説明

アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂、その製造方法、及びそれを含むポリオレフィン素材用塗料組成物

このアクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂の製造方法は、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂に、1個の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体とその他のビニル系単量体とを含む単量体混合物を、環状エーテル化合物の存在下でグラフト共重合させる。また、前記環状エーテル化合物を、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂100質量部に対し、1〜100質量部添加してもよく、前記環状エーテル化合物が、ジオキサン及び/または1,3−ジオキソランであってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる素材に対して優れた密着性を有するアクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂、前記樹脂の製造方法、及び前記樹脂を含むポリオレフィン素材用塗料組成物に関する。
【背景技術】
ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂は、優れた性質を有しつつ安価であることから、自動車部品等の素材に多量に使用されている。しかしながら、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂等の極性を有する合成樹脂とは異なり、ポリオレフィン系樹脂は非極性で且つ結晶性を有するため、塗装や接着が困難であるという問題を呈している。
そこで、この問題を解決するために、従来、ポリオレフィン系樹脂からなる素材の表面をプラズマ処理やガス炎処理して活性化することにより付着性を改良する試みがなされているが、これらの方法は、工程が複雑で多大な設備費用がかかり、且つ時間的ロスを伴うこと、また前記素材の形状の複雑さ及び顔料や添加物の影響により、表面処理効果にばらつきを生ずること等の欠点を有している。
このような表面処理(前処理)なしに塗装する方法としては、例えば、特公平6−2771号公報に開示されているように、自動車のポリプロピレンバンパー塗装にみられるような、プライマー組成物を用いる方法が種々提案されている。
一般に、このようなプライマー組成物としては、例えば、特公平1−16414号公報に開示されているように、ポリオレフィン類を不飽和カルボン酸及び/またはその酸無水物で変性して塩素化した塩素化ポリオレフィン系樹脂を主成分としたものが挙げられる。また、例えば、特公平3−60872号公報においては、塩素化ポリプロピレンと液状ゴムへのラジカル重合性不飽和物のグラフト共重合により、ポリオレフィンと他の極性樹脂との両者に付着するバインダーとしての効果が確認されている。
しかしながら、これらの塩素化ポリオレフィン系樹脂組成物は、プライマー組成物や上塗り塗料に含まれるアクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系樹脂等との相溶性が悪く、均一なフィルムを形成するのが困難であった。また、液状ゴムを使用した変性物は、塗膜にタックが生じることがあり、相溶性、溶液安定性を十分に改善することはできなかった。
これらの欠点を解消するために、例えば、特開2002−309161公報に開示されているように、酸変性塩素化ポリオレフィンと水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルをエステル結合させて、酸変性塩素化ポリオレフィンに二重結合を導入し、さらに(メタ)アクリル酸系単量体をグラフト共重合して得られるアクリル変性塩素化ポリオレフィンにより、相溶性、溶液安定性が改善されることが見出されている。
しかしながら、上記特開2002−309161公報に開示されたアクリル変性塩素化ポリオレフィンの調製方法で得られた樹脂を含むポリオレフィン素材用塗料組成物は、組成物自体の安定性が悪く、静置して保存した場合に塗料の相分離の現象が生じるという、塗料の性状の致命的な欠点を有する。さらに、前記組成物の全成分を完全に均一に溶解することができず塊が残存してしまうため、前記組成物を使用して塗膜とすると、塗膜自体に「ぶつ」が形成され、塗膜の外観が美観を損ねるものであるという欠点をも有する。
【発明の開示】
本発明の目的は、上記のような従来技術の問題を解決し得て、ポリオレフィン系樹脂を含む素材に対する密着性に優れ、且つ塗料の性状に優れて良好な高温及び低温での安定性を有し、塗膜とした際に「ぶつ」を形成することがなく塗膜の外観が非常に優れた、アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂を含むポリオレフィン素材用塗料組成物を提供することにある。
本発明者は、その鋭意研究の結果、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂に、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体とその他のビニル系単量体とを含む単量体混合物を重合させる際に、環状エーテル化合物の存在下で重合反応を実施することにより、本発明の目的を達成できるアクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂を製造することが可能であることを見出した。
本発明の第1の態様は、アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂の製造方法であって、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂に、1個の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体とその他のビニル系単量体とを含む単量体混合物を、環状エーテル化合物の存在下でグラフト共重合させる。
また、前記環状エーテル化合物を、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂100質量部に対し、1〜100質量部添加してもよい。
さらに、前記環状エーテル化合物が、ジオキサン及び/または1,3−ジオキソランであってもよい。
