説明

アミロイド阻害化合物を同定しそして使用するための方法

【課題】インビボにおける脳アミロイド−β(Aβ)レベルの調節において役割を果たす物質の同定。
【解決手段】被験体におけるアミロイドーシスの増加した可能性を予測するためのキットであって、該キットは、
該被験体においてエストロゲン化合物のレベルを観察するための手段;
を備え、正常レベルまたは該被験体の初期時のレベルと比較した場合の該被験体における該エストロゲン化合物のレベルの減少が、該被験体におけるアミロイドーシスの増加した可能性の指標であるキット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、インビボにおける脳アミロイド−β(Aβ)レベルの調節において役割を果たす物質の同定に関する。本発明は、アミロイド形成状態を処置するための化合物およびこの化合物の使用方法を提供する。また、アミロイドを減少させる候補化合物または候補治療化合物をスクリーニングおよび評価するに有用な動物モデルを提供する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
アルツハイマー病(AD)は、認識機能の進行性の悪化および同時に生じる実質性アミロイド斑の蓄積、脳血管のアミロイド沈着、細胞内の神経原線維変化、ならびにニューロンおよびシナプスの喪失により特徴づけられる神経変性疾患である(TomlinsonおよびCorsellis、Aging and the Dementias:Greenfield’s Neuropathology、Adams JH、Corsellis JAN、Duchen LW(編);John Wiley & Sons、Inc.、1984、951〜1025頁)。特に、大脳皮質および海馬に投射する基底前脳コリン作動性ニューロンが劇的に変性する(Coyleら、Science、1983、219:1184〜1190)。これらの脳および脳血管の沈着物の主要な成分は、アミロイド−β(Aβ)であり、これは40または42アミノ酸で、高度に凝集可能なペプチドであり、アミロイド前駆体タンパク質(APP)のタンパク質分解性のプロセシングにより誘導される(Selkoe、D.J.、Trends Cell Biol.、1998、8:447〜53)。Aβ42は、より疎水性であることに一部起因して、初期の凝集を主に担っている(と考えられる)。ADの病因は複雑であるが、増えつつある多くの証拠が、ADの脳で見られる神経炎ジストロフィー、神経原線維変化形成、グリオーシス、小グリア反応性および他の変性的変化は、Aβペプチド代謝の変化の結果であることを示す(Selkoe、D.J.、前出)。Aβペプチドは、β−セレクターゼ(BACE;Vassarら、Science、1999、286:735〜741)およびγ−セレクターゼ活性の作用により生成される;あるいはアミロイド非形成シナリオでは、Aβの生成は、第3のタンパク質分解性活性である、α−セレクターゼの作用により妨げられる。このセレクターゼ活性は、多数のシグナル伝達経路の制御下にある(Gandy、S.、Trends Endocrinol.Metabol.、1999、7:273〜279)。
【0003】
ADの大部分(90%以上)は散発性のものであり、この疾患の発症および/または進行に影響を及ぼす因子を同定することは、この機構の理解へ向けての、そして成功をおさめる合理的な治療を開発するための重要な工程である。このように説得力のある疫学的な徴候が、エストロゲンの状態がこの疾患の病因に重要な役割を果たし得るを示す:ADの罹患率は、男性よりも女性において高いようであり(MayeuxおよびGandy、Alzheimer’s Disease、Women and Health、Goldman MB Hatch
MC(編)、Academic Press、1999)、そしてエストロゲン置換治療(ERT)を受けた閉経後の女性は、ADの発症が有意に遅延されるかまたはその危険が減少している(Tangら、Lancet、1996、348:429〜432;Kawasら、Neurol.、1997、48;1517〜1521)。
【0004】
近年の研究方針は、APP代謝に対するエストロゲンの影響についての調査である(Jaffeら、J.Biol.Chem.、1994、269:13065〜13068;Kwanら、Adv.Exp.Med.Biol.、1997、429:261〜271;Xuら、Nat.Med.、1998、4:447〜451)。生理的濃度のエストロゲン(17β−エストラジオール、E2)は、げっ歯類またはヒトのニューロン(胎児の大脳皮質)の初代培養物から遊離したAβ40ペプチドレベルおよびAβ42ペプチドレベルを減少させた(Xuら、前出)。これらの知見を考慮して、そしてAβの沈着はAD病理の開始において中心的な役割を果たしていると思われることから、インビボで脳のAβレベルを調整する女性性腺ホルモンの状態の能力を評価する必要が当該分野で存在する。このインビトロでの結果は、期待はさせるが、決してインビボでの効果を予測させるものではない。
【0005】
インビボで、エストロゲンは、高齢の女性において閉経に関連するホルモンの変動に付随して起こる有害な行動的症状を処置することにおいて有用性があると認識されているが、これらの効果についての生化学的な根拠は、決して決定されていない。このような理由で、ヒト被験体におけるエストロゲンを用いた行動的効果の処置は、エストロゲン欠乏の徴候を示す女性における閉経の処置、および代表的にはエストロゲンの置換治療により矯正される閉経の後遺症(すなわち、のぼせおよび骨粗鬆症)の防止における使用に限定されている。
【0006】
Sherwinによる臨床研究(Psychoneuroendocrinology、1988、13:345〜357)、ならびにSherwinおよびPhillipsによる臨床研究(Annals of the New York Academy of Sciences、1990、592:474〜5)は、卵巣摘出を受けた女性において10mgの用量のエストロゲンを筋内投与した後の全体的な気分向上の効果を示しているが、この効果が生じた機構は不明である。さらにこれらの研究は、この処置の行動的効果より推測して、そしてこの分子の構造から予測して、筋内投与されたエストロゲンが、その後脳に達することを示している。
【0007】
CNS細胞に対するエストロゲンの作用に関する生化学的な研究は、インビボまたはインビトロのいずれでも矛盾する報告がなされている。多くの研究が、エストラジオールはニューロンの可塑性に対して効果を有することを示す。Morseらは、エストロゲン誘導体が、嗅内皮質損傷後の海馬歯状回における交連−連合求心性線維の発芽を増強することを報告した(Experimental Neurology、1986、94:649〜658)。さらに、海馬のCA1におけるシナプス密度の周期的な変化が、循環E2レベルに関連することが示された(Woolleyら、J.of Neurosci.、1992、12:2549〜2554)。そして、これらの変化は、外因性のE2投与により模倣され得た。実際、卵巣摘出は、ラットの前頭皮質における高親和性コリン取り込み(HACU)を減少させ、そしてE2の置換がこれを正常化することがさらに示された。
【0008】
さらに、Gibbsら(Soc.for Neurosci.Abstracts、1993、19:5)は、内側中隔におけるエストラジオール処置後のコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)レベルが処置の2日後および2週間後にアップレギュレートされることを報告しているが、1週間後にはChAT
mRNAのインサイチュハイブリダイゼーションを用いて効果は観測されなかったことを報告している。Luineらは、エストラジオール処置に応答して、ラットの脳の視索前部および視床下部におけるChATレベルが増加したことを報告した(Brain Res.、1980、191:273〜277)。
【0009】
特許文献1(Simpkinsら)(「第601号特許」)は、エストロゲン化合物が、損傷および死を生じる有害条件に対する細胞の生存性および細胞応答に影響を及ぼす基本的なプロセスに対して作用することを報告している。このような条件の例として細胞に対するグルコースの調節が挙げられる。生理的な用量でのエストロゲン投与は、卵巣摘出された雌のラット(ovx)において、非空間学習障害の回復を生じる。これらの短期のovxおよびE2置換の行動的効果は、脳の海馬および前頭皮質における生化学的な変化(特に、ovxおよびE2徐放ペレット処置ラットにおける高親和性コリン取り込み(HACU)のそれぞれ減少および増加)と相関した。短期のE2置換はまた、海馬におけるコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)活性に対する正の効果を有したが、前頭皮質においては有しなかった。長期のE2置換は前頭皮質における時間依存的なChATの減少を防止し、そして海馬におけるChAT活性の減少を弱めるようであった。まとめると、報告によればこれらのデータは、エストロゲンが、CNSにおける細胞に対する細胞保護効果を有し、そして成体の雌ラットのエストロゲン環境は、学習および基底全能作動性ニューロンの活性に影響を及ぼすことを示した。このデータはまた、雌のラットでの基底全能作動性ニューロンの維持および適切な機能におけるエストロゲンの重要性を示した。この第601号特許は、エストロゲンがAPPのプロセシングおよびAβ産生を調節することについてのいかなる指摘も欠いている。
【0010】
この研究は、エストロゲンが、閉経後の女性において、気分および骨密度に対する治療効果を有し、そして神経系細胞に対する保護効果を有するようであることを確立する。しかし、エストロゲンが、いずれかの方法でアミロイド症に影響を及ぼし得ることも、インビボでAβ産生を調節することも指摘はない。従って当該分野において、このような化合物を同定する必要、ならびに候補化合物のスクリーニングおよび試験に有用な動物モデルを開発する必要がある。
【0011】
本発明は、このことおよび当該分野における他の必要に取り組む。
