説明

アルミ−ケイ素−亜鉛−希土−マグネシウム−鉄−銅−マンガン−クロム−ジルコニア含有の熱溶融めっき合金及びその製造方法

本発明はチタン合金部材表面被覆専用の熱溶融めっき合金に係り、前記熱溶融めっき合金はアルミと、ケイ素と、亜鉛と、希土元素と、マグネシウムと、鉄と、銅と、マンガンと、クロムと、ジルコニアと、ナノ酸化物顆粒増強剤と、から構成され、各組成成分の、総質量に占める百分比が、ケイ素含有量:8〜24%、亜鉛含有量:1.2〜3.1%、希土元素の含有量:0.02〜0.5%、マグネシウム含有量:0.5〜3.2%、鉄含有量:0.05〜1%、銅含有量:0.05〜0.5%、マンガン含有量:1.0〜2.0%、クロム含有量:0.5〜2.0%、ジルコニア含有量:0.02〜0.5%、ナノ酸化物顆粒増強剤の総含有量:1〜2%で、残量がアルミ及び避けられない不純物であり、前記ナノ酸化物顆粒増強剤がTiO2、CeO2のうちの1種または2種から選択される。本発明により生産される熱溶融めっき合金を採用すると、チタン合金の表面に耐腐蝕、耐摩耗性よい、基材冶金との結合よい被覆層を形成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチタン合金部材表面被覆用の、アルミ−ケイ素−亜鉛−希土−マグネシウム−鉄−銅−マンガン−クロム−ジルコニア含有の熱溶融めっき合金及びその製造方法に係る。
【背景技術】
【0002】
チタン合金は強度が高い、耐腐食性が強いなどの長所を有するため重要な航空材料になっている。チタン合金の使用は機構機の重量の減少、飛行機の性能の向上において重要な意義を有する。然し、チタン合金自身は良好な耐腐食性を有するが、アルミ合金及び合金鋼と接触すると、応力及び環境の協同作用により接触腐蝕が発生しやすくなり、耐腐食性は喪失してしまう。
【0003】
接触腐蝕は1種の電解腐食である。即ち、異なる金属が同一の媒体に接触されたとき、金属電位が異なることによって電位が卑の金属を速く溶け出させ、接触箇所を部分的に腐蝕させる。接触腐蝕を制御する根本的な措置は被覆層材料を合理的に選択し、表面改質を適当に行い及び表面にめっき被覆層処理を行うことによって、接触部材の異なる材料の電位を接近させ、それによって、接触腐蝕を低減または防止する。
【0004】
然し、国内外にはチタン合金の接触を防止することはある程度の効果を得るが、現在の手段は共にある程度の問題が存在しており、主には採用されるめっき被覆層が環境、応力の協同作用により保護効果を非常に喪失しやすく、チタン合金表面の普通のめっき被覆層は接触荷重の作用により非常に脱落しやすく、腐蝕防止作用は非常に喪失しやすく、また、脱落した断片が接触部材の間にアブレシブ摩耗を形成し、部材の失効を激しくする。そのため、飛行機における大量のチタン合金緊締部材に対しては、接触腐蝕による失効問題を至急に解決しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的はチタン合金部材表面被覆用の熱溶融めっき合金を提供し、該熱溶融めっき合金により調製される抗接触腐蝕被覆層は、例え劣悪な環境及び応力の作用下であっても、脱落が発生せず、且つ抗接触腐蝕性が大幅に向上され、それによって、チタン合金とアルミ合金及び鋼鉄材料との接触腐蝕問題を完全に解決した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により提供されるチタン合金部材表面被覆専用の熱溶融めっき合金であって、前記熱溶融めっき合金は、アルミと、ケイ素と、亜鉛と、希土元素と、マグネシウムと、鉄と、銅と、マンガンと、クロムと、ジルコニアと、ナノ酸化物顆粒増強剤と、から構成され