アンテナ支持装置
【課題】アンテナ方向の調整可能範囲が広く、しかも、アンテナ装置の設置時に生じるアンテナ装置の傾きを低減し得るアンテナ支持装置を提供する。
【解決手段】支持具10には、横長状のスライド孔と、該スライド孔の略中央部より前側において直交する縦長状の連通孔14と、該連通孔より更に前側に位置する貫通孔15と、により構成される断面略T字形状の支持孔12を備える。アンテナ取付部材20は、支持具10を挟み込むように対向配置される一対の当付片21を備え、当付片21には、支持孔と対向する位置に雌ネジ部29a、29bが形成されている。ボルト体30は、雄ネジ部30aの外径より軸部の外径が僅かに細径な半ネジタイプである。ボルト体30は、雌ネジ部29a、29bの軸線と貫通孔15の軸線を略一致させた時だけ、雌ネジ部29a、29bを通って貫通孔15を挿通できるようになる。
【解決手段】支持具10には、横長状のスライド孔と、該スライド孔の略中央部より前側において直交する縦長状の連通孔14と、該連通孔より更に前側に位置する貫通孔15と、により構成される断面略T字形状の支持孔12を備える。アンテナ取付部材20は、支持具10を挟み込むように対向配置される一対の当付片21を備え、当付片21には、支持孔と対向する位置に雌ネジ部29a、29bが形成されている。ボルト体30は、雄ネジ部30aの外径より軸部の外径が僅かに細径な半ネジタイプである。ボルト体30は、雌ネジ部29a、29bの軸線と貫通孔15の軸線を略一致させた時だけ、雌ネジ部29a、29bを通って貫通孔15を挿通できるようになる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置を、壁面やアンテナマストなどの取付対象物に取り付けるためのアンテナ支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のアンテナ支持装置として、アンテナ素子をケース内に収納したアンテナ装置の背面に設けられて、アンテナ装置を支持するための支持具と、この支持具をアンテナ装置の取付対象物に取り付けるアンテナ取付具と、から構成されたものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
このアンテナ支持装置は、支持具及びアンテナ取付具の一方に、他方を挟持可能な一対の当付片を設け、この当付片と他方の挟持対象とに、ボルトを挿通するための挿通孔を形成することにより構成されている。
【0004】
このため、支持具(延いてはアンテナ装置)は、一対の当付片を介してアンテナ取付具と連結し、各挿通孔の中心軸を合わせて、ボルトを挿通することで、アンテナ取付具に対しボルトを中心として回動可能に装着できる。
【0005】
よって、この種のアンテナ支持装置によれば、アンテナ装置を、ボルトを中心として回動させることにより、アンテナ方向を調整でき、しかも、ボルトを締め付けることで、アンテナ方向を固定することができる。
【0006】
また、特許文献1に記載のものは、ボルトを挿通するための挿通孔が、ボルトの外径に対応した径を有する円形であるが、特許文献2に記載のものは、支持具側の挿通孔を、アンテナ装置の背面に沿って長尺状に形成された長孔にしている。
【0007】
このため、特許文献2に記載のものによれば、アンテナ取付具側の挿通孔に挿通されることにより位置決めされるボルトに対し、アンテナ装置を大きく変位させることができ、アンテナ方向の調整可能範囲を広げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−226150号公報
【特許文献2】特開2011−182295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載のように、アンテナ装置の背面に設けられる支持具側の挿通孔を、アンテナ装置の背面に沿った長孔にすると、アンテナ装置を取付対象物に取り付ける際に、アンテナ装置を位置決めするのが難しく、アンテナ装置が、取付対象物に対し傾いて取り付けられることがあった。
【0010】
つまり、アンテナ装置を取付対象物に取り付ける際には、アンテナ取付具を取付対象物に固定し、支持具をアンテナ装置に取り付けた状態で、一対の当付片を介して支持具とアンテナ取付具とを連結する。
【0011】
そして、ボルトは、各挿通孔を位置合わせした状態で、各挿通孔に挿通することになるが、挿通孔が長孔であると、取付対象物に対しアンテナ装置が傾いていても、各挿通孔にボルトを挿通できる。
【0012】
この結果、アンテナ装置の設置作業者は、アンテナ装置が傾いた状態で、アンテナの方向調整をしてしまい、その状態で、ボルトを締め付け、設置作業を完了してしまうことがある。
【0013】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、アンテナ方向の調整可能範囲が広く、しかも、アンテナ装置の設置時に生じるアンテナ装置の傾きを低減し得るアンテナ支持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、
アンテナ装置の背面に設けられて、当該アンテナ装置を支持する支持具と、
前記アンテナ装置の取り付け対象となる取付対象物に取付可能に構成され、前記支持具を、ボルト体を介して回動可能に支持するアンテナ取付具と、
を備えたアンテナ支持装置において、
前記支持具は、
互いに平行に配置される一対の端面を有する支持体と、
前記一対の端面に直交する方向に前記支持体を貫通する支持孔と、
を備え、
前記支持孔は、
前記アンテナ装置の背面に沿って配置される長尺状のスライド孔と、該スライド孔と前記アンテナ装置の背面との間に配置される貫通孔と、該貫通孔と前記スライド孔とを連通する連通孔とにより、断面が略T字形状に形成されており、
前記アンテナ取付具は、
前記取付対象物に対する取付手段を備えた基体と、
該基体の前記取付手段とは反対側に突出され、前記支持体を前記一対の端面側から挟持可能な一対の当付片と、
からなるアンテナ取付部材を備え、
前記一対の当付片には、前記支持体を挟持した状態で、前記ボルト体を挿通して前記支持孔に前記ボルト体を貫通させる挿通孔が設けられると共に、該挿通孔の少なくとも一方には、前記ボルト体に形成された雄ネジ部と螺合可能な雌ネジ部が形成されており、
前記ボルト体は、
前記一対の当付片の間隔よりも長く、先端部から所定長の範囲内に前記雌ネジ部と螺合可能な雄ネジ部を備え、しかも、当該雄ネジ部に連設される軸部の径が、当該雄ネジ部の径よりも細径となるように構成された半ネジタイプのボルトからなり、
前記支持孔における前記貫通孔の内径は、前記ボルト体の前記雄ネジ部の外径よりも僅かに大きく、
前記支持孔における前記スライド孔及び前記連通孔の内側に形成される間隙は、
前記支持体の一方の端面から、少なくとも前記ボルト体の前記雄ネジ部が形成された範囲の前記所定長と略同じ若しくは僅かに大きい長さとなる第1中間位置までは、前記ボルト体の前記雄ネジ部の外径よりも僅かに大きく、
前記第1中間位置から前記支持体の他方の端面までは、前記ボルト体の前記雄ネジ部の外径と同じか若しくは小さく、且つ、前記軸部の外径より僅かに大きい、
ことを特徴とする。
【0015】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のアンテナ支持装置において、
前記アンテナ取付部材において、前記一対の当付片の少なくとも一方には、前記挿通孔よりも先端側に向けて突出するように係止突片が設けられており、
前記支持体において、前記一対の端面の少なくとも一つには、
前記各当付片に設けられた挿通孔が前記支持具の前記貫通孔を挟んで対向するよう、前記アンテナ取付部材と前記支持具とを配置した際に、前記係止突片が挿入される凹状の受入部と、
前記受入部の開口部から両側外方向に向かって連設され、前記ボルト体を前記支持孔及び前記一対の当付片の挿通孔に通して前記雄ネジ部を前記雌ネジ部に螺合させた状態で、前記ボルト体を前記スライド孔に沿ってスライドさせた際に、前記係止突片の先端部に当接されて、前記ボルト体を中心とする前記支持具の回動を制限する止着部と、
当該止着部より両側外方向に配設され、前記ボルト体を前記支持孔及び前記一対の当付片の挿通孔に通して前記雄ネジ部を前記雌ネジ部に螺合させた状態で、前記ボルト体を前記スライド孔の終端部まで移動させた際に、前記ボルト体を中心とする前記支持具の回動を制限することのないよう、前記係止突片を受け入れる回動部と、
からなる配設位置制限手段、
が設けられていることを特徴とする。
【0016】
また次に、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のアンテナ支持装置において、
前記支持具は、
前記支持体の他方の端面から第2中間位置までの間で、当該支持体の他方の端面に形成される挿入口から、前記スライド孔及び前記連通孔を介して前記貫通孔と連通するように形成された切欠部を備え、
該切欠部は、前記支持体の他方の端面から前記第2中間位置までの高さ方向の寸法が、前記ボルト体の前記雄ネジ部が形成された範囲の前記所定長よりも大きく、該高さ方向に直交する幅方向の寸法が、前記ボルト体の雄ネジ部の外径より大きく、
更に、前記連通孔の内壁には、前記切欠部の幅方向の寸法と同じ寸法となって段差を形成する誘導部が形成され、
該誘導部には、前記スライド孔側から前記貫通孔側に向けて、前記支持体の他方の端面から段差までの高さ方向の寸法が順次増大するよう、傾斜が付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載のアンテナ支持装置によれば、アンテナ装置の背面に設けられる支持具を構成する支持体には、スライド孔と貫通孔と連通孔とにより断面が略T字形状に形成された支持孔が形成されている。
【0018】
また、アンテナ取付具の基体には、支持体を挟持可能な一対の当付片が設けられ、この当付片には、支持体を挟持した状態で、ボルト体を挿通して支持孔にボルト体を貫通させる挿通孔が設けられ、その挿通孔の少なくとも一方には雌ネジ部が形成されている。
【0019】
そして、支持具とアンテナ取付具との連結に用いられるボルト体には、その雌ネジ部に螺合可能な雄ネジ部を先端部に備え、雄ネジ部に連設される軸部の径が、雄ネジ部の径よりも細径となるように構成された半ネジタイプのボルトが使用される。
【0020】
また、支持孔における貫通孔の内径は、ボルト体の雄ネジ部の外径よりも僅かに大きく、支持孔におけるスライド孔及び連通孔の内側に形成される間隙は、次のように形成されている。
【0021】
すなわち、スライド孔及び連通孔の内側に形成される間隙は、支持体の一方の端面から第1中間位置までは、ボルト体の前記雄ネジ部の外径よりも僅かに大きく、第1中間位置から支持体の他方の端面までは、ボルト体の前記雄ネジ部の外径と同じか若しくは小さく、且つ、軸部の外径より僅かに大きい。
【0022】
従って、支持具とアンテナ取付部材との組み付けは、各当付片に設けられた挿通孔が支持具の貫通孔を挟んで対向するよう、各挿通孔及び貫通孔の軸線を略一致させた状態で、ボルト体を一方の挿通孔から貫通孔を通って他方の挿通孔へと挿通させることにより行えばよい。
【0023】
また、この際、少なくともボルト体の雄ネジ部が最後に挿通される側の挿通孔には、雌ネジ部が形成された挿通孔が配置されるようにし、その雌ネジ部にボルト体の雄ネジ部を螺合させる。
【0024】
この結果、本発明のアンテナ支持装置によれば、支持具とアンテナ取付部材との組み付け時に、支持具が設けられたアンテナ装置が、アンテナ取付具(延いては、アンテナ装置の取付対象物)に対し傾くのを防止することができる。
【0025】
そして、この状態で、ボルト体を締め付ければ、支持具(延いてはアンテナ装置)を取付対象物にしっかりと固定することができる。
また、この状態で、ボルト体の締め付けを緩めれば、ボルト体の配設位置を、支持孔における貫通孔から、連通部を通ってスライド孔の形成方向に沿うようにスライドさせることができるようになり、しかも、任意の位置で、アンテナ装置の向きを調整できる。
【0026】
よって、本発明によれば、上述した従来装置に比べ、設置時に生じるアンテナ装置の傾きを低減しつつ、アンテナ方向の調整可能範囲を広げることができる。
ところで、例えば、地上デジタル放送信号の受信において、アンテナ装置を設置するときに重要なことは、放送信号の受信レベル(C/N)が最大となる方向に調整するだけでなく、受信信号の信号品質も確認することが求められる。
【0027】
なお、信号品質としては、BER(符号誤り率:Bit Error Rate)、MER(変調誤差比:Modulation Error Ratio)等を挙げることができる。
つまり、電波の伝播経路の環境条件などによって、受信レベルが高くても信号品質の良くない電波が到来する恐れがあるので、アンテナ装置の方向調整をする場合、アンテナ装置を電波塔の方向(物理的な方位角)に正確に向けることが、必ずしもアンテナ装置を正しい方向(電気的な方位角)に向けたことにはならないからである。
【0028】
従って、アンテナ装置の方向調整において、アンテナ装置を物理的に正確な方向に向けても、その方向から到来する放送信号の信号品質によっては、電気的に正しい方向を探すために、更なる方向調整操作が必要となる状況が発生することまで考慮すると、アンテナ支持装置の方向調整角度はできる限り広い範囲をカバーできるのが望ましい。
【0029】
このため、より好ましくは、本発明のアンテナ支持装置は、請求項2に記載のように構成するとよい。
すなわち、請求項2に記載のアンテナ支持装置においては、アンテナ取付部材を構成する一対の当付片の少なくとも一方には、挿通孔よりも先端側に向けて突出するように係止突片が設けられる。
【0030】
また、支持体において、一対の端面の少なくとも一つには、配置位置制限手段が設けられる。
そして、この配置位置制限手段は、係止突片が挿入される凹状の受入部と、受入部の開口部から両側外方向に向かって連設され、支持具の回動を制限する止着部と、止着部より両側外方向に配設され、支持具の回動を制限することのないよう係止突片を受け入れる回動部と、により構成される。
【0031】
この結果、請求項2のアンテナ支持装置によれば、ボルト体が貫通孔に位置するように装着された状態では、係止突片と配設位置制限手段の受入部とが嵌合することから、支持具を、アンテナ取付部材に対してアンテナ装置が正確に正面を向くように配設することができる。
【0032】
また、支持具の回転軸となるボルト体が、スライド孔の中間位置にあるときには、支持具の回転が制限されて、アンテナ装置の方向調整ができない状態となり、ボルト体がスライド孔の終端部に位置するときには、アンテナ装置の方向調整が可能となる。
【0033】
つまり、請求項2に記載のアンテナ支持装置によれば、支持具をアンテナ取付部材に対して回動させてアンテナ装置の方向調整を行う際には、支持具の回動の回転軸(換言すればボルト体)を、スライド孔の終端部まで移動させる必要がある。
【0034】
この構成によれば、アンテナ装置の方向調整時に、支持具の回転軸より外側に位置するアンテナ装置の突出部分の寸法を短くすることができる。
このため、当該アンテナ支持装置を壁面に設置する場合において、前記アンテナ装置が正面を向いた状態から当該アンテナ装置の両端部分が壁面と重合するまでの範囲である、支持具の回動角度を大きくできる。
【0035】
よって、壁面の配設方向と電波の到来方向や到来電波の信号品質等によって生じる多様な設置条件にも対応可能で、しかも、無駄な調整操作が無くなりアンテナ装置の設置工事の時間短縮が実現できるなど、極めて利便性の良いアンテナ支持装置を提供できる。
【0036】
次に、請求項3に記載のアンテナ支持装置によれば、支持体の他方の端面から第2中間位置までの間には、その端面に形成される挿入口からスライド孔及び連通孔を介して貫通孔と連通するように切欠部が形成されている。
【0037】
そして、この切欠部は、支持体の他方の端面から第2中間位置までの高さ方向の寸法が、ボルト体の雄ネジ部が形成された範囲の所定長よりも大きく、その高さ方向に直交する幅方向の寸法が、ボルト体の雄ネジ部の外径より大きくなっている。
【0038】
また、連通孔の内壁には、切欠部の幅方向の寸法と同じ寸法となって段差を形成する誘導部が形成され、その誘導部には、スライド孔側から貫通孔側に向けて、支持体の他方の端面から段差までの高さ方向の寸法が順次増大するよう、傾斜が付けられている。
【0039】
