説明

アンテナ装置用基板およびアンテナ装置

【課題】 複共振化した各共振周波数のフレキシブルな調整が可能であると共に小型化や薄型化が可能なアンテナ装置用基板およびアンテナ装置を提供する。
【解決手段】 基板本体2、第1〜第3エレメント3〜5、グランド面GND、グランド接続パターン6を備え、第1エレメントが、基端に給電点FPが設けられていると共に給電側受動素子P0と第1接続部C1とアンテナ素子ATとを有して延在し、第2エレメントが、第1エレメントに第2接続部C2を介して接続されて延在し、第3エレメントが、第1エレメントに第3接続部を介して接続されて延在し、第1エレメントが、第2、第3エレメントとグランド面との間の各浮遊容量を発生可能に間隔を空けて延在し、第1〜第3エレメントの少なくとも一つが、スルーホールを介して基板本体の表面から裏面にわたってパターン形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数共振化が可能なアンテナ装置用基板およびこれを備えたアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通信機器において、アンテナの共振周波数を複共振化するためには、放射電極と誘電体ブロックとを備えたアンテナや、スイッチ,制御電圧源を用いたアンテナ装置が提案されている。
例えば、誘電体ブロックによる従来技術としては、特許文献1では、放射電極を樹脂成型体に形成し、さらに誘電体ブロックを接着剤で一体化することで高効率を得る複合アンテナが提案されている。
【0003】
また、スイッチ,制御電圧源を用いた従来技術としては、特許文献2では、第1の放射電極と、第2の放射電極と、第1の放射電極の途中部と第2の放射電極の基端部との間に介設され、第2の放射電極を第1の放射電極と電気的に接続又は切断させるためのスイッチと、を備えるアンテナ装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−81000号公報
【特許文献2】特開2010−166287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術においても、以下の課題が残されている。
すなわち、特許文献1に記載のような誘電体ブロックによる技術では、放射電極を励振する誘電体ブロックを使用しており、機器毎に誘電体ブロック、放射電極パターン等の設計が必要になり、その設計条件によってアンテナ性能が劣化したり、不安定要素が増加する不都合がある。また、放射電極が樹脂成型体の表面に形成されているため、樹脂成型体上に放射電極パターンを設計する必要があり、実装する通信機器やその用途に応じて、アンテナ設計、金型設計が必要になり、大幅なコストの増大を招いてしまう。さらに、誘電体ブロックと樹脂成型体とを接着剤で一体化するので、接着剤のQ値以外にも接着条件(接着剤の厚み、接着面積等)により、アンテナ性能が劣化したり、不安定要素が増加する不都合がある。
また、特許文献2に記載のようなスイッチ,制御電圧源を用いたアンテナ装置の場合、スイッチで共振周波数を切り替えを行うために、制御電圧源の構成やリアクタンス回路等が必要であり、アンテナ構成が機器毎に複雑化し、設計の自由度が無く、容易なアンテナ調整が困難であるという問題があった。
さらに、近年、アンテナ装置のさらなる小型化および高性能化が要求されている。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、複共振化した各共振周波数のフレキシブルな調整が可能で、用途や機器毎に応じたアンテナ性能を安価かつ容易に確保できると共に小型化や薄型化が可能なアンテナ装置用基板およびアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明のアンテナ装置用基板は、絶縁性の基板本体と、該基板本体にそれぞれ金属箔でパターン形成された第1エレメント、第2エレメント、第3エレメント、グランド面およびグランド接続パターンとを備え、前記第1エレメントが、基端に給電点が設けられていると共に中間部に給電側受動素子と第1受動素子が接続可能な第1接続部と誘電体アンテナのアンテナ素子とをこの順に有して延在し、前記第2エレメントが、前記第1エレメントの前記給電側受動素子と前記第1接続部との間に第2受動素子が接続可能な第2接続部を介して基端が接続されて延在し、前記第3エレメントが、前記第1エレメントの前記給電側受動素子と前記第1接続部との間に第3受動素子が接続可能な第3接続部を介して基端が接続されて延在し、前記グランド接続パターンが、前記グランド面に接続されていると共にグランド側受動素子を介して前記第1エレメントの前記第2エレメントおよび第3エレメントの接続部分よりも基端側に接続され、前記第1エレメントが、前記第2エレメントとの間の浮遊容量と、前記第3エレメントとの間の浮遊容量と、前記グランド面との間の浮遊容量とを発生可能に、前記第2エレメント、前記第3エレメントおよび前記グランド面に対して間隔を空けて延在し、前記第1エレメント、第2エレメントおよび前記第3エレメントの少なくとも一つが、スルーホールを介して前記基板本体の表面から裏面にわたってパターン形成されていることを特徴とする。
【0008】
このアンテナ装置用基板では、第1エレメントが、第2エレメントとの間の浮遊容量と、第3エレメントとの間の浮遊容量と、グランド面との間の浮遊容量とを発生可能に、第2エレメント、第3エレメントおよびグランド面に対して間隔を空けて延在しているので、所望の共振周波数に自己共振しないローディング素子のアンテナ素子と各エレメント間の浮遊容量とを効果的に利用することで、複共振化(2共振、3共振)させることができる。また、アンテナ素子および第1〜第3接続部へ接続する第1〜第3受動素子の選択(定数変更等)によって、各共振周波数をフレキシブルに調整可能であり、設計条件に応じた2共振化または3共振化が可能なアンテナ装置を得ることができる。このように、アンテナ構成上、一つのアンテナ装置用基板で各共振周波数をフレキシブルに調整できるため、共振周波数の入れ替えが可能になり、用途や機器に応じて受動素子等による調整箇所を変更可能になっている。なお、帯域幅は、各エレメントの長さおよび幅と各浮遊容量の設定により調整することが可能である。
