説明

アプリケータ用ベルト

【課題】 アプリケータ用ベルトにおいて、ベルト表面にブリードを発生することなく、しかもガラスフィラメントの安定した走行を維持しつつ、ガラスフィラメントの太さに応じた適度の表面粗さとする。
【解決手段】 ベルトの硬度をデュロメーターAで60°〜85°の範囲とした上、ガラスフィラメントの太さを、3μm以上、5μm未満と5μm以上、9μm以下と9μmを超える三つに区分し、前記第一の区分に属するガラスフィラメント用としてベルトの表面粗さRaを0.4μm以下とし、前記第ニの区分に属するガラスフィラメント用としてベルトの表面粗さRaを0.4μm<Ra<1.5μmとし、前記第三の区分に属するガラスフィラメント用としてベルトの表面粗さRaを1.5μm以上とする。また、前記表面粗さは、研磨、シボ加工、ブラスト加工またはローレット加工等によって設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のガラスフィラメント同士を接着・集束させて一本のガラス繊維のストランドを形成するために、前記各ガラスフィラメントにバインダーを塗布するベルト式アプリケータに用いられるベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化プラスチック(FRP)やプリント基板には、物理的強度を向上させるために、ガラス繊維が混入されている。ガラス繊維を製造する場合、通常、図7に示すように、原料ガラスが溶融されている溶鉱炉(51)から多数のガラスフィラメント(52)が引き出され、これらガラスフィラメント(52)に、後述するアプリケータの回転するベルト(53)によってバインダーが塗布され、該バインダーを介して前記多数のガラスフィラメント(52)同士が接着・集束され、最終的にガラス繊維のストランド(61)が形成される。
【0003】
そして、前述したバインダーを各ガラスフィラメント(52)に塗布するためのアプリケータとして、図8に示すようなベルト式アプリケータ(54)が知られている。すなわち、該アプリケータ(54)は、バインダー(50)が貯留されたバインダー貯留部(55a)および該貯留部(55a)からオーバーフローしたバインダー(50)が流下する流下部(55b)を有するバインダー槽(55)と、バインダー貯留部(55a)の底部に設けられた流入口(56)と、バインダー槽(55)の流下部(55b)の底部に設けられた流出口(57)と、下部がバインダー貯留部(55a)の液面より下方に位置する駆動ローラ(58)と、駆動ローラ(58)に従動する従動ローラ(59)と、両ローラ(58)(59)に装着されたゴム状弾性を有するベルト(53)とを備えている。前記アプリケータ(54)によれば、ベルト(53)の外周面がバインダー(50)によって濡れ、従動ローラ(59)上におけるベルト(53)の外周面に前記多数のガラスフィラメント(52)が当接することにより、各ガラスフィラメント(52)にバインダー(50)が塗布される。
【0004】
従来、ガラス繊維のストランド形成に関しては、例えばアプリケータ周囲の気流の方向を制御したり、ガラスフィラメントに塗布するバインダーの量を経時的に変更することにより、ガラスフィラメントにバインダーを均一に塗布するようにした技術が知られている。
【特許文献1】特公平4−77693号公報
【特許文献2】特公平7−57701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ガラス繊維のストランド形成において、前述した従来技術では解決できない後述する問題があった。
【0006】
すなわち、一般に、アプリケータ用ベルトは、その硬度が低過ぎると当該ベルトの外周面を研磨して粗面化した場合、外周面が粗く削られ過ぎてガラスフィラメントが外周面に引っ掛かり易くなり、そのためガラスフィラメントを損傷させるおそれがあった。そして、例えば、このような損傷したガラスフィラメントにより構成されたガラス繊維を含むプリント基板がパーソナルコンピューターに組み込まれた場合、該コンピューターの誤動作の原因となる。また、前記問題の他、当該ベルトの外周面上でガラスフィラメントが左右方向に動き易くなることから、該フィランメント同士の接着・集束が円滑に行われず、安定した品質のガラス繊維が得難いという問題も生じた。更に、アプリケータ用ベルトの硬度を下げるために、その原材料中にオイルを添加することから、ベルト表面に所謂、ブリードが発生し、これがベルト外周面でバインダーをはじく結果、ベルト外周面におけるバインダーの濡れ性が悪くなるという問題も生じた。
