説明

アレルゲン低減化組成物及びアレルゲン低減化部材

【課題】 アレルゲンをより安全,安価で低減化し、さらにタンニン酸やカテキン等に比べアレルゲン低減化に有効且つ安定して優れた効果が発揮できるアレルゲン低減化組成物を提供する。
【解決手段】 リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子にフェノール化合物のフェノール性水酸基に対してオルト位及び/又はパラ位の炭素原子が結合した1,1−ビスアリールプロパンユニットを有するリグノフェノール誘導体、を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生活環境のなかに存在するアレルゲンを不活性化させるアレルゲン低減化組成物及びアレルゲン低減化部材に関する。
【背景技術】
【0002】
厚生労働省の調査では日本人の3人に1人が何らかのアレルギー症状に悩んでいるとされる。以前は子供の頃のアレルギーは成長するにつれて低減化していくと言われていたが、最近では花粉症の発症、加齢後の難活化、重傷化の報告も多い。最も重篤なアレルギー疾患である喘息では年間6000人もの死亡報告がされ、アトピー性皮膚炎ではその症状が社会生活に支障をきたすことも多くなっている。こうしたアレルギーを起こす原因物質はアレルゲンと呼ばれ、ストレスや食物、ハウスダストが主な原因といわれている。近年、住宅の省エネ化の観点から高気密性の住宅が増え快適性が向上してきているが、この快適性はハウスダスト中のダニにとっても適した環境になっている。ダニが増殖することにより虫体のみならず死骸,抜け殻,糞が増え、ダニアレルゲンを増やす原因となっている。このダニアレルゲンは最も多くの患者がいるアレルギー疾患である喘息,鼻炎に対して50%〜80%、小児喘息の90%を占めるため、早急な対策が求められている。
ダニを減らす方法として、これまで掃除機で吸い取ったり水洗いしたり、ダニアレルゲンがタンパク質から成っていることから60℃以上の熱をかけたり、或いは布団の中で繁殖しないよう高密度の織物を使用する等の対策が講じられてきた。しかし、WHOの発表によると、アレルギーによる喘息発作誘発の閾値は10μg/gfine dustであり、またダニアレルゲンは虫体のみならずその死骸や糞までもアレルゲン反応を起こすという特徴を有し、完全除去が不可能であることから抜本的な技術対策が求められている。斯る現状から近年、アレルゲンの構成物質であるタンパク質の変性,吸着という観点で研究が進められ、これまで例えば次のような技術が提案されてきた(特許文献1〜3)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−3040号公報(以下、「引例1」という。)
【特許文献2】特公平2−16731公報(以下、「引例2」という。)
【特許文献3】特開平6−279273公報(以下、「引例3」という。)
【0004】
引例1はダニアレルゲン低減化物質としてフェノール性水酸基を持つ物質がアレルゲン反応を抑制するという発明技術を提案し、引例2はタンニン酸、引例3はカテキン及び没食子酸が有効である旨提案している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、引例1で提唱しているポリー4−ビニルフェノールやポリチロシンは高価であるため広く普及するのが難しいと考えられる。また引例2,3のタンニン酸やカテキンは、本発明者等の追認試験によれば安定したアレルゲン低減化効果を得ることが困難であった。
加えて、従来のアレルゲン低減化組成物は例えば不織布等の基材に安定保持させ、水洗いしても落ちず、繰り返し使用できるようにするのが難しかった。
【0006】
本発明は上記問題点を克服するもので、アレルゲンをより安全,安価で低減化し、さらにタンニン酸やカテキン等に比べアレルゲン低減化に有効且つ安定して優れた効果が発揮できるアレルゲン低減化組成物及びアレルゲン低減化部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、請求項1に記載の発明の要旨は、リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子にフェノール化合物のフェノール性水酸基に対してオルト位及び/又はパラ位の炭素原子が結合した1,1−ビスアリールプロパンユニットを有するリグノフェノール誘導体を含有することを特徴とするアレルゲン低減化組成物にある。
請求項2に記載の発明の要旨は、リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子にフェノール化合物のフェノール性水酸基に対してオルト位及び/又はパラ位の炭素原子が結合した1,1−ビスアリールプロパンユニットを有するリグノフェノール誘導体に係る該1,1−ビスアリールプロパンユニット中の導入フェノール化合物をクマラン化してなるクマラン誘導体を含有することを特徴とするアレルゲン低減化組成物にある。
請求項3の発明たるアレルゲン低減化組成物は、請求項1で、前記リグノフェノール誘導体に、前記フェノール性水酸基のオルト位及び/又はパラ位に架橋性反応基を有する架橋性誘導体を含有することを特徴とする。
請求項4の発明たるアレルゲン低減化組成物は、請求項3で、前記架橋性反応基が架橋された架橋体からなるリグニン誘導体を含有することを特徴とする。
請求項5に記載の発明の要旨は、樹皮タンニンを含有することを特徴とするアレルゲン低減化組成物にある。
請求項6に記載の発明の要旨は、下記(a)〜(e)のアレルゲン低減化組成物の群から選択される少なくとも1つのアレルゲン低減化組成物を基材に保持させてなることを特徴とするアレルゲン低減化部材にある。
(a)リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子にフェノール化合物のフェノール性水酸基に対してオルト位及び/又はパラ位の炭素原子が結合した1,1−ビスアリールプロパンユニットを有するリグノフェノール誘導体を含有するアレルゲン低減化組成物。
(b)リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子にフェノール化合物のフェノール性水酸基に対してオルト位及び/又はパラ位の炭素原子が結合した1,1−ビスアリールプロパンユニットを有するリグノフェノール誘導体に係る該1,1−ビスアリールプロパンユニット中の導入フェノール化合物をクマラン化してなるクマラン誘導体を含有するアレルゲン低減化組成物。
(c)前記(a)のリグノフェノール誘導体のうち、前記フェノール性水酸基のオルト位及び/又はパラ位に架橋性反応基を有する架橋性誘導体を含有するアレルゲン低減化組成物。
(d)前記(c)の架橋性反応基が架橋された架橋体からなるリグニン誘導体を含有するアレルゲン低減化組成物。
(e)樹皮タンニンを含有するアレルゲン低減化組成物。
請求項7の発明たるアレルゲン低減化組成物は、請求項6で、基材が不織布であることを特徴とする。
請求項8に記載の発明の要旨は、フェノール誘導体が収着されたリグノセルロース系材料に酸を添加し混合して前記リグノセルロース系材料をリグノフェノール誘導体と炭水化物に分離することによって得られるリグノフェノール誘導体、を含有することを特徴とするアレルゲン低減化組成物にある。
