説明

アルカリ電解液電池の負極の組成及び組成からなるアノード、このアノードからなるアルカリ電解液電池

【課題】本発明は、以下からなる組成を提案する。
【解決手段】a)R1−tMgNis−zの式で表される水素吸蔵合金であって、
ここで、Rは、La、Ce、Nd、Prからなる群から選択される1種以上の元素であり、Mは、Mn、Fe、Al、Co、Cu、Zr、Snからなる群から選択される1種以上の元素であり、t、s、zはそれぞれ、
0.1≦t≦0.4、3.0≦s≦4.3、z≦0.5である;
b)合金質量に対して1〜5.5%のマンガン質量であるマンガン化合物;
c)合金質量に対して0.1〜2%のイットリウム質量であるイットリウム化合物。
また本発明は、本発明による組成からなるアノードに関するものである。
さらに本発明は、少なくとも一つのアノードからなるアルカリ電解液電池に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ABt型(3.0≦t≦4.3)の合金の組成に関するものである。また本発明は、前記組成からなるアノード(負極)およびこのアノードからなるアルカリ電解液電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線機器のようなポータブル電気・電子用途においては、エネルギー要求レベルが増加している。AB型の水素吸蔵(hydrogen−fixing)金属に基づくアノードと水酸化ニッケルに基づくカソードとからなるアルカリ電池では、このエネルギー要求の増加に十分に対応できない。事実、AB型合金の電気化学的容量は、300〜320mAh/gである。
【0003】
【特許文献1】米国特許出願第2004/0134569号
【特許文献2】米国特許出願第2005/0100569号
【特許文献3】特願第2002−069554号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのようなアルカリ電池の容積容量を最適化する試みが行われてきたが、その寿命を短縮させずに容積を拡大することはできないことが分かった。
反対に言うと、その電池の容積を減少させずに寿命を延長させることはできないということである。
容量容積を拡大するため、R1−xMg型(yは約3〜4)の組成の研究がなれてきた。
【0005】
例えば、特許文献1の米国特許出願第2004/0134569号は、R1−xMg型(2.8≦y≦3.9)の合金につき記載している。これは以下の式で表される:
Ln1−xMgNiy−aAl
ここで、Lnは、1種以上の希土類元素であり、
x、y、aはそれぞれ、
0.05≦x<0.20、
2.8≦y≦3.9、
0.10≦a≦0.25である。
この合金は、アルカリ電池の負極活物質として使用される。
【0006】
特許文献2の米国特許出願第2005/0100569号は、R1−xMg型(3.0≦y≦3.96)の合金につき記載している。これは、以下の式で表される:
1−xMgNiAl
ここで、Rは、1種以上の希土類元素であり、
x、y、z、aはそれぞれ、
0.10≦x≦0.30、
2.8≦y≦3.6、
0≦a≦0.30、
3.0≦y+z+a≦3.6である。
この合金は、アルカリ電池の負極活物質として使用される。合金の重量に対して1%未満のマンガンが負極に存する。
【0007】
特許文献3の特願2002−069554号は、R1−xMg型(2.9≦y≦3.5)の合金につき記載している。これは、以下の式で表される:
1−aMgNiCo
ここで、Rは、2種以上の希土類元素であり、
Mは、Mn、Fe、V、Cr、Nb、Al、Ga、Zn、Sn、Cu、Si、P、Bから選択される1種以上の元素であり、
a、b、c、dはそれぞれ、
0.15<a<0.35、
0≦c≦1.5、
0≦d≦0.2、
2.9<b+c+d<3.5である。
この合金は、アルカリ電池の負極活物質として使用される。
1−xMg型の合金(3<y<4)の初期容量は、約350mAh/gであり、これはAB合金の容量(約300〜320mAh/g)よりも大きい。しかし、その合金の寿命は、自己放電の観点から電池性能を劣化させる電池エージング時の微小ショート(micro short circuit)により、制限される。
