説明

アスベスト防護服の再利用化方法

【課題】 アスベスト防護服の再利用化を図って処理費用の発生を押えるようにしたアスベスト防護服の再利用化方法を提供する。
【解決手段】 アスベストを除去する際に使用した、アスベスト粉塵が付着する防護服Wに湿潤溶液Lを吹き付け又は塗布し、アスベスト粉塵を湿潤させる湿潤工程と、水溶性の回収袋10内に前記湿潤工程を経た防護服Wを収納して、この回収袋10を密閉し、さらに回収袋10を非水溶性の保護袋11内に収納して、この保護袋11を密閉して二重梱包する回収工程と、前記保護袋11から密閉された回収袋10を取り出して洗濯槽13a内に投入して水洗いする洗浄工程とを含み、この洗浄工程で回収袋10が水によって溶け、前記防護服Wが水によって洗浄されるため、防護服Wの再利用化を図ることができ、特別管理産業廃棄物の処理費用を無くして処理コストを安価にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスベストを除去する際に使用する防護服の再利用化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の解体、建築物の内外装材などの除去を行う際に、発生するアスベスト等の粉塵が施工区域外に飛散することを防止するため、その施工区画をビニールシート等の遮蔽物によって覆って養生し、この施工区画内部を負圧に維持して施工区画外への粉塵の飛散を防止するようにした施工区画装置が知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−279861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の施工区画装置内での作業では、アスベスト等の粉塵から作業者を保護するために防護服を使用しなければならない。ところが、この防護服にはアスベスト等の粉塵が付着するため、防護服自体も特別管理産業廃棄物として処理しなければならず、廃棄するための処理費用が一般廃棄物とは違い、特定管理産業廃棄物として処理するために処理コストが一般廃棄物の10倍以上となっている問題を有している。
【0005】
本発明の課題は、アスベスト防護服の再利用化を図って処理費用の発生を押えるようにしたアスベスト防護服の再利用化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
本発明のアスベスト防護服の再利用化方法は、建築物におけるアスベスト施工面のアスベストを除去する際に使用した、アスベスト粉塵が付着する防護服に湿潤溶液を吹き付け又は塗布し、アスベスト粉塵を湿潤させるようにする湿潤工程と、水溶性の回収袋内に前記湿潤工程を経た防護服を収納して、この回収袋を密閉し、さらに回収袋を非水溶性の保護袋内に収納して、この保護袋を密閉して二重梱包する回収工程と、前記保護袋から密閉された回収袋を取り出して洗濯槽内に投入して水洗いする洗浄工程とを含み、この洗浄工程で回収袋が水によって溶け、前記防護服が水によって洗浄されることを特徴とする。
【0007】
このように構成したことにより、防護服を脱衣する際に湿潤しているアスベスト粉塵は飛散しないので、作業者への二次被害を防止でき、安全性の高い作業環境が得られる。また、防護服は二重梱包されているため、湿潤したアスベスト粉塵が漏洩することなく保管性が良好であり、搬送時の安全性も確保できる。
また、防護服を回収袋に収容した状態で洗浄できるため、取り扱いが容易であってアスベスト粉塵の再飛散は発生しなく安全性が高い。このように、安全かつ容易に、アスベスト除去作業中に付着したアスベスト粉塵を除去して防護服の再利用化を図ることができ、特別管理産業廃棄物の処理費用を無くして処理コストを安価にする。
【0008】
前記洗濯槽内の水は、30度から40度の温水となしたので、安全かつ素早く回収袋を溶かし、この温水で防護服を洗浄できる。温水の温度が30度未満では回収袋の溶ける時間が長くなり、40度を超えると熱すぎて作業がしにくくなる場合があるため、上記範囲が望ましいと言える。
【0009】