また、基板本体の平面内で設計が可能であり、従来の誘電体ブロックや樹脂成型体等を使用する場合に比べて薄型化が可能であると共に、誘電体アンテナであるアンテナ素子の選択によっても、小型化および高性能化が可能になる。また、金型、設計変更等によるコストが必要なく、低コストを実現することができる。
さらに、このアンテナ装置用基板では、第1エレメント、第2エレメントおよび第3エレメントの少なくとも一つが、スルーホールを介して基板本体の表面から裏面にわたってパターン形成されているので、基板本体の表面だけでなく裏面にもパターン形成されたエレメントの設計により、アンテナ占有面積を広げることなく、アンテナの高性能化および小型化の両立を図ることが可能になる。
【0009】
また、第2の発明のアンテナ装置用基板は、第1の発明において、前記第1エレメントが、前記アンテナ素子より先端側に、前記基板本体の表面にパターン形成された表面線状部と該表面線状部にスルーホールを介して接続され前記表面線状部に対して折り返した状態で前記基板本体の裏面にパターン形成された裏面線状部とでループ状に形成された先端ループ部を有していることを特徴とする。
【0010】
すなわち、このアンテナ装置用基板では、アンテナ素子より先端側に、基板本体の表面にパターン形成された表面線状部と該表面線状部にスルーホールを介して接続され表面線状部に対して折り返した状態で基板本体の裏面にパターン形成された裏面線状部とでループ状に形成された先端ループ部を有しているので、先端が開放端とされる場合に比べてインピーダンスを下げることができると共に、折り返し部を設けることで広帯域化を図ることができる。また、表面だけでなく裏面も利用してループ状となっているため、表面側の他のエレメントに干渉せずに高い設計自由度を有してパターン形成可能であると共に、裏面からも放射可能になり、高利得化を図ることができる。
【0011】
また、第3の発明のアンテナ装置用基板は、第2の発明において、前記第1エレメントが、前記グランド面から離間する方向に前記給電点から延びる第1延在部と、該第1延在部の先端から前記グランド面に沿った方向へ延びる第2延在部と、該第2延在部の先端から前記第1接続部を介して前記グランド面から離間する方向にずれた基端から前記グランド面に沿った方向へ延びて同方向に延在する前記アンテナ素子に接続された第3延在部と、前記アンテナ素子の先端から前記グランド面に向かって延びる第4延在部と、該第4延在部の先端から前記グランド面に沿って前記第1延在部に向かって延びる第5延在部とを前記基板本体の表面に有していると共に、基端が該第5延在部の先端にスルーホールで接続され先端が前記第4延在部の基端にスルーホールで接続された第6延在部を前記基板本体の裏面に有し、前記第2エレメントが、前記第2延在部の先端から該第2延在部と同方向に延びており、前記第3エレメントが、前記第1延在部の先端から前記第4接続部を介して前記グランド面から離間する方向にずれた基端から前記グランド面に沿った方向へ延びていることを特徴とする。
【0012】
すなわち、このアンテナ装置用基板では、第2エレメントが、第2延在部の先端から該第2延在部と同方向に延びており、第3エレメントが、第2延在部の先端から第4接続部を介してグランド面から離間する方向にずれた基端からグランド面に沿った方向へ延びているので、第2エレメントと第5延在部との間の浮遊容量と、第2エレメントと第4延在部との間の浮遊容量と、第2エレメントとアンテナ素子との間の浮遊容量と、第2エレメントとグランド面との間の浮遊容量と、第3エレメントと第3延在部との間の浮遊容量と、第3エレメントと第2延在部との間の浮遊容量と、第2延在部とグランド面との間の浮遊容量とを発生させることができ、各共振周波数の高い調整自由度を得ることができる。
【0013】
また、第4の発明のアンテナ装置用基板は、第3の発明において、前記第3エレメントが、前記基板本体の表面にパターン形成された表面帯状部と該表面帯状部にスルーホールを介して接続され前記基板本体の裏面に前記表面帯状部に対向してパターン形成された裏面帯状部とを有していることを特徴とする。
すなわち、このアンテナ装置用基板では、第3エレメントが、基板本体の表面にパターン形成された表面帯状部と該表面帯状部にスルーホールを介して接続され基板本体の裏面に表面帯状部に対向してパターン形成された裏面帯状部とを有しているので、第3エレメントを表面の表面帯状部と裏面の裏面帯状部との表裏面で構成することで第3エレメント全体の長さを短縮することができる。また、裏面帯状部の形状に応じて第3延在部との間の浮遊容量を調整可能であり、特に、裏面帯状部の長さは、表面帯状部の長さを最大とし、幅をグランド面側に広げることで、表面帯状部に比べてインピーダンスも低くなり、第1エレメントに関係する共振周波数に対する干渉の影響も少なくなる。
【0014】
また、第5の発明のアンテナ装置用基板は、第1から第4の発明のいずれかにおいて、前記グランド接続パターンが、前記第1エレメントの前記給電側受動素子の先端側に接続された第4受動素子および基端側に接続された第5受動素子とを有し、前記給電側受動素子、前記第4受動素子および前記第5受動素子によりインピーダンスの整合回路が構成されていることを特徴とする。
すなわち、このアンテナ装置用基板では、グランド接続パターンが、給電側受動素子の両端に接続された第4受動素子および第5受動素子を有し、給電側受動素子、第4受動素子および第5受動素子によりインピーダンスの整合回路が構成されているので、給電側受動素子の設定だけでは十分に調整できない場合でも、いわゆるπ型の整合回路を構成する給電側受動素子、第4受動素子および第5受動素子の設定により、共振周波数の微調整およびインピーダンスの調整が可能になる。
