説明

アナプラズマ・ファゴサイトフィルム(Aph)およびアナプラズマ・プラチス(Apl)に特異的な抗体を検出するための組成物および方法

本発明は、アナプラズマ・ファゴサイトフィルムおよびアナプラズマ・プラチス感染の検出および治療のための方法および組成物を提供する。
なし

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
優先権
本出願は米国特許仮出願第61/103,743号(2008年10月8日出願)(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に基づく優先権を主張する。
【0002】
発明の背景
アナプラズマ症は哺乳動物(例えばヒト、ウマ、ヒツジ、イヌ、ネコ、シカ、および反芻動物)に発生し、マダニ媒介性病原体、アナプラズマ・ファゴサイトフィルム(Anaplasma phagocytophilum;「Aph」)(以前はエーリキア・エクイ(Ehrlichia equi)として知られていた)による顆粒球細胞の感染によって引き起こされる。一般的な臨床症状には発熱、嗜眠、歩行困難、血小板減少、リンパ節腫脹、および食欲不振(anexoria)があるが、これらは全て、アナプラズマ症に特異的なものではない。従って、正確な診断のためには特異的な試験が重要である。
【0003】
アナプラズマ・プラチス(Anaplasma platys;「Apl」)(以前はエーリキア・プラチス(Ehrlichia platys)として知られていた)は近縁種である。Aplはイヌ伝染性周期性血小板減少症(ICCT)を引き起こす。感染したイヌは、米国では通常、無症候であるが、世界の他の地域では臨床的疾患となりうる。現行のアナプラズマの血清学的検査では、有意な交差反応性のために、この2つの種を識別することができない。AphおよびAplの検出法および2つの感染を識別する方法が当該分野で必要とされている。
【0004】
臨床症状の開始はアナプラズマ症の急性期に起こり、いくつかのアナプラズマ抗原に対する測定可能なレベルの抗体が出現する前に起こりうる。従って、(例えば急性アナプラズマ症の臨床症状を示す哺乳動物において)Aph感染、Apl感染、またはその両方のための迅速、高感度、かつ信頼性の高い免疫学的検査が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の概要
本発明のある態様では、SEQ ID NO:8もしくはSEQ ID NO:10のアミノ酸配列から成るか、または、SEQ ID NO:10のアミノ酸1-45;SEQ ID NO:10のアミノ酸41-89;SEQ ID NO:10のアミノ酸85-130;SEQ ID NO:10のアミノ酸126-160;SEQ ID NO:10のアミノ酸129-146;SEQ ID NO:10のアミノ酸144-160;もしくはSEQ ID NO:10のアミノ酸136-155から成るか、または、SEQ ID NO:1-21のアミノ酸配列の少なくとも17個の連続するアミノ酸から成るか、または、SEQ ID NO:1-21と少なくとも94%の同一性を有するポリペプチドから成る精製ポリペプチドを1つまたはそれ以上含有する組成物を提供する。この1つまたはそれ以上の精製ポリペプチドは、指示薬、シグナル配列、輸送停止配列、アミノ酸スペーサー、膜貫通ドメイン、タンパク質精製リガンド、異種ポリペプチド、免疫応答を亢進する部分、精製を促進する部分、ポリペプチドの安定性を向上する部分、SEQ ID NO:1-21を含有する1つもしくはそれ以上の更なるポリペプチド、またはそれらの組み合わせに結合していてもよい。本発明の別の態様では、1つまたはそれ以上の精製ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0006】
本発明の更に別の態様では、試験サンプル中のアナプラズマ・ファゴサイトフィルム・ポリペプチドもしくはアナプラズマ・プラチス・ポリペプチド、またはその両方に特異的に結合する抗体の検出法を提供する。方法は、ポリペプチド/抗体複合体の形成が可能な条件下で、1つまたはそれ以上の精製ポリペプチドを含有する組成物を試験サンプルと接触させることを含む。ポリペプチド/抗体複合体を検出する。ポリペプチド/抗体複合体の検出は、アナプラズマ・ファゴサイトフィルム・ポリペプチドもしくはアナプラズマ・プラチス・ポリペプチド、またはその両方に特異的な抗体が試験サンプル中に存在することを示す。1つまたはそれ以上の精製ポリペプチドを含有する組成物は、SEQ ID NO:8または19のアミノ酸配列の少なくとも17個の連続するアミノ酸から成ってもよい。ポリペプチド/抗体複合体の検出は、アナプラズマ・プラチスに特異的な抗体が試験サンプル中に存在することを示す。1つまたはそれ以上の精製ポリペプチドを含有する組成物は、SEQ ID NO:10のアミノ酸配列;SEQ ID NO:10のアミノ酸41-89;もしくはSEQ ID NO:10のアミノ酸85-130の少なくとも17個の連続するアミノ酸から成るか、またはSEQ ID NO:10、SEQ ID NO:10のアミノ酸41-89、もしくはSEQ ID NO:10のアミノ酸85-130と少なくとも約94%の同一性を有するポリペプチドから成ってもよい。ポリペプチド/抗体複合体の検出は、アナプラズマ・ファゴサイトフィルム・ポリペプチドもしくはアナプラズマ・プラチス・ポリペプチド、またはその両方に特異的な抗体が試験サンプル中に存在することを示す。1つまたはそれ以上の精製ポリペプチドを含有する組成物は、SEQ ID NO:10のアミノ酸1-45;SEQ ID NO:10のアミノ酸126-160;SEQ ID NO:10のアミノ酸129-146;SEQ ID NO:10のアミノ酸144-160;SEQ ID NO:10のアミノ酸136-155の少なくとも17個の連続するアミノ酸から成るか、またはSEQ ID NO:10のアミノ酸1-45;SEQ ID NO:10のアミノ酸126-160;SEQ ID NO:10のアミノ酸129-146;SEQ ID NO:10のアミノ酸144-160;SEQ ID NO:10のアミノ酸136-155と少なくとも約94%の同一性を有するポリペプチドから成ってもよい。ポリペプチド/抗体複合体の検出は、アナプラズマ・ファゴサイトフィルム・ポリペプチドに特異的な抗体が試験サンプル中に存在することを示す。検出の前に複合体を指示薬と接触させてもよい。試験サンプル中の抗体の量を測定してもよい。1つまたはそれ以上の精製ポリペプチドを基材に結合させてもよい。
【0007】
本発明の更に別の態様では、SEQ ID NO:1-21から成るポリペプチドに特異的に結合する抗体を提供する。抗体はモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、Fabフラグメント、Fab'フラグメント、Fab'-SHフラグメント、F(ab')2フラグメント、Fvフラグメント、または1本鎖抗体であってもよい。
【0008】
本発明の更に別の態様では、サンプル中のアナプラズマ・ファゴサイトフィルム・ポリペプチドもしくはアナプラズマ・プラチス・ポリペプチド、またはその両方を検出する方法を提供する。方法は、ポリペプチド/抗体複合体の形成が可能な条件下で、1つまたはそれ以上の本発明の精製ポリペプチドに特異的に結合する1つまたはそれ以上の抗体をサンプルと接触させることを含む。ポリペプチド/抗体複合体を検出する。ポリペプチド/抗体複合体の検出は、アナプラズマ・ファゴサイトフィルム・ポリペプチドもしくはアナプラズマ・プラチス・ポリペプチド、またはその両方がサンプル中に存在することを示す。1つまたはそれ以上の精製ポリペプチドはSEQ ID NO:10のアミノ酸1-45;SEQ ID NO:10のアミノ酸126-160;SEQ ID NO:10のアミノ酸129-146;SEQ ID NO:10のアミノ酸144-160;またはSEQ ID NO:10のアミノ酸136-155の少なくとも17個の連続するアミノ酸から成ってもよい。ポリペプチド/抗体複合体の検出は、アナプラズマ・ファゴサイトフィルム・ポリペプチドが試験サンプル中に存在することを示す。1つまたはそれ以上の精製ポリペプチドはSEQ ID NO:8または19のアミノ酸配列の少なくとも17個の連続するアミノ酸から成ってもよい。ポリペプチド/抗体複合体の検出は、アナプラズマ・プラチス・ポリペプチドが試験サンプル中に存在することを示す。1つまたはそれ以上の精製ポリペプチドは、SEQ ID NO:10のアミノ酸配列;SEQ ID NO:10のアミノ酸41-89;またはSEQ ID NO:10のアミノ酸85-130の少なくとも17個の連続するアミノ酸から成ってもよい。ポリペプチド/抗体複合体の検出は、アナプラズマ・ファゴサイトフィルム・ポリペプチドまたはアナプラズマ・プラチス・ポリペプチドが試験サンプル中に存在することを示す。1つまたはそれ以上の抗体はモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、Fabフラグメント、Fab'フラグメント、Fab'-SHフラグメント、F(ab')2フラグメント、Fvフラグメント、または1本鎖抗体であってもよい。
【0009】
本発明の別の態様では、本発明の精製ポリペプチドを含有する組成物は医薬的に許容される、または獣医学的に許容されるキャリアおよび/またはアジュバントを更に含有してもよい。
【0010】
本発明の更に別の態様では、哺乳動物被験体においてアナプラズマ・プラチス感染、アナプラズマ・ファゴサイトフィルム感染、またはその両方を治療する、または寛解する方法を提供し、方法は、1つまたはそれ以上の本発明の精製ポリペプチドを含有する組成物を治療的有効量で哺乳動物被験体に投与することを含む。
【0011】
本発明の更に別の態様では、哺乳動物において免疫応答を惹起する方法を提供し、方法は、1つまたはそれ以上の本発明の精製ポリペプチドを含有する組成物を免疫学的有効量で投与することを含む。
【0012】
従って、本発明はAplおよび/またはAph感染の検出および治療のための方法および組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】SEQ ID NO:12-18および10を含有するポリペプチドを用いて行ったアッセイの結果を示す。
【図2】SEQ ID NO:15、19、および10を含有するポリペプチドを用いて行ったアッセイの結果を示す。
【図3】SEQ ID NO:15、19、および10を含有するポリペプチドを用いて行ったアッセイの結果を示す。
【図4】SEQ ID NO:15、19、および10を含有するポリペプチドを用いて行った経時アッセイの結果を示す。
【図5】SEQ ID NO:15および10を含有するポリペプチドを用いて行った経時アッセイの結果を示す。
【図6】SEQ ID NO:12-15を含有するポリペプチドを用いて行ったアッセイの結果を示す。
【図7A】SEQ ID NO:20を含有するポリペプチドを用いて行ったアッセイの結果を示す。
【図7B】SEQ ID NO:20を含有するポリペプチドを用いて行ったアッセイの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
本発明のポリペプチド
本明細書で使用する単数形(「a」、「an」、および「the」)は、特に記載しない限り、その複数形も包含する。
【0015】
ポリペプチドは、2つまたはそれ以上のアミノ酸がアミド結合によって共有結合したポリマーである。ポリペプチドを翻訳後修飾してもよい。精製ポリペプチドは、細胞物質、他のタイプのポリペプチド、化学的前駆体、ポリペプチドの合成に使用される化学物質、またはそれらの組み合わせを実質的に含有しないポリペプチド標品である。細胞物質、培地、化学的前駆体、ポリペプチドの合成に使用される化学物質などを実質的に含有しないポリペプチド標品は、他のポリペプチド、培地、化学的前駆体、および/または合成に使用される他の化学物質を約30%、20%、10%、5%、1%、またはそれ未満含有する。従って、精製ポリペプチドは約70%、80%、90%、95%、99%、またはそれ以上の純度を有する。純度が70%未満である未精製または半精製の細胞抽出物またはポリペプチドの混合物は、精製ポリペプチドに含まれない。
【0016】
「ポリペプチド」という用語は1つまたはそれ以上の、1つのタイプのポリペプチド(1セットのポリペプチド)を表しうる。また、「ポリペプチド」は2つまたはそれ以上の異なるタイプのポリペプチドの混合物(ポリペプチド混合物)も表しうる。「ポリペプチド(複数)」または「ポリペプチド(単数)」という用語はそれぞれ「1つまたはそれ以上のポリペプチド」を意味する場合もある。
【0017】
本発明のある態様では、1つまたはそれ以上の以下のポリペプチドを提供する:
【化1】

【0018】
本発明のある態様では、SEQ ID NO:10の143位のXはKまたはNであり;145位のXはTまたはAであり;そして、156位のXはFまたはIである。
【0019】
本発明のある態様では、以下のポリペプチドを提供する:
1.SEQ ID NO:10のアミノ酸1-45(Aph p44-1)(SEQ ID NO:1および12と同じ反応性を有する)
2.SEQ ID NO:10のアミノ酸41-89(Aph p44-2)(SEQ ID NO:2および13と同じ反応性を有する)
3.SEQ ID NO:10のアミノ酸85-130(Aph p44-3)(SEQ ID NO:3および14と同じ反応性を有する)
4.SEQ ID NO:10のアミノ酸126-160(Aph p44-4)(SEQ ID NO:4、9、11、15、および20と同じ反応性を有する)
5.SEQ ID NO:10のアミノ酸129-146(Aph p44-4-1)(SEQ ID NO:5および16と同じ反応性を有する)
6.SEQ ID NO:10のアミノ酸144-160(Aph p44-4-2)(SEQ ID NO:6および17と同じ反応性を有する)
7.SEQ ID NO:10のアミノ酸136-155(Aph p44-3)(SEQ ID NO:7および18と同じ反応性を有する)
更に、SEQ ID NO:8および9は同じ反応性を有する、すなわち、それらのポリペプチドは実質的に同様に、アナプラズマ抗原に特異的な抗体と特異的に結合する。
【0020】