【0008】
この発明の目的は、アルカリ電池の寿命がより長く同時にサイクル使用後の自己放電が少ないアルカリ電池の負極の組成を追求することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下からなる組成の使用に関するものである。
a)R1−tMgNis−zで表される水素吸蔵合金であって、
ここで、Rは、La、Ce、Nd、Prからなる群から選択される1種以上の元素であり、
Mは、Mn、Fe、Al、Co、Cu、Zr、Snからなる群から選択される1種以上の元素であり、
t、s、zはそれぞれ、
0.1≦t≦0.4、
3.0≦s≦4.3、
z≦0.5である;
b)合金質量に対して1〜5.5%のマンガン質量であるマンガン化合物;
c)合金質量に対して0.1〜2%のイットリウム質量であるイットリウム化合物。
本発明の実施態様によると、t、sはそれぞれ、0.1≦t≦0.25、3.5≦s≦3.8である。この実施態様においては、Mは、MnAlM’であり、
ここでM’は、Fe、Co、Cu、Zr、Snからなる群から選択される1種以上の元素であり、
x、y、uはそれぞれ、
x≦0.20、
0.05≦y≦0.20、
u≦0.20、
x+y+u≦0.5である。
本発明の実施態様によると、水素吸蔵合金は、コバルトを含有していない。
本発明の実施態様によると、t、sはそれぞれ、0.1≦t≦0.25、3.5≦s≦3.8であるとともに、水素吸蔵合金は、コバルトを含有していない。この実施態様において、Mは、MnAlM’であって、
ここでM’は、Fe、Cu、Zr、Snからなる群から選択される1種以上の元素であり、
x、y、uはそれぞれ、
x≦0.20、
y≦0.20、
u≦0.20、
x+y+u≦0.5である。
本発明の実施態様によると、マンガンの質量は、合金の質量に対して1.3〜5%であり、好ましくは合金の質量に対して2〜3.5%である。
本発明の実施態様によると、イットリウムの質量は、合金の質量に対して0.2〜1%であり、好ましくは合金の質量に対して0.2〜0.7%である。
本発明の実施態様によると、挿入される水素1質量%における合金の平衡水素圧は、1.5バール未満である。
本発明の実施態様によると、イットリウム化合物は、酸化イットリウムYである。
本発明の実施態様によると、マンガン系化合物は、酸化マンガンMnOである。
本発明の実施態様によると、マンガン化合物は、水素吸蔵合金である。この水素吸蔵合金は、AB型であって、
ここで、Aは、ランタニドの群から選択される1種以上の元素であり、
Bは、Ni、Co、Mn、Alからなる群から選択される1種以上の元素である。
本発明の実施態様によると、水素吸蔵合金粒子のサイズは、30〜120μm、好ましくは50〜100μmのDv50%であることを特徴とする。
また、本発明は、前記組成からなるアノードに関するものである。
また、本発明は、前記アノードからなるアルカリ電解液電池に関するものである。
【発明の効果】
【0010】
従って、この発明は、アルカリ電池の寿命がより長くすることができるとともに、同時にサイクル使用後の自己放電が少ないアルカリ電池の負極の組成とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下にこの発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例】
【0012】
本発明は、以下からなるニッケル水素アルカリ電池の負極の組成を提案する:
a)R1−tMgNis−zに相当する水素吸蔵合金であって、
ここで、Rは、La、Ce、Nd、Prから選択されるなくとも1種以上の元素であり、
Mは、Mn、Fe、Al、Co、Cu、Zr、Snから選択される1種以上の元素であり、
t、s、zはそれぞれ、
0.1≦t≦0.4、
3.0≦s≦4.3、
z≦0.5である;
b)合金質量に対して1〜5.5%のマンガン質量の割合となるマンガン化合物;
