説明

アンテナ装置

【課題】ベース部材にアンテナ基板を立設する際に、設計上の制限を緩和でき、比較的自由に設計可能なアンテナ装置を提供する。
【解決手段】アンテナ装置は、ベース部材と、ベース部材に立設されるアンテナ基板と、アンテナ基板の直下に配設され、信号取出用の接続ピンが前記アンテナ基板と接続されるコネクタ部と、一端側でアンテナ基板を把持して他端側がベース部材に固定される固定部材と、を備えて構成される。そして、アンテナ基板が固定部材によってベース部材に対して着脱可能に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置に関し、特にベース部材に立設されるアンテナ基板の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のルーフ等に設置されるアンテナ装置として、GPS(Global Positioning System)用、携帯電話用又はリモコンエンジンスタータ用などの複数の周波数帯域の電波を受信可能な複合型のアンテナ装置が知られている。このようなアンテナ装置では、例えば、アンテナパターンを形成されたアンテナ基板がベース部材に立設して固定される(例えば特許文献1,2)。
【0003】
図6は、従来のアンテナ装置におけるアンテナ基板の固定構造の一例を示す図である。
図6に示すアンテナ装置100では、ベース部材101に、第1アンテナ基板103を固定するために対抗配置された固定片102が前後方向に2組形成されている。この固定片102で第1アンテナ基板103を狭持し、狭持した部分をかしめたり半田付けしたりすることにより、第1アンテナ基板103をベース部材101に固定するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−15096号公報
【特許文献2】特開2009−17116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、かしめや半田付けにより第1アンテナ基板103を固定すると、第1アンテナ基板103に不具合が生じた場合などに交換することが困難となる。また、かしめや半田付けによる固定方法では、第1アンテナ基板103や半田に大きな負荷が加わるため望ましくない。
さらに、第1アンテナ基板103が第2アンテナ基板104上に配置される場合、第2アンテナ基板104に固定片102を挿通させる開口104aが形成されることとなり、第2アンテナ基板104における配線パターンの形成領域が損なわれてしまう。
【0006】
また最近では、アンテナ装置側と配線側にそれぞれコネクタ部を設け、アンテナ装置を車両に取り付けた後に配線を接続することが要求されている(いわゆるダイレクトコネクタ)。この場合、ベース部材にコネクタ部を取り付けるための開口を形成する必要があるため、アンテナ基板を固定するための固定片の形成領域が制約されてしまい、アンテナ基板を強固に固定することが困難となる虞がある。
このように、図6に示すアンテナ基板100の固定構造では、第1アンテナ基板103を立設するに際して様々な問題があるため、設計上の制限が増大する。
【0007】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたもので、ベース部材にアンテナ基板を立設する際に、設計上の制限を緩和できるアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、ベース部材と、
前記ベース部材に立設されるアンテナ基板と、
前記アンテナ基板の直下に配設され、信号取出用の接続ピンが前記アンテナ基板と接続されるコネクタ部と、
一端側でアンテナ基板を把持して他端側が前記ベース部材に固定される固定部材と、を備え、
前記アンテナ基板は、前記固定部材によって前記ベース部材に対して着脱可能に固定されていることを特徴とするアンテナ装置である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のアンテナ装置において、前記アンテナ基板は、下部に前記接続ピンを接続する圧接端子を有することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のアンテナ装置において、前記アンテナ基板は、前記固定部材を介して前記ベース部材に電気的に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るアンテナ装置によれば、ベース部材にアンテナ基板を立設するに際して生じる制限を緩和でき、比較的自由に設計することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態に係るアンテナ装置の外観を示す図である。
【図2】アンテナ本体の内部構造を示す図である。
【図3】アンテナ本体の内部構造を示す図である。
【図4】アンテナ本体の裏面構造を示す図である。
【図5】第1アンテナ基板のリフロー処理について示す図である。
【図6】従来のアンテナ装置におけるアンテナ基板の固定構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、実施形態に係るアンテナ装置の外観を示す図である。図1に示すアンテナ装置1は、GPS用、携帯電話用又はリモコンエンジンスタータ用などの複数の周波数帯域の電波を受信可能な複合型のアンテナ装置であり、例えば自動車のルーフ等の設置面に固定される。
【0014】
