説明

アンモニアの消去方法およびそのための試薬

【目的】 グルタミンシンセターゼを使用してアンモニアを消去する反応を完全に停止してから、目的の生体成分の測定を行うことにより、定量性、正確性に優れた簡便で廉価なアンモニア消去法およびそのための試薬を提供する。
【構成】 グルタミンシンセターゼ、L−グルタミン酸、ATPおよび活性化金属を特定量のEDTA塩の共存下に試料に作用させて、内因性アンモニアおよび外因性アンモニアを消去し、次いでEDTA塩をさらに多量に加えてグルタミンシンセターゼの反応を停止する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は試料中の尿素窒素、クレアチニン等の生体成分から尿素反応によりアンモニアを生成し、このアンモニアを測定することにより、尿素窒素、クレアチニン等の生体成分を測定する系において、測定時に正誤差を与える内因性アンモニアまたは外因性アンモニアを消去する方法およびそのための試薬に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、アンモニアを生成する反応系を利用して生体成分を測定する系において、アンモニアの影響を回避する手段として、グルタミン酸デヒドロゲナーゼとイソクエン酸デヒドロゲナーゼを組み合わせてアンモニアを消去する方法が知られている(臨床検査−機器・試薬−第14巻、第183〜188頁、1991年)。しかし、この方法はイソクエン酸デヒドロゲナーゼの基質であるイソクエン酸が高価であるとの欠点を有する。また上記酵素に代えて、グルタミンシンセターゼを使用するアンモニアを消去する方法が知られている(特開平1−187096号公報)。この方法は試料中の内因性のアンモニアに予め活性化金属、例えばマグネシウムイオンの存在下でグルタミンシンセターゼを作用させて消去し、次いで活性化金属との結合性の強い結合剤、例えばEDTA塩などを加えてグルタミンシンセターゼの反応を止めた後、目的の生体成分を測定する方法であり、アンモニアの消去系では下記式1の反応が進行する。
【0003】
【数1】


【0004】上記方法では目的成分を測定する第二試薬へEDTA塩を添加して、第一試薬中のグルタミンシンセターゼの反応を停止しようとする。すなわち尿素窒素を測定するには、グルタミン酸、ADP、α−ケトグルタル酸、マグネシウムイオン、グルタミンシンセターゼおよびNADHを含む第一試薬を試料に添加してから、ADP、NADH、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、α−ケトグルタル酸およびEDTA・2Naを含む第二試薬を添加し、吸光度の減少を測定している。しかしながら第二試薬にEDTA塩を添加しても、上記反応は完全に停止せずに、目的の生体成分の測定において負誤差を与えるという欠点が見出された。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的はグルタミンシンセターゼを使用してアンモニアを消去する反応を完全に停止してから、目的の生体成分の測定を行うことにより、定量性、正確性に優れた簡便で廉価なアンモニア消去法およびそのための試薬を提供することにある。
【0006】本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討したところ、活性化金属との結合性の強い結合剤を第一試薬において特定量使用して、試料中のアンモニアを消去した後、さらに該結合剤を添加してグルタミンシンセターゼの反応を停止し、目的の生体成分を測定することにより、上記目的が達成されることを見出した。
【0007】すなわち本発明は(a)グルタミンシンセターゼ、(b)L−グルタミン酸、(c)ATPおよび(d)活性化金属を、(e)活性化金属との結合性の強い結合剤1〜10mMの共存下に試料に作用させて、内因性アンモニアおよび外因性アンモニアを消去し、次いで該結合剤をさらに1〜100mM添加して、グルタミンシンセターゼ反応を停止することを特徴とするアンモニアの消去法である。
【0008】または本発明は(a)グルタミンシンセターゼ、(b)L−グルタミン酸、(c)ATPおよび(d)活性化金属および(e)1〜10mMのEDTA塩を含む第一試薬を試料に作用させ、次いで(f)ウレアーゼ、(g)グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、(h)α−ケトグルタル酸、(i)NAD(P)Hおよび(j)1〜100mMのEDTA塩を含有する第二試薬を作用させ、次いで吸光度変化を測定することを特徴とする試料中の尿素窒素の測定法である。
【0009】さらに本発明は(a)グルタミンシンセターゼ、(b)L−グルタミン酸、(c)ATP、(d)活性化金属および(e)1〜10mMのEDTA塩を含む第一試薬を試料に作用させ、次いで(f)クレアチニンデイミナーゼ、(g)グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、(h)α−ケトグルタル酸、(i)NAD(P)Hおよび(j)1〜100mMのEDTA塩を含む第二試薬を作用させ、次いで吸光度変化を測定することを特徴とする試料中のクレアチニンの測定法である。
