説明

アレルゲン性低減化剤

【課題】優れたアレルゲン性低減化効果を有する基剤を提供する。
【解決手段】(a1)炭素数5〜50の炭化水素基を含み、スルホン酸基もしくはその塩又は硫酸エステル基もしくはその塩を含まない有機基が、置換度0.004〜0.1で導入され、且つ(a2)スルホン酸基もしくはその塩又は硫酸エステル基もしくはその塩を含む有機基が、置換度0.05〜1で導入されたセルロースエーテルをアレルゲン性低減化剤として用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境中のアレルゲンを低減化するためのアレルゲン性低減化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、喘息などのアレルギー性疾患は、年々増加傾向にあり、重要な社会問題となっている。例えば、ダニアレルゲンや花粉アレルゲン、ハウスダストの増加が挙げられる。これらアレルギー性疾患の増加の一因として、エアコンディショナーの普及による快適温度の恒常化に加え、機密性の高まった住宅のため湿気の滞留が起こりやすくなっていることにより、アレルゲンの元となるダニが増えやすい環境になっていること、更に犬猫をはじめとする動物を室内でペットとして飼う習慣が定着し、動物の唾液や毛に接する機会が増えたこと、室外に到っては、道路のアスファルト化により土の地面が減ったことにより、アレルゲンが舞い上がりやすくなっていることなどの生活環境の変化が考えられる。
【0003】
アレルギー性疾患の予防および治療には、斯かるアレルゲンを除去することが合理的な手段であり、これまでにも空気清浄機や高機密性布団カバーにより人とアレルゲンとの接触を妨げる試みがなされてきたが、その効果は充分とはいえないものであった。
【0004】
殺ダニ剤や忌避剤によるダニ数の低減化についても多くの検討がなされてきたが、その効果は十分でなく、アレルゲン量の低減の根本的な解決法とは言えない。
【0005】
特許文献1および特許文献2では、タンニン酸や茶抽出物などの天然のエキスでアレルゲンを化学的に不活性化する、すなわちアレルゲン性を低減化する試みについて報告されているが、経時変化による対象物の着色の問題や多量に使用した際の安全性に問題が残されており、商品に用いるのは困難である。
【0006】
また、特許文献3、特許文献4、特許文献5には、セルロース誘導体又はスターチ誘導体を用いたアレルゲン性低減化剤、具体的には炭素数4〜30のアルキル基又はヒドロキシ基が置換していてもよい炭素数1〜5のスルホアルキル基若しくはその塩で変性したセルロース誘導体又はスターチ誘導体を用いたアレルゲン性低減化剤が開示されている。これら技術は、アレルゲン性を不活性化する低減化効果を有する。
【特許文献1】特開昭61−44821号公報
【特許文献2】特開平6−279273号公報
【特許文献3】特開2005−145950号公報
【特許文献4】特開2004−203900号公報
【特許文献5】特開2004−83844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかるアレルギー症状の増加に伴い、アレルギーの原因となるアレルゲンの不活性化を目的とし、従来にも増して優れたアレルゲン性低減化効果を有する基剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、環境中のアレルゲン性を低減化でき、かつ安全性の高い物質を探索した結果、特定の炭化水素基と特定の親水性基を併せ持つ多糖誘導体がアレルゲンに対してアレルギー反応惹起能力を減弱させる作用を有し、アレルゲン性低減化剤として有用であることを見出した。
【0009】
本発明は、(a1)炭素数5〜50の炭化水素基を含み、スルホン酸基もしくはその塩又は硫酸エステル基もしくはその塩を含まない有機基〔以下、有機基(a1)という〕が、置換度0.004〜0.1で導入され、且つ(a2)スルホン酸基もしくはその塩又は硫酸エステル基もしくはその塩を含む有機基〔以下、有機基(a2)という〕が、置換度0.05〜1で導入されたセルロースエーテル〔以下、(a)成分という〕からなるアレルゲン性低減化剤に関する。
