アレルギー改善機能食品およびその製造方法
【課題】原料の安定供給が可能で且つ低コストにして、アレルギーを改善し、さらに整腸作用の働きも促すことができるアレルギー改善機能食品およびその製造方法を提供する。
【解決手段】藤の茎を切断してチップ状体とし、次に、該チップ状体を洗浄し、続いて、該チップ状体を微粒粉砕して微粒体又は粉末からなる粉粒体とし、その後、該粉粒体をそのまま食品用原料に加えて食品原料とし、該食品原料を加工して抗アレルギー機能を付与し、整腸作用をさらに付与する。
【解決手段】藤の茎を切断してチップ状体とし、次に、該チップ状体を洗浄し、続いて、該チップ状体を微粒粉砕して微粒体又は粉末からなる粉粒体とし、その後、該粉粒体をそのまま食品用原料に加えて食品原料とし、該食品原料を加工して抗アレルギー機能を付与し、整腸作用をさらに付与する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルギーの治療や予防に有用なアレルギー改善機能食品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物の藤は、江戸時代に「本草綱目」や「大和本草」で根,瘤,葉,花,実が取り上げられている。そして、最近、藤を用いた発明もいくつか提案されている(例えば特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−73290号公報
【特許文献2】特開2005−245391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、特許文献1の発明は、ステムセルファクター結合阻害剤、外用剤組成物及び美白用組成物に関するものにとどまる。特許文献2の健康補助食品や健康補助菓子は藤の種子を原材料にした発明内容となっている。他に、『マメ科資源植物便覧』(日本科学協会,1987)、『藤なんでも百科』(春日部市,1996)、草川俊著『有用草木博物事典』(東京堂出版,1992)等に藤が紹介されているが、藤は瘤を胃癌の抗ガン剤として使用されたり、花や葉がてんぷらやおひたしにして食されたりする記事内容でしかない。藤の茎が食品に使用された事実は見当たらない。さらに、藤の茎がアレルギーの治療や予防に役立つといった報告も見当たらない。
【0005】
厚生労働省の調査では日本人の3人に1人が何らかのアレルギー症状に悩んでいるとされる。最も重篤なアレルギー疾患である喘息では年間6000人もの死亡報告がされ、こうしたアレルギーを起こす原因物質はアレルゲンと呼ばれ、ストレスや食物、ハウスダスト等が主な原因といわれている。以前は子供の頃のアレルギーは成長するにつれて低減化していくと言われていたが、最近では花粉症の発症、加齢後の難活化、重傷化の報告も多い。
こうしたなか、本発明者等は鋭意研究を重ね、藤の茎にアレルギー反応を抑える働きがあるのを見出し、アレルギーの治療や予防に役立つ機能食品の発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、アレルギーを改善し、さらに整腸作用の働きも促すことができるアレルギー改善機能食品およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、請求項1に記載の発明の要旨は、藤の茎が食品原料に含まれて、抗アレルギー機能が付与されてなることを特徴とするアレルギー改善機能食品にある。請求項2に記載の発明の要旨は、藤の茎を微粒化または粉末化させた粉粒体が食品原料に含まれて、抗アレルギー機能が付与されてなることを特徴とするアレルギー改善機能食品にある。請求項3の発明たるアレルギー改善機能食品は、請求項2で、粉粒体が食品原料に含まれて、整腸作用がさらに付与されてなることを特徴とする。
請求項4に記載の発明の要旨は、藤の茎を切断してチップ状体とし、次に、該チップ状体を洗浄し、続いて、該チップ状体を微粒粉砕して微粒体又は粉末からなる粉粒体とし、その後、該粉粒体をそのまま食品用原料に加えて食品原料とし、該食品原料を加工して抗アレルギー機能を付与することを特徴とするアレルギー改善機能食品の製造方法にある。請求項5の発明たるアレルギー改善機能食品の製造方法は、請求項4で、粉粒体を食品用原料に加えて食品原料にし、該食品原料を加工して整腸作用をさらに付与することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアレルギー改善機能食品およびその製造方法は、藤の茎を食品原料に含ませてアレルギーを改善し、また整腸作用の働きも促し、さらに低コストで生産が可能になるなど多大な効を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の原料になる藤の茎を剪定、採取する説明画像図である。
【図2】図1の藤の茎をチップ状体とする説明画像図である。
【図3】滅菌処理装置の説明画像図である。
【図4】造粒装置の説明画像図である。
【図5】乾燥装置の説明画像図である。
【図6】打錠機の説明画像図である。
【図7】錠剤の説明画像図である。
【図8】顆粒機の説明画像図である。
【図9】アレルギー反応血液検査のグラフである。
【図10】アレルギー反応血液検査のグラフである。
【図11】アレルギー反応血液検査のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るアレルギー改善機能食品およびその製造方法について詳述する。