【0015】
また、第6の発明のアンテナ装置用基板は、第3または第4の発明において、前記第3延在部が、前記第3エレメントの先端部に対向して浮遊容量を発生可能に形成された幅広部とされていることを特徴とする。
すなわち、このアンテナ装置用基板では、第3延在部が、第3エレメントの先端部に対向して浮遊容量を発生可能に形成された幅広部とされているので、第3エレメントの先端部と幅広部との間の浮遊容量を設定し易くなると共に、アンテナ全体の実効面積が広くなり、広帯域化および高利得化が得られる。
【0016】
第7の発明のアンテナ装置は、第1から第6の発明のいずれかのアンテナ装置用基板を備え、前記第1受動素子、前記第2受動素子および前記第3受動素子が、それぞれ対応する前記第1接続部、前記第2接続部および前記第3接続部に接続されていることを特徴とする。
すなわち、このアンテナ装置では、第1受動素子、第2受動素子および第3受動素子が、それぞれ対応する第1接続部、第2接続部および第3接続部に接続されているので、第1〜第3受動素子を適宜選択するだけで2共振化または3共振化でき、用途や機器毎に対応した2つまたは3つの共振周波数で通信が可能である。
【0017】
また、第8の発明のアンテナ装置は、第1から第6の発明のいずれかのアンテナ装置用基板を備え、前記第1受動素子が、前記第1接続部に接続され、前記第2受動素子および前記第3受動素子のいずれか一方が、それぞれ対応する前記第2接続部または前記第3接続部に接続されていることを特徴とする。
すなわち、このアンテナ装置では、第1受動素子が、第1接続部に接続され、第2受動素子および第3受動素子のいずれか一方が、それぞれ対応する第2接続部または第3接続部に接続されているので、第2受動素子または第3受動素子を利用しない状態で、2種類の2共振化が可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
本発明のアンテナ装置用基板及びこれを備えたアンテナ装置によれば、第1エレメントが、第2エレメントとの間の浮遊容量と、第3エレメントとの間の浮遊容量と、グランド面との間の浮遊容量とを発生可能に、第2エレメント、第3エレメントおよびグランド面に対して間隔を空けて延在しているので、複共振化(2共振、3共振)させることができる。また、第1〜第3接続部へ接続する第1〜第3受動素子の選択によって、各共振周波数をフレキシブルに調整可能であり、設計条件に応じた2共振化または3共振化が可能なアンテナ装置を得ることができると共に、小型化および高性能化が可能になる。さらに、第1エレメント、第2エレメントおよび第3エレメントの少なくとも一つが、スルーホールを介して基板本体の表面から裏面にわたってパターン形成されているので、アンテナ占有面積を広げることなく、アンテナの高性能化および小型化の両立を図ることが可能になる。
したがって、本発明のアンテナ装置用基板及びこれを備えたアンテナ装置は、多様な用途や機器に対応した複共振化が容易に可能になると共に、省スペース化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るアンテナ装置用基板及びアンテナ装置の一実施形態において、アンテナ装置用基板およびアンテナ装置を示す配線図である。
【図2】本実施形態において、アンテナ装置を示す平面図である。
【図3】本実施形態において、アンテナ装置用基板を示す平面図である。
【図4】本実施形態において、アンテナ装置用基板を示す裏面図である。
【図5】本実施形態において、アンテナ素子を示す斜視図(a)、平面図(b)、正面図(c)および底面図(d)である。
【図6】本実施形態において、アンテナ装置用基板及びアンテナ装置で生じる浮遊容量を示す配線図である。
【図7】本実施形態において、3共振化した際のVSWR特性(電圧定在波比)を示すグラフである。
【図8】本実施形態において、第2受動素子を未使用にして2共振化したアンテナ装置を示す配線図である。
【図9】本実施形態において、第3受動素子を未使用にして2共振化したアンテナ装置を示す配線図である。
【図10】本発明に係るアンテナ装置用基板及びアンテナ装置の実施例において、アンテナ装置の放射パターンを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るアンテナ装置用基板及びこれを備えたアンテナ装置の一実施形態を、図1から図9を参照しながら説明する。
【0021】
本実施形態におけるアンテナ装置用基板1は、図1から図4に示すように、絶縁性の基板本体2と、該基板本体2にそれぞれ金属箔でパターン形成された第1エレメント3、第2エレメント4、第3エレメント5、グランド面GNDおよびグランド接続パターン6とを備えている。
【0022】
上記基板本体2は、一般的なプリント基板であって、本実施形態では、長方形状のガラスエポキシ樹脂等からなるプリント基板の本体を採用している。
また、上記グランド面GNDは、基板本体2の裏面にアンテナ占有領域を空けてパターン形成されている。また、グランド接続パターン6は、基板本体2の表面にパターン形成され裏面のグランド面GNDに対向しており、互いにスルーホールHで導通されている。なお、グランド面GNDは、基板本体2の表面に形成しても構わない。この場合、グランド接続パターン6は、スルーホールHを介さず直接グランド面GNDに接続され、グランド接続パターン6はグランド面GNDと一体に形成される。
【0023】
上記第1エレメント3は、基端に給電点FPが設けられていると共に中間部に給電側受動素子P0と第1受動素子P1が接続可能な第1接続部C1と誘電体アンテナのアンテナ素子ATとをこの順に有して延在している。なお、上記給電点FPは、基板本体2のグランド面GND側に設けられた高周波回路(図示略)に接続される。