【0010】本発明は(a)グルタミンシンセターゼ、(b)L−グルタミン酸、(c)ATP、(d)活性化金属および(e)1〜10mMのEDTA塩を含む第一試薬を試料に作用させ、次いで(f)グアニン、(g)グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、(h)α−ケトグルタル酸、(i)NAD(P)Hおよび(j)1〜100mMのEDTA塩を含む第二試薬を作用させ、次いで吸光度変化を測定することを特徴とする試料中のグアナーゼの測定法である。
【0011】本発明は下記組成を含む第一試薬と下記第二試薬からなる尿素窒素測定用試薬である。
第一試薬:(a)グルタミンシンセターゼ(b)L−グルタミン酸(c)ATP(d)活性化金属および(e)1〜10mMの活性化金属との結合性の強い結合剤第二試薬:(f)ウレアーゼ(g)グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(h)α−ケトグルタル酸(i)NAD(P)Hおよび(j)1〜100mMの活性化金属との結合性の強い結合剤
【0012】本発明は下記組成を含む第一試薬と下記第二試薬からなるクレアチニン測定用試薬である。
第一試薬:(a)グルタミンシンセターゼ(b)L−グルタミン酸(c)ATP(d)活性化金属および(e)1〜10mMの活性化金属との結合性の強い結合剤第二試薬:(f)クレアチニンデイミナーゼ(g)グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(h)α−ケトグルタル酸(i)NAD(P)Hおよび(j)1〜100mMの活性化金属との結合性の強い結合剤
【0013】本発明は下記組成を含む第一試薬と下記第二試薬からなるグアナーゼ測定用試薬である。
第一試薬:(a)グルタミンシンセターゼ(b)L−グルタミン酸(c)ATP(d)活性化金属および(e)1〜10mMの活性化金属との結合性の強い結合剤第二試薬:(f)グアニン(g)グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(h)α−ケトグルタル酸(i)NAD(P)Hおよび(j)1〜100mMの活性化金属との結合性の強い結合剤
【0014】本発明に使用されるグルタミンシンセターゼ(E.C.6.3.12)は、L−グルタミン酸およびアンモニアにATPの存在下に作用して、L−グルタミン、ADPおよび無機リン酸を生成する反応を触媒する。このような酵素の起源は特に限定されるものではなく、例えば各種高等動物の脳や肝臓、豆の種子、大腸菌その他の微生物から得られ、好適にはバチルス属、ミクロコッカス属およびブレビバクテリウム属由来のものが挙げられる。
【0015】本発明に使用される活性化金属としては、2価金属イオン、例えばマグネシウムイオン、マンガンイオン、コバルトイオン等が好適に用いられる。これらのイオンは通常、塩化物、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩の形で用いられる。具体的にはMgCl2 , MnCl2 ,CoCl2 ,MgCO3 ,MnCO3 ,CoCO3 ,MgSO4 ,MnSO4 ,CoSO4 等が挙げられる。
【0016】本発明に使用される活性化金属との結合性の強い結合剤としては、エチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)、ニトリロ三酢酸塩(NTA)、エチレンジアミン二酢酸塩(EDDA)、エチレンジアミン二プロピオン酸塩酸塩(EDDP)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸塩(EDTA−OH)、ジアミノプロパン四酢酸塩(Methyl−EDTA)、グリコールエーテルジアミン四酢酸塩(GEDTA)、ヒドロキシエチルイミノ四酢酸塩(HIDA)、イミノ二酢酸(IDA)、ニトリロ二酢酸プロピオン酸(NDAP)、ニトリロ三プロピオン酸(NTP)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、トランス−シクロヘキサンジアミン四酢酸(CyDTA)等及びそれらの塩類を含むキレート剤、またはピロリン酸及びその塩類が挙げられる。
【0017】本発明のアンモニアを消去する試薬および目的成分を測定する第一試薬および第二試薬のpHは、各種緩衝液によりpH5〜11に保たれているのが好ましい。好ましい緩衝液としては、例えばトリエタノールアミン緩衝液、グッド緩衝液、トリス緩衝液等が挙げられる。
【0018】本発明の上記試薬は必要により、界面活性剤、防腐剤、安定化剤等を加えてもよい。界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤が好適に用いられる。防腐剤としては、NaN3 、抗生物質が好適に用いられる。
【0019】試薬の形状としては、液状試薬であっても、凍結乾燥製剤であってもよく、溶解液を組み合わせてもよい。
【0020】本発明では目的成分を測定する第一試薬に活性化金属との結合性の強い結合剤を1〜10mM含有させる必要がある。第一試薬に該結合剤が1mM未満含有すると、前記〔式1〕の反応が完全に停止せず、測定値に負誤差を生ずる。さらに10mMを越えて含有すると、アンモニアの消去が充分に行われない。本発明では第二試薬に上記結合剤を1〜100mM含有させて、グルタミンシンセターゼの反応を停止する。グルタミンシンセターゼの反応を停止するために、さらにグルタミンシンセターゼ反応阻害剤、例えばADPなどを添加してもよい。