【0007】
一方、ベルトの硬度が高過ぎると、ベルトの原材料中に混入されているカーボン量も多いため、カーボンが材料中に均一に分散し難く、その結果、ベルト外周面にカーボン凝集物の小突起やピンホール等が発生し、これがガラスフィラメントを損傷させる原因となった。
【0008】
従って、前述したような問題が生じないように、先ずアプリケータ用ベルトの硬度を適切な範囲に設定することが重要となる。
【0009】
そして、アプリケータ用ベルトの硬度が適切な範囲に設定されている場合であっても、ガラス繊維を構成するフィラメントの太さは種々あるため、フィラメントの太さに対するベルト外周面の表面粗さRaが重要となる。すなわち、細いフィラメントに対して比較的表面粗さの大きい外周面をもつベルトを用いた場合、フィラメントが傷つき易い上、表面粗さが大きい関係で外周面における多数の窪みに保持されるバインダーの量も多くなるため、フィラメントに過剰のバインダーが塗布され、バインダーコストの無駄を招くことにもなる。
【0010】
一方、太いフィラメントに対して比較的表面粗さの小さい外周面をもつベルトを用いた場合、フィラメントが傷つくことはないものの、外周面の表面粗さが小さい関係で該外周面における多数の窪みに保持されるバインダーの量も少ないため、太いフィラメントにバインダーが十分に塗布されないこととなる。そのため、複数のフィラメントの接着・集束が不十分となって、強固なガラス繊維が得られないという問題が生ずる。
【0011】
以上述べてきたように、複数のガラスフィラメントをバインダーによって、接着・集束させてガラス繊維を構成する場合、種々の原因で多くの問題が生ずるものであり、このような問題をすべて解消するためには、アプリケータ用ベルトの性状や用途を細かく設定することが重要となる。
【0012】
本発明の目的は、適切な硬度範囲の下、ガラスフィラメントの太さに応じた適切な表面粗さを有するアプリケータ用ベルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願の発明者は、鋭意研究の結果、アプリケータ用ベルトとして、後述する適切な硬度範囲において、ガラスフィラメントの太さに応じた適切な表面粗さを見出したものである。
【0014】
すなわち、請求項1記載のアプリケータ用ベルトは、太さが3μm以上、5μm未満の複数のガラスフィラメント同士を接着・集束させてガラス繊維のストランドを形成するためのゴム状弾性を有するものであって、硬度がデュロメーターAで60°〜85°であり、外周面は粗面となされ、その表面粗さRaが0.4μm以下であることを特徴とする。
【0015】
なお、前記アプリケータ用ベルトの外周面における表面粗さRaの下限は、約0.1μmである。
【0016】
ベルトの原材料は、ゴム状弾性を有するものであれば良く、またバインダーの成分である、スターチや、或いは酢酸ビニル系、アクリル系、ウレタン系およびエポキシ系等の合成樹脂に対して劣化され難いものが好ましい。具体的なベルトの原材料としては、例えば、NBR、SBR、CR、天然ゴム等を主材とするものが挙げられる。
【0017】
請求項2記載のアプリケータ用ベルトは、太さが5μm以上、9μm以下の複数のガラスフィラメント同士を接着・集束させてガラス繊維のストランドを形成するためのゴム状弾性を有するものであって、硬度がデュロメーターAで60°〜85°であり、外周面は粗面となされ、その表面粗さRaが0.4μm<Ra<1.5μmであることを特徴とする。
【0018】
請求項3記載の本発明のアプリケータ用ベルトは、太さが9μmを超える複数のガラスフィラメント同士を接着・集束させてガラス繊維のストランドを形成するためのゴム状弾性を有するものであって、硬度がデュロメーターAで60°〜85°であり、外周面は粗面となされ、その表面粗さRaが1.5μm以上であることを特徴とする。