、各組成成分の、総質量に占める百分比が、ケイ素含有量:8〜24%、亜鉛含有量:1.2〜3.1%、希土元素の含有量:0.02〜0.5%、マグネシウム含有量:0.5〜3.2%、鉄含有量:0.05〜1%、銅含有量:0.05〜0.5%、マンガン含有量:1.0〜2.0%、クロム含有量:0.5〜2.0%、ジルコニア含有量:0.02〜0.5%、ナノ酸化物顆粒増強剤の総含有量:1〜2%で、残量がアルミ及び避けられない不純物であり、前記ナノ酸化物顆粒増強剤がTiO、CeOのうちの1種または2種から選択される。
【0007】
好ましくは、採用されるナノ酸化物顆粒増強剤が均一の球体顆粒であれば、球体比表面積と平均粒子径とが以下の関係式を満足する。
【0008】
関係式:比表面積=[6/ρ・D](m/g)
式中:Dは平均粒子径を表し、ρは密度を表す。
【0009】
採用されるナノ酸化物顆粒が一般の球体顆粒形状より複雑であれば、被覆層の性能、効果がより理想であることができるため、本発明のより好ましいナノ酸化物顆粒の比表面積が前記式の計算値より大きい。
【0010】
好ましくは、ナノ酸化物顆粒としてTiOを採用する時に、前記TiOの平均粒子径が15〜60nmである。
【0011】
好ましくは、ナノ酸化物顆粒としてTiOを採用する時に、前記TiOの比表面積が20〜90m/gである。
【0012】
好ましくは、ナノ酸化物顆粒としてCeOを採用する時に、前記CeOの平均粒子径が25〜70nmである。
【0013】
好ましくは、ナノ酸化物顆粒としてCeOを採用する時に、前記CeOの比表面積が10〜80m/gである。
【0014】
好ましくは、 ナノ酸化物顆粒増強剤がTiO及びCeOである時に、TiOとCeOとの質量比が1:(1〜3)である。
【0015】
より好ましくは、TiOとCeOとの質量比が1:2である。
【0016】
好ましくは、各組成成分の、総質量に占める百分比が、ケイ素含有量:12〜20%、亜鉛含有量:1.5〜2.5%、希土元素の含有量:0.1〜0.3%、マグネシウム含有量:1〜2.5%、鉄含有量:0.2〜0.8%、銅含有量:0.2〜0.4%、マンガン含有量:1.5〜2.0%、クロム含有量:0.8〜2.0%、ジルコニア含有量:0.1〜0.4%、ナノ酸化物顆粒増強剤の総含有量:1.2〜1.8%である。
【0017】
また、本発明はさらに前記熱溶融めっき合金を製造する方法を提供し、まず雰囲気保護溶錬炉においてアルミ・ケイ素合金を750〜800℃まで加熱して充分に溶解させ、さらに温度を845〜855℃まで上げた後希土元素を加え、撹拌して均一にし、さらに加熱して温度を860〜880℃まで上げた後亜鉛を加え、温度を700〜750℃まで下げた後さらにナノ酸化物顆粒増強剤及びマグネシウム、鉄、銅、マンガン、クロム、ジルコニアを同時に加え、機械、電磁複合撹拌によって均一にし、さらに温度を700〜650℃まで下げて、20〜30分間保温して得る。
【0018】
前記加熱過程における温度上昇速度は10〜40℃/分間であり、前記温度降下過程における速度は20〜60℃/分間である。
【0019】
本発明により提供されるアルミ・ケイ素被覆層は、チタン合金の腐蝕特に高温腐蝕を防止する有効な被覆層であり、アルミが主に高温状況下の腐食性及び持久の抗腐蝕性を提供し、ケイ素が被覆層の耐摩耗性、抗高温腐食性をさらに向上させる。
【0020】
然し、ケイ素含有量の向上に伴って、被覆層の靭性がある程度に低下し、荷重、媒体の協同作用の接触腐蝕に不利であるため、本発明はナノ酸化物顆粒増強剤を添加することによって、被覆層の結晶粒子を微細化し、その靭性を顕著に改善し、同時に抗接触腐蝕能力を顕著に向上させた。さらには、抗大気腐蝕、電気化学腐蝕及び気流浸食に対する被覆層の抵抗力を向上させ、且つ被覆層の強度及び硬度をさらに向上させ、それによって、被覆層によりよい抗浸食性を付与した。