請求項9に記載の発明の要旨は、フェノール誘導体が収着されたリグノセルロース系材料に酸を添加し混合して前記リグノセルロース系材料をリグノフェノール誘導体と炭水化物に分離することによって得られるリグノフェノール誘導体を、アルカリ溶液に溶解させた後、加熱することによって得られた物を、さらに酸性にして得た不溶区分を水洗することによって得られる二次変換物を含有することを特徴とするアレルゲン低減化組成物にある。
請求項10に記載の発明の要旨は、フェノール誘導体が収着されたリグノセルロース系材料に酸を添加し混合して前記リグノセルロース系材料をリグノフェノール誘導体と炭水化物に分離することによって得られるリグノフェノール誘導体を、ホルムアルデヒドを含むアルカリ溶液に溶解させてヒドロキシメチル化反応させたものを含有することを特徴とするアレルゲン低減化組成物にある。
【0008】
前記請求項1〜10に係るアレルゲン低減化組成物は、環境負荷に影響を及ぼす石油化学製品と違って植物資源由来の原料を用いているので安全にして安価で、しかも、タンニン酸やカテキン等に比べアレルゲン低減化に有効且つ安定して優れた効果を発揮する。
本発明者等はリグノフェノール誘導体の製法等の発明をし、その用途開発を進める過程で、フェノール性水酸基をもつポリマーがタンパク質からなるダニアレルゲンと多数の弱い結合を起しアレルギーを抑制する現象に注目し、植物由来のリグニン誘導体にもフェノール水酸基が存在することから、該リグニン誘導体にもアレルゲン低減効果があるのではないかと鋭意研究を行った結果、植物のリグニン成分に由来したリグノフェノール誘導体及び、そのクマラン誘導体(低分子化物)・架橋前駆体及び架橋体(メチロール化物質)に、上記ポリー4−ビニルフェノールよりも通常条件の下で高いダニアレルゲン低減化効果が得られ、またタンニン酸以上の高い低減化効果を得て、さらに基材に保持させた状態にして繰返し水洗いした際、性能低下が著しいタンニン酸と異なり抗アレルゲン機能を継続維持する新規アレルゲン低減物質たるワットルタンニンやカラマツ外樹皮タンニン等の樹皮タンニンを見い出した。またこれらの低減化物質との相互作用が強い活性炭素繊維からなる不織布を用いることによって、さらに効果を高めることのできるケースがあることを見い出し、リグノフェノール誘導体及びその熱分解物・その架橋前駆体及び前駆体・その低分子化物、ワットルタンニンやカラマツ外樹皮タンニン等の樹皮タンニンを含有する抗アレルゲン組成物と、これを活性炭素繊維を初めとする不織布等の基材に保持(添着)させるアレルゲン低減化部材(例えばフィルター)とを発明するに至った。
【発明の効果】
【0009】
本発明のアレルゲン低減化組成物及びアレルゲン低減化部材は、アレルゲンを温和な条件でより安全且つ低コストで不活性化,低減化し、さらに従来のタンニン酸やカテキン等に比べアレルゲン低減化に有効且つ安定して優れた効果を発揮し極めて有益である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係るアレルゲン低減化組成物及びアレルゲン低減化部材の一実施形態について詳述する。
【0011】
I.アレルゲン低減化物,アレルゲン低減化組成物
(1)リグノフェノール誘導体:
本発明のアレルゲン低減化組成物におけるリグノフェノール誘導体は、例えば、特開2001-261839公報記載と同じように、木粉等のリグノセルロース系材料にフェノール誘導体が溶解した溶媒を浸透させた後、溶媒を留去し(フェノール誘導体の収着工程)、次いで該リグノセルロース系材料に酸を混合しセルロース分を酸に溶解させることによって、リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子にフェノール化合物のフェノール性水酸基に対してオルト位及び/又はパラ位の炭素原子が結合した1,1−ビスフェノール性水酸基に対してオルト位及び/又はパラ位の炭素原子が結合した1,1−ビスアリールプロパンユニットを有するリグノフェノール誘導体として得られたものである。
リグノフェノール誘導体は、フェノール誘導体が収着されたリグノセルロース系材料に酸を添加して混合し、その後、過剰の水を加えて不溶区分として分離して得られるものである。木粉等のリグノセルロース系材料にフェノール誘導体が溶解した溶媒を浸透させた後、溶媒を留去する(フェノール誘導体の収着工程)。次に、このリグノセルロース系材料に酸を混合しセルロース分を酸に溶解させる。リグニンとフェノール誘導体が反応したリグノフェノール誘導体相がセルロース成分を溶解した酸の相から相分離される。その後、この相分離した反応液に過剰の水を加えて不溶区分を回収してリグノフェノール誘導体が得られる。例えば特開2001-131201公報に記載のごとく、フェノール誘導体が収着されたリグノセルロース系材料に酸を添加し混合した後、水を加えて分離された不溶区分の粗リグノフェノール誘導体、又は粗リグノフェノール誘導体のうち親溶媒(例えばアセトン)に溶解した区分を大過剰の貧溶媒(例えばジエチルエーテルやイソプロピルエーテル)に滴下することにより得られる精製リグノフェノール誘導体をいう。前記親溶媒とは糖が難溶にして精製リグノフェノール誘導体及びフェノール誘導体に易溶の溶媒をいい、貧溶媒とはリグノフェノール誘導体が難溶にして余剰(未反応)のフェノール誘導体が可溶の溶媒をいう。前記リグノセルロース系材料とはリグニンとセルロースを含有する針葉樹,広葉樹などの植物で、例えば木材,木片,木粉、木質材料としての合板,集成材,パーティクルボード等、さらにそれらの廃材がある。また各種草本植物、農産廃棄物等も該当する。
前記フェノール誘導体には1価のフェノール誘導体,2価のフェノール誘導体,3価のフェノール誘導体などを用いることができる。具体的には、フロログルシノール・ヒドロキシヒドロキノン・ピロガロール等の三価体、カテコール・レゾルシノール・ハイドロキノン等の二価体、フェノールなどを挙げることができる。リグノセルロース系材料がフェノール誘導体により合成されるリグノフェノール誘導体が疎水性の反応なので一価のフェノールをフェノール誘導体として使用するのが好ましく、コスト,安定性,取り扱い易さ等を鑑みればクレゾールがより好ましい。なお、フェノール誘導体が有していてもよい置換基の種類は限定されない。前記酸とはセルロースに対して膨潤性を有する酸で、65重量%以上の硫酸(例えば、72重量%の硫酸)、85重量%以上のリン酸、38重量%以上の塩酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ギ酸などを挙げることができる。
本発明でいうリグノフェノール誘導体は、特開2004-210899,特開2004-137347,特開2004-115736,特開2003-268116,特開2001-261839,特開2001-131201,特開2003-181863,特開2001-64494,特開2001-34233,特開平9-278904号,特開平2-23701号等の公報記載の公知のリグノフェノール誘導体、粗リグノフェノール誘導体、精製リグノフェノール誘導体、リグニンのフェノール誘導体が含まれる。該リグノフェノール誘導体(粗リグノフェノール誘導体と精製リグノフェノール誘導体を含む。)はアレルゲン低減化効果を示す。
