説明

アパーチャーグリル

【目的】ブラウン管等の有効画面の最端スリット(11a)幅を均一に確保し得るアパーチャーグリルを提供する。
【構成】複数列のストライプ状スリット11を設けた金属薄板10の周囲に枠体を接合してなるアパーチャーグリルにおいて、上記複数列のストライプ状スリットのうちの最端スリット11aの外側金属薄板部に上記ストライプ状スリットの幅よりも小さなスリット幅を有し、且つ遮光し得るエキストラスリット(12a〜12d)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はアパーチャーグリルに係り、特にトリニトロン受像管(CRT)に使用されるストライプ状のスリット穴を有するアパーチャーグリル(aperture grill)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図5はトリニトロン受像管の構造を示す模式斜視図である。
【0003】図5に示すように、カソード(陰極)1から平行に放射された3本の電子ビーム2はプレホーカス(電子レンズ)3及び主ホーカス(主電子レンズ)4により中心軸上に一度集束した後、分散しコンバーゼンス偏光器5に入り、格子(スリット)状の穴を有するシャドーマスクとしてのアパーチャーグリル6に集束し、更に通過したビームはパネル裏面の対応する発光色の蛍光体7に当たり発光する。
【0004】このアパーチャーグリル(AG)6は、トリニトロン受像管の色選別用電極の機能を有し、通常エッチングで縦じま(スリット)状の開口(穴)をほぼ等間隔に形成した薄軟鋼板のフラットアパーチャーグリル(FAG)を鋼枠(フレーム)に適当な張力をもたせた状態で取り付けた構成となっている。
【0005】アパーチャーグリル(AG)6の組立(取り付け)は、フレームを加圧し撓ませた状態で上記FAGをシーム溶接し、その後、加圧を解放させることにより発生するTurn Buckle(フレームの弾性力)の力によってFAGテープに張力を持たせ保持させることによりなされる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このAG組立プロセスでは上記Turn Buckleの力の分布がFAGの最端(両端)スリットの幅のバラツキをもたらす。
【0007】AG特性上、この最端スリット幅は、シリンドリカル(円筒)状のパネルの曲率に対応したAG曲率、AG張力優先であり、AG最終外観検査で手直しを行い全数保証を行っている。しかし、その検査の際に検査員のスキル不足及び見逃しで蛍光面工程で有効画面エッジ不良(ベタ不良)が多発する。
【0008】また、一部のスーパーファイン管種では、既にダミースリットと称して最端スリット幅確保を行っているタイプもあるが、無効画面発光となるためSUSリボン貼り(SUSリボン溶接機)及びSUSリボン外しの工程が余分に追加されている。これは、単に有効画面と同じスリット幅のため、蛍光面で露光されてしまうからである。このため蛍光面工程前でSUSリボン溶接を行い、遮蔽してその後蛍光面アウトのポジションでSUSリボンを外している。
【0009】しかし、この工程フローは人員及び設備投資が必要であることと、品質面でもリボン不良の発生があり、不安定であった。
【0010】そこで本発明は、有効画面の最端スリット幅を均一に確保し得るアパーチャーグリルを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記課題は本発明によれば、複数列のストライプ状スリットを設けた金属薄板の周囲に枠体を接合してなるアパーチャーグリルにおいて、前記複数列のストライプ状スリットのうちの最端スリットの外側金属薄板部に、前記ストライプ状スリットの幅よりも小さなスリット幅を有し、且つ遮光し得るエキストラスリットを設けたことを特徴とするアパーチャーグリルによって解決される。
【0012】
【作用】本発明によれば、複数列のストライプ状スリット11のうちの最端スリット11aの外側に、そのストライプ状スリット幅よりも小さなスリット幅を有し、且つ遮光し得るエキストラスリット(12a〜12d)を設けているため、アパーチャーグリッド組立時そのエキストラスリットがダミースリットの役割を果たし、有効画面の最端スリット幅を均一に確保することができる。
【0013】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0014】図1は本発明の第1実施例(グレード仕様)を示す図で、特に(a)はフラットアパーチャーグリル(FAG)要部平面図、(b)は(a)の一部拡大断面図である。図では周囲の枠体(フレーム)を省略した図を示す。以下同様である。
