説明

アパーチャーグリルおよびそれを有する陰極線管

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アパーチャーグリルおよびそれを有する陰極線管に係り、特にトリニトロンカラー受像管(CRT)に使用されるストライプ状のスリット穴を有するアパーチャーグリル(Aperture grill)およびそれを有する陰極線管に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図2はトリニトロンカラー受像管(陰極線管)の構造を示す模式斜視図である。
【0003】図2に示すように、カソード(陰極)1から平行に放射された3本の電子ビーム2はプレホーカス(電子レンズ)3及び主ホーカス(主電子レンズ)4により中心軸上に一度集束した後、分散しコンバーゼンス偏向器5に入り、格子(スリット)状の穴を有するシャドーマスクとしてのアパーチャーグリル6に集束し、更に通過したビームはパネル裏面の対応する発光色の蛍光体7に当り発光する。
【0004】このアパーチャーグリル(AG)6は、トリニトロン受像管の色選別用電極(グリッド)の機能を有し、通常エッチングで縦じま(スリット)状の開口(穴)を光露光法によるエッチング方法によりほぼ等間隔に形成した薄軟鋼板のフラットアパーチャーグリル(FAG)を鋼枠(フレーム)に適当な張力をもたせた状態で取り付けた構成となっている。
【0005】このようなトリニトロンカラー陰極線管では従来の図4に示すFAG10は、例えば図3に示すよう枠体(フレーム)8に装着して用いられる。FAG10は、常に緊張するように保持させるため図3に示したフレーム8の4ヶ所以上の部位に力Fで加圧し、フレーム8をその材料の弾性限界内で変位させておき、抵抗加熱溶接又はレーザービーム溶接により接合装着される。
【0006】その後、フレーム8に加えておいて力Fの加圧を取り去ることによりスリット11を有するFAG10は常に緊張が保たれるようになっている。
【0007】このようにアパーチャーグリル(AG)6の組立(取り付け)は、フレームを加圧し撓ませた状態で上記FAG10をシーム溶接し、その後、加圧を解放させることにより発生するTurn Buckle(フレームの弾性力)の力によってFAGテープに張力を持たせ保持させることによりなされる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】このAG組立プロセスでは上記Turn Buckleの力の分布がFAG10の最端(両端)スリット11aの幅のバラツキをもたらす。
【0009】AG特性上、この最端スリット幅は、シリンドカル(円筒)状のパネルの曲率に対応したAG曲率、AG張力優先であり、AG最終外観検査で手直しを行い全数保証を行っている。しかし、その検査の際に検査員のスキル不足及び見逃しで蛍光面工程で有効画面エッジ不良(ベタ不良)が多発する。
【0010】また、一部のスーパーファイン管種では、既にダミースリットと称して最端スリット幅確保を行っているタイプもあるが、無効画面発光となるためSUSリボン貼り(SUSリボン溶接機)及びSUSリボン外しの工程が余分に追加されている。これは、単に有効画面と同じスリット幅のため、蛍光面で露光されてしまうからである。このため蛍光面工程前でSUSリボン溶接を行い、遮蔽してその後蛍光面アウトのポジションでSUSリボンを外している。
【0011】しかし、この工程フローは人員及び設備投資が必要であることと、品質面でもリボン不良の発生があり、不安定であった。またAGテープ(FAG)10の振動を防止するために20μm程度の太さのタングステン(W)ワイヤをダンパーワイヤ13として用いているが、AGテープの最端(両端)テープ幅が広いため、図5(a)のようにならず、ワイヤで押し付けられた反対側が浮き上がり、図5(b)隣接テープにはこのダンパーワイヤ13が接触されず(図5(b)のA部)、その部分だけAGテープの揺れ止め効果が無くダンパの効果が半減している。なお14はダンパースプリングである。
【0012】そこで本発明は、有効画面の最端スリット幅を均一に確保し、またAGテープの揺れを防止し得るアパーチャーグリルおよびそれを有する陰極線管を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】上述課題は本発明によれば、複数列のストライプ状スリットを設けた金属薄板の周囲に枠体を接合してなるアパーチャーグリルにおいて、前記複数列のストライプ状スリットのうちの最端スリットの外側金属薄板部に前記スリットのピッチと略同一のピッチを有し、且つ、前記ストライプ状スリットの幅よりも小さなスリット幅を有すると共に、遮光し得るエキストラスリットを複数設けたことを特徴とするアパーチャーグリルおよびそれを有する陰極線管によって解決される。上記課題は本発明によれば、複数列のストライプ状スリットを設けた金属薄板の周囲に枠体を接合してなるアパーチャーグリルにおいて、前記複数列のストライプ状スリットのうちの最端スリットの外側金属薄板部に、前記ストライプ状スリットの幅よりも小さなスリット幅を有し、且つ遮光し得るエキストラスリットを設けたことを特徴とするアパーチャーグリルによって解決される。