c)合金質量に対して0.1〜2%のイットリウム質量の割合となるイットリウム化合物。
好ましくは、マンガン質量は、合金質量に対して1.3%〜5%であって、また合金質量に対して2%〜3.5%である。
好ましくは、イットリウム質量は、合金質量に対して0.2%〜1%であって、また合金質量に対して0.2%〜0.7%である。
【0013】
本発明の実施態様によると、本発明は、以下からなるニッケル水素アルカリ電池の負極の組成に関するものである:
a)R1−tMgNis−zに相当する水素吸蔵合金であって、
ここで、Rは、La、Ce、Nd、Prからなる群から選択されるA1種以上の元素であり、
Mは、Mn、Fe、Al、Co、Cu、Zr、Snからなる群から選択される1種以上の元素であり、
t、s、zはそれぞれ、
0.1≦t≦0.25、
3.5≦s≦3.8、
z≦0.5である;
b)合金質量に対して1〜5.5%のマンガン質量の割合となるマンガン化合物;
c)合金質量に対して0.1〜2%のイットリウム質量の割合となるイットリウム化合物。
好ましくは、マンガン質量は、合金質量に対して1.3%〜5%であって、また合金質量に対して2%〜3.5%である。
好ましくは、イットリウム質量は、合金質量に対して0.2%〜1%であって、また合金質量に対して0.2%〜0.7%である。
【0014】
本発明の実施態様によると、本発明は、以下からなるニッケル水素アルカリ電池の負極の組成に関するものである:
a)R1−tMgNis−x−y−uMnAlに相当する水素吸蔵合金であって、
ここで、Rは、La、Ce、Nd、Prからなる群から選択される1種以上の元素であり、
Mは、Fe、Co、Cu、Zr、Snからなる群から選択される1種以上の元素であり、
t、s、x、y、uはそれぞれ、
0.1≦t≦0.25、
x≦0.20、
0.05≦y≦0.20、
u≦0.20、
x+y+u≦0.5、
3.5≦s≦3.8である;
b)合金質量に対して1〜5.5%のマンガン質量の割合となるマンガン化合物;
c)合金質量に対して0.1〜2%のイットリウム質量の割合となるイットリウム化合物。
好ましくは、マンガン質量は、合金質量に対して1.3%〜5%であって、また合金質量に対して2%〜3.5%である。
好ましくは、イットリウム質量は、合金質量に対して0.2%〜1%であって、また合金質量に対して0.2%〜0.7%である。
【0015】
本発明の実施態様によると、本発明は、以下からなるニッケル水素アルカリ電池の負極の組成を提案するものである:
a)R1−tMgNis−zに相当するコバルトを含有しない水素吸蔵合金であって、
ここで、Rは、La、Ce、Nd、Prからなる群から選択される1種以上の元素であり、
Mは、Mn、Fe、Al、Cu、Zr、Snからなる群から選択される1種以上の元素であり、
t、s、zはそれぞれ、
0.1≦t≦0.4、
3.0≦s≦4.3、
z≦0.5である;
b)合金質量に対して1〜5.5%のマンガン質量の割合となるマンガン化合物;
c)合金質量に対して0.1〜2%のイットリウム質量の割合となるイットリウム化合物。
好ましくは、マンガン質量は、合金質量に対して1.3%〜5%であって、また合金質量に対して2%〜3.5%である。
好ましくは、イットリウム質量は、合金質量に対して0.2%〜1%であって、また合金質量に対して0.2%〜0.7%である。
【0016】
本発明の実施態様によると、本発明は、以下からなるニッケル水素アルカリ電池の負極の組成を提案するものである:
a)R1−tMgNis−zに相当するコバルトを含有しない水素吸蔵合金であって、
ここで、Rは、La、Ce、Nd、Prからなる群から選択される1種以上の元素であり、
Mは、Mn、Fe、Al、Cu、Zr、Snからなる群から選択される1種以上の元素であり、
t、s、zはそれぞれ、
0.1≦t≦0.25、
3.5≦s≦3.8、
z≦0.5である;
b)合金質量に対して1〜5.5%のマンガン質量の割合となるマンガン化合物;
c)合金質量に対して0.1〜2%のイットリウム質量の割合となるイットリウム化合物。