【0015】図1(a)に示すように、フラットアパーチャーグリル(FAG)10のスリット11のうちの最端スリット11aの隣り(金属薄板部)に端部約10mmの箇所を徐々に細くしたグレード仕様のエキストラスリット(Extra Slit)12aをエッチングにより形成する。このエキストラスリット12aの幅は有効画面部スリット幅の40〜70%と細くなっており、エキストラスリット位置として図のXの距離を有効部スリット間のピッチをaとして、aあるいは2aとした。また図中Yの距離を0あるいは2aとした。なお、図1(b)に示すように、エキストラスリット12aはサポートテープ幅内に形成した。
【0016】このようにして形成したアパーチャーグリルの細幅エキストラスリットは最端スリット幅のバラツキを吸収し、しかも露光を遮蔽することができた。
【0017】図2は本発明の第2実施例(ストレート仕様)を示す図で、特に(a)及び(b)は図1の(a)及び(b)と同様の図である。
【0018】図2(a)及び図2(b)に示した図において要部平面図である図2(a)のエキストラスリット12bがストレート、すなわちグレード無しで幅が一定である以外はエキストラスリット幅位置等第1実施例の図1と同一とした。
【0019】この第2実施例のアパーチャーグリルは第1実施例のFAGを用いた時の効果と同様の効果を得た。
【0020】図3は本発明の第3実施例(シフト仕様)を示す図であり、特に図3(a)は要部平面図、図3(b)は一部拡大断面図である。
【0021】本第3実施例は図3(b)に特に示すように、FAG10の表パターンと裏パターンの中心をX方向にずらし(パターンシフト量P)FAG10に照射する光の入射に対し、遮光効果を持たせる。図3(a)に示したエキストラスリット12cの幅及びエキストラスリット12cの位置は第1実施例と同じグレード仕様とした。本実施例のアパーチャーグリルも第1実施例のアパーチャーグリルと同様の効果が得られた。
【0022】図4は本発明の第4実施例(バックエッチング量大仕様)を示す図であり、特に図4(a)は上記例と同様の要部平面図、図4(b)は一部拡大断面図である。
【0023】第4実施例はFAG10の裏パターンのエッチング量、すなわちバックエッチング量を多くしてテープエッジ高さを高くし、実際の入射角に対し遮蔽効果を向上させた。図4(a)に示したエキストラスリット12dの幅及び位置は第1実施例と同じグレード仕様とした。本実施例の効果も上記実施例と同等であった。
【0024】本発明で用いられるエキストラスリットは上記実施例のみならず特許請求の範囲内で種々変形し得るものである。
【0025】
【発明の効果】以上説明した様に、本発明によれば従来スリット幅が不安定であった最端スリットをエキストラスリットとしてあらかじめ最端スリットの更に外側に形成してあるので有効画面の最端スリット幅が安定して確保することができる。更に本発明によればアパーチャーグリルの外観検査での手直し修正が不要となり、歩留の向上、生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例(グレード仕様)を示す図である。
【図2】本発明の第2実施例(ストレート仕様)を示す図である。
【図3】本発明の第3実施例(シフト仕様)を示す図である。
【図4】本発明の第4実施例(バックエッチング量大仕様)を示す図である。
【図5】トリニトロン受像管の模式斜視図である。
【符号の説明】
1 カソード(陰極)
2 電子ビーム
3 プレホーカス
4 主ホーカス
5 コンバーゼンス偏向器
6 アパーチャーグリル
7 蛍光体
10 フラットアパーチャーグリル(FAG)
11 スリット
11a 最端スリット
12a,12b,12c,12d エキストラスリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】複数列のストライプ状スリットを設けた金属薄板の周囲に枠体を接合してなるアパーチャーグリルにおいて、前記複数列のストライプ状スリットのうちの最端スリットの外側金属薄板部に、前記ストライプ状スリットの幅よりも小さなスリット幅を有し、且つ遮光し得るエキストラスリットを設けたことを特徴とするアパーチャーグリル。

【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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