(1)アレルギー改善機能食品の製造方法
図1〜図11は本発明の一形態で、図1は原料になる藤の茎を剪定、採取する説明画像図、図2は藤の茎をチップ状体とする説明画像図である。図3は滅菌処理装置、図4は造粒装置、図5は乾燥装置、図6は混合機の説明画像図、図7は錠剤の説明画像図、図8は顆粒機の説明画像図を示す。図9〜図11はアレルギー反応を調べた血液検査グラフである。
【0011】
アレルギー改善機能食品の製造方法は次のように行う。
(1−1)錠剤の製造方法
アレルギー改善機能食品が錠剤の場合、例えば以下のように製造する。
まず、藤の茎を準備する。藤は、「マメ科フジ属の蔓性落葉木本の総称。山野に広く自生するヤマフジ(蔓は左巻き)とノダフジ(蔓は右巻き)のほか、観賞用の多くの園芸品種がある。幹の長さ10メートル以上、他物にからむ。葉は羽状複葉。5〜6月頃淡紫色または白色の蝶形の花を長い花穂で垂れる。」(広辞苑)とある。また、藤(wisteria)は、「マメ科のつる性落葉低木で、ノダフジともいう。北海道を除く日本各地の山野に広く分布し、観賞用としても古くから庭園などで栽培されている。幹はつる状に著しく長く伸び、右巻きに他物にからみつく。葉は柄のある奇数羽状複葉で、4〜9対の卵形ないし卵状長楕円状の小葉から成り、葉質は薄く両面にわずかに毛がある。春に、枝先に長さ20〜40cmもある総状花序を多数垂下し、紫色の蝶形花を基部から次々に開く。果実の莢は細毛でおおわれている。花色が淡紅色のアカバナフジ、白色のシロバナフジ、重弁花のヤエフジなどがある。多くは棚づくりにして栽培される。つるはじょうぶで、物を縛ったり、籠材に利用され、種子は食用にすることもある。おもに西日本の産地に自生する近緑種のヤマフジ(山藤)は葉の小葉の数が1〜2対少なく、また花序も10〜20cmと短く、花はほぼ同時に開花して、フジのように順次に咲くことはない。茎が左巻きにからむ点もフジとは逆である。」(ブリタニカ国際大百科事典)とある。藤には、野藤,山藤,長崎一歳藤,八房藤,野田長藤,本紅藤,錦藤,昭和紅藤,岡山一歳藤など多数の品種があるが、本発明でいう藤は、マメ科フジ属に含まれれば、特にその種類,品種を問わない。本発明と同様の用途発明効果が得られるからである。
【0012】
本実施形態の藤は九尺藤を用いている。藤の花が咲いた後(5月)、その年の藤の茎をその年の12月から翌年の2月までに剪定して、藤の茎を採取する。この茎は、藤の花が咲き枯れた後に新芽が出て、該新芽が延びてなる茎(蔓)で、これを剪定、採取する(図1)。該茎は茎径が約2cmφで茎長さが4mほどにもなる。茎は、「高等植物において根・葉とならぶ基本的な器官。胚の幼芽が発達したもので、枝葉をつけ、根を生じる」(広辞苑)とあり、また蔓は、「他物に巻き付いたり付着したりしながら成長していく植物。また、特にその茎(フジ・ツタの類)や巻きひげ(エンドウ・キュウリの類)などの器官」(広辞苑)とある。茎に蔓が含まれる。本発明でいう藤の茎は藤の地上茎をいう。
【0013】
次に、前記採取した藤の茎を、1cm〜20cmほどの長さに切断(切裁)してチップ状体とする(図2)。チップ状体のなかに混ざり込んだ異物を取り除いた後、該チップ状体をカゴ容器に収容する。これらを次工程の粉砕工場へ移送する。
【0014】
粉砕工場では、前記カゴ容器に収容されたチップ状体を洗浄した後、乾燥させる。そして、該チップ状体の検査を行って不良品,異物を取り除く。検査を終えた後、該チップ状体をカッターミルで粗粉砕し、藤の該茎をスクリーン網目4mm通しの粗粒体にまでする。そして、一辺4mmの網目を通過させたこの粗粒体を減圧加熱撹拌乾燥させ(例えば121℃で25分間)、滅菌処理する。図3はこの滅菌処理装置を示す。滅菌処理を終えた該粗粒体が、一般生菌数3000/g以下、且つ大腸菌群が陰性であることを測定確認し、次工程へ進む。一般生菌数の測定は標準寒天培養法、大腸菌群の測定はデソキシコレート寒天培養法による。
【0015】
次いで、微粉砕工程に入る。一次粉砕として、前記滅菌処理された粗粒体を高速度粉砕機にかけ、スクリーン網目0.7mm通しの粒体にする。さらに、二次粉砕の仕上げ微粒粉砕として回転通気式ボールミルにかけ、該粒体を微粒粉砕して微粒体又は粉末からなる粉粒体とする。
【0016】
かくのごとく、藤の該茎は仕上げ微粒粉砕を経て粉粒体になる。その後、該粉粒体は振動シフターによって設定規格値以上の大きさのものを異物として取り除き、さらに金属探知機で金属異物を取り除く異物処理工程へと向かい、これを終了する。振動シフター及び金属探知機による異物処理を終えた後の藤の茎からなる該粉粒体は、平均粒径(球相当径)が約5μになっている。該粉粒体の分析を財団法人日本食品分析センターに依頼した。その分析試験結果は表1のごとくであった。
【0017】
【表1】
【0018】
前記異物処理工程を終えた後の粉粒体は、秤量、均質性を高める造粒工程、乾燥工程へと進む。図4は造粒工程で用いた汎用流動層造粒装置、図5は乾燥工程で用いた汎用箱型乾燥装置を示す。
【0019】
前記乾燥工程を終え、次いで、藤の茎からなる該粉粒体を、溶解操作,抽出操作等を行わずに、そのまま乳糖やデンプン等の賦形剤,デンプン糊等の結合剤,デンプン等の崩壊剤,ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤等の添加剤(食品用原料)に加えて、錠剤用食品原料を造る混合工程に進む。ここでの添加剤はデンプン、菜種硬化油脂、及びドロマイトとした。混合工程では、これらを混ぜて均一に混合する。本実施形態の錠剤用食品原料配合比率は、藤の茎の粉粒体85重量部、デンプン9重量部、菜種硬化油脂5重量部、ドロマイト1重量部とした。