好ましくは、マンガン質量は、合金質量に対して1.3%〜5%であって、また合金質量に対して2%〜3.5%である。
好ましくは、イットリウム質量は、合金質量に対して0.2%〜1%であって、また合金質量に対して0.2%〜0.7%である。
【0017】
本発明の実施態様によると、本発明は、以下からなるニッケル水素アルカリ電池の負極の組成を提案するものである:
a)R1−tMgNis−x−y−uMnAlに相当するコバルトを含有しない水素吸蔵合金であって、
ここで、Rは、La、Ce、Nd、Prからなる群から選択される1種以上の元素であり、
Mは、Fe、Cu、Zr、Snからなる群から選択される1種以上の元素であり、
t、s、x、y、uはそれぞれ、
0.1≦t≦0.25、
x≦0.20、
y≦0.20、
u≦0.20、
x+y+u≦0.5、
3.5≦s≦3.8である;
b)合金質量に対して1〜5.5%のマンガン質量の割合となるマンガン化合物;
c)合金質量に対して0.1〜2%のイットリウム質量の割合となるイットリウム化合物。
好ましくは、マンガン質量は、合金質量に対して1.3%〜5%であって、また合金質量に対して2%〜3.5%である。
好ましくは、イットリウム質量は、合金質量に対して0.2%〜1%であって、また合金質量に対して0.2%〜0.7%である。
合金の組成は、誘導結合プラズマ技術によるか原子吸光分析法やX線蛍光分析法による元素分析で確認することができる。
【0018】
本発明の好ましい実施態様によると、挿入される水素質量1%におけるR1−tMgNis−zの水素吸蔵合金の40℃での平衡水素圧は、1.5バール未満である。この水素圧は、水素吸蔵合金固有のものではなく、水素吸収相の組成によるものである。同じ合金組成の場合、様々な処理方法、特に熱処理によって、単一相合金またはいずれの相の組成も合金の相と異なる複合相合金が得られる。
本発明の好ましい実施態様によると、水素吸蔵合金のR1−tMgNis−zは、主に結晶相のA型(六方晶のCeNi型、あるいは菱面体晶のGdCo型)、A19型(菱面体晶のCeCo19型、あるいは、六方晶のCeNi19型)、またはこれら結晶相の混合物で構成される。
【0019】
本発明の合金は、
a)溶解および
−低速冷却(標準冶金)、
−単一ローラのまたは二つのローラ間の「ストリップキャスティング」のような冷却(急速冷却)、
−単一ローラのまたは二つのローラ間の「溶融紡糸(melt spinning)」や「平面流動キャスティング(planar flow casting)」を使用した溶液の焼鈍し(超急速冷却)によって、
b)純元素およびプレ合金で開始する粉末冶金(焼結)によって、
c)機械的合成(mechanosynthesis)によって処理される。
本発明の合金に対して、焼鈍しが行われる。
本発明の実施態様によると、水素吸蔵合金粒子のサイズは、30〜120μm、好ましくは50〜100μmのDv50%であることを特徴とする。
【0020】
合金とマンガン化合物との混合は、電池サイクル時にセパレータにおいて正極または負極から生じるコバルトの析出を原因とする微小ショートの発生を防止または遅延させるという効果を生じる。実際に、この微小ショートは自己放電を悪化させ、放電後の容量減少を加速させるものである。いかなる理論にも拘束されることは望まないが、出願人は、マンガンが存すると、混合したコバルトおよびマンガンの化合物が析出し、この化合物はコバルト析出よりも伝導性が低いものであると考えている。
そこで、電気化学的セルにおいてはコバルト量を減少させるともに、マンガン存在による効果を意味あるものとするためマンガン量を合金質量に対して1%を越えるようにするのが好ましい。他方、電極においてマンガン量が増加すると、水素を吸収しない物質の量、またはR1−tMgNis−z合金の水素吸収量よりも少量の水素しか吸収しない物質の量が増加して、R1−tMgNis−z合金の量に悪影響を及ぼし、電極の容量が減少することになる。
そこで、負極のマンガンの質量比は、水素吸蔵合金の質量の5.5%に限定しなければならない。