【0021】
さらに、多数回繰り返した実験、スクリーニングした後、適当なナノ酸化物顆粒増強剤の粒子径及び比表面積を選択することによって、被覆層の抗接触腐蝕性をより顕著に向上できる。さらには、ナノ酸化物顆粒増強剤の粒子径が本発明のデータ範囲を採用することは、被覆層の耐摩耗度も大幅に向上でき、一方、ナノ酸化物顆粒増強剤の比表面積が本発明のデータ範囲を採用することは、合金の密集度を大幅に向上させることができ、それによって、合金被覆層の抗浸食性をより顕著に向上する。
【0022】
また、被覆層にさらに添加された亜鉛が非常によい陰極保護性を付与しており、希土が合金の結晶粒子をさらに微細化し、且つ合金の耐摩耗性及び液体流動性を増強する。
【0023】
これをベースにし、さらにマグネシウム、鉄、銅、マンガン、クロム、ジルコニアなどの微合金元素が添加され、これらの微合金元素の添加が結晶粒子をより微細化し、且つ被覆層の強化相を補強し、さらに合金に対して溶相の役割を果たし、且つ被覆層の靭性及び安定性をより改善し、被覆層の強靭性及び耐腐食性をより向上させる。さらには、マグネシウムは被覆層の親和力、耐腐食性及び合金の室温強度を向上させることができ、鉄が抗酸化を向上する役割を有し、銅が硬度及び抗湾曲強度を向上させることができ、マンガンは被覆層の表面品質をさらに改善でき、クロムが初期酸化膜の保護性をさらに向上させることができ、ジルコニアはさらに結晶粒子の組織を顕著に微細化し、被覆層の力学性能及び抗腐食性を向上させることができる。
【0024】
もう一方、本発明はさらに多温度帯で熱溶融めっき合金元素を添加する方法を提供し、該方法を採用すれば、温度の上昇に伴って、ナノ酸化物顆粒増強剤及び各種の元素の分散性の向上に有利であり、それによって、被覆層成分の均一性を改善し、被覆層と基材との結合強度を顕著に向上する。
【0025】
然し、溶体温度が高すぎる時に全ての元素を添加すると、被覆層には高アルミ脆性相が形成しやすく、接触微動荷重の役割に不利である。そのため、本発明はまず多温度帯において一部の熱溶融めっき合金元素を添加し、さらに温度を所定の温度に下げた後ナノ酸化物顆粒増強剤を添加し、最後に温度をさらに下げて且つ所定時間に保温することによって、前記欠陥を克服し、成分が均一で、靭性がよい被覆層を得た。
【0026】
まとめに言うと、本発明は合金及び溶錬プロセスの改善によって、チタン合金の表面に耐腐蝕、耐摩耗性がよい、基材冶金との結合がよい被覆層を形成できる。被覆層の電位がアルミ合金などの材料と接近するため、チタン合金部材とアルミ合金、高温合金などの航空材料との接触腐蝕を防止できる。該熱溶融めっき合金により調製される抗接触腐蝕被覆層を採用すると、例え劣悪な環境及び応力の作用下であっても、脱落が発生せず、且つ抗接触腐蝕性が大幅に向上され、それによって、チタン合金とアルミ合金及び鋼鉄材料との接触腐蝕問題を完全に解決し、航空分野におけるチタン合金の応用の更なる拡大、飛行機の性能の向上の推進に大きな意義がある。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明のチタン合金部材表面被覆専用の熱溶融めっき合金であって、前記熱溶融めっき合金はアルミと、ケイ素と、亜鉛と、希土元素と、マグネシウムと、鉄と、銅と、マンガンと、クロムと、ジルコニアと、ナノ酸化物顆粒増強剤と、から構成され、各組成成分の、総質量に占める百分比が、ケイ素含有量:8〜24%、亜鉛含有量:1.2〜3.1%、希土元素の含有量:0.02〜0.5%、マグネシウム含有量:0.5〜3.2%、鉄含有量:0.05〜1%、銅含有量:0.05〜0.5%、マンガン含有量:1.0〜2.0%、クロム含有量:0.5〜2.0%、ジルコニア含有量:0.02〜0.5%、ナノ酸化物顆粒増強剤の総含有量:1〜2%であり、残量がアルミ及び避けられない不純物であり、前記ナノ酸化物顆粒増強剤がTiO、CeOのうちの1種または2種から選択され、前記避けられない不純物が通常Pb、Sn、Cdなどの、完全に除去できない不純物元素である。