【0014】
【作用】本発明によれば、図1に示したように複数列のストライプ状スリット11のうちの最端スリット11aの外側に、それらスリットのピッチPと略同一のピッチを有し、且つ、そのストライプ状スリット幅よりも小さなスリット幅を有すると共に、遮光し得るエキストラスリット12eを複数設けているため、アパーチャーグリッド組立時そのエキストラスリットがダミースリットの役割を果たし、有効画面の最端スリット幅を他のスリット幅と均一に確保することができ、しかもダンパーワイヤの力を順次吸収し、AGテープの揺れをも防止できる。
【0015】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0016】図1は、本発明の実施例を示す図であり、特に図1(a)は最端スリットの外側にスリットのピッチを略同一のピッチを有するエキストラスリットを有するFAGの平面図を示し、図1(b)は図1(a)のFAGにダンパーワイヤを架張した状況を示す部分模式図を示す。図1(a)に示すように、フラットアパーチャーグリル(FAG)10のスリット11のうちの最端スリット11aの隣りに複数のエキストラスリット(Extra Slit)12eをエッチングにより形成する。このエキストラスリット12eの幅は有効画面部スリット幅の40〜70%と細くなっている。
【0017】すなわち図1(a)に特に示すように、スリット間のピッチP1を約0.6mmとし、最端スリット11aの外側に設けられたエキストラスリット12e間のピッチP2も約0.6mmとした。
【0018】このような構成のFAG10に、図1(b)に示すように、ダンパーワイヤ13を架張とすると、ダンパーワイヤ13による下方への力Fは略同一ピッチで分割されたAGテープ(FAG)に外側から順次吸収されるため有効画面のスリットは勿論最端スリット幅も安定した。なお14はダンパースプリングである。
【0019】本発明で用いられるエキストラスリットは上記実施例のみならず特許請求の範囲内で種々変形し得るものである。
【0020】
【発明の効果】以上説明した様に、本発明によれば従来スリット幅が不安定であった最端スリットをエキストラスリットとしてあらかじめ最端スリットの更に外側に複数形成してあるので有効画面の最端スリット幅が安定して確保することができる。更に本発明によればアパーチャーグリルの外観検査での手直し修正が不要となり、歩留の向上、生産性の向上を図ることができる。また、AGテープ揺れの防止も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例(ピッチ略同一仕様)を示す図である。
【図2】トリニトロンカラー受像管の模式斜視図である。
【図3】アパーチャーグリル(AG)の枠体と加圧部位を示す図である。
【図4】従来のフラットアパーチャーグリル(FAG)を説明するための図である。
【図5】従来のダンパーワイヤのFAGへの架張を説明するための概略図である。
【符号の説明】
1 カソード(陰極)
2 電子ビーム
3 プレホーカス
4 主ホーカス
5 コンバーゼンス偏向器
6 アパーチャーグリル
7 蛍光体
8 枠体(フレーム)
10 フラットアパーチャーグリル(FAG)
11 スリット
11a 最端スリット
12e エキストラスリット
13 ダンパーワイヤ
14 ダンパースプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数列のストライプ状スリットを設けた金属薄板の周囲に枠体を接合してなるアパーチャーグリルにおいて、前記複数列のストライプ状スリットのうちの最端スリットの外側金属薄板部に前記スリットのピッチと略同一のピッチを有し、且つ、前記ストライプ状スリットの幅よりも小さなスリット幅を有すると共に、遮光し得るエキストラスリットを複数設けたことを特徴とするアパーチャーグリル。
【請求項2】 複数列のストライプ状スリットを設けた金属薄板の周囲に枠体を接合してなるアパーチャーグリルを有する陰極線管において、前記アパーチャーグリルは、前記複数列のストライプ状スリットのうちの最端スリットの外側金属薄板部に前記スリットのピッチと略同一のピッチを有し、且つ、前記ストライプ状スリットの幅よりも小さなスリット幅を有すると共に、遮光し得るエキストラスリットを複数設けたことを特徴とする陰極線管。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【特許番号】特許第3194290号(P3194290)
【登録日】平成13年6月1日(2001.6.1)
【発行日】平成13年7月30日(2001.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−111791
【出願日】平成4年4月30日(1992.4.30)
【公開番号】特開平5−314920
【公開日】平成5年11月26日(1993.11.26)
【審査請求日】平成11年4月26日(1999.4.26)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【参考文献】
【文献】特開 平5−159716(JP,A)
【文献】特公 昭49−15949(JP,B1)