説明

アンカーピン打設可能マット

【課題】本発明は、コストが安く、軽量で施工性に優れ、アンカーピンの打ち込みによる孔からの漏水を防止できるアンカーピン打設可能マットを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るアンカーピン打設可能マットA1は、堤防護岸に敷設するマットであって、高分子樹脂製の止水シート10と合成繊維製の補強マット11と、その間に部分的に配した防水性樹脂シート12とを一体化して構成し、該防水性樹脂シート12を配した箇所をアンカーピン打設箇所としたことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、堤防護岸に敷設して、河川の水や雨水が堤体内に浸透するのを防ぐ遮水工法に使用するアンカーピン打設可能マットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、堤防護岸の遮水工法においては、止水シートと不織布を組み合わせた遮水マットが使用されてきた。
【0003】
そして、河川護岸において遮水マットを敷設し、その上にブロックマット等のシート状材料を設置し、それをアンカーピンにより固定する場合がある。この場合、アンカーピンにより止水シートに孔があけられるため、その後にコーキングや止水シートの増貼りができない場合もその部分からの漏水が問題になる。
【0004】
その対策として、吸水性を持ち、防水性を持つ粉状ベントナイトを不織布や織布で挟み込んだベントナイトシートを使用することが知られているが、重量物であるため作業性が悪いという欠点があったため、出願人は、特許文献1に示すように、ピン孔による漏水防止のため、高吸水性ポリマーを含む不織布等の漏水防止シートを挟み込んだ遮水マットを提案した。
【特許文献1】特開2007−16529
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、アンカーピンによる孔から漏水を防止することが目的であることから、アンカーピン打設箇所のみの漏水を防止すればよく、上記のような遮水マットは、漏水防止シートが全面に配されるので、アンカーピンをどの箇所に打設しても漏水は発生しない利点があるものの、アンカーピンを打設しないほとんどの部分における漏水防止は余分であり、その余分な漏水防止シートについてコスト高になると共に、重量が増して作業性が悪いという欠点があった。
【0006】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、コストが安く、軽量で施工性に優れ、アンカーピンの打ち込みによる孔からの漏水を防止できるアンカーピン打設可能マットを提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るアンカーピン打設可能マットは、堤防護岸に敷設するマットであって、高分子樹脂製の止水シートと合成繊維製の補強マットと、その間に部分的に配した防水性樹脂シートとを一体化して構成し、該防水性樹脂シートを配した箇所をアンカーピン打設箇所としたことを特徴とするものである。なお、防水性樹脂シートが、高吸水性樹脂を保持した樹脂シートであってもよく、また、ベントナイトを保持した樹脂シートであってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアンカーピン打設可能マットによれば、防水性樹脂シートを部分的に配し、該防水性樹脂シートを配した箇所をアンカーピン打設箇所としたため、アンカーピンを打設しないほとんどの部分において防水性樹脂シートが配されていないので材料コストが安くなり、マット重量も軽くなるので作業性が向上する利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で使用可能な止水シートの素材の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体などが挙げられる。これらは1種のみを単独で使用しても良いし、2種以上を併用することもできる。
【0010】
本発明で用いる合成繊維製の補強マットとしては、不織布、織布、編み物、グリッドなどが使用でき、これらを構成する繊維としては、非(もしくは難)生分解性の繊維であれば特に限定はなく、例えばポリエステル繊維、アクリル樹脂繊維、ポリオレフィン繊維、ポリアミド繊維などが挙げられる。
【0011】