マンガン系化合物は、MnO、MnO、または水酸化物若しくはマンガン系の塩のような酸化物からなるリスト(ただし網羅的ではない)から選択される。好ましくは、マンガン化合物は、酸化MnOである。このマンガン化合物は、以下のマンガンからなるAB型の水素吸蔵合金でもあり、
ここでAは、ランタニドの群から選択される1種以上の元素からなり、
Bは、Ni、Co、Mn、Alからなる群から選択される1種以上の元素からなる。
水素吸蔵合金とイットリウム化合物との混合により、アノードの寿命が延長するという効果が生じる。
イットリウム化合物は、Y、Y(OH)等の水酸化イットリウム、またはイットリウム塩のような酸化イットリウムからなるリスト(ただし網羅的ではない)から選択される。
イットリウム化合物は、イットリウム質量が合金質量に対して0.1〜2%、好ましくは合金質量に対して0.2%〜1%、さらに好ましくは合金質量に対して0.2%〜0.7%となる割合で合金と混合される。
【0021】
アノード製造時の活物質へのマンガン化合物およびイットリウム化合物の添加処理は、産業上容易に実施できる。複雑な装置は要求されない。示されたように、本発明による解決方法は、効果的かつ非常に単純なものであって、著しい追加コストは不要である。
また、本発明は、前記組成からなるアノードに関するものである。アノードは、サポートを本発明による組成による水性混合物および任意の添加物からなるペーストでペースト化することで製造される。サポートは、ニッケルフォーム、ニッケルまたはニッケルめっき鋼からなる平坦または三次元的な有孔ストリップである。
この添加物により、アノードの使用を容易にするか、その性能を改善することを意図している。この添加物は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリアクリル酸(PAAc)、キサンタンガム、ポリ(エチレンオキサイド)(PEO)のような増粘剤である。また、この添加物は、ブタジエン−スチレン(SBR)コポリマー、ポリスチレンアクリレート(PSA)、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のような粘結剤である。また、この添加物は、電極の機械的性質を改良するためのポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン等の繊維である。また、この添加物は、ニッケル粉末、炭素粉末、またはカーボンナノチューブのような伝導性のある添加剤である。
好都合にも、アノードは、高レベル放電の改良および/または充電終了時の酸素の再結合を意図した表面層で覆われている。
【0022】
また本発明は、前記組成により製造される電池用アノード(負極)を提案する。
【0023】
また本発明は、前記組成からなるニッケル水素電池を提案する。このバッテリは、通常、少なくとも一つの前記アノード、少なくとも一つのニッケルのカソード、少なくとも一つのセパレータ、およびアルカリ電解液からなる。
このカソードは、焼結サポート等のサポートに堆積させたカソード固形活物質(active mass)と、ニッケルフォームと、ニッケルまたはニッケルめっき鋼からなる平坦または三次元的な有孔ストリップとで構成される。
カソード固形活物質は、カソード活物質と、カソードの利用を容易にしたりその性能を改良したりするための任意の添加剤とからなる。カソード活物質は、コバルト、マグネシウム、カドミウム、および亜鉛で一部置換可能なニッケル水酸化物Ni(OH)である。この水酸化物は、部分的に酸化され、コバルト化合物系の表面層で被覆されることができる。
これらの添加物のうち、網羅的ではないが、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、キサンタンガム、ポリアクリル酸(PAAc)、ポリスチレン無水マレイン酸(SMA)、任意にカルボキシ化されたブタジエン−スチレンのコポリマー(SBR)、アクリロニトリルとブタジエンのコポリマー(NBR)、スチレン、エチレン、ブチレン、およびスチレンのコポリマー(SEBS)、スチレン、ブタジエン、およびビニルピリジンのターポリマー(SBVR)、ポリスチレンアクリレート(PSA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンとプロピレンのフッ化コポリマー(FEP)、ポリヘキサフルオロプロピレン(PPHF)、エチレンビニルアセテートコポリマー(EVA)、酸化亜鉛ZnO、繊維(Ni、C、ポリマー)、ならびにCo、Co(OH)、CoO、LiCoO、HCoO、NaCoOのようなコバルト系化合物の粉末が挙げられる。