【0028】
さらに、大量に繰り返した実験、スクリーニングした後、適当なナノ酸化物顆粒増強剤の粒子径及び比表面積を選択することによって、被覆層の性能をより顕著に向上でき、採用されるナノ酸化物顆粒が均一の球体顆粒であれば、球体比表面積と平均粒子径とが以下の関係式を満足する。
【0029】
関係式:比表面積=[6/ρ・D](m/g)
式中:Dは平均粒子径を表し、ρは密度を表す。
【0030】
さらに、採用されるナノ酸化物顆粒が一般の球体顆粒形状より複雑であれば、被覆層の性能、効果がより理想であることができるため、本発明のより好ましいナノ酸化物顆粒の比表面積が前記式の計算値より大きい。
【0031】
好ましくは、ナノ酸化物顆粒がTiOを採用する時に、前記TiOの平均粒子径が15〜60nmである。
【0032】
好ましくは、ナノ酸化物顆粒がTiOを採用する時に、前記TiOの比表面積が20〜90m/gである。
【0033】
好ましくは、ナノ酸化物顆粒がCeOを採用する時に、前記CeOの平均粒子径が25〜70nmである。
【0034】
好ましくは、ナノ酸化物顆粒がCeOを採用する時に、前記CeOの比表面積が10〜80m/gである。
【0035】
以下は、表1−3にあわせて、本発明の各組成成分の質量百分比の複数の好適な実施例を挙げるが、本発明の各組成成分の含有量が該表に示されるデータに限定されるものではない。本分野の当業者にとって、表に示されるデータ範囲の上に合理的にまとめ及び推定を行うことが完全にできる。
【0036】
また、特に説明すべきなのは、表1−3にはナノ酸化物顆粒増強剤の粒子径、比表面積の関連データが同時に示されるが、この2つの条件が必要な技術特徴として説明されるものではない。本発明にとって、核心の内容が、所定量のナノ酸化物顆粒増強剤を添加することによって、被覆層の結晶粒子を微細化し、その靭性を改善し、その抗腐蝕能力を向上し、高すぎるケイ素含有量による不良影響を克服する目的を達することにある。一方、これをベースに、さらに適当な粒子径、適当な比表面積を選択することはただこの技術効果をより顕著化し、より優越化するためである。そのため、下記の表1−3においてこの2つのパラメータを同時に示しているが、共により好適な条件とすることのみであり、共に本発明の技術的な情報をより詳細に提出するためで、本発明の必要な条件として説明するではない。
【実施例】
【0037】
実施例1
前記熱溶融めっき合金はアルミと、ケイ素と、亜鉛と、マグネシウムと、鉄と、銅と、マンガンと、クロムと、ジルコニアと、希土元素と、TiOナノ酸化物顆粒増強剤と、から構成され、各組成成分の、総質量に占める百分比が、ケイ素含有量:8〜24%、亜鉛含有量:1.2〜3.1%、希土元素の含有量:0.02〜0.5%、マグネシウム含有量:0.5〜3.2%、鉄含有量:0.05〜1%、銅含有量:0.05〜0.5%、マンガン含有量:1.0〜2.0%、クロム含有量:0.5〜2.0%、ジルコニア含有量:0.02〜0.5%、TiOの総含有量:1〜2%で、残量がアルミである。具体的には表1に示すとおりである。
【0038】
【表1】

【0039】
実施例2