本発明のある態様では、ポリペプチドはN末端にC-残基を有する。例えば:
【化2】

本発明のある態様では、SEQ ID NO:21の144位のXはKまたはNであり;146位のXはTまたはAであり;そして、157位のXはFまたはIである。
【0021】
SEQ ID NO:4-7および9は以下のようにアラインできる:
【化3】

【0022】
SEQ ID NO:4-7および9のコンセンサス配列をSEQ ID NO:11に示す:
【化4】

本発明のある態様では、SEQ ID NO:11の18位のXはNまたはKであり;20位のXはTまたはAであり;そして、31位のXはFまたはIである。本発明のある態様は、SEQ ID NO:11のアミノ酸4-21;SEQ ID NO:11のアミノ酸19-34;またはSEQ ID NO:11のアミノ酸11-30を含む。
【0023】
ある態様では、SEQ ID NO:1-9および11-21の約46、40、35、30、25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、または6個未満の連続するアミノ酸(または約46個から約6個の間の任意の数のアミノ酸)から成る精製ポリペプチドを提供する。ある態様では、SEQ ID NO:1-9および11-12の約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、または46個以上の連続するアミノ酸(または約46から約6の間の任意の数のアミノ酸)から成る精製ポリペプチドを提供する。天然型AphまたはAplアミノ酸は、AphまたはApl菌体によって天然に生成される任意のポリペプチドである。精製ポリペプチドは、ある特定の数未満の連続するSEQ ID NO:1-21の天然型アナプラズマ・アミノ酸(例えば約200、175、150、125、100、75、50、45、40、35、30、25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、または6個未満のアミノ酸(または約200個から約6個の間の任意の数のアミノ酸)を含有してもよい。すなわち、精製ポリペプチドは完全長ポリペプチドより小さい。これらのポリペプチドが完全長アナプラズマ・ポリペプチドより小さいという事実は重要であり、これは、Aplおよび/またはAphアッセイにおいて、ポリペプチドが小さいほど完全長ポリペプチドより高い特異性および/または感度を有しうるためである。更に、これらのより小さいポリペプチドは完全長ポリペプチドに比較して製造がより安価となり、より高い純度で得られうる。
【0024】
別の態様では、SEQ ID NO:10の約200、175、150、125、100、75、50、25、20、15、10、6個、またはそれ未満の連続する天然型アナプラズマ・アミノ酸(または約200個から約6個の間の任意の数のアミノ酸)から成る精製ポリペプチドを提供する。別の態様では、SEQ ID NO:10の約6、10、15、25、50、75、100、125、150、175、200個、またはそれ以上の連続する天然型アナプラズマ・アミノ酸(または約6個から約200個の間の任意の数のアミノ酸)から成る精製ポリペプチドを提供する。
【0025】
SEQ ID NO:1-21に示すポリペプチド配列と少なくとも約80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の同一性を有する変異型ポリペプチドも本発明のポリペプチドである。例えばSEQ ID NO:1の変異型ポリペプチドは、SEQ ID NO:1との同一性が少なくとも約98%(約1アミノ酸変化)、96%(約2アミノ酸変化)、93%(約3アミノ酸変化)、91%(約4アミノ酸変化)、89%(約5アミノ酸変化)、87%(約6アミノ酸変化)、84%(約7アミノ酸変化)、82%(約8アミノ酸変化)、または80%(約9アミノ酸変化)であってもよい。SEQ ID NO:2の変異型ポリペプチドは、SEQ ID NO:2との同一性が少なくとも約98%(約1アミノ酸変化)、96%(約2アミノ酸変化)、94%(約3アミノ酸変化)、92%(約4アミノ酸変化)、90%(約5アミノ酸変化)、88%(約6アミノ酸変化)、約86%(約7アミノ酸変化)、84%(約8アミノ酸変化)、82%(約9アミノ酸変化)、または80%(約10アミノ酸変化)であってもよい。SEQ ID NO:3の変異型ポリペプチドは、SEQ ID NO:3との同一性が少なくとも約98%(約1アミノ酸変化)、96%(約2アミノ酸変化)、94%(約3アミノ酸変化)、91%(約4アミノ酸変化)、89%(約5アミノ酸変化)、87%(約6アミノ酸変化)、85%(約7アミノ酸変化)、83%(約8アミノ酸変化)、または80%(約9アミノ酸変化)であってもよい。SEQ ID NO:4および9の変異型ポリペプチドは、SEQ ID NO:4および9との同一性が少なくとも約97%(約1アミノ酸変化)、94%(約2アミノ酸変化)、91%(約3アミノ酸変化)、89%(約4アミノ酸変化)、86%(約5アミノ酸変化)、83%(約6アミノ酸変化)、または80%(約7アミノ酸変化)であってもよい。SEQ ID NO:5の変異型ポリペプチドはSEQ ID NO:5との同一性が少なくとも約94%(約1アミノ酸変化)、89%(約2アミノ酸変化)、または83%(約3アミノ酸変化)であってもよい。SEQ ID NO:6の変異型ポリペプチドはSEQ ID NO:6との同一性が少なくとも約94%(約1アミノ酸変化)、88%(約2アミノ酸変化)、または82%(約3アミノ酸変化)であってもよい。SEQ ID NO:7の変異型ポリペプチドはSEQ ID NO:7との同一性が少なくとも約95%(約1アミノ酸変化)、90%(約2アミノ酸変化)、85%(約3アミノ酸変化)、または80%(約4アミノ酸変化)であってもよい。SEQ ID NO:8の変異型ポリペプチドはSEQ ID NO:8との同一性が少なくとも約97%(約1アミノ酸変化)、94%(約2アミノ酸変化)、91%(約3アミノ酸変化)、88%(約4アミノ酸変化)、84%(約5アミノ酸変化)、または81%(約6アミノ酸変化)であってもよい。
【0026】
変異型ポリペプチドは1つまたはそれ以上の保存アミノ酸変異または他のマイナーな改変を有し、生体活性を保持している、すなわち生物学的に機能的な同等物である。生物学的に活性な同等物は、相当する野生型ポリペプチドに比較して、実質的に同等の機能を有する。本発明のある態様では、ポリペプチドは約1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、またはそれ未満の保存的アミノ酸置換を有する。
【0027】
配列同一性%は当該分野で認識される意味を有し、2つのポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列間の同一性を測定する多くの方法がある。例えば以下を参照されたい:Lesk編, Computational Molecular Biology, Oxford University Press(ニューヨーク),(1988);Smith編, Biocomputing: Informatics And Genome Projects, Academic Press(ニューヨーク),(1993);GriffinおよびGriffin編, Computer Analysis Of Sequence Data, Part I, Humana Press(ニュージャージー),(1994);von Heinje, Sequence Analysis In Molecular Biology, Academic Press,(1987);および、GribskovおよびDevereux編, Sequence Analysis Primer, M Stockton Press(ニューヨーク),(1991)。ポリヌクレオチドまたはポリペプチドのアラインメント法はコンピュータープログラムに体系化されており、例えばGCGプログラム・パッケージ(Devereuxら, Nuc. Acids Res. 12:387 (1984))、BLASTP、BLASTN、FASTA(Atschulら, J. Molec. Biol. 215:403 (1990))、およびBestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix, Genetics Computer Group, University Research Park, 575 Science Drive, Madison, WI 53711)(SmithおよびWaterman(Adv. App. Math., 2:482-489 (1981))の局所的相同性アルゴリズムを使用))がある。例えば、FASTAアルゴリズムを使用するコンピューター・プログラムALIGNを、ギャップオープンペナルティ=-12、ギャップ伸長ペナルティー=-2のアフィン・ギャップ検索を用いて使用してもよい。
【0028】
いずれかの配列アラインメント・プログラムを使用して特定の配列が、例えば参照配列と約95%同一であるか否かを判定する場合、参照ポリヌクレオチドの全長にわたって同一性%が計算され、同一性のギャップが参照ポリヌクレオチドのヌクレオチド総数の5%まで許容されるように、パラメータを設定する。
【0029】
一般に、変異型ポリペプチドの同定は、本発明のポリペプチド配列の1つを修飾し、修飾されたポリペプチドの特性を評価してそれが生物学的同等物であるか否かを判定することによって行うことができる。変異体が、アッセイ(例えば免疫組織化学アッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫酵素アッセイ、またはウェスタンブロット・アッセイ)で本発明のポリペプチドと実質的に同様に反応すれば(例えば元のポリペプチドの90-110%の活性を有すれば)、その変異体は生物学的同等物である。ある態様ではアッセイは競合アッセイであり、生物学的に同等のポリペプチドは、相当する反応性抗原または抗体への本発明のポリペプチドの結合を約80、95、99、または100%低下させる能力を有する。相当する野生型ポリペプチドに特異的に結合する抗体は、変異型ポリペプチドにも特異的に結合する。
【0030】
保存的置換とは、あるアミノ酸が類似した特性を持つ別のアミノ酸で置換されたもので、ペプチド化学分野の当業者によってそのポリペプチドの二次構造およびヒドロパシーが実質的に変更されないと予想されるものである。一般に、以下のアミノ酸群は保存的変更を示す:(1)ala、pro、gly、glu、asp、gln、asn、ser、thr;(2)cys、ser、tyr、thr;(3)val、ile、leu、met、ala、phe;(4)lys、arg、his;および(5)phe、tyr、trp、his。
【0031】
本発明のポリペプチドは、翻訳と同時に、または翻訳後にタンパク質の輸送を指示するシグナル(またはリーダー)配列を更に含有してもよい。ポリペプチドはまた、ポリペプチドの合成、精製、もしくは同定を容易にする(例えばポリHis)、または固相支持体へのポリペプチドの結合を促進するためのリンカーまたは他の配列を含有してもよい。例えばポリペプチドを免疫グロブリンのFc領域またはウシ血清アルブミンにコンジュゲートさせてもよい。
【0032】
ポリペプチドは、天然では通常結合していないアミノ酸配列、すなわち異種アミノ酸配列に共有結合または非共有結合していてもよい。異種アミノ酸配列は非アナプラズマ・ファゴサイトフィルム菌体(organism)、非アナプラズマ・プラチス菌体、合成配列、または、通常本発明のポリペプチドのカルボキシもしくはアミノ末端に位置しないアナプラズマ・ファゴサイトフィルム配列もしくはアナプラズマ・プラチス配列由来のものであってもよい。更に、ポリペプチドはアミノ酸以外の化合物または分子(例えば指示薬)に共有結合または非共有結合していてもよい。ポリペプチドはアミノ酸スペーサー、アミノ酸リンカー、シグナル配列、輸送停止配列、膜貫通ドメイン、タンパク質精製リガンド、またはそれらの組み合わせに共有結合または非共有結合していてもよい。また、ポリペプチドは免疫応答を亢進する部分(すなわち官能基(ポリペプチドまたは他の化合物であってもよい))(例えばIL-2のようなサイトカイン)、精製を容易にする部分(例えば6-ヒスチジン・タグ、trpE、グルタチオン、マルトース結合タンパク質のようなアフィニティー・タグ)、またはポリペプチドの安定性を向上する部分(例えばポリエチレングリコール;アミノ末端保護基(例えばアセチル、プロピル、スクシニル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル、またはt-ブチルオキシカルボニル);カルボキシル末端保護基(例えばアミド、メチルアミド、およびエチルアミド))に結合していてもよい。本発明のある態様では、タンパク質精製リガンドは、(例えば本発明のポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシ末端に位置する)1つまたはそれ以上のCアミノ酸残基であってもよい。アミノ酸スペーサーは、天然では本発明のポリペプチドと結合していないアミノ酸配列である。アミノ酸スペーサーは約1、5、10、20、100、または1,000個のアミノ酸を含有してもよい。
【0033】
必要により、本発明のポリペプチドは融合タンパク質の一部であってもよく、この融合タンパク質は他のアミノ酸配列(例えばアミノ酸リンカー、アミノ酸スペーサー、シグナル配列、TMR輸送停止配列、膜貫通ドメイン)、およびタンパク質の精製に有用なリガンド(例えばグルタチオン-S-トランスフェラーゼ、ヒスチジン・タグ、およびブドウ球菌プロテインA)、またはそれらの組み合わせを更に含有してもよい。他のアミノ酸配列が本発明のポリペプチドのCまたはN末端に存在して、融合タンパク質を形成してもよい。1つより多い本発明のポリペプチドが融合タンパク質中に存在してもよい。本発明のポリペプチドのフラグメントが本発明の融合タンパク質中に存在してもよい。本発明の融合タンパク質は1つまたはそれ以上の本発明のポリペプチド、そのフラグメント、またはそれらの組み合わせを含有してもよい。
【0034】
