内周面57a)より外方に位置させるように構成されて、開き時に、先端50aを凹部56内に進入させる構成とされている。そのため、実施形態のアクチュエータA1では、開き時の各扉部50が、開き角度を90°未満の状態で、先端50aを、凹部56の外周縁を構成する周壁部57の内周面57a(軸直交方向側の側面)に当接されることとなる。その結果、実施形態のアクチュエータA1では、各扉部50が、大きな開き角度で開くことを抑制されて、開き時に各扉部50間に生じる隙間を極力小さくすることができることから、各扉部50間から作動用ガスGが漏れることを極力抑えることができ、作動当初に、効率よくピストン54を前進移動(上昇移動)させることができる。勿論、このような点を考慮しなければ、底面部に凹部を配設させる構成であっても、凹部の開口幅寸法を、天井壁の外径寸法と略一致、もしくは、天井壁の外径寸法より大きくするように、構成してもよい。
【0048】
さらにまた、実施形態のアクチュエータA1では、ピストン54の外周面54aに、シリンダ22の内周面(本体部23における摺動孔24の内周面24a)と摺接されて、ゴム状弾性体からなるOリング62を、配設させていることから、ピストン54とシリンダ22との間の気密性を向上させることができ、作動時におけるピストン54の移動前に、ピストン54とシリンダ22との間から作動用ガスGが漏れることを防止できて、ピストン54を迅速に前進移動させることができる。さらに、このOリング62は、ピストン54の外周面54a側に配置され、作動前の状態において、ガス発生器42の近傍に配置される構成であるものの、実施形態のアクチュエータA1では、ガス発生器42の作動初期において、発生する作動用ガスGが、軸直交方向側となるシリンダ22の内周面側(摺動孔24の内周面24a)側に向かうことを抑えられることから、この作動初期に、Oリング62に高温の作動用ガスGが当たることを極力抑制することができ、ピストン54とシリンダ22との間の気密性を低下させるようなOリング62の劣化を抑えることができる。
【0049】
また、実施形態では、ガス発生器42のハウジング47に形成される扉部50が、開き時に、ピストン54の底面部55に形成される凹部56の周縁を構成する周壁部57の内周面57aと当接可能に、構成されているが、アクチュエータA2として、図12に示すような構成のものを使用してもよい。図12のアクチュエータA2では、ピストン54Aの底面部55Aに形成される凹部56Aの開口幅寸法W3が、ガス発生器42Aにおける天井壁49Aの外径寸法D4より大きく、かつ、ピストン54Aの底面部55Aとガス発生器42Aの天井壁49Aとの離隔距離W4も大きく設定されている。具体的には、扉部50Aは、開き時に、先端50aを、凹部56A内に進入可能な構成とされているものの、この凹部56A内に進入させた先端50aを、凹部56Aの周縁を構成する周壁部57Aの内周面57aと当接させない構成とされている。
【0050】
このようなアクチュエータA2を使用した場合にも、ガス発生器42Aの作動時に、扉部50Aが開けば、ガス発生器42Aとピストン54Aの底面部55Aとの間の空間が、開いた扉部50Aとピストン54Aの底面部55Aとにより、軸直交方向側を略全面(略全周)にわたって覆われるような態様となる(図13参照)。そして、このアクチュエータA2では、図13に示すように、ピストン54Aの底面部55Aに形成される凹部56Aの周縁を構成する周壁部57Aの内周面57aが、一時的に、開いた各扉部50Aの先端50aに対してピストン54Aの中心軸から放射方向の外方側で重なっている構成である。そのため、作動直後の重なり時に、開いた扉部50Aと凹部56Aの上面56a(天井面)との間の隙間から、作動用ガスGが、放射方向の外方に向かうように流れることとなっても、凹部56Aの周縁を構成する周壁部57Aが、開いた扉部50Aの先端50aの外方側を覆っていることから、この凹部56Aにおける開いた扉部50Aと重なっている領域に、作動用ガスGが充満されるような態様となって、充満された作動用ガスGの押圧力を、瞬時に、ピストン54Aの移動方向に沿って、底面部55Aに作用させることができる。その結果、このような構成のアクチュエータA2であっても、作動用ガスGの押圧力を、瞬時にピストン54Aの底面部55Aに作用させることができて、ピストン54Aを迅速に前進移動させることができる。なお、このような構成のアクチュエータA2においても、ピストン54Aの前進移動に伴って、開いた扉部50Aの先端50aの周壁部57Aの内周面57aとの重なり状態が解除されれば、扉部50Aは、先端50aを軸直交方向側に向けるように大きく開くこととなる。
【0051】
さらに、実施形態のアクチュエータA1,A2では、前進移動を上昇させる移動とし、後退移動を下降させる移動とした場合を示したが、作動方向はこれに限定されず、例えば、水平方向の作動方向に、本発明のアクチュエータを使用してもよい。また、本発明のアクチュエータが使用される自動車用安全装置は、フードパネル10を上昇させる跳ね上げ装置U以外でもよい。例えば、運転者や助手席に着座した乗員の膝をニーパネルにより受け止める自動車用安全装置としての膝保護装置のアクチュエータに、本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0052】