本発明で用いる防水性樹脂シートに使用する高吸水性ポリマーとしては特に限定はなく、水に不溶で、かつ水分や湿気を速やかに吸収し、非(もしくは難)生分解性であり、自重の数十倍から百倍近い水分を(例えば吸水倍率10〜400倍)吸収して膨潤する従来公知の素材(デンプン系、セルロース系、その他の多糖類系、及びタンパク質系の天然高分子類、並びにポリビニルアルコール系、アクリル系、その他の付加重合体、ポリエーテル系、縮合系ポリマー及びその他合成高分子系の合成高分子類)が挙げられる。具体的には、デンプン−アクリロニトリルグラフト重合体加水分解物、デンプン−アクリル酸グラフト重合体、デンプン−スチレンスルホン酸グラフト重合体、デンプン−ビニルスルホン酸グラフト重合体、デンプン−アクリルアミドグラフト重合体、セルロース−アクリロニトリルグラフト重合体、セルロース−スチレンスルホン酸グラフト重合体、カルボキシメチルセルロースの架橋体、ヒアルロン酸、アガロース、コラーゲン及びその他のタンパク質、更に、ポリビニルアルコール架橋重合体、PVA吸水ゲル凍結・解凍エラストマー、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリアクリル酸ナトリウム架橋体、アクリル酸ナトリウム−ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル系重合体ケン化物、ヒドロキシエチルメタクリレートポリマー、無水マレイン酸系重合体及び共重体、ビニルピロリドン系重合体及び共重合体、ポリエチレングリコール・ジアクリレート架橋重合体、エステル系ポリマー、アミド系ポリマーなどが挙げられる。高吸水性ポリマーの形状としては、繊維状、粒状、シート状、流動状又は繊維に凝着した固形状のものを使用する。上記高吸水性ポリマーを保持させる不織布に使用する繊維としては、非(もしくは難)生分解性の繊維であれば特に限定はなく、例えばポリエステル繊維、アクリル樹脂繊維、ポリオレフィン繊維、ポリアミド繊維などが挙げられる。前記繊維は1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても構わない。また、繊維状の高吸水性ポリマーのみでもよい。不織布に高吸水性ポリマーを吹き付けもしくは含浸させ、凝着させる方法としては、液状の高吸水性ポリマーを繊維からなる不織布に霧状に吹き付けたり、塗ったり、浸漬させたりする方法がある。
【0012】
本発明に係るアンカーピン打設可能マットにおいて、止水シート、補強マット及び防水性樹脂シートの一体化方法としては、それぞれを熱融着、接着剤、固定治具などの種々の接着方法が採用されるが、それらに限られるものではない。また、補強マット上に防水性樹脂シートを接着し、その上から、溶融状態にある合成樹脂を流して(塗布して)フィルム状に形成しても良い。さらに、防水性樹脂シートの一部を構成する不織布と補強マットとの接着は、ニードルパンチや接着剤による接着、熱融着などの方法がある。補強マットは2層、3層と積層接着させても良い。
【0013】
本発明に係るアンカーピン打設可能マットの厚みとしては、例えば3mm〜30mmであることが好ましい。3mm未満であれば、高吸水性ポリマーを多く含ませることが出来ず、大きな吸水能力を期待することはできなくなる。30mmを超える場合、施工に支障が生じる可能性があるので好ましくない。
【0014】
アンカーピン打設可能マットにおける防水性樹脂シート中の高吸水性ポリマーの含有率としては10重量%〜90重量%であることが好ましい。10重量%未満の場合、大きな吸水能力を期待することはできなくなる。また、90重量%を超える場合、防水性樹脂シートを構成する他の繊維等の含有率が低くなり、機械的な強度を保持することが難しくなる可能性がある。防水性樹脂シート中の高吸水性ポリマー含有率のさらに好ましい範囲は30〜70重量%である。
【0015】
以下に本発明の一実施例を図面に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
図1〜図3は実施例1を示し、図1はアンカーピン打設可能マットの構成を示す概略斜視図であり、図2はアンカーピン打設可能マットの部分断面図であり、図3は図2におけるIII−III線拡大断面図である。
【0017】
各図において、A1はアンカーピン打設可能マット、10は止水シート、11は補強マット、12は防水性樹脂シートを示す。
【0018】
本実施例におけるアンカーピン打設可能マットA1は、防水性樹脂シート12を島状に散在させて配したものである。実際には、図に示すように端部に等間隔に矩形の防水性樹脂シート12を配し、中央部には等間隔に矩形の防水性樹脂シート12を配したものであるが、必ずしもこのように配置する必要はないが、製造コスト及び作業面から考えると望ましい配置である。
【0019】