【特許文献1】米国特許第5,554,601号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
本発明は、インビボでアミロイドβ(Aβ)ペプチドレベルを減少させるための方法を企図する。この方法は、動物へAβレベルを減少させる用量のエストロゲン化合物を投与する工程を包含する。本発明のさらなる実施形態において、このAβペプチドは、Aβ42およびAβ40を含有し、そしてこの方法はさらに、Aβ40に対するAβ42の比率を減少させる工程を包含する。
【0013】
本発明の別の実施形態において、インビボでAβレベルを減少させる試験化合物の能力を評価するための方法が企図される。この方法は、精巣摘除された非ヒトコントロール動物におけるAβレベルと、試験化合物で処置した精巣摘除された非ヒト動物のAβレベルを比較する工程を包含する。ここで、この試験化合物で処置した動物における、コントロール動物と比較してのAβレベルの減少は、インビボでAβレベルを減少させるこの試験化合物の能力を示す。本発明のさらなる実施形態において、この動物は、卵巣摘出された(ovx)動物である。さらなる実施形態において、この試験化合物は、エストロゲン化合物である。
【0014】
本発明はまた、インビボでAβレベルを減少させる試験化合物の能力を評価するための方法を企図する。この方法は、ovx非ヒトコントロール動物におけるAβレベルと、モルモットおよびヒトアミロイド前駆体タンパク質を発現するトランスジェニックげっ歯類動物からなる群より選択される、試験化合物で処置されたovx非ヒト動物のAβレベルを比較する工程を包含する。ここで、この試験化合物で処置した動物における、コントロール動物と比較してのAβレベルの減少は、インビボでAβレベルを減少させるこの試験化合物の能力を示す。
【0015】
本発明はさらに、インビボでAβ40に対するAβ42の比率を減少させる試験化合物の能力を評価するための方法を企図する。この方法は、精巣摘除された非ヒトコントロール動物におけるAβ40に対するAβ42の比率と、試験化合物で処置した精巣摘除された非ヒト動物におけるAβ40に対するAβ42の比率とを比較する工程を包含する。ここで、この試験化合物で処置した動物における、コントロール動物と比較してのAβ40に対するAβ42の比率の減少は、インビボでAβ40に対するAβ42の比率を減少させるこの試験化合物の能力を示す。さらなる実施形態において、この動物は、卵巣摘出された(ovx)動物である。
【0016】
本発明の別の実施形態において、アミロイド症に関連する疾患または障害の発症を予防するかあるいはその疾患または障害を改善するために、被験体におけるAβレベルを減少させる方法を企図する。この方法は、Aβレベルを減少させる用量のエストロゲン化合物を被験体に投与する工程を包含する。さらなる実施形態において、このエストロゲン化合物は、少なくとも10日間毎日投与される。
【0017】
本発明はまた、被験体におけるアミロイド症の可能性の増大を予測するための方法を企図する。この方法は、被験体における、通常のレベルまたはこの動物のそれよりも以前の時点でのレベルと比較してのエストロゲン化合物レベルの減少を観測する工程を包含する。さらなる実施形態において、エストロゲン化合物は、エストロゲンβ17または芳香族化可能なアンドロゲンである。別の実施形態において、アミロイド症は、Aβの沈着を包含する。さらなる実施形態は、アルツハイマー病を発症する可能性の増大を予測する工程を包含する。
・本発明はさらに、以下を提供する:
・(項目1) インビボにおいてアミロイド−β(Aβ)ペプチドのレベルを減少するために動物に投与するための医薬の製造における、Aβレベルを減少する治療有効用量のエストロゲン化合物を含む化合物の使用であって;ここで、上記動物は、増加したレベルのAβを有する、使用。
・(項目2) 上記アミロイドのレベルが、上記動物の脳中の可溶性アミロイドレベルである、項目1に記載の使用。
・(項目3) 上記エストロゲン化合物が、17β−エストラジオールである、項目1に記載の使用。
・(項目4) 上記エストロゲン化合物が、結合体化されたウマエストロゲンの組成物である、項目1に記載の使用。
・(項目5) 上記Aβペプチドが、Aβ42およびAβ40を含む、項目1に記載の使用であって、上記使用はAβ40に対するAβ42の比率を減少することをさらに特徴とする、使用。
・(項目6) 上記Aβペプチドが、Aβ42ペプチドである、項目1に記載の使用。
・(項目7) インビボにおいてAβレベルを減少する試験化合物の能力を評価するための方法であって、上記方法は、上記試験化合物で処理された精巣摘除非ヒト動物のAβレベルを、精巣摘除非ヒトコントロール動物のAβレベルと比較する工程を包含し、ここで、上記コントロール動物と比較された、上記試験化合物で処理された動物における上記Aβレベルの減少が、インビボにおいてAβレベルを減少する上記試験化合物の能力を示す、方法。
・(項目8) 上記動物が卵巣摘出(ovx)動物である、項目7に記載の方法。
・(項目9) 上記動物がモルモットである、項目7に記載の方法。
・(項目10) 上記動物がヒトアミロイド前駆体タンパク質を発現するトランスジェニックげっ歯類である、項目7に記載の方法。
・(項目11) 上記動物がプレセニリンタンパク質もまた発現するダブルトランスジェニックげっ歯類である、項目10に記載の方法。
・(項目12) 上記脳のAβレベルが評価される、項目7に記載の方法。
・(項目13) 上記試験化合物がエストロゲン化合物である、項目7に記載の方法。
・(項目14) インビボにおいてAβレベルを減少する試験化合物の能力を評価するための方法であって、上記方法は、上記試験化合物で処理された、モルモットおよびヒトアミロイド前駆体タンパク質を発現するトランスジェニックげっ歯類からなる群より選択されるovx非ヒト動物のAβレベルを、卵巣摘出(ovx)非ヒトコントロール動物のAβレベルと比較する工程を包含し、ここで、上記コントロール動物と比較された、上記試験化合物で処理された動物における上記Aβレベルの減少が、インビボにおいてAβレベルを減少する上記試験化合物の能力を示す、方法。
・(項目15) インビボにおいてAβ40に対するAβ42の比率を減少するための試験化合物の能力を評価するための方法であって、上記方法は、試験化合物で処理された精巣摘除非ヒト動物のAβ40に対するAβ42の比率を、精巣摘除非ヒトコントロール動物のAβ40に対するAβ42の比率と比較する工程を包含し、ここで、上記コントロール動物と比較された、上記試験化合物で処理された動物におけるAβ40に対するAβ42の比率の減少が、インビボにおいてAβ40に対するAβ42の比率を減少する上記試験化合物の能力を示す、方法。
・(項目16) 上記動物が卵巣摘出(ovx)動物である、項目15に記載の方法。
・(項目17) 上記動物がモルモットである、項目16に記載の方法。
・(項目18) 上記化合物がエストロゲン化合物である、項目15に記載の方法。
・(項目19) 上記エストロゲン化合物が17β−エストラジオールである、項目18に記載の方法。
・(項目20) アミロイドーシスと関連する疾患もしくは障害の発症を遅延または予防するため、あるいはアミロイドーシスと関連する疾患もしくは障害を改善するために、被験体に投与するための医薬の製造における、Aβレベルを減少する治療有効用量のエストロゲン化合物を含む化合物の使用であって;ここで、上記被験体は、アミロイドーシスと関連する疾患もしくは障害の発生に関して増加した危険性を有するか、あるいはアミロイドーシスと関連する疾患もしくは障害の症状を示す、使用。
・(項目21) 上記エストロゲン化合物が、17β−エストラジオールである、項目20に記載の使用。
・(項目22) 上記エストロゲン化合物が、少なくとも10日間、毎日投与されることを特徴とする、項目20に記載の使用。
・(項目23) 上記エストロゲン化合物が、制御された放出のための装置によって投与されることを特徴とする、項目20に記載の使用。
・(項目24) 上記アミロイドーシスと関連する疾患または障害が、アルツハイマー病である、項目20に記載の使用。
・(項目25) Aβ40に対するAβ42の比率が、上記被験体において減少される、項目20に記載の使用。
・(項目26) 被験体におけるアミロイドーシスの増加した可能性を予測するための方法であって、上記方法は、
正常レベルまたは上記被験体の初期時のレベルと比較した場合の上記被験体におけるエストロゲン化合物レベルの減少を観察する工程;
を包含する、方法。
・(項目27) 上記エストロゲン化合物が、エストロゲンβ17である、項目26に記載の方法。
・(項目28) 上記エストロゲン化合物が、芳香族化可能なアンドロゲンである、項目26に記載の方法。
・(項目29) 上記アミロイドーシスが、Aβペプチドの沈着を含む、項目26に記載の方法。
・(項目30) アルツハイマー病の発症の増加した可能性を予測するための手段を備える、項目29に記載の方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(詳細な説明)
本発明は、女性性腺ホルモンのアゴニスト、特にエストラジオールによる処置が、インビボでAβレベルに影響を及ぼし、驚くべきことに可溶性APPレベルには影響を与えないことを有利に確立する。この発明は、モルモットの脳内Aβレベルに対する卵巣摘出(ovx)およびエストロゲン置換の効果の発見に部分的に基く。モルモットの長期(10週)のovxは、インタクトな動物と比較して、脳内総Aβレベルの増大(平均1.5倍の増大、p<0.00001)を生じた。Aβ42/Aβ40の比率もまた、上昇した(平均1.3倍の上昇、p<0.001)。ovxモルモットの10日間(ovxの8週後から開始)のE2処置は、ovxに関連する脳内Aβレベル増大を部分的に逆転させた(平均20%の減少;p<0.01)。これらのデータは、女性性腺ホルモンの状態が、インビボでの脳内Aβレベルの調節において役割を果たしているという最初の証拠を提供する。
【0019】