【0010】
また、本発明は、上記本発明のアレルゲン性低減化剤0.001〜10質量%、及び溶媒もしくは分散媒を含有するアレルゲン性低減化剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のアレルゲン性低減化剤を用いれば、人体に悪影響がなく且つ着色などの問題を引き起こすことなく、環境中に存在するハウスダストなどのアレルゲン性を低減化することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
従来、アレルゲン性低減化剤の基剤として多糖誘導体を用いることは知られている。例えば、特許文献5に記載の化合物は、優れたアレルゲン性不活化効果を示す。しかしながら、これら化合物は溶解性に乏しいため配合量に制限があった。本発明に用いる(a)成分は、従来よりも多く配合することができる一方で、従来よりも増してアレルゲンの不活化効果に優れることが見出されたため、少量の配合でも高い効果が期待できる。また、使用形態や対象物、使用方法に応じて(a)成分の濃度を調節可能である。
【0013】
本発明の(a)成分は、セルロースからの多糖誘導体であって、アレルゲン性不活化効果の点から有機基(a1)の置換度は0.004以上であり、アレルゲン性不活化効果及び水溶液として用いる際の溶解性の点から0.1以下であり、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.02以下である。また、有機基(a2)の置換度はアレルゲン性不活化効果を高め、且つ水溶液とする場合の溶解性を高めるために0.05以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.15以上であり、原料セルロースへの有機基(a)の導入し易さ及びアレルゲン性不活化効果の低下を考慮して、有機基(a)の置換度は1以下である。
【0014】
有機基(a1)は、下記一般式(1)の基であることが好ましい。
−E1−(OA)n−E2−R (1)
[式中の、E1はヒドロキシ基またはオキソ基が置換してもよい炭素数1〜6のアルキレン基を示し、nは0〜50の数を示し、Aは炭素数1〜6のアルキレン基を示し、E2はエーテル結合またはオキシカルボニル基を示し、Rは炭素数5〜50の炭化水素基を示す。]
【0015】
式(1)中、E1で示されるヒドロキシ基又はオキソ基が置換していてもよい炭素数1〜6のアルキレン基としては、直鎖又は分岐鎖のいずれでもよく、特に炭素数2又は3の直鎖のアルキレン基が好ましい。具体的には、例えばエチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、2−ヒドロキシトリメチレン基、1−ヒドロキシメチルエチレン基、1−オキソエチレン基、1−オキソトリメチレン基、1−メチル−2−オキソエチレン基などが好ましく、特に2−ヒドロキシトリメチレン基、1−ヒドロキシメチルエチレン基が好ましい。
【0016】
式(1)中、Aで示される炭素数1〜6のアルキレン基としては、直鎖又は分岐鎖のいずれでもよく、同一でも異なっていてもよく、特に炭素数2又は3の直鎖のアルキレン基が好ましい。具体的には、例えばエチレン基、プロピレン基及びトリメチレン基などが好ましく、特にエチレン基が好ましい。
【0017】
nで表される(−OA−)の重合度は、0〜50であるが、アレルゲン性低減化効果の点から0〜40、更に0〜30、更に0〜20、更に10〜20が好ましく、特に10〜15が好ましい。n個のAは同一でも異なってもよい。ここでnは平均付加モル数の意味である。
【0018】
式(1)中、E2はエーテル結合(−O−)又はオキシカルボニル基(−OCO−又は−COO−)であるが、エーテル結合が好ましい。
【0019】