止水シート10は、裏面に滑落を防止するための凹凸を形成した高分子樹脂製のシートであり、補強マット11は合成繊維を交絡させて形成したマットであり、防水性樹脂シート12は、不織布に高吸水性樹脂ポリマーを付着させて形成したものである。該止水シート10と防水性樹脂シート12とは接着剤a1により接着され、補強マット11と防水性樹脂シート12とは接着剤b1により接着されている。一方、防水性樹脂シート12が配されていない部分においては止水シート10と補強マット11とが接着剤a1により接着されている。
【0020】
このように構成することにより、全面に防水性樹脂製シートを配した場合に比べ、防水性樹脂製シートの使用量は約1.5%に削減でき、製造コスト低廉化及びマットの軽量化が図れる。防水性樹脂シートを配している箇所は、配していない箇所に比べて厚みや硬さに変化があるため、感触で配している箇所が判断できるが、防水性樹脂シートを配している箇所に「アンカーピン打設箇所」というような表示をしたり、着色することにより、アンカーピンを打設してもよい箇所を明示しておくと一層便利である。
【実施例2】
【0021】
図4は実施例2に係るアンカーピン打設可能マットの構成を示す概略斜視図である。
【0022】
図において、A2はアンカーピン打設可能マット、20は止水シート、21は補強マット、22は防水性樹脂シートを示す。
【0023】
本実施例におけるアンカーピン打設可能マットA2は、防水性樹脂シート22を帯状に配したものである。実際には、図に示すように端部に1条の防水性樹脂シート22を配し、中央部に1条の防水性樹脂シート22を配したものであるが、必ずしもこのように配置する必要はないが、製造コスト及び作業面から考えると望ましい配置である。
【0024】
止水シート20は、裏面に滑落を防止するための凹凸を形成した高分子樹脂製のシートであり、補強マット21は合成繊維を交絡させて形成したマットであり、防水性樹脂シート22は、不織布に高吸水性樹脂ポリマーを付着させて形成したものである。実施例1の図3により説明したのと同様に、止水シート20と防水性樹脂シート22とは、接着剤a1により接着されており、補強マット21と防水性樹脂シート22とは接着剤b1により接着されており、防水性樹脂シート22が配されていない部分においては止水シート20と補強マット21とが接着剤a1により接着される。
【0025】
このように構成することにより、全面に防水性樹脂製シートを配した場合に比べ、防水性樹脂製シートの使用量は約15%に削減でき製造コスト低廉化及びマットの軽量化が図れる。防水性樹脂シートを配している箇所は、配していない箇所に比べて厚みや硬さに変化があるため、感触で配している箇所が判断できるが、防水性樹脂シートを配している箇所に「アンカーピン打設箇所」というような表示をしたり、着色することにより、アンカーピンを打設してもよい箇所を明示しておくと一層便利である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例1に係るアンカーピン打設可能マットの構成を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の実施例1に係るアンカーピン打設可能マットの部分断面図である。
【図3】図2におけるIII−III線拡大断面図である。
【図4】本発明の実施例2に係るアンカーピン打設可能マットの構成を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
A1・・・アンカーピン打設可能マット
10・・・止水シート
11・・・補強マット
12・・・防水性樹脂シート
a1・・・接着剤層
b1・・・接着剤層
A2・・・アンカーピン打設可能マット
20・・・止水シート
21・・・補強マット
22・・・防水性樹脂シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
堤防護岸に敷設するマットであって、高分子樹脂製の止水シートと合成繊維製の補強マットと、その間に部分的に配した防水性樹脂シートとを一体化して構成し、該防水性樹脂シートを配した箇所をアンカーピン打設箇所としたことを特徴とするアンカーピン打設可能マット。
【請求項2】
防水性樹脂シートが、高吸水性樹脂を保持した樹脂シートであることを特徴とする請求項1に記載のアンカーピン打設可能マット。
【請求項3】
防水性樹脂シートが、ベントナイトを保持した樹脂シートであることを特徴とする請求項1に記載のアンカーピン打設可能マット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−2074(P2009−2074A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−164901(P2007−164901)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(390039114)株式会社田中 (21)
【Fターム(参考)】