説明

アルキルアミノアルキレンホスホン酸の製造方法

アルキルアミノアルキレンホスホン酸の製造方法が開示される。
詳細には、8またはそれ以上のpHを有する水性アルカリ媒体中で、0℃またはそれ以上の温度にて特定のホスホナートを選択された作用物質と反応させ、OH、OR’、NH2、NHR’、N(R’)2、NH、N、S、S−SおよびSHから選択されるラジカルによって置換されたアルキルアミノ部分を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキルアミノアルキレンホスホン酸の製造方法に関し、ここでこのアミノアルキル部分は、OH、OR’、N、NH、NH2、NHR’、N(R’)2、S、HS、およびS−Sから選択されるラジカルによって置換される。その趣旨で、特定のホスホナート出発試薬と選択されたラジカルの前駆体とを8またはそれ以上のpHを有する水性アルカリ媒体中で0℃またはそれ以上の温度にて反応させる。
【背景技術】
【0002】
アルキルアミノアルキレンホスホン酸は、よく知られており、広く水性系、特に油田操作において、通常油井源(well head)で油と共に流出する地層水(高濃度のアルカリ土類金属を含むことが多いため、スケールを形成する可能性が大きい)のスケール形成を低減する用途が見出されている。特許文献1には、ほぼ等量のアルカノールアミノビス(アルキレンホスホン酸)および分子間環状ホスホナート(これは水性媒体中のスケール防止の目的のためには無効であることが示されている)を含む、閾値のインヒビター混合物を加えることによってバリウムスケール沈着を防止するための水処理方法が記載されている。スケール制御特性を有するアルカノールアミンビス(アルキレンホスホン酸)とスケール制御に関しては不活性である分子間環状ホスホナートとの混合物は、鉱酸触媒の存在下で必要出発物質、すなわちホルムアルデヒド、亜リン酸およびヒドロキシアルキルアミンまたはヒドロキシアルキルアルキレンアミンを反応させることによる典型的な方法で製造される。特許文献2には、12以上の高いpHでの長時間の沸騰処理を行うことによってクローズド(不活性)ホスホナートとオープン(活性)ホスホナートの混合物を開環ビス(メチレンホスホナート)に変換する方法が記載されている。
【0003】
特許文献3には、一般的には1未満のpHでのマンニッヒ反応に従い、α,ω−アルキレンジアミンを水性媒体中でホルムアルデヒドおよび亜リン酸と反応させることによってN,N’−二置換メチレンホスホン酸を製造する方法が記載されている。非特許文献1は、シリカ表面上に共有結合したアミノホスホン酸を含有する変性シリカを公表している。
【0004】
特許文献4には、アルキル部分が2〜20個の炭素原子を含んでいてもよい3−アルコキシプロピレンイミノビス(メチレンホスホン酸)、このホスホン酸化合物の製造方法および硫化物を含まない鉱石の浮遊選鉱へのそれらの使用が記載されている。この化合物は、アルコキシプロピレンアミンをホルムアルデヒドおよび亜リン酸と、最適な結果を得るために反応混合物のpHを4未満、より好ましくは2未満で反応させることによって生成される。適切な酸性化剤は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸およびスルホン酸を含む。
【0005】
特許文献5には、イミノアルキルイミノホスホナートおよびその製造方法が記載されている。その趣旨で、亜リン酸、ホルムアルデヒドおよびアミンを酸性媒体中で従来の方法で反応させる。特許文献6には、酸性条件下で製造し、安定化されたアミノメチレンホスホン酸溶液が記載されている。このトリアミンテトラ(メチレンホスホン酸)化合物は2%のレベルで形成される。非特許文献2は、従来の方法によって製造されたホスホナート樹脂を酸性条件下でキレート化することに関する。特許文献7はアミノアルキレンホスホナート誘導体(例えば、ビス(アミノエチル)スルフィドテトラ(メチレンホスホン酸))に関する。この後者の化合物は全く一般的な方法によって酸性媒体中で製造される。特許文献8は、アミノアルキレンホスホナート、例えばジメチルアミノプロピルアミンから出発するN,N(ジメチルアミノ)−ビス(ホスホノメチル)プロピルアミン塩酸塩の形成に関する。イオウ含有メチレンホスホン酸は、非特許文献3によって公知である。
【0006】
拡大された有意なR&D努力によっても未だ先行技術の製造における欠点の改善方法が得られていない。例として、ジ−ホスホナートスケールインヒビターは、少なくともスケール制御に関して実質的に不活性であるホスホナート(例えば、環状ホスホナート)の過剰なレベルでの存在が原因で、商慣習で実行可能なアプローチを提供できていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】イギリス特許第2 306 465号
