説明

アゾ染料

【課題】高い鮮明性及び発色性の特徴を有し、耐熱性、耐湿熱性、耐水性などの堅牢性に優れたアゾカチオン染料、及び該染料を用いた組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるアゾカチオン染料及び該染料を含む油性または水性染料組成物。


(一般式(1)においてRは水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、Rは水素原子または置換基を表す。)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なアゾカチオン染料に関する。
【背景技術】
【0002】
下記式(1)で示されるアゾカチオン染料は、イエローあるいはレッド色の色材として各種塗料、水性インキ、油性インキ、インクジェット用インキ、カラーフィルター用、染色用など幅広い用途で使用されている。一般に色材に要求される特性は用途によって異なるものの、着色物が光や熱等に対し堅牢である事が特に強く要求される。
【0003】
特許文献1乃至5には陰イオン成分として、塩素イオンや塩素イオンと塩化亜鉛の複塩を有するアゾカチオン染料が記載されているが、本発明者らの検討の結果、特許文献1乃至5に記載されているモノアゾカチオン染料は耐光性、耐熱性及び耐水性が不十分であった。また特許文献6には陰イオン成分としてフッ素化アルキルスルホニルイオンを有するカチオン染料についての記載はあるが、具体的な化合物の例示は無く、着色物の耐光性、耐熱性、耐湿熱性、耐水性等の堅牢性に関する記載もなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭49−9532号公報
【特許文献2】特開昭50−3122号公報
【特許文献3】特公昭51−24529号公報
【特許文献4】特公昭48−851号公報
【特許文献5】特開昭50−156540号公報
【特許文献6】特開平8−253705公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記のごとく、耐光性、耐熱性、耐湿熱性及び耐水性等の堅牢性に優れる新規なアゾカチオン染料並びに該染料を用いた染料組成物を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前述したような課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、特定の陰イオンを有するアゾカチオン染料が、従来に比べ飛躍的に耐光性、耐熱性、耐湿熱性及び耐水性が向上する事を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明は、
(1)下記一般式(1)のアゾカチオン染料、
【化1】

