説明

アルカリ土類金属イオン含有ゼオライトの製造方法

【課題】アルカリ土類金属イオン含有ゼオライトの新規な製造方法を提供する。
【解決手段】次の工程を含むアルカリ土類金属イオン含有ゼオライトの製造方法。(1)アルカリ金属イオン含有アルミノシリケートアモルファスゲルを合成する工程。(2)(1)の工程で得られたアモルファスゲルをアルカリ土類金属イオンで交換して、アルカリ土類金属イオン含有アモルファスゲルを作製する工程。(3)(2)の工程で得られたアルカリ土類金属イオン含有アモルファスゲルを密閉容器中で加熱、結晶化してアルカリ土類金属イオン含有ゼオライトを得る工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ土類金属イオン含有ゼオライトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成ゼオライトは特定の大きさを有する分子のみを吸着する分子ふるい吸着剤や親和力の強い分子を吸着する吸着分離剤又は触媒基剤として工業的に利用されている。そのようなゼオライトの一つにフェリエライト型ゼオライトがある。フェリエライト型ゼオライトは天然にも産出するゼオライトであるが、稀少種の一つであり合成法が種々提案されている。一般的な方法はアルカリ金属水酸化物を用いる方法であり、そのような方法は特許文献1及び2に記載されている。これらの方法によれば、SiO2/Al23比が10〜20の範囲のフェリエライトが得られる。フェリエライトを吸着剤や触媒として用いる際には特性を最適化するため、結晶のアルミノシリケート骨格の負イオンと電荷バランスして結合しているアルカリ金属イオンを他のイオンに交換する必要がある。プロトンに交換することは比較的容易であるが、二価金属イオン、特にアルカリ土類金属イオンはフェリエライトの細孔径よりも水和イオンの大きさが大きいので、イオン交換により置換することが困難である。
【0003】
また、アルカリ土類金属イオンを含むフェリエライト型ゼオライトの合成法としては、特許文献3及び特許文献4並びに非特許文献1に記載の方法が知られている。しかしながらこれらの方法においては、アルカリ土類金属イオンを原料の一つとして反応混合物を調製し、アルカリ性水溶液中で加熱して結晶化させるため、アルカリ金属水酸化物が不純物としてフェリエライト型ゼオライトに同伴し易いという欠点を有する。したがって、不純物を同伴せず、かつ結晶のアルミノシリケート骨格の負イオンと電荷バランスして結合しているアルカリ土類金属イオンを含有するフェリエライトを従来技術により合成することは困難である。また、特許文献3及び4に記載された方法では、種結晶の添加が必須条件である。
【0004】
【特許文献1】特公平3−9971号公報
【特許文献2】特公平3−45009号公報
【特許文献3】米国特許第3,966,883号明細書
【特許文献4】米国特許第4,088,739号明細書
【特許文献5】R.M. Barrer and D.J. Marshall, J. Chemical Society 2296-2305 (1964)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る、アルカリ土類金属イオン含有ゼオライトの新規な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、次の工程を含むアルカリ土類金属イオン含有ゼオライトの製造方法を提供するものである。
(1)アルカリ金属イオン含有アルミノシリケートアモルファスゲルを合成する工程。
(2)(1)の工程で得られたアモルファスゲルをアルカリ土類金属イオンで交換して、アルカリ土類金属イオン含有アモルファスゲルを作製する工程。
(3)(2)の工程で得られたアルカリ土類金属イオン含有アモルファスゲルを密閉容器中で加熱、結晶化してアルカリ土類金属イオン含有ゼオライトを得る工程。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法によれば、アルカリ土類金属イオンをゼオライト中に自在に含有させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の製造方法は、上述のとおり(1)ないし(3)の三工程に大別される。これらの工程のうち、最も特徴となる工程は、アルカリ金属とアルカリ土類金属とのイオン交換を、アルミノシリケートのアモルファスゲルの状態で行う点にある。この操作によって、これまで導入が困難とされてきたアルカリ土類金属イオンをゼオライト中に容易に導入することができる。この特徴を含め、それぞれの工程について以下に説明する。