【0012】
(2)上記リグノフェノール誘導体の低分子化物:
上記リグノフェノール誘導体の低分子化物もアレルゲン低減化効果を示す。この低分子化物とは、前記精製リグノフェノール誘導体を、アルカリ溶液に溶解させた後、加熱することによって得られた物を、さらに酸性にして得た不溶区分を水洗することによって得られる二次変換物(クマラン誘導体)である。前記(1)のリグノフェノール誘導体に係る該1,1−ビスアリールプロパンユニット中の導入フェノール化合物をクマラン化してなるクマラン誘導体である。本実施形態ではリグノフェノール誘導体の低分子化物を次のようにして得た。
先ず、16.8gの精製リグニンを0.5NのNaOHに溶かして全量を240gとした。これをフッ素樹脂で内張したステンレス製のオートクレープ容器に入れ電気炉にて170℃で2h加熱した。室温まで冷却後0.5NのHClでpH2にし、このときに析出した沈殿物を遠心分離機で繰り返し洗浄した。その後この試料を五酸化リンをデシケーターにて保管することにより脱水し、低分子化した二次変換試料を得た。
【0013】
(3)上記リグノフェノール誘導体のメチロール化物等:
上記リグノフェノール誘導体のメチロール化物もアレルゲン低減化効果を示す。前記精製リグノフェノール誘導体をホルムアルデヒドを含むアルカリ溶液に溶解させてヒドロキシメチル化させたものである。前記リグノフェノール誘導体のうち、前記フェノール性水酸基のオルト位及び/又はパラ位に架橋性反応基を有する架橋性誘導体を含有するリグニン誘導体である。本実施形態ではこのメチロール化物を次のようにして得た。
先ず、リグノフェノール誘導体10gを390gの0.2NのNaOH溶液に溶解後、40gの35%ホルムアルデヒド溶液を加え、窒素雰囲気下60℃で60分撹拌しながら加温して、リグノフェノール誘導体の分子中にメチロール基を導入した。反応終了後、塩酸を使用してpH2として析出後、中性になるまで水洗、乾燥してメチロール化物を得た。
【0014】
(4)架橋性反応基が架橋されたリグニン誘導体
前記(3)のフェノール性水酸基のオルト位及び/又はパラ位の架橋性反応基が、熱を加えることによって架橋されて架橋体になるリグニン誘導体を含有するものである。フェノール性水酸基に架橋性反応基が備わることによって、熱可塑性性状を有するリグノフェノール誘導体が熱硬化性に性状変化するので、アレルゲン低減化効果のある成形体だけでなく、熱硬化する段階で基材と一体化する抗アレルゲンコーティング剤等としても用いることができる。
【0015】
(5)樹皮の熱水抽出物
ワットルタンニンやカラマツ外樹皮タンニン等の樹皮タンニンもアレルゲン低減化効果を示した。
特開昭61-44821号公報にはタンニン酸で環境中のアレルゲンを除去する方法について記載されている。また、特開平6-279273号公報には茶抽出物,エピカテキン,エピガロカテキン,エピカテキンガレート,エピガロカテキンガレートについて記載されている。このうち、タンニン酸については確かに効果が認められるものの、公報記載の内容は室内塵を試験管に入れた後、蒸留水に溶かしたタンニン酸で処理した効果について検討しており、使用方法として空気中の室内塵をタンニン酸を溶解した液中にバブリングすることを提案するにとどまっており、商品化に向けた検討については触れられていない。例えば空気清浄器フィルターに使用するケースで、洗浄して繰り返し使用を想定した場合にはタンニン酸が溶出してしまい、一度きりしか使うことができないという問題があった。
また、これらはダニアレルゲン低減化効果が低く、より効果的な物質の探求が必要であった。
【0016】
そこで、本発明者等は鋭意研究を重ね、樹皮由来のタンニンがダニアレルゲン低減化効果を持つことを見出した。前述の茶抽出物の殆どはエピカテキン,エピガロカテキン,エピカテキンガレート,エピガロカテキンガレート等の単量体からなっており、大きくても3量体までである。本発明者等は分子量が大きいほどタンパク質変性作用が大きいという報告(Agric.Biol.Chem.,51(1),115~120,1987、Agric.Food Chem.,1986,34,487-489)を見つけ、このタンパク質変性作用とアレルゲン低減作用との間に相関関係があるのではないかと推測した。そして抗アレルゲン作用があるかどうか試験し、4量体以上のワットルタンニン(分子量が1,000〜1,500)やカラマツ外樹皮等の分子量の大きな樹皮タンニンに優れたアレルゲン低減効果があることが確められた。
これらの樹皮タンニンは針葉樹や広葉樹を問わず、どのような樹種でも効果を示し、加水分解型・縮合タンニン型を問わない。そうしたなかでも、モリシマアカシヤ,アカシアマンギウム,エゾヤナギ,カラマツ,ヒバがタンニン量の多い樹種が好ましい。また国内の不要な樹皮の利用用途から考えると絶対量の多いスギ,ヒノキも利用することが実用的に好ましい樹種になる。また、これらのタンニンは茶抽出物よりも多く抽出されるとともに、現在困っている樹皮の用途開発という観点からも望ましいと考えられる。また、現在食品添加物用や工業用(商用)に使用されているケブラコ,タラ,チェスナット,ガルナット,オーク,ワットル,ガンビア,ミラボランを用いることもでき、新規な工業用途として提案できる。とりわけ、ワットルタンニンやカラマツ外樹皮タンニン等の縮合タンニンは、C環を持っているため、加水分解型タンニンよりも構造柔軟性が低く、タンパク質吸着能が劣るといわれているが、これらの縮合タンニンはアルカリ変性によりC環を開裂させることによって自由度が上がるので能力をさらに高めることができより好ましいと考えられる。
【0017】
II.アレルゲン低減化部材
前記(1)〜(5)のアレルゲン低減化物はそのまま用いることができるが、通常、固体担体たる基材又は液体担体に保持させて使用される。前記(1)〜(5)のアレルゲン低減化物質の含有量は通常、0.01重量%〜50重量%であり、より好ましくは1重量%〜30重量%にしてアレルゲン低減化組成物として供される。本発明のアレルゲン低減化物質の使用形態は、環境中のアレルゲンを不活化できる処理が可能であれば、液状或いは粉体状,ペースト状等どのような形態も採ることができる。取扱いの観点からすれば液状とするのが容易で有効となる。これらの低減化物質を均一に分散するために必要な溶剤は単独又は2以上の混合溶媒として使用できる。溶剤の種類は特に限定されない。前記アレルゲン低減化物をフィルター等の基材に保持させる方法は含浸や滴下に限ることなくいかなる方法であってよい。フィルターはガラス繊維フィルター等の無機物や有機物のいずれでもよい。アレルゲン低減化物は前記リグニン誘導体とその反応物及び植物中のワットルタンニンやカラマツ外樹皮タンニン等の樹皮の熱水抽出物のいずれか又はこれらの2種類以上の混合物として用いることができる。またこれらのアレルゲン低減化物を溶解させるための溶液の種類や基材である不織布等の材質を適宜選定して低減化効果を大きくすることができる。
【0018】
[熱硬化物が基材に一体化したアレルゲン低減化部材]