しかる後、該粉粒体が上記添加剤(食品用原料)に加えられてなる上記混合工程後の食品原料を、打錠機(図6)の型内に充填、圧縮して成形加工し、図7のような錠剤を造る。こうして、抗アレルギー機能を付与するアレルギー改善機能食品たる所望の錠剤を完成させた。
【0020】
(1−2)顆粒の製造方法
前記錠剤の製造方法で、混合工程までは同じように進行する。その後、前記粉粒体が前記添加剤(食品用原料)に加えられてなる混合工程後の食品原料を、前記打錠機に代わって公知の顆粒機(図9)を使用して、顆粒に成形加工する。抗アレルギー機能を付与するアレルギー改善機能食品たる所望の顆粒が完成する。味が殆どない顆粒製品が出来上がる。また、前記混合工程後の食品原料に調味料の味付け原料をさらに加えて味付き食品原料とした後、この味付き食品原料を、顆粒機(図9)を使用して、味付き顆粒に成形することもできる。抗アレルギー機能を付与するアレルギー改善機能食品たる所望の味付き顆粒ができる。
【0021】
(1−3)てんぷら粉等の食品の製造方法
前記錠剤の製造方法で、振動シフター,金属探知機で異物処理工程を終えた後の藤の茎からなる粉粒体に溶解操作や抽出操作を行わずに、該粉粒体をそのままてんぷら用粉(食品)の食品用原料に加える。粉粒体と食品用原料との混合操作により、該粉粒体が食品用原料内に均一に分散するよう均質加工して、アレルギー改善機能食品たる所望のてんぷら粉とする。また、該てんぷら粉と同様、上記異物処理工程を終えた後の藤の茎からなる粉粒体を、ハンバーグ(食品)の食品用原料に加えて、?和操作により均質加工し、さらにハンバーグ形状に成形加工し、アレルギー改善機能食品たる所望のハンバーグとすることができる。さらに、上記てんぷら粉やハンバーグに代え、前記振動シフター及び金属探知機で異物処理工程を終えた粉粒体を、食品用原料(例えばクッキー等の菓子やパン、又は餅などの原料)に加えた食品原料を調理加工して、抗アレルギー機能を付与した菓子,パン,餅等を造るアレルギー改善機能食品の製造方法とすることもできる。
【0022】
(2)アレルギー改善機能食品
前記製法により得られたアレルギー改善機能食品たる錠剤は、藤の茎が食品原料に含まれて、後述の評価試験の結果のごとく、抗アレルギー機能が付与される。該錠剤は、藤の茎を微粒化または粉末化させた粉粒体が溶解処理や抽出処理を伴わずにそのまま食品原料に含まれており、抗アレルギー機能が付与されている。さらに、食品原料中に、微粒化または粉末化させた粉粒体は、藤の茎成分すべてを構成要素としてもち、多くの植物繊維を含んで整腸作用が付与される錠剤になっている。
【0023】
前記錠剤の検査成績は、形状9φAR、重量が規格値300.00mg±5.0%に対し、298.9mg〜301.1mg、Ave:300.2mgで、厚さが5.04mm〜5.08mm、Ave:5.06mmで、硬度が規格値3.0kgf以上に対し、7.7kgf〜9.0kgf、Ave:8.2kgfで、水分は規格値7.0%に対し、2.8%であった。硬度の検査は木屋式硬度計を用い、上記水分の検査は赤外線水分計(105℃、15分)を用いた。
また、該錠剤は一般生菌数が規格値3,000個/g以下に対し、検査結果3,000個/g以下であり、大腸菌群が規格値陰性に対し、検査結果は陰性であった。
【0024】
尚、本アレルギー改善機能食品は、前記顆粒の製造方法における混合工程後の食品原料を粒子サイズが大きくしてなる顆粒にもできる。また、該顆粒をパンやクッキー等の菓子や餅などの食品用原料に加えて調理加工して、抗アレルギー機能を付与したパン,菓子等のアレルギー改善機能食品とすることができる。藤の茎を微粒化または粉末化させた粉粒体がそのまま食品原料に含まれており、抗アレルギー機能が付与され、整腸作用がさらに付与された製品にもなる。勿論、前記てんぷら粉等の食品の製造方法で、振動シフター,金属探知機で異物処理工程を終えた後の藤の茎からなる粉粒体を、てんぷら用粉(食品)等の食品用原料に加えて、これらを混合操作で均一に分散加工して、アレルギー改善機能食品たる所望のてんぷら粉等にできる。さらに調理加工してハンバーグや、抗アレルギー機能を付与した菓子,パン,餅等とすることができる。
【0025】
(3)アレルギー改善機能食品の評価試験
(3−1)
次に、前記製造方法によって得たアレルギー改善機能食品たる錠剤が、アレルギー改善機能を有するか否かの評価試験を行った。
15名の被験者に、該錠剤を毎食前に5錠ずつ飲んでもらい、これを30日間以上続けた。各被験者について、錠剤服用前後の血液内に残るアレルゲンの量[Ua/ml]を検査した。その検査結果を図9〜図11に示す。当該検査結果は株式会社近畿予防医学研究所に依頼した。図中、H22.4.6は錠剤服用前の検査日付、H22.6.29,H22.5.28,H22.5.25等は被験者が30日間以上錠剤服用した後の検査日付である。また、図中のグラフ縦軸は0.34をゼロ基準とし、被験者15名のなかでアレルゲン量[Ua/ml]の最大値を、グラフの上限100とした。検査結果の0.34はアレルギー反応なしを表す。
【0026】
図9〜図11から、本アレルギー改善機能食品たる錠剤に抗アレルギー機能が付与されている。被験者15名中13名にアレルギー反応の減少傾向がみられた。なかでも、スギやヒノキの花粉症が改善された人が15名中、10名で、本アレルギー改善機能食品たる錠剤が花粉アレルギーの低減に特に有効であることが判明した。