【特許文献2】WO2000/0018695
【特許文献3】米国特許第4,330,487号
【特許文献4】ドイツ特許第31 287 55号
【特許文献5】米国特許第3,974,090号
【特許文献6】米国特許第4,477,390号
【特許文献7】米国特許第3,705,005号
【特許文献8】米国特許第4,234,511号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Zaitsev V.N.et al.,Russian Chemical Bulletin,(1999),48(12),2315−2320
【非特許文献2】Yoshiro Yokoyama,Bull.Chem.Soc.Jpn.,58,3271−3276(1985)
【非特許文献3】Razumovskii N.O et al.,Deposited Doc.(1984),(VINITI 1784−84),8pp
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の主な目的は、実質的に低減されたレベルの不活性(例えば、水処理に関して)な反応生成物を含む、アルキルアミノ、特にポリ(アルキレンホスホン酸)、好ましくはビス(アルキレンホスホン酸)の製造方法を提供することである。本発明の別の目的は、過度の副生成物のマイナスの影響をひきおこすことなしに、選択されたアルキレンホスホン酸を、改良され実質的に1工程で製造する技術を提供することである。本発明のなお別の目的は、簡素化された手順(例えば、時間のかかる補正(corrective)加水分解工程の必要のない)を求めて、ホスホン酸製造技術を合理化することを目指す。本発明技術のなお別の目的は、例えば、広くスケール制御に関連して有用であり得る高度に活性な水処理剤の作製を求めることである。本発明のなお別の目的は、ホスホナート誘導体を合成するための簡素化された手順を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述および他の目的は、以下により詳細に述べるとおりの、格別に定義された反応性ホスホナートと非ホスホナート反応物とを実質的にアルカリのpHを有する水性媒体中で反応させることによる製造処理を用いて達成することができる。
【0011】
用語「パーセント」または「%」は本出願をとおして使用される場合、異なって定義されない限り「質量パーセント」または「質量%」である。また、用語「ホスホン酸」と「ホスホナート」とは、もちろん媒体で優勢なアルカリ性/酸性条件に依存するが、交換可能に使用される。
【0012】
アルキレンホスホン酸の有益な製造方法をここに開示した。より詳細には、この発明性のある改善は、8またはそれ以上のpHを有する水性媒体中で0℃またはそれ以上の温度にて式:
Y−X−N(W)(ZPO32
を有するホスホン酸化合物と、

部分の前駆体とを反応させることによる、式:
U−[X−N(W)(ZPO32)]s
を有するホスホン酸の製造を目指しており、構造要素は以下:
Yは、pKaが4.0と等しいかまたは4.0より小さい共役酸である置換基から選択され;
【0013】
Xは、場合によりC1−C12の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族基によって置換されるC2−C50の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖(該鎖および/または該基は、場合によりOH、COOH、F、OR’、R2O[A−O]x−(ここで、R2は、C1−C50の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖である)およびSR’(ここで、R’は、場合によりC1−C12の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族炭化水素によって置換されるC1−C50の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖である)部分によって置換されてもよく、該鎖および/または該基は、場合によりCOOH、OH、F、OR’およびSR’によって置換されてもよい);および[A−O]x−A(ここで、Aは、C2−C9の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖であり、xは、1〜200の整数である)から選択され;