本発明では多孔性又は網目構造の不織布等の基材へ、リグノフェノール誘導体に熱を加えて架橋性反応基をつけ熱硬化させることによって、これが基材の多孔性又は網目構造に絡みつき基材に強固に一体化し、しかもアレルゲン低減効果のある有用なアレルゲン低減化部材が出来上がる。当初、基材に熱硬化物として架橋させてしまうとフェノール水酸基の活性自由度がなくなりアレルゲン低減効果がみられないと思われたが、アレルゲン低減効果を維持するのを実験確認している(例えば後述する表7の熱硬化物)。
この熱硬化物は架橋段階で基材にからんで基材との一体化が強固になり、永く基材に保持されてアレルゲン低減化機能を維持する。該熱硬化物は水溶性でないので、洗浄等によっても流れ落ちずフィルタ等の用途に最適となる。基材に一体化した架橋性誘導体からなるリグニン誘導体は基材を一層丈夫なものにし、さらに水洗い等では流されずアレルゲン低減化作用を持続させるなど優れたアレルゲン低減化部材をつくる。従来型のアレルゲン低減化物は基材へいかに結合一体化させるかが問題になっているが、本発明ではリグノフェノール誘導体の架橋性誘導体を架橋させてしまえば網目構造のフィルタ等の基材に入り込んで硬化物となって容易に結合一体化する。フィルタなどの基材に絡んだこのリグニン誘導体は、基材への定着が簡単にして、しかも揉んだりしても剥がれ落ちないため実用的で極めて有益となっている。後述の表10においては2回目の洗浄後のデータしか載せていないが、基材にリグニン誘導体の熱硬化物として架橋したアレルゲン低減化部材は、度重なる繰返し洗浄してもアレルゲン低減化機能が低下しないことが確かめられている。
【0019】
また、本発明のアレルゲン低減化組成物は、単独でまた他のものを添加混合させて、アレルゲン低減効果のある、塗料やコーティング剤、また窓枠,ブラインド等の樹脂成形物とすることができる。その他にも机,椅子,棚,パーティション等といった事務用品、テーブル,チェア,シート,ベッド,食器類,照明器具,箪笥などの収納家具等の家庭用品、さらに枠組などの住宅構造,畳のコア材等の芯材,床板張り,床材等にコートするコーティング剤,階段,窓周りの部材等の住宅関連設備等あらゆる生活空間を構成するこれらの各基材(物品)に、本発明のアレルゲン低減化組成物を単独でまた他のものを添加混合させてアレルゲン低減効果のある商品(アレルゲン低減化部材)とすることができる。
【0020】
〔実施例〕
次に、アレルゲン低減化の性能比較試験について説明する。性能比較試験に先立ち、I.ダニアレルゲンの捕捉方法、II.アサヒダニスキャンの測定法、III.基材の選定について述べる。
【0021】
I.ダニアレルゲンの捕捉方法:
試験用アレルゲンに以下のダニアレルゲンを使用した。
i)サンプル捕捉場所:
サンプル捕捉場所に次の箇所を選んだ。
・サンプルA:ペットのいない約20mで絨毯がある単身者社宅で、月に2度程度掃除機を掛けている家の掃除機集塵パック内の塵ゴミ
・サンプルB:猫を2匹飼っている約85mで木製フローリングのマンションにおいて2日に一度程度、掃除機を掛けている家の集塵パック内の塵ゴミ
ii)アレルゲン捕捉方法:
アレルゲン捕捉方法は次の(1)〜(3)によった。
方法(1):集塵パックから得られた塵ゴミを採取したものそのまま全て。
方法(2):集塵パックから得られた塵ゴミを採取したものそのまま全てを35メッシュと200メッシュの2枚の振るいを取りつけた、ふるい振とう機にて3時間ふるい、200メッシュのふるいまで通過した区分。
方法(3):方法(2)のサンプルをさらに、上記ふるい振とう機にて3時間ふるい、再び200メッシュを通過した区分。
【0022】
II.アサヒダニスキャンの測定法:
i)測定方法:
測定具としてアサヒフードアンドヘルスケア株式会社製の商品名「アサヒダニスキャン」を用いた。測定法はメーカー説明書の内容を一部変更した。具体的測定法は、ダニアレルゲンを測定したい面(20cm×15cm)を約1分間、縦横に塵採取部で擦り、塵を捕捉する。塵採取後、塵採取部を上にして水平にダニスキャンを置き塵採取部に現像液をゆっくり5滴しみ込ませる。10〜15分経過後、表示部にあるC(コントロール)及びT(テストライン)の位置に現れる赤線の濃さを比較し、Tがほとんど見えないか、見えない場合(Tなし)を判定1、Cに比べてTが薄く発色した場合(T<C)は判定2、Cに比べてTがほぼ同じ濃さで発色した場合(T=C)は判定3、Cに比べてTが濃く発色した場合(T>C)は判定4とする。それぞれの判定の意味は以下の通りである。
・判定1 Tなし … ダニアレルゲンの汚染はありません
・判定2 T<C … ダニアレルゲンの汚染はありません
・判定3 T=C … 汚染が進んでいます!再度掃除しましょう
・判定4 T>C … 非常に汚染されています!丹念な掃除とダニの駆除を!
【0023】
ii)ダニアレルゲン測定精度に関して:
[試験1]
上記サンプルAを方法(1)で捕捉したダニアレルゲンを0.3g取り、基材たるユニチカ製スーパーデキシー(20cm×15cm)になるべく均一に塗りつけた。25℃で24時間放置した後、アサヒダニスキャンを用いて上記方法にてダニアレルゲン量を測定した。2人の測定者が、同一サンプルをアサヒダニスキャンにて測定したところ、何れも判定2であった。
[試験2]
ヒノキ木粉から合成したリグノクレゾールを精製したものを濃度5%(wt/vol)でアセトンに溶解し、その溶液にユニチカ製スーパーデキシー(20cm×15cm)に30分間浸漬した。リグノクレゾール・アセトン溶液が含浸されたスーパーデキシーを風乾後、30℃で24時間乾燥しリグノクレゾール含有スーパーデキシーとした。このサンプルに対し、上記サンプルAを方法(1)で捕捉したダニアレルゲンを0.3gを取り、なるべく均一に塗りつけた。2人の測定者が同一サンプルをアサヒダニスキャンにて測定したところ、何れも判定1であった。
【0024】
III.基材の選定:
基材(基質)となるシートに、呉羽テック製レーヨンを用いた不織布である型番H281とセルロースが含まれる型番8056と、またユニチカ製活性炭繊維シートであるスーパーデキシー(詳しくはスーパーデキシーAK)とを用いた。
i)基材の比較:
ヒノキ木粉から合成したリグノクレゾール(リグノフェノール誘導体の代表例)を精製したものを濃度5%(wt/vol)でアセトンに溶解させ、その溶液にユニチカ製スーパーデキシー又は呉羽テック製H281(20cm×15cm)を30分間浸漬した。リグノクレゾール・アセトン溶液が含浸された基材たるシートを風乾後、30℃で24時間乾燥しリグノクレゾール含有試料とした。この試料に、上記サンプルAに対し方法(1)で捕捉したダニアレルゲンを0.3gなるべく均一に塗りつけた。直ちにアサヒダニスキャンによりダニアレルゲンの量を測定したところ、結果は何れも判定2であったが、その判定時、スーパーデキシーを試験した方のダニスキャンのテストラインの発色が薄かった。ここで、アサヒダニスキャンは現像液を滴下するとCとTのラインが現れ、そのラインの色の濃さでダニアレルゲンの濃度を判定する。Cに対してTが薄い方がダニアレルゲンは少ないとされている。従って、スーパーデキシーの方に若干優位性が見られた。またこのサンプルを24時間放置し、再びアサヒダニスキャンで測定したところ、何れも判定1であったが、この時もスーパーデキシーの方にテストラインの発色において若干優位性(発色は全くない)が見られた。