式(1)中、Rで示される炭素数5〜50の炭化水素基としては、好ましくは炭素数5〜40、より好ましくは10〜40、最も好ましくは炭素数14〜30の炭化水素基である。炭化水素基はアルキル基が好ましい。具体的には、例えばオクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イソステアリル基、コレステリル基などが好ましく、特にドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、コレステリル基が好ましい。
【0020】
また、有機基(a2)は、下記一般式(2)の基又は下記一般式(3)の基であることが好ましい。
−R1a−SO3M (2)
−R2a−OSO3M (3)
〔式中、R1a、R2aは、ヒドロキシ基で置換していてもよく、エステル基及び/又はアミド基で分断されていてもよい炭素数1〜6のアルキレン基であり、Mは陽イオンである。〕
【0021】
(a)成分の原料となるセルロース(以下、単に「原料セルロース」ということもある)は、セルロースのヒドロキシ基の水素原子の少なくとも一部が、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、好ましくは1〜4のヒドロキシアルキル基で置換されたヒドロキシアルキル化セルロース及びセルロースのヒドロキシ基の水素原子の少なくとも一部が、炭素数1〜6のアルキル基、好ましくはメチルもしくはエチル基で置換されたアルキル化セルロースから選ばれるセルロース化合物を用いることが好ましい。具体的にはメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシメチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどが挙げられる。特にヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどが好ましい。
【0022】
有機基(a1)、(a2)を導入する前のヒドロキシアルキル化セルロースまたはアルキル化セルロースの置換度(エーテル置換度)は、構成単糖残基当たり0.5〜3.0、更に1.0〜3.0、特に1.5〜3.0が好ましい。
【0023】
また、有機基(a1)、(a2)を導入する前の原料セルロースの重量平均分子量は、1万〜200万、5万〜150万、特に10万〜60万の範囲が好ましい。なお、有機基(a1)、(a2)が導入された(a)成分の分子量は、原料セルロースから置換基の割合だけ分子量が増加する。
【0024】
これら原料セルロース及び(a)成分の重量平均分子量は、アセトニトリルと水の混合溶媒(リン酸緩衝液)を展開溶媒とし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーでポリエチレングリコールを標準物質として求めることができる。
【0025】
本発明の(a)成分は、国際公開第00/73351号パンフレット記載の方法に準じて製造した多糖誘導体に対し、スルホン化剤やグリセリルエーテル類を反応させることによって製造できる。
【0026】
具体的な(a)成分の製法としては、原料セルロースと下記一般式(4)で表される化合物とを反応させることで有機基(a1)を導入し、更に(I)三酸化硫黄により、残りのヒドロキシ基を硫酸化する方法、(II)エピルロルヒドリンとを反応させた後に亜硫酸ナトリウムによりスルホン化する方法、(III)アルカリ条件下でハロアルカンスルホン酸と反応させる方法、により有機基(a2)を導入する製造方法を挙げることができる。
3−(OA)n−E2−R (4)
〔式中、E3は炭素数3〜6のエポキシ化アルキル基、ヒドロキシ基が置換していてもよい炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、カルボキシ基、および炭素数2〜6のカルボキシアルキル基を示し、n、A、E2及びRは前記式(1)記載のものと同じ意味を示す。〕
【0027】