本発明の第2の態様は、アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂であって、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂に、1個の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体とその他のビニル系単量体とを含む単量体混合物を、環状エーテル化合物の存在下でグラフト共重合している。
また、本発明の第3の態様は、ポリオレフィン素材用塗料組成物であって、上記のアクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂を少なくとも含み、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂を、5〜40質量%含む。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明に係るアクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂を製造するための第一の工程として、少なくとも1種のポリオレフィンに、α,β−不飽和カルボン酸及びその酸無水物から選択される少なくとも1種の酸性単量体をグラフト共重合して、酸変性ポリオレフィンが形成される。
本発明において、「ポリオレフィン」は、結晶質または非晶質のいずれでも良く、ポリプロピレンまたはプロピレン−α−オレフィン共重合体等を指す。「プロピレン−α−オレフィン共重合体」は、プロピレンを主体としてこれにα−オレフィンが共重合したものを指し、ここでα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどを1種または数種使用することができる。プロピレン−α−オレフィン共重合体のプロピレン成分とα−オレフィン成分との比率は特に制限されないが、プロピレン成分が50モル%以上であることが好ましい。
本発明において、ポリオレフィンにグラフト共重合されるα,β−不飽和カルボン酸またはその酸無水物としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸及びこれらの酸無水物が挙げられる。これらの中では酸無水物が好ましく、無水マレイン酸、無水イタコン酸が特に好ましい。グラフト共重合する量は、0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは1〜5質量%である。
ポリオレフィンに、α,β−不飽和カルボン酸またはその酸無水物をグラフト共重合する方法としては、ラジカル発生剤として有機過酸化物の存在下での溶液法や溶融法などの公知の方法が挙げられる。
ラジカル発生剤として使用できる有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ジクミル、過酸化ジ−t−ブチル等が挙げられ、反応温度と分解温度に従って適宜選択される。
次に、上記方法に従って得られた酸変性ポリオレフィンを塩素化して、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂を得る。好ましくは、前記樹脂は、10〜40質量%の塩素含有率を有する。ここで、塩素化の方法としては公知の方法のいずれでも良い。
本発明で使用できる酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ハードレジンM−28(東洋化成工業(株)製、塩素化率20%、固形分20%、トルエン溶液)が挙げられる。
続いて、上記方法に従って得られた酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂に、1個の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体とその他のビニル系単量体とを含む単量体混合物を、環状エーテル化合物の存在下で重合させて、本発明に係るアクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂を得る。
本発明において、「1個の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体」は、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂と反応してそれをエステル化するために、1個のみの水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体を指す。もし2個以上の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体を用いてしまうと、エステル結合させる段階で架橋が始まり、ゲル化が進行してしまうため好ましくない。
ここで、「1個の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体」としては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ポリプロピレングリコールアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレート等が挙げられる。
本発明において、「その他のビニル系単量体」とは、前述の「1個の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体」以外のいずれかの単量体を指す。このような単量体としては、特に(メタ)アクリル酸系単量体が挙げられ、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、及び式1で表されるメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(n=2〜90)等が挙げられる。

本発明において、「環状エーテル化合物」は、前述の重合反応において、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂にアクリル酸系単量体をグラフト共重合する際に添加することができるいずれかの環状のエーテル化合物を指す。
本発明の一つの主題は、前述のグラフト共重合の際に、この環状エーテルを加えると、最終生成物として、優れた物性を有するアクリル変性(グラフト)塩素化ポリオレフィン樹脂が得られることである。いずれかの特定の理論に結びつけられることを期待しないが、前述の環状エーテル化合物は、グラフト共重合の際に酸無水物に結合することが予想され、塗膜を形成した後は乾燥される際に塗膜から除去される。