セパレータは、通常は、ポリオレフィン繊維(例えばポリプロピレン)や不織多孔質ポリアミドからなる。
電解液は、通常の数倍程度に濃縮された少なくとも一つの水酸化物(KOH、NaOH、LiOH)からなる濃アルカリ水溶液である。
標準的な方法で電極ペーストが準備および製造され、電気化学的バンドルを構成するため、少なくとも一つのカソード、少なくとも一つのセパレータ、および少なくとも一つのアノードが重畳配置される。この電気化学的バンドルは、容器に導入され、アルカリ電解液で含浸される。それから、電池が閉鎖される。
本発明は、プリズム形態(平坦電極)であるか円柱形態(螺旋もしくは同心の電極)であるかを問わず、いかなる電池の形態にも関連している。
本発明による電池は、開口型、半開口型、密封型いずれでもよい。
本発明の電池は、電気自動車や携帯装置の電力源として特に良好なものである。
本発明のその他の特徴や利点は、以下の実施例により明らかになる。
【0024】
その組成が表1に示される合金A、合金B、合金Xは、急速冷却処理により調製され、1000〜1100℃で1〜10時間の焼鈍しが行われた。
合金Bは、合金Aとは異なり、コバルトを含有していない。
合金Xは、マンガン源として使用されるAB型合金である。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
容量が3.0AhのC型密封電気化学的セルが、上記の合金で製造された。表2は、この電池の負極の特性についての概要を示している。
セルaの負極の活物質は、合金Aと0.4%のYを含有している。
セルbの負極の活物質は、合金Bと0.4%のYを含有している。セルaおよびセルbの負極の活物質はマンガンを含有していないため、セルaおよびセルbは本発明を構成するものではない。
セルcの負極の活物質は、合金A、0.4%のY、および1.8%のMnOを含有している。
セルdの負極の活物質は、79.6%の合金A、マンガン源としての20%の合金X、およびと0.4%のYを含有している。
セルeの負極の活物質は、合金B、0.4%のY、および1.8%のMnOを含有している。
セルc、セルd、セルeは本発明を構成する。
セルfの負極の活物質は、合金A、0.4%のY、および0.9%のMnOを含有している。セルfの負極におけるマンガン質量が非常に少ないため、セルfは本発明を構成するものではない。
セルgの負極の活物質は、合金A、0.1%のY、および1.8%のMnOを含有している。セルgの負極におけるイットリウム質量が非常に少ないため、セルgは本発明を構成するものではない。
セルhの負極の活物質は、合金A、0.4%のY、および7%のMnO(合金質量に対して5.86%のMn)を含有している。セルhの負極におけるマンガン質量が非常に多いため、セルhは本発明を構成するものではない。
【0028】
負極は、以下のようにして製造される。合金粉末の水性混合物CMC(増粘剤)、SBR(粘結剤)、炭素(伝導体)により構成されるペーストがニッケルフォームにペースト化される。負極の全ては同じ寸法で切断される。酸化イットリウムの形で0.4質量%の割合でイットリウムが添加される(すなわち水素吸蔵合金質量に対して0.315%のイットリウム)。酸化物MnOの形でマンガンが添加される。
【0029】
正極は、ニッケル系水酸化物および伝導性化合物Co(OH)を含有する標準的フォームの電極である。
【0030】
正極とセパレータと負極とで構成されるバンドルは、螺旋巻きにして容器に導入される。それからコネクタセルが取り付けられる。容器は、三元9N電解液KOH、NaOH、LiOHで充填される。容器、セパレータ、コネクタセル、および電解液は、C型セルの製造と同じである。