このうち、好ましい製造方法は、一般式(4)のE3として炭素数3〜6のエポキシ化アルキル基を用いる方法とアルカリ条件下でハロアルカンスルホン酸を反応させる方法の組み合わせである。
【0028】
このようにして製造した本発明の(a)成分は、実施例に示すように、種々のアレルゲン、特にダニアレルゲンに対してその抗原性を大きく減弱又は消失させる作用を有する。従って、本発明の(a)成分は、各種アレルゲンに対してアレルギー反応惹起能力を減弱又は消失させるアレルゲン性低減化剤である。
【0029】
ここで、アレルゲンとは、人及び動物が接触することにより喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、アトピー性皮膚炎などのアレルギー反応を惹起するものを意味するが、本発明においては、例えばスギ、ヒノキ、ブタクサ、ヨモギなどの植物の花粉由来の植物アレルゲン、イヌ、ネコなどの動物の表皮や毛、寄生虫、ゴキブリ、蛾などの昆虫、ヒョウダニ類、コナダニ類、ササラダニ類などのダニ類などの動物由来の動物アレルゲンの他、カビ類や細菌類、ハウスダスト(砂塵、繊維状粒子、ダニの糞などの室内塵)などを特に例示することができる。
【0030】
また、アレルゲン性低減化とは、アレルゲン自体が持つアレルギー反応の惹起能力を低減、不活性化、又は無害化することをいい、動物性アレルゲンについては特に忌避剤とは明確に異なる。具体的には、例えばELISAによるアレルゲン測定法で、ダニエキス(ダニ抽出タンパク質)に対して10倍(質量比)の剤で処理した条件下で、蒸留水処理をコントロールとするDer f l(ダニ由来のアレルゲンタンパク質)量(コントロール比)が0.8以下、より好ましくは0.7以下、さらに好ましくは0.6以下である場合に、アレルゲン性低減化効果を有するとすることができる。尚、アレルゲンを「包み込む」、「ブロックする」、「活性を抑える」、「非アレルゲン化する」の表現は、本発明のアレルゲン性低減化と同義である。
【0031】
本発明の(a)成分によるアレルゲン性低減化効果は、ダニアレルゲン、ハウスダスト、スギ花粉アレルゲン、ネコなどのペットアレルゲンに対して特に有効である。
【0032】
本発明のアレルゲン性低減化剤は、他の成分とともに固体状、ゲル状、ペースト状、液状など、使用しやすい剤形にしてもよい。使用の際はアレルゲン性低減化剤を、溶媒や分散媒などの媒体に溶解又は分散させることで溶液または分散液とし、対象となる面や物品に対して該液を接触させることにより使用することが望ましい。従って、前記固体状、ゲル状、ペースト状、液状などの剤形の場合は、使用の際に液状媒体に溶解、分散するか、液状の場合は必要に応じて希釈して用いることが望ましい。本発明によれば、本発明のアレルゲン性低減化剤、すなわち(a)成分0.001〜10質量%、及び溶媒もしくは分散媒を含有するアレルゲン性低減化剤組成物が提供される。溶媒又は分散媒は、水の他に、エタノールやプロピルアルコールなどの低級アルコール類及びグリコール系化合物などの水溶性有機溶剤、並びに石油エーテル、アセトン及びヘキサン等の親油性有機溶剤などを挙げることができるが、本発明では、水を含有する水溶液であることが好ましい。
【0033】
なおマスクやエアフィルターなどの布帛や膜に固着又は分散させた態様の場合は、必ずしも溶液にして用いる必要はない。
【0034】
アレルゲン性低減化剤は、アレルゲン性低減化目的だけの用途として使用してもよいが、安定性や効果を損なわない程度に衣料用や住居用の洗剤、或いは仕上げ剤に配合してもよい。例えば、住居用の拭き掃除用洗浄剤に配合することで、掃除の際にダニや室内に進入した花粉由来のアレルゲンを不活化又は無害化させることができるし、衣服に付いた花粉に対しては衣料用の洗剤や仕上げ剤に配合することで、洗濯の際に本発明の効果を享受することができる。具体的には、住居のふき掃除用洗浄剤、床用ワックス仕上げ剤、レンジ廻り用洗浄剤、エアコンフィルター用洗浄剤、住居用消臭又は芳香剤、カビとり剤、住居用漂白剤、衣料用洗剤、柔軟剤、のり剤、衣料用消臭剤、衣料用漂白剤、掃除用紙ないし布帛製品、台所用洗剤、台所用漂白剤などへの配合を提案することができる。