本発明のポリペプチドは多量体であってもよい。すなわちポリペプチドは、本発明のポリペプチドのコピーを1つもしくはそれ以上含有するか、またはそれらの組み合わせを含有してもよい。多量体ポリペプチドは多抗原ペプチド(MAP)であってもよい。例えばTam, J. Immunol. Methods, 196:17-32 (1996)を参照されたい。
【0035】
本発明のポリペプチドは、アナプラズマ・ファゴサイトフィルムもしくはアナプラズマ・プラチス、またはアナプラズマ・ファゴサイトフィルムおよびアナプラズマ・プラチスの両方に特異的な抗体に認識される抗原決定基を含有してもよい。ポリペプチドは1つまたはそれ以上のエピトープ(すなわち抗原決定基)を含有してもよい。エピトープは直鎖状エピトープ、連続エピトープ(sequential epitope)、またはコンフォメーショナルエピトープであってもよい。本発明のポリペプチド中のエピトープはいくつかの方法によって同定できる。例えば米国特許第4,554,101号;JamesonおよびWolf, CABIOS 4:181-186(1988)を参照されたい。例えば、本発明のポリペプチドを単離およびスクリーニングしてもよい。合わせるとポリペプチド配列全体を網羅するような一連の短鎖ペプチドを、タンパク質切断によって調製してもよい。例えば30アミノ酸長のポリペプチド・フラグメントから開始して、各フラグメントについてELISAによって認識されるエピトープの存在をテストしてもよい。例えばELISAアッセイにおいて、アナプラズマ・ファゴサイトフィルム・ポリペプチド(例えば30アミノ酸長ポリペプチド・フラグメント)を固相支持体(例えばプラスチック製マルチウェル・プレートのウェル)に結合させる。一群の抗体を標識して固相支持体に付加し、非特異的吸着が阻害されるような条件下で未標識の抗原に結合させ、未結合の抗体および他のタンパク質を洗浄除去する。抗体の結合を、例えば無色の基質を有色の反応生成物に変化させる反応によって、検出する。その後、同定された30アミノ酸長から徐々により小さな、オーバーラップしているフラグメントを試験し、目的のエピトープをマッピングしてもよい。
【0036】
本発明のポリペプチドは組換えによって作製してもよい。当該分野で公知の技術を使用して本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを組換え発現ベクターに導入し、それを好適な発現ホスト細胞系で発現させてもよい。種々の細菌、酵母、植物、哺乳動物、および昆虫発現系が当該分野で利用可能であるが、それらの発現系のいずれを使用してもよい。必要により、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを無細胞翻訳系で翻訳してもよい。ポリペプチドは化学的に合成するか、またはアナプラズマ細胞から得てもよい。
【0037】
本発明の免疫原性ポリペプチドはSEQ ID NO:1-21に示すアミノ酸配列またはそのフラグメントを含有してもよい。免疫原性ポリペプチドは、SEQ ID NO:1-21を有するポリペプチドのエピトープを認識する抗体または他の免疫応答(例えば免疫系のT細胞応答)を惹起することができる。本発明の免疫原性ポリペプチドは、SEQ ID NO:1-21に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドのフラグメントであってもよい。本発明の免疫原性ポリペプチド・フラグメントは約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、125、150、175、200、またはそれ以上のアミノ酸長であってもよい。本発明の免疫原性ポリペプチド・フラグメントは約200、175、150、125、100、90、80、70、60、50、40、30、25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、またはそれ未満のアミノ酸長であってもよい。
【0038】
アナプラズマ・ポリヌクレオチド
本発明のポリヌクレオチドは全微生物ゲノムより少ないゲノムを含有してもよく、また、1本鎖または2本鎖核酸であってもよい。ポリヌクレオチドはRNA、DNA、cDNA、ゲノムDNA、化学的に合成したRNAもしくはDNA、またはそれらの組み合わせであってもよい。ポリヌクレオチドを精製して、他の成分(例えばタンパク質、脂質、および他のポリヌクレオチド)を含有しないようにしてもよい。例えばポリヌクレオチドは50%、75%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の純度であってもよい。例えばcDNAもしくはゲノム・ライブラリー内の、数百から数百万の他の核酸分子中に存在する核酸分子、またはゲノムDNA制限酵素消化物を含有するゲル切片は、精製ポリヌクレオチドと見なされない。本発明のポリヌクレオチドは上記の本発明のポリペプチドをコードする。本発明のある態様では、ポリヌクレオチドはSEQ ID NO:1-21に示すポリペプチドまたはそのフラグメントをコードする。
【0039】
本発明のポリヌクレオチドは約639、450、300、225、147、138、135、105、96、60、54、51、45、30、20、10、またはそれ未満の連続する天然型(すなわちAphまたはAplポリヌクレオチド)または非天然型ポリヌクレオチドから成ってもよい。本発明のポリヌクレオチドは約10、20、30、45、51、54、60、96、105、135、138、147、225、300、450、639、またはそれ以上の連続する天然型(すなわちAphまたはAplポリヌクレオチド)または非天然型ポリヌクレオチドから成ってもよい。精製ポリヌクレオチドは更なる異種ヌクレオチド(すなわち、AphまたはApl由来ではないヌクレオチド)および更なるAphまたはAplヌクレオチド(天然ではポリヌクレオチドに隣接していないものに限る)を含有してもよい。本発明のポリヌクレオチドは、他のヌクレオチド配列(例えばリンカー、シグナル配列、TMR輸送停止配列、膜貫通ドメイン、またはタンパク質精製に有用なリガンド(例えばグルタチオン-S-トランスフェラーゼ、ヒスチジン・タグ、およびブドウ球菌プロテインA)をコードする配列を含有してもよい。
【0040】
本発明のポリヌクレオチドは単離してもよい。単離されたポリヌクレオチドとは、天然では結合している5'および3'隣接ゲノム配列の一方または両方と直接隣接しない天然型ポリヌクレオチドである。例えば単離されたポリヌクレオチドは任意の長さの組換えDNA分子であってもよいが、ただし天然に存在するゲノム中でそれら組換えDNA分子に直接隣接している核酸配列は除去されているか、または存在しない。単離されたポリヌクレオチドには非天然型核酸分子も包まれる。
【0041】
本発明のポリヌクレオチドは免疫原性ポリペプチドをコードするフラグメントを含んでもよい。本発明のポリヌクレオチドは完全長ポリペプチド、ポリペプチド・フラグメント、および変異型または融合ポリペプチドをコードしてもよい。
【0042】
本発明のポリペプチドをコードする縮重ヌクレオチド配列、並びに本発明のポリヌクレオチド配列と少なくとも約80%、または約85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の同一性を有する相同ヌクレオチド配列およびその相補体も本発明のポリヌクレオチドである。配列同一性%は「ポリペプチド」の項に記載するように算出できる。縮重ヌクレオチド配列とは、本発明のポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするが、遺伝子コードの縮重によって核酸配列が野生型ポリヌクレオチド配列と異なるポリヌクレオチドである。生物学的に機能的なポリペプチドをコードする本発明のポリヌクレオチドの相補的DNA(cDNA)分子、種ホモログ(species homologs)、および変異体も、本発明のポリヌクレオチドである。
【0043】
本発明のポリヌクレオチドは、例えば生体サンプル(感染個体由来の血液、血清、唾液、または組織など)中に存在する核酸配列から得てもよい。ポリヌクレオチドは、例えば自動合成装置を使用して実験室で合成してもよい。PCRなどの増幅法を用いて、ポリペプチドをコードするゲノムDNAまたはcDNAのいずれかからポリヌクレオチドを増幅してもよい。
【0044】
本発明のポリヌクレオチドは、天然存在型ポリペプチドのコード配列を含有するか、または天然には存在しない、改変された配列をコードしてもよい。必要により、ホスト細胞において本発明のポリヌクレオチドの発現を惹起する発現調節要素(例えば複製起点、プロモーター、エンハンサー、または他の制御要素)を含む発現ベクターにポリヌクレオチドをクローニングしてもよい。発現ベクターは、例えばプラスミド(pBR322、pUC、またはColE1など)またはアデノウイルス・ベクター(アデノウイルス2型ベクターまたは5型ベクター)であってもよい。必要により他のベクターを使用してもよく、それらには、限定されるわけではないが以下がある:シンドビスウイルス、シミアンウイルス40、アルファウイルス・ベクター、ポックスウイルス・ベクター、サイトメガロウイルスおよびレトロウイルス・ベクター、例えばマウス肉腫ウイルス、マウス乳癌ウイルス、モロニー・マウス白血病ウイルス、およびラウス肉腫ウイルス。ミニクロモソーム(例えばMCおよびMC1)、バクテリオファージ、ファージミド、酵母人工染色体、細菌人工染色体、ウイルス粒子、ウイルス様粒子、コスミド(λファージのcos部位が挿入されたプラスミド)、およびレプリコン(細胞中で、それ自身の制御下で複製することができる遺伝子要素)を使用してもよい。
【0045】
発現制御配列に機能的に結合したポリヌクレオチドの調製およびホスト細胞中でのそれらの発現の方法は、当該分野で周知である。例えば米国特許第4,366,246号を参照されたい。本発明のポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドの転写および/または翻訳を指示する1つまたはそれ以上の発現調節要素に隣接しているか、またはその近傍に位置している場合、機能的に結合している。
【0046】
本発明のポリヌクレオチドを、例えばプローブまたはプライマー(例えばPCRプライマー)として用い、試験サンプル(例えば生体サンプル)中のアナプラズマ・ポリヌクレオチドの存在を検出してもよい。プローブは、例えばハイブリダイゼーションによって、一般的には配列特異的に、標的核酸と相互作用する能力を有する分子である。プライマーは、酵素処理を補助することができ、標的核酸とハイブリダイズして酵素処理を起こすことができるプローブのサブセットである。プライマーは、当該分野で使用できるヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体もしくは類似体で、酵素処理に干渉しないものを任意に組み合わせたものから調製してもよい。
【0047】
プローブまたはプライマーは、本発明のポリペプチドをコードする約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、125、150、175、200、またはそれ以上の連続するヌクレオチドであってもよい。
【0048】
核酸のハイブリダイゼーションについては当該分野でよく理解されており、本明細書にも記載してある。一般に、プローブは当該分野で使用できるヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体もしくは類似体を任意に組み合わせたものから調製してもよい。それらのプローブおよびプライマーのアナプラズマ・ファゴサイトフィルムまたはアナプラズマ・プラチス・ポリヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズする能力により、それらを使用して所定の試験サンプル中の相補的配列の存在を検出することができる。本発明のポリヌクレオチド・プローブおよびプライマーは試験サンプル、例えば生体サンプル(例えば唾液、喀痰、血液、血漿、血清、尿、糞便、脳脊髄液、羊水、創傷滲出液、または組織)中の相補的配列にハイブリダイズできる。サンプル由来のポリヌクレオチドを、例えばゲル電気泳動もしくは他のサイズ分離法に施与するか、またはサイズ分離をせずに固定化してもよい。ポリヌクレオチド・プローブまたはプライマーを標識してもよい。好適な標識、そしてプローブおよびプライマーを標識する方法は当該分野で公知であり、それらには例えば、ニックトランスレーションまたはキナーゼによって導入される放射性標識、ビオチン標識、蛍光標識、化学発光標識、生物発光標識、金属キレート標識、および酵素標識がある。サンプル由来のポリヌクレオチドを、好適なストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件下でプローブまたはプライマーと接触させる。
【0049】
適用によって、種々のハイブリダイゼーション条件を用いて、標的配列に対するプローブまたはプライマーの選択性の程度を変化させることができる。高度の選択性が必要とされる適用では、相対的に高いストリンジェンシーな条件、例えば低塩濃度および/または高温条件(例えば約0.02Mから約0.15Mの塩濃度で、約50℃から約70℃の温度)を使用してもよい。必要とされる選択性がより低い適用では、より低ストリンジェンシーな条件を使用できる。例えば約0.14Mから約0.9Mの塩濃度で、約20℃から約55℃の温度。プローブまたはプライマーおよび試験サンプル由来の相補的ポリヌクレオチドを含有するハイブリダイズした複合体の存在は、AplまたはAplポリヌクレオチド配列がサンプル中に存在することを示す。
【0050】
抗体