(一般式(1)においてRは水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、Rは水素原子または置換基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表す。ベンゼン環Aは更にハロゲン原子またはアルキル基で置換されていてもよい。Xはビストリフルオロメタンスルホニルイミドアニオンまたはトリストリフルオロメタンスルホニルメチドアニオンを表す)、
(2)Xがトリストリフルオロメタンスルホニルメチドアニオンである事を特徴とする(1)に記載のアゾカチオン染料、
(3)(1)又は(2)に記載のアゾカチオン染料と少なくとも1種以上の油性溶媒を含有する油性染料組成物、
(4)(1)又は(2)に記載のアゾカチオン染料及び水を含有する水性染料組成物、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアゾカチオン染料は、油性または水性染料組成物を形成して染料着色体に加工すると、従来品よりも堅牢性に優れた特性を示すものである。すなわち、本発明のアゾカチオン染料は染料着色体に好適に利用でき、カラーフィルターやインクジェット用インキ等の幅広い用途に応用できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のアゾカチオン染料は、前記一般式(1)で表される。
【0010】
一般式(1)においてXはビストリフルオロメタンスルホニルイミドアニオンまたはトリストリフルオロメタンスルホニルメチドアニオンを表し、中でもトリストリフルオロメタンスルホニルメチドアニオンが好ましい。
【0011】
一般式(1)においてRは水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。
【0012】
一般式(1)のRにおけるアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基、ベンゾピレニル基等の芳香族炭化水素残基;ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、キノリル基、イソキノリル基、ピロリル基、インドレニル基、イミダゾリル基、カルバゾリル基、チエニル基、フリル基等の芳香族複素環残基、等が挙げられ、特にフェニル基が好ましい。
【0013】
一般式(1)のRにおいて、アリール基はさらに置換基を有してもよく、該置換基としては特に制限はないが、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基等のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基等のアルコキシ基;ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等のヒドロキシアルキル基;メトキシエチル基、エトキシエチル基、エトキシプロピル基、ブトキシエチル基等のアルコキシアルキル基;2―ヒドロキシエトキシ基等のヒドロキシアルコキシ基;2−メトキシエトキシ基、2−エトキシエトキシ基等のアルコキシアルコキシ基;2−スルホエチル基、カルボキシエチル基、シアノエチル基、スルホン酸基、等が挙げられる。
【0014】
一般式(1)のRにおいてアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、等が挙げられる。これらのアルキル基は置換基を有して良く、例えば、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、2−スルホエチル基、カルボキシエチル基、シアノエチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、ブトキシエチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、等が挙げられる。
【0015】
一般式(1)においてRは水素原子または置換基を表す。
【0016】
一般式(1)のRにおける置換基としては、例えば、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、脂肪族オキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、脂肪族オキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、脂肪族スルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロ環スルホニル基、脂肪族スルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、ヘテロ環スルホニルオキシ基、スルファモイル基、脂肪族スルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、ヘテロ環スルホンアミド基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、ヘテロ環オキシカルボニルアミノ基、脂肪族スルフィニル基、アリールスルフィニル基、脂肪族チオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、脂肪族オキシアミノ基、アリールオキシアミノ基、カルバモイルアミノ基、スルファモイルアミノ基、ハロゲン原子、スルファモイルカルバモイル基、カルバモイルスルファモイル基、ジ脂肪族オキシフォスフィニル基、ジアリールオキシフォスフィニル基、等が挙げられる。
【0017】
一般式(1)においてR〜Rはそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表す。
【0018】
一般式(1)のR〜Rにおけるアルキル基としては、Rにおけるアルキル基と同義である。
【0019】
一般式(1)において、ベンゼン環Aは更にハロゲン原子またはアルキル基で置換されていてもよい。
【0020】
一般式(1)のベンゼン環Aにおいて置換されていてもよいハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0021】
一般式(1)のベンゼン環Aにおいて置換されていてもよいアルキル基としては、Rにおけるアルキル基と同義である。
【0022】
本発明のアゾカチオン染料は、例えば、特許文献1または2等に記載された公知の方法で合成することができる。また、Xが塩素アニオン等である市販品を購入し、対応する塩または酸を加え塩交換する事によっても合成する事もできる。
【0023】
本発明のアゾカチオン染料を塩交換により合成する場合は、例えば、Xが塩素アニオンである染料を反応溶媒(例えば、水、またはメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、N,N−ジメチルホルアミド(以下DMFと略記)、N−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略記)等の水溶性極性溶媒が挙げられ、これらの溶媒は単独、または混合してもよい。)に溶解し、対応する塩または酸を0.5〜3等量程度加え、所定温度(例えば0℃〜100℃)で攪拌し、容易に合成でき、析出した結晶をろ取する事により得られる。
【0024】
上記式(1)で示される具体例を、以下の表1乃至表5に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0025】
表1