【0027】
(3−2)
また、平成20年3月〜7月に、前記製造方法によって得たアレルギー改善機能食品たる錠剤を、233人に毎食前5錠ずつ30日間飲んでもらいモニターした。233人中、自覚症状のない者が内77名いた。自覚症状のあった156人の症状を6項目に分類し、複数の症状を自覚する者を延べ件数で計上し、表2にまとめた。
【0028】
【表2】
【0029】
前記233人のうち、平成20年9月に無作為に100人の該錠剤服用者を対象にアンケート調査をした。有効回答数は84名であった。アンケート回答者の症状改善を表3にまとめた。
【0030】
【表3】
【0031】
表3から、本アレルギー改善機能食品たる錠剤が、アレルギー低減に有効であるだけでなく、便秘・下痢・便通を改善し、該錠剤に整腸作用が働くことも明らかになった。
【0032】
(4)効果
食品原料に藤の茎が含まれると、抗アレルギー機能を発揮し、その食品はアレルギーの治療や予防に有用なアレルギー改善機能食品となる。図9〜図11に示すごとく、このアレルギー改善機能食品を服用又は食することによって、血液中のアレルゲンの量を下げる効果がある。アレルギーを緩和し、アレルギー低減に優れた効果を発揮する。その理由は定かではないが、表1に示した藤の茎からなる粉粒体中の成分,化合物が有効に働くと考えられる。はっきりした理由は判らないが、該粉粒体に含有するアルギニン(272mg/g)は免疫機能を高め、アスパラギン酸(599mg/g)は抵抗力を高めるといわれており、これらが複合的に関係しているとも考えられる。
【0033】
さらに、本発明に係る藤の茎、とりわけ藤の花が咲き枯れた後に新芽が出て、該新芽が延びてなる茎は、生育が速く毎年数多く出現するので、本発明用原料の確保に困らない。剪定,採取して、低コストで藤の茎の原料確保ができる。藤が用いられるといっても、特許文献2の種子等と違って、その茎原料を安く且つ安定的に仕入れることができる。本アレルギー改善機能食品を低コスト生産できることから、広く普及させ、アレルギー改善等に貢献できる優れものになる。定期的な剪定などで大量発生する藤の茎は、これまでその一部が付加価値の低い結束用に用いられたが、大半は廃棄処分される状況にある。本発明は藤の茎に従来にない高付加価値を付与し、画期的な新規発明になっている。
【0034】
加えて、表3に示すごとく、本アレルギー改善機能食品を服用又は食することによって、整腸作用を促す効果がある。便秘,下痢,便通を改善する効果がある。藤の茎からなる粉粒体中に含む食物繊維(69.8g/100g)、水溶性食物繊維(2.3g/100g)、不溶性食物繊維(67.5g/100g)等が効を奏すると考えられる。藤の茎からなる粉粒体を例えば固体抽出すれば、大半の不溶性食物繊維等が抽残物として除かれ失われるが、本発明は該粉粒体をそのまま食品用原料に加えて食品原料とするので、藤の茎中の食物繊維等がアレルギー改善機能食品に全て含まれる。
【0035】
また、本アレルギー改善機能食品及びその製造方法によれば、実施形態に示した錠剤,顆粒に限らず、様々な健康機能食品に簡単に展開できる。例えばパン原料やクッキー等の菓子原料(食品用原料)に、振動シフター,金属探知機で異物処理工程を終えた後の藤の茎からなる粉粒体を加えて、アレルギー改善機能食品たるパンや餅、さらに菓子等に容易にできる。前記顆粒は錠剤と同じようにそのまま服用食品として服用できるが、例えば雑穀米に加えて、雑穀米たるアレルギー改善機能食品とすることもできる。勿論、該顆粒で前記アレルギー改善機能食品たるパンや餅、さらに菓子等にできる。また、前記味付け顆粒は例えば炊き込みご飯の素原料に加えて、炊き込みご飯の素等にすることができる。
このように、本アレルギー改善機能食品及びその製造方法は、その食品を食することによって、アレルギー低減作用、さらには整腸作用をも働かせ、健康回復,健康増進に役立てることができ極めて有益である。
本実施形態は九尺藤について説明したが、甲比丹藤や黒龍藤等についても同じように実施し、前記と同様の効果が得られるのを確認している。
【0036】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。藤は実施形態で用いた九尺藤に限らず、他の藤を適宜選択できる。また、藤の茎も、前記藤の花が咲き枯れた後に新芽が出て、該新芽が延びてなる茎(蔓)が食品原料の安定確保等で好ましいが、これに限ることなく、藤の他の地上茎、蔓等を用いることができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルギーの治療や予防に有用なアレルギー改善機能食品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物の藤は、江戸時代に「本草綱目」や「大和本草」で根,瘤,葉,花,実が取り上げられている。そして、最近、藤を用いた発明もいくつか提案されている(例えば特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−73290号公報