図1に示すように、アンテナ装置1は、アンテナパターンやパッチアンテナを実装するアンテナ基板(後述する第1アンテナ基板13,第2アンテナ基板14)が収容されたアンテナ本体10と、アンテナ装置1を設置面に固定するための固定部材21及びボルト22を備えている。アンテナ本体10の底部は、第1アンテナ基板13及び第2アンテナ基板14等が取り付けられる金属製のベース部材11と、このベース部材11に周設される樹脂製の保護部材12により構成されている。
ベース部材11の下方に突出した部分が設置面に形成された固定用開口(図示略)に挿嵌され、ベース部材11と固定部材21によって設置面を狭持することにより、アンテナ装置1が設置面に固定される。
【0015】
図2,3はアンテナ本体10の内部構造を示す図で、図4はアンテナ本体10の裏面構造を示す図である。
図2,3に示すように、ベース部材11には、携帯電話用及びエンジンスタータ用の電波を受信可能なアンテナパターン(図示略)が形成された第1アンテナ基板13が立設されるとともに、GPS用の電波を受信可能なパッチアンテナ17が実装された第2アンテナ基板14が敷設されている。
【0016】
また、図4に示すように、ベース部材11は、保護部材12に形成された略正方形状の開口から外部に臨むように保護部材12に固定されている。ベース部材11の中央には、ボルト22と螺合する雌ねじ111aが形成された円筒状のナット部111が形成されている。ベース部材11の四辺中央には、固定部材21を所定の位置に案内する直方体状の案内部112が、ナット部111を囲むように形成されている。また、ベース部材11の一角には、設置面に対してベース部材11を位置決めするための位置決め部113が形成されている。
【0017】
ベース部材11において、ナット部111から4つの案内部113に延びる直線で区画された4つの領域には、配線を接続するためのコネクタ部18が配設される。ここでは、3つのコネクタ部181〜183を配設した場合について示している。このコネクタ部18は、ベース部材11に形成されたコネクタ取付用の開口を介して、第2アンテナ基板14の裏側に露呈され、それぞれの信号取出用の接続ピンは第2アンテナ基板14又は第1アンテナ基板13に接続される。
特に、コネクタ部181は第1アンテナ基板13の直下に位置しており、このコネクタ部181の接続ピンは、第2アンテナ基板14に形成された挿通孔を介して第1アンテナ基板13に接続されるようになっている。
【0018】
第1アンテナ基板13の下部にはコ字状の切欠部131が形成されており、この切欠部131の両側が被把持部132、支持部133となる。第1アンテナ基板13は、固定金具15によって起立した状態でベース部材11に固定される。
具体的には、第1アンテナ基板13の被把持部132に、固定金具15の一端側の把持部151が固着される。固定金具15の把持部151は、第1アンテナ基板13の被把持部132に沿うように形成されており、この把持部151と第1アンテナ基板13の被把持部132が当接する。把持部151は係止片151aを有し、この係止片151aにより第1アンテナ基板13の被把持部132の側部132aが係止される。そして、固定金具15の把持部151により第1アンテナ基板13が把持された状態で金属製のネジ20を螺入することにより、第1アンテナ基板13に固定金具15が固着される。
【0019】
把持部151から水平に延びる固定金具15の他端側は、ベース部材11に固定するための固定部152となる。この固定部152に金属製のネジ19を挿通し、第1アンテナ基板13の近傍においてベース部材11に形成された固定筒114にネジ19を螺入することにより、固定金具15はベース部材11に固着される。
このとき、第1アンテナ基板13の支持部133は、第2アンテナ基板14に形成された係合孔141に挿入される。したがって、第1アンテナ基板13は安定した起立状態で固定される。第1アンテナ基板13は、ネジ止めされた固定金具15によってベース部材11に固定されているので、ベース部材11から容易に取り外すことができる。
【0020】
また、第1アンテナ基板13は固定金具15を介してベース部材11に電気的に接続され、ベース部材11は自動車のルーフ等の設置面と電気的に接続される。したがって、第1アンテナ基板13は固定金具15及びベース部材11を介して接地されることとなる。
【0021】
なお、固定金具15の形状、すなわち第1アンテナ基板13を把持する形態及びベース部材11に固定する形態は、上述した形態に限定されない。つまり、固定金具15は、第1アンテナ基板13を間接的にベース部材11に固定できる形状であればよい。また、ベース部材11に形成される固定筒114の配置箇所は、第1アンテナ基板13を安定して固定するためには第1アンテナ基板13の設置箇所に近いほうが望ましいが、ベース部材11に形成されるコネクタ部取付用の開口や第2アンテナ基板14の配置を考慮して、比較的自由に設計できる。
また、固定金具15によって第1アンテナ基板13の起立状態を保持できれば、第1アンテナ基板13に支持部133を形成しなくてもよい。
【0022】
第1アンテナ基板13の切欠部131には、コネクタ部181の接続ピンを接続するための圧接端子16が配設されている。この圧接端子16は、コネクタ部181の接続ピンを狭持して圧接する中央の端子部161と、圧接端子16を第1アンテナ基板13に取り付けるための両側の係合部162を有している。
端子部161は、第1アンテナ基板13の切欠部131の周縁から下方に延在し、被把持部132と支持部133の間に位置する。係合部162には、第1アンテナ基板13の係合孔134に挿嵌される係止片162aが形成されている。この係止片162aが係合孔134に挿嵌された状態でリフロー処理することで、圧接端子16は第1アンテナ基板13に半田付けされる。
【0023】