表2

表3

表4

表5

【0026】
本発明のアゾカチオン染料は、油性染料組成物、または水性染料組成物として各種塗料、水性インキ、油性インキ、インクジェット用インキ、カラーフィルター用着色組成物に用いられる。油性染料組成物および水性染料組成物は、例えば普通紙、コート紙、プラスチックフィルム、プラスチック基板などの被着色材料に用いられる。また、本発明の染料組成物を被着色材料に付与する方法としては、オフセット印刷、凸版印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷などの各種印刷方法あるいはスピンコーター、ロールコーターなどによる塗工方法が挙げられる。
【0027】
本発明の油性または水性染料組成物は、本発明のアゾカチオン染料及び、油性染料組成物の場合は油溶性有機溶媒を、水性染料の場合は水性媒体を含有する。本発明の油性または水性染料組成物においては、本発明のアゾカチオン染料を0.2〜40質量%含有させるのが好ましく、さらには0.5〜20質量%含有させるのがより好ましい。また本発明の油性または水性染料組成物において、色相の調整などの目的で必要に応じて前記一般式(1)以外の色材を添加してもよい。添加できる色材としては、例えば酸性染料、反応性染料、直接性染料、カチオン染料、塩基性染料等の水溶性染料、分散染料、ソルベント染料等の油溶性染料、有機顔料、カーボンブラック等が挙げられ、溶媒に溶解した状態あるいは分散した状態で添加される。
【0028】
本発明の水性染料組成物は、水性媒体に前記式(1)のアゾカチオン染料を分散させて調製する事ができる。水性媒体としては、水または水溶性有機溶媒が挙げられる。水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール等のアルコール類;エチレンエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール誘導体;エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン等のアミン類;2−ピロリドン、NMP、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、等が挙げられる。
【0029】
本発明の油性染料組成物は、少なくとも1種の油溶性有機溶媒に前記式(1)のアゾカチオン染料を溶解または分散させて調整する事ができる。用いられる油溶性有機溶媒としては、例えば、エタノール、ペンタノール、オクタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、テトラフルオロプロパノール等のアルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート等のグリコール誘導体;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ブチルフェニルエーテル、ベンジルエーテル、ヘキシルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ブチルなどのエステル類;アセトニトリル、DMF、ジメチルスルホキシド、スルホラン、NMP、2−ピロリドンなどの極性有機溶媒、等が挙げられ、これらの溶媒は単独で使用してもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0030】
油性染料組成物に用いられる分散剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェートのアンモニウム、ポリオキシアルキルエーテル燐酸エステル塩等公知のアニオン界面活性剤、ビニルナフタレン誘導体、α、β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、スチレン、スチレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、メタクリル酸、メタクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、無水マレイン酸、無水マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体等から選ばれた少なくとも2つ以上の単量体からなるブロック共重合体、或いはランダム共重合体、またはこれらの塩等の高分子分散剤等が挙げられ、これらの1種以上を分散する色素化合物に対して10〜100質量%の間で使用するのが好ましい。またこれらの分散剤と併せて、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合物等の公知のノニオン系の界面活性剤やシリコーン系、アセチレン系の公知の消泡剤を必要に応じ、顔料分散時及び/または顔料分散化後に添加する事ができる。
【0031】