上記第2エレメント4は、第1エレメント3の給電側受動素子P0と第1接続部C1との間に第2受動素子P2が接続可能な第2接続部C2を介して基端が接続されて延在している。
【0024】
上記第3エレメント5は、第1エレメント3の給電側受動素子P0と第1接続部C1との間に第3受動素子P3が接続可能な第3接続部C3を介して基端が接続されて延在している。
上記グランド接続パターン6は、グランド面GNDに接続されていると共にグランド側受動素子(第4受動素子P4および第5受動素子P5)を介して第1エレメント3の第2エレメント4および第3エレメント5の接続部分よりも基端側に接続されている。
また、第1エレメント3、第2エレメント4および第3エレメント5の少なくとも一つが、スルーホールHを介して基板本体2の表面から裏面にわたってパターン形成されている。
【0025】
上記第1エレメント3は、グランド面GNDから離間する方向に給電点FPから延びる第1延在部E1と、該第1延在部E1の先端からグランド面GNDに沿った方向(隣接するグランド面GNDの外縁の延在方向であって、グランド面GNDから離間する方向に直交する方向)へ延びる第2延在部E2と、該第2延在部E2の先端から第1接続部C1を介してグランド面GNDから離間する方向にずれた基端からグランド面GNDに沿った方向へ延びて同方向に延在するアンテナ素子ATに接続された第3延在部E3と、アンテナ素子ATの先端からグランド面GNDに向かって延びる第4延在部E4と、該第4延在部E4の先端からグランド面GNDに沿って第1延在部E1に向かって延びる第5延在部E5とを基板本体2の表面に有していると共に、基端が該第5延在部E5の先端にスルーホールHで接続され先端が第4延在部E4の基端にスルーホールHで接続された第6延在部E6を基板本体2の裏面に有している。
【0026】
また、第1エレメント3は、アンテナ素子ATより先端側に、基板本体2の表面にパターン形成された表面線状部と該表面線状部にスルーホールを介して接続され表面線状部に対して折り返した状態で基板本体2の裏面にパターン形成された裏面線状部とでループ状に形成された先端ループ部を有している。
【0027】
すなわち、第4延在部E4および第5延在部E5が表面線状部とされていると共に第6延在部E6が裏面線状部とされ、第4延在部E4、第5延在部E5および第6延在部E6により略三角形状の先端ループ部を構成している。なお、第5延在部E5と第6延在部E6との接続部分は、スルーホールHを介して鋭角に折り返した折り返し部となっている。また、第6延在部E6の直上には、アンテナ素子ATおよび第2エレメントE7が位置しないようにパターン形成されている。すなわち、アンテナ素子ATおよび第2エレメントE7の真下に第6延在部E6が延在すると、干渉して帯域幅が狭くなったり、アンテナ性能が劣化してしまうおそれがあるためである。また、第6延在部E6は、第4延在部E4および第5延在部E5に沿って配しても干渉して帯域幅が狭くなったり、アンテナ性能が劣化してしまうおそれがある。したがって、第6延在部E6は、アンテナ素子AT、第2エレメント4、第4延在部E4および第5延在部E5を避けるように斜めのラインでパターン形成される。
【0028】
また、第6延在部E6の先端であってスルーホールHを介した第4延在部E4の基端との接続部分には、裏面幅広部E6aがパターン形成されている。この裏面幅広部E6aは、第4延在部E4に対向して該第4延在部E4の延在方向に沿って長辺を配した長方形状とされている。第4延在部E4と第5延在部E5とのインピーダンスを考えた場合、第4延在部E4の基端側(アンテナ素子AT側)が一番インピーダンスが低くなり、裏面幅広部E6aにより低インピーダンス部分を広げて干渉の影響を低減し、広帯域化が可能になる。また、裏面幅広部E6aは、第6延在部E6により発生する第4延在部E4と第5延在部E5との開口ループ内であり、影響が少ないことから、第4延在部E4の基端側(アンテナ素子AT側)から先端方向へ延在させてパターンが設計される。
【0029】
また、上記第2エレメント4は、第2延在部E2の先端から該第2延在部E2と同方向に延びている。また、上記第3エレメント5は、第1延在部E1の先端から第3接続部C3を介してグランド面GNDから離間する方向にずれた基端からグランド面GNDに沿った方向で第3延在部E3に向けて延びている。
【0030】
上記第3エレメント5は、基板本体2の表面にパターン形成された表面帯状部5aと該表面帯状部5aにスルーホールHを介して接続され基板本体2の裏面に表面帯状部5aに対向してパターン形成された裏面帯状部5bとを有している。
上記グランド接続パターン6は、第1エレメント3の給電側受動素子P0の先端側に接続された第4受動素子P4および基端側に接続された第5受動素子P5を有し、給電側受動素子P0、第4受動素子P4および第5受動素子P5によりインピーダンスの整合回路が構成されている。
【0031】
上記第3延在部E3は、第3エレメント5の先端部に対向して浮遊容量を発生可能に形成された幅広部とされている。この幅広部とされた第3延在部E3は、第2エレメント4および第5延在部E5などの部分に比べて線幅が大きく設定された長方形状とされ、基端側の辺が第3エレメント5の先端側と対向して配されている。また、上記第2延在部E2および第4延在部E4も、幅広部とされている。
【0032】
このように第1エレメント3は、第2エレメント4との間の浮遊容量と、第3エレメント5との間の浮遊容量と、グランド面GNDとの間の浮遊容量とを発生可能に、第2エレメント4、第3エレメント5およびグランド面GNDに対して間隔を空けて延在している。