【特許文献2】特開2005−245391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、特許文献1の発明は、ステムセルファクター結合阻害剤、外用剤組成物及び美白用組成物に関するものにとどまる。特許文献2の健康補助食品や健康補助菓子は藤の種子を原材料にした発明内容となっている。他に、『マメ科資源植物便覧』(日本科学協会,1987)、『藤なんでも百科』(春日部市,1996)、草川俊著『有用草木博物事典』(東京堂出版,1992)等に藤が紹介されているが、藤は瘤を胃癌の抗ガン剤として使用されたり、花や葉がてんぷらやおひたしにして食されたりする記事内容でしかない。藤の茎が食品に使用された事実は見当たらない。さらに、藤の茎がアレルギーの治療や予防に役立つといった報告も見当たらない。
【0005】
厚生労働省の調査では日本人の3人に1人が何らかのアレルギー症状に悩んでいるとされる。最も重篤なアレルギー疾患である喘息では年間6000人もの死亡報告がされ、こうしたアレルギーを起こす原因物質はアレルゲンと呼ばれ、ストレスや食物、ハウスダスト等が主な原因といわれている。以前は子供の頃のアレルギーは成長するにつれて低減化していくと言われていたが、最近では花粉症の発症、加齢後の難活化、重傷化の報告も多い。
こうしたなか、本発明者等は鋭意研究を重ね、藤の茎にアレルギー反応を抑える働きがあるのを見出し、アレルギーの治療や予防に役立つ機能食品の発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、アレルギーを改善し、さらに整腸作用の働きも促すことができるアレルギー改善機能食品およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、請求項1に記載の発明の要旨は、藤の茎が食品原料に含まれて、抗アレルギー機能が付与されてなることを特徴とするアレルギー改善機能食品にある。請求項2に記載の発明の要旨は、藤の茎を微粒化または粉末化させた粉粒体が食品原料に含まれて、抗アレルギー機能が付与されてなることを特徴とするアレルギー改善機能食品にある。請求項3の発明たるアレルギー改善機能食品は、請求項2で、粉粒体が食品原料に含まれて、整腸作用がさらに付与されてなることを特徴とする。
請求項4に記載の発明の要旨は、藤の茎を切断してチップ状体とし、次に、該チップ状体を洗浄し、続いて、該チップ状体を微粒粉砕して微粒体又は粉末からなる粉粒体とし、その後、該粉粒体をそのまま食品用原料に加えて食品原料とし、該食品原料を加工して抗アレルギー機能を付与することを特徴とするアレルギー改善機能食品の製造方法にある。請求項5の発明たるアレルギー改善機能食品の製造方法は、請求項4で、粉粒体を食品用原料に加えて食品原料にし、該食品原料を加工して整腸作用をさらに付与することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアレルギー改善機能食品およびその製造方法は、藤の茎を食品原料に含ませてアレルギーを改善し、また整腸作用の働きも促し、さらに低コストで生産が可能になるなど多大な効を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の原料になる藤の茎を剪定、採取する説明画像図である。
【図2】図1の藤の茎をチップ状体とする説明画像図である。
【図3】滅菌処理装置の説明画像図である。
【図4】造粒装置の説明画像図である。
【図5】乾燥装置の説明画像図である。
【図6】打錠機の説明画像図である。
【図7】錠剤の説明画像図である。
【図8】顆粒機の説明画像図である。
【図9】アレルギー反応血液検査のグラフである。
【図10】アレルギー反応血液検査のグラフである。
【図11】アレルギー反応血液検査のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るアレルギー改善機能食品およびその製造方法について詳述する。
(1)アレルギー改善機能食品の製造方法
図1〜図11は本発明の一形態で、図1は原料になる藤の茎を剪定、採取する説明画像図、図2は藤の茎をチップ状体とする説明画像図である。図3は滅菌処理装置、図4は造粒装置、図5は乾燥装置、図6は混合機の説明画像図、図7は錠剤の説明画像図、図8は顆粒機の説明画像図を示す。図9〜図11はアレルギー反応を調べた血液検査グラフである。
【0011】
アレルギー改善機能食品の製造方法は次のように行う。
(1−1)錠剤の製造方法
アレルギー改善機能食品が錠剤の場合、例えば以下のように製造する。
まず、藤の茎を準備する。藤は、「マメ科フジ属の蔓性落葉木本の総称。山野に広く自生するヤマフジ(蔓は左巻き)とノダフジ(蔓は右巻き)のほか、観賞用の多くの園芸品種がある。幹の長さ10メートル以上、他物にからむ。葉は羽状複葉。5〜6月頃淡紫色または白色の蝶形の花を長い花穂で垂れる。」(広辞苑)とある。また、藤(wisteria)は、「マメ科のつる性落葉低木で、ノダフジともいう。北海道を除く日本各地の山野に広く分布し、観賞用としても古くから庭園などで栽培されている。幹はつる状に著しく長く伸び、右巻きに他物にからみつく。葉は柄のある奇数羽状複葉で、4〜9対の卵形ないし卵状長楕円状の小葉から成り、葉質は薄く両面にわずかに毛がある。春に、枝先に長さ20〜40cmもある総状花序を多数垂下し、紫色の蝶形花を基部から次々に開く。果実の莢は細毛でおおわれている。花色が淡紅色のアカバナフジ、白色のシロバナフジ、重弁花のヤエフジなどがある。多くは棚づくりにして栽培される。つるはじょうぶで、物を縛ったり、籠材に利用され、種子は食用にすることもある。おもに西日本の産地に自生する近緑種のヤマフジ(山藤)は葉の小葉の数が1〜2対少なく、また花序も10〜20cmと短く、花はほぼ同時に開花して、フジのように順次に咲くことはない。茎が左巻きにからむ点もフジとは逆である。」(ブリタニカ国際大百科事典)とある。藤には、野藤,山藤,長崎一歳藤,八房藤,野田長藤,本紅藤,錦藤,昭和紅藤,岡山一歳藤など多数の品種があるが、本発明でいう藤は、マメ科フジ属に含まれれば、特にその種類,品種を問わない。本発明と同様の用途発明効果が得られるからである。