顔料を微粒子に分散する方法としては、サンドミル(ビーズミル)、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、超音波分散機、マイクロフルイダイザー等を用いる方法が挙げられるが、これらの中でもサンドミル(ビーズミル)が好ましい。またサンドミル(ビーズミル)における顔料の粉砕においては、径の小さいビーズを使用する、ビーズの充填率を大きくする事等により粉砕効率を高めた条件で処理することが好ましく、更に粉砕処理後に濾過、遠心分離などで素粒子を除去することが好ましい。本発明の染料組成物にはその他の添加剤として表面調整剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤等を含んでも良い。表面調整剤としては、ポリシロキサン系あるいはポリジメチルシロキサン系の界面活性剤、防腐や防黴剤としてはデヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ソジウムピリジンチオン−1−オキサイド、ジンクピリジンチオン−1−オキサイド、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、1−ベンズイソチアゾリン−3−オンのアミン塩等を、pH調整剤としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水酸化アルカリ金属類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等の3級アミン類等が挙げられ、それぞれ必要に応じて添加する事ができる。
【0032】
また本発明の油性または水性染料組成物中には被着色体への色素の定着性を向上させる目的で、必要な範囲内で組成中の媒体と相溶性のあるポリアミド系、ポリウレタン系、ポリエステル系、エポキシ系又はポリアクリル系樹脂を含有させる事が好ましい。また定着性を向上させる目的で、必要な範囲内でエチレン性不飽和基を有するモノマー、オリゴマーや重合開始剤などを含有させてもよい。本発明の油性または水性染料組成物は上記各成分を溶媒に溶解あるいは分散及び混合する事によって調製することができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものでは無い。尚、実施例中、「部」は特定しない限り「質量部」を表す。また、耐湿熱性や耐水性等の評価は染料着色体の色度(L値、a値、b値)を分光光度計「(株)島津製作所製商品名UV−3150」により測定し評価した。
【0034】
実施例1(表1における化合物No.1の合成)
下記式(100)のアゾ染料3部、酸化マグネシウム1部、水20部を仕込み常温で、1時間攪拌した。これに硫酸ジメチル0.5部を加え50℃で3時間反応させた。反応液に水50部、濃硫酸1部を加え、60℃で1時間攪拌した。引き続いて、DMF10部にトリストリフルオロメタンスルホニウムメチドのセシウム塩3部を溶解させた溶液を滴下し、3時間攪拌した。析出した染料をろ取、水洗、乾燥し、黄色染料(本発明のアゾカチオン染料)2部を得た。極大吸収波長:458nm(シクロヘキサノン)
【0035】
実施例2(表1における化合物No.2の合成)
トリストリフルオロメタンスルホニウムメチドのセシウム塩をビストリフルオロメタンスルホニルイミドのカリウム塩に変更した以外は実施例1と同様にして、黄色染料(本発明のアゾカチオン染料)2.2部を得た。極大吸収波長:462nm(シクロヘキサノン)
【0036】
実施例3(表1における化合物No.17の合成)
下記式(100)のアゾ染料7部、氷酢酸70部を仕込み、90℃で濃塩酸3.5部、アクリル酸アミド24部を加え、同温度で3時間攪拌した。次いでこの反応液を水500部に投入し、活性炭を加え、液ろ過した。ろ液に、塩化亜鉛3部を含む5%酢酸水溶液24部と食塩80部を加え塩析した。析出した染料をろ取し、水に溶かし、DMF10部にトリストリフルオロメタンスルホニウムメチドのセシウム塩3部を溶解させた溶液を滴下し、3時間攪拌した。析出した染料をろ取、水洗、乾燥し、黄色染料(本発明のアゾカチオン染料)2.3部を得た。極大吸収波長:454nm(シクロヘキサノン)
【0037】
実施例4(表1における化合物No.19の合成)
アゾ染料を下記式(101)に変更した以外は実施例3と同様にして、黄色染料(本発明のアゾカチオン染料)2.5部を得た。極大吸収波長:436nm(シクロヘキサノン)
【0038】
実施例5(表1における化合物No.21の合成)
下記式(101)のアゾ染料6部、氷酢酸30部を仕込み、攪拌し、80℃に加温した。続いて、シクロヘキセンオキサイド12部を滴下し、90℃で2時間反応させた。反応液を減圧下蒸留し、大部分の氷酢酸を留去した後、水200部に投入し、少量の活性炭を加え、液ろ過した。ろ液に塩化亜鉛2部と食塩16部を加え塩析した。3.5部、アクリル酸アミド24部を加え、同温度で3時間攪拌した。次いでこの反応液を水500部に投入し、活性炭を加え、液ろ過した。ろ液に、塩化亜鉛3部を含む5%酢酸水溶液24部と食塩80部を加え塩析した。析出した染料をろ取し、水に溶かし、DMF10部にトリストリフルオロメタンスルホニウムメチドのセシウム塩3部を溶解させた溶液を滴下し、3時間攪拌した。析出した染料をろ取、水洗、乾燥し、黄色染料(本発明のアゾカチオン染料)2.3部を得た。極大吸収波長:447nm(シクロヘキサノン)
【0039】
実施例6(表1における化合物No.23の合成)
下記式(101)のアゾ染料3部、アクリル酸アミド12部、濃塩酸20部を仕込み、90℃で3時間攪拌した。反応液を水200部にあけ、DMF10部にトリストリフルオロメタンスルホニウムメチドのセシウム塩3部を溶解させた溶液を滴下し、3時間攪拌した。析出した染料をろ取、水洗、乾燥し、黄色染料(本発明のアゾカチオン染料)2部を得た。極大吸収波長:447nm(シクロヘキサノン)
【0040】
実施例7(表1における化合物No.3の合成)
下記式(101)のアゾ染料3部、酸化マグネシウム3部、硫酸ジメチル30部を仕込み、60℃で4時間攪拌した。反応液に水100部、濃硫酸1部を加え、引き続いて、DMF10部にトリストリフルオロメタンスルホニウムメチドのセシウム塩3部を溶解させた溶液を滴下し、3時間攪拌した。析出した染料をろ取、水洗、乾燥し、黄色染料(本発明のアゾカチオン染料)2.3部を得た。極大吸収波長:457nm(シクロヘキサノン)
【0041】
【化2】