このため、請求項3に記載のアンテナ支持装置によれば、支持体の他方の端面から支持体内に形成された切欠部には、ボルト体の雄ネジ部をそのまま挿入することができる。そして、その挿入したボルト体の雄ネジ部は、連通孔の内壁に形成された誘導部の段差に当たり、その段差の傾斜によって、貫通孔へと誘導されることになる。
【0040】
従って、ボルト体を一方の挿通孔から貫通孔を通って他方の挿通孔へと挿通させる際に、ボルト体を位置決めする必要がなく、その挿入作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施形態のアンテナ支持装置の概略構成を説明するための分解斜視図である。
【図2】支持具の説明図であり、(a)はその上面図、(b)は(d)におけるA−A´線から見た断面図、(c)は(d)におけるB−B´線から見た断面図、(d)は(a)におけるC−C´線から見た断面図、(e)は(a)におけるD−D´線から見た断面図、(f)は支持孔の間隙(内径)とボルト体の寸法との比較図である。
【図3】アンテナ取付部材の説明図であり、(a)はその上面図、(b)は下面図、(c)は(a)におけるE−E´線から見た側面図、(d)は(a)におけるF−F´線から見た断面図である。
【図4】アンテナ取付具に支持具(アンテナ装置)を取り付ける方法を説明するための図であり、アンテナ取付具と支持具を取り付ける前の状態を側面から見た断面図である。
【図5】アンテナ取付具に支持具(アンテナ装置)を取り付ける方法を説明するための図であり、(a)はアンテナ取付具に支持具を取り付けた状態を側面から見た断面図、(b)はアンテナ取付具と支持具の組み付けが完了した状態を側面から見た断面図である。
【図6】支持具の要部拡大図であり、(a)は図7(a)におけるG−G´線から見た断面の要部拡大図、(b)は図2(c)の要部拡大図である。
【図7】誘導部を説明するための要部拡大図であり、(a)は図6(a)のH−H´線から見た断面の要部拡大図、(b)は図6(b)のI−I´線から見た断面の要部拡大図、(c)は図6(a)のJ−J´線から見た断面の要部拡大図である。
【図8】支持具の要部拡大図であり、(a)は図2(a)の要部拡大図、(b)は図2(b)の要部拡大図である。
【図9】アンテナ取付部材と支持具(アンテナ装置)の取り付け状態の説明図であり、(a)はアンテナ取付部材と支持具との装着完了時の取り付け状態を説明するための上面図、(b)はアンテナ取付部材と支持具の可動範囲を説明するための上面図である。
【図10】(a)はアンテナ支持装置を使ってアンテナ装置をアンテナマストに取り付けた状態を説明するための上面図、(b)はアンテナ支持装置を使ってアンテナ装置を壁面に取り付けた状態を説明するための上面図である。
【図11】アンテナ取付部材と支持具の取り付け状態を説明するための上面図であり、(a)はアンテナ取付部材と支持具の変形例であり、(b)は支持具の変形例である。
【図12】誘導部のない支持部の構成例を表す説明図であり、(a)はアンテナ取付具に支持具を取り付けた状態を側面から見た断面図、(b)はアンテナ取付具と支持具の組み付けが完了した状態を側面から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に本発明の実施形態について説明する。
本実施形態のアンテナ支持装置60は、アンテナ装置1を壁面等で代表される取付面へ取り付けができるばかりでなく、アンテナマストやベランダ等の支柱に取り付けができるなど、多様な設置場所に取り付けるように構成されている。
【0043】
なお、以下の説明で方向を示す場合は、特に明記しない限りアンテナ装置1の設置方向を基準とし、アンテナ装置1の正面側が前側、若しくは前面と記載し、アンテナ装置1の後面側が後側、若しくは背面と記載する。
【0044】
つまり、図1における分解斜視図において、図の斜め右上側(奥行き側)が前側、若しくは前面であり、斜め左下側(手前側)が後側、若しくは背面とする。また、図の上が上方、若しくは上側、図の下が下方、若しくは下側とする。
【0045】
図1に示すように、アンテナ支持装置60は、アンテナ装置1の背面1aに一体的に設けられ、アンテナ装置1を保持するために用いられる支持具10と、アンテナ装置1の取り付け対象である取付対象物に取り付けられるアンテナ取付具50と、からなる。
【0046】
また、アンテナ取付具50は、支持具10(延いては、アンテナ装置1)を支持すると共に、アンテナ装置1を取付対象物に添え付けるように構成されたアンテナ取付部材20と、アンテナ取付部材20に装着され、支持具10をアンテナ取付部材20に対して回動自在に連結するために用いられる連結手段30と、アンテナ取付部材20の背面側に備えられ、アンテナ装置1を取付対象物に取り付けるために用いられる取付手段(詳細は後に説明する)と、から構成されている。
【0047】
まず連結手段30について説明する
図1に示すように、連結手段30は、少なくとも先端部から所定長Htに亘る範囲に雄ネジ部30aが形成された、所定の長さの軸部30bを有する半ネジタイプのボルト体である。
【0048】
より詳しく言えば、このボルト体に設けられた雄ネジ部30aの外径寸法はWtであり、軸部30bの外径寸法は、雄ネジ部30aの外径寸法Wtより僅かに短いWsとなるように構成されている。
【0049】
なお、以下の説明では、連結手段30としてボルト体を用いた例を示したが、支持具10とアンテナ取付具50を回動自在に蝶着できれば、この実施形態に限定されることは無い。
【0050】
次に支持具10について図1及び図2を基に説明する。
支持具10は、アンテナ装置1を構成しているアンテナ素子(図示されていない)を収納する、例えば合成樹脂材からなるケース本体と一体的に形成されており、アンテナ装置1の背面1aより後側に向かって突出するように設けられている。
【0051】
具体的には、支持具10は、上側と下側に平行状態で対向配置された一対の端面11a・11bを有する支持体11と、支持体11における一方の端面11aと他方の端面11bの間を貫通するように設けられた支持孔12と、一対の端面11a・11bから上方及び下方に突出するように形成された配設位置制限手段16A・16Bと、から構成されている。
【0052】
なお、本実施形態では、支持具10をアンテナ装置1の背面1aの下側に備えた例を示したが、背面1aであれば何れに設けても良い。また、その形成方向も実施形態に限定されるものではないし、支持具10はアンテナ装置1とは別体で構成し、アンテナ装置1の背面にネジ等で固定するようにしてもよい。
【0053】
支持孔12は、それぞれ一対の端面11a・11bの間を貫通する3つの孔、すなわち、スライド孔13、貫通孔15、及び連通孔14にて構成されている。
このうち、スライド孔13は、アンテナ装置1の壁面に沿って長尺状に形成された横長の孔であり、端面11a・11bに直交する方向に軸線を有するように形成されている。
【0054】
また、貫通孔15は、スライド孔13の中央部よりアンテナ装置1側に設けられた略円形の孔であり、端面11a・11bに直交する方向に軸線を有するように形成されている。
【0055】
また、連通孔14は、貫通孔15とスライド孔13とを連通するように形成された縦長の孔であり、端面11a・11bに直交する方向に軸線を有するように形成されている。
つまり、支持孔12は、これらの3つの孔でもって、断面形状が全体略T字形状となるように構成されている。
【0056】
このように構成された支持孔12は、支持孔12内における第1中間位置と第2中間位置によって区分される、軸線方向に配列された3つの支持孔部から構成されている。
すなわち、図1及び図2に示されているように、図の上側の端面11aから下向きに所定長となる第1中間位置までの範囲の上側支持孔部12Aと、図の下側の端面11bから上向きに所定長となる第2中間位置までの範囲の下側支持孔部12Cと、第1中間位置と第2中間位置との間に存置する中間支持孔部12Bと、が軸線方向に連設するように配置されている。
【0057】
まず、上側支持孔部12Aについて図2(a)、(d)、(f)を基に詳しく説明する。 支持孔12の内面には、支持孔12の上側の端面11a側の開口端12aから所定長だけ下方である第1中間位置に、支持孔12の軸線に直交する平面に平行な方向に、多くともスライド孔13と連通孔14の内周面(言い換えれば、支持孔12の内周面の内、少なくとも貫通孔15の内周面を除く部分)に亘って段差12abが形成されている。
【0058】
この段差12abの位置が第1中間位置であり、少なくとも支持体11の上側の端面11aからこの段差12abが形成された第1中間位置までの範囲が、上側支持孔部12Aとなる。
【0059】
なお、この段差12abの存在によって、段差12ab部分の間隙の幅寸法(内径寸法)W2は、上側支持孔部12A部分の間隙の幅寸法(内径寸法)W1と比べ、僅かに狭くなるように構成されている。
【0060】
この段差12abの形成位置、つまり、第1中間位置の寸法は、上側の端面11aにおける支持孔12の開口端12aから、少なくともボルト体30の雄ネジ部30aが形成された範囲の寸法Htより大きい寸法Hsとなる位置に形成されている。
【0061】
そして、上側支持孔部12Aは、支持孔12を構成する3つの孔(スライド孔13、連通孔14、貫通孔15)における、上側支持孔部12A部分に相当する部分(スライド孔13A、連通孔14A及び貫通孔15A)のそれぞれの間隙の幅寸法(内径寸法)は、ボルト体30の雄ネジ部30aの外径寸法Wtより僅かに大きいW1となるように形成されている。
【0062】
次に、下側支持孔部12Cについて図2(c)、(d)、(f)を基に詳しく説明する。 支持具10には、支持具10を構成する支持体11の下方側中央部分に、下側の端面11bから支持孔12の軸線方向に沿う方向に所定の大きさで形成された凹状の切欠部18が形成されている。
【0063】
この切欠部18は、支持体11の表面11cに形成される挿入口18aから、スライド孔13及び連通孔14を介して貫通孔15と連通するように形成されている。
また、切欠部18は、その高さが、支持体11の下側の端面11bから上側に向かって、少なくともボルト体30の雄ネジ部30aが形成された範囲の所定長Htより大きい寸法Hgとなる大きさに、支持体11を凹状に切り欠くように形成されている。
【0064】
また切欠部18の幅(若しくは内径)は、ボルト体30の雄ネジ部30aの外径寸法Wtより僅かに大きい寸法W1となるような大きさに形成されている。
本実施形態では、少なくとも下側の端面11bから寸法Hgだけ上方となる位置が、支持孔12の内周面における第2中間位置であり、支持体11の下側の端面11bから第2中間位置までの範囲が、支持孔12における下側支持孔部12Cとなる。
【0065】
つまり、下側支持孔部12Cは、支持孔12を構成する3つの孔(スライド孔13、連通孔14、貫通孔15)の内、連通孔14及び貫通孔15の下側支持孔部12C部分に相当する部分(連通孔14C及び貫通孔15C)のそれぞれの間隙の幅寸法(内径寸法)が、ボルト体30の雄ネジ部30aの外径寸法Wtより僅かに大きい寸法W1となるように形成されていることになる。
【0066】
また、スライド孔13の下側支持孔部12C部分に相当するスライド孔13Cの間隙の幅寸法(内径寸法)は、切欠部18を除いて、ボルト体30の軸部30bの外径寸法Wsより大きく、且つ、ボルト体30の雄ネジ部30aの外径寸法Wtと略同じか、若しくは、僅かに短い寸法であるW2となるように形成されている。
【0067】
このため、下側支持孔部12Cは、挿入口18aから、連通孔14と貫通孔15の下側支持孔部12C部分である連通孔14C及び貫通孔15Cに至る切欠部18の間隙の幅寸法(内径寸法)がW1となり、スライド孔13の下側支持孔部12C部分に相当するスライド孔13Cの間隙の幅寸法(内径寸法)がW2となる、2つの異なる幅寸法を持つことになる。
【0068】
次に、中間支持孔部12Bについて図2(b)、(d)、(e)、(f)を基に詳しく説明する。
本実施形態では、第1中間位置である段差12abと第2中間位置である切欠部18との間に位置するのが中間支持孔部12Bである。
【0069】
この中間支持孔部12Bは、支持孔12を構成する3つの孔(スライド孔13、連通孔14、貫通孔15)の内、スライド孔13の中間支持孔部12B部分に相当するスライド孔13Bの間隙の幅寸法が、ボルト体30の軸部30bの外径寸法Wsより大きく、且つ、ボルト体30の雄ネジ部30aの外径寸法Wtと略同じか、若しくは、短い寸法であるW2となるように形成されている。
【0070】
また、貫通孔15の中間支持孔部12B部分に相当する貫通孔15Bの内径は、ボルト体30の雄ネジ部30aの外径寸法Wtより大きい寸法W1となるような大きさに形成されている。
【0071】
また、中間支持孔部12B部分に相当する連通孔14Bの内壁には、第2中間位置から第1中間位置に向かって、第2中間位置からの寸法が、スライド孔13B側から貫通孔15Bにかけて順次増大するよう、傾斜が付けられた段差34aが形成されている。
【0072】
そして、この段差34aと、この段差34aを介して設けられた相互に対向する平面34bとにより、誘導部34が構成される。なお、誘導部34の作用については後に詳述する。
【0073】
つまり、中間支持孔部12B部分に相当する連通孔14Bは、誘導部34を構成する平面34b部分がなす空間の間隙の幅寸法が、切欠部18の間隙の幅寸法と同じ寸法W1である。また誘導部34を除く連通孔14Bの間隙の幅寸法は、ボルト体30の軸部30bの外径寸法Wsより大きく、且つ、ボルト体30の雄ネジ部30aの外径寸法Wtと略同じか、若しくは、短い寸法であるW2となる。
【0074】
これにより、中間支持孔部12Bは、スライド孔13及び連通孔14の中間支持孔部12B部分に相当するスライド孔13B及び連通孔14B(誘導部34部分を除く)の間隙の幅寸法(内径寸法)がW2である孔と、貫通孔15の中間支持孔部12B部分に相当する貫通孔15B及び誘導部34の間隙の幅寸法(内径寸法)がW1である、2つの異なる間隙の幅寸法を持つことになる。
【0075】
以上まとめると、本実施形態に係る支持孔12によると、支持孔12を構成するスライド孔13の間隙の幅寸法(内径寸法)は、上側支持孔部12A部分のスライド孔13Aが寸法W1、中間支持孔部12B部分のスライド孔13Bが寸法W2、下側支持孔部12C部分のスライド孔13Cが寸法W2である。そして、スライド孔13Bとスライド孔13Cの間隙の幅寸法(内径寸法)は、スライド孔13Aより狭い寸法となる。
【0076】
また、連通孔14の間隙の幅寸法(内径寸法)は、上側支持孔部12A部分の連通孔14Aが寸法W1、中間支持孔部12B部分の誘導部34を除く連通孔14Bの殆どの部分の間隙が寸法W2、下側支持孔部12C部分の連通孔14Cが寸法W1である。
【0077】
そして、中間支持孔部12B部分の連通孔14Bの間隙の幅寸法(内径寸法)は、殆どの部分において連通孔14A、14Cの間隙の幅寸法(内径寸法)より狭くなる。
また、貫通孔15の内径寸法は、上側支持孔部12A部分の貫通孔15Aが寸法W1、中間支持孔部12B部分の貫通孔15Bが寸法W1、下側支持孔部12C部分の貫通孔15Cが寸法W1であり、それぞれ同じ寸法となる。
【0078】
次に、図1及び図2を用いて本実施形態における配設位置制限手段16A・16Bについて詳しく説明する。
配設位置制限手段16A・16Bは、それぞれ支持体11における一対の端面11a・11bにあって、当該端面から上方若しくは下方に突出するように設けられている。
【0079】
この配設位置制限手段16A・16Bは、支持具10を、アンテナ取付部材20によって支持した状態で、アンテナ取付部材20の配設状態(言い換えれば、支持具10の回動)に制限を加える手段であり、端面11a・11bに、支持孔12の軸線に直交する方向で、アンテナ装置1の背面1aに沿う方向に配列するように設けられている。
【0080】
なお、以下の説明では、一方の端面11aに形成された配設位置制限手段16Aについてその構成と作用を説明し、他方の端面11bに形成された配設位置制限手段16Bについては同じ構成であるので詳しい説明は省略する。
【0081】
また、本実施形態では、配設位置制限手段を一対の端面11a・11bのそれぞれに設けた例を示したが、何れか一方側の端面に設ける構成でもよいことは言うまでもない。