このような環状エーテル化合物としては、特にジオキサン、1,4−ジオキサン−2,3−ジオール、1,3−ジオキソランが、オキセタン系化合物として2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−エポキシプロパン、β−プロピオラクトン、モノ及びジメチルプロピオラクトン等が、フラン系化合物としてフラン、2,3−ジヒドロフラン、2,5−ジヒドロフラン、テトラヒドロフラン、2,2,5,5−テトラメチルテトラヒドロフラン、2−ヘプチルテトラヒドロフラン等が挙げられ、特にジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフランを好適に使用することができる。
本発明の一つの実施態様として、環状エーテル化合物は、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂の100質量部に対して、1〜100質量部の含量で、前述のグラフト共重合反応に添加されることが望ましい。つまり、環状エーテル化合物は組成物中に1質量部という微量で存在すれば良く、コストの問題から100質量部まで存在すれば十分である。
本発明で使用されるグラフト共重合反応の条件は、ラジカル発生剤の存在下で、いずれの公知の反応を使用しても良く、ラジカル発生剤としては、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル2,2−アゾビスイソブチレート等のアゾ化合物が使用できる。
本発明のさらなる実施態様として、塩素含有率10〜40質量%の酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂に、1個の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルと及びその他のビニル系単量体とを含む単量体混合物を、環状エーテル化合物の存在下でグラフト共重合させることを特徴とする、前述のアクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂の製造方法が提供される。
本発明のもう一つの実施態様として、本発明に係るアクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂を含む、ポリオレフィン素材用塗料組成物が提供され、本発明に係る組成物は、前記酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂を、5〜40質量%の含有量で含む。ここで「5〜40質量%の含有量」とは、前記ポリオレフィン素材用塗料組成物の固形分中に占める前記酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂の割合が5〜40質量%であることを指す。
前記ポリオレフィン素材用塗料組成物の固形分中に占める前記酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂の割合が5質量%以上であることによって、前記組成物がポリオレフィン系樹脂を含む素材に対する密着性に優れたものとなり、且つ前記割合が40質量%以下であることによって、前記組成物が塗料の性状に優れて良好な高温及び低温での安定性を有するものとなる。さらに、本発明に係るアクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂を含むことによって、前記組成物を塗膜とした際に「ぶつ」を形成することがなく外観が非常に優れた塗膜を形成することができる。
本発明の組成物は、顔料を添加し、分散して使用することができる。顔料としては、カーボンブラック、二酸化チタン、タルク、亜鉛華、アルミペースト等の無機系顔料や、アゾ系等の有機系顔料が使用できる。また、得られる樹脂組成物溶液は、実用濃度において均一な溶液であり、これをフィルム等にキャストしたコーティング膜は、均一で透明である。このため、ワンコート塗料として使用しても、塗膜光沢性が良好な塗膜が得られる。
【実施例】
次に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(製造例1)
(樹脂Aの製造)
冷却器、温度計、モノマー滴下装置、及び攪拌機を備えた2リットル4つ口フラスコに、ハードレジンM−28(東洋化成工業(株)製の酸変性塩素化ポリプロピレン、塩素化率20%、固形分20%、トルエン溶液)800g、1,3−ジオキソラン4g、及び重合開始剤の過酸化ベンゾイル(BPO)2.4gを仕込み、フラスコ内温を85℃に昇温し、次いでメチルメタクリレート(MMA)160g、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)80g、2−エチルヘキシルメタクリレート(EHMA)100g、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)60g、トルエン56gからなるビニル系単量体混合物を3時間にわたって滴下し、以後も同温度で3時間反応を続け、樹脂固形分45%のアクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂(樹脂A)を得た。
(製造例2)
(樹脂Bの製造)
1,3−ジオキソランを40g添加し、トルエンを添加しないことを以外は実施例1と同様にして、樹脂固形分45%のアクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂(樹脂B)を得た。
(製造例3)
(樹脂Cの製造)
1,3−ジオキソランを80g添加し、トルエンを添加しないことを以外は実施例1と同様にして、樹脂固形分44%のアクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂(樹脂C)を得た。
(製造例4)
(樹脂Dの製造)
1,3−ジオキソランを112g添加し、トルエンを添加しないことを以外は実施例1と同様にして、樹脂固形分43%のアクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂(樹脂D)を得た。
(製造例5(比較例))
(樹脂Eの製造)
1,3−ジオキソランを添加せず、トルエンを40g添加する以外は実施例1と同様にして、樹脂固形分45%のアクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂(樹脂E)を得た。
製造例1〜5に開示された樹脂A〜Eの組成は、以下の表1の通りである。