本発明の抗体は、アナプラズマ・ファゴサイトフィルム・ポリペプチド、アナプラズマ・プラチス・ポリペプチド、本発明の変異型ポリペプチド、またはそれらのフラグメントに特異的に結合する抗体分子である。本発明の抗体はAphポリペプチド、Aplポリペプチド、変異型ポリペプチド、またはそれらの組み合わせに特異的であってもよく、例えばSEQ ID NO:1-21の1つまたはそれ以上に特異的な抗体であってもよい。本発明の別の態様では、抗体はアナプラズマ・ファゴサイトフィルム・ポリペプチドに特異的である(例えばSEQ ID NOs:1、4、5、6、7、9、11、12、15、16、17、18、または20に特異的な抗体)。本発明の別の態様では、抗体はアナプラズマ・プラチス・ポリペプチドに特異的である(例えばSEQ ID NO:8または19に特異的な抗体)。本発明の別の態様では、抗体はアナプラズマ・ファゴサイトフィルム・ポリペプチドおよびアナプラズマ・プラチス・ポリペプチドの両方に特異的である(例えばSEQ ID NO:2、3、10、13、14、または21に特異的な抗体)。当業者は、本明細書に記載するアッセイを用いて、抗体がアナプラズマ・ファゴサイトフィルム・ポリペプチドまたはアナプラズマ・プラチス・ポリペプチドに特異的であるか否かを容易に判定できる。本発明の抗体はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、1本鎖抗体(scFv)、または抗体の抗原結合フラグメントであってもよい。抗体の抗原結合フラグメントはインタクトな抗体の抗原結合部位または可変領域を含むインタクトな抗体の一部分であって、その部分はインタクトな抗体のFc領域の定常重鎖ドメインを含有しない。抗原結合抗体フラグメントの例として、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2、およびFvフラグメントがある。
【0051】
本発明の抗体は任意の抗体クラスであってもよく、それらには例えばIgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEがある。抗体またはそのフラグメントは本発明のポリペプチドのエピトープに結合する。抗体は好適な実験動物においてin vivoで作製するか、または組換えDNA技術によってin vitroで作製してもよい。抗体の調製法およびキャラクタリゼーション法は当該分野で周知である。例えば以下を参照されたい:Dean, Methods Mol. Biol. 80:23-37(1998);Dean, Methods Mol. Biol. 32:361-79(1994);Baileg, Methods Mol. Biol. 32:381-88(1994);Gullick, Methods Mol. Biol. 32:389-99(1994);Drenckhahnら Methods Cell. Biol. 37:7-56(1993);Morrison, Ann. Rev. Immunol. 10:239-65 (1992); Wrightら Crit. Rev. Immunol. 12:125-68(1992)。例えば、ポリクローナル抗体は本発明のポリペプチドを動物(例えばヒトもしくは他の霊長類、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ヤギ、ブタ、イヌ、ウシ、ヒツジ、ロバ、またはウマ)に投与することにより調製してもよい。免疫した動物由来の血清を回収し、例えば硫酸アンモニウム沈殿後にクロマトグラフィー(例えばアフィニティークロマトグラフィー)を行うことによって、抗体を血漿から精製する。ポリクローナル抗体の調製および加工法は当該分野で公知である。
【0052】
「特異的に結合する」または「に特異的である」とは、第1の抗原(例えばアナプラズマ・ファゴサイトフィルムまたはアナプラズマ・プラチス・ポリペプチド)が本発明の抗体を、他の非特異的分子に対するより高いアフィニティーで認識および結合することを意味する。非特異的分子は第1の抗原と共通のエピトープを共有しない抗原である。本発明の好ましい態様では、非特異的分子はアナプラズマ種に由来するものではない。アナプラズマ種はアナプラズマ属の任意の種である。例えば、第1の抗原(例えばポリペプチド)に対して産生させた抗体であって、非特異的抗原に対するよりも高い効率で結合する抗体は、第1の抗原に特異的に結合すると表すことができる。ある態様では、Ka=107 l/mol以上の結合アフィニティーで結合する場合、抗体またはその抗原結合フラグメントがSEQ ID NO:1-21のポリペプチドまたはそのフラグメントに特異的に結合する。特異的結合は、例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、またはウェスタンブロットアッセイを用い、当該分野で周知の方法論によって試験できる。
【0053】
本発明の抗体には以下の抗体およびその抗原結合フラグメントが包含される:
(a)SEQ ID NO:1-21もしくはその抗原結合フラグメントへの結合を巡って参照抗体と競合する;(b)参照抗体と同じSEQ ID NO:1-21もしくはその抗原結合フラグメントのエピトープに結合する;(c)参照抗体と実質的に同じKdでSEQ ID NO:1-21もしくはその抗原結合フラグメントに結合する;および/または、(d)参照抗体と実質的に同じオフレートでSEQ ID NO:1-21もしくはその抗原結合フラグメントに結合する(ここで、参照抗体はSEQ ID NO:1-21のポリペプチドまたはその抗原結合フラグメントにKa=107 l/molまたはそれ以上の結合アフィニティーで特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントである)。
【0054】
更に、本発明のポリペプチド上に存在するエピトープを標的とするモノクローナル抗体も容易に作製できる。例えば本発明のポリペプチドで免疫した哺乳動物(例えばマウス)由来の正常B細胞を、例えばHAT感受性マウス骨髄腫細胞と融合させて、ハイブリドーマを作製してもよい。アナプラズマ特異的抗体を産生するハイブリドーマをRIAまたはELISAを用いて同定し、半流動寒天でのクローニングまたは限界希釈によって単離してもよい。アナプラズマ特異的抗体を産生するクローンを更なるスクリーニングによって単離する。モノクローナル抗体の特異性に関するスクリーニングを、標準的な方法、例えば本発明のポリペプチドをマイクロタイタープレートに結合させ、ELISAアッセイによってモノクローナル抗体の結合を測定することによって行ってもよい。モノクローナル抗体の作製および加工法は当該分野で公知である。例えばKohlerおよびMilstein, Nature, 256:495(1975)参照。特定のアイソタイプのモノクローナル抗体は、最初の融合体から選択して直接調製するか、または異なるアイソタイプのモノクローナル抗体を分泌する親ハイブリドーマから同胞選択(sib selection)法を用いてクラス・スイッチ変異体を単離することによって二次的に調製してもよい。Steplewskiら, P.N.A.S. U.S.A. 82:8653 1985; Spriaら, J. Immunolog. Meth. 74:307, 1984参照。本発明のモノクローナル抗体は組換えモノクローナル抗体であってもよい。例えば米国特許第4,474,893号;米国特許第4,816,567号を参照。本発明の抗体は化学的に構築してもよい。例えば米国特許第4,676,980号参照。
【0055】
本発明の抗体はキメラ抗体(例えば米国特許第5,482,856号参照)、ヒト化抗体(例えばJonesら, Nature 321:522(1986);Reichmannら, Nature 332:323(1988);Presta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593(1992)参照)、イヌ化抗体、イヌ抗体、またはヒト抗体であってもよい。ヒト抗体は、例えば直接的不死化、ファージディスプレイ、トランスジェニック・マウス、またはトリメラ(Trimera)法によって作製してもよい(例えばReisenerら, Trends Biotechnol. 16:242-246(1998)参照)。
【0056】
アナプラズマ・プラチス抗原ではなくアナプラズマ・ファゴサイトフィルム抗原(例えばSEQ ID NO:1、4、5、6、7、9、11、12、15、16、17、18、または20)に特異的に結合する抗体は、サンプル(例えばアナプラズマ・ファゴサイトフィルムに感染した動物由来の血清、血液、血漿、尿、糞便、組織、細胞、または唾液サンプル)中のアナプラズマ・ファゴサイトフィルム抗原の存在の検出に特に有用である。
【0057】
アナプラズマ・ファゴサイトフィルム抗原ではなくアナプラズマ・プラチス抗原(例えばSEQ ID NO:8または19)に特異的に結合する抗体は、サンプル(例えばアナプラズマ・プラチスに感染した動物由来の血清、血液、血漿、尿、糞便、組織、または唾液サンプル)中のアナプラズマ・プラチス抗原の存在の検出に特に有用である。
【0058】
アナプラズマ・プラチスおよびアナプラズマ・ファゴサイトフィルム抗原(例えばSEQ ID NO:2、3、10、13、14、または21)に特異的に結合する抗体は、サンプル(例えばアナプラズマ・プラチスに感染した動物またはアナプラズマ・ファゴサイトフィルムに感染した動物由来の血清、血液、血漿、尿、糞便、組織、または唾液サンプル)中のアナプラズマ・プラチス抗原およびアナプラズマ・ファゴサイトフィルム抗原の存在の検出に特に有用である。
【0059】
アナプラズマ抗原に関する免疫アッセイは1つの抗体または複数の抗体を使用してもよい。アナプラズマ抗原に関する免疫アッセイは、例えばアナプラズマ・エピトープ(単数)に特異的なモノクローナル抗体(単数)、1つのアナプラズマ・ポリペプチドのエピトープ(複数)に特異的なモノクローナル抗体(複数)の組み合わせ、異なるアナプラズマ・ポリペプチド(複数)のエピトープ(複数)に特異的なモノクローナル抗体(複数)、同じアナプラズマ抗原(単数)に特異的なポリクローナル抗体(複数)、異なるアナプラズマ抗原(複数)に特異的なポリクローナル抗体(複数)、またはモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体の組み合わせを使用してもよい。免疫アッセイ・プロトコルは、例えば競合、直接反応、またはサンドイッチ型アッセイ(例えば標識された抗体を使用する)に基づくものであってもよい。本発明の抗体は、当該分野で公知の任意のタイプの標識(例えば蛍光、化学発光、放射能、酵素、コロイド金属、放射性同位体、および生物発光標識)で標識してもよい。本発明の抗体は、Aph抗原のみ、Apl抗原のみ、またはAph抗原およびApl抗原に特異的に結合してもよい。
【0060】
本発明の抗体またはそのフラグメントを支持体に結合させ、これを用いてAplおよび/またはAph抗原の存在を検出してもよい。支持体には、例えばガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および変性セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、およびマグネタイト(magletite)がある。
【0061】
更に、本発明の抗体を使用して、免疫アフィニティーカラムによってAplおよび/またはAph菌体または抗原を単離してもよい。抗体を(例えば吸着または共有結合によって)、その免疫学的選択活性を保持するようにして、固相支持体に固定化してもよい。必要により、抗体の抗原結合部位をアクセス可能な状態に保持するように、スペーサー基を含有させてもよい。その後、固定化した抗体を用いてサンプル(例えば生体サンプル(唾液、血清、喀痰、血液、尿、糞便、脳脊髄液、羊水、創傷滲出液、または組織など))由来のアナプラズマ菌体またはアナプラズマ抗原を結合させてもよい。結合したアナプラズマ菌体またはアナプラズマ抗原を、例えばpH変化によって、カラムマトリックスから回収する。
【0062】
また、本発明の抗体を免疫局在性の研究に使用し、種々の細胞事象または生理学的条件の際の本発明のポリペプチドの存在および分布を分析してもよい。更に、抗体を使用して受動免疫に関与する分子の同定および非タンパク質抗原の生合成に関与する分子の同定を行ってもよい。それらの分子の同定はワクチン開発に有用でありうる。本発明の抗体(例えばモノクローナル抗体および1本鎖抗体)を使用してAplおよび/またはAphに起因する疾患の寛解経過をモニタリングしてもよい。動物由来試験サンプル中のAplおよび/またはAph特異的抗体の増加または減少を測定することによって、疾患の寛解を目的とする特定の治療計画が有効であるか否かを判定してもよい。抗体の検出および/または定量は、例えば直接結合アッセイ、例えばRIA、ELISA、またはウェスタンブロット・アッセイを用いて行ってもよい。
【0063】
検出法
本発明の方法を用いて、試験サンプル、例えば生体サンプル、環境サンプル、または実験用サンプル中のアナプラズマ抗原、Apl抗原、Aph抗原、Aplポリヌクレオチド、Aphポリヌクレオチド、またはそれらの組み合わせに特異的な抗体またはその特異的結合フラグメントを検出してもよい。試験サンプルは、Aplポリヌクレオチド、Aphポリヌクレオチド、Aplポリペプチド、アナプラズマ種ポリペプチド、Aphポリペプチド、アナプラズマ種に特異的な抗体、Aplに特異的な抗体、および/もしくはAphに特異的な抗体、無関係のポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、もしくは抗原、または上記のものの組み合わせを含有する可能性があるか、あるいは上記のいずれも含有しない可能性があってもよい。生体サンプルには、例えば哺乳動物(ウマ、ネコ、イヌ、またはヒトなど)由来の血清、血液、細胞、血漿、唾液、尿、糞便、または組織がある。試験サンプルは未処理であるか、または沈殿、分画、分離、希釈、濃縮、もしくは精製を行ってもよい。
【0064】
ある態様では、本発明の方法は、ポリペプチド/抗体複合体(すなわち免疫複合体)の形成が可能な条件下で、1つまたはそれ以上の本発明のポリペプチドを試験サンプルと接触させることを含む。すなわち、本発明のポリペプチドはサンプル中に存在するAplおよび/またはAph抗原に特異的な抗体と特異的に結合する。本発明のある態様では、1つまたはそれ以上の本発明のポリペプチド(例えばSEQ ID NO:1、4、5、6、7、9、11、12、15、16、17、18、20、またはそのフラグメント)は、Aph抗原に特異的であってApl抗原には特異的に結合しない抗体に特異的に結合する。本発明の別の態様では、1つまたはそれ以上の本発明のポリペプチド(例えばSEQ ID NO:2、3、10、13、14、21、またはそのフラグメント)はAphおよびApl抗原の両方に特異的な抗体に特異的に結合する。本発明のある態様では、1つまたはそれ以上の本発明のポリペプチド(例えばSEQ ID NO:8、19、またはそのフラグメント)は、Apl抗原に特異的であってAph抗原に特異的に結合しない抗体に特異的に結合する。当業者は、抗体/ポリペプチド複合体結合の検出に使用されるアッセイおよび条件に詳しい。サンプル中のポリペプチドおよび抗Aplおよび/または抗Aph抗体間の複合体形成を検出する。抗体/ポリペプチド複合体が形成されれば、サンプル中にアナプラズマ・ファゴサイトフィルム・ポリペプチドおよび/またはアナプラズマ・プラチス・ポリペプチドが存在することを示す。ポリペプチド/抗体複合体が検出されなければ、サンプル中にアナプラズマ・ファゴサイトフィルム・ポリペプチドおよび/またはアナプラズマ・プラチス・ポリペプチドが存在しないことを示す。