【0031】
セルに対して、以下のサイクルを2回行う。
−16時間、電流0.3Aでの充電、
−1時間の静止、
−電流0.6Aでの終止電圧0.9Vまでの放電。
それからセルに対し、C/2レートで2時間24分の充電が行われる。
そして、C/5の放電レート(0.6A)における終止電圧0.9Vまでの容量の測定が各セルにつき行われる。
それぞれのセルは、C/2の電流で2時間24分の充電が行われ、40℃で24時間で静止する。終止電圧0.9V、C/5の放電レートで放電した場合の容量を測定する。この測定により、SD=(1−D24h/D0h100である基準の自己放電率の計算が可能となる(ここでD24hは、40℃で24時間静止した後に放電した容量を表し、D0hは、この静止時間なしで放電した容量を表す)。この放電時に測定された容量および基準の自己放電率は、表2に示されている。
セルは、それらの容量の80%までの放電(80%の放電深度)からなる20℃での延長サイクルを受ける。それぞれのサイクルは、以下のように構成される:
−C/3レートでの24時間24分の充電、
−Cレートでの48分に限定した放電、または電圧0.9V未満による放電、
−15分間の静止。
C/2レートでの2時間24分の充電の後(その後40℃で24分の静止時間を伴う場合と伴わない場合がある)、C/5放電で終止電圧の0.9Vの状態の下で、サイクル時のセル容量が周期的に測定される。第nサイクルの自己放電率は、SD=(l−D24h/D0h100であって、ここでD24hは、40℃で24時間静止後の放電した場合の容量、D0hは、この静止なしに放電した場合の容量を指している。
このように、第n回の自己放電率SDが、初期自己放電率SD(すなわちサイクル開始前に測定されたもの)と同様の方法で評価される。
【0032】
<結果>
表2は、セルa〜セルgについての初期(サイクル開始前)の電気化学的容量は、2950〜3050mAhであることを示している。セルhの初期電気化学的容量は、マンガンが非常に多いため、2760mAhにすぎない。実際に、セルhに添加された酸化マンガンの質量は、固形活物質の7%である(すなわち、水素吸蔵合金の質量の7.56%であり、マンガンは水素吸蔵合金の質量に対して5.86%)。
500サイクル後では、セルa〜セルfの容量は、2900mAhを越えており、これは5%未満の容積減少である。他方、負極に添加される酸化イットリウムの含量が0.1%(イットリウムは合金の質量に対して0.08%)であるセルgの容量は、500サイクル後で2280mAhであり、これは初期容量の77%にすぎない。したがって、合金質量に対して少なくとも0.1%のイットリウムが存在することは、セルの寿命を延長させるために必要である。
500サイクル後のセルhの容量は、2712mAhであって、これはその初期容量の98%を越えるものである。
40度(°C)24時間を超えた初期状態(サイクル開始前)の自己放電値は、全て約14%である。500サイクル後では、セルaの場合も(Mnを含有しておらず、合金Aは0.15%のコバルトを含有している)、セルfの場合(マンガン質量の添加は合金質量に対して1%未満)も、25%増加している。セルbにより得られる結果に示されるよう、負極の水素吸蔵合金にCoが存しない場合、500サイクル後の自己放電は、マンガンの供給なしに約18%まで増加している。MnOの形態であろうと合金Xの形態であろうと、1.0%を越える割合で負極にマンガンが存する場合、500サイクル後の自己放電は、実際に初期自己放電から変化していない(セルc〜セルe、およびセルg〜セルh)。これは、14%近くまで維持されている。
したがって、本発明によるセルc、セルd、およびセルeの初期容量は3000±50mAhであり、500サイクル後の容量は2400mAhを越えるものである。これは、初期容量3000mAhに対して20%未満の容量喪失に相当する。また、本発明によるセルc、セルd、およびセルeの自己放電レベルは、負極の活物質が本発明の範囲外であるセルa、セルb、およびセルf〜セルhとは異なり、500サイクル後で15%未満である。したがって、本発明によるセルc、セルd、およびセルeは、長寿命であり、サイクル後の自己放電が少ないといえる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)R1−tMgNis−zの式で表される水素吸蔵合金であって、