前記洗濯槽には廃液浄化装置を接続し、この廃液浄化装置によって洗濯槽内の廃液を浄化することにより、アスベストのみを分離回収できるため、二次的なアスベストによる汚染を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に示す実施例を参照して説明する。図1は、本発明に係るアスベスト防護服の再利用化方法の工程の模式図である。図1において、防護服Wの再利用化方法は、防護服Wに湿潤溶液Lを吹き付け又は塗布するための湿潤工程と、この湿潤工程を経た防護服Wを回収する回収工程と、この回収工程を経た防護服Wを洗浄する洗浄工程とを含んでいる。
【0011】
先ず、防護服Wの湿潤工程は図2に示すように、一例として建築物1に施工されたアスベスト施工面1aのアスベストを含有する吹付材2などを除去した後に行われる。吹付材2などの除去に先立って、除去するための作業区域をポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)、塩化ビニルなどのプラスチック製の養生シート3で覆って養生する。その内部区域をHEPAフィルター(High Efficiency Particulate Air Filter)を内蔵した換気集塵装置4によって、外部に対して負圧状態とするように維持管理した負圧施工区画5が設けられる。なお、養生シート3は床面の場合には、厚さ0.15mm以上のものが複層(2重)に使用され、壁面の場合には厚さ0.08mm以上のものが単層で使用される。HEPAフィルターにおける微粒子の捕集は、「濾遇(ふるい効果)」、「慣性(衝突)」、「さえぎり(静電吸着)」、「拡散(ブラウン運動)」の原理を応用しており、最も捕りにくいとされる0.3ミクロンの粒子を99.97%以上捕集できるものである。
【0012】
また、負圧施工区画5には、この区画内への作業者の出入りのためのセキュリティゾーン6が附設される。このセキュリティゾーン6はアスベスト粉塵が負圧施工区画5から外部へ漏洩することを防止するために設けられる。セキュリティゾーン6は外部から負圧施工区画5内へ向う方向順に、更衣室6a、洗浄室6b、前室6cなどから構成される。なお、これらの室は、両側に歯がならび、その間の金具を動かして開閉するジッパ式のファスナ7を備えるカーテン状の仕切シート8によって仕切られている。
【0013】
セキュリティゾーン6を通って負圧施工区画5に入った作業者が、防護服Wを着用した状態で、アスベストを含有する吹付材2などを、ヘラ、ケレン棒などの手工具、高圧水によるウオータージェット、あるいはドライアイス粒を噴きつけるドライアイスブラストなどの各種剥離手段(図示せず)によって、剥離して除去する作業を行う。そうすると、その作業者が着用する防護服Wには、負圧施工区画5内で飛散・浮遊しているアスベスト粉塵が付着することとなる。この状態で負圧施工区画5内、若しくはセキュリティゾーン6内で防護服Wの湿潤工程を行う。
【0014】
この湿潤工程に使用する湿潤装置9(図2参照)としては、負圧施工区画5内、若しくはセキュリティゾーン6内に設けられる。この湿潤装置9はタンク9a、ポンプ9bなどを備え、タンク9b内に収容する湿潤溶液Lをポンプ9bを介してノズル、シャワーヘッドなどの噴出装置9dから防護服Wに吹き付け又は塗布するようになっている。
【0015】
また、湿潤溶液Lとしては、付着するアスベストを半固溶体状態にするゲル化剤が好適であり、たとえば水溶性高分子化合物(キサンタンガム、グアーガム、カルボキシメチルセルロースなど)の水溶液である。
【0016】
また、防護服Wとしては、日本工業規格JIS−B−9920の清浄度(クラス)5に対応させたクリーンウエアを使用する。このクリーンウエアはポリエステル繊維からなり、人体からでる自塵(0.3ミクロン程度)を発塵させず、かつ外部から0.1ミクロン程度の粒子の浸入を規制し、帯電、静電防止され、アスベスト粉塵が飛散している暴露環境から人体を防護する。
【0017】
そして、この湿潤工程を経た防護服Wを回収する回収工程は、図2に示すように、セキュリティゾーン6内で行われる。このセキュリティゾーン6内には30度以上の温水に溶解する水溶性を備えた、例えばポリビニールアルコールからなる水溶性プラスチックフィルムPVA(バイオマスプラスチックフィルム)のフィルム状の袋体である回収袋10が用意される。この回収袋10内に前記湿潤工程によって処理された防護服Wを収納する(図1参照)。その後は回収袋10を密閉して防護服Wを外部と隔離する。さらに、この回収袋10は、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)、塩化ビニルなどのプラスチック製の非水溶性の備える保護袋11によって二重梱包される。