配設位置制限手段16Aは、一方の端面11aの略中央部に配置された凹部であって、後方側を開口するように形成された凹状の受入部16Aaと、受入部16Aaの開口端部から両側外方向に向かって連設するように備えられた壁状の止着部16Abと、止着部16Abより更に外側に連設され、その形状が後方側を開口した湾曲状となるように形成された回動部16Acと、から構成されている。なお、配設位置制限手段16A・16Bによる作用については後に詳述する。
【0082】
また、支持体11の表面11cの中間位置には、表面11cから前方側に向かうように形成された収納穴11d・11dが形成されている。
この収納穴11d・11dは、後述するアンテナ取付部材20に装着された挟持金具40に備えられた締着ボルト45(図1参照)と対向する位置に形成されており、締着ボルト45の自由端部45aを挿抜自在に受入れるほどの奥行きと内径を有する。
【0083】
次に本実施形態に係るアンテナ支持装置50を構成するアンテナ取付部材20について図1及び図3を用いて説明する。なお、図3において破線で示したボルト体30は、ボルト体30の存在を模式的に示したものであり、アンテナ取付部材20に装着する状態を示すために表示したものである。
【0084】
本実施形態に係るアンテナ取付部材20は、略4角形状に形成された本体21の背面に、アンテナ装置1を取付対象物に取り付けるための取付面22を備える。
また、本体21の前面には、本体21の対向する一対の辺から一体的に突設され、支持具10において対向配置された一対の端面11a、11bと摺動挿着可能なように、一対の端面11a、11bの配列位置に対応する間隔で設けられた一対の当付片21a、21bが形成されている。
【0085】
そしてこの当付片21a、21bには、アンテナ取付部材20に支持具10を取り付けたときに、支持具10に形成された支持孔12を挟んで相互に対向するように形成された挿通孔29A、29Bが設けられている。
【0086】
また、各挿通孔29A、29Bの内周面には、ボルト体30の雄ネジ部30aに対応する雌ネジ部29a、29bが形成されている。
更に、一対の当付片21a、21bには、挿通孔29A、29Bよりも先端側に向けて突出するように形成された、全体略四角形上に形成された係止突片26A、26Bが、当付片21a、21bの先端部と重合するように一体的に備えられている。
【0087】
なお、本実施形態では、係止突片26A、26Bは当付片21a、21bの両方に備えた例を示したが、少なくとも配設位置制限手段16が備えられた端面に対応する側の当付片に備えさせればよい。
【0088】
アンテナ取付部材20の取付面22について更に詳しく説明する。
図1及び図3に良く示されているように、本体21の取付面22には、取付面22の略中央部を前面側に折り返すように凹ませた凹部が形成されている。
【0089】
この凹部は、図1に示されている、取付対象物の一つである、アンテナマスト5に代表される支柱に当て付けて取り付けるためのアンテナマスト当接部24である。
そして、このアンテナマスト当接部24の両側にはネジ孔25が形成されており、このネジ孔25に、アンテナマスト5を挟持する周知の挟持金具40に備えられた締着ボルト45を緊締することによって、このアンテナ取付部材20はアンテナマスト5やベランダ等の支柱に固着することができる(図10(a)参照)。
【0090】
また、アンテナマスト当接部24の両側にあって、ネジ孔25が形成された平面は、このアンテナ取付部材20を、取付対象物の他の実施例である、例えば構造物等の壁面6に代表される平面状の取付面に取り付けるための当付部23である。アンテナ取付部材20の壁面6への取り付けは、当付部23を壁面に当接させた状態で、木ネジ等を当付部23に形成された取付孔27、28等の前面側から壁面6に螺着することで行われる(図10(b)参照)。
【0091】
なお、本実施形態では、この当付部23とアンテナマスト当接部24とで、本体21に備えられた取付面22を構成している。また、少なくとも取付面22と挟持金具40とで請求項に記載の取付手段を構成している。
【0092】
このように構成された支持具10と、アンテナ取付具50の組み付け手順について図4から図8を用いて説明する。
支持具10とアンテナ取付具50の組み付けは、図4に示されているように、アンテナ取付具50の構成要素である、アンテナ取付部材20に設けられた他方(本実施形態では、図の下側)の当付片21bに備えられた挿通孔29Bの雌ネジ部29bに対して、ボルト体30の雄ネジ部30aを螺合して、ボルト体30が他方の当付片21bから垂下した状態となるように装着することから始める。この時、ボルト体30が他方の当付片21bの内側(図の上側)に突出する部分の最大寸法は、雄ネジ部30aが形成された寸法Htとなる。
【0093】
支持具10とアンテナ取付具50の組み付けについて更に詳しく説明する。アンテナ装置1を壁面6に取り付ける作業は、アンテナ取付具50の構成上、まずアンテナ取付具50を壁面6に固定してからの作業となり、アンテナ装置1をアンテナマスト5等の支柱に取り付ける場合と手順が異なる。その為、ボルト体30を、予めアンテナ取付部材20における他方の当付片21bから垂下した状態となるように装着しておいて、この状態のアンテナ取付具50に対して支持具10を装着できれば、支持具10の装着作業が簡単になる。
【0094】
その為、支持具10の下方位置には、図4に示されているように、挿入口18aから貫通孔15Cに至る切欠部18が形成されており、支持具10をアンテナ取付具50に装着するに当たって、アンテナ取付部材20に垂下するように装着された状態のボルト体30の雄ネジ部30aが、切欠部18において遊挿自在となるから、ボルト体30の雄ネジ部30aの存在があっても、支持具10とアンテナ取付具50との装着を邪魔することがない。
【0095】
つまり、支持具10を図の矢印F方向に移動させるだけで、ボルト体30が垂下した状態で装着されたアンテナ取付部材20の当付片21a、21bに対して、支持具10の端面11a、11bを挟み込むようにして摺動接触させつつ装着することができるので、例えば、支持具10をアンテナ取付部材20に装着した状態で、アンテナ装置1を保持しつつ、ボルト体30をアンテナ取付部材の当付片21bに設けられた挿通孔29Bの雌ネジ部29bに対して螺合するといった一連の手間を削減することができる。
【0096】
一方、アンテナ装置1をアンテナマスト5のような支柱に取り付ける場合は、アンテナマスト5に取り付ける前に、支持具10とアンテナ取付部材20(詳しくは、アンテナ取付具50)を装着するのであるが、この時、支持体11の表面11cには、アンテナ取付具50に締着状に装着された、挟持金具40の締着ボルト45の自由端部45aを挿抜自在に収納する収納穴11dが形成されているので、支持具10をアンテナ取付具50に装着するに当たって、締着ボルト45の存在が邪魔になることが無い。この構成によると、支持具10をアンテナ取付具50に装着した状態で、締着ボルト45の自由端部45aが収納穴11dに収納されるため、アンテナ取付具50が支持具10から後方側に突出する寸法(更に言えば、アンテナ装置1と合わせた奥行き寸法)を小さくできる。また、製品出荷時に使用する梱包材を小さくすることができるなど、コスト削減が可能となる。
【0097】
この時の支持具10とアンテナ取付具50との装着の状態について、図6(b)を用いて詳しく説明する。
なお、図を簡単にするため、図6(b)にはアンテナ取付具50の存在を示すボルト体30だけを表示した。
【0098】
図6(b)に示されているように、支持具10を、図に示したボルト体30に対して矢印の(1)方向に移動させるようにして装着すると、アンテナ取付部材20の他方の当付片21bに垂下した状態に装着されたボルト体30の雄ネジ部30bは、切欠部18の存在によって、図6(b)の左右方向に遊挿自在に装着されることがわかる。
【0099】
つまり、支持具10(即ち、アンテナ装置1)は、アンテナ取付具50に対して前後方向(図6(b)の左右方向)にスライド自在に装着される。
一方、スライド孔13の下側支持孔部12C部分に相当するスライド孔13Cの間隙の幅寸法(内径寸法)W2が、ボルト体30の雄ネジ部30aの外径寸法Wtと同じ寸法、若しくは、僅かに短い寸法となるように形成されている。
【0100】
このため、支持具10を図に示したボルト体30に対して矢印の(2)方向に移動させるようにしても、スライド孔13Cは、ボルト体30の雄ネジ部30bの浸入を阻止することがわかる。
【0101】
つまり、ボルト体30がアンテナ取付部材20に垂下した状態では、支持具10(延いては、アンテナ装置1)は、アンテナ取付部材20に対して、スライド孔13Cに沿うような、左右方向(図6(b)の上下方向)へのスライドが制限されるように構成されている。
【0102】
このように、支持具10をアンテナ取付具50に対して装着した状態が図5(a)に示されている。
既に詳述したように、本実施形態においては、切欠部18と、支持具10に形成された支持孔12部分を構成する3つの孔(スライド孔13、連通孔14、貫通孔15)の内、貫通孔15だけが、ボルト体30の雄ネジ部30aの外径寸法Wtより僅かに大きい内径寸法W1で形成されている。
【0103】
よって本実施形態では、図5(a)で示された装着状態から、図5(b)で示されたように、垂下された状態にあるボルト体30を、一方の当付片21aに供えられた挿通孔29Aに螺合するためには、他方の当付片21bに備えられた挿通孔29Bの軸線と、貫通孔15の軸線と、一方の当付片21aに備えられた挿通孔29Aの軸線と、を略一致させた時だけ可能となる構成となっている。
【0104】
なお、軸線を略一致させる方法として、支持具10をアンテナ取付部材20に取り付ける際に、ボルト体30の雄ネジ部30aが下側支持孔部12C部分における貫通孔15Cの内周面に当接させるように装着することで実現できる。
【0105】
ところで、本実施形態のボルト体30は、挿通孔29Bの内径に比べボルト30の軸部30bの外径が細径となる半ネジタイプのため、垂下した状態にあるボルト30は、図5(a)において破線で示されたように、挿通孔29Bの孔内で大きく傾動可能な状態に装着される。
【0106】
そこで、本実施形態では、アンテナ取付部材20の当付片21a、21bに形成された挿通孔29A、29Bの軸線と、支持具20に形成された貫通孔15の軸線を略一致させた状態で、ボルト体30を上方に持ち上げようとしたときに、ボルト体30が傾くことのないよう、誘導部34が設けられている。
【0107】
つまり、本実施形態では、ボルト体30の先端が下側支持孔部12C部分における連通孔14Bの下側開口部(言い換えれば、切欠部18の上側内壁)に当接するなどして、ボルト体30の正常な組み付けを妨げることが無いよう、連通孔14Bにおける第2中間位置側に、誘導部34が設けられている。
【0108】
既述したように、誘導部34の形成寸法は、誘導部34を構成する平面34bがなす空間の間隙の幅寸法が、切欠部18の間隙の幅寸法と同じ寸法W1である。
また、誘導部34を除く連通孔14Bの間隙の幅寸法は、ボルト体30の軸部30bの外径寸法Wsより大きく、且つ、ボルト体30の雄ネジ部30aの外径寸法Wtと略同じか、若しくは、短い寸法W2となるように形成されている。
【0109】
また、誘導部34の段差34aが、第2中間位置から第1中間位置に向かうに従って、中間支持孔部12B部分における貫通孔15Bに収束するように傾斜が付けられるように形成されている。
【0110】
従って、誘導部34は、平面34aがなす空間まではボルト体30の雄ネジ部30a部分を受入れるものの、段差34aが、ボルト体39の雄ネジ部39aに対して連通孔14Bへの挿入を阻止しつつ、貫通孔15Bの軸線方向への挿入を誘導する。
【0111】
このため、ボルト体30を一方の当付片21aに形成された挿通孔29Aに螺合する際の作業を容易に行うことができる。
この時の支持具10とアンテナ取付部材20(言い換えれば、アンテナ取付具50)との装着の状態について、図6(a)及び図7を基に詳しく説明する。
【0112】
なお、この図7にはアンテナ取付部材20に備えられた他方側の当付片21bと、当付片21bに装着されたボルト体30の存在を示したが、図6(a)にはアンテナ取付具50の存在を示すボルト体30だけを表示した。
【0113】
図7(b)のように、ボルト体30がアンテナ取付部材20に備えられた他方側の当付片21bから垂下した状態から、図6(a)、図7(a)及び図7(c)のように、ボルト体30を貫通孔15Bに挿入しようとして、ボルト体30が傾いた場合を考える。
【0114】
この場合、誘導部34の平面34bがなす、間隙の幅寸法がW1である空間が、ボルト体30の雄ネジ部(外径寸法Wt)30aを受入れる。
ところが、間隙の幅寸法がW2となるように対向配置した段差34aに雄ネジ部30aの先端部が当接して、段差34aがボルト体30の雄ネジ部30aを図7(a)の矢印U方向に摺動接触させながら誘導するから、ボルト体30は正しく貫通孔15Bの軸線方向に挿入される。
【0115】
次に、ボルト体30が装着された状態について図5(b)及び図8を基に説明する。
既述したように、上側支持孔部12Aの形成範囲となる第1中間位置、すなわち、段差12abは、支持体11の一方の端面11aにおける支持孔12の開口端12aから、少なくともボルト体30の雄ネジ部30aが形成された範囲の寸法Htより大きい寸法Hsとなる位置に形成されている(図4参照)。
【0116】
また、上側支持孔部12A部分を構成する3つの孔(スライド孔13A、連通孔14A、貫通孔15A)の間隙の幅寸法(内径寸法)が、全てボルト体30の雄ネジ部30aの外径寸法Wtより大きい寸法W1で形成されている。
【0117】
このため、支持具10がアンテナ取付具50に対して装着が完了した(すなわち、ボルト体30の装着が完了した)状態では、図8(a)に示されているように、ボルト体30の雄ネジ部30a部分は、貫通孔15Aの内部空間において遊挿状態に装着されるばかりでなく、図中におけるボルト体30Aの存在が示すように、上側支持孔部12Aを構成する連通孔14Aからスライド孔13Aに至る内部空間においても遊挿自在となるように装着される。
【0118】
また、中間支持孔部12B部分を構成する3つの孔(スライド孔13B、連通孔14B、貫通孔15B)の間隙の幅寸法(内径寸法)は、誘導部34における平面34aがなす空間部分(寸法W1)及び貫通孔15B(寸法W1)を除いて、ボルト体30の軸部30bの外径寸法Wsより大きく、且つ、ボルト体30の雄ネジ部30aの外径寸法Wtと略同じか、若しくは、短い寸法W2となるように形成されている。
【0119】
このため、支持具10がアンテナ取付具50に対して装着が完了した状態では、図8(b)に示されているように、ボルト体30の軸部30b部分は、貫通孔15Bの内部空間において遊挿状態に装着されるばかりでなく、図中におけるボルト体30Aの存在が示すように、中間支持孔部12Bを構成する連通孔14Bからスライド孔13Aに至る内部空間においても遊挿自在となるように装着される。
【0120】
また、下側支持孔部12C部分を構成する3つの孔(スライド孔13C、連通孔14C、貫通孔15C)の間隙の幅寸法(内径寸法)の内、切欠部18を構成する連通孔14C及び貫通孔15Cを除くスライド孔13Cだけが、ボルト体30の軸部30bの外径寸法Wsより大きく、且つ、ボルト体30の雄ネジ部30aの外径寸法Wtと略同じか、若しくは、短い寸法W2となるように形成されている。
【0121】
このため、支持具10がアンテナ取付具50に対して装着が完了した状態では、図6(c)におけるボルト体30Aが示すように、ボルト体30の軸部30b部分は、下側支持孔部12Cを構成するスライド孔13Cの内部空間において遊挿自在となるように装着される。
【0122】
つまり、本実施形態では、支持具10(延いては、アンテナ装置1)を、アンテナ取付具50に対して装着が完了した状態(すなわち、ボルト体30が緊締されていない状態で螺合された支持具とアンテナ取付具50との装着状態。以下、この装着状態を第1装着状態と記載する。)において、誘導部34の存在があっても、誘導部34はボルト体30の軸部30bに対して貫通孔15Bの軸線に直交する方向への挿通を自在とする幅寸法W2の間隙を有する。
【0123】
このため、支持具10(延いては、アンテナ装置1)はアンテナ取付具50に対して、支持孔12に沿わせながら、図6(a)の矢印の(3)方向、(4)方向へ自在にスライド可能となる。