【0019】
なお、前記アプリケータ用ベルトの外周面における表面粗さの上限は、約5.0μmである。また、接着・集束されるガラスフィラメントの太さは、最大で15μm程度である。
【0020】
請求項4記載の本発明は、前記請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項記載のアプリケータ用ベルトについて、外周における粗面の凹凸が、ベルトの円周方向に対して略直角な縞状模様に形成されていることを特徴とするものである。
【0021】
請求項5記載の本発明は、前記請求項1〜請求項4のうちのいずれか一項記載のアプリケータ用ベルトについて、外周における粗面が、研磨、シボ加工、ブラスト加工またはローレット加工によって形成されていることを特徴とするものである。
【0022】
前記研磨加工は、砥石による研磨等、すでに知られている種々の研磨手段が用いられ得る。
【0023】
また、前記シボ加工、ブラスト加工およびローレット加工は、例えば当該アプリケータ用ベルトを成型する際の成型鉄芯に、シボ、ブラストまたはローレットを形成するための凹凸を付しておき、成形後にアプリケータ用ベルトの表裏を反転することで実現され得る。
【0024】
請求項6記載の本発明は、前記請求項1〜請求項5のうちのいずれか一項記載のアプリケータ用ベルトについて、全体がNBRで構成されているものである。
【0025】
本願において、表面粗さRaは、JIS−B0601−2001に基づく算術平均粗さであって、株式会社ミツトヨ製の品番SV−3000を用い、ベルト円周方向について、測定長=4.0mm、カットオフ値=0.25mm、測定速度=0.5mm/secの条件で測定したものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明のアプリケータ用ベルトは、先ずその硬度が適切なものであるため、ベルト外周面が粗く削られ過ぎたり、ベルト表面にブリードを発生するおそれがなく、また原材料の一つであるカーボンもベルト全体に均一に分散される。従って、従来の硬度不適切に起因するガラスフィラメントの損傷やガラスフィラメントの接着・集束の不安定およびベルト表面におけるブリードの発生といった問題をすべて解消することができる。
【0027】
そして、更に本発明に係るアプリケータ用ベルトは、鋭意研究の結果、ガラスフィラメントの太さを前述した通り、3つに区分し、それぞれの太さに応じた表面粗さRaを有する外周面となされているため、従来のようなガラスフィラメントの損傷、バインダーの過不足、或いはベルト外周面とガラスフィラメントとの摩擦抵抗不足に起因するガラスフィラメントの接着・集束不良といった問題を一挙に解決することができる。
【0028】
また、外周面における粗面を構成する凹凸が、ベルトの円周方向に対して略直角な縞状模様に形成された本発明のアプリケータ用ベルトによれば、前記縞状模様における凹部内にバインダーが流入すると共に、該凹部に沿って余分なバインダーがベルトの両側方向へ容易に流出されるため、ガラスフィラメントにバインダーが均一且つ効率的に塗布され得る。
【0029】
更に、全体をNBR製とした本発明のアプリケータ用ベルトは、前述した種々の効果について、特に有効な結果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
次に、本発明の実施の形態を述べるが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々の変更実施が可能である。
【0031】
図1に示すように、アプリケータ用ベルトの製造工程について述べると、先ず、NBRに対して、カーボンブラック、酸化亜鉛、可塑剤、老化防止剤、ステアリン酸,硫黄、加硫促進剤等を所定割合で配合し、該配合物をニーダーで混練し(1)、混練した材料を押出機により押出(2)して未加硫チューブを成形した。
【0032】