ii)基材とリグノフェノールの相性について:
今回用いた基材は3種類いずれもリグノフェノールを代表とするダニアレルゲン低減化物質による効果をいかんなく発揮させることができた。また各基材とリグノフェノールとの親和性を検討した結果、ユニチカ製スーパーデキシーと呉羽テック製8056が適していることが判った。呉羽テックのH281にはリグノフェノールが定着せず、アサヒダニスキャンを用いてダニアレルゲン量を測定中にリグノフェノールが粉状に脱離してしまった。ダニアレルゲンの測定時に、アサヒダニスキャンのチップ部分に茶色のリグノフェノ−ルが付着した。スーパーデキシーと8056に於いては一旦複合化したリグノフェノールが脱離する現象は見られなかった。スーパーデキシーではi)で述べたように良好な結果も得ることができた。
【0025】
IV.既存技術のトレース試験:
タンニン酸0.5を水90:グリセリン9.5の割合で溶解した物3mL、また重量平均分子量8000と20000のアルドリッチ製ポリ-4-ビニルフェノールを3:水30:エタノール47:プロピレングリコール20の割合で溶解した物3mL、をそれぞれユニチカ製スーパーデキシー(15cm×20cm)のシートにできるだけ均一に滴下含浸させた後、風乾し30℃で24時間乾燥させた。比較の為にユニチカ製スーパーデキシー(15cm×20cm)のみのコントロールも用意した。乾燥後、これらの試料に、上記サンプルBに対し方法(2)で捕捉したダニアレルゲンを0.05gなるべく均一に塗りつけた。そして各シートをアサヒダニスキャンによりダニアレルゲンの量を測定したところ、結果は表1のとおりであった。
【0026】
【表1】

【0027】
V.4-ビニルフェノールとリグノフェノールの性能比較試験:
4-ビニルフェノールとリグノフェノールのダニアレルゲン低減化効果を比較した。4-ビニルフェノールはスーパーデキシー(15mm×20mm)に重量平均分子量20000の4-ビニルフェノールを「IV.既存技術のトレース試験」に記載の溶媒に同じようにして溶解させ、その溶液3mLを均一に滴下含浸し乾燥後、試料とした(試料1)。リグノフェノールはスギ精製リグノクレゾールを濃度5%(wt/vol)でアセトンに溶解させ3mLをスーパーデキシー上(15mm×20mm)に滴下含浸し乾燥後、試料とした(試料2)。「I.ダニアレルゲンの捕捉方法」で述べたサンプルBに対し、方法(2)によって捕捉したダニアレルゲンを0.05gそれぞれ試料上になるべく均一に塗りつけた。シートにダニアレルゲンを添加した直後と24時間経過後のダニアレルゲン量をそれぞれアサヒダニスキャンにて測定した。結果はアレルゲン低減化物質を含有しないスーパーデキシー(コントロール0.05g)(試料3)をダニスキャンすると判定4であったが、試料1と試料2のどちらもアレルゲン添加直後で判定2、24時間経過後で判定1を示した。従って、試料1と試料2のどちらもアレルゲン低減化に優れた効果があり、その効果に差異はなかった。またアレルゲン低減化物質を溶解する溶剤をアセトンに統一(4-ビニルフェノールと同様の溶媒にリグノフェノールが完全溶解しない為)して、再試験を行った。4-ビニルフェノールとリグノフェノールをそれぞれアセトンにて濃度3%(wt/vol)で溶解し3mLをスーパーデキシー上(15mm×20mm)に滴下含浸し乾燥し試料とした(試料4の1,試料4の2)。塵ごみたるサンプルBに対し方法(3)にて捕捉したダニアレルゲンを上記スーパーデキシーのシート上(15mm×20mm)に0.012gそれぞれなるべく均一に塗り付けた。基材たる該シートにダニアレルゲンを添加し24時間経過後のダニアレルゲン量をそれぞれアサヒダニスキャンにて測定した。
結果は4-ビニルフェノール含有スーパーデキシーは直後で判定3、リグノフェノールの含有スーパーデキシーは直後で判定2となった。従って、同じ溶媒(アセトン)に溶解した結果で比較すると、4-ビニルフェノールよりもリグノフェノールのダニアレルゲン低減効果の方が高いといえる。これらのアレルゲン低減化性能をまとめた試験結果を表2に示す。
【0028】
【表2】

【0029】
VI.ポリフェノール類(タンニン酸、ワットルタンニンなど)とリグノフェノール誘導体の性能比較試験:
i)ヒノキ木粉から合成したリグノクレゾールを精製したものを濃度5%(wt/vol)でアセトンに溶解させその溶液に、ユニチカ製スーパーデキシー(15cm×20cm)を30分間浸漬した。リグノクレゾール・アセトン溶液が含浸されたシートを風乾後、30℃で24時間乾燥させリグノクレゾール含有試料とした(試料6)。0.02NのNaOH水溶液に3%(wt/vol)のワットルタンニン(市販品)を溶解させその溶液に、同じように前記スーパーデキシーを30分間浸漬した。ワットルタンニン水溶液が含浸されたシートを風乾後、30℃で24時間乾燥させワットルタンニン含有試料とした(試料7)。またコントロールとしてスーパーデキシーのみの試料も用意した(試料8)。これらの試料に上記サンプルAに対し方法(1)で捕捉したダニアレルゲンを0.3gなるべく均一に塗りつけた。直ちにアサヒダニスキャンによりダニアレルゲンの量を測定した。その結果を表3に示す。
【0030】
【表3】

【0031】
試料8のコントロールでダニアレルゲン添加直後で判定2であり、試料6は判定2、試料7は判定1であった。24時間後では試料8が判定2、試料6は判定1、試料7は判定1であった。アレルゲン添加直後はワットルタンニンの方が低減化効果が高かったが、一日後にはリグノクレゾールはワットルタンニンと同等の低減化効果を示した。
【0032】
ii)基材にユニチカ製スーパーデキシー(15cm×20cm)又は呉羽テック製8056(15cm×20cm)を用いた。スギ木粉から合成したリグノクレゾールを精製したものを濃度3%(wt/vol)でアセトンに溶解させ、その溶液を3mL、各シートにできるだけ均一に滴下含浸させ風乾後、30℃で24時間乾燥しリグノクレゾール含有試料とした(試料9)。3%(wt/vol)のワットルタンニンを70%メタノール水溶液に溶解した溶液を3mL、各シートに出来るだけ均一に滴下含浸し風乾後30℃で24時間乾燥しリグノクレゾール含有試料とした(試料10)。タンニン酸を濃度3%(wt/vol)でアセトンに溶解した溶液を3mL、各シートに出来るだけ均一に滴下含浸し風乾後30℃で24時間乾燥しタンニン酸含有試料とした(試料11)。また比較の為にスーパーデキシーと8056だけのコントロールも用意した(試料12)。その後、「I.ダニアレルゲンの捕捉方法」で述べたサンプルBに対し方法(3)にて捕捉したダニアレルゲンを、各試料に0.009gずつなるべく均一に塗り付けた。これらの試料をアサヒダニスキャンにて測定を行った。その結果を表4に示す。
【0033】
【表4】

【0034】