【0124】
よって、支持具10の回動の回転軸であるボルト体30の位置を、支持孔12の形成範囲内の何れの位置に移動させることができ、アンテナ装置の方向調整が任意の位置でできるようになる。
【0125】
ここで、図9乃至図11を基に、支持具10(延いては、アンテナ装置1)とアンテナ取付具50を装着した状態における、アンテナ取付部材20と配設位置制限手段16A・16Bとの関係について詳しく説明する。
【0126】
なお、以下の説明では、アンテナ取付部材20と配設位置制限手段16との関係の説明を簡単にするため、一方の端面11a側に形成された配設位置制限手段16Aの例を用いて説明し、他方の端面11b側については同様な構成であるため説明を省略する。
【0127】
既述したように、支持具10とアンテナ取付具50の取り付け操作は、アンテナ取付部材20に突設されている他方の当付片21bに備えられた挿通孔29Bの軸線(言い換えれば、当付片21に垂下した状態に装着されたボルト体30の軸線)と、貫通孔15の軸線と、一方の当付片21aに備えられた挿通孔29Aの軸線と、を略一致させた時だけ行なうことができる。
【0128】
そして、その位置合わせは、ボルト体30の雄ネジ部30aを下側支持孔部12C部分の貫通孔15Cの内周面に当接させることで行なうことができる。
更に本実施形態のアンテナ支持装置60では、支持具10がアンテナ取付具50に対して装着が完了した第1装着状態において、図9(a)に示されているように、少なくとも、アンテナ取付部材20における一方の当付片21aの先端部に備えられた係止突片26Aと、支持体11の一方の端面11aに形成された配設位置制限手段16Aの構成要素である受入部16Aaとが嵌合するように構成されている。
【0129】
また、この第1装着状態において、他方の当付片21bに備えられた挿通孔29Bの軸線(言い換えれば、当付片21に垂下した状態に装着されたボルト体30の軸線)と、貫通孔15の軸線と、一方の当付片21aに備えられた挿通孔29Aの軸線とを一致させるように構成しておくことによって、雄ネジ部30aを貫通孔15Cの内周面に当接させる方法に加え、より正確に軸線を一致させることができ、しかも誘導部34の存在と合わせ、操作性の優れた構成となっている。
【0130】
次に、図8(a)、図9(a)及び図11(a)を用いて、アンテナ取付部材20における一方の当付片21aの先端部に備えられた係止突片26Aと、配設位置制限手段16Aの構成要素である止着部16Abとの関係について説明する。
【0131】
なお、図11(a)に示す変形例のアンテナ取付部材200とアンテナ取付部材20との違いは、係止突片の有無であり、アンテナ取付部材200には係止突片は具備されていない。
【0132】
また、図11(a)に示す変形例の支持具10Aと支持具10との違いは、配設位置制限手段16の有無であり、支持具10Aには、配設位置制限手段は具備されていない。
図11(a)に示されている実施形態では、係止突片も配設位置制限手段も具備されていないから、図11(a)において実線で示された第1装着状態にあるアンテナ取付部材200は、支持具10Aに対して、例えば二点鎖線で示したアンテナ取付部材200´まで回動可能できる。
【0133】
また、一点鎖線で示された装着状態(すなわち、スライド孔13の中間位置にボルト体を配設した時の装着状態(以下の説明では、支持具をスライド孔の中間位置に装着した状態を第2装着状態と記載する。)にあるアンテナ取付部材200Aの場合は、支持具10Aに対して図のように回動させることができる。
【0134】
ここで、この変形例のアンテナ取付部材200を、取付対象物である壁面に取り付ける場合を考えると、例えば、第2装着状態にあるアンテナ取付部材200Aの回動角度は、アンテナ装置1の側面1bの端部(言い換えれば、背面1aの両側端部)が、図11(a)の6aで示した仮想の壁面位置6aに当接するまでの範囲(図11(a)において示された角度α=例えば45°)となる。
【0135】
一方、第1装着状態にあるアンテナ取付部材200の回転角度は、アンテナ取付部材200が支持具10Aに当接するまでの範囲となる。
すなわち、変形例のアンテナ支持装置によれば、支持具10A(延いては、アンテナ装置1)は、アンテナ取付部材200に対して、支持具10Aに備えられた支持孔12の何れの位置においても回動させることができるので、アンテナ装置1の方向調整には便利である。
【0136】
しかしながら、設置場所と電波到来方向との位置関係、若しくは、デジタル放送受信ならではの特性等によって、回動角度(すなわち、アンテナ装置の方位角調整範囲)が狭い状態で制限されてしまうと、アンテナ装置1の方向調整を行うにあたり、一度の配設操作だけでは正確に方向調整することができず、更なる支持具10に対する調整操作が必要となる場合がある。
【0137】
詳しく説明すると、地上デジタル放送の受信の場合、アンテナ装置1の方向調整は、アンテナ装置1によって受信される地上デジタル放送信号の受信レベル(C/N)が最大となる方向に調整するだけでなく、測定器等を使って放送信号の信号品質(上述したBER、MER等)などの確認を行なうのが望ましいからである。
【0138】
つまり、電波の伝播経路の環境条件などによって、例えば、受信レベルが高くても信号品質の良くない電波が到来することがあるので、アンテナ装置1の方向調整において、アンテナ装置1を、地上デジタル放送信号を送信する電波塔の方向に正確に向けることが、アンテナ装置1を正しい方向(受信レベル、BER、MERが全て良好な値が得られる方向)に向けたこととはならないことがあるからである。
【0139】
その為、アンテナ支持装置は、アンテナ装置1を物理的(電波塔の方向)に正確な方位角で方向調整ができるばかりでなく、当該物理的な方位角を基準として、更に左右方向に方向調整が行なえ、電気的に正しい方向を探し出すことができるようにしておく必要性を考慮すると、アンテナ支持装置の方向調整角度はできる限り広い範囲をカバーできるのが望ましい。
【0140】
そこで、本発明の実施形態に係るアンテナ支持装置60は、図9(a)に示すように、支持具10に配設位置制限手段を備えさせることによって、第1装着状態では、少なくとも係止突片26Aと受入部16Aaが嵌合し、支持具10は回動できない構成となっている。
【0141】
一方、図8(a)に示されているように、第1装着状態から、支持具10を図の矢印の(3)方向から矢印の(4)方向にスライドさせ、スライド孔13の中間位置にボルト体30Aを配設した第2装着状態では、図9(a)において一点鎖線で示された仮想のアンテナ取付部材20Aの存在が示すように、係止突片26Aの先端と止着部16Abとが沿うように対向配置される。
【0142】
そこで、第1装着状態と第2装着状態では、支持具10は、アンテナ取付部材20に対して、回動させることができない構成としている。
つまり、支持具10がアンテナ取付部材20に対して、回動角度の範囲があまり大きく取れない状態(言い換えれば、最大の回動角度の範囲で回動できるようになるまで)では、アンテナ装置1の方向調整ができない構成とする。
【0143】
この結果、アンテナ装置1の方向調整にかかる操作において、アンテナ装置1を物理的な方位角に正確に向けても、電気的に正しい方向に向けることができない状態となる可能性を小さくすることができ、延いてはアンテナ装置1の設置工事の時間短縮が実現できる。
【0144】
次に、図9(b)及び図10(b)を用いて、係止突片26Aと、配設位置制限手段16Aの構成要素である回動部16Acとの関係について説明する。
図9(b)に示されているように、支持具10を図の矢印S方向にスライドさせ、図中の破線で示されたアンテナ取付部材20Bの位置にしたとき、具体的には、アンテナ取付部材20Bのボルト体30Bの配設位置が、スライド孔13における図の上側の終端部13Dに位置させた装着状態(以下の説明では、このスライド孔13の終端部13Dに装着した状態を第3装着状態と記載する。)では、支持具10を回動させる間、回動部16Acの空間が係止突片26Aの先端部を受け入れる。
【0145】
このため、第3装着状態において、支持具10はアンテナ取付部材20に対して、終端部13Dを回転軸として回動させることができる(図の下側に位置する二点鎖線で示されたアンテナ取付部材20Cも同様に装着される)。
【0146】
つまり、本実施形態におけるアンテナ支持装置60によれば、図9(b)に示されているように、第3装着状態では、スライド孔13の終端部13Dの軸線より外側(図の上側)に位置するアンテナ装置1の突出部分の寸法L1が、図11(a)において示されている第2装着状態における突出部分の寸法L2より短くすることができるから、支持具10の回動角度θ(図9(b)において示された角度θ=例えば60°)を大きくすることができる。
【0147】
従って、図10(b)の破線で示したアンテナ装置1B、二点鎖線で示したアンテナ装置1Cのように、壁面6等への設置であっても、アンテナ装置の方向調整範囲を大きくできるから、壁面の配設方向と電波の到来方向や到来電波の信号品質等によって生じる多様な設置条件にも対応可能となる。
【0148】
また、方向調整範囲が大きいことから、無駄な調整操作を無くすことができ、アンテナ装置の設置工事の時間短縮が実現できる。つまり、本実施形態によれば、極めて利便性の良いアンテナ支持装置60を提供できる。
【0149】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の態様をとることができる。
例えば、図11(b)で示したように、本発明の実施形態であるアンテナ取付部材20と、支持具10の変形例である支持具10Bとの組み合わせであっても良い。支持具10Bと支持具10との違いは配設位置制限手段の構成である。
【0150】
この異なる実施形態の支持具10Bに備えられた配設位置制限手段160Aは、図11(b)に示されているように、係止突片26Aを受け入れて嵌合する受入部160Aaを有するものの、上述した配設位置制御手段16Aには具備された止着部と回動部を備えていない構成となっている。
【0151】
すなわち、この変形例の支持具10Bとアンテナ取付部材20との第1装着状態は、係止突片26Aが受入部160Aaに嵌合することで、支持具10B(延いては、アンテナ装置1)はアンテナ取付部材20に対して確りと正対し、且つ、低背な状態で固定配置できる。
【0152】
一方、第2装着状態(図の破線で示されたアンテナ取付部材20A)及び第3装着状態(図の二点鎖線で示されたアンテナ取付部材20C)の両方の状態では、支持具10B(延いては、アンテナ装置1)はアンテナ取付部材20に対して回動自在に固着できる。
【0153】
この実施例によれば、スライド孔13における任意の位置で方向調整が可能となるので、アンテナ装置1が構造物等の壁面から突出する寸法を更に短くすることができる。
また、上記実施形態では、支持体11の連通孔14には、段差34aを傾斜させることによって誘導部34を設けるものとしたが、図12に示すように、この誘導部34は必ずしも形成する必要はない。
【符号の説明】
【0154】
1…アンテナ装置、1a…背面、1b…側面、5…アンテナマスト、6…壁面、10…支持具、10A・10B…支持具(異なる実施形態)、11…支持体、11a・11b…端面、11c…表面、11d…収納穴、12…支持孔、12A…上側支持孔部、12B…中間支持孔部、12C…下側支持孔部、12a・12b…開口端、12ab…段部、13(13A、13B、13C)…スライド孔、13D…終端部、14(14A、14B、14C)…連通孔、15(15A、15B、15C)…貫通孔、16(16A、16B)…配設位置制御手段、16Aa…受入部、16Ab…止着部、16Ac…回動部、18…切欠部、18a…挿入口、20・20A・20B・20C…アンテナ取付部材、21…本体、21a・21b…当付片、22…取付面、23…当付部、24…アンテナマスト当接部、25…ネジ孔、26(26A・26B)…係止突片、27・28…取付孔、29A・29B…挿通孔、29a・29a…雌ネジ部、30・30A・30B・30C…ボルト体、30a…雄ネジ部、30b…軸部、34…誘導部、34a…段差、34b…平面、40…挟持金具、45…締着ボルト、45a…自由端部、50…アンテナ取付具、60…アンテナ支持装置、160…配設位置制御手段(異なる実施形態)、160Aa…受入部、200・200A…アンテナ取付部材(異なる実施形態)、300・300A…ボルト体
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置を、壁面やアンテナマストなどの取付対象物に取り付けるためのアンテナ支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のアンテナ支持装置として、アンテナ素子をケース内に収納したアンテナ装置の背面に設けられて、アンテナ装置を支持するための支持具と、この支持具をアンテナ装置の取付対象物に取り付けるアンテナ取付具と、から構成されたものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
このアンテナ支持装置は、支持具及びアンテナ取付具の一方に、他方を挟持可能な一対の当付片を設け、この当付片と他方の挟持対象とに、ボルトを挿通するための挿通孔を形成することにより構成されている。
【0004】
このため、支持具(延いてはアンテナ装置)は、一対の当付片を介してアンテナ取付具と連結し、各挿通孔の中心軸を合わせて、ボルトを挿通することで、アンテナ取付具に対しボルトを中心として回動可能に装着できる。
【0005】
よって、この種のアンテナ支持装置によれば、アンテナ装置を、ボルトを中心として回動させることにより、アンテナ方向を調整でき、しかも、ボルトを締め付けることで、アンテナ方向を固定することができる。
【0006】
また、特許文献1に記載のものは、ボルトを挿通するための挿通孔が、ボルトの外径に対応した径を有する円形であるが、特許文献2に記載のものは、支持具側の挿通孔を、アンテナ装置の背面に沿って長尺状に形成された長孔にしている。
【0007】
このため、特許文献2に記載のものによれば、アンテナ取付具側の挿通孔に挿通されることにより位置決めされるボルトに対し、アンテナ装置を大きく変位させることができ、アンテナ方向の調整可能範囲を広げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−226150号公報
【特許文献2】特開2011−182295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載のように、アンテナ装置の背面に設けられる支持具側の挿通孔を、アンテナ装置の背面に沿った長孔にすると、アンテナ装置を取付対象物に取り付ける際に、アンテナ装置を位置決めするのが難しく、アンテナ装置が、取付対象物に対し傾いて取り付けられることがあった。
【0010】
つまり、アンテナ装置を取付対象物に取り付ける際には、アンテナ取付具を取付対象物に固定し、支持具をアンテナ装置に取り付けた状態で、一対の当付片を介して支持具とアンテナ取付具とを連結する。
【0011】
そして、ボルトは、各挿通孔を位置合わせした状態で、各挿通孔に挿通することになるが、挿通孔が長孔であると、取付対象物に対しアンテナ装置が傾いていても、各挿通孔にボルトを挿通できる。
【0012】
この結果、アンテナ装置の設置作業者は、アンテナ装置が傾いた状態で、アンテナの方向調整をしてしまい、その状態で、ボルトを締め付け、設置作業を完了してしまうことがある。
【0013】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、アンテナ方向の調整可能範囲が広く、しかも、アンテナ装置の設置時に生じるアンテナ装置の傾きを低減し得るアンテナ支持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、
アンテナ装置の背面に設けられて、当該アンテナ装置を支持する支持具と、
前記アンテナ装置の取り付け対象となる取付対象物に取付可能に構成され、前記支持具を、ボルト体を介して回動可能に支持するアンテナ取付具と、
を備えたアンテナ支持装置において、
前記支持具は、
互いに平行に配置される一対の端面を有する支持体と、
前記一対の端面に直交する方向に前記支持体を貫通する支持孔と、
を備え、
前記支持孔は、