本発明の好ましい実施形態において、女性性腺ホルモンの状態は、Aβ40レベルよりもAβ42レベルを調節する。この実施形態において、エストロゲンレベルの減少は、Aβ40レベルよりも大きな程度でAβ42レベルを増大させる。さらに、エストロゲンレベルの減少(ovx動物)は、コントロール動物と比較してAβ42/Aβ40の比率を増大させる。これらのデータは、エストロゲンレベルが、Aβ40よりも大きな程度でAβ42レベルに影響を及ぼすという証拠を提供する。このデータはまた、エストロゲンの補充が、この不均衡を少なくとも部分的に相殺し、Aβ42/Aβ40の比率の減少を導き得ることを示す。
【0020】
本発明の驚くべき発見は、エストロゲン化合物の投与に応答して、sAPPαレベルが変化しないことである。従って、17β−エストラジオール活性の証明のために、初代培養細胞および神経芽腫細胞のインビロトアッセイにおいてモニターされた、APP代謝のこのマーカーは、本明細書でなされた発見(エストロゲン化合物(Xuら、Nat.Med.、1998、4:447)が、インビボでAβレベルを減少させること)をもたらさなかった。実際、インビトロでの先行のデータは、APPの分泌代謝の増大による非アミロイド形成プロセシングの増大におけるエストロゲンの役割を支持した。本明細書中で開示される結果は、抗アミロイド薬の開発にとって、sAPPαレベルの変化(上昇または下降)は良好な指針ではないことを示す。
【0021】
「アミロイド−β(Aβ)ペプチドレベルを減少させる」とは、インビボでAβ40または(好ましくは)Aβ42の量(より好ましくは両方)の量を減少させることを特にいう。Aβは血液、脳脊髄液、または器官において蓄積し得る。Aβレベルを減少させるための主要な目的の器官は脳であるが、Aβレベルはまた、本発明の実施により、体液、組織、および/または他の器官においても減少され得る。
【0022】
本明細書中で使用される場合、用語「約(aboutまたはapproximately)」は、所定の値の50%以内、好ましくは20%以内、より好ましくは10%以内、なおより好ましくは5%以内、そして最も好ましくは所定の値の1%以内を意味する。あるいは、用語「約(aboutまたはapproximately)」は、値がそのタイプの値にとって科学的に受け入れ可能な誤差の範囲内に収まり得ることを意味し、その誤差範囲は利用され得る手段がどの程度の量的な測定をするかに依存する。
【0023】
(エストロゲン化合物)
「エストロゲン化合物」は、本明細書および特許請求の範囲中で、「Steroids」第11版(Steraloids Inc.、Wilton N.H.、同書は本明細書中で参考として援用される)において記載されるいずれかの構造物と定義される。前述の参考文献に記載される非ステロイド性エストロゲンはこの定義に含まれる。この定義に含まれる他のエストロゲン化合物は、エストロゲン誘導体、エストロゲン代謝産物、エストロゲン前駆体、選択的エストロゲンレセプターモジュレーター(SERM)、および芳香族化可能アンドロゲンである。この用語はまた、(インビボでアミロイドレベルを減少させるという本明細書に記載された)エストロゲンの効果の引き金を特異的に引く分子も包含する。1つより多いエストロゲンまたはエストロゲン化合物の混合物もまた、含まれる。このような混合物の例は、米国特許第5,554,601号の表II(第6欄を参照のこと)に提供される。単独または他の薬剤との組み合わせのいずれかにおいて有用性を有するエストロゲンの例は、例えば、米国特許第5,554,601号に提供される。特定の実施形態において、このエストロゲン化合物は、結合体とウマエストロゲンの組成物(PREMARINTM;Wyeth−Ayerst)である。
【0024】
β−エストロゲンは、エストロゲン化合物のβ異性体である。α−エストロゲンは、エストロゲン構成成分のα異性体である。特に指定されない限り、用語「エストラジオール」は、α−エストラジオールかまたはβ−エストラジオールのいずれかである。
【0025】
用語「E2」は、β−エストラジオール、17β−エストラジオールと同義語であり、そしてβ−E2、αE2およびα−エストラジオールは、βE2エストラジオールのα異性体である。
【0026】
好ましくは、非雌性化エストロゲン化合物が使用される。このような化合物は、子宮の肥大および他の望まない副作用を引き起こさない利点を有し、従って、より高い有効投薬量で用いられ得る。非雌性化エストロゲンの例として、ラロキシフェン(Raloxifene)(Evista;Eli Lilly)、タモキシフェン(Tamoxifen)(Nolvadex;Astra Zeneca)、および他の選択的エストロゲンレセプターモジュレーターが挙げられる。
【0027】
あるいは、エストロゲンとプロゲスチンとの組み合わせ、エストロゲンと抗プロゲスチンとの組み合わせ、またはエストロゲンと非雌性化エストロゲンとの組み合わせが用いられ得る。プロゲスチン化合物として、例えば、21炭素の骨格を含むプロゲスチンおよび19炭素(19−ノルテストステロン)の骨格を含むプロゲスチンが挙げられる。
【0028】
さらに、アンドロゲンテストステロンのような特定の化合物は、インビボでアロマターゼ酵素による変換により、エストロゲンに変換され得る。アロマターゼ酵素は、脳を含むがこれに限定されないいくつかの領域に存在する。いくつかのアンドロゲンは、アロマターゼに対する基質であり、変換され得、そしていくつかは基質となり得ない。アロマターゼの基質であるアンドロゲンは、芳香族化可能アンドロゲンと呼ばれ、そしてアロマターゼの基質ではないアンドロゲンは、芳香族化不能アンドロゲンと呼ばれる。例えば、テストステロンは、芳香族化可能アンドロゲンであり、そして、例えば、ジヒドロテストステロンは、芳香族化不能アンドロゲンである。従って、本発明は、アンドロゲンからエストロゲンに変換される化合物、および本明細書中に記載された、インビボでアミロイドレベルを減少するという効果を生じる化合物(および、以下に記載されるように、精巣を除去されているかまたは不活化されている動物を試験動物として使用することに明らかに及ぶ。
【0029】
「試験化合物」は、アミロイドの産生に影響を及ぼす、任意の分子または1つより多い分子の任意の組合わせであり得る。本発明は、合成小分子薬剤、化学化合物、化学的な組み合わせ、およびそれらの塩のスクリーニング、ならびに植物抽出物または発酵ブロスから得られる物質のような天然産物のスクリーニングを企図する。本発明のスクリーニングを用いて同定され得る他の分子として、タンパク質およびペプチドフラグメント、ペプチド、核酸およびオリゴヌクレオチド、炭水化物、リン脂質および他の脂質誘導体、ステロイドおよびステロイド誘導体、プロスタグランジンおよび関連のアラキドン酸誘導体などが挙げられる。特定の実施形態において、この試験化合物は、エストロゲン化合物であり得る。
【0030】
(アミロイド)
用語「アミロイド」、「アミロイド斑」および「アミロイド原繊維」とは、概して、不溶性タンパク様物質であって、この物質中に見出されるタンパク質または他の分子の組成とは無関係に特定の物理的特性を有するものをいう。アミロイドは、その非晶質な構造、エオシン好性の染色、チオフラビン蛍光の変化および均質な外観により同定され得る。アミロイドのタンパク質構成成分またはペプチド構成成分は、本明細書中で「アミロイドポリペプチド」と呼ばれ、そしてβ−アミロイドペプチド(Aβ)(Aβの最初の28,40,または42アミノ酸に対応する合成βAP(すなわち、それぞれAβ(1−28)またはAβ28、Aβ(1−40)またはAβ40、Aβ(1−42)またはAβ42)、ならびにAβのアミノ酸25〜35に対応する合成βAP(すなわち、Aβ25-35)を含む)が挙げられるが、これに限定されない。他のアミロイドペプチドとして、スクラピータンパク質前駆体またはプリオンタンパク質;ミエローマより産生される、κもしくはλ軽鎖または重鎖を含む免疫グロブリン、あるいはそれらのフラグメント;血清アミロイドA;β2−マイクログロブリン;apoA1;ゲルソリン;シスタチンC;(プロ)カルシトニン;心房性利尿因子;膵島アミロイドペプチド(アミリンとしても知られている)などが挙げられる(Westermarkら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3881〜85、1987;Westermarkら、Am.J.Physiol.127:414〜417、1987;Cooperら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:8628〜32、1987;Cooperら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:7763〜66、1988;Amiel、Lancet 341:1249〜50、1993、を参照のこと)。特定の局面において、本明細書中で用語「アミロイド」は、Aβを含有する物質をいうために用いられる。「アミロイド症」とは、アミロイド斑またはアミロイド原繊維を形成するインビボでのタンパク質の沈着または凝集をいう。
【0031】
42アミノ酸(4.2kDa)のβ−アミロイドペプチド(βAP)は、より大きなアミロイドペプチド前駆体(APP)タンパク質のファミリーに由来する(GlennerおよびWong、1984、Biochem.Biophys.Res.Commun.120:885〜890;GlennerおよびWong、1984、Biochem.Biophys.Res.Commun.122:1131〜35;Goldgaberら、1987、Science 235:8778〜8780:Kangら、1987、Nature 325:733〜736;Robakisら、1987、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:4190〜4194;Tanziら、1987、Science 235:880〜884)。APPは、多くのイソ型で見出される膜貫通タンパク質である。これは、本明細書中で、一般に全長APP(flAPP)と呼ばれる。さらに、α−セクレターゼの作用により形成される可溶形態のAPP(sAPPα)が存在する(上記で議論されている)。