【0035】
本発明のアレルゲン性低減化剤を、アレルゲン性低減化を主目的とする製剤として使用する場合は、(a)成分を、水を含む溶媒に溶解せしめたアレルゲン性低減化剤組成物として用いることが好ましい。またアレルゲン性低減化剤組成物の製品形態としては、溶液として通常の容器に充填したもの、噴霧剤とともに充填したエアゾール、スプレーデバイスもしくはディスペンサーを備えた容器に充填したもの、又は該溶液をモップ、布もしくは不織布シートに含浸させたもの、ドライタイプの場合は、繊維にアレルゲン性低減化剤を固着化又は分散させたものなどが挙げられる。ただし、アレルゲンの不活化においては、組成物を広範囲の環境アレルゲンに対して効率よく接触させることが望まれるため、エアゾールやスプレーデバイスを備えた容器に充填したものとして用いることが最も簡便である。
【0036】
上記製剤中の(a)成分の配合量は、その剤型、処理方法及び処理場所などに応じて適宜決定することができる。その場合の(a)成分は、0.001〜10質量%となるように配合するのが好ましい。(a)成分を溶媒に溶解又は分散媒に分散させたアレルゲン性低減化剤組成物とする場合は、(a)成分を、0.001〜5質量%、更に0.001〜2質量%となるように配合するのが好ましい。特にスプレーや塗布などの処理対象に直接処理するような場合においては、(a)成分は、0.001〜1質量%、更には、0.001〜0.5質量%の濃度であることが好ましい。
【0037】
本発明ではアレルゲン性低減化剤組成物を、床面、畳、カーペット、布団、絨毯、畳、壁、ベット、ソファー、枕又は押し入れなどに散布、噴霧、塗布又は蒸散したり、衣類、カーテンを洗浄したり、空気浄化装置中のフィルターに処理することにより、或いは花粉症用マスクのガーゼに含浸させたり、布団カバー、シーツや枕の布地を処理することなどにより、その効果を発揮させることができる。
【0038】
本発明のアレルゲン性低減化剤組成物は、ダニ、蛾、ゴキブリなどの虫体に対する忌避剤、殺虫剤などの薬剤を配合することが効果的であり、斯かる薬剤としては、ダニ、蛾、ゴキブリなどに対する殺虫剤、忌避剤、共力剤、殺菌剤、防黴剤、界面活性剤、消臭剤及び芳香剤などが挙げられる。
【0039】
例えば、殺ダニ剤としては、d−フェノトリン(3−フェノキシベンジル d−シス/トランス−クリサンテマート)、ペルメトリン(3−フェノキシベンジル dl−シス/トランス−2,2−ジメチル−3−(2’,2’−ジクロロビニル)−シクロプロパンカルボキシレート)、レスメトリン((5−ベンジル−3−フリル)メチル dl−シス/トランス−クリサンテマート)、アレスリン(dl−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル dl−シス/トランス−クリサンテマート)、フタルスリン((N−3,4,5,6,−テトラヒドロ−フタルイミド)メチル dl−シス/トランス−クリサンテマート)、エムペントリン(1−エチニル−2−メチル−2−ペンテニル dl−シス/トランス−クリサンテマート)、d,dT80−プラレトリン(d−2−メチル−4−オキソ−3−プロパルギルシクロペント−2−エニル d−シス/トランス−クリサンテマート)などの合成ピレスロイドやその誘導体が、また、ヒノキチオール、ベンジルベンゾエイト、ジャスモン酸誘導体などの天然精油成分由来の抗ダニ物質が挙げられる。
【0040】
ダニ忌避剤としては、例えばジエチルアシド、ジメチルフタレート、ジブチルフタレート、MGKリペレント 326、ダブトレックス、2−エチル1,3-ヘキサンジオールなどが使用できる。
【0041】