【0065】
例えばAplおよび/またはAphに感染している疑いのあるヒトまたは動物から試験サンプルを採取することによって、Aplおよび/またはAph感染を診断する方法に、本発明の抗体を使用することができる。抗体-抗原複合体(すなわち免疫複合体)の形成が可能な条件下で試験サンプルを本発明の抗体と接触させる。抗原/抗体複合体の形成を可能とし、これに好適な条件は当業者に公知である。抗体-抗原複合体の量を当該分野で公知の方法によって測定してもよい。レベルがコントロール・サンプル中で生成されるものより高ければAplおよび/またはAphに感染していることを示す。コントロール・サンプルはAphおよび/もしくはAplポリペプチドまたはAphおよび/もしくはApl特異的抗体のいずれも含有しないサンプルである。本発明のある態様では、コントロールはアナプラズマ種ポリペプチドまたはアナプラズマ種特異的抗体を含有しない。本発明のある態様では、抗体はAph抗原のみに特異的である。本発明の別の態様では、抗体はAphおよびApl抗原の両方に特異的である。本発明の別の態様では、抗体はApl抗原のみに特異的である。あるいはまた、本発明のポリペプチドを試験サンプルと接触させてもよい。陽性試験サンプル中のAplおよび/またはAphに特異的な抗体は、好適な条件下で抗原-抗体複合体を形成する。抗体-抗原複合体の量を当該分野で公知の方法によって測定してもよい。
【0066】
本発明のある態様では、被験体においてアナプラズマ・ファゴサイトフィルムおよび/またはアナプラズマ・プラチス感染を検出してもよい。生体サンプルを被験体から採取する。精製されたSEQ ID NO:1-21含有ポリペプチドまたは本発明の他のポリペプチドの1つまたはそれ以上を、ポリペプチド/抗体複合体の形成が可能な条件下で生体サンプルと接触させる。ポリペプチド/抗体複合体を検出する。ポリペプチド/抗体複合体が検出されれば、哺乳動物がアナプラズマ・ファゴサイトフィルムおよび/またはアナプラズマ・プラチスに感染していることを示す。ポリペプチド/抗体複合体が検出されなければ、哺乳動物がアナプラズマ・ファゴサイトフィルムまたはアナプラズマ・プラチスに感染していないことを示す。
【0067】
SEQ ID NO:2、3、10、13、14、および21は抗Apl抗体および抗Aph抗体の両方に特異的であるため、検出される感染はAph感染、Apl感染、またはAplおよびAphの両方への感染でありうる。SEQ ID NO:1、4、5、6、7、9、11、12、15、16、17、18、および20は抗Aph抗体に特異的であるため、検出される感染はAph感染である。SEQ ID NO:8および19は抗Apl抗体に特異的であるため、検出される感染はApl感染である。ポリペプチド/抗体複合体が検出されなければ、被験体はアナプラズマ・ファゴサイトフィルムまたはアナプラズマ・プラチスに感染していないことを示す。
【0068】
本発明のある態様では、Aplおよび/またはAph感染は、被験体のAplおよび/またはAph感染の約5日後、6日後、7日後、8日後、9日後、10日後、11日後、12日後、13日後、14日後、15日後、16日後、17日後、18日後、19日後、20日後、21日後、またはそれ以降までに被験体において検出される。本発明のある態様では、Aplおよび/またはAph感染は、被験体のAplおよび/またはAph感染の約21日後、20日後、19日後、18日後、17日後、16日後、15日後、14日後、13日後、12日後、11日後、10日後、9日後、8日後、7日後、6日後、5日後、またはそれ以前までに被験体において検出される。
【0069】
本発明のある態様では、抗体に結合した指示薬(例えば酵素コンジュゲート)が検出可能な反応を触媒すると、ポリペプチド/抗体複合体が検出される。必要により、シグナル生成化合物を含有する指示薬を、ポリペプチド/抗体/指示薬複合体の形成が可能な条件下でポリペプチド/抗体複合体に適用してもよい。ポリペプチド/抗体/指示薬複合体を検出する。必要により、ポリペプチドまたは抗体を指示薬で標識した後、ポリペプチド/抗体複合体を形成させる。方法は、必要により陽性または陰性コントロールを含んでもよい。
【0070】
本発明のある態様では、1つまたはそれ以上の本発明の抗体を固相または基材に結合させる。本発明のポリペプチドを含むタンパク質を含有する可能性のある試験サンプルを基材に添加する。本発明のポリペプチドに特異的に結合する1つまたはそれ以上の抗体を添加する。抗体は固相上に使用する抗体と同じであるか、または異なる供与源もしくは種由来であってもよく、指示薬(例えば酵素コンジュゲート)に結合させてもよい。各添加の前に洗浄工程を行ってもよい。発色団または酵素基質を添加し、呈色させる。呈色反応を停止させ、例えば分光光度計を用いて、色を定量する。
【0071】
本発明の別の態様では、1つまたはそれ以上の本発明の抗体を固相または基材に結合させる。本発明のポリペプチドを含むタンパク質を含有する可能性のある試験サンプルを基材に添加する。本発明のポリペプチドに特異的に結合する第2の抗種抗体(second anti-species antibodies)を添加する。これら第2の抗体は固相抗体と異なる種由来である。第2の抗体と特異的に結合し、固相抗体とは特異的に結合しない第3の抗種抗体(third anti-species antibodies)を添加する。第3の抗体は指示薬(例えば酵素コンジュゲート)を含有してもよい。各添加の前に洗浄工程を行ってもよい。発色団または酵素基質を添加し、呈色させる。呈色反応を停止させ、例えば分光光度計を用いて、色を定量する。
【0072】
本発明のアッセイには、それらに限定されるわけではないが競合、直接反応、またはサンドイッチ型アッセイに基づくものがあり、それらに限定されるわけではないが酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウェスタンブロット、IFA、ラジオイムノアッセイ(RIA)、血球凝集(HA)、蛍光偏光免疫アッセイ(FPIA)、およびマイクロタイタープレート・アッセイ(マイクロタイタープレートの1つまたはそれ以上のウェル中で行うアッセイ)がある。本発明のあるアッセイは、リバーシブルフロークロマトグラフィー結合アッセイ、例えばSNAP(登録商標)アッセイを含む。例えば米国特許第5,726,010号参照。
【0073】
アッセイは固相もしくは基材を使用するか、または免疫沈降もしくは固相を使用しない他の任意の方法で実施してもよい。固相または基材を使用する場合、1つまたはそれ以上の本発明のポリペプチドを以下のような固相支持体または基材に直接または間接的に結合させる:マイクロタイター・ウェル、磁気ビーズ、非磁気ビーズ、カラム、マトリックス、膜、合成もしくは天然ファイバー(例えばガラスもしくはセルロースを主成分とする物質、または例えばポリエチレン、ポリプロピレン、もしくはポリエステルなどの熱可塑性ポリマー)から成る繊維性のマット、粒子物質(例えばガラスまたは種々の熱可塑性ポリマー)から成る焼結構造、またはニトロセルロース、ナイロン、ポリスルホンなど(性質上、一般に合成である)から成るキャスト膜フィルム。本発明のある態様では、基材は焼結した微細ポリエチレン粒子であり、これは一般に多孔性ポリエチレンとして知られている(例えばChromex社(ニューメキシコ州アルバカーキ)製、10-15ミクロン多孔性ポリエチレン)。これらの基材物質は全て、好適な形状(例えばフィルム、シート、またはプレート)で使用することができ、あるいは好適な不活性キャリア(例えば紙、ガラス、プラスチックフィルム、または織物)上にコーティングするか、またはそれに結合もしくはラミネートさせてもよい。ペプチドを固相上に固定化するための好適な方法にはイオン性相互作用、疎水性相互作用、共有結合性相互作用などがある。
【0074】
あるアッセイ形式では、1つまたはそれ以上のポリペプチドを固相または基材上にコーティングしてもよい。抗Aplおよび/もしくは抗Aph抗体またはその抗原結合フラグメントを含有する疑いのある試験サンプルを、Aplおよび/またはAphに特異的な抗体または抗原結合性抗体フラグメントにコンジュゲートしたシグナル生成化合物を含む指示薬と共に、試験サンプルの抗体が固相ポリペプチドに結合するか、またはAplおよび/もしくはAphに特異的な抗体にコンジュゲートした指示薬が固相ポリペプチドに結合するかのいずれかによって抗原/抗体複合体が形成されるのに十分な時間および条件下で、インキュベートする。抗Aplおよび/または抗Aph抗体にコンジュゲートした指示薬の固相への結合の低下を定量的に測定してもよい。Apl陰性および/またはAph陰性であることが確認されている試験サンプルから生成されるシグナルと比較して測定可能なシグナルの低下があれば、これは試験サンプル中に抗Aplおよび/または抗Aph抗体が存在することを示す。このタイプのアッセイでは、試験サンプル中の抗Aplおよび/または抗Aph抗体を定量化できる。
【0075】
別のタイプのアッセイ形式では、1つまたはそれ以上の本発明のポリペプチドを支持体または基材上にコーティングする。本発明のポリペプチドを指示薬にコンジュゲートさせ、試験サンプルに添加する。この混合物を支持体または基材に適用する。Aplおよび/またはAphに特異的な抗体が試験サンプル中に存在すれば、それらは指示薬にコンジュゲートしたポリペプチドの1つまたはそれ以上、および支持体上に固定化されたポリペプチドの1つまたはそれ以上に結合する。その後、このポリペプチド/抗体/指示薬複合体を検出することができる。このタイプのアッセイでは、試験サンプル中の抗Aplおよび/または抗Aph抗体の量を定量化できる。
【0076】
別のタイプのアッセイ形式では、1つまたはそれ以上の本発明のポリペプチドを支持体または基材上にコーティングする。試験サンプルを支持体または基材に適用し、インキュベートする。洗浄溶液で固相支持体を洗浄することにより、サンプル由来の未結合成分を除去する。Aplおよび/またはAphに特異的な抗体が試験サンプル中に存在すれば、それらは固相上にコーティングされたポリペプチドに結合する。このポリペプチド/抗体複合体を、指示薬にコンジュゲートした第2の種特異的抗体(a second species-specific antibody)を用いて検出できる。その後、ポリペプチド/抗体/抗種抗体指示薬複合体を検出することができる。このタイプのアッセイでは、試験サンプル中の抗Aplおよび/または抗Aph抗体の量を定量化できる。
【0077】
ポリペプチド/抗体複合体またはポリペプチド/抗体/指示薬複合体の形成は、例えば放射測定、比色測定、蛍光測定、サイズ分離、または沈殿法によって検出できる。必要により、ポリペプチド/抗体複合体を、シグナル生成化合物を含む指示薬に結合した二次抗体を添加することによって検出する。ポリペプチド/抗体複合体に結合したシグナル生成化合物(標識)を含む指示薬は上記の方法で検出できるが、それらには発色剤、触媒(例えば酵素コンジュゲート)、蛍光化合物(例えばフルオレセインおよびローダミン)、化学発光化合物(例えばジオキセタン、アクリジニウム、フェナントリジニウム、ルテニウム、およびルミノール)、放射性元素、直接目視できる標識、並びにコファクター、阻害剤、磁気粒子などがある。酵素コンジュゲートの例としてアルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、βガラクトシダーゼなどがある。特定の標識を選択することが重要な訳ではないが、それ自体によって、または1つもしくはそれ以上の更なる物質とコンジュゲートしてシグナルを生成する能力を有するものである。
【0078】
複合体の形成は試験サンプル中の抗Aplおよび/または抗Aph抗体の存在を示す。従って、本発明の方法を使用して患者におけるAplおよび/またはAph感染を診断できる。
【0079】
本発明の方法では、試験サンプル中の抗Aplおよび/または抗Aph抗体の量も示すことができる。多くの指示薬(例えば酵素コンジュゲート)を用いると、存在する抗体の量は生成されるシグナルに比例する。試験サンプルのタイプによって、好適なバッファーで希釈する、濃縮する、またはいずれの操作も行わずに固相と接触させることができる。例えば通常、抗体の存在および/または量を測定するために、予め希釈した血清もしくは血漿サンプル、または濃縮検体(例えば尿)を試験するのが好ましい。
【0080】
本発明は更に、サンプル中の抗Aplおよび/もしくは抗Aph抗体もしくは抗体フラグメント、Aplポリペプチド、および/またはAphポリペプチドを検出するアッセイキット(例えば製品)を含む。キットは1つまたはそれ以上の本発明のポリペプチド、およびサンプル中の抗Apl抗体および/または抗Aph抗体または抗原結合性抗体フラグメントへのポリペプチドの結合を判定する手段を含む。また、キットまたは製品は1つまたはそれ以上の本発明の抗体または抗原結合性抗体フラグメント、およびサンプル中のAplポリペプチドおよび/またはAphポリペプチドへの抗体または抗原結合性抗体フラグメントの結合を判定する手段を含んでもよい。キットは、1つまたはそれ以上の本発明のポリペプチドまたは抗体を含有する装置、および(例えば哺乳動物におけるAplおよび/またはAph感染の同定のための)1つまたはそれ以上のポリペプチドまたは抗体の使用説明書を含んでもよい。またキットは、キットの1つまたはそれ以上のポリペプチドまたは抗体をAplおよび/またはAph感染の同定に使用できることを示すラベルを含む包装材料を含んでもよい。当業者に公知の他の成分(例えばバッファー、コントロールなど)をそれらの試験キットに含ませてもよい。本発明のポリペプチド、抗体、アッセイ、およびキットは、例えば患者におけるAplおよび/またはAph感染の個々の症例の診断、並びにAplおよび/またはAph蔓延の疫学的研究に有用である。