圧接端子16の端子部161には、コネクタ部181の接続ピンが第2アンテナ基板14に形成された挿通孔を通して直接接続される。コネクタ部181の接続ピンは端子部161によって圧接狭持され接続状態となっているが、必要に応じ少量の半田により固着してもよい。第1アンテナ基板13に不具合が生じた場合には、コネクタ部181の接続ピンとの接続状態を解除できるので、第1アンテナ基板13を容易に取り外すことができる。
【0024】
また、一方(図3における右側)の係合部162には、下方に延びる突出片162bが形成されている。この突出片162bは、リフロー処理において圧接端子16が位置ずれしたり、落下したりするのを防止する。
【0025】
図5は、第1アンテナ基板13のリフロー処理について示す図である。
図5(a)に示すように、リフロー処理時には、複数の第1アンテナ基板13,13・・が両側の基板フレーム30,30に繋がって連架された状態となっている。リフロー処理後に基板フレーム30を点線に沿って切断することで、個々の第1アンテナ基板13が作製される。
【0026】
基板フレーム30には、第1アンテナ基板13の切欠部131に向けて支持片31が形成されている。圧接端子16を取り付ける際、係合部162の突出片162bが、基板フレーム30の支持片31に載置されることとなる。
圧接端子16の重心は端子部161にあり、この端子部161は第1アンテナ基板13により支持されていないため、リフロー処理前の圧接端子16の状態は外力によって動きやすい状態といえる。そのため、図5(b)に示す状態でリフロー処理を行うと、圧接端子16が位置ずれしたり、落下したりする虞がある。
これに対して、図5(a)に示す状態でリフロー処理を行うと、係合部162の突出片162bが基板フレーム30の支持片31によって支持されているので、圧接端子16の位置ずれや落下は格段に低減される。したがって、第1アンテナ基板13の品質の安定化を図ることができ、生産性が向上する。
【0027】
このように、アンテナ装置1は、ベース部材11と、ベース部材11に立設されるアンテナ基板(第1アンテナ基板)13と、アンテナ基板13の直下に配設され、信号取出用の接続ピンがアンテナ基板13と接続されるコネクタ部181と、一端側(把持部151)でアンテナ基板13を把持して他端側(固定部152)がベース部材11に固定される固定部材(固定金具)15と、を備えている。そして、アンテナ基板13は、固定金具15によってベース部材11に対して着脱可能に固定されている。
【0028】
これにより、ダイレクトコネクタを採用した場合でも、第1アンテナ基板13を固定するための設計が容易となる。また、不具合が生じたときに第1アンテナ基板13を容易に交換することができる。
コネクタ部181を第1アンテナ基板13の直下に配設した場合、図6に示す固定構造では固定片102を設けること自体困難となるが、実施形態に示す固定構造によれば、第1アンテナ基板13を安定した起立状態で固定することができる。また、第1アンテナ基板13が第2アンテナ基板14上に位置する場合であっても、図6のように固定片102を挿通するための挿通孔104aを設ける必要はないので、第2アンテナ基板14における配線パターンの形成領域が損なわれることはない。
すなわち、本実施形態のアンテナ装置1によれば、ベース部材11に第1アンテナ基板13を立設するに際して生じる制限を緩和でき、比較的自由に設計することが可能となる。
【0029】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0030】
実施形態では、圧接端子16を介して第1アンテナ基板13からの信号を直接コネクタ部181に送出するようになっているが、例えば、第1アンテナ基板13を第2アンテナ基板14に電気的に接続して、第2アンテナ基板14を介してコネクタ部181に送出するようにしてもよい。
【0031】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0032】
1 アンテナ装置
11 ベース部材
12 保護部材
13 第1アンテナ基板
131 切欠部
132 被把持部
133 支持部
14 第2アンテナ基板
15 固定金具
151 把持部
152 固定部
16 圧接端子
161 端子部
162 係合部
17 パッチアンテナ
18,181〜183 コネクタ部
19,20 ネジ
21 固定部材
22 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、
前記ベース部材に立設されるアンテナ基板と、
前記アンテナ基板の直下に配設され、信号取出用の接続ピンが前記アンテナ基板と接続されるコネクタ部と、
一端側でアンテナ基板を把持して他端側が前記ベース部材に固定される固定部材と、を備え、
前記アンテナ基板は、前記固定部材によって前記ベース部材に対して着脱可能に固定されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記アンテナ基板は、下部に前記接続ピンを接続する圧接端子を有することを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記アンテナ基板は、前記固定部材を介して前記ベース部材に電気的に接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−199440(P2011−199440A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61733(P2010−61733)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】