次に、前記未加硫チューブを成形鉄芯に嵌め入れ、蒸気加硫缶において所定の温度および時間で未加硫チューブの加硫(3)を行い、特定のデュロメーターAを有する加硫チューブを得た。その後、前記加硫チューブを成形鉄芯から脱芯して研磨鉄芯に嵌め入れ、チューブの外周面を研磨(4)した。次いで、チューブを切断用鉄芯に装着して所望の幅に切断(5)した後、これを濃塩酸と次亜塩素酸を含む溶液に浸漬して酸処理(6)を行うことによりアプリケータ用ベルトを得た。また、チューブの外周面をシボ加工やローレット加工等することによって粗面化する場合には、前記成形鉄芯に、シボやローレット等の微細な凹凸形状を付しておき、成形後にアプリケータ用ベルトの表裏を反転することにより、その外周面を粗面化した。そして、図2に示すように、外周面(12)を粗面化したアプリケータ用ベルト(11)を得た。
【0033】
このアプリケータ用ベルト(11)の外周面について、後述するように、3つの区分の太さのガラスフィラメントに対応して、それぞれ異なる範囲の表面粗さRaを設定した。
【実施例1】
【0034】
(実施例1〜実施例4)
【0035】
先ず、太さが3μm以上、5μm未満(以下、「第一区分の太さ」という)の複数のガラスフィラメント同士を接着・集束させるためのアプリケータ用ベルト(実施例1および実施例2)と太さが5μm以上、9μm以下(以下、「第ニ区分の太さ」という)の複数のガラスフィラメント同士を接着・集束させるためのアプリケータ用ベルト(実施例3および実施例4)として、下記のものを製造した。
【0036】
すなわち、実施例1〜実施例4に係るアプリケータ用ベルトの原材料の配合について述べると、NBR100部に対して、カーボンブラック35部、酸化亜鉛5部、可塑剤15部、老化防止剤1部、ステアリン酸1部、硫黄3.5部、加硫促進剤1.5部を加えた。そして、かかる配合物をニーダーにて混練し、混練物を押出機に充填して未加硫チューブを成形した。
【0037】
次に、前記未加硫チューブを成形鉄芯に嵌め入れ、蒸気加硫缶において160℃で45分間の加硫を行い、デュロメーターAで72°の硬度を有する加硫チューブを得た。
【0038】
その後、実施例1〜実施例3については、チューブの外周面を研磨して粗面化した。具体的には、実施例1は、その外周面の表面粗さRaを0.2μmとし、実施例2では表面粗さRaを0.4μmとし、実施例3のベルトでは表面粗さRaを0.5μmとした。また、実施例4については、成形鉄芯に予めシボの凹凸を付してベルト内周面の粗面化を行った後、ベルトの表裏を反転して、その表面粗さRaを1.4μmとした。その後、前記加硫チューブを所定の幅に切断した後、酸処理を行うことで最終的にアプリケータ用ベルトを得た。
【0039】
図3および図4に示すように、実施例1〜実施例3に係るベルト(21)の外周面(22)には、研磨による微細な凹凸(23)(24)が形成されており、また図5および図6に示すように、実施例4に係るベルト(31)の外周面(32)には、シボ加工による微細な凹凸(33)(34)が形成されている。そして、前記いずれのベルト(21)(31)の外周面(22)(32)においても、凹凸(23)(24)
(33)(34)はベルトの円周方向Aに対して略直角な縞状模様に形成されている。
【0040】
(実施例5)
【0041】
次に、太さが9μmを超える(以下、「第三区分の太さ」という)複数のガラスフィラメント同士を接着・集束させるためのアプリケータ用ベルトとして、下記のものを製造した。
【0042】
先ず、本実施例に係るアプリケータ用ベルトの原材料の配合について述べると、NBR100部に対して、カーボンブラック35部、酸化亜鉛5部、可塑剤40部、老化防止剤1部、ステアリン酸1部、硫黄3.5部、加硫促進剤1.5部を加えた。そして、かかる配合物をニーダーにて混練し、混練物を押出機に充填して未加硫チューブを成形した。
【0043】
次に、前記未加硫チューブを成形鉄芯に嵌め入れ、蒸気加硫缶において160℃で45分間の加硫を行い、デュロメーターAで60°の硬度を有する加硫チューブを得た。
【0044】
その後、チューブの外周面を研磨して粗面化し、その表面粗さRaを1.5μmとし、次に該チューブの酸処理を行ってアプリケータ用ベルトを得た。