【0081】
本発明のポリペプチドおよびアッセイを他のポリペプチドまたはアッセイと併用し、アナプラズマの存在を他の生物体と共に検出してもよい。例えば本発明のポリペプチドおよびアッセイを、イヌ糸状虫および/またはボレリア・バーグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)および/またはエーリキア・カニス(Ehrlichia canis)を検出する試薬と併用してもよい。
【0082】
本発明のポリヌクレオチドを使用してサンプル中のAplおよび/またはAphポリヌクレオチドの存在を検出できる。ポリヌクレオチドを用い、単純なハイブリダイゼーション反応によってサンプル中のAplおよび/またはAphポリヌクレオチドを検出することができ、また、これを例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(例えばリアルタイムPCR反応)に使用することもできる。本発明の方法および組成物を使用してAphの存在を他のアナプラズマ種(例えばApl)と識別して検出することもできる。
【0083】
PCRアッセイは当該分野で公知であり、例えば米国特許第4,683,195号;米国特許第4,683,202号;米国特許第4,965,188号に記載されている。一般にポリヌクレオチド・プライマーを標的核酸の変性ストランドにアニールさせる。ポリメラーゼによるデオキシヌクレオシド3リン酸の重合化によってプライマー伸長産物を生成させる。その後PCRでは、テンプレート核酸の変性、プライマーのアニーリング、および熱安定性ポリメラーゼの作用によるアニールしたプライマーの伸長の反復サイクルを行う。この工程により、試験サンプル中の標的アナプラズマ種核酸の指数関数的増幅が起こり、サンプル中に非常に低濃度で存在する標的ポリヌクレオチドの検出が可能となる。
【0084】
リアルタイムPCRアッセイはシグナル(例えば蛍光レポーター・シグナル)の検出に基づく。このシグナルは反応においてPCR産物の量と正比例して増加する。リアルタイムPCRは進行中の増幅反応の進展をモニタリングすることを可能とする増幅法である。Quantitation of DNA/RNA Using Real-Time PCR Detection, Perkin Elmer Applied Biosystems(1999);PCR Protocols(Academic Press New York, 1989)参照。各サイクルで蛍光発光の量を記録することにより、指数関数的増幅期にあるPCR反応をモニタリングできる(ここで、PCR産物量の最初の有意な増加は、標的テンプレートの初期量と相関関係を有する)。開始時の核酸標的コピー数が多いほど、より早期に蛍光の有意な増加が観察される。
【0085】
本発明のある態様では、試験サンプル中のAplおよび/またはAphポリヌクレオチドを検出および/または定量する方法を提供する。ポリメラーゼ連鎖反応に好適な条件下でセンス・プライマーおよびアンチセンス・プライマーを試験サンプルに添加してもよい。試験サンプル中にAplおよび/またはAphポリヌクレオチドが存在すれば、プライマーがAplおよび/またはAphポリヌクレオチドとハイブリダイズして増幅産物が形成される。増幅産物を検出し、Aplおよび/またはAphポリヌクレオチドの存在および/または量を測定する。増幅産物の検出は、ポリメラーゼ連鎖反応に好適な条件下でAplおよび/またはAphポリヌクレオチド配列とハイブリダイズするポリヌクレオチド・プローブを用いて行うことができる。プローブからの検出シグナルを測定し、該検出シグナルを定量標準からの第2のプローブ検出シグナルと比較することによって、増幅産物を定量してもよい。定量標準を、試験サンプルと並行して抽出してもよい。
【0086】
本発明のある態様では、サンプル中のアナプラズマ・ファゴサイトフィルム・ポリペプチドをアナプラズマ・プラチス・ポリペプチドと識別して検出する方法を提供する。方法は以下を含む:
(a)SEQ ID NO:1、4、5、6、7、9、11、12、15、16、17、18、または20から成るポリペプチドに特異的に結合する1つまたはそれ以上の抗体をポリペプチド/抗体複合体の形成が可能な条件下でサンプルと接触させ、ポリペプチド/抗体複合体を検出すること;および
(b)SEQ ID NO:8または19から成るポリペプチドに特異的に結合する1つまたはそれ以上の抗体をポリペプチド/抗体複合体の形成が可能な条件下でサンプルと接触させ、ポリペプチド/抗体複合体を検出すること。
【0087】
ポリペプチド/抗体複合体が工程(a)および工程(b)で検出されれば、サンプルはアナプラズマ・ファゴサイトフィルム・ポリペプチドを含有し、アナプラズマ・プラチス・ポリペプチドを含有する。ポリペプチド/抗体複合体が工程(a)で検出され、工程(b)では検出されなければ、サンプルはアナプラズマ・ファゴサイトフィルム・ポリペプチドを含有するが、アナプラズマ・プラチス・ポリペプチドは含有しない。ポリペプチド/抗体複合体が工程(a)で検出されず、工程(b)で検出されれば、サンプルはアナプラズマ・プラチス・ポリペプチドを含有するが、アナプラズマ・ファゴサイトフィルム・ポリペプチドは含有しない。ポリペプチド複合体が工程(a)で検出されず、工程(b)でも検出されなければ、サンプルはアナプラズマ・プラチス・ポリペプチドを含有せず、アナプラズマ・ファゴサイトフィルム・ポリペプチドも含有しない。
【0088】
本発明の別の態様では、アナプラズマ・プラチス・ポリペプチド、アナプラズマ・ファゴサイトフィルム・ポリペプチド、またはアナプラズマ・プラチス・ポリペプチドおよびアナプラズマ・ファゴサイトフィルム・ポリペプチドの両方に特異的に結合する抗体を検出する方法を提供する。方法は以下を含む:
(a)SEQ ID NO:1、4、5、6、7、9、11、12、15、16、17、18、または20を含有する1つまたはそれ以上の精製ポリペプチドをポリペプチド/抗体複合体の形成が可能な条件下で試験サンプルと接触させ、ポリペプチド/抗体複合体を検出すること;および
(b)SEQ ID NO:8または19を含有する1つまたはそれ以上の精製ポリペプチドをポリペプチド/抗体複合体の形成が可能な条件下で試験サンプルと接触させ、ポリペプチド/抗体複合体を検出すること。
【0089】
ポリペプチド/抗体複合体が工程(a)および工程(b)で検出されれば、サンプルはアナプラズマ・ファゴサイトフィルム・ポリペプチドおよびアナプラズマ・プラチス・ポリペプチドに特異的に結合する抗体(すなわち、アナプラズマ・プラチス・ポリペプチドおよびアナプラズマ・ファゴサイトフィルム・ポリペプチドの両方に特異的に結合する能力を有する抗体)を含有する。ポリペプチド/抗体複合体が工程(a)で検出され、工程(b)では検出されなければ、サンプルはアナプラズマ・ファゴサイトフィルム・ポリペプチドに特異的に結合する抗体を含有するが、アナプラズマ・プラチス・ポリペプチドに特異的に結合する抗体は含有しない。ポリペプチド/抗体複合体が工程(a)で検出されず、工程(b)で検出されれば、サンプルはアナプラズマ・プラチス・ポリペプチドに特異的に結合する抗体を含有するが、アナプラズマ・ファゴサイトフィルム・ポリペプチドに特異的に結合する抗体は含有しない。ポリペプチド複合体が工程(a)で検出されず、工程(b)でも検出されなければ、サンプルはアナプラズマ・プラチス・ポリペプチドに特異的な抗体を含有せず、アナプラズマ・ファゴサイトフィルム・ポリペプチドに特異的な抗体も含有しない。
【0090】
Aphおよび/またはAplに起因する疾患の治療、寛解、または予防のための方法
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、および抗体を使用して、Aplおよび/またはAphに起因する疾患を治療、寛解、または予防することができる。例えば、抗体(例えば本発明のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント)を動物(例えばヒトまたはイヌ)に投与してもよい。本発明のある態様では、抗体またはその抗原結合フラグメントを医薬的に許容されるキャリアを含む医薬組成物として動物に投与する。医薬組成物は治療的有効量の抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。治療的有効量は、被験体におけるAplおよび/またはAph感染の症状の改善またはAplおよび/またはAph菌体量の低減に有効な量である。
【0091】
本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドは免疫原性組成物中に含まれ、これを用いてホストにおける免疫応答を惹起してもよい。免疫原性組成物または免疫原は動物において免疫応答を誘導する能力を有する。本発明の免疫原性ポリペプチドまたはポリヌクレオチド組成物は、動物の免疫系を感作し、結果としてAplおよび/またはAph感染の影響を寛解または予防する免疫応答を惹起するのに特に有用である。動物モデルでの免疫応答の惹起は、例えば最適な投与量または投与経路を決定するのに有用であり得る。免疫応答の惹起を利用して、Aplおよび/またはAphに起因する疾患または感染の治療、予防、または寛解を行ってもよい。免疫応答には液性免疫応答もしくは細胞性免疫応答、またはそれらの組み合わせがある。免疫応答は、例えばデフェンシンの生成を促進することによる、ホストの全身性応答の促進を含んでもよい。
【0092】
本発明のある態様では、本発明のポリペプチドおよびポリペプチドのカルボキシル末端またはアミノ末端に共有結合する1つまたはそれ以上の更なる領域または部分を含む免疫原を提供する。各領域または部分によって、例えば免疫応答を増強し、免疫原の精製を促進し、またはポリペプチドの安定性を向上させることができる。
【0093】
動物によるAplおよび/またはAphに対する抗体価の産生は、感染からの防御および感染のクリアランスに重要であり得る。ポリペプチドまたはポリヌクレオチド送達後の抗体価の検出および/または定量を用いて、抗体価の誘発に特に有効なエピトープを同定できる。Aplおよび/またはAphに対する強力な抗体反応に関与するエピトープの同定は、種々の長さのAplおよび/またはAphポリペプチドに対して抗体を産生させることによって行うことができる。次いで、特定のポリペプチド・エピトープによって惹起される抗体を、例えばELISAアッセイを用いて試験し、いずれのポリペプチドが強力な応答を惹起するのに最も有効なエピトープを含有するかを判定できる。その後、それらのエピトープまたはエピトープをコードするポリヌクレオチドを含むポリペプチドまたは融合タンパク質を構築し、これを用いて強力な抗体反応を惹起してもよい。
【0094】
本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、または抗体を哺乳動物(例えばマウス、ウサギ、モルモット、マカク、ヒヒ、チンパンジー、ヒト、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、イヌ、ネコ)、またはニワトリもしくはアヒルのような動物に投与し、in vivoで抗体を誘発させてもよい。ポリヌクレオチドの注射は、構築および改変を容易にするために実用面で有益である。更に、ポリヌクレオチドの注射により、ホストにおいてポリペプチドが合成される。従って、ポリペプチドが天然の翻訳後修飾、構造、およびコンフォメーションでホスト免疫系に提示される。ポリヌクレオチドを“ネイキッドDNA”として被験体に送達してもよい。
【0095】
ポリヌクレオチド、ポリペプチド、または抗体の投与は当該分野で公知の方法のいずれによって行ってもよく、それらには筋肉内、静脈内、肺内、筋肉内、皮内、腹腔内、もしくは皮下注射、エアロゾル、鼻腔内、輸液ポンプ、座薬、粘膜、局所、および経口、例えば生体弾道銃(“遺伝子銃”)を用いた注射がある。ポリヌクレオチド、ポリペプチド、または抗体は、経口投与のためのタンパク質キャリアを伴ってもよい。投与法を組み合わせて使用して免疫応答を惹起してもよい。抗体は約0.5mgから約200mgの1日用量で投与してもよい。本発明のある態様では、抗体を約20から約100mgの1日用量で投与する。
【0096】
治療に使用するための医薬的に許容されるキャリアおよび希釈剤、並びに獣医学的に許容されるキャリアおよび希釈剤は当該分野で周知であり、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing社(A.R. Gennaro編(1985))に記載されている。キャリアは、それ自体ではホストに有害な抗体の産生を誘導してはならない。それらのキャリアには、限定されるわけではないが以下がある:大型で代謝が遅い高分子、例えばタンパク質、多糖(ラテックス機能性SEPHAROSE(登録商標)、アガロース、セルロース、セルロースビーズなど)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、アミノ酸ポリマー(例えばポリグルタミン酸、ポリリジンなど)、アミノ酸コポリマー、ペプトイド、リピトイド(lipitoid)、および不活性非病原性ウィルス粒子または細菌細胞。リポソーム、ハイドロゲル、シクロデキストリン、生分解性ナノカプセル、および生体接着剤(bioadhesive)を本発明の組成物のキャリアとして使用してもよい。
【0097】
例えば以下のような医薬的に許容される塩を本発明の組成物に使用してもよい:無機塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、または硫酸塩、並びに有機酸塩、例えば酢酸塩、プロピオン酸塩(proprionates)、マロン酸塩、または安息香酸塩。特に有用なタンパク質基質は血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン、免疫グロブリン分子、サイログロブリン、オボアルブミン、破傷風トキソイド、および当業者に周知の他のタンパク質である。本発明の組成物は液体または賦形剤、例えば水、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水、リンガー液、ハンクス液、グルコース、グリセロール、デキストロース、マロデキストリン、エタノールなど(単独または組み合わせで)、並びに湿潤剤、乳化剤、浸透圧調整剤、界面活性剤、またはpH緩衝剤等の物質を含有してもよい。更なる活性剤、例えば殺菌剤を使用してもよい。
