説明

アタッチメント連結装置および作業機械

【課題】操作レバーの操作部により透視窓を遮らないアタッチメント連結装置と、このアタッチメント連結装置を設けた作業機械を提供する。
【解決手段】作業機械の作業装置の先端にアタッチメント連結装置22を取付ける。このアタッチメント連結装置22は、連結装置本体28に前方を透視可能な透視窓27を設ける。この透視窓27に臨んで軸支した操作レバー30の回動により、アタッチメントの脱着を可能にする連結機構31を設ける。この連結機構31は、操作レバー30の操作部29が、透視窓27より上方領域でのみ回動する操作レバー回動域規制手段を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アタッチメントを交換可能にするアタッチメント連結装置およびこのアタッチメント連結装置を具備した作業機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8に示されるように、ホイールローダ型の作業機械1は、機体2に設置した作業装置3の先端に設けられたアタッチメント連結装置4により、各種バケット、フォークなどのアタッチメントを脱着できるように構成されている。
【0003】
この種の作業機械1のアタッチメント連結装置4において、図示しないアタッチメントの上部に設けられた係合板に連結装置本体5の上部を引っ掛け、この連結装置本体5の下部に設けられた操作レバーの回動によって横方向に摺動する結合作動体を設けている。そして、アタッチメントの対応位置に結合作動体を嵌挿することにより、アタッチメント連結装置4とアタッチメントとを一体化でき、フォークやバケットなどの各種アタッチメントを用途に応じて交換できるようにしたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−90197号公報(第3頁、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなアタッチメント連結装置4では、連結装置本体5に設けられた透視窓6が、操作レバー7の操作部8により遮られるので、アタッチメント連結装置4に固定されたアタッチメントの先端位置が確認できなくなる。
【0005】
例えば、図9のように、水平位置まで回動される操作レバー7により、アタッチメントとアタッチメント連結装置4との脱着を操作するものが提案されているが、こちらも透視窓6の一部が操作レバー7の操作部8に遮られてしまい、アタッチメントとしてフォーク9を取付けた場合は、そのフォーク先端位置が確認できない。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、連結機構の操作レバーの操作部により透視窓が遮られることなく、前方の視認性を確保できるアタッチメント連結装置と、このアタッチメント連結装置を用いた作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載された発明は、作業腕の先端に取付けられるとともに、前方を透視可能な透視窓を有する連結装置本体と、この連結装置本体に設けられ、透視窓に臨んで軸支された、操作部を有する操作レバーの回動によりアタッチメントの脱着が可能な連結機構とを具備し、この連結機構の操作レバーの操作部は、透視窓より上方領域で回動するアタッチメント連結装置である。
【0008】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載のアタッチメント連結装置において、連結機構は、操作レバーの操作部を、透視窓より上方領域で回動させる操作レバー回動域規制手段を具備したものである。
【0009】
請求項3に記載された発明は、請求項1または2記載のアタッチメント連結装置において、連結機構は、操作レバーと連動して、連結装置本体の透視窓を挟んだ一側部および他側部にて上下方向に摺動することでアタッチメントに嵌脱される結合作動体を具備したものである。
【0010】
請求項4に記載された発明は、請求項1乃至3のいずれか記載のアタッチメント連結装置において、連結機構は、操作レバーを連結装置本体側に付勢して回動を抑制するスプリングを具備したものである。
【0011】
請求項5に記載された発明は、機体と、この機体に上下方向回動可能に軸支されたリフトアームと、このリフトアームの先端にチルト回動可能に軸支された請求項1乃至4のいずれか記載のアタッチメント連結装置と、このアタッチメント連結装置に連結されたアタッチメントとを具備した作業機械である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載された発明によれば、連結装置本体とアタッチメントとを脱着する連結機構の操作レバーの操作部が、透視窓より上方領域でのみ回動できるようにしたので、透視窓が操作レバーの操作部によって遮られることを防止でき、前方状況の視認性を向上できる。
【0013】