前記アンテナ装置の背面に沿って配置される長尺状のスライド孔と、該スライド孔と前記アンテナ装置の背面との間に配置される貫通孔と、該貫通孔と前記スライド孔とを連通する連通孔とにより、断面が略T字形状に形成されており、
前記アンテナ取付具は、
前記取付対象物に対する取付手段を備えた基体と、
該基体の前記取付手段とは反対側に突出され、前記支持体を前記一対の端面側から挟持可能な一対の当付片と、
からなるアンテナ取付部材を備え、
前記一対の当付片には、前記支持体を挟持した状態で、前記ボルト体を挿通して前記支持孔に前記ボルト体を貫通させる挿通孔が設けられると共に、該挿通孔の少なくとも一方には、前記ボルト体に形成された雄ネジ部と螺合可能な雌ネジ部が形成されており、
前記ボルト体は、
前記一対の当付片の間隔よりも長く、先端部から所定長の範囲内に前記雌ネジ部と螺合可能な雄ネジ部を備え、しかも、当該雄ネジ部に連設される軸部の径が、当該雄ネジ部の径よりも細径となるように構成された半ネジタイプのボルトからなり、
前記支持孔における前記貫通孔の内径は、前記ボルト体の前記雄ネジ部の外径よりも僅かに大きく、
前記支持孔における前記スライド孔及び前記連通孔の内側に形成される間隙は、
前記支持体の一方の端面から、少なくとも前記ボルト体の前記雄ネジ部が形成された範囲の前記所定長と略同じ若しくは僅かに大きい長さとなる第1中間位置までは、前記ボルト体の前記雄ネジ部の外径よりも僅かに大きく、
前記第1中間位置から前記支持体の他方の端面までは、前記ボルト体の前記雄ネジ部の外径と同じか若しくは小さく、且つ、前記軸部の外径より僅かに大きい、
ことを特徴とする。
【0015】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のアンテナ支持装置において、
前記アンテナ取付部材において、前記一対の当付片の少なくとも一方には、前記挿通孔よりも先端側に向けて突出するように係止突片が設けられており、
前記支持体において、前記一対の端面の少なくとも一つには、
前記各当付片に設けられた挿通孔が前記支持具の前記貫通孔を挟んで対向するよう、前記アンテナ取付部材と前記支持具とを配置した際に、前記係止突片が挿入される凹状の受入部と、
前記受入部の開口部から両側外方向に向かって連設され、前記ボルト体を前記支持孔及び前記一対の当付片の挿通孔に通して前記雄ネジ部を前記雌ネジ部に螺合させた状態で、前記ボルト体を前記スライド孔に沿ってスライドさせた際に、前記係止突片の先端部に当接されて、前記ボルト体を中心とする前記支持具の回動を制限する止着部と、
当該止着部より両側外方向に配設され、前記ボルト体を前記支持孔及び前記一対の当付片の挿通孔に通して前記雄ネジ部を前記雌ネジ部に螺合させた状態で、前記ボルト体を前記スライド孔の終端部まで移動させた際に、前記ボルト体を中心とする前記支持具の回動を制限することのないよう、前記係止突片を受け入れる回動部と、
からなる配設位置制限手段、
が設けられていることを特徴とする。
【0016】
また次に、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のアンテナ支持装置において、
前記支持具は、
前記支持体の他方の端面から第2中間位置までの間で、当該支持体の他方の端面に形成される挿入口から、前記スライド孔及び前記連通孔を介して前記貫通孔と連通するように形成された切欠部を備え、
該切欠部は、前記支持体の他方の端面から前記第2中間位置までの高さ方向の寸法が、前記ボルト体の前記雄ネジ部が形成された範囲の前記所定長よりも大きく、該高さ方向に直交する幅方向の寸法が、前記ボルト体の雄ネジ部の外径より大きく、
更に、前記連通孔の内壁には、前記切欠部の幅方向の寸法と同じ寸法となって段差を形成する誘導部が形成され、
該誘導部には、前記スライド孔側から前記貫通孔側に向けて、前記支持体の他方の端面から段差までの高さ方向の寸法が順次増大するよう、傾斜が付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載のアンテナ支持装置によれば、アンテナ装置の背面に設けられる支持具を構成する支持体には、スライド孔と貫通孔と連通孔とにより断面が略T字形状に形成された支持孔が形成されている。
【0018】
また、アンテナ取付具の基体には、支持体を挟持可能な一対の当付片が設けられ、この当付片には、支持体を挟持した状態で、ボルト体を挿通して支持孔にボルト体を貫通させる挿通孔が設けられ、その挿通孔の少なくとも一方には雌ネジ部が形成されている。
【0019】
そして、支持具とアンテナ取付具との連結に用いられるボルト体には、その雌ネジ部に螺合可能な雄ネジ部を先端部に備え、雄ネジ部に連設される軸部の径が、雄ネジ部の径よりも細径となるように構成された半ネジタイプのボルトが使用される。
【0020】
また、支持孔における貫通孔の内径は、ボルト体の雄ネジ部の外径よりも僅かに大きく、支持孔におけるスライド孔及び連通孔の内側に形成される間隙は、次のように形成されている。
【0021】
すなわち、スライド孔及び連通孔の内側に形成される間隙は、支持体の一方の端面から第1中間位置までは、ボルト体の前記雄ネジ部の外径よりも僅かに大きく、第1中間位置から支持体の他方の端面までは、ボルト体の前記雄ネジ部の外径と同じか若しくは小さく、且つ、軸部の外径より僅かに大きい。
【0022】
従って、支持具とアンテナ取付部材との組み付けは、各当付片に設けられた挿通孔が支持具の貫通孔を挟んで対向するよう、各挿通孔及び貫通孔の軸線を略一致させた状態で、ボルト体を一方の挿通孔から貫通孔を通って他方の挿通孔へと挿通させることにより行えばよい。
【0023】
また、この際、少なくともボルト体の雄ネジ部が最後に挿通される側の挿通孔には、雌ネジ部が形成された挿通孔が配置されるようにし、その雌ネジ部にボルト体の雄ネジ部を螺合させる。
【0024】
この結果、本発明のアンテナ支持装置によれば、支持具とアンテナ取付部材との組み付け時に、支持具が設けられたアンテナ装置が、アンテナ取付具(延いては、アンテナ装置の取付対象物)に対し傾くのを防止することができる。
【0025】
そして、この状態で、ボルト体を締め付ければ、支持具(延いてはアンテナ装置)を取付対象物にしっかりと固定することができる。
また、この状態で、ボルト体の締め付けを緩めれば、ボルト体の配設位置を、支持孔における貫通孔から、連通部を通ってスライド孔の形成方向に沿うようにスライドさせることができるようになり、しかも、任意の位置で、アンテナ装置の向きを調整できる。
【0026】
よって、本発明によれば、上述した従来装置に比べ、設置時に生じるアンテナ装置の傾きを低減しつつ、アンテナ方向の調整可能範囲を広げることができる。
ところで、例えば、地上デジタル放送信号の受信において、アンテナ装置を設置するときに重要なことは、放送信号の受信レベル(C/N)が最大となる方向に調整するだけでなく、受信信号の信号品質も確認することが求められる。
【0027】
なお、信号品質としては、BER(符号誤り率:Bit Error Rate)、MER(変調誤差比:Modulation Error Ratio)等を挙げることができる。
つまり、電波の伝播経路の環境条件などによって、受信レベルが高くても信号品質の良くない電波が到来する恐れがあるので、アンテナ装置の方向調整をする場合、アンテナ装置を電波塔の方向(物理的な方位角)に正確に向けることが、必ずしもアンテナ装置を正しい方向(電気的な方位角)に向けたことにはならないからである。
【0028】
従って、アンテナ装置の方向調整において、アンテナ装置を物理的に正確な方向に向けても、その方向から到来する放送信号の信号品質によっては、電気的に正しい方向を探すために、更なる方向調整操作が必要となる状況が発生することまで考慮すると、アンテナ支持装置の方向調整角度はできる限り広い範囲をカバーできるのが望ましい。
【0029】
このため、より好ましくは、本発明のアンテナ支持装置は、請求項2に記載のように構成するとよい。
すなわち、請求項2に記載のアンテナ支持装置においては、アンテナ取付部材を構成する一対の当付片の少なくとも一方には、挿通孔よりも先端側に向けて突出するように係止突片が設けられる。
【0030】
また、支持体において、一対の端面の少なくとも一つには、配置位置制限手段が設けられる。
そして、この配置位置制限手段は、係止突片が挿入される凹状の受入部と、受入部の開口部から両側外方向に向かって連設され、支持具の回動を制限する止着部と、止着部より両側外方向に配設され、支持具の回動を制限することのないよう係止突片を受け入れる回動部と、により構成される。
【0031】
この結果、請求項2のアンテナ支持装置によれば、ボルト体が貫通孔に位置するように装着された状態では、係止突片と配設位置制限手段の受入部とが嵌合することから、支持具を、アンテナ取付部材に対してアンテナ装置が正確に正面を向くように配設することができる。
【0032】
また、支持具の回転軸となるボルト体が、スライド孔の中間位置にあるときには、支持具の回転が制限されて、アンテナ装置の方向調整ができない状態となり、ボルト体がスライド孔の終端部に位置するときには、アンテナ装置の方向調整が可能となる。
【0033】
つまり、請求項2に記載のアンテナ支持装置によれば、支持具をアンテナ取付部材に対して回動させてアンテナ装置の方向調整を行う際には、支持具の回動の回転軸(換言すればボルト体)を、スライド孔の終端部まで移動させる必要がある。
【0034】
この構成によれば、アンテナ装置の方向調整時に、支持具の回転軸より外側に位置するアンテナ装置の突出部分の寸法を短くすることができる。
このため、当該アンテナ支持装置を壁面に設置する場合において、前記アンテナ装置が正面を向いた状態から当該アンテナ装置の両端部分が壁面と重合するまでの範囲である、支持具の回動角度を大きくできる。
【0035】
よって、壁面の配設方向と電波の到来方向や到来電波の信号品質等によって生じる多様な設置条件にも対応可能で、しかも、無駄な調整操作が無くなりアンテナ装置の設置工事の時間短縮が実現できるなど、極めて利便性の良いアンテナ支持装置を提供できる。
【0036】
次に、請求項3に記載のアンテナ支持装置によれば、支持体の他方の端面から第2中間位置までの間には、その端面に形成される挿入口からスライド孔及び連通孔を介して貫通孔と連通するように切欠部が形成されている。
【0037】
そして、この切欠部は、支持体の他方の端面から第2中間位置までの高さ方向の寸法が、ボルト体の雄ネジ部が形成された範囲の所定長よりも大きく、その高さ方向に直交する幅方向の寸法が、ボルト体の雄ネジ部の外径より大きくなっている。
【0038】
また、連通孔の内壁には、切欠部の幅方向の寸法と同じ寸法となって段差を形成する誘導部が形成され、その誘導部には、スライド孔側から貫通孔側に向けて、支持体の他方の端面から段差までの高さ方向の寸法が順次増大するよう、傾斜が付けられている。
【0039】
このため、請求項3に記載のアンテナ支持装置によれば、支持体の他方の端面から支持体内に形成された切欠部には、ボルト体の雄ネジ部をそのまま挿入することができる。そして、その挿入したボルト体の雄ネジ部は、連通孔の内壁に形成された誘導部の段差に当たり、その段差の傾斜によって、貫通孔へと誘導されることになる。
【0040】
従って、ボルト体を一方の挿通孔から貫通孔を通って他方の挿通孔へと挿通させる際に、ボルト体を位置決めする必要がなく、その挿入作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施形態のアンテナ支持装置の概略構成を説明するための分解斜視図である。
【図2】支持具の説明図であり、(a)はその上面図、(b)は(d)におけるA−A´線から見た断面図、(c)は(d)におけるB−B´線から見た断面図、(d)は(a)におけるC−C´線から見た断面図、(e)は(a)におけるD−D´線から見た断面図、(f)は支持孔の間隙(内径)とボルト体の寸法との比較図である。
【図3】アンテナ取付部材の説明図であり、(a)はその上面図、(b)は下面図、(c)は(a)におけるE−E´線から見た側面図、(d)は(a)におけるF−F´線から見た断面図である。
【図4】アンテナ取付具に支持具(アンテナ装置)を取り付ける方法を説明するための図であり、アンテナ取付具と支持具を取り付ける前の状態を側面から見た断面図である。
【図5】アンテナ取付具に支持具(アンテナ装置)を取り付ける方法を説明するための図であり、(a)はアンテナ取付具に支持具を取り付けた状態を側面から見た断面図、(b)はアンテナ取付具と支持具の組み付けが完了した状態を側面から見た断面図である。
【図6】支持具の要部拡大図であり、(a)は図7(a)におけるG−G´線から見た断面の要部拡大図、(b)は図2(c)の要部拡大図である。
【図7】誘導部を説明するための要部拡大図であり、(a)は図6(a)のH−H´線から見た断面の要部拡大図、(b)は図6(b)のI−I´線から見た断面の要部拡大図、(c)は図6(a)のJ−J´線から見た断面の要部拡大図である。
【図8】支持具の要部拡大図であり、(a)は図2(a)の要部拡大図、(b)は図2(b)の要部拡大図である。
【図9】アンテナ取付部材と支持具(アンテナ装置)の取り付け状態の説明図であり、(a)はアンテナ取付部材と支持具との装着完了時の取り付け状態を説明するための上面図、(b)はアンテナ取付部材と支持具の可動範囲を説明するための上面図である。
【図10】(a)はアンテナ支持装置を使ってアンテナ装置をアンテナマストに取り付けた状態を説明するための上面図、(b)はアンテナ支持装置を使ってアンテナ装置を壁面に取り付けた状態を説明するための上面図である。
【図11】アンテナ取付部材と支持具の取り付け状態を説明するための上面図であり、(a)はアンテナ取付部材と支持具の変形例であり、(b)は支持具の変形例である。
【図12】誘導部のない支持部の構成例を表す説明図であり、(a)はアンテナ取付具に支持具を取り付けた状態を側面から見た断面図、(b)はアンテナ取付具と支持具の組み付けが完了した状態を側面から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に本発明の実施形態について説明する。
本実施形態のアンテナ支持装置60は、アンテナ装置1を壁面等で代表される取付面へ取り付けができるばかりでなく、アンテナマストやベランダ等の支柱に取り付けができるなど、多様な設置場所に取り付けるように構成されている。
【0043】
なお、以下の説明で方向を示す場合は、特に明記しない限りアンテナ装置1の設置方向を基準とし、アンテナ装置1の正面側が前側、若しくは前面と記載し、アンテナ装置1の後面側が後側、若しくは背面と記載する。
【0044】
つまり、図1における分解斜視図において、図の斜め右上側(奥行き側)が前側、若しくは前面であり、斜め左下側(手前側)が後側、若しくは背面とする。また、図の上が上方、若しくは上側、図の下が下方、若しくは下側とする。
【0045】
図1に示すように、アンテナ支持装置60は、アンテナ装置1の背面1aに一体的に設けられ、アンテナ装置1を保持するために用いられる支持具10と、アンテナ装置1の取り付け対象である取付対象物に取り付けられるアンテナ取付具50と、からなる。
【0046】
また、アンテナ取付具50は、支持具10(延いては、アンテナ装置1)を支持すると共に、アンテナ装置1を取付対象物に添え付けるように構成されたアンテナ取付部材20と、アンテナ取付部材20に装着され、支持具10をアンテナ取付部材20に対して回動自在に連結するために用いられる連結手段30と、アンテナ取付部材20の背面側に備えられ、アンテナ装置1を取付対象物に取り付けるために用いられる取付手段(詳細は後に説明する)と、から構成されている。
【0047】
まず連結手段30について説明する
図1に示すように、連結手段30は、少なくとも先端部から所定長Htに亘る範囲に雄ネジ部30aが形成された、所定の長さの軸部30bを有する半ネジタイプのボルト体である。
【0048】
より詳しく言えば、このボルト体に設けられた雄ネジ部30aの外径寸法はWtであり、軸部30bの外径寸法は、雄ネジ部30aの外径寸法Wtより僅かに短いWsとなるように構成されている。
【0049】
なお、以下の説明では、連結手段30としてボルト体を用いた例を示したが、支持具10とアンテナ取付具50を回動自在に蝶着できれば、この実施形態に限定されることは無い。
【0050】
次に支持具10について図1及び図2を基に説明する。