【0098】
必要により、リンパ球への免疫原性提示を向上させる共刺激分子、例えばB7-1もしくはB7-2、またはサイトカイン、例えばMIP1α、GM-CSF、IL-2、およびIL-12を本発明の組成物に含有させてもよい。必要により、アジュバントを組成物に含有させてもよい。アジュバントは特異的免疫応答を非特異的に増強させるのに使用できる物質である。一般に、アジュバントおよび本発明のポリペプチドは混合した後に免疫系に提示するか、または別々に、しかし動物の同じ部位に提示する。アジュバントには、例えば油性アジュバント(例えばフロイント完全および不完全アジュバント)、無機塩(例えばAlk(SO4)2、AlNa(SO4)2、AlNH4(SO4)、シリカ、アラム、Al(OH)3、およびCa3(PO4)2)、ポリヌクレオチド(すなわちポリICおよびポリAU酸)、およびある種の天然物質(例えば結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来のワックスD、並びにコリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、およびブルセラ属のメンバーに見られる物質)がある。使用できるアジュバントには、それらに限定されるわけではないが以下がある:MF59-0、水酸化アルミニウム、N-アセチル-ムラミル-L-スレオニル-D-イソグルタミン(thr-MDP)、N-アセチル-ノル-ムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン(CGP 11637、別名nor-MDP)、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-(1’-2’-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミン(CGP 19835A、別名MTP-PE)、およびRIBI(細菌から抽出された3つの成分、モノホスホリル脂質A、トレハロースジミコレート、および細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)を2%スクアレン/TWEEN(登録商標)80(ポリソルベート)エマルジョンに混合したものを含有する)。
【0099】
本発明の組成物を調剤して摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウェーハ、注射液、マウスウォッシュ、歯磨剤(dentrifices)等としてもよい。それらの組成物および製剤中の1つまたはそれ以上の本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、または抗体のパーセンテージは、単位重量の0.1%から60%まで様々である。
【0100】
ポリペプチド、ポリヌクレオチド、または抗体の投与により動物における免疫応答が惹起され、これは少なくとも1週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年間、またはそれ以上持続する。必要により、初回注射の1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後、1年後、またはそれ以降に、1回またはそれ以上のポリペプチド、ポリヌクレオチド、または抗体のブースター注射を行うことにより、動物における免疫応答を維持してもよい。必要により、共刺激分子またはアジュバントを組成物の前、後、またはそれと共に提供してもよい。
【0101】
ポリペプチド、ポリヌクレオチド、抗体、またはそれらの組み合わせを含む本発明の組成物を、使用する特定の組成物に適合する方法で、(例えばELISAによって)検出されるように免疫応答を惹起するのに有効な量で投与する。ポリヌクレオチドを哺乳動物(例えばヒヒ、チンパンジー、イヌ、またはヒト)に、1ng/kg、10ng/kg、100ng/kg、1000ng/kg、0.001mg/kg、0.1mg/kg、または0.5mg/kgの用量で筋肉内注射してもよい。ポリペプチドまたは抗体を0.01、0.05、0.5、0.75、1.0、1.5、2.0、2.5、5、または10mg/kgの用量で哺乳動物に筋肉内注射してもよい。
【0102】
ポリペプチド、ポリヌクレオチド、もしくは抗体、またはそれらの組み合わせをAplおよび/もしくはAphに感染していない動物に投与するか、またはAplおよび/もしくはAphに感染した動物に投与してもよい。免疫学的有効量または治療的有効量とは、個体への該量の投与(一回投与、または連続投与の一部として)がAplおよび/またはAph感染の治療、寛解、または予防に有効であることを意味する。組成物中のポリヌクレオチド、ポリペプチド、または抗体の特定の用量は多くの因子に依存し、それらの因子には、限定されるわけではないが組成物を投与する哺乳動物の種、年齢、性別、併用薬剤、全身症状、および組成物の投与様式がある。本発明の組成物の有効量は慣例的な実験法を用いるだけで容易に決定できる。
【0103】
本明細書に引用する全ての特許、特許出願、および他の科学または技術文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本発明について本明細書に適宜、例証的に記載するが、これを任意の要素(単数または複数)、制限(単数または複数)(それらについては本明細書に具体的に開示していない)を欠いた状態で実施してもよい。従って、例えば本明細書に記載するそれぞれの例で、「を含む」、「本質的に…から成る」、および「から成る」という用語は、それぞれ他の2つの用語のいずれかと置換してもよく、それでもなお、その通常の意味を保持する。使用した用語および表現は制限ではなく説明のための用語として使用するものであって、それらの用語および表現の使用において、表示および記載する特長の同等物またはその一部のいずれをも除外する意図はなく、認識されるように、種々の改変が本発明の特許請求の範囲内で可能である。従って、本発明について態様、必要に応じた特長によって具体的に開示したが、当業者は本明細書に開示するコンセプトの改変および変更を実施してもよく、それらの改変および変更は記述および添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内であると見なされることは理解されるべきである。
【0104】
更に、本発明の特徴または観点をマーカッシュ群または他の選択肢群で記載する場合、当業者に認識されるように、本発明はそれによってマーカッシュ群または他の群の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループでも記述される。
【実施例】
【0105】
実施例
実施例1 Aph p44タンパク質に由来するポリペプチドを用いた抗Aphおよび抗Apl抗体の検出
炭酸バッファー(pH9.6)に混合したSEQ ID NO:12-18および10に示すポリペプチド(0.5μg/mL)でImmulon(登録商標)4マイクロタイター・プレートを一晩コーティングした。全ての実施例で、SEQ ID NO:10に示すポリペプチドは143位にN、145位にA、および156位にIを有する。
【0106】
プレートをPetChek(登録商標)洗浄バッファーで2回洗浄した。プレートを2% TWEEN(登録商標)20(ポリソルベート)/2.5%スクロース含有0.1M Tris(pH7.6)で2時間ブロッキングした後、乾燥剤を用いて一晩乾燥させた。コンジュゲート希釈剤で1:200に希釈した試験サンプルをプレートに添加し、40分間インキュベートした。プレートをPetChek(登録商標)洗浄バッファーで6回洗浄した。コンジュゲート希釈剤で1:2000に希釈したHRPコンジュゲート・ウサギ抗イヌIgG(H+L)(Jackson ImmunoResearch Laboratories社、ペンシルバニア州ウェストグローブ;カタログ番号:304-035-003)をプレートに添加し、40分間インキュベートした。プレートをPetChek(登録商標)洗浄バッファーで6回洗浄した。60μlの3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン(「TMB」)をプレートに添加し、10分間インキュベートした。50μlの停止溶液を添加し、A650を測定した。試験サンプルは以下の通りである:
APL_13DPI:実験的にAplに感染させたイヌ(感染13日後)
APL_78DPI:実験的にAplに感染させたイヌ(感染78日後)
APH:ミネソタからのAph感染イヌ(7検体)由来サンプルのプール
neg:無作為抽出した健常イヌ(7検体)由来サンプルのプール
【0107】
結果を表1および図1に示す。
【表1】

【0108】
試験した8検体のペプチド全てが、ミネソタからのAph感染イヌ(7検体)由来の血清プールとの反応性が陽性を示した。rp44、p44-2、およびp44-3は感染の異なる2つの時点で、実験的にAplに感染させたイヌの血清との交差反応性を示した。実験的にAplに感染させたイヌの血清とp44-1、p44-4、p44-4-1、p44-4-2、およびp44-4-3との反応性はほぼバックグラウンド・レベルであった。従って、ポリペプチドp44-1、p44-4、p44-4-1、p44-4-2、およびp44-4-3はApl感染イヌ由来血清と交差反応性を有さない。
【0109】
実施例2 流行地域からのフィールドサンプル中のAphまたはAplの種特異的検出
炭酸バッファー(pH9.6)に混合したポリペプチド(Aph p44-4およびApl p44-4は0.5μg/mL;Aph rp44は0.25μg/mL)で、Immulon(登録商標)4プレートを一晩コーティングした。プレートをPetChek(登録商標)洗浄バッファーで2回洗浄した後、2% TWEEN(登録商標)20(ポリソルベート)/2.5%スクロース含有0.1M Tris(pH7.6)で2時間ブロッキングした。乾燥剤を用いてプレートを一晩乾燥させた。25μLの試験サンプルを50μLのペプチド:HRPコンジュゲート(p44-4-Aph(SEQ ID NO:15):HRPコンジュゲートでは0.5μg/mL、p44-4-Apl(SEQ ID NO:19):HRPコンジュゲートでは1μg/mL、Aph rp44コンジュゲートでは3μg/mL)と混合し、マイクロタイター・プレート上でインキュベートした(インキュベート時間は、図2に示す実験では1時間、図3に示す実験では1時間45分とした)。プレートをPetChek(登録商標)洗浄バッファーで6回洗浄した。60μLのTMBをプレートに添加し、10分間インキュベートした。50μLの停止溶液を添加し、A650を測定した。カットオフ値を10検体の陰性サンプルとの反応性に基づいて決定した;カットオフ=平均値+2 x SD(標準偏差)。
【0110】
図2に、アナプラズマ・プラチス流行地域(HP:アリゾナ、P:バハマ)に居住するイヌ由来のアナプラズマ・プラチス陽性サンプルを用いた結果を示す。rp44(SEQ ID NO:10)は5検体の「HP」サンプル中4検体が陽性、7検体の「P」サンプル中7検体が陽性であった。Aph p44-4(SEQ ID NO:15)は、5検体の「HP」サンプル中0検体が陽性、7検体の「P」サンプル中0検体が陽性であった。Apl p44-4(SEQ ID NO:19)は、5検体の「HP」サンプル中5検体が陽性、7検体の「P」サンプル中7検体が陽性であった。従ってAph p44-4はAplに感染したイヌ由来の血清と交差反応しない。
【0111】
図3に、Aph流行地域(ME:ミネソタ)に居住するイヌ由来のアナプラズマ・ファゴサイトフィルム陽性サンプルを用いた結果を示す。rp44(SEQ ID NO:10)は22検体のMEサンプル中21検体が強い陽性結果を示した。Aph p44-4(SEQ ID NO:15)は、22検体の「ME」サンプル中20検体が強い陽性結果を示した。Apl p44-4(SEQ ID NO:19)は、22検体中18検体が陰性、22検体のMEサンプル中4検体が非常に弱い陽性結果を示した。従ってApl p44-4はAphに感染したイヌ由来の血清と交差反応しないと見なされる。
【0112】
実施例3 Apl実験感染モデルにおける経時的応答
炭酸バッファー(pH9.6)に混合したポリペプチド(Aph p44-4およびApl p44-4は0.5μg/mL;Aph rp44は0.25μg/mL)で、Immulon(登録商標)4プレートを一晩コーティングした。プレートをPetChek(登録商標)洗浄バッファーで3回洗浄した。プレートを2% TWEEN(登録商標)20(ポリソルベート)/2.5%スクロース含有0.1M Tris(pH7.6)で2時間ブロッキングし、一晩放置して乾燥させた。25μLの試験サンプルを50μLのペプチド:HRPコンジュゲート(Aph p44-4コンジュゲートでは0.5μg/mL、Apl p44-4コンジュゲートでは1μg/mL、Aph rp44コンジュゲートでは3μg/mL)と混合し、マイクロタイター・プレート上で1時間インキュベートした。プレートをPetChek(登録商標)洗浄バッファーで6回洗浄した。60μLのTMBを添加し、10分間インキュベートした。50μLの停止溶液を添加し、A650を測定した。結果を図4に示す。
【0113】
結果は、SEQ ID NO:19(Apl p44-4)がApl感染の検出に使用できることを示している。SEQ ID NO:19では、感染後、約10日でApl感染が検出される。Aph p44-4(SEQ ID NO:15)はAplに感染したイヌ由来の血清と交差反応性を示さない。Aph rp44(SEQ ID NO:10)は約14日でApl感染イヌ由来血清と交差反応し、AplおよびAph感染の検出に使用できる。
【0114】
実施例4 Aph実験感染モデルにおける経時的応答