【0045】
(実施例6)
【0046】
また、前記実施例5と同様、9μmを超える(第三区分の太さ)複数のガラスフィラメント同士を接着・集束させるためのアプリケータ用ベルトとして、下記のものを製造した。
【0047】
先ず、本実施例に係るアプリケータ用ベルトの原材料の配合について述べると、NBR100部に対して、カーボンブラック35部、酸化亜鉛5部、老化防止剤1部、ステアリン酸1部、硫黄6部、加硫促進剤1.5部を加えた。そして、かかる配合物をニーダーにて混練し、混練物を押出機に充填して未加硫チューブを成形した。
【0048】
次に、前記未加硫チューブを成形鉄芯に嵌め入れ、蒸気加硫缶において160℃で45分間の加硫を行い、デュロメーターAで85°の硬度を有する加硫チューブを得た。
【0049】
その後、チューブの外周面を研磨して粗面化し、その表面粗さRaを4・0μmとし、次に該チューブの酸処理を行ってアプリケータ用ベルトを得た。
【0050】
(比較例1〜比較例4)
【0051】
先ず、前記実施例1〜実施例4と同じ配合としたデュロメーターAが72°の硬度を有する加硫チューブを得た。そして、チューブ外周面を研磨等した後、酸処理を行ってアプリケータ用ベルトを得た。この場合、外周面の表面粗さRaを比較例1では、実施例1と同様に0.2μmとし、これを実施例1とは異なり、第二区分の太さのガラスフィラメントの接着・集束に用いた。また、比較例2では、実施例2と同様に表面粗さRaを0.4μmとし、これを実施例2とは異なり、第三区分の太さのガラスフィラメントの接着・集束に用いた。更に、比較例3では、実施例3と同様に表面粗さRaを0.5μmとし、これを実施例3とは異なり、第一区分の太さのガラスフィラメントの接着・集束に用いた。また、比較例4では、実施例4と同様に表面粗さRaを1.4μmとし、これを実施例4とは異なり、第三区分の太さのガラスフィラメントの接着・集束に用いた。
【0052】
(比較例5)
【0053】
次に、比較例5では、実施例5と同じ配合としたデュロメーターAが60°の硬度を有する加硫チューブを得た。そして、チューブ外周面を研磨した後、酸処理を行ってアプリケータ用ベルトを得た。そして、当該比較例5では、実施例5と同様に表面粗さRaを1.5μmとし、これを実施例5とは異なり、第一区分の太さのガラスフィラメントの接着・集束に用いた。
【0054】
(比較例6)
【0055】
次に、比較例6では、実施例6と同じ配合としたデュロメーターAが85°の硬度を有する加硫チューブを得た。そして、チューブ外周面を研磨した後、酸処理を行ってアプリケータ用ベルトを得た。そして、当該比較例6では、実施例6と同様に表面粗さRaを4.0μmとし、これを実施例6とは異なり、第ニ区分の太さのガラスフィラメントの接着・集束に用いた。
【0056】
(比較例7)
【0057】
比較例7では、実施例5よりも可塑剤の配合量を増加させて、デュロメーターAが55°の加硫チューブを得た。その他の点は実施例5と同様とした。
【0058】
(比較例8)
【0059】
比較例8では、実施例6よりもカーボンの配合量を増加させて、デュロメーターAが90°の加硫チューブを得た。その他の点は実施例6と同様とした。
【0060】
(評価試験)
【0061】
前述した実施例1〜実施例6に係るベルト並びに比較例1〜比較例8に係るベルトをアプリケータに実際に装着してガラス繊維を製造したところ、下記の表1および表2に見られるように、実施例1〜実施例6に係るベルトでは、ガラスフィラメントの損傷が全くなく、またベルト表面におけるブリードの発生も認められず、そして、最終的に複数のガラスフィラメント同士が十分に接着・集束されたガラス繊維が得られた。
【0062】
一方、比較例1、2、4のベルトでは、ガラスフィラメントへのバインダーの塗布不足に起因してガラスフィラメントの接着・集束不良が発生した。
【0063】
比較例3,5,6のベルトでは、ガラスフィラメントの損傷が認められた。また、比較例5のベルトでは、バインダーの過剰塗布も認められた。
【0064】