Zは、C1−C6のアルキレン鎖であり;
Mは、HおよびC1−C20の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖から選択され;
【0014】
Wは、H、ZPO32および[V−N(K)]nKから選択され、ここで、Vは、場合によりC1−C12の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族基によって置換されるC2−C50の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖(該鎖および/または該基は、場合によりOH、COOH、F、OR’、R2O[A−O]x−(ここで、R2は、C1−C50の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖である)またはSR’部分によって置換されてもよい);および[A−O]x−A(Aは、C2−C9の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖であり、xは、1〜200の整数である)から選択され;
Kは、ZPO32またはHであり、nは、0〜200の整数であり;そして
Uは、NH2、NHR’、N(R’)2、NH、N、OH、OR’、S、HS、およびS−Sから選択される部分であり、ここでR’は上に定義されるとおりであり;
UがNH2、NHR’、N(R’)2、OR’、HS、またはOHを表す場合にはsは1であり;UがNH、SまたはS−Sを表す場合にはsは2であり;そしてUがNを表す場合にはsは3である;
の意味を有する。
【0015】
ホスホナート出発化合物中のYは、4.0と等しいかまたは4.0より小さい、好ましくは1.0と等しいかまたは1.0より小さいpKaを有する共役酸である置換基を示す。
【0016】
このpKaの値は以下に示される公知の変数であり:
pKa=−log10Ka
ここで、Kaは、熱力学的酸解離定数を示す。全ての酸物質のpKa値は文献によって知られているかまたは必要であれば簡単に測定することができる。これらの値は例えば、Handbook of Chemistry and Physicsに列挙されている。
【0017】
Yは、好ましくはCl、Br、I、HSO4、NO3、CH3SO3およびp−トルエンスルホン酸ならびにこれらの混合物から選択することができる。
X、R2、R’、AおよびVの定義において、Cx−Cyの直鎖または分枝鎖の炭化水素鎖は、好ましくは示される鎖長をもつ直鎖または分枝鎖のアルカンジイルである。環状炭化水素鎖は、好ましくはC3−C10−シクロアルカンジイルである。芳香族炭化水素鎖は、好ましくはC6−C12アレーンジイルである。前出の炭化水素鎖が置換される場合、好ましくは示された鎖長の直鎖または分枝鎖のアルキルを有するC3−C10−シクロアルキル、またはC6−C12−アリールである。全てのこれらの基は、それぞれの記号で示される基でさらに置換されてもよい。
【0018】
アルカン部分のより好ましい、おおび特に好ましい鎖長は、特定の記号で示される。環状部分は、シクロヘキサン部分がより好ましくシクロヘキサンジイルの場合、特にシクロヘキサン−1,4−ジイル部分が好ましい。芳香族部分は、フェニレンまたはフェニルが好ましく、場合によってはフェニレンについて、1,4−フェニレンが特に好ましい。
【0019】
ホスホナート反応パートナーの個々の部分は好ましい方法で、以下の種から有益に選択することができる:
部分 好ましい 最も好ましい
X C2−C302−C12
[A−O]x−A [A−O]x−A
V C2−C302−C12
[A−O]x−A [A−O]x−A

XおよびVの両方は、独立して以下のとおりである:
A C2−C62−C4
x 1−100 1−100
Z C1−C31
M H,C1−C6 H,C1−C4
n 1−100 1−25
21−C301−C12
【0020】
U部分は、技術領域で簡単に入手することのできるよく知られた前駆体から得ることができ、反応性ホスホン酸化合物と反応させることが可能である。個々のU部分についての好ましい前駆体の例は以下のとおりである:
前駆体 U部分
NH3 NH2
NH2R' NHR'
NH(R')2 N(R')2
NH3 NH
NH3
OH- OH
HOR';R'O- OR'
Na2S S
チオ尿素 SH
Na22 S−S
【0021】
N(R’)2部分のR’置換基は同一であるかまたは異なっていてもよい。
本明細書中のホスホナート化合物は、関連分野で型どおりに利用可能な従来の手段によって合成することができる。