Aph p44-4(SEQ ID NO:15)およびAph rp44(SEQ ID NO:10)を、実験的にAphに感染させたイヌ由来の血清との反応性に関して、一連の時点において試験した。11検体の無作為抽出した健常なフィールド犬サンプルも試験した。炭酸バッファー(pH9.6)に混合したポリペプチド(Aph p44-4は0.5μg/mL;Aph rp44は0.25μg/mL)で、Immulon(登録商標)4プレートを一晩コーティングした。プレートをPetChek(登録商標)洗浄バッファーで4回洗浄した。プレートを2% TWEEN(登録商標)20(ポリソルベート)/2.5%スクロース含有0.1M Tris(pH7.6)で2時間ブロッキングし、乾燥剤を用いてプレートを一晩乾燥させた。25μLの試験サンプルを50μLのペプチド:HRPコンジュゲート(p44-4-Aph(SEQ ID NO:15):HRPコンジュゲートでは0.5μg/mL、Aph rp44コンジュゲートでは3μg/mL)と混合し、プレートに添加した。プレートを1時間インキュベートした。プレートをPetChek(登録商標)洗浄バッファーで6回洗浄した。TMBをプレートに添加し、10分間インキュベートした。50μLの停止溶液を添加し、A650を測定した。結果を図5に示す。Aph p44-4(SEQ ID NO:15)は、感染後約10〜14日でAph感染を検出できた。Aph rp44(SEQ ID NO:10)は、感染後約10日でAph感染を検出できた。
【0115】
実施例5 急性Aph感染の検出
炭酸バッファー(pH9.6)に混合したポリペプチド(0.5μg/mLまたは1.0μg/mL)で、Immulon(登録商標)4プレートを一晩コーティングした。プレートをPetChek(登録商標)洗浄バッファーで4回洗浄した後、2% TWEEN(登録商標)20(ポリソルベート)/2.5%スクロース含有0.1M Tris(pH7.6)で2時間ブロッキングした。乾燥剤を用いてプレートを一晩乾燥させた。サンプル希釈剤で1:200に希釈した血清試験サンプル100μlを45分間インキュベートした。プレートをPetChek(登録商標)洗浄バッファーで6回洗浄した。サンプル希釈剤で1:2000に希釈したHRPコンジュゲート・ウサギ抗イヌIgG(H+L)(Jackson ImmunoResearch Laboratories社、ペンシルバニア州ウェストグローブ;カタログ番号:304-035-003)100μLを添加し、45分間インキュベートした。プレートをPetChek(登録商標)洗浄バッファーで6回洗浄した。60μlのTMBをプレートに添加し、10分間インキュベートした。50μlの停止溶液を添加し、A650を測定した。試験サンプルは以下の通りである:
陽性(「+」)は後期Aph感染イヌ由来の血清7検体のプールを示す。
陰性(「-」)は無作為抽出した健常イヌ血清7検体のプールを示す。
VML8、VML14、VML21、およびVML156は、IFAでAph陽性であり、アナプラズマ症の急性臨床兆候を示すイヌ4検体由来の血清サンプルを示す。結果を図6に示す。Aph p44-4は4検体の血清と反応した。Aph p44-1およびAph p44-2は4検体の血清と反応せず、Aph p44-3は4検体の血清とわずかに反応した。従って、Aph p44-4およびAph 44-3は、アナプラズマ症の急性臨床兆候を示す被験体におけるAphの検出に使用できる。
【0116】
実施例6 ペプチドp44-4-vの能力(performance)
Aph p44-4-v(SEQ ID NO:20)を表2に示すサンプルを用いて試験した。
【0117】
【表2】

【0118】
炭酸バッファー(pH9.6)に混合したポリペプチド(0.5μg/mL)で、Immulon(登録商標)4プレートを一晩コーティングした。プレートをPetChek(登録商標)洗浄バッファーで2回洗浄した後、2% TWEEN(登録商標)20(ポリソルベート)/2.5%スクロース含有0.1M Tris(pH7.6)で2時間ブロッキングした。乾燥剤を用いてプレートを一晩乾燥させた。コンジュゲート希釈剤で1:200に希釈した試験サンプルをプレートに添加し、40分間インキュベートした。プレートをPetChek(登録商標)洗浄バッファーで6回洗浄した。コンジュゲート希釈剤で1:2000に希釈したHRPコンジュゲート・ウサギ抗イヌIgG(H+L)(Jackson ImmunoResearch Laboratories社、ペンシルバニア州ウェストグローブ;カタログ番号:304-035-003)をプレートに添加し、40分間インキュベートした。プレートをPetChek(登録商標)洗浄バッファーで6回洗浄した。60μlのTMBをプレートに添加し、10分間インキュベートした。50μlの停止溶液を添加し、A650を測定した。結果を図7に示すが、これは重複(duplicate)実験の平均値を示す。p44-4-vでは、以下のサンプルで陽性結果を示し:VML21;ILS73、APH、および+ve;以下のサンプルで陰性結果を示した:APLおよび-ve。従って、Aph 44-4-vは急性症例において、少なくとも感染後14日という短期間でAph感染を検出することができる。Aph p44-4-vはApl感染イヌ由来血清と交差反応性を示さない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:8もしくはSEQ ID NO:10のアミノ酸配列から成る;または、SEQ ID NO:10のアミノ酸1-45;SEQ ID NO:10のアミノ酸41-89;SEQ ID NO:10のアミノ酸85-130;SEQ ID NO:10のアミノ酸126-160;SEQ ID NO:10のアミノ酸129-146;SEQ ID NO:10のアミノ酸144-160;もしくはSEQ ID NO:10のアミノ酸136-155から成る;または、SEQ ID NO:1-21のアミノ酸配列の少なくとも17個の連続するアミノ酸から成る;または、SEQ ID NO:1-21と少なくとも約94%の同一性を有するポリペプチドから成る精製ポリペプチドを1つまたはそれ以上含有する組成物。
【請求項2】
請求項1記載の1つまたはそれ以上の精製ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項3】
1つまたはそれ以上の精製ポリペプチドが指示薬、シグナル配列、輸送停止配列、アミノ酸スペーサー、膜貫通ドメイン、タンパク質精製リガンド、異種ポリペプチド、免疫応答を亢進する部分、精製を促進する部分、ポリペプチドの安定性を向上する部分、SEQ ID NO:1-21を含有する1つもしくはそれ以上の更なるポリペプチド、またはそれらの組み合わせに結合している、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
試験サンプル中のアナプラズマ・ファゴサイトフィルム・ポリペプチドもしくはアナプラズマ・プラチス・ポリペプチド、またはその両方に特異的に結合する抗体を検出する方法であり、以下:
(a)請求項1記載の1つまたはそれ以上の精製ポリペプチドを含有する組成物を、ポリペプチド/抗体複合体の形成が可能な条件下で試験サンプルと接触させること;
(b)ポリペプチド/抗体複合体を検出すること;
を含み、ポリペプチド/抗体複合体の検出が、試験サンプルにおけるアナプラズマ・ファゴサイトフィルム・ポリペプチドもしくはアナプラズマ・プラチス・ポリペプチド、またはその両方に特異的な抗体の存在を示す、上記方法。
【請求項5】
1つまたはそれ以上の精製ポリペプチドが指示薬、シグナル配列、輸送停止配列、膜貫通ドメイン、アミノ酸スペーサー、タンパク質精製リガンド、異種ポリペプチド、免疫応答を亢進する部分、精製を促進する部分、ポリペプチドの安定性を向上する部分、SEQ ID NO:1-21を含有する1つもしくはそれ以上の更なるポリペプチド、またはそれらの組み合わせに結合している、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
1つまたはそれ以上の精製ポリペプチドを含有する組成物がSEQ ID NO:8または19のアミノ酸配列の少なくとも17個の連続するアミノ酸から成り、ポリペプチド/抗体複合体の検出が、試験サンプルにおけるアナプラズマ・プラチスに特異的な抗体の存在を示す、請求項4記載の方法。
【請求項7】
1つまたはそれ以上の精製ポリペプチドを含有する組成物がSEQ ID NO:10のアミノ酸配列;SEQ ID NO:10のアミノ酸41-89;もしくはSEQ ID NO:10のアミノ酸85-130の少なくとも17個の連続するアミノ酸から成る;または、SEQ ID NO:10;SEQ ID NO:10のアミノ酸41-89;もしくはSEQ ID NO:10のアミノ酸85-130と少なくとも約94%の同一性を有するポリペプチドから成り、ポリペプチド/抗体複合体の検出が試験サンプルにおけるアナプラズマ・ファゴサイトフィルム・ポリペプチドもしくはアナプラズマ・プラチス・ポリペプチド、またはその両方に特異的な抗体の存在を示す、請求項4記載の方法。
【請求項8】
1つまたはそれ以上の精製ポリペプチドを含有する組成物がSEQ ID NO:10のアミノ酸1-45、SEQ ID NO:10のアミノ酸126-160、SEQ ID NO:10のアミノ酸129-146;SEQ ID NO:10のアミノ酸144-160、SEQ ID NO:10のアミノ酸136-155の少なくとも17個の連続するアミノ酸から成る;または、SEQ ID NO:10のアミノ酸1-45、SEQ ID NO:10のアミノ酸126-160、SEQ ID NO:10のアミノ酸129-146;SEQ ID NO:10のアミノ酸144-160、SEQ ID NO:10のアミノ酸136-155と少なくとも約94%の同一性を有するポリペプチドから成り、ポリペプチド/抗体複合体の検出が試験サンプルにおけるアナプラズマ・ファゴサイトフィルム・ポリペプチドに特異的な抗体の存在を示す、請求項4記載の方法。
【請求項9】
工程(b)の実施前に工程(a)の複合体を指示薬と接触させることを更に含む、請求項4記載の方法。
【請求項10】
試験サンプル中の抗体の量を測定する、請求項4記載の方法。
【請求項11】
1つまたはそれ以上の精製ポリペプチドが基材に結合する、請求項4記載の方法。
【請求項12】
SEQ ID NO:1-21から成るポリペプチドに特異的に結合する抗体。
【請求項13】
抗体がモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、Fabフラグメント、Fab'フラグメント、Fab'-SHフラグメント、F(ab')2フラグメント、Fvフラグメント、または1本鎖抗体である、請求項12記載の抗体。
【請求項14】
サンプル中のアナプラズマ・ファゴサイトフィルム・ポリペプチドもしくはアナプラズマ・プラチス・ポリペプチド、またはその両方を検出する方法であり、以下:
(a)請求項1記載の1つまたはそれ以上の精製ポリペプチドに特異的に結合する1つまたはそれ以上の抗体を、ポリペプチド/抗体複合体の形成が可能な条件下でサンプルと接触させること;
(b)ポリペプチド/抗体複合体を検出すること;
を含み、ポリペプチド/抗体複合体の検出がサンプルにおけるアナプラズマ・ファゴサイトフィルム・ポリペプチドもしくはアナプラズマ・プラチス・ポリペプチド、またはその両方の存在を示す、上記方法。
【請求項15】
1つまたはそれ以上の精製ポリペプチドがSEQ ID NO:10のアミノ酸1-45、SEQ ID NO:10のアミノ酸126-160、SEQ ID NO:10のアミノ酸129-146、SEQ ID NO:10のアミノ酸144-160、SEQ ID NO: 10のアミノ酸136-155の少なくとも17個の連続するアミノ酸から成り、ポリペプチド/抗体複合体の検出が試験サンプルにおけるアナプラズマ・ファゴサイトフィルム・ポリペプチドの存在を示す、請求項14記載の方法。
【請求項16】
1つまたはそれ以上の精製ポリペプチドがSEQ ID NO:8または19のアミノ酸配列の少なくとも17個の連続するアミノ酸から成り、ポリペプチド/抗体複合体の検出が試験サンプルにおけるアナプラズマ・プラチス・ポリペプチドの存在を示す、請求項14記載の方法。
【請求項17】
1つまたはそれ以上の精製ポリペプチドがSEQ ID NO:10のアミノ酸配列;SEQ ID NO:10のアミノ酸41-89;またはSEQ ID NO:10のアミノ酸85-130の少なくとも17個の連続するアミノ酸から成り、ポリペプチド/抗体複合体の検出が試験サンプルにおけるアナプラズマ・ファゴサイトフィルム・ポリペプチドまたはアナプラズマ・プラチス・ポリペプチドの存在を示す、請求項14記載の方法。
【請求項18】
1つまたはそれ以上の抗体がモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、Fabフラグメント、Fab'フラグメント、Fab'-SHフラグメント、F(ab')2フラグメント、Fvフラグメント、または1本鎖抗体である、請求項14記載の方法。
【請求項19】
医薬的に許容される、または獣医学的に許容されるキャリアを更に含む、請求項1記載の組成物。
【請求項20】
アジュバントを更に含む、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
哺乳動物被験体におけるアナプラズマ・プラチス感染、アナプラズマ・ファゴサイトフィルム感染、またはその両方を治療または寛解する方法であり、哺乳動物被験体に治療的有効量の請求項19記載の組成物を投与することを含む、上記方法。
【請求項22】
哺乳動物において免疫応答を惹起する方法であり、免疫学的有効量の請求項19記載の組成物を該哺乳動物に投与することを含む上記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公表番号】特表2012−504964(P2012−504964A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531167(P2011−531167)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/059956
【国際公開番号】WO2010/042691
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(300004500)アイデックス ラボラトリーズ インコーポレイテッド (30)
【Fターム(参考)】