【0018】
次に、回収工程を経た防護服Wを洗浄する洗浄工程について説明する。図1に示すように、図2の回収工程によって防護服Wを隔離し、保護袋11によって二重梱包された回収袋10は、負圧施工区画5、セキュリティゾーン6とは離れた個所に設けられた負圧クリーンルーム12(図3参照)まで搬送される。この負圧クリーンルーム12内に設置される洗浄装置13によって防護服Wを洗浄する。すなわち保護袋12を開封して、この保護袋12から回収袋11を取り出し、この回収袋11を密閉状態のまま(防護服Wは隔離)、洗浄装置13の洗濯槽13a内に、投入することにより洗浄が行われる。なお、負圧クリーンルーム12内には、HEPAフィルターを内蔵した換気集塵装置4aが接続され、この換気集塵装置4aによって内部を外部に対して負圧状態とするように維持管理する。
【0019】
この洗浄時に用いる洗濯槽13a内の水としては、好適には、30度から40度に調整した温水が使用される。この温水によって回収袋10は素早く溶け、防護服Wが温水によって洗浄される。洗浄が終了した防護服Wは洗浄槽13aから取り出して乾燥修理した後に、真空包装して再利用可能な状態で保管する。
【0020】
このように、温水の温度を30度から40度に設定しているため、洗浄が素早く行える。また、温水の温度が30度未満では回収袋10の溶ける時間が長くなり、40度を超えると、熱すぎて作業がしにくくなる場合があるため好ましくない。
【0021】
なお、二重梱包された回収袋10の搬送時には、アスベスト粉塵による二次飛散を防止するためにクーラーボックスなどの搬送箱14(図3参照)によって搬送される。そして、負圧クリーンルーム12内の洗浄装置13には、防護服Wを洗浄した後のアスベストを含んだ廃液を浄化するための図示しないフィルターを内装した廃液浄化装置15が接続され、この廃液浄化装置15のフィルターによってアスベストのみを分離回収している。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る防護服の再利用化方法の工程の模式図。
【図2】負圧施工区画、セキュリティゾーンを示す模式図。
【図3】負圧クリーンルームを示す模式図。
【符号の説明】
【0023】
1 建築物
1a アスベスト施工面
10 回収袋
11 保護袋
13a 洗濯槽
15 廃液浄化装置
W 防護服
L 湿潤溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物におけるアスベスト施工面のアスベストを除去する際に使用した、アスベスト粉塵が付着する防護服に湿潤溶液を吹き付け又は塗布し、アスベスト粉塵を湿潤させるようにする湿潤工程と、
水溶性の回収袋内に、前記湿潤工程を経た防護服を収納して、その回収袋を密閉し、さらに回収袋を非水溶性の保護袋内に収納して、この保護袋を密閉して二重梱包するする回収工程と、
前記保護袋から密閉された回収袋を取り出して洗濯槽内に投入して水洗いする洗浄工程とを含み、
この洗浄工程で回収袋が水によって溶け、前記防護服が水によって洗浄されることを特徴とするアスベスト防護服の再利用化方法。
【請求項2】
前記洗濯槽内の水は、30度から40度の温水となしたことを特徴とする請求項1に記載のアスベスト防護服の再利用化方法。
【請求項3】
前記洗濯槽には廃液浄化装置を接続し、この廃液浄化装置によって洗濯槽内の廃液を浄化することを特徴とする請求項1、又は2に記載のアスベスト防護服の再利用化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−19284(P2009−19284A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−180715(P2007−180715)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【特許番号】特許第4024292号(P4024292)
【特許公報発行日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(593127739)矢馬ピー.イー.エム株式会社 (6)
【Fターム(参考)】