スーパーデキシーにおいては、タンニン酸よりもリグノフェノール及びワットルタンニンにおいて効果が見られた。これはタンニン酸が極性の低い活性炭素繊維からなるスーパーデキシー上で液滴ができ、この基材となじみにくく、均一に広がらないことから、アレルゲンとの接触確率が減ったためと考えられる。ワットルタンニンもタンニン酸同様、リグノフェノールに対して極性は高いもののタンニン酸よりも分子量が大きく、またタンニン酸にないC環をもつことから若干極性が低くなっている。このため、分子中の極性の低い部位がリグノフェノール誘導体のケースと同様にスーパーデキシー側に配向するため、フェノール水酸基が出やすくなり、リグノフェノールと同様、アレルゲン低減効果が高くなっていると思われる。一方、呉羽テック8056においては、上記内容とは逆に、疎水性であるリグノフェノールが親水性であるセルロースを含む8056となじみにくいため均一に広がらず、アレルゲンとの接触確率が減ったと考えられる。こうしたことから、基材上に均一に添着するための適切な基材の選択は、ダニアレルゲン低減化フィルタを検討する場合に重要となる。
【0035】
VII.アレルゲン測定精度の向上と各種アレルゲン低減化物質の性能比較試験:
I〜VIで述べた性能比較試験の後、アレルゲン測定の精度を一段と向上させて各種アレルゲン低減化物質の性能比較試験をさらに実施した。
i)各基材によるダニアレルゲン量測定の精度を上げるため基材毎のダニアレルゲン量とその力価を測定した。ダニアレルゲンは「I.ダニアレルゲンの捕捉方法」で述べたサンプルBに対し方法(3)にて捕捉した物を用いて、それぞれの基材にダニアレルゲン量を0.0075〜0.0105gの範囲で変化させて所定量をなるべく均一に塗り付け試料とした。これらの試料をアサヒダニスキャンにて測定を行った。その結果を表5に示す。
【0036】
【表5】

【0037】
サンプルBに対し方法(3)にて捕捉したダニアレルゲンではユニチカ製スーパーデキシー、呉羽テック製8056共0.0092gでアサヒダニスキャンの判定が4であり適量と判断した。その後の実験については、その都度ダニアレルゲンの強度が変化するため上記のような操作を行い、塵の量を適宜調整して行った。
【0038】
ii)表6以降については、ダニアレルゲン量を測定する精度を上げるためにアサヒダニスキャンの判定を細分化した。アサヒダニスキャンの取扱い説明書を十分に説明した人、7人にお互いの結果が見れない状態で発色したアサヒダニスキャンを判定してもらい用紙に記入させた。その結果を集計し平均化することで少数点以下第1位までの四捨五入で判定の細分化を図った。この方法により測定結果の客観性及び精度が向上したと考えられる。
【0039】
iii)有機溶剤(アセトン)を用いて、ポリ4-ビニルフェノール(分子量8000と20000)、スギ由来リグノクレゾール、ヒノキリグノクレゾール低分子化物、ヒノキヒドロキシメチル化リグノクレゾール、ワットルタンニン、カラマツ外樹皮タンニン、タンニン酸をそれぞれ5%(wt/vol)となるようにアセトンに溶解させ、その溶液3mLを、ユニチカ製スーパーデキシーの基材に均一に滴下含浸させ乾燥後、試料とした。「I.のダニアレルゲンの捕捉方法」に述べたサンプルBに対し方法(3)にて捕捉したダニアレルゲンを0.0084gそれぞれ試料上になるべく均一に塗りつけた。シートにダニアレルゲンを添加した直後と24時間経過後のダニアレルゲン量をそれぞれアサヒダニスキャンにて測定した。その結果を表6に示す。
【0040】
【表6】

【0041】
表6の結果はアレルゲン低減化物質として公知となっている4-ビニルフェノール、タンニン酸とリグノクレゾールとがほぼ同等のダニアレルゲン低減化効果があることを示している。フェノール性水酸基をもつ化合物が吸着作用により高いアレルギー低減化効果を有するとの報告があるが、本発明のリグノフェノール誘導体(及びそのクラマン誘導体,架橋性誘導体)に関しては、これに加えその特徴としてフェノール性水酸基の活性が高いことが挙げられ、このことが4-ビニルフェノール等に劣らないダニアレルゲン低減化に寄与しているものと推定される。
またワットルタンニンとカラマツ外樹皮タンニンはこれらを上回るダニアレルゲン低減化効果があることを示している。
【0042】
iv)基材を呉羽テック製8056(15cm×20cm)にした。アルカリ水溶液(0.2N NaOH)にてポリ4-ビニルフェノール(分子量8000と20000)、スギ由来リグノクレゾール、ヒノキリグノクレゾール低分子化物、ヒノキヒドロキシメチル化リグノクレゾール、ヒノキヒドロキシメチル化リグノクレゾール熱硬化物、ワットルタンニン、タンニン酸をそれぞれ5%(wt/vol)となるように溶解させた。その溶液3mLを前記基材に均一に滴下含浸させ乾燥後、試料とした。「I.のダニアレルゲンの捕捉方法」で述べたサンプルBに対し方法(3)にて捕捉したダニアレルゲンを0.0092gそれぞれ試料上になるべく均一に塗りつけた。シートにダニアレルゲンを添加した直後と24時間経過後のダニアレルゲン量をそれぞれアサヒダニスキャンにて測定した。その結果を表7に示す。
【0043】
【表7】

【0044】
前述のスーパーデキシーでアセトンの系と同様、アレルゲン低減化物質として公知になっている4-ビニルフェノール、タンニン酸と、リグノクレゾールとがほぼ同等のダニアレルゲン低減化効果を発揮した。またワットルタンニンとカラマツ外樹皮タンニンはこれらを上回るダニアレルゲン低減化効果が見られた。
【0045】
v)天然植物抽出物であるワットルタンニンとカラマツ樹皮タンニンの基材への添着溶剤を検討した。基材(15cm×20cm)にユニチカ製スーパーデキシーと呉羽テック製8056のシートを選んだ。ワットルタンニン、カラマツ外樹皮タンニンについて前者は有機溶剤(アセトン)、後者はアルカリ水溶液(0.2N NaOH)と水にてそれぞれ5%( wt/vol) となるように溶解させ、その溶液3mLを前記各基材にそれぞれ均一に滴下含浸し乾燥後、試料とした。「I.ダニアレルゲンの捕捉方法」に述べたサンプルBに対し方法(3)にて捕捉したダニアレルゲンを、前記i)で述べた力価測定より、ユニチカ製スーパーデキシーには0.0084g、呉羽テック製8056には0.0092gそれぞれ試料上になるべく均一に塗りつけた。基材シートにダニアレルゲンを添加した直後と24時間経過後のダニアレルゲン量をそれぞれアサヒダニスキャンにて測定した。その結果を表8に示す。
【0046】
【表8】

【0047】
ワットルタンニンとカラマツ外樹皮タンニンは、活性炭素繊維の不織布(スーパーデキシー)でもレーヨン系の不織布(8056)でも良好で、基材の種類を問わず、またアセトンでもアルカリでも水でも溶解し、しかも全般的に高い低減化効果を発揮したので、オールマイティーに利用できることが分かった。
【0048】
このように、上記フェノール誘導体が収着したリグノセルロース系材料に、酸を添加して反応させてなる物質とそれをホルムアルデヒドを用いてハイドロキシメチル化した物質及び、その熱硬化物とアルカリ溶液中で高温高圧処理した物質とワットルタンニン、カラマツタンニン等はダニアレルゲンであるタンパク質の変性を促し、抗原抗体反応を起こさなくする物質として有効に働く。これらの物質は、殺虫剤成分等と異なり、温和な条件でアレルゲンを低減化,不活性化するのに役立つ。また植物由来のリグノフェノール誘導体等からなる本発明のアレルゲン低減化物は環境に優しく、工業製品である高分子化合物を使わないことから高い安全性が確保される。ワットルタンニン、カラマツタンニンは安全性に優れているだけでなく、コストも安いメリットを備える。加えて、従来の物質よりも高い効果が得られることから極めて有益となる。そして、これらの物質を適宜、アルカリ、水、アセトンに溶解させたアレルゲン低減化組成物、さらに該アレルゲン低減化組成物を不織布や活性炭素繊維布に保持,添着したアレルゲン低減化部材は、実用的で安定性が高く且つ安全に使用できる。不織布や活性炭素繊維布のフィルタに本アレルゲン低減化組成物を保持させることによって空気清浄機用フィルタやマスク等に幅広く提供できる。