【0009】
(1)の工程においては、一般的なアルカリ金属含有ゼオライトを合成する場合と同様に、アルカリ金属水酸化物、Si源、Al源及び水を含む反応混合物をオートクレーブ等の密閉容器中で加熱し、アルカリ金属イオン含有アルミノシリケートアモルファスゲルを合成する。本発明におけるアモルファスゲルは、低重合度のアルミノシリケートからなる。アモルファスゲルとは、X線回折図において、結晶性物質の回折線が全く観測されず、かつゲル状態のものを言う。したがって、アモルファス状態ではあるが固体のガラス状のものや、ゲル状態ではあるが結晶化しているものは、本発明に言うアモルファスゲルに含まれない。
【0010】
アモルファスゲルを合成する原料は、ゼオライトを合成するために一般的に使用される原料と同じものである。具体的には、アルカリ金属イオン源としては水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物が用いられる。Si源としては珪酸ナトリウムや珪酸カリウム、アモルファスシリカ粉末などが用いられる。Al源としては水酸化アルミニウムやアルミン酸ナトリウムなどが用いられる。アモルファスゲルの合成の当初からアルカリ土類金属イオンを反応系に添加すると、反応系の高pHに起因してアルカリ土類金属イオンが水酸化物として沈殿してしまうので、アモルファスゲル中にアルカリ土類金属イオンを導入することはできない。
【0011】
得られるアモルファスゲルの組成は、一般式xM2O・Al23・ySiO2・zH2Oで表される。ここでMはアルカリ金属を表し、ナトリウム、カリウムのいずれか又は混合物であることが好ましい。xの値は0.8〜2の範囲であることが好ましい。yの値は2〜1000の範囲であることが好ましい。zの値は、アモルファスゲルの取り扱いが困難でない範囲であれば特に限定されない。x及びyの値を適宜調節することで、種々のゼオライトを得ることができる。上述した各原料は、x及びyの値が上述の範囲となるように混合される。
【0012】
アモルファスゲルを合成するための加熱温度と時間は、反応液中に結晶性物質が生成しない限り特に制限されない。一例として温度は室温(20℃)〜200℃が好ましく、時間は1〜100時間程度であることが好ましい。特に温度を100〜200℃とすることで、後述する(2)の工程において、アルカリ金属イオンからアルカリ土類金属イオンへのイオン交換を首尾良く行い得るアモルファスゲルを得ることができる。
【0013】
(2)の工程においては、(1)の工程で得られたアルカリ金属イオン含有アルミノシリケートアモルファスゲルを、アルカリ土類金属イオンを含有する水溶液中に入れて、アモルファスゲル中のアルカリ金属イオンをアルカリ土類金属イオンに交換する。用いるアルカリ土類金属イオンは、目的とするゼオライトの用途に応じ、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+のいずれか一種でもよく、あるいは任意の二種以上の組み合わせでもよい。イオン交換にはアルカリ土類金属の水溶性塩、例えば塩化物、硝酸塩、酢酸塩などを用いることが好ましい。アルカリ土類金属イオンを含有する水溶液のpHは中性域、例えば6〜8であることが、アルカリ土類金属イオンが水酸化物として沈殿することを防止し得る点から好ましい。アルカリ土類金属イオンの交換率は特に限定されず、目的とするゼオライトの用途に応じ、好ましくは10〜100%の範囲から適切な範囲が選択される。
【0014】
結晶化したゼオライト中のアルカリ金属イオンをアルカリ土類金属イオンにイオン交換することは、上述のとおり、ゼオライトの細孔径とアルカリ土類金属の水和イオンの大きさとの関係から極めて困難な場合があるが、アモルファスゲル状態のアルミノシリケート中のアルカリ金属イオンをアルカリ土類金属イオンにイオン交換した後、アルカリ土類金属イオン含有水溶液中で加熱、結晶化してゼオライトを合成することは、当該技術分野においてこれまで全く知られていなかった新しい知見である。
【0015】
本工程においては、(1)の工程で得られたアモルファスゲルを、水1リットルに対して好ましくは10〜300g、更に好ましくは50〜200g添加する。一方、アルカリ土類金属イオンは、水1リットルに対して好ましくは0.05〜2モル、更に好ましくは0.1〜1モル添加する。
【0016】