【0022】
ひとつのアプローチにおいて、反応性ホスホナート出発物質およびU部分の前駆体である反応パートナーを、通常これらの種を化学量論的な比率(それにより置換の必要な程度
のような制御可能な変数を考慮に入れる)で加えることで水性媒体中で結合させる。
この反応は、アルカリ条件下、一般的にはpH8またはそれ以上、好ましくは9〜14の範囲のpHで行われる。このpHは、その反応温度において、そのまま、反応媒体中で測定される。この反応温度は、一般的には0℃より高い、通常は10℃〜120℃の範囲である。より高い反応温度は、適切な圧力封じ込めを条件として、たとえば標準的な圧力容器を用いて使用することができる。
【0023】
反応生成物の回収は、好ましくは当業者に自体公知の方法で行われる。例えば、遊離ホスホン酸は、例えば濃塩酸による反応混合物の酸性化によって沈澱し、濾過、洗浄および乾燥させる。さらなる精製は、例えば再結晶またはクロマトグラフィー法によって達成することができる。
本発明の方法によって得られたホスホナートは好ましくは化学工業および製薬工業、繊維工業、石油産業、製紙工業、製糖業、ビール工業、農薬産業および農業において使用される。
【0024】
好ましい用途は、分散剤、水処理剤、スケール防止剤、医薬品および医薬品中間体、洗剤、二次石油採収剤、肥料(fertiliser)および微量栄養素(植物用)である。
【実施例】
【0025】
実施例I−XIVは本発明の製造技術に関し、以下のとおりに製造した。
(実施例I)
111.48g(0.4モル)の96%純度の2−クロロエチルイミノビス(メチレンホスホン酸)(CEIBMPA)を300mlの水と攪拌しながら混合した。30gの水酸化ナトリウム50%溶液(0.375モル)を水で100mlに希釈し、10℃未満で攪拌しながらCEIBMPA水溶液に加えた。次いでこの混合物を95℃〜100℃の温度でよく攪拌しながら162g(2.025モル)の50%水酸化ナトリウムに160分間にわたって加えた。加熱を100℃で60分間さらに続けた。粗反応生成物の31P NMRは、88.3%のCEIBMPAのヒドロキシ同族体の存在を示した;この粗生成物には対応する環状ホスホン酸エステルは存在していなかった。
【0026】
(実施例II)
55.74g(0.2モル)の96%純度の2−クロロエチルイミノビス(メチレンホスホン酸)を10℃で攪拌しながら75mlの水と混合した。この懸濁液に6℃〜8℃で攪拌しながら、60mlの容積に水で希釈した15g(0.1875モル)の50%水酸化ナトリウム溶液を加えた。この混合物をさらに水で希釈し、総容積を200mlとした(溶液1)。49g(0.6125モル)の50%水酸化ナトリウムを水で希釈し、75mlの容積とした(溶液2)。溶液1および溶液2を100mlの水に希釈した59.11g(1モル)のn−プロピルアミンに40℃で攪拌しながら70分間にわたって加えた。反応生成物の31P NMRは、81.6%のホスホン酸、N−n−プロピルエチレンジアミンN’,N’−ビス(メチレンホスホン酸)、6.8%のヒドロキシ(エチルビス(メチレンホスホン酸))および11.6%のN−n−プロピルビス(エチレンジアミンN’,N’−ビス(メチレンホスホン酸))の存在を示した。
【0027】
(実施例III)
55.72g(0.2モル)の96%純度の2−クロロエチルイミノビス(メチレンホスホン酸)を10℃で攪拌しながら150mlの水と混合した。この懸濁液に6℃〜8℃で攪拌しながら水で50gの容積に希釈した15g(0.1875モル)の50%水酸化ナトリウム溶液を加えた。この溶液を室温で攪拌しながら272g(4モル)の25%アンモニア溶液に120分で加え、その後この混合物を95℃で180分間加熱した。反応生
成物の31P NMRは、95%のアミノエチルイミノビス(メチレンホスホン酸)および5%の2−ヒドロキシエチルイミノビス(メチレンホスホン酸)(HOEIBMPA)の存在を示した。
【0028】
(実施例IV)
111.48g(0.4モル)の96%純度の2−クロロエチルイミノビス(メチレンホスホン酸)を10℃で攪拌しながら150mlの水と混合した。この懸濁液に、水で100mlの容積まで希釈した30g(0.375モル)の50%水酸化ナトリウム溶液を6℃〜8℃で攪拌しながら加えた(溶液1)。138g(1.725モル)の水酸化ナトリウムを水で250mlに希釈した(溶液2)。溶液1および2を6℃〜8℃で攪拌しながら13.6g(0.2モル)の25%アンモニア溶液に135分で加え、その後この混合物を95℃で240分間加熱した。反応生成物の31P NMRは、38.5%の2−アミノエチルイミノビス(メチレンホスホン酸);32.5%のイミノビス[エチルイミノビス(メチレンホスホン酸)]および8%の2−ヒドロキシEIBMPAの存在を示した。