すなわち、図6に示すように、第2エレメント4と第5延在部E5との間の浮遊容量Caと、第2エレメント4と第4延在部E4との間の浮遊容量Cbと、第2エレメント4とアンテナ素子ATとの間の浮遊容量Cdと、第2エレメント4とグランド面GNDとの間の浮遊容量Cfと、第3エレメント5と第3延在部E3との間の浮遊容量Cgと、第3エレメント5と第2延在部E2との間の浮遊容量Chと、第2延在部E2とグランド面GNDとの間の浮遊容量Ciとを発生可能である。
【0033】
上記裏面帯状部5bを設計する場合、幅広部である第3延在部E3との間に浮遊容量が発生しているため、第3延在部E3に向けて延ばすと、基板本体2の厚みによっては、一番低い共振周波数f1の帯域に干渉してしまう場合が存在するため、これを考慮する必要がある。すなわち、裏面帯状部5bは、第2延在部E2側の方向に幅広にすることで、表面帯状部5aに比べてインピーダンスも低くなり、干渉の影響が少なくなる。また、この場合、裏面帯状部5bと第2延在部E2との間の浮遊容量は、基板本体2の厚みおよび誘電率による浮遊容量により、効果的に発生する。したがって、裏面帯状部5bの長さは、表面帯状部5aの長さを最大として、幅を第2延在部E2側に延ばす設計が有効である。
【0034】
上記アンテナ素子ATは、所望の共振周波数に自己共振しないローディング素子であって、例えば図5に示すように、セラミックス等の誘電体21の表面にAg等の導体パターン22が形成されたチップアンテナである。アンテナ素子ATは、共振周波数等の設定に応じて、その長さ、幅、導体パターン22等が互い異なる素子を選択しても構わないと共に、同じ素子を選択しても構わない。
【0035】
上記第1受動素子P1〜第5受動素子P5および給電側受動素子P0は、例えばインダクタ、コンデンサまたは抵抗が採用される。なお、第4受動素子P4および第5受動素子P5は、搭載する各機器や設計条件によるが、互いにインダクタ、コンデンサの異なる受動素子が望ましい。
本実施形態のアンテナ装置10は、図1および図2に示すように、上記アンテナ装置用基板1を備え、第1受動素子P1、第2受動素子P2および第3受動素子P3が、それぞれ対応する第1接続部C1、第2接続部C2および第3接続部C3に接続されている。
【0036】
インピーダンスの整合回路を構成する給電側受動素子P0、第4受動素子P4および第5受動素子P5は、以下のように設定することが好ましい。
例えば、第4受動素子P4をインダクタとし、第5受動素子P5をコンデンサとした場合、第4受動素子P4の定数変更等により第1および第2の共振周波数f1,f2のインピーダンス調整が可能であると共に、第5受動素子P5の定数変更等により第2および第3の共振周波数f2,f3のインピーダンス調整が可能である。
【0037】
また、第4受動素子P4をコンデンサとし、第5受動素子P5をインダクタとした場合、第4受動素子P4の定数変更等により第2および第3の共振周波数f2,f3のインピーダンス調整が可能であると共に、第5受動素子P5の定数変更等により第1および第2の共振周波数f1,f2のインピーダンス調整が可能である。
なお、第4受動素子P4と第5受動素子P5とに同じ受動素子を用いた場合や第4受動素子P4のみまたは第5受動素子P5のみの場合は、第1〜第3の共振周波数f1〜f3の全てが連動した形で調整可能である。
【0038】
次に、本実施形態のアンテナ装置における共振周波数について、図7を参照して説明する。
【0039】
本実施形態のアンテナ装置10では、図7に示すように、第1の共振周波数f1、第2の共振周波数f2および第3の共振周波数f3の3つに複共振化される。
上記第1の共振周波数f1は、3つの共振周波数の中で低い周波数帯のものであり、第1エレメント3とアンテナ素子ATと第1受動素子P1と給電側受動素子P0と浮遊容量とで決定される。また、上記第2の共振周波数f2は、3つの共振周波数の中で中間の周波数帯のものであり、第2エレメント4と第2受動素子P2と給電側受動素子P0と浮遊容量とで決定される。さらに、上記第3の共振周波数f3は、3つの共振周波数の中で高い周波数帯のものであり、第3エレメント5と第3受動素子P3と給電側受動素子P0と浮遊容量とで決定される。また、各共振周波数に対して、第4受動素子P4および第5受動素子P5を用いて、グランド面GND側に流れる高周波電流の流れをコントロールすることで、最終的なインピーダンス調整を行う。
以下、これら共振周波数について、より詳しく説明する。
【0040】
「第1の共振周波数f1について」
上記第1の共振周波数f1の周波数は、第2延在部E2、第3延在部E3、第4延在部E4および第5延在部E5の各長さと第6延在部E6とにより設定および調整することができる。
また、第1の共振周波数f1の広帯域化は、第2延在部E2、第3延在部E3、第4延在部E4および第5延在部E5の各長さおよび各幅により設定することができる。
【0041】
また、第1の共振周波数f1のインピーダンス調整は、浮遊容量Ca、浮遊容量Cb、浮遊容量Cd、浮遊容量Ceおよび浮遊容量Ciの各浮遊容量の設定で行うことができる。
さらに、最終的な周波数調整は、第1受動素子P1および給電側受動素子P0の選択によりフレキシブルに行うことが可能である。
【0042】
また、最終的なインピーダンス調整は、第4受動素子P4および第5受動素子P5の選択によりフレキシブルに行うことが可能である。
このように「各エレメント長の長さ、幅」と「各受動素子」と「アンテナ素子AT」と「各エレメント間の浮遊容量」とにより、共振周波数、帯域幅、インピーダンスをフレキシブルに調整可能である。すなわち、第1の共振周波数f1は、主に図1中の破線A1の部分で調整される。
【0043】
「第2の共振周波数f2について」
上記第2の共振周波数f2の周波数は、第2延在部E2および第2エレメント4の各長さにより設定および調整することができる。
また、第2の共振周波数f2の広帯域化は、第2延在部E2および第2エレメント4の各長さおよび各幅により設定することができる。
【0044】