支持具10は、アンテナ装置1を構成しているアンテナ素子(図示されていない)を収納する、例えば合成樹脂材からなるケース本体と一体的に形成されており、アンテナ装置1の背面1aより後側に向かって突出するように設けられている。
【0051】
具体的には、支持具10は、上側と下側に平行状態で対向配置された一対の端面11a・11bを有する支持体11と、支持体11における一方の端面11aと他方の端面11bの間を貫通するように設けられた支持孔12と、一対の端面11a・11bから上方及び下方に突出するように形成された配設位置制限手段16A・16Bと、から構成されている。
【0052】
なお、本実施形態では、支持具10をアンテナ装置1の背面1aの下側に備えた例を示したが、背面1aであれば何れに設けても良い。また、その形成方向も実施形態に限定されるものではないし、支持具10はアンテナ装置1とは別体で構成し、アンテナ装置1の背面にネジ等で固定するようにしてもよい。
【0053】
支持孔12は、それぞれ一対の端面11a・11bの間を貫通する3つの孔、すなわち、スライド孔13、貫通孔15、及び連通孔14にて構成されている。
このうち、スライド孔13は、アンテナ装置1の壁面に沿って長尺状に形成された横長の孔であり、端面11a・11bに直交する方向に軸線を有するように形成されている。
【0054】
また、貫通孔15は、スライド孔13の中央部よりアンテナ装置1側に設けられた略円形の孔であり、端面11a・11bに直交する方向に軸線を有するように形成されている。
【0055】
また、連通孔14は、貫通孔15とスライド孔13とを連通するように形成された縦長の孔であり、端面11a・11bに直交する方向に軸線を有するように形成されている。
つまり、支持孔12は、これらの3つの孔でもって、断面形状が全体略T字形状となるように構成されている。
【0056】
このように構成された支持孔12は、支持孔12内における第1中間位置と第2中間位置によって区分される、軸線方向に配列された3つの支持孔部から構成されている。
すなわち、図1及び図2に示されているように、図の上側の端面11aから下向きに所定長となる第1中間位置までの範囲の上側支持孔部12Aと、図の下側の端面11bから上向きに所定長となる第2中間位置までの範囲の下側支持孔部12Cと、第1中間位置と第2中間位置との間に存置する中間支持孔部12Bと、が軸線方向に連設するように配置されている。
【0057】
まず、上側支持孔部12Aについて図2(a)、(d)、(f)を基に詳しく説明する。 支持孔12の内面には、支持孔12の上側の端面11a側の開口端12aから所定長だけ下方である第1中間位置に、支持孔12の軸線に直交する平面に平行な方向に、多くともスライド孔13と連通孔14の内周面(言い換えれば、支持孔12の内周面の内、少なくとも貫通孔15の内周面を除く部分)に亘って段差12abが形成されている。
【0058】
この段差12abの位置が第1中間位置であり、少なくとも支持体11の上側の端面11aからこの段差12abが形成された第1中間位置までの範囲が、上側支持孔部12Aとなる。
【0059】
なお、この段差12abの存在によって、段差12ab部分の間隙の幅寸法(内径寸法)W2は、上側支持孔部12A部分の間隙の幅寸法(内径寸法)W1と比べ、僅かに狭くなるように構成されている。
【0060】
この段差12abの形成位置、つまり、第1中間位置の寸法は、上側の端面11aにおける支持孔12の開口端12aから、少なくともボルト体30の雄ネジ部30aが形成された範囲の寸法Htより大きい寸法Hsとなる位置に形成されている。
【0061】
そして、上側支持孔部12Aは、支持孔12を構成する3つの孔(スライド孔13、連通孔14、貫通孔15)における、上側支持孔部12A部分に相当する部分(スライド孔13A、連通孔14A及び貫通孔15A)のそれぞれの間隙の幅寸法(内径寸法)は、ボルト体30の雄ネジ部30aの外径寸法Wtより僅かに大きいW1となるように形成されている。
【0062】
次に、下側支持孔部12Cについて図2(c)、(d)、(f)を基に詳しく説明する。 支持具10には、支持具10を構成する支持体11の下方側中央部分に、下側の端面11bから支持孔12の軸線方向に沿う方向に所定の大きさで形成された凹状の切欠部18が形成されている。
【0063】
この切欠部18は、支持体11の表面11cに形成される挿入口18aから、スライド孔13及び連通孔14を介して貫通孔15と連通するように形成されている。
また、切欠部18は、その高さが、支持体11の下側の端面11bから上側に向かって、少なくともボルト体30の雄ネジ部30aが形成された範囲の所定長Htより大きい寸法Hgとなる大きさに、支持体11を凹状に切り欠くように形成されている。
【0064】
また切欠部18の幅(若しくは内径)は、ボルト体30の雄ネジ部30aの外径寸法Wtより僅かに大きい寸法W1となるような大きさに形成されている。
本実施形態では、少なくとも下側の端面11bから寸法Hgだけ上方となる位置が、支持孔12の内周面における第2中間位置であり、支持体11の下側の端面11bから第2中間位置までの範囲が、支持孔12における下側支持孔部12Cとなる。
【0065】
つまり、下側支持孔部12Cは、支持孔12を構成する3つの孔(スライド孔13、連通孔14、貫通孔15)の内、連通孔14及び貫通孔15の下側支持孔部12C部分に相当する部分(連通孔14C及び貫通孔15C)のそれぞれの間隙の幅寸法(内径寸法)が、ボルト体30の雄ネジ部30aの外径寸法Wtより僅かに大きい寸法W1となるように形成されていることになる。
【0066】
また、スライド孔13の下側支持孔部12C部分に相当するスライド孔13Cの間隙の幅寸法(内径寸法)は、切欠部18を除いて、ボルト体30の軸部30bの外径寸法Wsより大きく、且つ、ボルト体30の雄ネジ部30aの外径寸法Wtと略同じか、若しくは、僅かに短い寸法であるW2となるように形成されている。
【0067】
このため、下側支持孔部12Cは、挿入口18aから、連通孔14と貫通孔15の下側支持孔部12C部分である連通孔14C及び貫通孔15Cに至る切欠部18の間隙の幅寸法(内径寸法)がW1となり、スライド孔13の下側支持孔部12C部分に相当するスライド孔13Cの間隙の幅寸法(内径寸法)がW2となる、2つの異なる幅寸法を持つことになる。
【0068】
次に、中間支持孔部12Bについて図2(b)、(d)、(e)、(f)を基に詳しく説明する。
本実施形態では、第1中間位置である段差12abと第2中間位置である切欠部18との間に位置するのが中間支持孔部12Bである。
【0069】
この中間支持孔部12Bは、支持孔12を構成する3つの孔(スライド孔13、連通孔14、貫通孔15)の内、スライド孔13の中間支持孔部12B部分に相当するスライド孔13Bの間隙の幅寸法が、ボルト体30の軸部30bの外径寸法Wsより大きく、且つ、ボルト体30の雄ネジ部30aの外径寸法Wtと略同じか、若しくは、短い寸法であるW2となるように形成されている。
【0070】
また、貫通孔15の中間支持孔部12B部分に相当する貫通孔15Bの内径は、ボルト体30の雄ネジ部30aの外径寸法Wtより大きい寸法W1となるような大きさに形成されている。
【0071】
また、中間支持孔部12B部分に相当する連通孔14Bの内壁には、第2中間位置から第1中間位置に向かって、第2中間位置からの寸法が、スライド孔13B側から貫通孔15Bにかけて順次増大するよう、傾斜が付けられた段差34aが形成されている。
【0072】
そして、この段差34aと、この段差34aを介して設けられた相互に対向する平面34bとにより、誘導部34が構成される。なお、誘導部34の作用については後に詳述する。
【0073】
つまり、中間支持孔部12B部分に相当する連通孔14Bは、誘導部34を構成する平面34b部分がなす空間の間隙の幅寸法が、切欠部18の間隙の幅寸法と同じ寸法W1である。また誘導部34を除く連通孔14Bの間隙の幅寸法は、ボルト体30の軸部30bの外径寸法Wsより大きく、且つ、ボルト体30の雄ネジ部30aの外径寸法Wtと略同じか、若しくは、短い寸法であるW2となる。
【0074】
これにより、中間支持孔部12Bは、スライド孔13及び連通孔14の中間支持孔部12B部分に相当するスライド孔13B及び連通孔14B(誘導部34部分を除く)の間隙の幅寸法(内径寸法)がW2である孔と、貫通孔15の中間支持孔部12B部分に相当する貫通孔15B及び誘導部34の間隙の幅寸法(内径寸法)がW1である、2つの異なる間隙の幅寸法を持つことになる。
【0075】
以上まとめると、本実施形態に係る支持孔12によると、支持孔12を構成するスライド孔13の間隙の幅寸法(内径寸法)は、上側支持孔部12A部分のスライド孔13Aが寸法W1、中間支持孔部12B部分のスライド孔13Bが寸法W2、下側支持孔部12C部分のスライド孔13Cが寸法W2である。そして、スライド孔13Bとスライド孔13Cの間隙の幅寸法(内径寸法)は、スライド孔13Aより狭い寸法となる。
【0076】
また、連通孔14の間隙の幅寸法(内径寸法)は、上側支持孔部12A部分の連通孔14Aが寸法W1、中間支持孔部12B部分の誘導部34を除く連通孔14Bの殆どの部分の間隙が寸法W2、下側支持孔部12C部分の連通孔14Cが寸法W1である。
【0077】
そして、中間支持孔部12B部分の連通孔14Bの間隙の幅寸法(内径寸法)は、殆どの部分において連通孔14A、14Cの間隙の幅寸法(内径寸法)より狭くなる。
また、貫通孔15の内径寸法は、上側支持孔部12A部分の貫通孔15Aが寸法W1、中間支持孔部12B部分の貫通孔15Bが寸法W1、下側支持孔部12C部分の貫通孔15Cが寸法W1であり、それぞれ同じ寸法となる。
【0078】
次に、図1及び図2を用いて本実施形態における配設位置制限手段16A・16Bについて詳しく説明する。
配設位置制限手段16A・16Bは、それぞれ支持体11における一対の端面11a・11bにあって、当該端面から上方若しくは下方に突出するように設けられている。
【0079】
この配設位置制限手段16A・16Bは、支持具10を、アンテナ取付部材20によって支持した状態で、アンテナ取付部材20の配設状態(言い換えれば、支持具10の回動)に制限を加える手段であり、端面11a・11bに、支持孔12の軸線に直交する方向で、アンテナ装置1の背面1aに沿う方向に配列するように設けられている。
【0080】
なお、以下の説明では、一方の端面11aに形成された配設位置制限手段16Aについてその構成と作用を説明し、他方の端面11bに形成された配設位置制限手段16Bについては同じ構成であるので詳しい説明は省略する。
【0081】
また、本実施形態では、配設位置制限手段を一対の端面11a・11bのそれぞれに設けた例を示したが、何れか一方側の端面に設ける構成でもよいことは言うまでもない。
配設位置制限手段16Aは、一方の端面11aの略中央部に配置された凹部であって、後方側を開口するように形成された凹状の受入部16Aaと、受入部16Aaの開口端部から両側外方向に向かって連設するように備えられた壁状の止着部16Abと、止着部16Abより更に外側に連設され、その形状が後方側を開口した湾曲状となるように形成された回動部16Acと、から構成されている。なお、配設位置制限手段16A・16Bによる作用については後に詳述する。
【0082】
また、支持体11の表面11cの中間位置には、表面11cから前方側に向かうように形成された収納穴11d・11dが形成されている。
この収納穴11d・11dは、後述するアンテナ取付部材20に装着された挟持金具40に備えられた締着ボルト45(図1参照)と対向する位置に形成されており、締着ボルト45の自由端部45aを挿抜自在に受入れるほどの奥行きと内径を有する。
【0083】
次に本実施形態に係るアンテナ支持装置50を構成するアンテナ取付部材20について図1及び図3を用いて説明する。なお、図3において破線で示したボルト体30は、ボルト体30の存在を模式的に示したものであり、アンテナ取付部材20に装着する状態を示すために表示したものである。
【0084】
本実施形態に係るアンテナ取付部材20は、略4角形状に形成された本体21の背面に、アンテナ装置1を取付対象物に取り付けるための取付面22を備える。
また、本体21の前面には、本体21の対向する一対の辺から一体的に突設され、支持具10において対向配置された一対の端面11a、11bと摺動挿着可能なように、一対の端面11a、11bの配列位置に対応する間隔で設けられた一対の当付片21a、21bが形成されている。
【0085】
そしてこの当付片21a、21bには、アンテナ取付部材20に支持具10を取り付けたときに、支持具10に形成された支持孔12を挟んで相互に対向するように形成された挿通孔29A、29Bが設けられている。
【0086】
また、各挿通孔29A、29Bの内周面には、ボルト体30の雄ネジ部30aに対応する雌ネジ部29a、29bが形成されている。
更に、一対の当付片21a、21bには、挿通孔29A、29Bよりも先端側に向けて突出するように形成された、全体略四角形上に形成された係止突片26A、26Bが、当付片21a、21bの先端部と重合するように一体的に備えられている。
【0087】
なお、本実施形態では、係止突片26A、26Bは当付片21a、21bの両方に備えた例を示したが、少なくとも配設位置制限手段16が備えられた端面に対応する側の当付片に備えさせればよい。
【0088】
アンテナ取付部材20の取付面22について更に詳しく説明する。
図1及び図3に良く示されているように、本体21の取付面22には、取付面22の略中央部を前面側に折り返すように凹ませた凹部が形成されている。
【0089】
この凹部は、図1に示されている、取付対象物の一つである、アンテナマスト5に代表される支柱に当て付けて取り付けるためのアンテナマスト当接部24である。
そして、このアンテナマスト当接部24の両側にはネジ孔25が形成されており、このネジ孔25に、アンテナマスト5を挟持する周知の挟持金具40に備えられた締着ボルト45を緊締することによって、このアンテナ取付部材20はアンテナマスト5やベランダ等の支柱に固着することができる(図10(a)参照)。
【0090】
また、アンテナマスト当接部24の両側にあって、ネジ孔25が形成された平面は、このアンテナ取付部材20を、取付対象物の他の実施例である、例えば構造物等の壁面6に代表される平面状の取付面に取り付けるための当付部23である。アンテナ取付部材20の壁面6への取り付けは、当付部23を壁面に当接させた状態で、木ネジ等を当付部23に形成された取付孔27、28等の前面側から壁面6に螺着することで行われる(図10(b)参照)。
【0091】
なお、本実施形態では、この当付部23とアンテナマスト当接部24とで、本体21に備えられた取付面22を構成している。また、少なくとも取付面22と挟持金具40とで請求項に記載の取付手段を構成している。
【0092】
このように構成された支持具10と、アンテナ取付具50の組み付け手順について図4から図8を用いて説明する。
支持具10とアンテナ取付具50の組み付けは、図4に示されているように、アンテナ取付具50の構成要素である、アンテナ取付部材20に設けられた他方(本実施形態では、図の下側)の当付片21bに備えられた挿通孔29Bの雌ネジ部29bに対して、ボルト体30の雄ネジ部30aを螺合して、ボルト体30が他方の当付片21bから垂下した状態となるように装着することから始める。この時、ボルト体30が他方の当付片21bの内側(図の上側)に突出する部分の最大寸法は、雄ネジ部30aが形成された寸法Htとなる。
【0093】
支持具10とアンテナ取付具50の組み付けについて更に詳しく説明する。アンテナ装置1を壁面6に取り付ける作業は、アンテナ取付具50の構成上、まずアンテナ取付具50を壁面6に固定してからの作業となり、アンテナ装置1をアンテナマスト5等の支柱に取り付ける場合と手順が異なる。その為、ボルト体30を、予めアンテナ取付部材20における他方の当付片21bから垂下した状態となるように装着しておいて、この状態のアンテナ取付具50に対して支持具10を装着できれば、支持具10の装着作業が簡単になる。
【0094】
その為、支持具10の下方位置には、図4に示されているように、挿入口18aから貫通孔15Cに至る切欠部18が形成されており、支持具10をアンテナ取付具50に装着するに当たって、アンテナ取付部材20に垂下するように装着された状態のボルト体30の雄ネジ部30aが、切欠部18において遊挿自在となるから、ボルト体30の雄ネジ部30aの存在があっても、支持具10とアンテナ取付具50との装着を邪魔することがない。