【0029】
(実施例V)
111.48g(0.4モル)の96%純度の2−クロロエチルイミノビス(メチレンホスホン酸)を10℃で攪拌しながら300mlの水と混合した。この懸濁液に、水で100mlの容積に希釈した30g(0.375モル)の50%水酸化ナトリウム溶液を6℃〜8℃で攪拌しながら加えた(溶液1)。130g(1.625モル)の50%水酸化ナトリウムを水で250mlに希釈した(溶液2)。
溶液1および2を6℃〜8℃で攪拌しながら54.4g(0.8モル)の25%アンモニア溶液に180分で加え、その後この混合物を60℃〜80℃で300分間加熱した。反応生成物の31P NMRは、22%の2−アミノエチルイミノビス(メチレンホスホン酸);56.2%のイミノビス[エチルイミノビス(メチレンホスホン酸)];11.8%のニトリロトリス[エチルイミノビス(メチレンホスホン酸)]および9.8%のヒドロキシEIBMPAの存在を示した。
【0030】
(実施例VI)
55.72g(0.2モル)の96%純度の2−クロロエチルイミノビス(メチレンホスホン酸)を10℃で攪拌しながら150mlの水と混合した。この懸濁液に、水で50mlの容積に希釈した15g(0.1875モル)の50%水酸化ナトリウム溶液を6℃〜8℃で攪拌しながら加えた(溶液1)。97g(1.2125モル)の50%水酸化ナトリウムを水で120mlに希釈した(溶液2)。
溶液1および2を室温で攪拌しながら4.56g(0.067モル)の25%アンモニア溶液に150分で加え、その後95℃で240分間加熱した。反応生成物の31P NMRは、19.9%のイミノビス[エチルイミノビス(メチレンホスホン酸)];76.3%のニトリロトリス[エチルイミノビス(メチレンホスホン酸)]および3.8%のヒドロキシEIBMPAの存在を示した。
【0031】
(実施例VII 比較)
20.44gのn−プロピルエチレンジアミン(0.2モル)を32.8g(0.4モル)の亜リン酸および59.12g(0.6モル)の37%HCl水溶液と混合した。溶液を攪拌しながら107℃で加熱し、36.10g(0.44モル)の36.6%ホルムアルデヒド水溶液を25分で加えた。さらに107℃で120分間加熱を続けた。反応生成物の31P NMR分析は、37.2%のn−プロピルエチレンジアミントリ(メチレンホスホン酸);28%のN−n−プロピルN−メチレンホスホン酸エチレンジアミン;10.6%のN−n−プロピルエチレンジアミンN’,N’−ビス(メチレンホスホン酸)および11.6%の未変換の亜リン酸の存在を示した。
【0032】
(実施例VIII 比較)
D.Redmore et al.in Phosphorus and Sulfur,1983,Vol 16,pp233−238に従ったHClの存在下でのエチレンジアミンの亜リン酸、ホルムアルデヒドとの反応
30g(0.5モル)のエチレンジアミンを、82g(1モル)の亜リン酸、250mlの水および250ml(2.69モル)の37%HCl水溶液と混合した。この溶液を攪拌しながら110℃に加熱し、90.25g(1.1モル)の36.6%ホルムアルデヒド水溶液を60分で加えた。加熱を110℃で120分間続けた。反応生成物の31P NMR分析は、主要な構成物質として、25.2%のエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸);48.4%の2−アミノエチルイミノビス(メチレンホスホン酸);10.1%のエチレンジアミントリ(メチレンホスホン酸)および4.7%のN−メチルエチレンジアミントリ(メチレンホスホン酸)の存在を示した。
【0033】
(実施例IX)
38.86g(0.4モル)のジアリルアミンを200mlのエタノールおよび100mlの水と混合した。111.48g(0.4モル)の96%純度の2−クロロエチルイミノビス(メチレンホスホン酸)を150gの水および120mlの容積に水で希釈した30g(0.375モル)の50%水酸化ナトリウムと10℃で混合した(溶液1)。98g(1.225モル)の50%水酸化ナトリウムを水で150mlまで希釈した(溶液2)。
溶液1および2を70℃〜75℃で攪拌しながらジアリルアミン溶液に加えた。75℃で3時間加熱を続けた。反応生成物の31P NMR分析は、63%のジアリルアミンモノ−エチル2−イミノビス(メチレンホスホン酸)および10%の2−ヒドロキシエチルイミノビス(メチレンホスホン酸)を示した。
【0034】
(実施例X)