前記熱溶融めっき合金はアルミと、ケイ素と、亜鉛と、マグネシウムと、鉄と、銅と、マンガンと、クロムと、ジルコニアと、希土元素と、CeOナノ酸化物顆粒増強剤と、から構成され、各組成成分の、総質量に占める百分比が、ケイ素含有量:8〜24%、亜鉛含有量:1.2〜3.1%、希土元素の含有量:0.02〜0.5%、マグネシウム含有量:0.5〜3.2%、鉄含有量:0.05〜1%、銅含有量:0.05〜0.5%、マンガン含有量:1.0〜2.0%、クロム含有量:0.5〜2.0%、ジルコニア含有量:0.02〜0.5%、CeOの総含有量:1〜2%で、残量がアルミである。具体的には表2に示すとおりである。
【0040】
【表2】

【0041】
実施例3
前記熱溶融めっき合金はアルミと、ケイ素と、亜鉛と、マグネシウムと、鉄と、銅と、マンガンと、クロムと、ジルコニアと、希土元素と、ナノ酸化物顆粒増強剤と、から構成され、ナノ酸化物顆粒増強剤がTiO及びCeOであり、且つTiOとCeOとの割合が1:(1〜3)であり、各組成成分の、総質量に占める百分比が、ケイ素含有量:8〜24%、亜鉛含有量:1.2〜3.1%、希土元素の含有量:0.02〜0.5%、マグネシウム含有量:0.5〜3.2%、鉄含有量:0.05〜1%、銅含有量:0.05〜0.5%、マンガン含有量:1.0〜2.0%、クロム含有量:0.5〜2.0%、ジルコニア含有量:0.02〜0.5%、TiO及びCeOの総含有量:1〜2%で、残量がアルミである。具体的には表3に示すとおりである。
【0042】
【表3】

【0043】
実施例1−3において、好ましくは、各組成成分の総質量に占める百分比が、ケイ素含有量:12〜20%、亜鉛含有量:1.5〜2.5%、希土元素の含有量:0.1〜0.3%、マグネシウム含有量:1〜2.5%、鉄含有量:0.2〜0.8%、銅含有量:0.2〜0.4%、マンガン含有量:1.5〜2.0%、クロム含有量:0.8〜2.0%、ジルコニア含有量:0.1〜0.4%、ナノ酸化物顆粒増強剤の総含有量:1.2〜1.8%である。
【0044】
より好ましくは、前記ケイ素含有量が15〜20%で、さらに好ましくは19%である。
【0045】
また、大量に繰り返して実験した結果、本発明により採用されるナノ酸化物顆粒増強剤の緩め密度に対しても選択できれば、最終に得られる被覆層の性能、効果がより理想的であることがさらに発見された。
【0046】
TiOを採用すれば、好ましくは、前記TiOの緩め密度が3g/cm以下である。
【0047】
CeOを採用すれば、好ましくは、前記CeOの緩め密度が5g/cm以下である。
【0048】
TiO及びCeOを同時に採用すれば、好ましくは、前記TiO及びCeOの平均緩め密度が0.6〜4.5g/cmである。
【0049】
また、本発明はさらに前記熱溶融めっきアルミ鋳造合金を製造する方法を提供し、アルミ、ケイ素、亜鉛、希土元素、マグネシウム、鉄、銅、マンガン、クロム、ジルコニア及びナノ酸化物顆粒増強剤の質量百分比に基づいて材料を準備し、まず雰囲気保護溶錬炉においてアルミ・ケイ素合金を750〜800℃まで加熱して充分に溶解させ、さらに温度を845〜855℃まで上げた後希土元素を加え、撹拌して均一にし、さらに加熱して温度を860〜880℃まで上げた後亜鉛を加え、温度を700〜750℃まで下げた後さらにナノ酸化物顆粒増強剤及びマグネシウム、鉄、銅、マンガン、クロム、ジルコニアを同時に加え、機械、電磁複合撹拌によって均一にし、さらに温度を700〜650℃まで下げて、20〜30分間保温して得る。
【0050】