(実施例1〜8及び比較例1〜2)
本発明に係るアクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂(樹脂A〜D)、及び従来技術に係るアクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂(樹脂E)を適宜選択して配合し、以下の実施例1〜8及び比較例1〜2のポリオレフィン素材用塗料組成物を調製した。
実施例1:樹脂A、100質量部
実施例2:樹脂C、100質量部
実施例3:樹脂C、90質量部;酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(M−28)、10質量部
実施例4:樹脂C、50質量部;アクリルポリオールA、50質量部
実施例5:樹脂C、20質量部;アクリルポリオールA、80質量部
実施例6:樹脂C、50質量部;アクリルポリオールB、50質量部
実施例7:樹脂B、100質量部
実施例8:樹脂D、100質量部
比較例1:樹脂E、100質量部
比較例2:樹脂E、90質量部;1,3−ジオキソラン、10質量部
さらに、得られた実施例1〜8及び比較例1〜2のポリオレフィン素材用塗料組成物の高温及び低温での安定性(塗料の性状)及び塗膜の外観について評価し、並びに初期付着と耐温水性試験後の付着性についても評価した。各評価方法は、以下の通りである。
1.塗料の安定性:実施例1〜8及び比較例1〜2の塗料を下記条件で保存した。
1−1.高温安定性試験:40℃で240時間保持する
1−2.低温安定性試験:−20℃で240時間保持する
2.塗料性状の評価:1で行った安定性試験後に、常温でさらに3時間程度放置した後の塗料性状を目視により以下の基準で評価する。
*1=ほとんど初期と変わらない粘度を保っている
*2=粘度上昇及び分離が認められる
*3=著しい粘度上昇及び分離が認められる
3.塗膜外観の評価:1で行った安定性試験後の各ポリオレフィン素材用塗料組成物を、ポリオレフィン板上に乾燥塗膜25μmになるようにアプリケーターで塗布し、常温で30分程度放置した後の塗膜外観を目視により以下の基準で評価する。
*4=ほとんど初期と変わらない光沢を保っている
*5=光沢低下
*6=著しい光沢低下
4.初期付着及び耐温水性試験後の付着性の評価:ポリオレフィン板上に乾燥塗膜25μmになるようにアプリケーターで塗布し、80℃、30分乾燥した試験板を初期付着性、及び耐温水性試験の後の付着性について評価した。耐温水性条件としては、40℃温水中に72時間浸漬後、取り出して付着試験を実施した。付着試験は、JIS K5400に記載の碁盤目法により判断した。
*7=塗膜面に剥離部位がない
*8=塗膜面に剥離部位がある
実施例1〜8及び比較例1〜2のポリオレフィン素材用塗料組成物の樹脂等の成分の配合量、並びに各試験の評価についての結果が、以下の表2に記載されている。

表2から明らかなように、本発明に係るポリオレフィン素材用塗料組成物は、従来技術の組成物と比較して、高温と低温の両者について塗料の安定性に優れ、且つ塗膜の外観も優れ、さらに初期付着と耐温水試験後の付着性についても優れた結果を示すものである。
【産業上の利用の可能性】
本発明のアクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂の製造方法によれば、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂に、1個の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体とその他のビニル系単量体とを含む単量体混合物を、環状エーテル化合物の存在下でグラフト共重合させるので、高温と低温の両者について優れた安定性(塗膜の性状)を示し、良好な塗膜外観を有し、且つ初期付着と耐温水試験後の付着性についても良好な結果を示すアクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂が製造できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂の製造方法であって、
酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂に、1個の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体とその他のビニル系単量体とを含む単量体混合物を、環状エーテル化合物の存在下でグラフト共重合させる。
【請求項2】
請求項1記載のアクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂の製造方法であって、
前記環状エーテル化合物を、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂100質量部に対し、1〜100質量部添加する。
【請求項3】
請求項1記載のアクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂の製造方法であって、
前記環状エーテル化合物が、ジオキサン及び/または1,3−ジオキソランである。
【請求項4】
アクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂であって、
酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂に、1個の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体とその他のビニル系単量体とを含む単量体混合物を、環状エーテル化合物の存在下でグラフト共重合している。
【請求項5】
ポリオレフィン素材用塗料組成物であって、
請求項4記載のアクリル変性塩素化ポリオレフィン樹脂を少なくとも含み、
酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂を、5〜40質量%含む。

【国際公開番号】WO2004/074337
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【発行日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−502708(P2005−502708)
【国際出願番号】PCT/JP2004/001714
【国際出願日】平成16年2月17日(2004.2.17)
【出願人】(000224123)藤倉化成株式会社 (124)
【Fターム(参考)】