【0032】
生物学的サンプル中の「Aβレベル」は、当該分野で公知の任意の方法によって検出され得、免疫アッセイ(例えば、下記に例示される)、生化学分析(例えば、精製、ゲル電気泳動、定量アミノ酸配列分析または組成分析、コンゴレッドまたはThioflavin−T染色など)、またはAβを検出するために公知の他の方法が挙げられるが、これらに限定されない。特に、Thioflavin Tを用いる蛍光方法が、凝集したペプチドを検出するために使用される。「生物学的サンプル」とは、体液(血液、血球、血漿、血清、髄液、尿)、組織(例えば、脊髄、神経など)、または器官(好ましくは、脳であるが、肝臓、腎臓、脾臓なども含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
アミロイド沈着もしくはアミロイドプラークが疾患に冒された組織においてかもしくはその組織に近接して見出されるか、または疾患が、可溶性であるかもしくは可溶性になり得るタンパク質(特にアミロイドタンパク質)の過剰発現によって特徴付けられる場合、この疾患または障害はアミロイドーシスと関連する。アミロイドプラークは、直接もしくは間接的に、公知の機構もしくは未知の機構によって、病理学的な影響を引起し得る。アミロイド疾患の例としては、全身性疾患(例えば、慢性の炎症性の病気、多発性骨髄腫、マクログロブリン血症、家族性アミロイド多発ニューロパシー(Portuguese)および心筋症(Danish))、全身性老人性アミロイドーシス、家族性アミロイド多発ニューロパシー(Iowa)、家族性アミロイドーシス(Finnish)、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカ症候群、麻疹および難聴を伴う家族性アミロイドニューロパシー(マックル−ウェルズ症候群)、甲状腺の髄癌腫瘍、単離された心房アミロイド、および血液透析関連アミロイドーシス(HAA);ならびにアミロイド関連神経変性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
上記のように、全身性アミロイドーシスに加えて、本発明は、特にアミロイドーシスを含む神経変性疾患に関連する。用語「神経変性疾患」は、脳もしくは神経の機能不全に特徴的である症状(例えば、短期もしくは長期の記憶の中断もしくは記憶の欠失、痴呆、認識の欠如、平衡および調整の問題、ならびに感情および行動の欠損)と共に現れる神経系(特に、脳を含む)の疾患または障害に関する。このような症状を示す患者由来の脳組織の組織病理学(生検)サンプルがアミロイドプラーク形成を明らかにする場合、このような疾患は「アミロイドーシスと関連する」。脳(特に、ヒトの脳)由来の生検サンプルを生きている被験体から得ることは非常に困難であるか、または全く利用可能でないかもしれないので、しばしば、アミロイドーシスを伴う神経変性疾患の症状の関連性は、生検サンプル中のアミロイド沈着(例えば、プラークまた原線維)の存在以外の判断基準に基づく。従って、特に、ADに関して、従来の診断は、徴候学および関連性のある場合、家族歴に依存する。臨床の実施において、医師は、老人性痴呆の症状に基づいてアルツハイマー病を診断し、この症状としては、認識機能不全、逆行性健忘症(最近の事象に関する記憶の損失)、遠い記憶の漸進性欠陥、およびおそらく、鬱病または他の神経性の症候群が挙げられる。個々は、個性および知性のゆっくりとした崩壊を伴って存在する。イメージングは、大脳皮質および他の脳の領域からのラージ細胞の損失を明らかにし得る。ADは、老人性痴呆とは発症年齢が異なるが:ADは、おそらく、50〜60歳代に生じ、一方、老人性痴呆は、80歳代以降に生じる。
【0035】
特定の実施形態において、本発明に従って、アミロイドーシスと関連する神経変性疾患は、アルツハイマー病(AD)であり、これは、散発性AD、ApoE4関連AD、他の変異体APP形態のAD(例えば、最も一般的なAPP変異であるAPP717での変異)、変異体PS1形態の家族性AD(FAD)(例えば、WO 96/34099)、変異体PS2形態のFAD(例えば、WO 97/27296)、およびα−2−マクログロブリン多型関連ADを含む状態である。他の実施形態において、この疾患は、APPのβAP部分のアミノ末端付近であるアミロイド前駆体タンパク質(APP)における二重のKM〜NL変異によって特徴付けられる、希少なスウェーデン疾患であり得る(Levyら、1990、Science 248:1124−26)。別のこのよう疾患は、アミロイドーシスと関連する遺伝性脳出血(HCHAまたはHCHWA)−Dutch型である(Rozemullerら、1993、Am.J.Pathol.142:1449−57;Roosら、1991、Ann.N.Y.Acad.Sci.640:155−60;Timmersら、1990、Neurosci.Lett.118:223−6;Haanら、1990、Arch.Neurol.47:965−7)。当該分野で公知であり本発明の範囲内である他のこのような疾患としては、散発性大脳アミロイド脈管障害、遺伝性大脳アミロイド脈管障害、ダウン症候群、グアムのパーキンソン症候群の痴呆、年齢関連無症候性アミロイド脈管障害が挙げられる(例えば、HaanおよびRoos、1990、Clin.Neurol.Neurosurg.92:305−310;GlennerおよびMurphy、1989、N.Neurol.Sci.94:1−28;Frangione、1989、Ann.Med.21:69−72;Haanら、1992、Clin.Neuro.Neurosurg.94:317−8;Fraserら、1992、Biochem.31:10716−23;Coriaら、1988、Lab.Invest.58:454−8を参照のこと)が、これらに限定されない。これらの各疾患に含まれるβAPの実際のアミノ酸組成およびサイズは、当該分野で公知のように(上記ならびにWisniewskiら、1991、Biochem.Biophys.Res.Commun.179:1247−54および1991、Biochem.Biophys.Res.Commun.180:1528[誤植で発行];Prelliら、1990、Biochem.Biophys.Res.Commun.170:301−307;Levyら、1990、Science 248:1124−26)、変化し得る。
【0036】
本発明は、任意の動物、より好ましくはヒトならびにサル、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、モルモット、ハムスター、マウスおよびラットなどの哺乳動物を含む哺乳動物由来のアミロイド生成ペプチドを評価することを意図する。
【0037】
(動物モデル)
「非ヒト動物」は、げっ歯類(マウス、ラット、モルモット、ハムスター)、ウサギ、ネコ、イヌ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、サル(または他の霊長類)、ウマ、ウシなどを含むがこれらに限定されない任意の動物であり得る。代表的には、実験室における簡便な使用のためには、非ヒト動物は、小さい哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ハムスター、モルモットなど)である。非ヒト動物は、トランスジェニックであり得る。好ましくは、このようなトランスジェニック非ヒト動物は、ヒトAPPまたはヒトAPP改変体を発現する。好ましい実施形態において、トランスジェニック動物は、ダブルトランスジェニックでありヒトAPPおよびヒトプレセニリンまたはヒトプレセニリン改変体(例えば、PS−1またはPS−2、好ましくは、PS−1)を発現する、マウスまたはラットである。好ましい実施形態において、以下に例示される動物は、卵巣摘出された雌のモルモットである。
【0038】
「コントロール動物」は、試験化合物で処理されていない動物、またはアミロイド阻害活性を欠くプラシーボ化合物で処理された動物である。
【0039】
用語「精巣摘除された」は、その生殖巣が切除されたかまたは除去された動物をいう。切除は、一般的に、外科的な切除をいう。除去は、生殖巣の機能を破壊するための化学的な処理、照射処理、または生殖巣の崩壊もしくは機能不全を引起すいくつかの他の方法をいう。「インタクト」な動物は、精巣摘除されていない;好ましくは、生殖巣は、インタクトな動物では正常に機能する。「生殖巣」は、メスの卵巣であり、そしてオスの精巣である。本発明の好ましい局面において、動物は、「卵巣摘出され」、すなわち、その卵巣は、除去または除去されている(このような動物は、当然、メスである)。
【0040】
(トランスジェニック動物)
上記のように、トランスジェニック動物(GuenetteおよびTanzi,Neurobiol.Aging,1999,20:201−11)(特に、精巣摘除されたトランスジェニック動物)は、本発明の実施に使用され得る。Gamesら(Nature,1995,373:523−7)は、ADのホールマークを漸進性に発生した、ヒトAPP改変体(717位にバリンの変わりにフェニルアラニンの置換を有するAPP)を発現するトランスジェニックマウスを記載する。他のトランスジェニックマウスもまた、記載されている(ShenおよびLi,Brain Res Bull,1998,46:233−6[ラット海馬中のいくつかのニューロン集団からプレセニリン−1およびアミロイド前駆体タンパク質(APP−695)のmRNAを発現する];Holcombら、Nat Med,1998,4:97−100[変異体アミロイド前駆体タンパク質およびプレセニリン1導入遺伝子の両方を保有するトランスジェニックマウスにおける増進したアルツハイマー型表現型];Borcheltら、Neuron 1996 Nov;17:1005−13[家族性アルツハイマー病連結プレセニリン1改変体は、インビトロおよびインビボにおいてAβ1−42/1−40を上昇する])。APPおよびPSトランスジェニック動物に加えて、ApoEトランスジェニック動物、特に、ADを発生する増加した可能性と関連するApoE4改変体を有するマウスがまた、関心のあるトランスジェニック動物である。
