説明

アルコール濃度検出器

【課題】 簡素な構成で製造しやすく、かつ高い測定制度が得られるアルコール濃度検出器を提供する。
【解決手段】 第一の基板上に水晶振動子とくし型コンデンサとを平面状に設ける。このくし型コンデンサの上を覆うようにアルコールの流路を有する第二の基板を第一の基板に重ねて固定し、上記アルコールの濃度はくし型コンデンサにより誘電率の変化として測定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルコールの濃度を検出する機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アルコールの濃度を簡便に測定することが可能なセンサが求められている。特にメタノールを燃料とする燃料電池であるメタノール燃料電池用のアルコール濃度検出器は、将来各種の用途への応用が期待できる検出器であり、その小型化、高性能化の研究開発が行われている。
【0003】
図1に従来のアルコール濃度検出器の概略図を示す。電極1,2で構成されたコンデンサ3の間を被測定物であるアルコール4が通過する。水晶振動子5は立体的に垂直に配され、リード線6,7,8により、コンデンサ3、電源9と接続されている。
【0004】
図2に図1の構成の等価回路を示す。水晶振動子5は、コイル10、コンデンサ11、抵抗12、コンデンサ13により構成される。ここでコンデンサ3の中をアルコールが通過すると、そのアルコールの濃度によりコンデンサ3の容量が変化する。この容量の変化(誘電率)を周波数の変化として取り出す。この周波数の変化を計測することにより、被測定物であるアルコールの濃度を正確に測定することができる。
【0005】
しかしこの構成では、水晶振動子5は垂直に配置され、またリード線6,7,8を三次元的に配線しなければならず、組立上、面倒であり、特別な実装設備が必要であり、また経年変化でリード線が脱落するなどの不都合が生じ、アルコール測定の信頼性を大きく損なうものであった。
【0006】
特開2008-215993号公報(特許文献1)は、先に考えられた水晶振動子であり、本発明の一実施例ではこの水晶振動子を用いる。この水晶振動子は1枚の基板の両面に対向させて一対の電極を設け、立体配線を不要としたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-215993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、主要部品である水晶振動子、コンデンサを三次元的に配置することなく、製造しやすく取り扱いに便利なアルコール濃度検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、主要部品である水晶振動子、コンデンサを基板に平面的に密着させて固定し、アルコールの流路も板体として基板に設け、全体を平面的に設け、三次元的なリード線をなくし、長い期間の使用にも高い品質を維持できるアルコール濃度検出器である。
【発明の効果】
【0010】
この構成により、部品間の三次元的な立体配線は解消され、長い期間の使用にも高い品質を維持できるアルコール濃度検出器が得られる。
また本発明の検出器はアルコール濃度の測定部と水晶振動子とは離れているので、被測定物が水晶振動子に付着して、その粘弾性が災いして測定に悪影響を及ぼすことがないものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来のアルコール濃度検出器の概略図
【図2】アルコール濃度検出器の等価回路図
【図3】本発明の一実施例におけるアルコール濃度検出器の分解斜視図
【図4】本発明の一実施例におけるアルコール濃度検出器の垂直断面図
【図5】本発明の一実施例におけるアルコール濃度検出器を用いて得た実験データ図
【発明を実施するための形態】
【0012】
図3に示すように、基板14の表面には水晶振動子15の電極16が設けられている。
この電極16に対抗する基板14の裏面には電極17が設けられる。この電極16とリード線18を介して平面状のくし型コンデンサ19が配される。コンデンサ19はリード線20を介して電極端子22に接続され、水晶振動子15の電極16はリード線21を介してリード線23に接続される。この水晶振動子15はモノリシックで片面で振動励起が可能である。
【0013】
もうひとつの基板24は内部に被測定物のアルコールを通過させる流路25が形成される。アルコールは流路25の入口26から入り、出口27から排出される。
【0014】
この基板24は上記基板14の上面に重ねて配され、しかも流路25はコンデンサ19の上部に位置するように設けられる。
【0015】
図4に本発明のアルコール濃度検出器の垂直断面図を示す。流路25を有する基板24は水晶振動子15と一定の間隔を有して重ならないように配置される。
【0016】
なお、くし型コンデンサ19は、結晶の表面弾性波が発生し難いように、Y軸方向が法線となるように配置してある。またこのくし型コンデンサ19は相対向する電極が一定の間隔を保っていれば直線でなくても円環状などほかの形状でもよいことはいうまでもない。
【0017】
一例として、基板14は水晶で形成され、流路25を有する基板24はガラスで形成される。
【0018】
本発明の他の実施例としては、流路25や基板24を設けることなく、基板14のコンデンサ19部分を直接アルコールに浸して、プローブ的な使用をすることも可能である。この場合アルコールが水晶振動子15に飛び散って測定精度を悪くしないように操作することが肝要であり、必要に応じて水晶振動子15を覆う蓋体を設けても良い。
【0019】
またさらに他の実施例として、水晶振動子15は図1に示すタイプを使用し、基板14の表裏に設けた一対の電極のそれぞれにリード線を基板14の表面に這わせて接続しても良い。
【0020】
なお、測定中に水晶振動子15にアルコールが飛び散ると正確な測定が困難となるため、この水晶振動子15を覆う蓋体を基板14に設けることも可能である。
【0021】
図5に本発明の検出器を用いて実験をした結果の、メタノール濃度に対する周波数応答を示す。この図5に示す通りメタノール濃度の増加に応じて周波数がほぼ比例して増加することがわかる。実使用上で重要なメタノール濃度約30wt%付近の測定感度は0.1wt%/Hzであり、1 Hz検出時で満足できる感度を示した。さらに測定の安定度を向上させれば、0.01wt%程度の高精度も十分期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対向する一対の電極によって構成される水晶振動子とくし型コンデンサとが平面状に設けられた第一の基板と、このくし型コンデンサを覆う流路を有し上記第一の基板に重ねて配置された第二の基板とを備えたアルコール濃度検出器。
【請求項2】
上記水晶振動子は蓋体で覆われた請求項1記載のアルコール濃度検出器。
【請求項3】
相対向する一対の電極によって構成される水晶振動子とくし型コンデンサとが平面状に設けられた基板を備えたアルコール濃度検出器。
【請求項4】
上記水晶振動子は蓋体で覆われた請求項3記載のアルコール濃度検出器。
【請求項5】
上記水晶振動子はモノリシックで片面で励起振動を起こさせる請求項1、2、3もしくは4記載のアルコール濃度検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−40778(P2013−40778A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175945(P2011−175945)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(304027279)国立大学法人 新潟大学 (310)