好ましくは、アルミ、ケイ素、亜鉛、希土元素、マグネシウム、鉄、銅、マンガン、クロム、ジルコニア及びナノ酸化物顆粒増強剤の質量百分比に基づいて材料を準備し、まず雰囲気保護溶錬炉においてアルミ・ケイ素合金を780〜800℃まで加熱して充分に溶解させ、さらに温度を850〜855℃まで上げた後希土元素を加え、撹拌して均一にし、さらに加熱して温度を870〜880℃まで上げた後亜鉛を加え、温度を730〜700℃まで下げた後さらにナノ酸化物顆粒増強剤及びマグネシウム、鉄、銅、マンガン、クロム、ジルコニアを同時に加え、機械、電磁複合撹拌によって均一にし、さらに温度を680〜650℃まで下げて、20〜25分間保温して得る。
【0051】
好ましくは、温度を720〜700℃まで下げた後ナノ酸化物顆粒増強剤及びマグネシウム、鉄、銅、マンガン、クロム、ジルコニアを同時に加え、最後に温度を690〜660℃まで下げて22〜28分間保温して得る。
【0052】
より好ましくは、温度を710℃まで下げた後ナノ酸化物顆粒増強剤及びマグネシウム、鉄、銅、マンガン、クロム、ジルコニアを同時に加え、最後に温度を680℃まで下げて25分間保温して得る。
【0053】
前記加熱過程における温度上昇速度が10〜40℃/分間で、前記温度降下過程における速度が20〜60℃/分間である。
【0054】
好ましくは、前記加熱過程における温度上昇速度が20〜30℃/分間で、前記温度降下過程における速度が30〜50℃/分間である。
【0055】
より好ましくは、前記加熱過程における温度上昇速度が25℃/分間で、前記温度降下過程における速度が40℃/分間である。
【0056】
屈曲加工及び耐腐食性実験結果
実施例4
Ti6A14Vボルトを処理した後、本発明の熱溶融めっき合金を採用してめっき被覆材料とし、300μm厚さの被覆層を形成し、アルミ合金部材と接触させ、航空標準HB5374を参照し、3%NaCl溶液において標準電解腐蝕試験を行った。平均ガルバニー電流密度は0.74であり、Bクラスの抗腐蝕標準に達し、且つ被覆層においてひび割れが発見されなかった。普通のめっき被覆材料を採用すると、ほんの数ヶ月後に顕著な腐蝕が発生した。
【0057】
実施例5
TA6部材を処理した後、本発明の熱溶融めっき合金を採用してめっき被覆材料とし、200μm厚さの被覆層を形成し、GH30部材と接触させ、航空標準HB5374を参照し、3%NaCl溶液において標準電解腐蝕試験を行った。平均ガルバニー電流密度は0.27であり、Aクラスの抗腐蝕標準に達し、且つ被覆層においてひび割れが発見されなかった。
【0058】
一方、普通のめっき被覆材料を採用すると、ほんの数ヶ月後には顕著な腐蝕が発生した。まとめに言うと、本発明はめっき被覆材料、めっき被覆プロセスの改善によって、チタン合金の表面に耐腐蝕、耐摩耗性がよい、基材冶金との結合がよい被覆層を形成することができる。本発明に行われるいずれかの適切な改善は、共に本発明の要旨から逸脱せず、共に本発明の保護の範囲内に属する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン合金部材表面被覆専用の熱溶融めっき合金であって、
前記熱溶融めっき合金はアルミと、ケイ素と、亜鉛と、希土元素と、マグネシウムと、鉄と、銅と、マンガンと、クロムと、ジルコニアと、ナノ酸化物顆粒増強剤と、から構成され、
各組成成分の、総質量に占める百分比が、ケイ素含有量:8〜24%、亜鉛含有量:1.2〜3.1%、希土元素の含有量:0.02〜0.5%、マグネシウム含有量:0.5〜3.2%、鉄含有量:0.05〜1%、銅含有量:0.05〜0.5%、マンガン含有量:1.0〜2.0%、クロム含有量:0.5〜2.0%、ジルコニア含有量:0.02〜0.5%、ナノ酸化物顆粒増強剤の総含有量:1〜2%であり、残量がアルミ及び避けられない不純物であり、前記ナノ酸化物顆粒増強剤がTiO、CeOのうちの1種または2種から選択される、チタン合金部材表面被覆専用の熱溶融めっき合金。