【0041】
プレセニリン、および特に、家族性アルツハイマー病と関連して故にトランスジェニック動物に移すことが望ましい変異体プレセニリンは、国際特許出願番号WO 96/34099、WO 97/27298、およびWO 98/01549に記載され;Annu Rev Neurosci,1998,21:479−505を参照のこと(PS1、PS2、ApoE4、およびADと関連する他の変異体タンパク質、ならびにトランスジェニック動物におけるこれらの使用が、議論される)。
【0042】
(アミロイドーシスの予後および診断)
インビボにおけるエストロゲン化合物レベルの減少は、増加したアミロイド産生を引き起こす。この観察は、所定の被験体がアミロイド沈着を発生する増加した可能性、故にアミロイドーシスと関連する疾患または障害(例えば、アルツハイマー病)を発生する増加した可能性を有するか否かを推定する能力を確立した。これらの推定は、被験体中のエストロゲン化合物レベルにおける減少を観察することに基づく。
【0043】
用語「増加した可能性」は、所定の個体における特定の結果(例えば、アミロイドーシス)に関するより大きな可能性が存在することを意味する。この結果の実際の発生は多数の因子に依存するので、個体が従う実際の経過は、付加知である。従って、本発明は、可能性自身および可能性における変化に関する。
【0044】
エストロゲン化合物「レベルの減少」は、血液中の化合物の量および濃度が、その種の正常レベルまたはこの被験体の初期時のレベルよりも低いことを意味する。「正常レベル」は、平均、中央値、または試験に関してランダムに選択された集団中で見出されるモードである。
【0045】
用語「エストロゲン化合物」は、上記に規定される。従って、本発明は、内因性エストロゲン化合物(例えば、全く限定ではないが、E2、芳香族化可能なアンドロゲン、または治療エストロゲン化合物)のレベルを測定することを意図する。
【0046】
被験体由来の生物学的サンプル中のエストロゲン化合物レベルに関する試験は、標準的な技術を用いてなされ得る。「生物学的サンプル」は、おそらくエストロゲン化合物を含む、任意の体の組織または体液である。このようなサンプルは、好ましくは、血液または血液成分(血清、血漿)を含む。標準的な試験方法としては、免疫アッセイ、生化学アッセイ、分析試験(例えば、ガスクロマトグラフィーまたは質量分析法)などが挙げられる。
【0047】
(薬学的組成物および投与)
本発明のエストロゲン化合物は、薬学的に受容可能なキャリアと共に薬学的組成物に処方され得る。エストロゲン化合物、プロゲスチン化合物、抗黄体ホルモン化合物、非雌性化エストロゲン化合物、または芳香族化アンドロゲン化合物の濃度または量は、以下に議論されるように、所望の投薬量および投与レジメンに依存する。薬学的組成物はまた、他の生物学的活性化合物を含み得、これらとしては、アンドロゲン、同化ホルモン、非ステロイド抗炎症薬、免疫調節薬などが挙げられるがこれらに限定されない。特定の実施形態において、組成物は、アンドロゲンまたは同化ホルモンを含まない(そして実際に、関連する特定の実施形態では、このような化合物は、エストロゲン化合物と共に投与されない)。
【0048】
句「薬学的に受容可能」とは、ヒトに投与された場合に、生理学的に耐性であり、かつ代表的にはアレルギー反応または同様の都合の悪い反応(例えば、胃の不調、めまいなど)を生じない、分子実体および組成物をいう。好ましくは、本明細書中で使用される場合、用語「薬学的に受容可能」は、連邦政府もしくは州政府の管理機関により承認されるか、またはU.S.Pharmacopeiaもしくは他の一般的に認識される薬局方に動物(より特定には人)における使用について列挙されることを意味する。用語「キャリア」とは、化合物と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤またはビヒクルをいう。このような薬学的キャリアは、水および油(石油、動物、植物または合成起源の油を含む、例えば、ピーナッツオイル、ダイズ油、鉱油、ゴマ油など)のような滅菌液体であり得る。水または水溶液、生理食塩水、およびデキストロース水溶液およびグリセロール水溶液は、好ましくは、特に注射可能な溶液のためのキャリアとして使用される。適切な薬学的キャリアは、E.W.Martinの「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載される。
【0049】
「A」を含む組成物(ここで「A」は、単一のタンパク質、DNA分子、ベクター、組換え宿主細胞などである)は、組成物中の少なくとも約75重量%のタンパク質、DNA、ベクター(AおよびBが属する種のカテゴリーに依存して)が「A」である場合、実質的に「B」(ここで、「B」は、1つ以上の混入したタンパク質、DNA分子、ベクターなどを含む)を含まない。好ましくは、「A」は、組成物中に少なくとも約90重量%のA+B種、最も好ましくは少なくとも約99重量%を含む。組成物(実質的に汚染物を含まない)が、目的の種の活性または特徴を有する単一分子量種のみを含むことがまた好ましい。
【0050】
本発明に従って、本発明の薬学的組成物中に処方されるエストロゲン化合物は、非経口的に、経粘膜的(例えば、経口的に(orally)(経口的に(per os))、鼻腔に、または結腸に)または経皮的に導入され得る。非経口経路としては、静脈内投与、小動脈内投与、筋肉内投与、皮内投与、皮下投与、腹腔内投与、心室内投与、および頭蓋内投与が挙げられる。好ましくは、投与は経口的である。
【0051】
別の実施形態において、治療的化合物は、小胞(特にリポソーム)で送達され得る(Langer,Science 249:1527−1533(1990);Treatら,Liposomes in the Therapy of
Infectious Disease and Cancer,Lopez−Berestein and Fidler(編),Liss:New York,353−365頁(1989);Lopez−Berestein,同書、317−327頁;一般的には同書を参照のこと)。その全身的な副作用を低減するために、これは、化合物を導入するための好ましい方法であり得る。
【0052】
なお別の実施形態において、治療的化合物は、制御放出系で送達され得る。例えば、ポリペプチドは、連続ポンプを用いる静脈内注入を使用して、ポリ−乳酸/グルタミン酸(PLGA)のようなポリマーマトリックス、皮下に移植されたコレステロールとエストロゲン化合物との混合物を含むペレット(SilasticRTM;Dow Corning,Midland,MI;米国特許第5,554,601号を参照のこと)、移植可能な浸透ポンプ、経皮パッチ、リポソーム、または他の投与様式で投与され得る。1つの実施形態において、ポンプが使用され得る(Langer,前出;Sefton,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201(1987);Buchwaldら,Surgery 88:507(1980);Saudekら,N.Engl.J.Med.321:574(1989)を参照のこと)。別の実施形態において、ポリマー材料が使用され得る(Medical Applications of Controlled Release,LangerおよびWise(編),CRC Press:Boca Raton,Florida(1974);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,Smolen and Ball(編),Wiley:New York(1984);RangerおよびPeppas,J.Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61(1983)を参照のこと;Levyら,Science 228:190(1985);Duringら,Ann.Neurol.25:351(1989);Howardら,J.ENeurosurg.71:105(1989)もまた参照のこと)。なお別の実施形態において、制御放出系は、治療標的(すなわち、脳)の近傍に配置され得、それにより、全身投与の画分のみしか必要としない(例えば、Goodson,Medical Applications of Controlled Release,前出,第2巻、115−138頁(1984)を参照のこと)。好ましくは、制御放出デバイスは、被験体内のアミロイドーシスの部位の近傍にに導入される。他の制御放出系は、Langerによる概説(Science 249:1527−1533(1990))で議論される。
【0053】
(投薬量およびレジメン)
エストロゲン化合物の一定供給は、治療的有効用量(すなわち、被験体において代謝変化を誘発するのに効果的な用量)を、必要な間隔(例えば、毎日、12時間毎など)で与えることにより確実にされ得る。これらのパラメータは、処置される疾患状態の重篤度、実行される他の作用(例えば、食事改変)、被験体の体重、年齢、および性別、ならびに当業者により標準的な適正医療行為(good medical practice)に従って容易に決定され得る他の基準に依存する。好ましくは、エストロゲン化合物は、少なくとも10日間、より好ましくは少なくとも100日間、そしてより好ましくはレシピエントの生存中投与され得る。
【0054】
用語「の開始を予防する」は、疾患または障害をもたらす病理機構を予防的に妨害することを意味する。本発明の文脈において、このような病理機構は、APPのアミロイド形成(amyloidogenic)形態のプロセシングの増加;Aβクリアランスの調節不全;またはこれら2つのいくつかの組合せであり得る。用語「改善する(ameliorate)」は、疾患または障害に関連する状態の改善を生じることを意味する。本発明の文脈において、改善としては、Aβレベルの減少、Aβの形成の調節、Aβの凝集の減少もしくはアミロイド斑の形成の減少、またはアミロイドーシスに関連する疾患または障害(例えば、アルツハイマー病またはアルツハイマー病の動物モデル)に罹患する被験体における認知欠損の改善が挙げられる。句「治療的有効量」または「用量」は、本明細書中において、アミロイドペプチドのレベルを、例えば、約10%、好ましくは約50%、そしてより好ましくは約90%減少させるのに十分な量または用量を意味するために使用される。好ましくは、治療的有効量は、活性、機能、および宿主の応答における臨床的に有意な欠損を、改善または予防し得る。あるいは、治療的有効量は、宿主における臨床的に有意な状態の改善を生じるために十分である。