請求項2に記載された発明によれば、操作レバー回動域規制手段によって、操作レバーの操作部が透視窓より上方でのみ回動できるようになり、透視窓が操作レバーの操作部によって遮られることを確実に防止できる。
【0014】
請求項3に記載された発明によれば、結合作動体を上下に摺動させることで、固定時に、結合作動体の自重も固定方向に作用するので、より安定して固定ができ、さらに、結合作動体が横方向に摺動する連結機構では、透視窓の少なくとも一部が遮られてしまうが、連結装置本体の透視窓を挟んだ両端の取付板で、結合作動体が上下方向に摺動する連結機構では、透視窓を遮ることなく結合作動体を摺動できる。
【0015】
請求項4に記載された発明によれば、連結機構に、操作レバーを連結装置本体側に付勢するスプリングが設けられることで、スプリングにより付勢された操作レバーに摩擦が付与され、操作レバーの回動を抑制できることにより、アタッチメント脱着位置を安定保持でき、アタッチメントの脱着操作性を向上できるとともに、作業中のアタッチメント脱落を確実に防止できる。
【0016】
請求項5に記載された発明によれば、機体に、リフトアームおよびアタッチメント連結装置を介して設けられたアタッチメントにより作業をする作業機械において、アタッチメント連結装置の前方状況の視認性を向上できるので、作業中にアタッチメントの前方を確認しながら効率よく作業を行なうことができ、作業性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を、図1乃至図7に示された一実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図6は、作業機械11としてのホイールローダを示し、この作業機械11は、機体12を備え、この機体12にはキャブ13が搭載され、このキャブ13の前方にて機体12に設置されたフォーク作業やバケット作業などに用いる作業装置14が設けられている。
【0019】
機体12は、後部車輪15を有する後部車両16に対し、前部車輪17を有する前部車両18が、図示しないアーティキュレート軸を支点に、左右方向揺動自在に連結され、後部車両16と前部車両18との間に設けられた図示しないアーティキュレート用シリンダにより屈曲作動される構造である。
【0020】
作業装置14は、前部車両18に設置されたもので、前部車両18と一体に設けられた1対のアーム取付ブラケット19にそれぞれ作業腕としてのリフトアーム21の基端が回動自在に軸支され、これらのリフトアーム21の先端にアタッチメント連結装置22が回動自在に軸支され、このアタッチメント連結装置22を介して図示しないフォークやバケットなどのアタッチメントがワンタッチで連結される。
【0021】
作業装置14は、各アーム取付ブラケット19と各リフトアーム21との間にそれぞれ軸連結されたリフトシリンダ23によりリフトアーム21が昇降され、また、前部車両18上に軸支されたチルトシリンダ24により、1対のリフトアーム21間に軸支されたチルトレバー25と、このチルトレバー25の下端に回動自在に軸連結されたロッド26を介して、アタッチメント連結装置22およびアタッチメントがチルト回動される。
【0022】
図1乃至図3に示されるように、アタッチメント連結装置22は、リフトアーム21の先端に取付けられるとともに、前方を透視可能な透視窓27を有する連結装置本体28が設けられ、この連結装置本体28には、透視窓27に臨んで軸支され、操作部29を有する操作レバー30の回動によりアタッチメントAの脱着が可能な連結機構31が設けられている。
【0023】
連結装置本体28は、主に、パイプ状の上部フレーム部材32および下部フレーム部材33と、これら上部フレーム部材32および下部フレーム部材33の中央間に設けられた中央ブラケット34と、左右両端間に設けられたブラケット35および取付板36とで構成される中空の構造で、この中空部分が透視窓27となる。
【0024】
中央ブラケット34には、ロッド用ボス37が設けられ、このロッド用ボス37に挿入される図示しないピンによりチルト用のロッド26の先端が回動自在に連結される。
【0025】
図3に示されるように、両端の取付板36は、アタッチメントAの取付本体部A1を受ける板部材であり、この取付板36の上部には、アタッチメントAの上部に設けられた係合板A2に係合される係合部材38が溶接により固着されている。そして、これら両端の取付板36の下部には、アタッチメントAの取付本体部A1の下部斜面部A3に当接される斜面部39が折曲形成され、また、アタッチメントAの下部にはフォークA4が形成されている。
【0026】
図1に示されるように、斜面部39には、上下端を開口した円筒状の結合作動体ガイド部材41が溶接により固着されており、左右のブラケット35の下部の内側部には、リフトアーム21の先端を接続するリフトアームブラケット42が設けられている。このリフトアームブラケット42には、リフトアーム用ボス43が設けられ、このリフトアーム用ボス43に挿入される図示しないピンにより、リフトアーム21の先端が回動自在に連結される。
【0027】