【請求項2】
前記ナノ酸化物顆粒増強剤が均一の球体顆粒であり、且つ、前記ナノ酸化物顆粒増強剤の比表面積と平均粒子径とが以下の関係式を満足する、請求項1に記載の熱溶融めっき合金。
関係式:比表面積(m/g)=6/ρ・D
式中:Dは平均粒子径を表し、ρは密度を表す
【請求項3】
前記TiOの平均粒子径が15〜60nmである、請求項1に記載の熱溶融めっき合金。
【請求項4】
前記TiOの比表面積が20〜90m/gである、請求項1または3に記載の熱溶融めっき合金。
【請求項5】
前記CeOの平均粒子径が25〜70nmである、請求項1に記載の熱溶融めっき合金。
【請求項6】
前記CeOの比表面積が10〜80m/gである、請求項1または5に記載の熱溶融めっき合金。
【請求項7】
前記ナノ酸化物顆粒増強剤がTiO及びCeOであり、且つ、TiOとCeOとの質量比が1:(1〜3)である、請求項1に記載の熱溶融めっき合金。
【請求項8】
前記各組成成分の、総質量に占める百分比が、ケイ素含有量:12〜20%、亜鉛含有量:1.5〜2.5%、希土元素の含有量:0.1〜0.3%、マグネシウム含有量:1〜2.5%、鉄含有量:0.2〜0.8%、銅含有量:0.2〜0.4%、マンガン含有量:1.5〜2.0%、クロム含有量:0.8〜2.0%、ジルコニア含有量:0.1〜0.4%、前記ナノ酸化物顆粒増強剤の総含有量:1.2〜1.8%である、請求項1に記載の熱溶融めっき合金。
【請求項9】
請求項1に記載の熱溶融めっき合金を製造する方法であって、
アルミ、ケイ素、亜鉛、希土元素、マグネシウム、鉄、銅、マンガン、クロム、ジルコニア及びナノ酸化物顆粒増強剤の質量百分比に基づいて材料を準備し、
まず真空または雰囲気保護炉においてアルミ・ケイ素合金を750〜800℃まで加熱して充分に溶解させ、
さらに温度を845〜855℃まで上げた後希土元素を加え、
撹拌して均一にし、さらに加熱して温度を860〜880℃まで上げた後亜鉛を加え、
温度を750〜700℃まで下げた後さらに前記ナノ酸化物顆粒増強剤及びマグネシウム、鉄、銅、マンガン、クロム、ジルコニアを同時に加え、
機械、電磁複合撹拌によって均一にし、さらに温度を700〜650℃まで下げて、20〜30分間保温して得る、請求項1に記載の熱溶融めっき合金を製造する方法。
【請求項10】
前記加熱過程における温度上昇速度が10〜40℃/分間で、前記温度降下過程における速度が20〜60℃/分間である、請求項9に記載の方法。

【公表番号】特表2013−510945(P2013−510945A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538171(P2012−538171)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【国際出願番号】PCT/CN2010/071487
【国際公開番号】WO2011/079556
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(512127349)江▲蘇▼麟▲龍▼新材料股▲ふん▼有限公司 (3)
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU LINLONG NEW MATERIALS Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.186 Fanjiazhuang Rongdong Village, Yuqi Town, Huishan Wuxi, Jiangsu 214183 China