ここで、Rは、La、Ce、Nd、Prからなる群から選択される1種以上の元素であり、
Mは、Mn、Fe、Al、Co、Cu、Zr、Snからなる群から選択される1種以上の元素であり、
t、s、zはそれぞれ、
0.1≦t≦0.4、
3.0≦s≦4.3、
z≦0.5
である;
b)合金質量に対して1〜5.5%のマンガン質量であるマンガン化合物;
c)合金質量に対して0.1〜2%のイットリウム質量であるイットリウム化合物;からなるアルカリ電解液電池の負極の組成。
【請求項2】
前記t、前記sはそれぞれ、
0.1≦t≦0.25、
3.5≦s≦3.8
である請求項1に記載のアルカリ電解液電池の負極の組成。
【請求項3】
前記Mは、MnAlM’であり、
ここでM’は、Fe、Co、Cu、Zr、Snからなる群から選択される1種以上の元素であり、
x、y、uはそれぞれ、
x≦0.20、
0.05≦y≦0.20、
u≦0.20、
x+y+u≦0.5
である請求項2に記載のアルカリ電解液電池の負極の組成。
【請求項4】
前記水素吸蔵合金は、コバルトを含有していない請求項1または請求項2に記載のアルカリ電解液電池の負極の組成。
【請求項5】
前記Mは、MnAlM’であって、
ここでM’は、Fe、Cu、Zr、Snからなる群から選択される1種以上の元素であり、
x、y、uはそれぞれ、
x≦0.20、
y≦0.20、
u≦0.20、
x+y+u≦0.5
である請求項2および請求項4に記載のアルカリ電解液電池の負極の組成。
【請求項6】
マンガンの質量は、合金の質量に対して1.3〜5%であり、好ましくは合金の質量に対して2〜3.5%である請求項1〜請求項5のいずれか一つに記載のアルカリ電解液電池の負極の組成。
【請求項7】
イットリウムの質量は、合金の質量に対して0.2〜1%であり、好ましくは合金の質量に対して0.2〜0.7%である請求項1〜請求項6のいずれか一つに記載のアルカリ電解液電池の負極の組成。
【請求項8】
挿入される水素1質量%における合金の平衡水素圧は、1.5バール未満である請求項1〜請求項7のいずれか一つに記載のアルカリ電解液電池の負極の組成。
【請求項9】
前記イットリウム化合物は、酸化イットリウムYである請求項1〜請求項8のいずれか一つに記載のアルカリ電解液電池の負極の組成。
【請求項10】
前記マンガン系化合物は、酸化マンガンMnOである請求項1〜請求項9のいずれか一つに記載のアルカリ電解液電池の負極の組成。
【請求項11】
前記マンガン化合物は、水素吸蔵合金である請求項1〜請求項9のいずれか一つに記載のアルカリ電解液電池の負極の組成。
【請求項12】
前記水素吸蔵合金は、AB型であって、ここで、前記Aは、ランタニドの群から選択される1種以上の元素であり、前記Bは、Ni、Co、Mn、Alからなる群から選択される1種以上の元素である請求項11に記載のアルカリ電解液電池の負極の組成。
【請求項13】
前記水素吸蔵合金の粒子のサイズは、30〜120μm、好ましくは50〜100μmのDv50%であることを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれか一つに記載のアルカリ電解液電池の負極の組成。
【請求項14】
請求項1〜請求項13のいずれか一つに記載の組成からなるアノード。
【請求項15】
請求項14に記載の少なくとも一つの前記アノードからなるアルカリ電解液電池。



【公開番号】特開2008−71759(P2008−71759A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238871(P2007−238871)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(507298016)
【Fターム(参考)】