【0012】
本実施形態の藤は九尺藤を用いている。藤の花が咲いた後(5月)、その年の藤の茎をその年の12月から翌年の2月までに剪定して、藤の茎を採取する。この茎は、藤の花が咲き枯れた後に新芽が出て、該新芽が延びてなる茎(蔓)で、これを剪定、採取する(図1)。該茎は茎径が約2cmφで茎長さが4mほどにもなる。茎は、「高等植物において根・葉とならぶ基本的な器官。胚の幼芽が発達したもので、枝葉をつけ、根を生じる」(広辞苑)とあり、また蔓は、「他物に巻き付いたり付着したりしながら成長していく植物。また、特にその茎(フジ・ツタの類)や巻きひげ(エンドウ・キュウリの類)などの器官」(広辞苑)とある。茎に蔓が含まれる。本発明でいう藤の茎は藤の地上茎をいう。
【0013】
次に、前記採取した藤の茎を、1cm〜20cmほどの長さに切断(切裁)してチップ状体とする(図2)。チップ状体のなかに混ざり込んだ異物を取り除いた後、該チップ状体をカゴ容器に収容する。これらを次工程の粉砕工場へ移送する。
【0014】
粉砕工場では、前記カゴ容器に収容されたチップ状体を洗浄した後、乾燥させる。そして、該チップ状体の検査を行って不良品,異物を取り除く。検査を終えた後、該チップ状体をカッターミルで粗粉砕し、藤の該茎をスクリーン網目4mm通しの粗粒体にまでする。そして、一辺4mmの網目を通過させたこの粗粒体を減圧加熱撹拌乾燥させ(例えば121℃で25分間)、滅菌処理する。図3はこの滅菌処理装置を示す。滅菌処理を終えた該粗粒体が、一般生菌数3000/g以下、且つ大腸菌群が陰性であることを測定確認し、次工程へ進む。一般生菌数の測定は標準寒天培養法、大腸菌群の測定はデソキシコレート寒天培養法による。
【0015】
次いで、微粉砕工程に入る。一次粉砕として、前記滅菌処理された粗粒体を高速度粉砕機にかけ、スクリーン網目0.7mm通しの粒体にする。さらに、二次粉砕の仕上げ微粒粉砕として回転通気式ボールミルにかけ、該粒体を微粒粉砕して微粒体又は粉末からなる粉粒体とする。
【0016】
かくのごとく、藤の該茎は仕上げ微粒粉砕を経て粉粒体になる。その後、該粉粒体は振動シフターによって設定規格値以上の大きさのものを異物として取り除き、さらに金属探知機で金属異物を取り除く異物処理工程へと向かい、これを終了する。振動シフター及び金属探知機による異物処理を終えた後の藤の茎からなる該粉粒体は、平均粒径(球相当径)が約5μになっている。該粉粒体の分析を財団法人日本食品分析センターに依頼した。その分析試験結果は表1のごとくであった。
【0017】
【表1】
【0018】
前記異物処理工程を終えた後の粉粒体は、秤量、均質性を高める造粒工程、乾燥工程へと進む。図4は造粒工程で用いた汎用流動層造粒装置、図5は乾燥工程で用いた汎用箱型乾燥装置を示す。
【0019】
前記乾燥工程を終え、次いで、藤の茎からなる該粉粒体を、溶解操作,抽出操作等を行わずに、そのまま乳糖やデンプン等の賦形剤,デンプン糊等の結合剤,デンプン等の崩壊剤,ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤等の添加剤(食品用原料)に加えて、錠剤用食品原料を造る混合工程に進む。ここでの添加剤はデンプン、菜種硬化油脂、及びドロマイトとした。混合工程では、これらを混ぜて均一に混合する。本実施形態の錠剤用食品原料配合比率は、藤の茎の粉粒体85重量部、デンプン9重量部、菜種硬化油脂5重量部、ドロマイト1重量部とした。
しかる後、該粉粒体が上記添加剤(食品用原料)に加えられてなる上記混合工程後の食品原料を、打錠機(図6)の型内に充填、圧縮して成形加工し、図7のような錠剤を造る。こうして、抗アレルギー機能を付与するアレルギー改善機能食品たる所望の錠剤を完成させた。
【0020】
(1−2)顆粒の製造方法
前記錠剤の製造方法で、混合工程までは同じように進行する。その後、前記粉粒体が前記添加剤(食品用原料)に加えられてなる混合工程後の食品原料を、前記打錠機に代わって公知の顆粒機(図9)を使用して、顆粒に成形加工する。抗アレルギー機能を付与するアレルギー改善機能食品たる所望の顆粒が完成する。味が殆どない顆粒製品が出来上がる。また、前記混合工程後の食品原料に調味料の味付け原料をさらに加えて味付き食品原料とした後、この味付き食品原料を、顆粒機(図9)を使用して、味付き顆粒に成形することもできる。抗アレルギー機能を付与するアレルギー改善機能食品たる所望の味付き顆粒ができる。
【0021】
(1−3)てんぷら粉等の食品の製造方法
前記錠剤の製造方法で、振動シフター,金属探知機で異物処理工程を終えた後の藤の茎からなる粉粒体に溶解操作や抽出操作を行わずに、該粉粒体をそのままてんぷら用粉(食品)の食品用原料に加える。粉粒体と食品用原料との混合操作により、該粉粒体が食品用原料内に均一に分散するよう均質加工して、アレルギー改善機能食品たる所望のてんぷら粉とする。また、該てんぷら粉と同様、上記異物処理工程を終えた後の藤の茎からなる粉粒体を、ハンバーグ(食品)の食品用原料に加えて、?和操作により均質加工し、さらにハンバーグ形状に成形加工し、アレルギー改善機能食品たる所望のハンバーグとすることができる。さらに、上記てんぷら粉やハンバーグに代え、前記振動シフター及び金属探知機で異物処理工程を終えた粉粒体を、食品用原料(例えばクッキー等の菓子やパン、又は餅などの原料)に加えた食品原料を調理加工して、抗アレルギー機能を付与した菓子,パン,餅等を造るアレルギー改善機能食品の製造方法とすることもできる。