殺ダニ剤の共力剤及び/又は殺ダニ剤としては、例えばピペロニルブトキサイド、オクタクロロジプロピルエーテル、N−(2−エチルヘキシル)−1−イソプロピル−4−メチルビシクロ〔2,2,2〕オクト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−エチニル)−ビシクロ〔2,2,1〕−ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボキシイミドなどが使用できる。
【0042】
屋内塵性ダニ類の餌となり、それ自体の抗原性もありえるカビ或いは細菌の増殖を抑制する殺菌剤、防黴剤としては、チアベンダゾール、トリクロサン、クロルヘキシジン、ジンクピリチオン、クロルキシレノール、デンシル、塩化ベンザルコニウム、ジクロフルアニド、安息香酸ナトリウム、p−オキシ安息香酸メチル、フェノキシエタノール、エタノールおよび、キトサン、カテキン、チモール、ヒノキチオール、孟宗竹エキス、カラシ精油、ワサビ精油などの天然由来成分が挙げられる。
【0043】
また本発明のアレルゲン性低減化剤には、既知の抗アレルゲン物質として知られる、タンニン酸や、茶抽出物、ハイドロキシアパタイト、エピカテキン、エピガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、没食子酸(特開平6−279273号公報)やアレルゲン補足物質であるスメクタイトなどの粘土鉱物、アレルゲン除去剤として知られるヒドロキシ安息香酸化合物(特開平11−292714号公報)などを組み合せて使用してもよい。
【0044】
本発明のアレルゲン性低減化剤を溶解ないし分散させるための水は、イオン交換水を用いることが好ましいが、用途によっては純水や蒸留水などの純度を高めた水を用いてもよい。水は残部であるが、エタノールやプロパノールなどの水溶性有機溶剤と併用することが好ましい。
【0045】
本発明では、剤の安定性のみならず、乾燥を速めるためにエタノールを配合することが好ましく、組成物中、好ましくは5〜30質量%、より好ましくは10〜20質量%である。またその際の水は残部である。
【0046】
アレルゲン性低減化剤組成物には、前記エタノール、プロパノールの他、グリセリン、グルコール化合物などの水溶性有機溶剤、前記した併用の好ましい化合物、界面活性剤、リン酸塩、硫酸塩、塩酸塩などの無機塩類、ヘクトライトなどの粘土鉱物、シリコーン類、香料などを配合することができる。
【実施例】
【0047】
表1に示す配合成分を用いて表1に示すアレルゲン性低減化剤を調製した。これらアレルゲン性低減化剤のアレルゲン性低減化効果を下記の方法によって評価した。また、外観についても下記の方法で評価した。アレルゲン低減化効果及び外観の評価結果を表1に示す。
【0048】
なお、表中の化合物(A1)、(A2)及び(B1)、(B2)、(B3)は以下の合成例により得られたものである。
【0049】
<合成例1:化合物(A1)の製造>
国際公開第00/73351号パンフレット記載の方法に準じ、重量平均分子量20万、ヒドロキシエチル基の置換度が2.5のヒドロキシエチルセルロース(ハーキュレス社製)を用い、次式
【0050】
【化1】

【0051】
で示されるポリオキシアルキレン化合物を加え、ポリオキシアルキレン基の置換度が0.014である化合物(A1)を得た。
【0052】
<合成例2:化合物(A2)の製造(化合物(A1)へのスルホン酸基の導入)>
化合物(A1)を20g、イソプロピルアルコール90g及びイオン交換水16gを混合してスラリー液を調製し、更に48%水酸化ナトリウム水溶液1.2gを加え、窒素雰囲気下室温で30分間攪拌した。この溶液に3−クロロ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム21.7g及び48%水酸化ナトリウム水溶液9.2gを加え、80℃で8時間反応させてスルホン酸化を行った。反応終了後、反応液を酢酸で中和し、反応生成物をろ別した。反応生成物を70%イソプロピルアルコール水溶液300gで3回、イソプロピルアルコール300gで2回洗浄し、減圧下70℃で1昼夜乾燥し、化合物(A2)を16g得た。得られた化合物(A2)のスルホン酸基を含む置換基の置換度は0.272であった。