連結機構31は、左右の結合作動体ガイド部材41に、アタッチメントAに嵌脱自在の結合作動体44が、それぞれ上下動自在に嵌合されている。一方、操作レバー30は、軸部材45を中心に、操作部29により回動されるが、その操作部29に対して所定角度の方向に凸部46が一体に突設され、この凸部46と連結部材47とがピン48により連結され、連結部材47と結合作動体44とがピン49により連結されることで、操作レバー30の回動に連動して結合作動体44が上下方向に摺動し、図5に示されるように、結合作動体44の下部に設けられた固定爪51が、アタッチメントAの下部斜面部A3および下部補強部材A5に穿設された固定爪嵌入穴A6に嵌脱されるように構成されている。
【0028】
連結部材47にはスプリング52が嵌着され、このスプリング52の一端は、連結部材47に嵌着されたピン50により係止され、スプリング52の他端は、操作レバー30の凸部46に係合されたワッシャ53により係止され、このスプリング52によりワッシャ53を凸部46に押圧して、操作レバー30を、図1に示された下限位置である実線および上限位置である2点鎖線の位置で安定保持させる。
【0029】
操作レバー30の軸支構造は、図4に示されるように、連結装置本体28の両端の取付板36に、操作レバー30を取付けるための取付部材54が溶接により固着され、この取付部材54に嵌着された軸部材45により操作レバー30が回動自在に軸支されている。
【0030】
さらに、操作レバー30を取付けるための軸部材45には、スプリング55が嵌着されるとともに、このスプリング55の一端を受けるスプリング受け56が係止されており、このスプリング55が操作レバー30を連結装置本体28側に付勢することで、取付部材54との間に介在された受け部材57に操作レバー30を押圧して操作レバー30に摩擦が付与され、操作レバー30の回動を抑制でき、これにより、脱着時の結合作動体44の位置を安定保持させる。
【0031】
また、連結装置本体28には、操作レバー30の操作部29を透視窓27より上方領域で回動させる操作レバー回動域規制手段58も設けられている。
【0032】
この操作レバー回動域規制手段58は、取付部材54に係止部59が設けられ、操作レバー30にこの係止部59と係合する係合部材60が溶接などにより一体に固着されたものであり、係止部59により操作レバー30の係合部材60を係止することで、操作レバー30を一定の回動範囲内で係止させ、図1に下限位置と上限位置で示されるように、操作レバー30の操作部29の回動域を透視窓27より上方に規制し、操作部29が透視窓27を遮らないようにしている。
【0033】
図5に示されるように、連結装置本体28の取付板36の下部には、アタッチメントAの脱着容易性を向上させる斜面部39が設けられ、この斜面部39に設けられた結合作動体ガイド部材41の下端の開口からアタッチメントAの固定爪嵌入穴A6に嵌脱される固定爪51には、アタッチメントAを確実に固定させることができるように、アタッチメントAの固定爪嵌入穴A6と係合する係合面61が斜面部39と直角になるように斜めに形成されている。
【0034】
また、結合作動体ガイド部材41の側部には、グリスニップル62が設けられ、このグリスニップル62より供給されたグリスにより結合作動体44の摺動を円滑にしている。
【0035】
次に実施の形態の動作および効果を説明する。
【0036】
作業装置14を操作して、アタッチメントAを連結させるときは、アタッチメントAの係合板A2に連結装置本体28の係合部材38を引っ掛けるとともに、斜面部39をアタッチメントAの対応面に密着させる。この状態で、操作レバー30の操作部29を図1に示される下限位置まで回動させて結合作動体44をアタッチメントAに嵌挿し、アタッチメントAとアタッチメント連結装置22とを一体化させる。
【0037】
アタッチメント連結装置22に連結されたアタッチメントAを交換する際は、作業装置14を操作し、アタッチメントAを地面まで下降させ、操作レバー30の操作部29を、図1に示される上限位置まで回動させる。これにより、操作レバー30に連動して結合作動体44が上昇し、アタッチメントAから抜けたら、作業装置14を操作してアタッチメントAの係合板A2から連結装置本体28の係合部材38を外し、アタッチメントAとアタッチメント連結装置22とを分離させ、再び上記のように連結させる。
【0038】
図7は、フォークA4を取付け、そのフォークA4を上昇させた状態を示すが、透視窓27が操作レバー30の操作部29によって遮られず、この透視窓27を通してフォーク先端位置A7を確認できる。これによって、フォーク先端位置A7を確認しながら、パレットに挿入するなどのフォーク作業を効率よく行なうことができる。
【0039】
このように、機体12に、作業腕としてのリフトアーム21が取付けられ、その先端に設けられたアタッチメント連結装置22に連結されるアタッチメントAにより作業をする作業機械11において、アタッチメントAとアタッチメント連結装置22とを脱着可能に連結する連結機構31が連結装置本体28に設けられ、この連結機構31の操作レバー30の操作部29が、連結装置本体28の透視窓27より上方領域でのみ回動できるように、操作レバー回動域規制手段58により回動域を規制したので、透視窓27が連結機構31の操作レバー30の操作部29によって遮られることがなく、前方状況の視認性を向上できる。