また、第2の共振周波数f2のインピーダンス調整は、浮遊容量Ca、浮遊容量Cb、浮遊容量Cd、浮遊容量Cfおよび浮遊容量Ciの各浮遊容量の設定で行うことができる。
さらに、最終的な周波数調整は、第2受動素子P2および給電側受動素子P0の選択によりフレキシブルに行うことが可能である。
【0045】
また、最終的なインピーダンス調整は、第4受動素子P4および第5受動素子P5の選択によりフレキシブルに行うことが可能である。
このように「各エレメント長の長さ、幅」と「各受動素子」と「各エレメント間の浮遊容量」とにより、共振周波数、帯域幅、インピーダンスをフレキシブルに調整可能である。すなわち、第2の共振周波数f2は、主に図1中の一点鎖線A2の部分で調整される。
【0046】
「第3の共振周波数f3について」
上記第3の共振周波数f3の周波数は、第3エレメント5(表面帯状部5aおよび裏面帯状部5b)の長さにより設定および調整することができる。
また、第3の共振周波数f3の広帯域化は、第2延在部E2および第2エレメント4の長さおよび幅により設定することができる。
【0047】
また、第3の共振周波数f3のインピーダンス調整は、浮遊容量Cg、浮遊容量Chおよび浮遊容量Ciの各浮遊容量の設定で行うことができる。
さらに、最終的な周波数調整は、第3受動素子P3および給電側受動素子P0の選択によりフレキシブルに行うことが可能である。
【0048】
また、最終的なインピーダンス調整は、第4受動素子P4および第5受動素子P5の選択によりフレキシブルに行うことが可能である。
このように「各エレメント長の長さ、幅」と「各受動素子」と「各エレメント間の浮遊容量」とにより、共振周波数、帯域幅、インピーダンスをフレキシブルに調整可能である。すなわち、第3の共振周波数f3は、主に図1中の二点鎖線A3の部分で調整される。
【0049】
なお、基板本体2上におけるアンテナ占有領域(アンテナ装置10に許された設置領域)A4は大きい方がアンテナ特性として望ましく、他の構成は、以下の条件に設定することが好ましい。
すなわち、グランド面GNDからアンテナ装置用基板1の上端(第3エレメント5)までの距離は長く設定することが浮遊容量の関係で望ましい。
また、アンテナサイズの幅(第2延在部E2の基端から第4延在部E4の外縁までの距離)は、広い方が浮遊容量の関係で望ましい。
【0050】
また、グランド面GNDから第5延在部E5までの距離は、長い方が望ましい。
また、パターンとして調整し易いことから、第4延在部E4の幅は、広い方が望ましいと共に、幅広部の第3延在部E3の長さおよび幅は、長く又は広い方が望ましい。
また、第2延在部E2の長さおよび幅は、長くまたは広い方が望ましい。
なお、基板本体2の第1延在部E1に沿った方向のサイズは、使用する波長の4分の1程度の長さであることが望ましい。
また、第2エレメント4を同方向に延在する誘電体アンテナのアンテナ素子(いわゆるチップアンテナ)に変更することで、第2エレメント4を短くすることも可能である。
【0051】
この本実施形態のアンテナ装置10では、アンテナ周辺の影響(周辺部品、人体等)を考慮して共振周波数を入れ替えることが可能である。すなわち、用途に応じ、アンテナ素子ATおよび各受動素子の選択および設定を変更して、第2の共振周波数f2の調整箇所と第3の共振周波数f3の調整箇所とをフレキシブルに変更することが可能である。すなわち、第2の共振周波数f2を調整する一点鎖線A2の部分と、第3の共振周波数f3を調整する二点鎖線A3の部分と、を入れ替えて設定することで、一点鎖線A2の部分で第3の共振周波数f3を調整し、二点鎖線A3の部分で第2の共振周波数f2を調整することも可能である。
【0052】
また、本実施形態のアンテナ装置用基板1およびアンテナ装置10では、上述した3共振化だけでなく、2共振化も可能である。例えば、同一機種に本実施形態のアンテナ装置10を用いて、現段階では2共振で使用し、将来的には3共振で使用したい場合等が挙げられる。その場合でも、アンテナ装置用基板1をそのままに2共振化および3共振化が可能となる。
【0053】
上記2共振化の方法としては、図8に示すように、第2受動素子P2を未使用にする方法と、図9に示すように、第3受動素子P3を未使用にする方法との2種類の対応方法がある。その場合の周波数帯は、上述したように個別に調整可能なため、所望の周波数帯にフレキシブルに設計可能である。
【0054】
このように本実施形態のアンテナ装置用基板1およびアンテナ装置10では、第1エレメント3が、第2エレメント4との間の浮遊容量と、第3エレメント5との間の浮遊容量と、グランド面GNDとの間の浮遊容量とを発生可能に、第2エレメント4、第3エレメント5およびグランド面GNDに対して間隔を空けて延在しているので、所望の共振周波数に自己共振しないローディング素子のアンテナ素子ATと各エレメント間の浮遊容量とを効果的に利用することで、複共振化(2共振、3共振)させることができる。
【0055】
また、アンテナ素子ATおよび第1〜第3接続部C1〜C3へ接続する第1〜第3受動素子P1〜P3の選択(定数変更等)によって、各共振周波数をフレキシブルに調整可能であり、設計条件に応じた2共振化または3共振化が可能なアンテナ装置を得ることができる。このように、アンテナ構成上、一つのアンテナ装置用基板1で各共振周波数をフレキシブルに調整できるため、共振周波数の入れ替えが可能になり、用途や機器に応じて受動素子等による調整箇所を変更可能になっている。
【0056】
また、基板本体2の平面内で設計が可能であり、従来の誘電体ブロックや樹脂成型体等を使用する場合に比べて薄型化が可能であると共に、誘電体アンテナであるアンテナ素子ATの選択によっても、小型化および高性能化が可能になる。また、金型、設計変更等によるコストが必要なく、低コストを実現することができる。
【0057】