58.66g(0.2モル)の96%純度の3−クロロプロピルイミノビス(メチレンホスホン酸)を10℃で攪拌しながら100mlの水と混合した。この懸濁液に6℃〜8℃で攪拌しながら100mlの容積に水で希釈した32g(0.4モル)の50%水酸化ナトリウム溶液を加えた。18.8g(0.2モル)のフェノールを100mlの水および32g(0.4モル)の50%水酸化ナトリウム溶液と混合した。この溶液を3−クロロプロピルイミノビス(メチレンホスホン酸)溶液に8℃で加えた。50mlに水で希釈した24g(0.3モル)の50%水酸化ナトリウムをこの反応混合物に8℃でさらに加え、得られた混合物を100℃で6時間加熱した。室温にて80mlの濃塩酸を加え、それによって生じた白色沈殿物をろ過によって集めた。洗浄後乾燥させ、白色粉末(44.08gまたは65%収率)が得られた。この生成物の31P NMRは、98%の3−フェノキシプロピルビス(メチレンホスホン酸)を示した。
【0035】
(実施例XI)
26.41g(0.2モル)の硫化ナトリウム三水和物を70mlの水に溶解した。58.65g(0.2モル)の96%純度の3−クロロプロピルイミノビス(メチレンホスホン酸)を100mlの水および16g(0.2モル)の50%水酸化ナトリウムと攪拌しながら10℃で混合した(溶液1)。44g(0.55モル)の50%水酸化ナトリウムを70mlの容積に水で希釈した(溶液2)。溶液1および2をよく攪拌しながら70℃で硫化ナトリウム溶液に加え、添加の完了後加熱を3時間延長した。この反応生成物の31
NMR分析は、89%のジ[プロピル3−イミノビス(メチレンホスホン酸]スルフィドおよび11%の対応するチオールを示した。
【0036】
(実施例XII)
26.41g(0.2モル)の硫化ナトリウム三水和物を70mlの水に溶解した。55
.7g(0.2モル)の2−クロロエチルイミノビス(メチレンホスホン酸)を、75mlの水および15g(0.1875モル)の50%水酸化ナトリウムと攪拌しながら10℃で混合した(溶液1)。49g(0.6125モル)の50%水酸化ナトリウムを100mlの容積に水で希釈した(溶液2)。溶液1および2をよく攪拌しながら10℃で硫化ナトリウム溶液に加えた。次いでこの反応混合物を攪拌しながら80℃で4時間加熱した。この反応生成物の31P NMR分析は、88%のジ[エチル2−イミノビス(メチレンホスホン酸)]スルフィドおよび12%の対応する2−ヒドロキシエチルイミノビス(メチレンホスホン酸)を示した。
【0037】
(実施例XIII)
58.66g(0.2モル)の96%純度の3−クロロプロピルイミノビス(メチレンホスホン酸)を10℃で攪拌しながら100mlの水と混合した。この懸濁液に10℃で攪拌しながら水で60mlの容積に希釈した16g(0.2モル)の50%水酸化ナトリウム溶液を加えた(溶液1)。26.41g(0.2モル)の硫化ナトリウム三水和物を攪拌しながら100mlの水に入れた6.4g(0.2モル)の硫黄と硫黄の溶解が完了するまで混合し、二硫化ナトリウム溶液を製造した。44g(0.55モル)の50%水酸化ナトリウムを水で70mlの容積に希釈した(溶液2)。溶液1および2を室温で攪拌しながらジスルフィド溶液に加え、その後95℃で3時間加熱した。この反応混合物の31P NMRは、58%のジ[プロピルイミノビス(メチレンホスホン酸)]ジスルフィド;20%の対応するモノ−スルフィドおよび9%のヒドロキシプロピルイミノビス(メチレンホスホン酸)を示した。
【0038】
(実施例XIV)
58.66g(0.2モル)の96%純度の3−クロロプロピルイミノビス(メチレンホスホン酸)を10℃で攪拌しながら100mlの水と混合した。この懸濁液に10℃で攪拌しながら水で100mlの容積に希釈した32g(0.4モル)の50%水酸化ナトリウム溶液を加えた(溶液1)。15.22g(0.2モル)のチオ尿素を50mlの水と混合した(溶液2)。溶液2を10℃で攪拌しながら溶液1に加えた。添加が完了した後、水で60mlの容量に希釈した16g(0.2モル)の50%水酸化ナトリウムを10℃で攪拌しながら加えた。反応混合物を95℃で7時間加熱した。次いで32g(0.4モル)の50%水酸化ナトリウムを室温で加え、反応混合物を攪拌しながら100℃で2時間加熱した。反応混合物の31P NMRは、53%のプロピルイミノビス(メチレンホスホン酸)ナトリウムチオラート;17%のジ[プロピルイミノビス(メチレンホスホン酸)]スルフィドおよび16%のヒドロキシプロピルイミノビス(メチレンホスホン酸)を示した。
【0039】