本工程におけるアルカリ金属イオンをアルカリ土類金属イオンに交換する操作において、温度は臨界的な条件とはならない。したがって、この操作は一般に室温で行うことができる。また、このイオン交換の操作は、液を攪拌しながら行うことが、均一な反応を行い得る点から好ましい。
【0017】
本工程においては、上述のイオン交換の操作を二回以上繰り返してもよい。これによってイオン交換の割合を一層高めることや、二種以上のアルカリ土類金属をアモルファスゲル中に導入することができる。この場合、各回のイオン交換の操作に用いるアルカリ土類金属イオン含有水溶液として、同種のアルカリ土類金属イオンを含む同濃度の水溶液を用いてもよく、あるいは異種のアルカリ土類金属イオンを含む同濃度又は異濃度の水溶液を用いてもよい。
【0018】
(3)の工程においては、(2)の工程において得られた、アルカリ土類金属イオンを含むアモルファスゲルを結晶化して目的とするアルカリ土類金属イオン含有ゼオライトを得る。結晶化は、アルカリ土類金属イオンを含むアモルファスゲルを、オートクレーブ等の密閉容器中で所定時間加熱することで達成される。結晶化は、(2)の工程において得られたアモルファスゲルを水で洗浄してゲルに付着しているイオン類を除去し、乾燥した後に水に分散させ、更にpHを調整し、その液を加熱することで行う。あるいは、(2)の工程において得られたアモルファスゲルを液から分離せず、pHを調整し、その液を加熱することで行う。
【0019】
結晶化を効率的に行うためには、液のpHをアルカリ域に設定することが好ましい。この目的のために、(2)の工程で得られたアルカリ土類金属イオン含有アモルファスゲルを、アルカリ土類金属イオンを含み、かつpHがアルカリ域に調整された結晶化用水溶液に入れ、加熱、結晶化することが好ましい。結晶化用水溶液のpHが8〜12、特に11〜12であると、結晶化が促進され、長時間を要することなく目的とするゼオライトが得られる。
【0020】
結晶化用水溶液のpHを上述の範囲に設定するためには、例えばアルカリ土類金属の水酸化物の飽和水溶液を、結晶化用水溶液として用いればよい。特に、この飽和水溶液にアルカリ土類金属の水溶性塩を溶解させたものを結晶化用水溶液として用いることで、イオン交換を更に進行させながら、アモルファスゲルの結晶化を行うことができる。この結晶化水溶液の調製に用いるアルカリ土類金属の水酸化物とアルカリ土類金属の水溶性塩におけるアルカリ土類金属の種類は同じもでもよく、あるいは異なっていてもよい。結晶化水溶液におけるアルカリ土類金属の水溶性塩の濃度は、アルカリ土類金属イオン基準で0.05〜2モル/リットル、特に0.1〜1モル/リットルであることが好ましい。
【0021】
結晶化における液の加熱温度は100〜250℃、特に150〜200℃であることが好ましい。加熱時間は24〜1000時間、特に24〜500時間であることが好ましい。
【0022】
結晶化が完了した後、密閉容器を冷却して、結晶化用水溶液とゼオライトとをろ過によって分離する。分離されたゼオライトを水又は温水で洗浄した後、乾燥する。洗浄は洗浄水のpHが中性付近になるまで行う。乾燥は付着水がなくなる程度に行えばよい。
【0023】
以上の方法によれば、従来の技術と異なり、種結晶を添加することなく、不純物を同伴しないアルカリ土類金属イオン含有ゼオライトが得られる。特に、以上の方法によれば、フェリエライト型ゼオライトが容易に得られる。フェリエライト型ゼオライトは、3.5×4.8オングストロームの径を有する8員環と、4.2×5.4オングストロームの径を有する10員環からなるゼオライトである。フェリエライト型ゼオライトは、以下の表1に示すX線回折データ(M.M.J. Treacy and J.B. Higgins, Collection of Simulated XRD Powder Patterns for Zeolites, Published on behalf of the Commission of the International Zeolite Association, 2007, p.178-179)を有することで特徴づけられる。表1において、hklは結晶の面指数、2θはそのhkl面のX線回折角度(°)、dはそのhkl面の面間隔(Å)及びIは回折線の相対強度を示す。
【0024】
【表1】

【0025】
以上、説明したとおり、本発明によればアルカリ土類金属イオンをゼオライト中に自在に含有させることが可能となる。本発明の方法により得られたアルカリ土類金属イオン含有ゼオライトは、これを脱水することで、分子ふるい吸着剤や親和力の強い分子を吸着する吸着分離剤として用いることができる。また、触媒として用いることもできる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