【0055】
アミロイドーシスに関連する疾患または障害の「発症の増加した危険性を有する」被験体は、家族性アルツハイマー病(FAD)のメンバーを有するファミリー由来の人物のように、アミロイドーシスの発症に対する遺伝的素因を有し得る。あるいは、70歳代または80歳代の人物は、加齢性ADについてより高い危険性にある。
【0056】
アミロイドーシスに関連する疾患または障害「の症状を示す」被験体は、このような疾患または障害を有するかまたは有していた被験体において見出される症状または症訴を提示する。例えば、アルツハイマー病において、これらの症状としては、上記で議論されるように、50歳代および60歳代における痴呆の発生、記憶欠損などが挙げられ得る。
【0057】
「Aβレベル減少用量」は、例えば、上記で試験動物について述べられるように、Aβのレベルの減少をもたらすエストロゲン化合物の量である。レシピエントがヒト、処置を必要とする動物、または実験動物のどれであるかに依存して、投薬量は、1日あたり体重1kgあたり約0.5μg(μg/kg)〜約50mg/kg;好ましくは約5μg/kg〜約10mg/kgの範囲であり得る。Aβのレベルを減少させるために使用されるエストロゲン化合物の量は、エストロゲン化合物を投与された動物と同じ種の受胎した雌性動物におけるエストロゲンのレベルに対応する量であり得る。エストロゲンの生理学的活性は周知であり、かつ決定され得る。「受胎した動物」または「インタクトな動物」は、精巣摘除術を受けていない動物、より詳細には、卵巣摘出術を受けていない動物である。
【0058】
「そのレベルに対応する量」とは、エストロゲン化合物の濃度がエストロゲンの薬理学的濃度と同じ活性を有することを意味する。
【0059】
種々の特定の投薬量が意図される。下記実施例においてモルモットに投与される1mg/kg用量および5mg/kg用量は、上記のように非常に高いが、このような投薬量は、動物モデルにおいて受容可能であり得る。一般に、上記のように、最小投薬量は、アミロイドペプチドのレベルの減少を誘導するに有効な投薬量である。最大投薬量は、過度の副作用を経験することなくレシピエントに許容される投薬量である。
【0060】
特定の実施形態において、エストロゲン化合物が結合体化ウマエストロゲンの組成物(例えば、PREMARIANTM)である場合、その投薬量は、ヒト患者において約0.300mg/kg/日〜約2.5mg/kg/日の範囲であり得る。代表的な投薬量は、0.3mg、0.625mg、1.25mg、および2.5mgである。上記のように、種々のエストロゲン化合物の同等に有効な量が、使用され得る。
【0061】
別の特定の実施形態において、エストロゲン化合物は、非女性化エストロゲンであり、これは、望ましくない副作用を引き起こさないので、かなりより多くの投薬量で投与され得る。この実施形態において、この投薬量は、約0.500mg/kg〜約100mg/kgの範囲であり得、好ましくは約50mg/kgまでであり得、そしてより好ましくは、約10mg/kg〜40mg/kgであり得る。特定の実施形態において、この非女性化エストロゲン化合物は、Raloxifeneである。別の特定の実施形態において、プロゲスチンとエストロゲンとの組み合わせ、抗プロゲスチンとエストロゲンとの組み合わせ、および非女性化エストロゲンとエストロゲンとの組み合わせもまた、使用され得る。
【0062】
エストロゲン化合物の投与がアミロイドーシスに付随する疾患または障害についての有効な治療レジメンである被験体は、好ましくはヒトであるが、臨床試験またはスクリーニング実験または活性実験の状況で、実験室動物を含む任意の動物であり得る。従って、当業者により容易に認識され得るように、本発明の方法および組成物は、特に、ヒト、そして以下を含むがこれらに限定されない任意の動物への投与に、すなわち、獣医学用途に、特に適している:家庭動物(domestic animal)(例えば、ネコ被験体またはイヌ被験体)、農場動物(farm animal)(例えば、ウシ被験体、ウマ被験体、ヤギ被験体、ヒツジ被験体、およびブタ被験体を含むが、これらに限定されない)、野生動物(野生にあろうが、または動物園にあろうが)、研究動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコなど)、鳥類(例えば、ニワトリ、七面鳥、鳴鳥など)。
【実施例】
【0063】
(実施例)
本発明は、以下の実施例を参照することによってより良く理解され、この実施例は、本発明を例示として提供され、限定のためには提供されない。
【0064】
(実施例1:卵巣摘出および17β−エストラジオールは、脳におけるアミロイドβペプチドのレベルを調節する)
本実施例は、エストロゲンが、アミロイド−βレベルに正の影響を与えることを示し、そしてAβ形成を処置するための薬物の評価を提供する卵巣摘出モルモットモデルを提供する。
【0065】
(材料および方法)
(動物の維持および処理)卵巣摘出(ovx)雌性モルモットおよび完全な雌性モルモットを、Hilltop Laboratories(Scottsdale、PA)から購入した;ovx動物は、手術時に8週齢であった。17β−エストラジオール(E2)を、Sigma(St.Louis、MO)から購入した。この研究を通じて、動物に、制御された光環境(12時間/12時間の光/暗周期)において任意の餌を与えた。手術後、ovxモルモットを、ダイズを含まないカゼインベースの食餌(Purina、Richmond、IN)に食餌制限し、食事におけるフィトステロイドの存在を排除した。完全な動物にもまた、約8週齢にて、ダイズを含まない食物を与え始めた。ダイズを含まない食餌開始の8週間後、動物を以下の4つの群に分けた:完全(n=8)、ii)ovx(n=9、iii)ovx+低用量E2処理(1mg E2/kgBW)(n=9)、およびiv)ovx+高用量E2処理(5mg E2/kgBW)(n=8)(kgBWは、体重kgである)。E2を、このホルモンをダイズを含まない固形飼料中に粉末にすることによって、経口投与した。処理の開始前に、全ての動物を計量した。この特定の食餌を使用する各動物の一日の平均食餌摂取量を、予備実験で決定した。この動物に、ダイズを含まない食餌(完全群およびovx群)またはE2を補充したダイズを含まない食餌(ovx+低用量E2処理、およびovx+高用量E2処理)を10日間与えた。
【0066】
(組織収集)処理の終わりに、すべての動物を断頭により屠殺した。体幹血を、ラジオイムノアッセイ(Diagnostic Products Laboratory)による血清中のE2レベルの決定のために収集した。子宮を取り出し、そして計量して、E2誘導性肥大を証明した。脳をすぐに取り出し、そして各脳から小脳を解剖して離した。脳の残りを半球に分割し、これらを瞬間凍結して−80℃で貯蔵した。
【0067】
(脳抽出物の調製)脳由来の可溶性タンパク質を、確立されたプロトコル(Savageら、J.Neurosci.1998,18:1743〜52)の改変形を使用して回収した。簡単に述べると、半球を、Dounceホモジナイザー5〜6ストロークで、0.2%ジエチルアミン(DEA)/50mM NaCl(1:10重量/体積比)中でホモジナイズした。このDEAホモジネートを、100,000gで90分間遠心分離した。このDEA上清を、1/10容量の0.5M Tris−Cl(pH6.8)の添加によってpH約8.0に中和し、次いで等分しそして瞬間凍結した。このDEA抽出物のペレットを、プロテアーゼインヒビターのカクテル(「Complete」、Boehringer Mannheim、Germany)を含む2% SDS/PBS中で可溶化し、超音波処理し、そしてボイルした。このDEA上清およびSDS上清のタンパク質濃度を、BCA試薬アッセイキット(Pierce、Rockford、IL)を使用して決定した。
【0068】
(sAPRα、flAPP、Aβ40およびAβ42の検出)モルモット由来のAPPのアミノ酸配列は、ヒトAPPホモログと97%同一であり、そしてAβ領域は、ヒトAβ(Beckら、Biocim.Biophys.Acta、1997、1351:17〜21)と100%同一であり、従って、APP代謝に対するエストロゲンの効果を研究するために十分に特徴付けられたAβ抗体を使用することが可能である。
【0069】
可溶性APPα(sAPPα)を、モノクローナル抗体6E10(Senetek、St.Louis、MO)(これは、Aβ領域からの残基5〜10を認識する)を使用して、このDEA抽出物由来のタンパク質のウェスタンブロットにより検出した。このDEA抽出は、可溶性だが膜に包理されていないタンパク質を回収し、sAPPαの検出によるflAPPの干渉を除外した(Savageら、前出)。
【0070】
sAPPαのレベルに対するE2の効果の検出のために、この種を検出するために6E10を使用するウェスタンブロットを、各脳のDEA抽出物からの3連のサンプル(50μg/レーン)に対して行った。増強した化学発光を使用して、可視化を行った。定量のために、このイムノブロットの複数の曝露を、ScanAnalysisソフトウェアを使用してスキャンした。次いで、各サンプルの平均値(濃度単位)を、flAPPについて得られた値に対して標準化した。全長APPレベルを、抗体369(これは、APPの細胞質テール(残基645〜695)におけるエピトープを認識する;Buxbaumら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1990、87:6003〜6006)を使用する、SDS抽出物(50μg/レーン)のイムノブロッティングによって決定した。また、サンプルを3連で分析し、そしてこのイムノブロットの複数の曝露の濃度分析を実施した。