比較例7のベルトでは、ガラスフィラメントの損傷並びにベルト表面におけるブリードの発生に伴うガラスフィラメントへのバインダーの塗布むらが発生した。また当該ベルト外周面を走行するガラスフィラメントの所謂、アバレも発生し、その結果、得られたガラス繊維におけるフィラメントの接着・集束不良が認められた。
【0065】
比較例8のベルトでは、ベルト表面にカーボンの凝集物が生じ、これに起因してガラスフィラメントの損傷が認められた。
【表1】

【表2】

【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係るアプリケータ用ベルトは、適切な硬度範囲の下、ガラスフィラメントの太さに応じた適切な表面粗さを有するため、各種のガラス繊維の製造に幅広く利用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】アプリケータ用ベルトの製造工程の一例を示す図である。
【図2】アプリケータ用ベルトの一例を示す斜視図である。
【図3】実施例1〜実施例3に係るアプリケータ用ベルトの外周面の拡大図である。
【図4】実施例1〜実施例3に係るアプリケータ用ベルトの外周面側の拡大断面図である。
【図5】実施例4に係るアプリケータ用ベルトの外周面の拡大図である。
【図6】実施例4に係るアプリケータ用ベルトの外周面側の拡大断面図である。
【図7】ガラス繊維のストランドの形成を示す図である。
【図8】ベルト式アプケータの正面図である。
【符号の説明】
【0068】
(21)(31) アプリケータ用ベルト
(22)(32) アプリケータ用ベルトの外周面
(23)(33) アプリケータ用ベルトの外周面における凹部
(24)(34) アプリケータ用ベルトの外周面における凸部
(50)
バインダー
(52) ガラスフィラメント
(54)
ベルト式アプリケータ
(61)
ストランド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太さが3μm以上、5μm未満の複数のガラスフィラメント同士を接着・集束させてガラス繊維のストランドを形成するためのゴム状弾性を有するアプリケータ用ベルトであって、硬度がデュロメーターAで60°〜85°であり、外周面は粗面となされ、その表面粗さRaが0.4μm以下であることを特徴とする、アプリケータ用ベルト。
【請求項2】
太さが5μm以上、9μm以下の複数のガラスフィラメント同士を接着・集束させてガラス繊維のストランドを形成するためのゴム状弾性を有するアプリケータ用ベルトであって、硬度がデュロメーターAで60°〜85°であり、外周面は粗面となされ、その表面粗さRaが0.4μm<Ra<1.5μmであることを特徴とする、アプリケータ用ベルト。
【請求項3】
太さが9μmを超える複数のガラスフィラメント同士を接着・集束させてガラス繊維のストランドを形成するためのゴム状弾性を有するアプリケータ用ベルトであって、硬度がデュロメーターAで60°〜85°であり、外周面は粗面となされ、その表面粗さRaが1.5μm以上であることを特徴とする、アプリケータ用ベルト。
【請求項4】
外周における粗面の凹凸が、ベルトの円周方向に対して略直角な縞状模様に形成されていることを特徴とする、請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項記載のアプリケータ用ベルト。
【請求項5】
外周における粗面が、研磨、シボ加工、ブラスト加工またはローレット加工によって形成されていることを特徴とする、請求項1〜請求項4のうちのいずれか一項記載のアプリケータ用ベルト。
【請求項6】
全体がNBRで構成されている、請求項1〜請求項5のうちのいずれか一項記載のアプリケータ用ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−124222(P2006−124222A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−313331(P2004−313331)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000114710)ヤマウチ株式会社 (82)