【0095】
つまり、支持具10を図の矢印F方向に移動させるだけで、ボルト体30が垂下した状態で装着されたアンテナ取付部材20の当付片21a、21bに対して、支持具10の端面11a、11bを挟み込むようにして摺動接触させつつ装着することができるので、例えば、支持具10をアンテナ取付部材20に装着した状態で、アンテナ装置1を保持しつつ、ボルト体30をアンテナ取付部材の当付片21bに設けられた挿通孔29Bの雌ネジ部29bに対して螺合するといった一連の手間を削減することができる。
【0096】
一方、アンテナ装置1をアンテナマスト5のような支柱に取り付ける場合は、アンテナマスト5に取り付ける前に、支持具10とアンテナ取付部材20(詳しくは、アンテナ取付具50)を装着するのであるが、この時、支持体11の表面11cには、アンテナ取付具50に締着状に装着された、挟持金具40の締着ボルト45の自由端部45aを挿抜自在に収納する収納穴11dが形成されているので、支持具10をアンテナ取付具50に装着するに当たって、締着ボルト45の存在が邪魔になることが無い。この構成によると、支持具10をアンテナ取付具50に装着した状態で、締着ボルト45の自由端部45aが収納穴11dに収納されるため、アンテナ取付具50が支持具10から後方側に突出する寸法(更に言えば、アンテナ装置1と合わせた奥行き寸法)を小さくできる。また、製品出荷時に使用する梱包材を小さくすることができるなど、コスト削減が可能となる。
【0097】
この時の支持具10とアンテナ取付具50との装着の状態について、図6(b)を用いて詳しく説明する。
なお、図を簡単にするため、図6(b)にはアンテナ取付具50の存在を示すボルト体30だけを表示した。
【0098】
図6(b)に示されているように、支持具10を、図に示したボルト体30に対して矢印の(1)方向に移動させるようにして装着すると、アンテナ取付部材20の他方の当付片21bに垂下した状態に装着されたボルト体30の雄ネジ部30bは、切欠部18の存在によって、図6(b)の左右方向に遊挿自在に装着されることがわかる。
【0099】
つまり、支持具10(即ち、アンテナ装置1)は、アンテナ取付具50に対して前後方向(図6(b)の左右方向)にスライド自在に装着される。
一方、スライド孔13の下側支持孔部12C部分に相当するスライド孔13Cの間隙の幅寸法(内径寸法)W2が、ボルト体30の雄ネジ部30aの外径寸法Wtと同じ寸法、若しくは、僅かに短い寸法となるように形成されている。
【0100】
このため、支持具10を図に示したボルト体30に対して矢印の(2)方向に移動させるようにしても、スライド孔13Cは、ボルト体30の雄ネジ部30bの浸入を阻止することがわかる。
【0101】
つまり、ボルト体30がアンテナ取付部材20に垂下した状態では、支持具10(延いては、アンテナ装置1)は、アンテナ取付部材20に対して、スライド孔13Cに沿うような、左右方向(図6(b)の上下方向)へのスライドが制限されるように構成されている。
【0102】
このように、支持具10をアンテナ取付具50に対して装着した状態が図5(a)に示されている。
既に詳述したように、本実施形態においては、切欠部18と、支持具10に形成された支持孔12部分を構成する3つの孔(スライド孔13、連通孔14、貫通孔15)の内、貫通孔15だけが、ボルト体30の雄ネジ部30aの外径寸法Wtより僅かに大きい内径寸法W1で形成されている。
【0103】
よって本実施形態では、図5(a)で示された装着状態から、図5(b)で示されたように、垂下された状態にあるボルト体30を、一方の当付片21aに供えられた挿通孔29Aに螺合するためには、他方の当付片21bに備えられた挿通孔29Bの軸線と、貫通孔15の軸線と、一方の当付片21aに備えられた挿通孔29Aの軸線と、を略一致させた時だけ可能となる構成となっている。
【0104】
なお、軸線を略一致させる方法として、支持具10をアンテナ取付部材20に取り付ける際に、ボルト体30の雄ネジ部30aが下側支持孔部12C部分における貫通孔15Cの内周面に当接させるように装着することで実現できる。
【0105】
ところで、本実施形態のボルト体30は、挿通孔29Bの内径に比べボルト30の軸部30bの外径が細径となる半ネジタイプのため、垂下した状態にあるボルト30は、図5(a)において破線で示されたように、挿通孔29Bの孔内で大きく傾動可能な状態に装着される。
【0106】
そこで、本実施形態では、アンテナ取付部材20の当付片21a、21bに形成された挿通孔29A、29Bの軸線と、支持具20に形成された貫通孔15の軸線を略一致させた状態で、ボルト体30を上方に持ち上げようとしたときに、ボルト体30が傾くことのないよう、誘導部34が設けられている。
【0107】
つまり、本実施形態では、ボルト体30の先端が下側支持孔部12C部分における連通孔14Bの下側開口部(言い換えれば、切欠部18の上側内壁)に当接するなどして、ボルト体30の正常な組み付けを妨げることが無いよう、連通孔14Bにおける第2中間位置側に、誘導部34が設けられている。
【0108】
既述したように、誘導部34の形成寸法は、誘導部34を構成する平面34bがなす空間の間隙の幅寸法が、切欠部18の間隙の幅寸法と同じ寸法W1である。
また、誘導部34を除く連通孔14Bの間隙の幅寸法は、ボルト体30の軸部30bの外径寸法Wsより大きく、且つ、ボルト体30の雄ネジ部30aの外径寸法Wtと略同じか、若しくは、短い寸法W2となるように形成されている。
【0109】
また、誘導部34の段差34aが、第2中間位置から第1中間位置に向かうに従って、中間支持孔部12B部分における貫通孔15Bに収束するように傾斜が付けられるように形成されている。
【0110】
従って、誘導部34は、平面34aがなす空間まではボルト体30の雄ネジ部30a部分を受入れるものの、段差34aが、ボルト体39の雄ネジ部39aに対して連通孔14Bへの挿入を阻止しつつ、貫通孔15Bの軸線方向への挿入を誘導する。
【0111】
このため、ボルト体30を一方の当付片21aに形成された挿通孔29Aに螺合する際の作業を容易に行うことができる。
この時の支持具10とアンテナ取付部材20(言い換えれば、アンテナ取付具50)との装着の状態について、図6(a)及び図7を基に詳しく説明する。
【0112】
なお、この図7にはアンテナ取付部材20に備えられた他方側の当付片21bと、当付片21bに装着されたボルト体30の存在を示したが、図6(a)にはアンテナ取付具50の存在を示すボルト体30だけを表示した。
【0113】
図7(b)のように、ボルト体30がアンテナ取付部材20に備えられた他方側の当付片21bから垂下した状態から、図6(a)、図7(a)及び図7(c)のように、ボルト体30を貫通孔15Bに挿入しようとして、ボルト体30が傾いた場合を考える。
【0114】
この場合、誘導部34の平面34bがなす、間隙の幅寸法がW1である空間が、ボルト体30の雄ネジ部(外径寸法Wt)30aを受入れる。
ところが、間隙の幅寸法がW2となるように対向配置した段差34aに雄ネジ部30aの先端部が当接して、段差34aがボルト体30の雄ネジ部30aを図7(a)の矢印U方向に摺動接触させながら誘導するから、ボルト体30は正しく貫通孔15Bの軸線方向に挿入される。
【0115】
次に、ボルト体30が装着された状態について図5(b)及び図8を基に説明する。
既述したように、上側支持孔部12Aの形成範囲となる第1中間位置、すなわち、段差12abは、支持体11の一方の端面11aにおける支持孔12の開口端12aから、少なくともボルト体30の雄ネジ部30aが形成された範囲の寸法Htより大きい寸法Hsとなる位置に形成されている(図4参照)。
【0116】
また、上側支持孔部12A部分を構成する3つの孔(スライド孔13A、連通孔14A、貫通孔15A)の間隙の幅寸法(内径寸法)が、全てボルト体30の雄ネジ部30aの外径寸法Wtより大きい寸法W1で形成されている。
【0117】
このため、支持具10がアンテナ取付具50に対して装着が完了した(すなわち、ボルト体30の装着が完了した)状態では、図8(a)に示されているように、ボルト体30の雄ネジ部30a部分は、貫通孔15Aの内部空間において遊挿状態に装着されるばかりでなく、図中におけるボルト体30Aの存在が示すように、上側支持孔部12Aを構成する連通孔14Aからスライド孔13Aに至る内部空間においても遊挿自在となるように装着される。
【0118】
また、中間支持孔部12B部分を構成する3つの孔(スライド孔13B、連通孔14B、貫通孔15B)の間隙の幅寸法(内径寸法)は、誘導部34における平面34aがなす空間部分(寸法W1)及び貫通孔15B(寸法W1)を除いて、ボルト体30の軸部30bの外径寸法Wsより大きく、且つ、ボルト体30の雄ネジ部30aの外径寸法Wtと略同じか、若しくは、短い寸法W2となるように形成されている。
【0119】
このため、支持具10がアンテナ取付具50に対して装着が完了した状態では、図8(b)に示されているように、ボルト体30の軸部30b部分は、貫通孔15Bの内部空間において遊挿状態に装着されるばかりでなく、図中におけるボルト体30Aの存在が示すように、中間支持孔部12Bを構成する連通孔14Bからスライド孔13Aに至る内部空間においても遊挿自在となるように装着される。
【0120】
また、下側支持孔部12C部分を構成する3つの孔(スライド孔13C、連通孔14C、貫通孔15C)の間隙の幅寸法(内径寸法)の内、切欠部18を構成する連通孔14C及び貫通孔15Cを除くスライド孔13Cだけが、ボルト体30の軸部30bの外径寸法Wsより大きく、且つ、ボルト体30の雄ネジ部30aの外径寸法Wtと略同じか、若しくは、短い寸法W2となるように形成されている。
【0121】
このため、支持具10がアンテナ取付具50に対して装着が完了した状態では、図6(c)におけるボルト体30Aが示すように、ボルト体30の軸部30b部分は、下側支持孔部12Cを構成するスライド孔13Cの内部空間において遊挿自在となるように装着される。
【0122】
つまり、本実施形態では、支持具10(延いては、アンテナ装置1)を、アンテナ取付具50に対して装着が完了した状態(すなわち、ボルト体30が緊締されていない状態で螺合された支持具とアンテナ取付具50との装着状態。以下、この装着状態を第1装着状態と記載する。)において、誘導部34の存在があっても、誘導部34はボルト体30の軸部30bに対して貫通孔15Bの軸線に直交する方向への挿通を自在とする幅寸法W2の間隙を有する。
【0123】
このため、支持具10(延いては、アンテナ装置1)はアンテナ取付具50に対して、支持孔12に沿わせながら、図6(a)の矢印の(3)方向、(4)方向へ自在にスライド可能となる。
【0124】
よって、支持具10の回動の回転軸であるボルト体30の位置を、支持孔12の形成範囲内の何れの位置に移動させることができ、アンテナ装置の方向調整が任意の位置でできるようになる。
【0125】
ここで、図9乃至図11を基に、支持具10(延いては、アンテナ装置1)とアンテナ取付具50を装着した状態における、アンテナ取付部材20と配設位置制限手段16A・16Bとの関係について詳しく説明する。
【0126】
なお、以下の説明では、アンテナ取付部材20と配設位置制限手段16との関係の説明を簡単にするため、一方の端面11a側に形成された配設位置制限手段16Aの例を用いて説明し、他方の端面11b側については同様な構成であるため説明を省略する。
【0127】
既述したように、支持具10とアンテナ取付具50の取り付け操作は、アンテナ取付部材20に突設されている他方の当付片21bに備えられた挿通孔29Bの軸線(言い換えれば、当付片21に垂下した状態に装着されたボルト体30の軸線)と、貫通孔15の軸線と、一方の当付片21aに備えられた挿通孔29Aの軸線と、を略一致させた時だけ行なうことができる。
【0128】
そして、その位置合わせは、ボルト体30の雄ネジ部30aを下側支持孔部12C部分の貫通孔15Cの内周面に当接させることで行なうことができる。
更に本実施形態のアンテナ支持装置60では、支持具10がアンテナ取付具50に対して装着が完了した第1装着状態において、図9(a)に示されているように、少なくとも、アンテナ取付部材20における一方の当付片21aの先端部に備えられた係止突片26Aと、支持体11の一方の端面11aに形成された配設位置制限手段16Aの構成要素である受入部16Aaとが嵌合するように構成されている。
【0129】
また、この第1装着状態において、他方の当付片21bに備えられた挿通孔29Bの軸線(言い換えれば、当付片21に垂下した状態に装着されたボルト体30の軸線)と、貫通孔15の軸線と、一方の当付片21aに備えられた挿通孔29Aの軸線とを一致させるように構成しておくことによって、雄ネジ部30aを貫通孔15Cの内周面に当接させる方法に加え、より正確に軸線を一致させることができ、しかも誘導部34の存在と合わせ、操作性の優れた構成となっている。
【0130】
次に、図8(a)、図9(a)及び図11(a)を用いて、アンテナ取付部材20における一方の当付片21aの先端部に備えられた係止突片26Aと、配設位置制限手段16Aの構成要素である止着部16Abとの関係について説明する。
【0131】
なお、図11(a)に示す変形例のアンテナ取付部材200とアンテナ取付部材20との違いは、係止突片の有無であり、アンテナ取付部材200には係止突片は具備されていない。
【0132】
また、図11(a)に示す変形例の支持具10Aと支持具10との違いは、配設位置制限手段16の有無であり、支持具10Aには、配設位置制限手段は具備されていない。
図11(a)に示されている実施形態では、係止突片も配設位置制限手段も具備されていないから、図11(a)において実線で示された第1装着状態にあるアンテナ取付部材200は、支持具10Aに対して、例えば二点鎖線で示したアンテナ取付部材200´まで回動可能できる。
【0133】
また、一点鎖線で示された装着状態(すなわち、スライド孔13の中間位置にボルト体を配設した時の装着状態(以下の説明では、支持具をスライド孔の中間位置に装着した状態を第2装着状態と記載する。)にあるアンテナ取付部材200Aの場合は、支持具10Aに対して図のように回動させることができる。
【0134】
ここで、この変形例のアンテナ取付部材200を、取付対象物である壁面に取り付ける場合を考えると、例えば、第2装着状態にあるアンテナ取付部材200Aの回動角度は、アンテナ装置1の側面1bの端部(言い換えれば、背面1aの両側端部)が、図11(a)の6aで示した仮想の壁面位置6aに当接するまでの範囲(図11(a)において示された角度α=例えば45°)となる。
【0135】
一方、第1装着状態にあるアンテナ取付部材200の回転角度は、アンテナ取付部材200が支持具10Aに当接するまでの範囲となる。
すなわち、変形例のアンテナ支持装置によれば、支持具10A(延いては、アンテナ装置1)は、アンテナ取付部材200に対して、支持具10Aに備えられた支持孔12の何れの位置においても回動させることができるので、アンテナ装置1の方向調整には便利である。
【0136】
しかしながら、設置場所と電波到来方向との位置関係、若しくは、デジタル放送受信ならではの特性等によって、回動角度(すなわち、アンテナ装置の方位角調整範囲)が狭い状態で制限されてしまうと、アンテナ装置1の方向調整を行うにあたり、一度の配設操作だけでは正確に方向調整することができず、更なる支持具10に対する調整操作が必要となる場合がある。
【0137】
詳しく説明すると、地上デジタル放送の受信の場合、アンテナ装置1の方向調整は、アンテナ装置1によって受信される地上デジタル放送信号の受信レベル(C/N)が最大となる方向に調整するだけでなく、測定器等を使って放送信号の信号品質(上述したBER、MER等)などの確認を行なうのが望ましいからである。
【0138】
つまり、電波の伝播経路の環境条件などによって、例えば、受信レベルが高くても信号品質の良くない電波が到来することがあるので、アンテナ装置1の方向調整において、アンテナ装置1を、地上デジタル放送信号を送信する電波塔の方向に正確に向けることが、アンテナ装置1を正しい方向(受信レベル、BER、MERが全て良好な値が得られる方向)に向けたこととはならないことがあるからである。