【0049】
VIII.没食子酸とタンニン及びリグノフェノールの性能比較:
特開平6−279273号公報中でワットルタンニンより効果があると謳われている没食子酸・没食子酸プロピルとの比較実験をした。
基材としてユニチカ製スーパーデキシー(15cm×20cm)又は、呉羽テック製8056(15cm×20cm)を用いて、没食子酸(1水和物),没食子酸プロピル,ワットルタンニン,カラマツ外樹皮タンニン,タンニン酸,スギ由来リグノクレゾールを濃度5%(wt/vol)でそれぞれアセトンに溶解し、その溶液3mLをシート上(15mm×20mm)に滴下含浸し乾燥後、試料とした。また比較の為に何もしない2種類の基材をコントールとした。これらの試料に「I.ダニアレルゲンの捕捉方法」に述べた、サンプルBを方法(3)にて捕捉したダニアレルゲンをユニチカ製スーパーデキシーで0.0080g、呉羽テック製8056で0.0072gをそれぞれ試料上になるべく均一に塗りつけた。シートにダニアレルゲンを添加した直後と24時間経過後のダニアレルゲン量をそれぞれアサヒダニスキャンにて測定した。その結果を表9に示す。
【0050】
【表9】

【0051】
表9の結果からワットルタンニン,タンニン酸,カラマツ外樹皮タンニン,スギ由来リグノクレゾールが没食子酸(1水和物),没食子酸プロピルに比べて高いダニアレルゲン低減化効果が確認できた。基材はユニチカ製スーパーデキシーが呉羽テック製8056に比べて常に高いダニアレルゲン低減化効果を示した。ユニチカ製スーパーデキシーには活性炭が含有されているためアレルゲン低減化物質中の疎水性部分との間で相互作用が起こった結果、親水性基でダニアレルゲンタンパク質を変性する効果のあるフェノール性水酸基がフィルターの表面側へ向くため、接触機会が増えることに起因しているとも考えられる。本アレルゲン低減化組成物を保持する基材には、活性炭含有素材からなる不織布すなわち極性の低い不織布からなるものがより好ましい。
【0052】
IX.フィルター洗浄によるアレルゲン低減化効果の維持状態テスト:
アレルゲン低減化物質を添着させたフィルターを繰り返し洗浄しても、性能維持が図れるかどうか試験した。呉羽テック製8056(15cm×20cm)を基材にして、アルカリ水溶液(0.2N NaOH)にて、スギ由来リグノクレゾール,ヒノキヒドロキシメチル化リグノクレゾール,ヒノキヒドロキシメチル化リグノクレゾール熱硬化物,ワットルタンニン,タンニン酸をそれぞれ5%(wt/vol)となるように溶解させた。その溶液3mLを均一に滴下含浸し乾燥後、試料とした。ヒノキヒドロキシメチル化リグノクレゾール熱硬化物はヒノキヒドロキシメチル化リグノクレゾールに約100℃の熱をかけて基材に添着した。また比較の為にアルカリ水溶液(0.2N NaOH)だけを3mL滴下含浸し乾燥したものと、何もしない基材をコントールとした。これらの試料に「I.ダニアレルゲンの捕捉方法」に述べた、サンプルBを方法(3)にて捕捉したダニアレルゲンを0.0072gそれぞれ試料上になるべく均一に塗りつけたシートにダニアレルゲンを添加した直後のダニアレルゲン量をそれぞれアサヒダニスキャンにて測定した。これらのシートを1Lの脱イオン水を入れた2Lのビーカー中でもみ洗いを行ったのち、少量の脱イオン水にて洗浄することによって、ダニを洗い流した。30℃にて乾燥後、再び上記の量のダニアレルゲンを添加した直後のダニアレルゲン量をそれぞれアサヒダニスキャンにて測定した。その結果を表10に示す。
【0053】
【表10】

【0054】
表10の結果からアルカリのみのコントロールとタンニン酸は、洗浄時に洗浄水側に溶出する様子が見られたことから洗浄後のフィルター上のこれらの低減化物質量はかなり減っていると考えられ、実際の結果からもダニアレルゲン低減化効果は弱くなったが、他のダニアレルゲン低減化物質は、そのダニアレルゲン低減化効果に大きな減少は見られなかった。したがって、リグノクレゾール,メチロール化リグノクレゾール(熱硬化前後共),ワットルタンニンにおいては水による洗浄時に多くがフィルター上に留まると考えられ、フィルター洗浄を行っても低減化効果が発揮,維持されるのが確認できた。特に、ヒノキヒドロキシメチル化リグノクレゾール熱硬化物はフィルター洗浄を幾度となく重ねても低減化効果が維持されるのが確認できた。繰返し洗浄して用いられるフィルタなどのアレルゲン低減化部材に有用で、威力を発揮する。
人の生活空間を構成する部材は水洗い洗浄することが多いなか、水に溶解し易いタンニン酸はそれらの部材に使ってもアレルゲン低減化効果が直ぐ消失してしまう。一方、ワットルタンニンはタンニン酸と違って水洗いしてもアレルゲン低減化効果が持続し極めて有益になっている。水洗いでのタンニン酸の色落ち度に比べ、ワットルタンニンは色落ち度が少なく、アレルゲン低減化効果も持続する。ワットルタンニンのなかの分子量の高い画分が不溶性区分となり水洗いした後でも不織布に保持されたままになっていると想定され、その部分に高いアレルゲン低減化効果があると考えられる。
【0055】
X.液状アレルゲン低減化剤としての効果確認試験
噴霧剤として用いた場合の効果について試験した。ユニチカ製スーパーデキシーを基材にして「I.のダニアレルゲンの捕捉方法」に述べた、サンプルBを方法(3)にて捕捉したダニアレルゲンを0.0072gそれぞれ試料上になるべく均一に塗りつけた。このアレルゲン添加シートを3枚用意し1枚はそのままコントロールとした。残りの2枚にそれぞれ有機溶剤(アセトン)とアルカリ水溶液(0.2N NaOH)を用いて、スギ由来リグノクレゾールを3%(wt/vol)となるように溶解させ、その溶液5mLをそれぞれ均一にシートへ噴霧後、乾燥し試料とした。溶剤乾燥後にこれらの試料のダニアレルゲン量をそれぞれアサヒダニスキャンにて測定した。その結果を表11に示す。
【0056】
【表11】

【0057】
ダニアレルゲンに汚染されたシートに、リグノクレゾールをアセトン又はアルカリに溶解したものを、スプレーにより噴霧,添加することによってダニアレルゲンは低減化された。
【0058】
尚、本発明においては、前記具体的実施形態,実施例に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更した実施形態とすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子にフェノール化合物のフェノール性水酸基に対してオルト位及び/又はパラ位の炭素原子が結合した1,1−ビスアリールプロパンユニットを有するリグノフェノール誘導体を含有することを特徴とするアレルゲン低減化組成物。
【請求項2】
リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子にフェノール化合物のフェノール性水酸基に対してオルト位及び/又はパラ位の炭素原子が結合した1,1−ビスアリールプロパンユニットを有するリグノフェノール誘導体に係る該1,1−ビスアリールプロパンユニット中の導入フェノール化合物をクマラン化してなるクマラン誘導体を含有することを特徴とするアレルゲン低減化組成物。