【0053】
<合成例3:化合物(B1)の製造>
ヒドロキシエチルセルロース(ハーキュレス製ナトロゾール250G、置換度2.5)を80g、イソプロピルアルコール360g及びイオン交換水64gを混合してスラリー液を調製し、更に48%水酸化ナトリウム水溶液4.9gを加え、窒素雰囲気下室温で30分間攪拌した。この溶液にポリオキシエチレンコレステリルエーテル(エマレックスCS−10、日本エマルジョン株式会社)のグリシジルエーテル化物を13.7g加え、80℃で9時間反応させた。反応終了後、反応液を酢酸で中和し、反応生成物をろ別した。反応生成物を70%イソプロピルアルコール水溶液300gで3回、イソプロピルアルコール300gで2回洗浄し、減圧下70℃で1昼夜乾燥し、化合物(B1)75gを得た。得られた化合物(B1)のコレステリル基を含む置換基の置換度は0.0045であった。
【0054】
<合成例4:化合物(B2)の製造(化合物(B1)へのスルホン酸基の導入)>
化合物(B1)を20g、イソプロピルアルコール90g及びイオン交換水16gを混合してスラリー液を調製し、更に48%水酸化ナトリウム水溶液1.2gを加え、窒素雰囲気下室温で30分間攪拌した。この溶液に3−クロロ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム21.7g及び48%水酸化ナトリウム水溶液9.2gを加え、80℃で8時間反応させてスルホン酸化を行った。反応終了後、反応液を酢酸で中和し、反応生成物をろ別した。反応生成物を70%イソプロピルアルコール水溶液300gで3回、イソプロピルアルコール300gで2回洗浄し、減圧下70℃で1昼夜乾燥し、化合物(B2)16gを得た。得られた化合物(B2)のスルホン酸基を含む置換基の置換度は0.272であった。
【0055】
<合成例5:化合物(B3)の製造(化合物(B1)へのスルホン酸基の導入)>
化合物(B1)を20g、イソプロピルアルコール90g及びイオン交換水16gを混合してスラリー液を調製し、更に48%水酸化ナトリウム水溶液1.2gを加え、窒素雰囲気下室温で30分間攪拌した。この溶液に3−クロロ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム3.0g及び48%水酸化ナトリウム水溶液1.3gを加え、80℃で8時間反応させてスルホン酸化を行った。反応終了後、反応液を酢酸で中和し、反応生成物をろ別した。反応生成物を70%イソプロピルアルコール水溶液300gで3回、イソプロピルアルコール300gで2回洗浄し、減圧下70℃で1昼夜乾燥し、化合物(B2)16gを得た。得られた化合物(B2)のスルホン酸基を含む置換基の置換度は0.048であった。
【0056】
<アレルゲン性低減化率の測定1:Der f 1>
以下の手順に従い、ヒョウヒダニアレルゲンであるDer f 1の低減化率の測定を行った。
【0057】
多糖誘導体〔化合物(A1)〜(B3)〕は、0.1%溶液もしくは5.0%溶液(サンプル)となるよう、15%エタノール水溶液を溶媒として用いた。多糖誘導体とダニエキスを一定の割合で混合し、混合物中のDer f 1量によってアレルゲン性低減化効果の評価を行った。Der f 1量はマウスモノクローナル抗体によるサンドイッチELISA法により、株式会社LCDアレルギー研究所製のダニfキットを用いて測定した。
【0058】
トリイスクラッチエキス「ダニ」(鳥居製薬社製)を透析チューブに入れ、10%PBS溶液で一晩透析し(4℃)、エキス中に含まれるグリセロールを除去した。本透析ダニエキスの濃度が、1mg/mLとなるようにPBSで調製した。このダニエキス50μLとサンプル50μLを1.5mLのシリコナイズトマイクロチューブに入れ、vortexミキサーで撹拌後、室温で2時間静置した。コントロールとして、サンプルの代わりに同量の蒸留水を用いた。次に、11.25%BSA(PBSに溶解)400μLを各チューブに加えて反応を停止させ、15,000rpm、室温で10分間遠心分離し、上清をELISAに供した。上記反応液中のDer f 1量を、LCD製ダニfキットを用いて、添付のプロトコールに従い測定した。