【0139】
その為、アンテナ支持装置は、アンテナ装置1を物理的(電波塔の方向)に正確な方位角で方向調整ができるばかりでなく、当該物理的な方位角を基準として、更に左右方向に方向調整が行なえ、電気的に正しい方向を探し出すことができるようにしておく必要性を考慮すると、アンテナ支持装置の方向調整角度はできる限り広い範囲をカバーできるのが望ましい。
【0140】
そこで、本発明の実施形態に係るアンテナ支持装置60は、図9(a)に示すように、支持具10に配設位置制限手段を備えさせることによって、第1装着状態では、少なくとも係止突片26Aと受入部16Aaが嵌合し、支持具10は回動できない構成となっている。
【0141】
一方、図8(a)に示されているように、第1装着状態から、支持具10を図の矢印の(3)方向から矢印の(4)方向にスライドさせ、スライド孔13の中間位置にボルト体30Aを配設した第2装着状態では、図9(a)において一点鎖線で示された仮想のアンテナ取付部材20Aの存在が示すように、係止突片26Aの先端と止着部16Abとが沿うように対向配置される。
【0142】
そこで、第1装着状態と第2装着状態では、支持具10は、アンテナ取付部材20に対して、回動させることができない構成としている。
つまり、支持具10がアンテナ取付部材20に対して、回動角度の範囲があまり大きく取れない状態(言い換えれば、最大の回動角度の範囲で回動できるようになるまで)では、アンテナ装置1の方向調整ができない構成とする。
【0143】
この結果、アンテナ装置1の方向調整にかかる操作において、アンテナ装置1を物理的な方位角に正確に向けても、電気的に正しい方向に向けることができない状態となる可能性を小さくすることができ、延いてはアンテナ装置1の設置工事の時間短縮が実現できる。
【0144】
次に、図9(b)及び図10(b)を用いて、係止突片26Aと、配設位置制限手段16Aの構成要素である回動部16Acとの関係について説明する。
図9(b)に示されているように、支持具10を図の矢印S方向にスライドさせ、図中の破線で示されたアンテナ取付部材20Bの位置にしたとき、具体的には、アンテナ取付部材20Bのボルト体30Bの配設位置が、スライド孔13における図の上側の終端部13Dに位置させた装着状態(以下の説明では、このスライド孔13の終端部13Dに装着した状態を第3装着状態と記載する。)では、支持具10を回動させる間、回動部16Acの空間が係止突片26Aの先端部を受け入れる。
【0145】
このため、第3装着状態において、支持具10はアンテナ取付部材20に対して、終端部13Dを回転軸として回動させることができる(図の下側に位置する二点鎖線で示されたアンテナ取付部材20Cも同様に装着される)。
【0146】
つまり、本実施形態におけるアンテナ支持装置60によれば、図9(b)に示されているように、第3装着状態では、スライド孔13の終端部13Dの軸線より外側(図の上側)に位置するアンテナ装置1の突出部分の寸法L1が、図11(a)において示されている第2装着状態における突出部分の寸法L2より短くすることができるから、支持具10の回動角度θ(図9(b)において示された角度θ=例えば60°)を大きくすることができる。
【0147】
従って、図10(b)の破線で示したアンテナ装置1B、二点鎖線で示したアンテナ装置1Cのように、壁面6等への設置であっても、アンテナ装置の方向調整範囲を大きくできるから、壁面の配設方向と電波の到来方向や到来電波の信号品質等によって生じる多様な設置条件にも対応可能となる。
【0148】
また、方向調整範囲が大きいことから、無駄な調整操作を無くすことができ、アンテナ装置の設置工事の時間短縮が実現できる。つまり、本実施形態によれば、極めて利便性の良いアンテナ支持装置60を提供できる。
【0149】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の態様をとることができる。
例えば、図11(b)で示したように、本発明の実施形態であるアンテナ取付部材20と、支持具10の変形例である支持具10Bとの組み合わせであっても良い。支持具10Bと支持具10との違いは配設位置制限手段の構成である。
【0150】
この異なる実施形態の支持具10Bに備えられた配設位置制限手段160Aは、図11(b)に示されているように、係止突片26Aを受け入れて嵌合する受入部160Aaを有するものの、上述した配設位置制御手段16Aには具備された止着部と回動部を備えていない構成となっている。
【0151】
すなわち、この変形例の支持具10Bとアンテナ取付部材20との第1装着状態は、係止突片26Aが受入部160Aaに嵌合することで、支持具10B(延いては、アンテナ装置1)はアンテナ取付部材20に対して確りと正対し、且つ、低背な状態で固定配置できる。
【0152】
一方、第2装着状態(図の破線で示されたアンテナ取付部材20A)及び第3装着状態(図の二点鎖線で示されたアンテナ取付部材20C)の両方の状態では、支持具10B(延いては、アンテナ装置1)はアンテナ取付部材20に対して回動自在に固着できる。
【0153】
この実施例によれば、スライド孔13における任意の位置で方向調整が可能となるので、アンテナ装置1が構造物等の壁面から突出する寸法を更に短くすることができる。
また、上記実施形態では、支持体11の連通孔14には、段差34aを傾斜させることによって誘導部34を設けるものとしたが、図12に示すように、この誘導部34は必ずしも形成する必要はない。
【符号の説明】
【0154】
1…アンテナ装置、1a…背面、1b…側面、5…アンテナマスト、6…壁面、10…支持具、10A・10B…支持具(異なる実施形態)、11…支持体、11a・11b…端面、11c…表面、11d…収納穴、12…支持孔、12A…上側支持孔部、12B…中間支持孔部、12C…下側支持孔部、12a・12b…開口端、12ab…段部、13(13A、13B、13C)…スライド孔、13D…終端部、14(14A、14B、14C)…連通孔、15(15A、15B、15C)…貫通孔、16(16A、16B)…配設位置制御手段、16Aa…受入部、16Ab…止着部、16Ac…回動部、18…切欠部、18a…挿入口、20・20A・20B・20C…アンテナ取付部材、21…本体、21a・21b…当付片、22…取付面、23…当付部、24…アンテナマスト当接部、25…ネジ孔、26(26A・26B)…係止突片、27・28…取付孔、29A・29B…挿通孔、29a・29a…雌ネジ部、30・30A・30B・30C…ボルト体、30a…雄ネジ部、30b…軸部、34…誘導部、34a…段差、34b…平面、40…挟持金具、45…締着ボルト、45a…自由端部、50…アンテナ取付具、60…アンテナ支持装置、160…配設位置制御手段(異なる実施形態)、160Aa…受入部、200・200A…アンテナ取付部材(異なる実施形態)、300・300A…ボルト体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ装置の背面に設けられて、当該アンテナ装置を支持する支持具と、
前記アンテナ装置の取り付け対象となる取付対象物に取付可能に構成され、前記支持具を、ボルト体を介して回動可能に支持するアンテナ取付具と、
を備えたアンテナ支持装置において、
前記支持具は、
互いに平行に配置される一対の端面を有する支持体と、
前記一対の端面に直交する方向に前記支持体を貫通する支持孔と、
を備え、
前記支持孔は、
前記アンテナ装置の背面に沿って配置される長尺状のスライド孔と、該スライド孔と前記アンテナ装置の背面との間に配置される貫通孔と、該貫通孔と前記スライド孔とを連通する連通孔とにより、断面が略T字形状に形成されており、
前記アンテナ取付具は、
前記取付対象物に対する取付手段を備えた基体と、
該基体の前記取付手段とは反対側に突出され、前記支持体を前記一対の端面側から挟持可能な一対の当付片と、
からなるアンテナ取付部材を備え、
前記一対の当付片には、前記支持体を挟持した状態で、前記ボルト体を挿通して前記支持孔に前記ボルト体を貫通させる挿通孔が設けられると共に、該挿通孔の少なくとも一方には、前記ボルト体に形成された雄ネジ部と螺合可能な雌ネジ部が形成されており、
前記ボルト体は、
前記一対の当付片の間隔よりも長く、先端部から所定長の範囲内に前記雌ネジ部と螺合可能な雄ネジ部を備え、しかも、当該雄ネジ部に連設される軸部の径が、当該雄ネジ部の径よりも細径となるように構成された半ネジタイプのボルトからなり、
前記支持孔における前記貫通孔の内径は、前記ボルト体の前記雄ネジ部の外径よりも僅かに大きく、
前記支持孔における前記スライド孔及び前記連通孔の内側に形成される間隙は、
前記支持体の一方の端面から、少なくとも前記ボルト体の前記雄ネジ部が形成された範囲の前記所定長と略同じ若しくは僅かに大きい長さとなる第1中間位置までは、前記ボルト体の前記雄ネジ部の外径よりも僅かに大きく、
前記第1中間位置から前記支持体の他方の端面までは、前記ボルト体の前記雄ネジ部の外径と同じか若しくは小さく、且つ、前記軸部の外径より僅かに大きい、
ことを特徴とするアンテナ支持装置。
【請求項2】
前記アンテナ取付部材において、前記一対の当付片の少なくとも一方には、
前記挿通孔よりも先端側に向けて突出するように係止突片、
が設けられており、
前記支持体において、前記一対の端面の少なくとも一つには、
前記各当付片に設けられた挿通孔が前記支持具の前記貫通孔を挟んで対向するよう、前記アンテナ取付部材と前記支持具とを配置した際に、前記係止突片が挿入される凹状の受入部と、
前記受入部の開口部から両側外方向に向かって連設され、前記ボルト体を前記支持孔及び前記一対の当付片の挿通孔に通して前記雄ネジ部を前記雌ネジ部に螺合させた状態で、前記ボルト体を前記スライド孔に沿ってスライドさせた際に、前記係止突片の先端部に当接されて、前記ボルト体を中心とする前記支持具の回動を制限する止着部と、
当該止着部より両側外方向に配設され、前記ボルト体を前記支持孔及び前記一対の当付片の挿通孔に通して前記雄ネジ部を前記雌ネジ部に螺合させた状態で、前記ボルト体を前記スライド孔の終端部まで移動させた際に、前記ボルト体を中心とする前記支持具の回動を制限することのないよう、前記係止突片を受け入れる回動部と、
からなる配設位置制限手段、
が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ支持装置。
【請求項3】
前記支持具は、
前記支持体の他方の端面から第2中間位置までの間で、当該支持体の他方の端面に形成される挿入口から、前記スライド孔及び前記連通孔を介して前記貫通孔と連通するように形成された切欠部を備え、
該切欠部は、前記支持体の他方の端面から前記第2中間位置までの高さ方向の寸法が、前記ボルト体の前記雄ネジ部が形成された範囲の前記所定長よりも大きく、該高さ方向に直交する幅方向の寸法が、前記ボルト体の雄ネジ部の外径より大きく、
更に、前記連通孔の内壁には、前記切欠部の幅方向の寸法と同じ寸法となって段差を形成する誘導部が形成され、
該誘導部には、前記スライド孔側から前記貫通孔側に向けて、前記支持体の他方の端面から段差までの高さ方向の寸法が順次増大するよう、傾斜が付けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアンテナ支持装置。
【請求項1】
アンテナ装置の背面に設けられて、当該アンテナ装置を支持する支持具と、
前記アンテナ装置の取り付け対象となる取付対象物に取付可能に構成され、前記支持具を、ボルト体を介して回動可能に支持するアンテナ取付具と、
を備えたアンテナ支持装置において、
前記支持具は、
互いに平行に配置される一対の端面を有する支持体と、
前記一対の端面に直交する方向に前記支持体を貫通する支持孔と、
を備え、
前記支持孔は、
前記アンテナ装置の背面に沿って配置される長尺状のスライド孔と、該スライド孔と前記アンテナ装置の背面との間に配置される貫通孔と、該貫通孔と前記スライド孔とを連通する連通孔とにより、断面が略T字形状に形成されており、
前記アンテナ取付具は、
前記取付対象物に対する取付手段を備えた基体と、
該基体の前記取付手段とは反対側に突出され、前記支持体を前記一対の端面側から挟持可能な一対の当付片と、
からなるアンテナ取付部材を備え、
前記一対の当付片には、前記支持体を挟持した状態で、前記ボルト体を挿通して前記支持孔に前記ボルト体を貫通させる挿通孔が設けられると共に、該挿通孔の少なくとも一方には、前記ボルト体に形成された雄ネジ部と螺合可能な雌ネジ部が形成されており、
前記ボルト体は、
前記一対の当付片の間隔よりも長く、先端部から所定長の範囲内に前記雌ネジ部と螺合可能な雄ネジ部を備え、しかも、当該雄ネジ部に連設される軸部の径が、当該雄ネジ部の径よりも細径となるように構成された半ネジタイプのボルトからなり、
前記支持孔における前記貫通孔の内径は、前記ボルト体の前記雄ネジ部の外径よりも僅かに大きく、
前記支持孔における前記スライド孔及び前記連通孔の内側に形成される間隙は、
前記支持体の一方の端面から、少なくとも前記ボルト体の前記雄ネジ部が形成された範囲の前記所定長と略同じ若しくは僅かに大きい長さとなる第1中間位置までは、前記ボルト体の前記雄ネジ部の外径よりも僅かに大きく、
前記第1中間位置から前記支持体の他方の端面までは、前記ボルト体の前記雄ネジ部の外径と同じか若しくは小さく、且つ、前記軸部の外径より僅かに大きい、
ことを特徴とするアンテナ支持装置。
【請求項2】
前記アンテナ取付部材において、前記一対の当付片の少なくとも一方には、
前記挿通孔よりも先端側に向けて突出するように係止突片、
が設けられており、
前記支持体において、前記一対の端面の少なくとも一つには、
前記各当付片に設けられた挿通孔が前記支持具の前記貫通孔を挟んで対向するよう、前記アンテナ取付部材と前記支持具とを配置した際に、前記係止突片が挿入される凹状の受入部と、
前記受入部の開口部から両側外方向に向かって連設され、前記ボルト体を前記支持孔及び前記一対の当付片の挿通孔に通して前記雄ネジ部を前記雌ネジ部に螺合させた状態で、前記ボルト体を前記スライド孔に沿ってスライドさせた際に、前記係止突片の先端部に当接されて、前記ボルト体を中心とする前記支持具の回動を制限する止着部と、
当該止着部より両側外方向に配設され、前記ボルト体を前記支持孔及び前記一対の当付片の挿通孔に通して前記雄ネジ部を前記雌ネジ部に螺合させた状態で、前記ボルト体を前記スライド孔の終端部まで移動させた際に、前記ボルト体を中心とする前記支持具の回動を制限することのないよう、前記係止突片を受け入れる回動部と、
からなる配設位置制限手段、
が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ支持装置。
【請求項3】
前記支持具は、
前記支持体の他方の端面から第2中間位置までの間で、当該支持体の他方の端面に形成される挿入口から、前記スライド孔及び前記連通孔を介して前記貫通孔と連通するように形成された切欠部を備え、
該切欠部は、前記支持体の他方の端面から前記第2中間位置までの高さ方向の寸法が、前記ボルト体の前記雄ネジ部が形成された範囲の前記所定長よりも大きく、該高さ方向に直交する幅方向の寸法が、前記ボルト体の雄ネジ部の外径より大きく、
更に、前記連通孔の内壁には、前記切欠部の幅方向の寸法と同じ寸法となって段差を形成する誘導部が形成され、
該誘導部には、前記スライド孔側から前記貫通孔側に向けて、前記支持体の他方の端面から段差までの高さ方向の寸法が順次増大するよう、傾斜が付けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアンテナ支持装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−62790(P2013−62790A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−158072(P2012−158072)
【出願日】平成24年7月13日(2012.7.13)
【出願人】(000113665)マスプロ電工株式会社 (395)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月13日(2012.7.13)
【出願人】(000113665)マスプロ電工株式会社 (395)
【Fターム(参考)】
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