さらに、このアンテナ装置用基板1では、第1エレメント3、第2エレメント4および第3エレメント5の少なくとも一つが、スルーホールHを介して基板本体2の表面から裏面にわたってパターン形成されているので、基板本体2の表面だけでなく裏面にもパターン形成されたエレメントの設計により、アンテナ占有面積を広げることなく、アンテナの高性能化および小型化の両立を図ることが可能になる。
【0058】
また、アンテナ素子ATより先端側に、基板本体2の表面にパターン形成された表面線状部と該表面線状部にスルーホールHを介して接続され表面線状部に対して折り返した状態で基板本体2の裏面にパターン形成された裏面線状部とでループ状に形成された先端ループ部(第4延在部E4、第5延在部E5および第6延在部E6)を有しているので、先端が開放端とされる場合に比べてインピーダンスを下げることができると共に、折り返し部を設けることで広帯域化を図ることができる。また、表面だけでなく裏面も利用してループ状となっているため、表面側の他のエレメントに干渉せずに高い設計自由度を有してパターン形成可能であると共に、裏面からも放射可能になり、高利得化を図ることができる。
【0059】
さらに、第3エレメント5が、基板本体2の表面にパターン形成された表面帯状部5aと該表面帯状部5aにスルーホールHを介して接続され基板本体2の裏面に表面帯状部5aに対向してパターン形成された裏面帯状部5bとを有しているので、第3エレメント5を表面の表面帯状部5aと裏面の裏面帯状部5bとの表裏面で構成することで第3エレメント5全体の長さを短縮することができる。また、裏面帯状部5bの形状に応じて第3延在部E3との間の浮遊容量Cgを調整可能であり、特に、第3エレメント5の長さを、表面帯状部5aの長さを最大とし、幅をグランド面GND側に広げることで、表面帯状部5aに比べてインピーダンスも低くなり、第1エレメント3に関係する共振周波数に対する干渉の影響も少なくなる。
【0060】
また、グランド接続パターン6が、給電側受動素子P0の両端に接続された第4受動素子P4および第5受動素子P5を有し、給電側受動素子P0、第4受動素子P4および第5受動素子P5によりインピーダンスの整合回路が構成されているので、給電側受動素子P0の設定だけでは十分に調整できない場合でも、いわゆるπ型の整合回路を構成する給電側受動素子P0、第4受動素子P4および第5受動素子P5の設定により、共振周波数の微調整およびインピーダンスの調整が可能になる。
【0061】
また、第3延在部E3が、第3エレメント5の先端部に対向して浮遊容量Cgを発生可能に形成された幅広部とされているので、第3エレメント5の先端部と幅広部との間の浮遊容量Cgを設定し易くなると共に、アンテナ全体の実効面積が広くなり、広帯域化および高利得化が得られる。
【0062】
したがって、本実施形態のアンテナ装置10では、上記アンテナ装置用基板1を備え、第1受動素子P1、第2受動素子P2および第3受動素子P3が、それぞれ対応する第1接続部C1、第2接続部C2および第3接続部C3に接続されているので、第1〜第3受動素子P1〜P3を適宜選択するだけで2共振化または3共振化でき、用途や機器毎に対応した2つまたは3つの共振周波数で通信が可能である。
【0063】
また、第1受動素子P1が、第1接続部C1に接続され、第2受動素子P2および第3受動素子P3のいずれか一方が、それぞれ対応する第2接続部C2または第3接続部C3に接続されているので、第2受動素子P2または第3受動素子P3を利用しない状態で、2種類の2共振化が可能である。
【実施例】
【0064】
次に、本実施形態のアンテナ装置用基板およびこれを備えたアンテナ装置を実際に作製した実施例について、各共振周波数での放射パターンについて測定した結果を、図10を参照して説明する。
なお、第1延在部E1の延在方向をX方向とし、第2延在部E2の延在方向をY方向とし、グランド面GNDに対する垂直方向(表面に向けた垂直方向)をZ方向とした。この際のYZ面に対する垂直偏波を測定した。
また、各受動素子は、第1受動素子P1:4.7nH、第2受動素子P2:5.6nH、第3受動素子P3:10nHのいずれもインダクタを使用した。また、第4受動素子P4:6.8nHのインダクタと第5受動素子P5:0.5pFのコンデンサとを使用したと共に、給電側受動素子P0:1.2nHのインダクタを使用した。
【0065】
図10の(a)は、800MHz帯域の第1の共振周波数f1における放射パターンであり、第1の共振周波数f1:871MHz、VSWR:1.71、帯域幅(V.S.W.R≦3):85MHzであった。
また、図10の(b)は、1575MHz帯域の第2の共振周波数f2における放射パターンであり、第2の共振周波数f2:1569MHz、VSWR:1.57、帯域幅(V.S.W.R≦3):86MHzであった。
さらに、図10の(c)は、2000MHz帯域の第3の共振周波数f3における放射パターンであり、第3の共振周波数f3:2005MHz、VSWR:1.72、帯域幅(V.S.W.R≦3):214MHzであった。
これら放射パターンからわかるように、800MHz帯、1575MHz帯については、ほぼ無指向性のアンテナ特性が得られ、2000MHz帯については、90度方向に指向性があるアンテナ特性が得られる。
【0066】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
上記実施形態では、各接続部に受動素子が1つずつ実装されているが、1つに限定するものではなく、複数を実装しても構わない。例えば、共振周波数に対して、さらなる微調整が必要な場合など、第1〜第3受動素子について直列または並列に2個実装しても構わない。
【符号の説明】
【0067】