【0022】
(2)アレルギー改善機能食品
前記製法により得られたアレルギー改善機能食品たる錠剤は、藤の茎が食品原料に含まれて、後述の評価試験の結果のごとく、抗アレルギー機能が付与される。該錠剤は、藤の茎を微粒化または粉末化させた粉粒体が溶解処理や抽出処理を伴わずにそのまま食品原料に含まれており、抗アレルギー機能が付与されている。さらに、食品原料中に、微粒化または粉末化させた粉粒体は、藤の茎成分すべてを構成要素としてもち、多くの植物繊維を含んで整腸作用が付与される錠剤になっている。
【0023】
前記錠剤の検査成績は、形状9φAR、重量が規格値300.00mg±5.0%に対し、298.9mg〜301.1mg、Ave:300.2mgで、厚さが5.04mm〜5.08mm、Ave:5.06mmで、硬度が規格値3.0kgf以上に対し、7.7kgf〜9.0kgf、Ave:8.2kgfで、水分は規格値7.0%に対し、2.8%であった。硬度の検査は木屋式硬度計を用い、上記水分の検査は赤外線水分計(105℃、15分)を用いた。
また、該錠剤は一般生菌数が規格値3,000個/g以下に対し、検査結果3,000個/g以下であり、大腸菌群が規格値陰性に対し、検査結果は陰性であった。
【0024】
尚、本アレルギー改善機能食品は、前記顆粒の製造方法における混合工程後の食品原料を粒子サイズが大きくしてなる顆粒にもできる。また、該顆粒をパンやクッキー等の菓子や餅などの食品用原料に加えて調理加工して、抗アレルギー機能を付与したパン,菓子等のアレルギー改善機能食品とすることができる。藤の茎を微粒化または粉末化させた粉粒体がそのまま食品原料に含まれており、抗アレルギー機能が付与され、整腸作用がさらに付与された製品にもなる。勿論、前記てんぷら粉等の食品の製造方法で、振動シフター,金属探知機で異物処理工程を終えた後の藤の茎からなる粉粒体を、てんぷら用粉(食品)等の食品用原料に加えて、これらを混合操作で均一に分散加工して、アレルギー改善機能食品たる所望のてんぷら粉等にできる。さらに調理加工してハンバーグや、抗アレルギー機能を付与した菓子,パン,餅等とすることができる。
【0025】
(3)アレルギー改善機能食品の評価試験
(3−1)
次に、前記製造方法によって得たアレルギー改善機能食品たる錠剤が、アレルギー改善機能を有するか否かの評価試験を行った。
15名の被験者に、該錠剤を毎食前に5錠ずつ飲んでもらい、これを30日間以上続けた。各被験者について、錠剤服用前後の血液内に残るアレルゲンの量[Ua/ml]を検査した。その検査結果を図9〜図11に示す。当該検査結果は株式会社近畿予防医学研究所に依頼した。図中、H22.4.6は錠剤服用前の検査日付、H22.6.29,H22.5.28,H22.5.25等は被験者が30日間以上錠剤服用した後の検査日付である。また、図中のグラフ縦軸は0.34をゼロ基準とし、被験者15名のなかでアレルゲン量[Ua/ml]の最大値を、グラフの上限100とした。検査結果の0.34はアレルギー反応なしを表す。
【0026】
図9〜図11から、本アレルギー改善機能食品たる錠剤に抗アレルギー機能が付与されている。被験者15名中13名にアレルギー反応の減少傾向がみられた。なかでも、スギやヒノキの花粉症が改善された人が15名中、10名で、本アレルギー改善機能食品たる錠剤が花粉アレルギーの低減に特に有効であることが判明した。
【0027】
(3−2)
また、平成20年3月〜7月に、前記製造方法によって得たアレルギー改善機能食品たる錠剤を、233人に毎食前5錠ずつ30日間飲んでもらいモニターした。233人中、自覚症状のない者が内77名いた。自覚症状のあった156人の症状を6項目に分類し、複数の症状を自覚する者を延べ件数で計上し、表2にまとめた。
【0028】
【表2】
【0029】
前記233人のうち、平成20年9月に無作為に100人の該錠剤服用者を対象にアンケート調査をした。有効回答数は84名であった。アンケート回答者の症状改善を表3にまとめた。
【0030】
【表3】
【0031】
表3から、本アレルギー改善機能食品たる錠剤が、アレルギー低減に有効であるだけでなく、便秘・下痢・便通を改善し、該錠剤に整腸作用が働くことも明らかになった。
【0032】
(4)効果
食品原料に藤の茎が含まれると、抗アレルギー機能を発揮し、その食品はアレルギーの治療や予防に有用なアレルギー改善機能食品となる。図9〜図11に示すごとく、このアレルギー改善機能食品を服用又は食することによって、血液中のアレルゲンの量を下げる効果がある。アレルギーを緩和し、アレルギー低減に優れた効果を発揮する。その理由は定かではないが、表1に示した藤の茎からなる粉粒体中の成分,化合物が有効に働くと考えられる。はっきりした理由は判らないが、該粉粒体に含有するアルギニン(272mg/g)は免疫機能を高め、アスパラギン酸(599mg/g)は抵抗力を高めるといわれており、これらが複合的に関係しているとも考えられる。
【0033】