これらの試験データによって一般的な技術と比較して本発明の技術に加えられた主要な利点が確認された。特に:実施例Iは、イギリス特許第2 306 465号の処理に反して、本発明の技術は、例えば水処理適用で無効の環状ホスホナートを実質的に含まない反応生成物を与えることが示される。本発明の実施例II対比較実施例VIIによれば、n−プロピルアミンエチルイミノビス(メチレンホスホン酸)のような所望の種に対する選択性が強調される:実施例II−81.6%、実施例VII−10.6%。本発明の実施例IIIによれば、95%のアミノエチルイミノビス(メチレンホスホン酸)が得られているのに対し、実施例VIIIでは同じ化合物が48.4%である。実施例IVは、32.5%の完全にメチレンホスホナート化された(methylene phosphonated)第1級アミンを有するが、置換されていない第2級アミノ基を保存している化合物と一緒に38.5%のアミノ化合物の形成を示している。このような混合物は既知の方法では合成することができない。実施例IVに関連して明確に述べられる情報は、未反応の第2級アミンおよび完全にメチレンホスホナート化された第1級アミンを保持する56.2%の化合物を与える実施例Vにも等しく当てはまる。この生成物は、従来の方法を用いては意味のある程度
で製造することができない。この側面において、米国特許第4,477,390号の実施例1〜34では、本発明の実施例Vにおいて未反応第2級アミンのレベルが56.2%であるのに対して、2%のレベルでしか形成されないことを示している。この発明性のあるデータは、米国特許第3,974,090号の試験データと比較しても同じように予想外のものである。この‘090特許の実施例IIは、本発明の実施例Vにおける未反応第2級アミンが56.2%であったのと比較した場合、完全にホスホナート化された種への変換の顕著性が目立っている。同じようなことで、この‘090特許の技術の実施例Iでの49%と比較して、本発明の実施例VIは、76.3%のアミノトリスホスホン酸化合物の形成を示している。さらにこの発明性のある技術によって、予め合成されたアミンから出発する技術の厄介なアプローチと比較して誘導体のグラフトを容易にすることが可能である。
【0040】
実施例IXは、高い収率でのビス(メチレンホスホン酸)エチレンジアミンの製造(これにより第2の窒素が2つのアリル(R’)置換基を担持する)の可能性を示している。従来の技術を用いては、この合成には、製造が困難で高価であるN,N−ジ(アリル)エチレンジアミンから出発することが必要となる。実施例X〜XIVは、種々の誘導体の高収率での合成に関する。実施例IXと同等に、これらの方法は、当該分野で確立された線状(linear)アプローチから出発して製造できるものと対比して、特許請求された方法の有用性を実証する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
8またはそれ以上のpHを有する水性媒体中で0℃またはそれ以上の温度にて式:
Y−X−N(W)(ZPO32
を有するホスホン酸化合物と、

部分の前駆体とを反応させることによる、式:
U−[X−N(W)(ZPO32)]s
を有するアルキルアミノアルキレンホスホン酸の製造方法。
構造要素は以下:
Yは、pKaが4.0と等しいかまたは4.0より小さい共役酸である置換基から選択され;
Xは、場合によりC1−C12の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族基によって置換されるC2−C50の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖(該鎖および/または該基は、場合によりOH、COOH、F、OR’、R2O[A−O]x−(ここで、R2は、C1−C50の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖である)およびSR’(ここで、R’は、場合によりC1−C12の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族基によって置換されるC1−C50の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖である)部分によって置換されてもよく、該鎖および/または該基は、場合によりCOOH、OH、F、OR’およびSR’によって置換されてもよい);および[A−O]x−A(ここで、Aは、C2−C9の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖であり、xは、1〜200の整数である)から選択され;
Zは、C1−C6のアルキレン鎖であり;