【0059】
<アレルゲン性低減化率の測定2:Cry j 1>
以下の手順により、スギ花粉アレルゲンであるCry j 1の低減化率の測定を行った。
【0060】
多糖誘導体〔化合物(A1)〜(B3)〕は、0.1%溶液もしくは5.0%溶液(サンプル)となるよう、15%エタノール水溶液を溶媒として用いた。多糖誘導体とスギ花粉抽出物を一定の割合で混合し、混合物中のCry j 1量によってアレルゲン性低減化効果の評価を行った。Cry j 1量はマウスモノクローナル抗体によるサンドイッチELISA法により、株式会社LCDアレルギー研究所製のスギ花粉キットを用いて測定した。
【0061】
和歌山県龍神村にて2004年3月に採取したスギ花粉0.25gをPBS−BSA溶液1Lと混合し、室温で一晩放置した。遠心分離によって得られた上清を花粉抗原溶液(スギ花粉抽出物)とした。この花粉抗原溶液50μLとサンプル50μLを1.5mLのシリコナイズトマイクロチューブに入れ、vortexミキサーで撹拌後、室温で2時間静置した。コントロールとして、サンプルの代わりに同量の蒸留水を用いた。次に、11.25%BSA(PBSに溶解)400μLを各チューブに加えて反応を停止させ、15,000rpm、室温で10分間遠心分離し、上清をELISAに供した。上記反応液中のCry j 1量を、LCD製スギ花粉キットを用いて、添付のプロトコールに従い測定した。
【0062】
これらの結果を表1に示すが、各アレルゲン性低減化率(%)の測定結果は、いずれも比較例1を100としたときの相対値で示した。値が小さいほどアレルゲン性低減効果が高いことを表す。
【0063】
<外観>
アレルゲン性低減化剤中の(a)成分の溶解性を、外観を目視することで確認した。分離は、(a)成分が十分に溶解していないことを意味する。
【0064】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a1)炭素数5〜50の炭化水素基を含み、スルホン酸基もしくはその塩又は硫酸エステル基もしくはその塩を含まない有機基〔以下、有機基(a1)という〕が、置換度0.004〜0.1で導入され、且つ(a2)スルホン酸基もしくはその塩又は硫酸エステル基もしくはその塩を含む有機基〔以下、有機基(a2)という〕が、置換度0.05〜1で導入されたセルロースエーテルからなるアレルゲン性低減化剤。
【請求項2】
有機基(a1)が、下記一般式(1)の基である請求項1記載のアレルゲン性低減化剤。
−E1−(OA)n−E2−R (1)
[式中の、E1はヒドロキシ基またはオキソ基が置換してもよい炭素数1〜6のアルキレン基を示し、nは0〜50の数を示し、Aは炭素数1〜6のアルキレン基を示し、E2はエーテル結合またはオキシカルボニル基を示し、Rは炭素数5〜50の炭化水素基を示す。]
【請求項3】
有機基(a2)が、下記一般式(2)の基又は下記一般式(3)の基である請求項1又は2記載のアレルゲン性低減化剤。
−R1a−SO3M (2)
−R2a−OSO3M (3)
〔式中、R1a、R2aは、ヒドロキシ基で置換していてもよく、エステル基及び/又はアミド基で分断されていてもよい炭素数1〜6のアルキレン基であり、Mは陽イオンである。〕
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項記載のアレルゲン性低減化剤0.001〜10質量%、及び溶媒もしくは分散媒を含有するアレルゲン性低減化剤組成物。

【公開番号】特開2007−321074(P2007−321074A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153619(P2006−153619)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】