【0040】
また、これにより、作業中にアタッチメントAの前方を確認しながら効率よく作業を行なうことができるので、作業性を向上できる。
【0041】
連結装置本体28の透視窓27を挟んだ両端の取付板36にて、結合作動体44を上下に摺動させてアタッチメントAとアタッチメント連結装置22とを固定させることで、固定時に、結合作動体44の自重も固定方向に作用するので、より安定して固定ができる。
【0042】
さらに、従来の、結合作動体が横方向に摺動する連結機構では、透視窓が、結合作動体や操作レバーの操作部によって遮られてしまうが、結合作動体44が上下方向に摺動する連結機構31では、取付板36内に操作レバー30や結合作動体44などの連結機構31が取付けられ、取付板36で結合作動体44が上下方向に摺動するので、連結機構31および操作レバー30の操作部29により透視窓27を遮られることがなく、前方状況の視認性を向上できる。
【0043】
連結機構31に、操作レバー30を連結装置本体28側に付勢するスプリング55が設けられることで、スプリング55により受け部材57に操作レバー30を押圧して、操作レバー30に摩擦が付与され、操作レバー30の回動を抑制でき、これによって、結合作動体44のアタッチメント脱着位置を安定保持できるので、アタッチメントAの脱着操作性を向上できるとともに、作業中の結合作動体44の抜出しによるアタッチメント脱落を確実に防止できる。
【0044】
各種バケットやフォークなどのアタッチメントを連結するためのアタッチメント連結装置と、このアタッチメント連結装置を先端に備えた、ホイールローダや油圧ショベルなどの作業機械に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係るアタッチメント連結装置の一実施の形態を示す正面図である。
【図2】同上アタッチメント連結装置の平面図である。
【図3】同上アタッチメント連結装置の側面図である。
【図4】同上アタッチメント連結装置の操作レバー軸支部の断面図である。
【図5】同上アタッチメント連結装置の斜面部における断面図である。
【図6】本発明に係る作業機械の一実施の形態を示す斜視図である。
【図7】同上作業機械内のオペレータからみた作業装置の斜視図である。
【図8】従来の作業機械の斜視図である。
【図9】同上作業機械内のオペレータからみた従来の作業装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
11 作業機械
12 機体
21 作業腕としてのリフトアーム
22 アタッチメント連結装置
27 透視窓
28 連結装置本体
29 操作部
30 操作レバー
31 連結機構
44 結合作動体
55 スプリング
58 操作レバー回動域規制手段
A アタッチメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業腕の先端に取付けられるとともに、前方を透視可能な透視窓を有する連結装置本体と、
この連結装置本体に設けられ、透視窓に臨んで軸支された、操作部を有する操作レバーの回動によりアタッチメントの脱着が可能な連結機構とを具備し、
この連結機構の操作レバーの操作部は、透視窓より上方領域で回動する
ことを特徴とするアタッチメント連結装置。
【請求項2】
連結機構は、
操作レバーの操作部を、透視窓より上方領域で回動させる操作レバー回動域規制手段
を具備したことを特徴とする請求項1記載のアタッチメント連結装置。
【請求項3】
連結機構は、
操作レバーと連動して、連結装置本体の透視窓を挟んだ一側部および他側部にて、上下方向に摺動することでアタッチメントに嵌脱される結合作動体
を具備したことを特徴とする請求項1または2記載のアタッチメント連結装置。
【請求項4】
連結機構は、
操作レバーを連結装置本体側に付勢して回動を抑制するスプリング
を具備したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載のアタッチメント連結装置。
【請求項5】
機体と、
この機体に上下方向回動可能に軸支されたリフトアームと、
このリフトアームの先端にチルト回動可能に軸支された請求項1乃至4のいずれか記載のアタッチメント連結装置と、
このアタッチメント連結装置に連結されたアタッチメントと
を具備したことを特徴とする作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−196275(P2008−196275A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−35289(P2007−35289)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】