【0071】
Aβ40のレベルおよびAβ42のレベルを、Aβ40特異的ELISAアッセイおよびAβ42特異的ELISAアッセイ(Mehtaら、Neurosci.Lett.1998、241:13〜16)により決定した。各動物について、Aβ40のレベル、Aβ42のレベルおよび総Aβのレベルを、脳組織重量に対して標準化し、そしてng(Aβ)/g(脳組織湿重量)として表した。すべての実験において、組織収集前に動物を符号化し、そして各動物の処理状態は、アッセイ時点で調査者には未知であった。
【0072】
(統計学的分析)分析した各パラメータについて、完全群またはovx+E2群のいずれかについて得られた値を、片側(one tailed)スチューデントt検定を使用して、ovx動物について得られた値と比較した。総Aβレベルにおける差異(i)完全群とovx群との間の差異、ii)ovx群と低用量E2群との間の差異、およびiii)ovx群と高用量E2群との間の差異)もまた、マン−ホイットニーノンパラメトリック検定を使用して評価した。
【0073】
(結果)
最初に、卵巣摘出(ovx)されたモルモットにおける脳Aβレベルに対する、経口投与された17β−エストラジオール(E2)の効果を評価した。7匹のovxモルモット(ovx時で8週齢)を使用した。ovx後、これらの動物に、無ダイズのカゼインベースの食餌を与え、エストロゲンフィトステロイドの消費を回避した。ovxの8週後、これらの動物を、以下の2つの実験セットに分けた:ovxグループ(n=3)、およびovx+E2グループ(1mg E2/1kg体重(BW)/日;n=4)。E2を、このホルモンを無ダイズ固形飼料に粉末化することによって経口投与した。ovx+E2動物を、10日間処置した。処置後、全ての動物を屠殺し、そして血液、子宮および脳を、分析用に収集した。子宮重量および血清E2レベルを測定し、このホルモン状態を検証した。脳組織におけるAβ40、Aβ42、およびsAPPαのレベルを、方法に記載されるように、それぞれ、Aβ40およびAβ42特異的ELISAアッセイ、ならびに定量的免疫ブロッティングを使用して測定した。
【0074】
予測されたように、E2の10日間の経口投与は、ovxグループと比較した場合に、ovx+E2グループにおける子宮の肥大および血清E2レベルの劇的な増加を導いた(子宮重量で3倍以上の増加、p=0.0003、そして血清E2レベルで5倍以上の増加、p<0.00001)。さらに、E2処置は、脳Aβのレベルの減少(総Aβレベルで20%の平均的減少)に相関するようであり、これは、ほぼ統計的に有意である(p=0.09)。sAPPαのレベルは、ovxグループとovx+E2グループとの間では区別可能でなかった(p=0.5)。
【0075】
第2の実験を、脳Aβレベルに対する長期(10週間)ovxの効果ならびに低用量または高用量のE2を使用するovx動物の脳におけるAβに対する短期(10日間)のE2置換の効果を調査するために行った。この幅広い研究は、以下の4グループの動物を使用した:インタクトグループ(n=8)、ovxグループ(n=9)、ovx+低E2グループ(1mg/kg BW/日)(n=9)、およびovx+高E2グループ(5mg/kg BW/日)(n=8)。これらの処置(ovx+E2)は、第1の実験にように行った:ovx後8週目に、ovx+低E2およびovx+高E2の動物の固形飼料に、10日間E2を与えた。このE2処置の終了時に、全ての動物を、断頭によって屠殺し、そして血液、子宮および脳を単離し、そして分析に供した。
【0076】
長期のovxは、同じ年齢のインタクトな動物と比較した場合の、血清E2レベルの減少に関連した(図1A;表)。低用量E2(1mg E2/kg BW/日)または高用量E2(5mg E2/kg BW/日)での10日間の置換は、ovxグループまたはインタクトグループのいずれかと比較した場合に、血清E2レベルにおける用量依存性の増加を導いた(図1A;表)。インタクトな動物の血清E2レベルについての値は、様々であった:いくらかは、ovx動物の血清E2レベルに匹敵し、一方、いくらかは、ovx+低用量E2動物の血清E2レベルに匹敵した。この変動性は、インタクトな動物の正常な非同期性周期の典型である(Shiら、Biol.Reprod.,1999,60:78−84)。高用量E2処置は、超生理学的レベルの血清E2を生じた(図1A;表)。
【0077】
(表)
(インタクト、ovx、ovx+低用量E2グループの血漿E2レベル、子宮重量、総AβレベルおよびAβ42/Aβ40の比率に対する中央値および平均+/−SEM)
【0078】
【表1】


ovx動物の子宮は、インタクトグループの動物の子宮と比較して、萎縮性であった:平均して、ovx動物由来の子宮は、インタクトな動物由来の子宮重量の、3分の1未満の重量であった(図1B;表)。10日間の低用量のE2を受けたovx動物の子宮は、肥大し、そしてインタクトグループの重量に匹敵するかまたはより高い重量を有した(図1B)。高用量E2処置もまた、子宮肥大に関連したが、子宮重量は、ovx+低用量E2グループの重量を超えなかった(図1B;表)。
【0079】
この10週間のovxは、インタクトな動物と比較した場合の、脳Aβレベルの増加に関連した(総Aβにおける1.5倍の平均増加;p<0.0001)(図2A;表)。Aβ42のレベルは、Aβ40のレベルより高い程度に増加したことが注目される(Aβ42について1.8倍の平均増加;p<0.0001、およびAβ40について1.5倍の平均増加;p<0.00001)(図2B、2C)。これは、インタクトグループと比較した場合の、ovxグループにおけるAβ42/Aβ40の比率の増加を生じた(1.3倍の平均増加;p<0.001)(表)。
【0080】
ovx後8週目に開始した10日間の低用量E2でのovxモルモットの処置は、総脳Aβレベルのovx誘導性上昇の部分的逆転に関連した(18%の平均減少;p<0.01)(図2Aおよび表)。Aβ40およびAβ42レベルは、同程度に減少した(Aβ40について18%の平均減少;p<0.01、およびAβ42について21%の平均増加;p=0.033)(図2B、2C)。高用量のE2処置(5mg/kg BW/日)は、同様の効果を有したが、いかなるAβ種におけるさらなる減少を生じなかった(図2:表)。興味深いことに、いずれかのE2処置グループにおけるE2を受けた少数の個々の動物において、脳Aβのレベルが、インタクトグループ由来の動物において観察されるレベルと同様であったかまたはより低かった(図2B、2C)。10日間のE2処置(低用量および高用量の両方)は、平均のAβ42/Aβ40の比率を変化しなかった(表)。しかし、これらのE2処置グループ由来の少数の個々の動物についてのAβ42/Aβ40は、インタクトグループ由来の動物において観察された比率に匹敵したことが注目される。
【0081】
sAPPαのレベルは、ovxまたはE2置換によって影響されなかった(図3)。sAPPαに対するこの効果は、Aβペプチドのエストロゲン誘導性の低下が、細胞培養培地中のsAPPαレベルの増加を伴ったという、細胞培養研究(Xuら、Nat.Med.,1998、4:447−51)からのデータと対照的であった。本発明者らの知見と同様に、そしてまた、細胞培養研究とは対照的に、sAPPαレベルは、インビボでのホルボールエステルでの処置に応答して不変なままであった(Savageら、J.Neurosci.,1998,18:1743−52)。これは、インビボでの脳において、培養細胞において観察されたAβペプチドとsAPPα放出との間の相互関係が、それほど明確ではないかまたは存在しないかもしれないことを示唆する。
【0082】
(考察)
これらは、脳におけるAβのレベルが性腺ホルモンの制御下にあることを示す、最初のデータである。より詳細には、本発明者らは、長期の子宮摘出が、インビボでの脳Aβ40およびAβ42のレベルの増加に関連すること、およびこの増加が、10日間のE2置換によって少なくとも部分的に逆転され得ることの証拠を提示する。これらのデータはさらに、Aβ40に対するAβ42の比率が、ovxモルモットとコントロール動物との間で異なりこと、およびAβ42のレベルが、Aβ40のレベルよりも高い程度に増加し、これが、Aβ42/Aβ40比率の増加を生じることを示す。これは、Aβ42形成が、エストロゲンによって、Aβ40の形成よりもより高い程度に調節されることを示唆する。さらに、これらのデータの統計的差異が、p=0.25であったが、E2置換は、この不均衡(平均Aβ42/Aβ40の比率を0.15から0.141に減少する)を相殺し得る。従って、ovxモルモットは、エストロゲンの影響を評価するための有用な動物モデルおよびインビボでの脳Aβ代謝に対する「デザイナー」エストロゲン様化合物を提示する。
【0083】
本発明者らの研究は、卵巣摘出およびE2置換に応答するAPP代謝の定常状態レベルのアッセイを含んだので、本発明者らは、Aβレベルの変化が、Aβの生成またはAβのクリアランスのいずれを反映するかを区別することができなかった。また、このAβ代謝に対する観察された効果が、脳エストロゲンレセプターの活性化に応答して生じるか否か、またはこれらが、エストロゲンレセプター非依存性機構によって媒介されるか否かは決定されていないままである。
【0084】
閉経後の女性の卵巣エストロゲン産生の停止は、Aβ40およびAβ42の局所濃度を増加させることによってAβ沈着を促進し得る。プラーク形成トランスジェニックマウスに対する関連する研究の結果(これは、長期のovxが脳Aβレベルの上昇を加速することを示す)は、この仮説を支持する。エストロゲン処置が、脳Aβレベルの減少に関連するという本発明者らの知見は、Aβ代謝の調節が、エストロゲンが閉経後の女性におけるADの発症を予防および/または遅延する方法の1つであることを示唆する。
【0085】