【化3】

【0042】
実施例8
油性染料組成物及び染料着色体の作成
テトラフルオロプロパノール10部に、実施例1で得られた化合物No.1 0.5部を溶解、ろ過し、油性染料組成物を作成した。得られた油性染料組成物をポリカーボネート基盤にスピンコートし、80℃で30分乾燥し、染料着色体を作成した。
【0043】
なお、以下の各表中における比較例1は、下記式(102)のアゾカチオン染料(特許文献2の実施例1)を使用し、同様に作成した染料着色体の評価結果である。
【0044】
【化4】

【0045】
耐湿熱性試験
上記の方法で得られた染料着色体を、85℃、85%RHの条件の恒温恒湿機中40時間放置した。試験前後の染料着色体を分光光度計でL値、a値、b値を、標準光としてC光源、2度視野角で測色し、下記式より色差を求めた。尚、色差が小さいほど、色相の変化が少ないため優れている事を示す。
色差=[(試験前L値−試験後L値)+(試験前a値−試験後a値)+(試験前b値−試験後b値)1/2
耐湿熱性試験における測色の測定値および色差を以下の表6乃至表8に示す。
【0046】
化合物No.1の測色結果を以下の表6に示す。
表6
L値 a値 b値
試験前 96.22 0.28 10.53
試験後 95.96 0.63 7.65
試験前後差 0.26 −0.35 2.88
【0047】
比較例1の測色結果を以下の表7に示す。
表7
L値 a値 b値
試験前 94.79 1.52 16.44
試験後 98.30 0.47 0.45
試験前後差 −3.51 1.05 15.99
【0048】
上記の表6及び表7から化合物No.1及び比較例1の色差を求めた結果を下表8に示す。
表8
色 差
化合物No.1 2.9
比較例1 16.4
【0049】
上記の表8の結果から明らかなように、比較例1の染料着色体の試験前後の色差が16.4と非常に大きな値を示すのに対し、本発明の染料着色体は色差2.9と非常に小さな値を示し、耐湿熱性にきわめて優れていることがわかる。
【0050】
耐水性試験
上記の方法で得られた染料着色体を、70℃の温水中に10秒間放置した。試験前後の染料着色体を分光光度計でL値、a値、b値を、標準光としてC光源、2度視野角で測色し、下記式より色差を求めた。尚、色差が小さいほど、色相の変化が少ないため優れていることを示す。色差=[(試験前L値−試験後L値)+(試験前a値−試験後a値)+(試験前b値−試験後b値)1/2
耐水性試験における測色の測定値および色差を以下の表9乃至表11に示す。
【0051】
化合物No.1の測色結果を以下の表9に示す。
表9
L値 a値 b値
試験前 97.10 −0.25 11.75
試験後 98.22 −0.19 8.09
試験前後差 −1.12 −0.06 3.66
【0052】
比較例1の測色結果を以下の表10に示す。
表10
L値 a値 b値
試験前 94.61 1.56 16.59
試験後 100.11 0.04 0.07
試験前後差 −5.50 1.52 16.52
【0053】
上記の表9及び表10から化合物No.1及び比較例1の色差を求めた結果を以下の表11に示す。
表11
色 差
化合物No.1 3.8
比較例1 17.4
【0054】
上記の表11の結果から明らかなように、比較例1の染料着色体の試験前後の色差が17.4と非常に大きな値を示すのに対し、本発明の染料着色体は色差3.8と非常に小さな値を示し、耐水性にきわめて優れている事がわかる。
以上のように本発明の前記式(1)で表されるアゾカチオン染料は、その染料着色体は耐湿熱性および耐水性に優れた特性を有するものであり、本発明のアゾカチオン染料はカラーフィルター用インキやインクジェット用インキ等、アプリケーションの幅が広がるなどの産業的な価値が高い事が明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)アゾカチオン染料
【化1】

(一般式(1)においてRは水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、Rは水素原子または置換基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表す。ベンゼン環Aは更にハロゲン原子またはアルキル基で置換されていてもよい。Xはビストリフルオロメタンスルホニルイミドアニオンまたはトリストリフルオロメタンスルホニルメチドアニオンを表す)。
【請求項2】
Xがトリストリフルオロメタンスルホニルメチドアニオンである事を特徴とする請求項1に記載のアゾカチオン染料。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアゾカチオン染料と少なくとも1種以上の油性溶媒を含有する油性染料組成物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のアゾカチオン染料及び水を含有する水性染料組成物。

【公開番号】特開2011−144269(P2011−144269A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6377(P2010−6377)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】