さらに、本発明に係る藤の茎、とりわけ藤の花が咲き枯れた後に新芽が出て、該新芽が延びてなる茎は、生育が速く毎年数多く出現するので、本発明用原料の確保に困らない。剪定,採取して、低コストで藤の茎の原料確保ができる。藤が用いられるといっても、特許文献2の種子等と違って、その茎原料を安く且つ安定的に仕入れることができる。本アレルギー改善機能食品を低コスト生産できることから、広く普及させ、アレルギー改善等に貢献できる優れものになる。定期的な剪定などで大量発生する藤の茎は、これまでその一部が付加価値の低い結束用に用いられたが、大半は廃棄処分される状況にある。本発明は藤の茎に従来にない高付加価値を付与し、画期的な新規発明になっている。
【0034】
加えて、表3に示すごとく、本アレルギー改善機能食品を服用又は食することによって、整腸作用を促す効果がある。便秘,下痢,便通を改善する効果がある。藤の茎からなる粉粒体中に含む食物繊維(69.8g/100g)、水溶性食物繊維(2.3g/100g)、不溶性食物繊維(67.5g/100g)等が効を奏すると考えられる。藤の茎からなる粉粒体を例えば固体抽出すれば、大半の不溶性食物繊維等が抽残物として除かれ失われるが、本発明は該粉粒体をそのまま食品用原料に加えて食品原料とするので、藤の茎中の食物繊維等がアレルギー改善機能食品に全て含まれる。
【0035】
また、本アレルギー改善機能食品及びその製造方法によれば、実施形態に示した錠剤,顆粒に限らず、様々な健康機能食品に簡単に展開できる。例えばパン原料やクッキー等の菓子原料(食品用原料)に、振動シフター,金属探知機で異物処理工程を終えた後の藤の茎からなる粉粒体を加えて、アレルギー改善機能食品たるパンや餅、さらに菓子等に容易にできる。前記顆粒は錠剤と同じようにそのまま服用食品として服用できるが、例えば雑穀米に加えて、雑穀米たるアレルギー改善機能食品とすることもできる。勿論、該顆粒で前記アレルギー改善機能食品たるパンや餅、さらに菓子等にできる。また、前記味付け顆粒は例えば炊き込みご飯の素原料に加えて、炊き込みご飯の素等にすることができる。
このように、本アレルギー改善機能食品及びその製造方法は、その食品を食することによって、アレルギー低減作用、さらには整腸作用をも働かせ、健康回復,健康増進に役立てることができ極めて有益である。
本実施形態は九尺藤について説明したが、甲比丹藤や黒龍藤等についても同じように実施し、前記と同様の効果が得られるのを確認している。
【0036】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。藤は実施形態で用いた九尺藤に限らず、他の藤を適宜選択できる。また、藤の茎も、前記藤の花が咲き枯れた後に新芽が出て、該新芽が延びてなる茎(蔓)が食品原料の安定確保等で好ましいが、これに限ることなく、藤の他の地上茎、蔓等を用いることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
藤の茎が食品原料に含まれて、抗アレルギー機能が付与されてなることを特徴とするアレルギー改善機能食品。
【請求項2】
藤の茎を微粒化または粉末化させた粉粒体が食品原料に含まれて、抗アレルギー機能が付与されてなることを特徴とするアレルギー改善機能食品。
【請求項3】
前記粉粒体が食品原料に含まれて、整腸作用がさらに付与されてなる請求項2記載のアレルギー改善機能食品。
【請求項4】
藤の茎を切断してチップ状体とし、次に、該チップ状体を洗浄し、続いて、該チップ状体を微粒粉砕して微粒体又は粉末からなる粉粒体とし、その後、該粉粒体をそのまま食品用原料に加えて食品原料とし、該食品原料を加工して抗アレルギー機能を付与することを特徴とするアレルギー改善機能食品の製造方法。
【請求項5】
前記粉粒体を食品用原料に加えて食品原料にし、該食品原料を加工して整腸作用をさらに付与する請求項4記載のアレルギー改善機能食品の製造方法。
【請求項1】
藤の茎が食品原料に含まれて、抗アレルギー機能が付与されてなることを特徴とするアレルギー改善機能食品。
【請求項2】
藤の茎を微粒化または粉末化させた粉粒体が食品原料に含まれて、抗アレルギー機能が付与されてなることを特徴とするアレルギー改善機能食品。
【請求項3】
前記粉粒体が食品原料に含まれて、整腸作用がさらに付与されてなる請求項2記載のアレルギー改善機能食品。
【請求項4】
藤の茎を切断してチップ状体とし、次に、該チップ状体を洗浄し、続いて、該チップ状体を微粒粉砕して微粒体又は粉末からなる粉粒体とし、その後、該粉粒体をそのまま食品用原料に加えて食品原料とし、該食品原料を加工して抗アレルギー機能を付与することを特徴とするアレルギー改善機能食品の製造方法。
【請求項5】
前記粉粒体を食品用原料に加えて食品原料にし、該食品原料を加工して整腸作用をさらに付与する請求項4記載のアレルギー改善機能食品の製造方法。
【図9】
【図10】
【図11】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2012−120445(P2012−120445A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271273(P2010−271273)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(510321354)社会福祉法人正寿会 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(510321354)社会福祉法人正寿会 (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]