閉経後の女性における認知機能のエストロゲン関連保存が、エストロゲンの複数の活性から生じる可能性が依然として存在する。これらの活性には、例えば、基底の前脳コリン作動性ニューロンに対する刺激支持の提供(Luine,V.,Exp.Neurol.,1985,89:484−490)、軸索成長およびシナプス形成の刺激(McEwenおよびWolley、Exp.Gerontol.,1994,29:431−436)、アポリポタンパク質E発現の刺激(Srivastavaら、J.Biol.Chem.,1997,272:3360−33366;Stoneら、Exp.Neurol.,1997,143−313−318)ならびに/あるいは酸化ストレスおよびAβ誘導性毒性からのニューロンの保護(Gridleyら、Brain Res.,1997,778:158−165)が挙げられる。しかし、これらは、エストロゲンが、生存動物の脳におけるAβレベルに対する効果を有することを示す最初のデータである。
【0086】
本発明のインビボ系の利用能は、生理学的状態下(すなわち、モルモット)および病態生理学的状態下(すなわち、プラーク形成トランスジェニックマウス)でのエストロゲンのこれらの各々の神経活性(neuroactivity)の研究を可能にし、そしてこの問題の実験的分析を容易にする。
【0087】
(実施例2:卵巣摘出および17β−エストラジオールがAPPトランスジェニック齧歯目におけるアミロイドβペプチドのレベルを調節する)
本実施例は、エストロゲンが、ヒトAPPについて(そして好ましくは、プレセニリン1またはプレセニリン2について同様に)トランスジェニックにされた齧歯目におけるAβ産生にポジティブに影響することを示す。
【0088】
(材料および方法)
(トランスジェニックAPPおよびAPP/PS齧歯目) アルツハイマー病に関連するトランスジェニック動物が、総説されてきた(SeabrookおよびRosahl,Neuropharmacology,1999,38:1−17;Detailed Description、前出を参照のこと)。マウスおよびラットの両方を、APP、PS1およびこれら両方の遺伝子について、これらの遺伝子の野生型およびFAD変異体形態を用いて、トランスジェニックにした。これらの動物の1グループを、卵巣摘出する。17β−エストラジオール(E2)を、Sigma(St.Louis,MO)から購入した。動物に、実施例1に記載のように、カゼインベースの無ダイズ食餌を使用して、制御された照明環境下で自由に与える。無ダイズ食餌の8週後に、動物を以下の4つのグループに分けた:i)インタクトな動物;ii)ovx動物;iii)低用量E2処置を受けるovx動物;ならびにiv)高用量E2処置を受けるovx動物。E2を、無ダイズ固形飼料にこのホルモンを粉末化することによって、経口投与する。全ての動物を、処置開始前に体重測定した。平均的な1日あたりの食餌摂取量を、同様に、処置前に決定する。動物に、E2を補充した無ダイズ食餌を10日間与え;コントロール動物には、E2補充なしの食餌を与える。
【0089】
(組織収集) 処置後、全ての動物を、断頭によって屠殺する。体幹の血液を、E2レベルの測定のために収集する。子宮を取り出しそして重量を測って、エストロゲン欠損に起因する萎縮またはE2誘導性の肥大の存在を確かめる。脳を、直ちに取り出し、そして小脳を切除する。脳を、半球に分け、これらを、スナップ凍結しそして−80℃で保存する。
【0090】
(脳抽出物の調製) 脳由来のサンプルタンパク質を、実施例1に記載のプロトコルを使用して回収する。タンパク質濃度を、BCA試薬アッセイキット(Pierce,Rockford,IL)を使用して測定する。
【0091】
(sAPPα、flAPP、Aβ40およびAβ42の検出) これらの動物は、ヒトAPPについてトランスジェニックであるので、よく特徴付けられたAβ抗体を使用して、APP代謝に対するエストロゲンの効果を研究し得る。可溶性APP(sAPPα)を、実施例1に記載のように、モノクローナル抗体6E10を使用する、DEA抽出物由来のタンパク質のウエスタンブロッティングによって検出する。全長APP(flAPP)レベルを、実施例1に記載のように、抗体369を使用する、SDS抽出物の免疫ブロッティングによって測定する。Aβ40およびAβ42のレベルを、実施例1に記載のように、特異的ELISAによって測定する。
【0092】
全ての実験において、動物を、組織収集の前にコード化し、そして各動物の処置状態は、アッセイの時点で研究者に対して未知である。
【0093】
(統計的分析) 各分析ペリメーターについて、例えば、片側スチューデントp検定を使用して、インタクトグループについて得られた値をいずれか卵巣摘出グループに比較し、E2処置グループの値を、卵巣摘出したグループからの得られた値と比較する。総Aβレベルにおける差異を、インタクトグループと卵巣摘出グループとの間で、および卵巣摘出グループと低用量および高用量E2グループとの間で評価する。これらのデータはまた、マン−ホイットニーノンパラメトリック検定を使用して評価し得る。
【0094】
(結果および考察)
E2の経口投与は、未処置の卵巣摘出グループと比較して、卵巣摘出動物における子宮の肥大および血清E2レベルの劇的な増加を導く。卵巣摘出は、Aβのレベルの増加を生じる。E2処置は、卵巣摘出動物における脳Aβのレベルの減少と相関し、これは、インタクトな動物に見出されたレベルに接近する。これらのデータは、短期および長期の実験の両方において得られる。
【0095】
これらのデータは、脳におけるAβのレベルが、性腺ホルモン(特に、女性の性腺ホルモン)の制御下にあることを確証する。
【0096】
(実施例3:Aβ阻害性化合物を試験するための卵巣摘出動物の使用)
実施例1に記載の卵巣摘出モルモットモデルまたは実施例2に記載の卵巣摘出トランスジェニック齧歯目モデルを使用して、化合物をスクリーニングし得るか、またはより最適には、これらの動物の脳におけるAβレベルに影響する能力についてのスクリーニングより得られた候補化合物を評価し得る。Aβレベルは、実施例1および2、前出に記載された方法を使用して評価し得る。
【0097】
性腺ホルモンは、この方法で試験され得る1つのタイプの化合物である。これらのホルモンは、経口的または非経口的に投与され得る。Aβレベルに影響することが推測される他の化合物もまた試験され得。なぜなら、卵巣摘出動物の使用は、ウインドウ対ノイズ比またはシグナル対ノイズ比の増加を伴うモデル提供するからである。
【0098】
本発明は、本明細書中に記載の特定の実施形態によって範囲を限定されない。実際、本明細書中に記載した実施形態に加えて、本発明の種々の改変が、前述の説明および添付の図面から当業者に明らかとなる。このような改変は、添付の特許請求の範囲内にあることが意図される。
【0099】
全てのサイズおよび全ての重量および質量値は、およそのものであり、そして説明のために提供されていることが、さらに理解される。
【0100】
本出願を通して引用される特許、特許出願、手順および刊行物は、それらの全体が参考として本明細書中に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】図1Aおよび1Bは、血清エストラジオールレベル(図1A)および子宮重量(図1B)に対する卵巣摘出およびE2処置の効果を示す。動物細胞は:i)インタクトのモルモット(インタクト)、ii)8週齢で卵巣摘出され、10週後に屠殺されたモルモット(ovx)、および8週齢で卵巣摘出され、そして10日の間、iii)低用量のE2(1mgE2/kgBW/日のE2)またはiv)高用量のE2(5mgE2/kgBW/日のE2)で処置されたモルモット、を用いた。それぞれの場合において、E2処置は、卵巣摘出後8週目に開始した。横棒は中央値を示す。
【図2】図2A、2B、および2Cは、脳Aβレベルに対する卵巣摘出およびE2置換の効果を示す。Aβ40レベルおよびAβ42レベルを、DEA脳抽出物のELISAアッセイにより決定した。各動物についての総Aβ値(図2A)および総Aβ40値(図2B)(4回の読み取りの平均)を、脳組織重量(g)に対して規格化し、ng(Aβ)/g(湿重量)で示した。横棒は、中央値を示す。Aβ42レベルを、各動物について算出し、そして平均±SEM値を各動物セットについて決定した(図2C)。
【図3】図3は、脳内sAPPαレベルに対する卵巣摘出およびE2処置の効果を示す。sAPPαレベルは、対応するflAPP値に対して標準化された6E10抗体を用いる。DEA抽出物の定量ウェスタンブロットにより決定した。各動物グループについて、平均±SEM値を決定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体におけるアミロイドーシスの増加した可能性を予測するためのキットであって、該キットは、
該被験体においてエストロゲン化合物のレベルを観察するための手段;
を備え、正常レベルまたは該被験体の初期時のレベルと比較した場合の該被験体における該エストロゲン化合物のレベルの減少が、該被験体におけるアミロイドーシスの増加した可能性の指標であるキット。
【請求項2】
前記エストロゲン化合物が、エストロゲンβ17である、請求項に記載のキット。
【請求項3】
前記エストロゲン化合物が、芳香族化可能なアンドロゲンである、請求項に記載のキット。
【請求項4】
前記アミロイドーシスが、Aβペプチドの沈着を含む、請求項に記載のキット。
【請求項5】
アルツハイマー病の発症の増加した可能性を予測するための手段を備える、請求項に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−58329(P2008−58329A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−285586(P2007−285586)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【分割の表示】特願2001−536585(P2001−536585)の分割
【原出願日】平成12年11月3日(2000.11.3)
【出願人】(502161704)ワイス (51)
【出願人】(502161715)リサーチ ファウンデーション フォー メディカル ハイジーン (1)
【Fターム(参考)】