Mは、HおよびC1−C20の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖から選択され;
Wは、H、ZPO32および[V−N(K)]nKから選択され、ここで、Vは、場合によりC1−C12の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族基によって置換されるC2−C50の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖(該鎖および/または該基は、場合によりOH、COOH、F、OR’、R2O[A−O]x−(ここで、R2は、C1−C50の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖である)およびSR’部分によって置換されてもよい);および[A−O]x−A(ここで、Aは、C2−C9の直鎖、分枝鎖、環状または芳香族の炭化水素鎖であり、xは、1〜200の整数である)から選択され;
Kは、ZPO32またはHであり、nは、0〜200の整数であり;そして
Uは、NH2、NHR’、N(R’)2、NH、N、OH、OR’、S、SH、およびS−Sから選択される部分であり、ここでR’は上に定義されるとおりであり;
UがNH2、NHR’、N(R’)2、HS、OR’、またはOHを表す場合にはsは1であり;UがNH、SまたはS−Sを表す場合にはsは2であり;そしてUがNを表す場合にはsは3である;
の意味を有する。
【請求項2】
反応媒体のpHが9〜14の範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
XがC2−C30または[A−O]x−Aから選択され、ここでUがOHである場合、AはC2−C6であり、xは1〜100である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ホスホナート反応のパートナーにおける個々の部分が、以下:
XはC2−C30または[A−O]x−Aである;
VはC2−C30または[A−O]x−Aである;
から選択され、ここで両方についてXおよびVは独立してAはC2−C6であり、xは1〜100であり;
2はC1−C30であり;
ZはC1−C3であり;
MはHまたはC1−C6であり;そして
nは1〜100である、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
UがNH2;NHR’;N(R’)2;NH;およびNから選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ホスホナート反応のパートナーにおける個々の部分が、以下:
XはC2−C12または[A−O]x−Aである;
VはC1−C12または[A−O]x−Aである;
から選択され、ここで両方についてXおよびVは独立してAはC2−C4であり、xは1〜100であり;
2はC1−C12であり;
ZはC1であり;
MはHまたはC1−C4であり;そして
nは1〜25である、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
Uの前駆体がNH3;NH2R;NH(R’)2;OH-;HOR;Na2S;チオ尿素;およびNa22から選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
YがCl、Br、I、HSO4、NO3、CH3SO3およびp−トルエンスルホナートから選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
分散剤、水処理剤、スケール防止剤、医薬品および医薬品中間体、洗剤、二次石油採収剤、肥料および微量栄養素のための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法によって得られるホスホナートの使用。

【公表番号】特表2010−512370(P2010−512370A)
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540747(P2009−540747)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【国際出願番号】PCT/EP2007/063682
【国際公開番号】WO2008/071689
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(507239570)サームフォス・トレイディング・ゲー・エム・ベー・ハー (9)
【Fターム(参考)】