【請求項3】
前記リグノフェノール誘導体に、前記フェノール性水酸基のオルト位及び/又はパラ位に架橋性反応基を有する架橋性誘導体を含有する請求項1記載のアレルゲン低減化組成物。
【請求項4】
前記架橋性反応基が架橋された架橋体からなるリグニン誘導体を含有する請求項3記載のアレルゲン低減化組成物。
【請求項5】
樹皮タンニンを含有することを特徴とするアレルゲン低減化組成物。
【請求項6】
下記(a)〜(e)のアレルゲン低減化組成物の群から選択される少なくとも1つのアレルゲン低減化組成物を基材に保持させてなることを特徴とするアレルゲン低減化部材。
(a)リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子にフェノール化合物のフェノール性水酸基に対してオルト位及び/又はパラ位の炭素原子が結合した1,1−ビスアリールプロパンユニットを有するリグノフェノール誘導体を含有するアレルゲン低減化組成物。
(b)リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子にフェノール化合物のフェノール性水酸基に対してオルト位及び/又はパラ位の炭素原子が結合した1,1−ビスアリールプロパンユニットを有するリグノフェノール誘導体に係る該1,1−ビスアリールプロパンユニット中の導入フェノール化合物をクマラン化してなるクマラン誘導体を含有するアレルゲン低減化組成物。
(c)前記(a)のリグノフェノール誘導体のうち、前記フェノール性水酸基のオルト位及び/又はパラ位に架橋性反応基を有する架橋性誘導体を含有するアレルゲン低減化組成物。
(d)前記(c)の架橋性反応基が架橋された架橋体からなるリグニン誘導体を含有するアレルゲン低減化組成物。
(e)樹皮タンニンを含有するアレルゲン低減化組成物。
【請求項7】
前記基材が不織布である請求項6記載のアレルゲン低減化部材。
【請求項8】
フェノール誘導体が収着されたリグノセルロース系材料に酸を添加し混合して前記リグノセルロース系材料をリグノフェノール誘導体と炭水化物に分離することによって得られるリグノフェノール誘導体、を含有することを特徴とするアレルゲン低減化組成物。
【請求項9】
フェノール誘導体が収着されたリグノセルロース系材料に酸を添加し混合して前記リグノセルロース系材料をリグノフェノール誘導体と炭水化物に分離することによって得られるリグノフェノール誘導体を、アルカリ溶液に溶解させた後、加熱することによって得られた物を、さらに酸性にして得た不溶区分を水洗することによって得られる二次変換物を含有することを特徴とするアレルゲン低減化組成物。
【請求項10】
フェノール誘導体が収着されたリグノセルロース系材料に酸を添加し混合して前記リグノセルロース系材料をリグノフェノール誘導体と炭水化物に分離することによって得られるリグノフェノール誘導体を、ホルムアルデヒドを含むアルカリ溶液に溶解させてヒドロキシメチル化反応させたものを含有することを特徴とするアレルゲン低減化組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子にフェノール化合物のフェノール性水酸基に対してオルト位及び/又はパラ位の炭素原子が結合した1,1−ビスアリールプロパンユニットを有するリグノフェノール誘導体を含有することを特徴とするアレルゲン低減化組成物。
【請求項2】
リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子にフェノール化合物のフェノール性水酸基に対してオルト位及び/又はパラ位の炭素原子が結合した1,1−ビスアリールプロパンユニットを有するリグノフェノール誘導体に係る該1,1−ビスアリールプロパンユニット中の導入フェノール化合物をクマラン化してなるクマラン誘導体を含有することを特徴とするアレルゲン低減化組成物。
【請求項3】
前記リグノフェノール誘導体に、前記フェノール性水酸基のオルト位及び/又はパラ位に架橋性反応基を有する架橋性誘導体を含有する請求項1記載のアレルゲン低減化組成物。
【請求項4】
前記架橋性反応基が架橋された架橋体からなるリグニン誘導体を含有する請求項3記載のアレルゲン低減化組成物。
【請求項5】
下記(a)〜(d)のアレルゲン低減化組成物の群から選択される少なくとも1つのアレルゲン低減化組成物を基材に保持させてなることを特徴とするアレルゲン低減化部材。
(a)リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子にフェノール化合物のフェノール性水酸基に対してオルト位及び/又はパラ位の炭素原子が結合した1,1−ビスアリールプロパンユニットを有するリグノフェノール誘導体を含有するアレルゲン低減化組成物。
(b)リグニンのアリールプロパンユニットのC1位の炭素原子にフェノール化合物のフェノール性水酸基に対してオルト位及び/又はパラ位の炭素原子が結合した1,1−ビスアリールプロパンユニットを有するリグノフェノール誘導体に係る該1,1−ビスアリールプロパンユニット中の導入フェノール化合物をクマラン化してなるクマラン誘導体を含有するアレルゲン低減化組成物。
(c)前記(a)のリグノフェノール誘導体のうち、前記フェノール性水酸基のオルト位及び/又はパラ位に架橋性反応基を有する架橋性誘導体を含有するアレルゲン低減化組成物。
(d)前記(c)の架橋性反応基が架橋された架橋体からなるリグニン誘導体を含有するアレルゲン低減化組成物。
【請求項6】
フェノール誘導体が収着されたリグノセルロース系材料に酸を添加し混合して前記リグノセルロース系材料をリグノフェノール誘導体と炭水化物に分離することによって得られるリグノフェノール誘導体、を含有することを特徴とするアレルゲン低減化組成物。
【請求項7】
フェノール誘導体が収着されたリグノセルロース系材料に酸を添加し混合して前記リグノセルロース系材料をリグノフェノール誘導体と炭水化物に分離することによって得られるリグノフェノール誘導体を、アルカリ溶液に溶解させた後、加熱することによって得られた物を、さらに酸性にして得た不溶区分を水洗することによって得られる二次変換物を含有することを特徴とするアレルゲン低減化組成物。
【請求項8】
フェノール誘導体が収着されたリグノセルロース系材料に酸を添加し混合して前記リグノセルロース系材料をリグノフェノール誘導体と炭水化物に分離することによって得られるリグノフェノール誘導体を、ホルムアルデヒドを含むアルカリ溶液に溶解させてヒドロキシメチル化反応させたものを含有することを特徴とするアレルゲン低減化組成物。

【公開番号】特開2006−111812(P2006−111812A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−302926(P2004−302926)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(594156880)三重県 (58)
【出願人】(594095338)株式会社マルトー (5)