10…フードパネル、
22…シリンダ、
42,42A…ガス発生器、
47,47A…ハウジング、
49,49A…天井壁、
50,50A…扉部、
50a…先端、
51…破断予定部、
54,54A…ピストン、
55,55A…底面部、
56,56A…凹部、
57,57A…周壁部、
57a…内周面、
64…支持ロッド、
G…作動用ガス、
U…フード跳ね上げ装置、
A1,A2…アクチュエータ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用安全装置に使用されて、
筒状のシリンダ内に設けたガス発生器から発生する作動用ガスにより、前記シリンダ内に配置されたピストンを、該ピストンに連結された支持ロッドとともに移動させるピストンシリンダタイプのアクチュエータであって、
前記ガス発生器が、燃焼時に前記作動用ガスを発生するガス発生剤を内部に充填させたハウジングと、前記ガス発生剤に点火可能とされるスクイブと、を有する構成とされ、
前記ハウジングにおいて、作動前の前記ピストンの底面部と対向して配置される天井壁が、前記スクイブの作動時に、周囲に配置される破断予定部を破断させて、中央付近に位置する部位を、開き時の先端側として開く複数の扉部を有する構成とされ、
前記ピストンの底面部が、中央付近に、表面を凹ませるような凹部を、有し、前記扉部の開き時に、前記扉部の先端を前記凹部内に進入させるようにして、前記扉部の先端を当接可能、若しくは、前記各扉部の先端に対して、前記底面部における前記凹部周縁を構成する周壁部を、前記ピストンの中心軸から放射方向の外方側で、重ね可能に、構成されていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記天井壁に形成される各扉部が、開き時の外形形状を略同一として、放射状に開く構成とされていることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記天井壁に形成される各扉部が、開き時の回転中心となる元部側の部位を、前記凹部の外周縁より外方に位置させるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記ピストンの外周面に、前記シリンダ内周面と摺接されて、ゴム状弾性体からなるOリングが、配設されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【請求項1】
自動車用安全装置に使用されて、
筒状のシリンダ内に設けたガス発生器から発生する作動用ガスにより、前記シリンダ内に配置されたピストンを、該ピストンに連結された支持ロッドとともに移動させるピストンシリンダタイプのアクチュエータであって、
前記ガス発生器が、燃焼時に前記作動用ガスを発生するガス発生剤を内部に充填させたハウジングと、前記ガス発生剤に点火可能とされるスクイブと、を有する構成とされ、
前記ハウジングにおいて、作動前の前記ピストンの底面部と対向して配置される天井壁が、前記スクイブの作動時に、周囲に配置される破断予定部を破断させて、中央付近に位置する部位を、開き時の先端側として開く複数の扉部を有する構成とされ、
前記ピストンの底面部が、中央付近に、表面を凹ませるような凹部を、有し、前記扉部の開き時に、前記扉部の先端を前記凹部内に進入させるようにして、前記扉部の先端を当接可能、若しくは、前記各扉部の先端に対して、前記底面部における前記凹部周縁を構成する周壁部を、前記ピストンの中心軸から放射方向の外方側で、重ね可能に、構成されていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記天井壁に形成される各扉部が、開き時の外形形状を略同一として、放射状に開く構成とされていることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記天井壁に形成される各扉部が、開き時の回転中心となる元部側の部位を、前記凹部の外周縁より外方に位置させるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記ピストンの外周面に、前記シリンダ内周面と摺接されて、ゴム状弾性体からなるOリングが、配設されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−51366(P2011−51366A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199312(P2009−199312)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
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