【0027】
〔実施例1〕
(1)の工程
蒸留水10.476gにアルミン酸ナトリウム0.241gを溶解した後、0.5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液1.247gと、1モル/リットルの水酸化カリウム水溶液1.721gを添加して均一水溶液とした。さらに、アモルファスシリカ粉末(水澤化学製のMIZUKASIL(登録商標)P707)1.315gを添加して攪拌し均一スラリーを調製した。反応混合物の組成は下式のとおりであった。
1.6Na2O・K2O・Al23・24.6SiO2・480H2
【0028】
この反応混合物を入れたオートクレーブを30rpmで回転させながら、165℃で60時間加熱した。加熱終了後、生成物をろ過により分離し、濾液のpHが中性付近になるまで水で洗浄した。その後60℃で乾燥して粉末を得た。この粉末の粉末X線回折図を測定した結果、図1に示すように回折線は全く観測されずアモルファスゲルであることが確認された。組成分析の結果、このゲルの組成は無水換算で下式のとおりであった。
0.50Na2O・0.49K2O・Al23・12.0SiO2
【0029】
X線回折は、粉末X線回折装置(マック サイエンス社製、粉末X線回折装置 MO3XHF22)を用いて測定した。測定にはCukα線を使用し、電圧は40kV、電流は30mAとした。スキャンステップは0.02°、スキャン速度は4°/minとした。組成分析は、(株)リガク製、蛍光X線分析装置(波長分散型)ZSX100e型を用い、ファンダメンタルパラメーター法による定量分析を行った(以下、同様である)。
【0030】
(2)の工程
蒸留水1リットルに塩化バリウム2水和物24.4gを溶解して水溶液を調製した。この水溶液に(1)の工程で得られたアモルファスゲル1gを入れて分散し、容器を密閉して室温で24時間攪拌し、イオン交換を行った。その後ゲルをろ過によって分離し、次いで水洗した後、新たに調製した前と同じ組成の水溶液にゲルを入れて、再度イオン交換を行った。終了後、ろ過によってゲルを分離し、十分水洗してから60℃で乾燥してBa2+でイオン交換されたアモルファスゲルを得た。その組成は、無水換算で下式のとおりであった。
0.24Na2O・0.48K2O・0.28BaO・Al23・12.0SiO2
この物質の粉末X線回折図は、図1と同じアモルファスであった。
【0031】
(3)の工程
水酸化バリウム飽和水溶液から不溶性水酸化バリウムをろ過によって除去した水溶液を溶媒として用い、この溶媒に塩化バリウムを0.1モル/リットルの濃度となるように添加して結晶化用水溶液とした。この結晶化用水溶液のpHは11.8であった。この水溶液10gに、(2)の工程で得たBa2+交換アモルファスゲル0.2gを入れ、オートクレーブ中で攪拌せずに240℃で14日間加熱した。オートクレーブを冷却後、生成物をろ過によって分離し、十分洗浄してから60℃で乾燥した。得られた生成物の粉末X線回折図は表2及び図2に示すように、不純物を含まず、結晶性の良好なフェリエライト型ゼオライトであることが確認された。組成分析の結果、無水換算の組成は下式のとおりであった。
0.02Na2O・0.21K2O・0.78BaO・Al23・11.2SiO2
【0032】
【表2】

【0033】
〔実施例2〕
実施例1の(3)の工程において、オートクレーブを30rpmで回転させて加熱、結晶化した以外は実施例1と同じ操作を行った。得られた生成物を粉末X線回折図で確認した結果、表2及び図2と同様に、不純物を含まず、結晶性の良好なフェリエライト型ゼオライトであることが確認された。
【0034】
〔実施例3〕
(2)の工程
蒸留水1リットルに塩化ストロンチウム6水和物26.6gを溶解して水溶液を調製した。この水溶液に、実施例1の(1)の工程で得られたアモルファスゲル1gを入れて分散し、容器を密閉して室温で24時間攪拌し、イオン交換を行った。その後ゲルをろ過によって分離し、次いで水洗した後、新たに調製した前と同じ組成の水溶液にゲルを入れて、再度イオン交換を行った。終了後、ろ過によってゲルを分離し、十分水洗してから60℃で乾燥してSr2+でイオン交換されたアモルファスゲルを得た。その組成は、無水換算で下式のとおりであった。
0.29Na2O・0.48K2O・0.24SrO・Al23・11.4SiO2
この物質の粉末X線回折図は、図1と同じアモルファスであった。