1…アンテナ装置用基板、2…基板本体、3…第1エレメント、4…第2エレメント、5…第3エレメント、5a…表面帯状部、5b…裏面帯状部、6…グランド接続パターン、10…アンテナ装置、AT…アンテナ素子、C1…第1接続部、C2…第2接続部、C3…第3接続部、E1…第1延在部、E2…第2延在部、E3…第3延在部、E4…第4延在部、E5…第5延在部、E6…第6延在部、FP…給電点、GND…グランド面、H…スルーホール、P0…給電側受動素子、P1…第1受動素子、P2…第2受動素子、P3…第3受動素子、P4…第4受動素子(グランド側受動素子)、P5…第5受動素子(グランド側受動素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の基板本体と、
該基板本体にそれぞれ金属箔でパターン形成された第1エレメント、第2エレメント、第3エレメント、グランド面およびグランド接続パターンとを備え、
前記第1エレメントが、基端に給電点が設けられていると共に中間部に給電側受動素子と第1受動素子が接続可能な第1接続部と誘電体アンテナのアンテナ素子とをこの順に有して延在し、
前記第2エレメントが、前記第1エレメントの前記給電側受動素子と前記第1接続部との間に第2受動素子が接続可能な第2接続部を介して基端が接続されて延在し、
前記第3エレメントが、前記第1エレメントの前記給電側受動素子と前記第1接続部との間に第3受動素子が接続可能な第3接続部を介して基端が接続されて延在し、
前記グランド接続パターンが、前記グランド面に接続されていると共にグランド側受動素子を介して前記第1エレメントの前記第2エレメントおよび第3エレメントの接続部分よりも基端側に接続され、
前記第1エレメントが、前記第2エレメントとの間の浮遊容量と、前記第3エレメントとの間の浮遊容量と、前記グランド面との間の浮遊容量とを発生可能に、前記第2エレメント、前記第3エレメントおよび前記グランド面に対して間隔を空けて延在し、
前記第1エレメント、第2エレメントおよび前記第3エレメントの少なくとも一つが、スルーホールを介して前記基板本体の表面から裏面にわたってパターン形成されていることを特徴とするアンテナ装置用基板。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナ装置用基板において、
前記第1エレメントが、前記アンテナ素子より先端側に、前記基板本体の表面にパターン形成された表面線状部と該表面線状部にスルーホールを介して接続され前記表面線状部に対して折り返した状態で前記基板本体の裏面にパターン形成された裏面線状部とでループ状に形成された先端ループ部を有していることを特徴とするアンテナ装置用基板。
【請求項3】
請求項2に記載のアンテナ装置用基板において、
前記第1エレメントが、前記グランド面から離間する方向に前記給電点から延びる第1延在部と、該第1延在部の先端から前記グランド面に沿った方向へ延びる第2延在部と、該第2延在部の先端から前記第1接続部を介して前記グランド面から離間する方向にずれた基端から前記グランド面に沿った方向へ延びて同方向に延在する前記アンテナ素子に接続された第3延在部と、前記アンテナ素子の先端から前記グランド面に向かって延びる第4延在部と、該第4延在部の先端から前記グランド面に沿って前記第1延在部に向かって延びる第5延在部とを前記基板本体の表面に有していると共に、基端が該第5延在部の先端にスルーホールで接続され先端が前記第4延在部の基端にスルーホールで接続された第6延在部を前記基板本体の裏面に有し、
前記第2エレメントが、前記第2延在部の先端から該第2延在部と同方向に延びており、
前記第3エレメントが、前記第1延在部の先端から前記第4接続部を介して前記グランド面から離間する方向にずれた基端から前記グランド面に沿った方向へ延びていることを特徴とするアンテナ装置用基板。
【請求項4】
請求項3に記載のアンテナ装置用基板において、
前記第3エレメントが、前記基板本体の表面にパターン形成された表面帯状部と該表面帯状部にスルーホールを介して接続され前記基板本体の裏面に前記表面帯状部に対向してパターン形成された裏面帯状部とを有していることを特徴とするアンテナ装置用基板。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のアンテナ装置用基板において、
前記グランド接続パターンが、前記第1エレメントの前記給電側受動素子の先端側に接続された第4受動素子および基端側に接続された第5受動素子を有し、前記給電側受動素子、前記第4受動素子および前記第5受動素子によりインピーダンスの整合回路が構成されていることを特徴とするアンテナ装置用基板。
【請求項6】
請求項3または4に記載のアンテナ装置用基板において、
前記第3延在部が、前記第3エレメントの先端部に対向して浮遊容量を発生可能に形成された幅広部とされていることを特徴とするアンテナ装置用基板。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のアンテナ装置用基板を備え、
前記第1受動素子、前記第2受動素子および前記第3受動素子が、それぞれ対応する前記第1接続部、前記第2接続部および前記第3接続部に接続されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載のアンテナ装置用基板を備え、
前記第1受動素子が、前記第1接続部に接続され、
前記第2受動素子および前記第3受動素子のいずれか一方が、それぞれ対応する前記第2接続部または前記第3接続部に接続されていることを特徴とするアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図7】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−142775(P2012−142775A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293924(P2010−293924)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)