【0035】
(3)の工程
水酸化ストロンチウム飽和水溶液から不溶性水酸化ストロンチウムをろ過によって除去した水溶液を溶媒として用い、この溶媒に塩化ストロンチウムを0.1モル/リットルの濃度となるように添加して結晶化用水溶液とした。この結晶化用水溶液のpHは11.7であった。この水溶液10gに(2)の工程で得たSr2+交換アモルファスゲル0.2gを入れ、オートクレーブ中で攪拌せずに240℃で14日間加熱した。オートクレーブを冷却後、生成物をろ過によって分離し、十分洗浄してから60℃で乾燥した。得られた生成物の粉末X線回折図は表2及び図2と同様に、不純物を含まず、結晶性の良好なフェリエライト型ゼオライトであることが確認された。組成分析の結果、無水換算の組成は下式のとおりであった。
0.01Na2O・0.14K2O・0.86SrO・Al23・12.0SiO2
【0036】
〔実施例4〕
実施例3の(3)の工程において、オートクレーブを30rpmで回転させて加熱、結晶化した以外は実施例3と同じ操作を行った。得られた生成物を粉末X線回折図で確認した結果、表2及び図2と同様に、不純物を含まず、結晶性の良好なフェリエライト型ゼオライトであることが確認された。
【0037】
〔比較例1〕
実施例1の(1)の工程で用いたものと同じアルミン酸ナトリウムとアモルファスシリカ粉末及び塩化バリウム二水和物と蒸留水を用いて、下記組成の反応混合物を調製した。
5.7BaCl2・Na2O・Al23・24.5SiO2・2000H2
この反応混合物をオートクレーブに入れ、240℃で14日間攪拌せずに加熱した。得られたものは図1と同様のアモルファス物質であった。
【0038】
〔比較例2〕
実施例1の(1)の工程で用いたものと同じアルミン酸ナトリウムとアモルファスシリカ粉末及び塩化ストロンチウム六水和物と蒸留水を用いて、下記組成の反応混合物を調製した。
5.7SrCl2・Na2O・Al23・24.5SiO2・2000H2
この反応混合物をオートクレーブに入れ、240℃で14日間攪拌せずに加熱した。得られたものは図1と同様のアモルファス物質であった。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施例1の(1)の工程で得られたアモルファスゲルの粉末X線回折図である。
【図2】実施例1の(3)の工程で得られたゼオライトの粉末X線回折図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程を含むアルカリ土類金属イオン含有ゼオライトの製造方法。
(1)アルカリ金属イオン含有アルミノシリケートアモルファスゲルを合成する工程。
(2)(1)の工程で得られたアモルファスゲルをアルカリ土類金属イオンで交換して、アルカリ土類金属イオン含有アモルファスゲルを作製する工程。
(3)(2)の工程で得られたアルカリ土類金属イオン含有アモルファスゲルを密閉容器中で加熱、結晶化してアルカリ土類金属イオン含有ゼオライトを得る工程。
【請求項2】
(2)の工程で得られたアルカリ土類金属イオン含有アモルファスゲルを、アルカリ土類金属イオンを含み、かつpHがアルカリ域に調整された結晶化用水溶液に入れ、加熱、結晶化する請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記アルミノシリケートアモルファスゲルに含まれるアルカリ金属イオンが一種以上のイオン種であり、かつアルミノシリケートのSiO2/Al2O比が10〜25である請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
アルカリ土類金属イオンが一種以上のイオン種である請求項1ないし3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
加熱温度が150〜250℃である請求項1ないし4のいずれかに記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−190930(P2009−190930A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−32717(P2008−32717)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000230593)日本化学工業株式会社 (296)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】