【0021】本発明に使用されるグルタミンシンセターゼの濃度はアンモニアの消去に適した濃度であれば、特に限定されないが、好適には2〜100U/mlの範囲で用いられる。L−グルタミン酸、ATPの使用濃度としては、アンモニアの消去に適した濃度であれば、特に限定されないが、L−グルタミン酸は1〜100mM、ATPは5〜50mMの範囲で好適に用いられる。また活性化金属もアンモニアの消去に適した濃度であれば、特に限定はされないが、好適には5〜50mMの範囲で用いられる。
【0022】本発明に使用されるウレアーゼは、尿素と水に作用してアンモニアと二酸化炭素を生成する反応を触媒する。このような酵素の起源は特に限定されるものではなく、例えば細菌、酵母、カビ、植物、下等動物などから広く得られる。好適にはナタマメ由来のものが挙げられる。その濃度は特に制限されないが、尿素窒素測定用試薬中、好適には0.5〜50U/mlである。グルタミン酸デヒドロゲナーゼは、α−ケトグルタル酸にNAD(P)Hの存在下に作用して、L−グルタミン酸と水をはNAD(P)+ を生成する反応を触媒する。このような酵素の起源は特に限定されるものではなく、例えば細菌、酵母、カビなどから得られる。好適には牛肝由来のものが挙げられる。その濃度は特に限定されないが、好適には0.1〜10U/mlである。
【0023】本発明に使用されるクレアチニンデイミナーゼとは、クレアチンと水に作用してN−メチルヒダントインとアンモニアを生成する反応を触媒する。このような酵素の起源は特に限定されるものではなく、種々の微生物、例えばクロストリジウム(Clostridium) 属、コリネバクテリウム(Corynebacterium) 属などから得られる。その濃度は特に制限されないが、クレアチニン測定試薬中、好適には0.2〜20U/mlである。
【0024】本発明に使用れるグアニンとはグアナーゼの存在下に水と反応してキサンチンとアンモニアを生成する。その濃度は特に制限されないが、グアナーゼ測定試薬中、好適には5〜500mMである。
【0025】本発明の尿素窒素測定用試薬の一例としては、下記組成を含むものがある。
第一試薬: (a)グルタミンシンセターゼ 2〜100U/ml (b)L−グルタミン酸 1〜100mM (c)ATP 5〜50mM (d)活性化金属 5〜50mM (e)活性化金属との結合性の強い結合剤 1〜10mM および 非イオン性界面活性剤 0.01〜2%第二試薬: (f)ウレアーゼ 5〜50U/ml (g)グルタミン酸デヒドロゲナーゼ 0.1〜10U/ml (h)α−ケトグルタル酸 1〜100mM (i)NAD(P)H 0.01〜10mM (j)活性化金属との結合性の強い結合剤 1〜100mM ADP 0.02〜50mM および 非イオン性界面活性剤 0.01〜2%
【0026】本発明のクレアチニン測定用試薬の一例としては、下記組成を含むものがある。
第一試薬: (a)グルタミンシンセターゼ 2〜100U/ml (b)L−グルタミン酸 1〜100mM (c)ATP 5〜50mM (d)活性化金属 5〜50mM (e)活性化金属との結合性の強い結合剤 1〜10mM および 非イオン性界面活性剤 0.01〜2%第二試薬: (f)クレアチニンデイミナーゼ 0.2〜20U/ml (g)グルタミン酸デヒドロゲナーゼ 0.1〜10U/ml (h)α−ケトグルタル酸 1〜100mM (i)NAD(P)H 0.01〜10mM (j)活性化金属との結合性の強い結合剤 1〜100mM ADP 0.02〜50mM および 非イオン性界面活性剤 0.01〜2%
【0027】本発明のグアナーゼ測定用試薬の一例としては、下記組成を含むものがある。
第一試薬: (a)グルタミンシンセターゼ 2〜100U/ml (b)L−グルタミン酸 1〜100mM (c)ATP 5〜50mM (d)活性化金属 5〜50mM (e)活性化金属との結合性の強い結合剤 1〜10mM および 非イオン性界面活性剤 0.01〜2%第二試薬: (f)グアニン 5〜500mM (g)グルタミン酸デヒドロゲナーゼ 0.1〜10U/ml (h)α−ケトグルタル酸 1〜100mM (i)NAD(P)H 0.01〜10mM (j)活性化金属との結合性の強い結合剤 1〜100mM ADP 0.02〜50mM および 非イオン性界面活性剤 0.01〜2%
【0028】本発明の方法を用いて目的成分を測定する条件としては、特に厳密に規制するものではないが、反応温度は0〜40℃の間で、37℃または30℃が好適に用いられる。反応後の吸光度は通常、340nmにて測定する。
【0029】
【実施例】以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
実施例1 第一試薬 グルタミンシンセターゼ(バチルス属由来) 6U/ml L−グルタミン酸 50mM ATP 10mM MgCl2 15mM α−ケトグルタル酸 10mM EDTA・2K 2mM NADH 0.3mM 非イオン性界面活性剤 0.1% トリス緩衝液(pH8.5) 20mM 第二試薬 ウレアーゼ(ナタマメ由来) 30U/ml グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(牛肝臓由来)1.5U/ml α−ケトグルタル酸 10mM NADH 0.3mM EDTA・2K 70mM ADP 2mM 非イオン性界面活性剤 0.1% トリス緩衝液(pH8.5) 20mM
【0030】試料液尿素窒素溶液(15、60mg/dl)を管理血清に添加したもの、(アンモニア溶液(30、90mg/dl)を管理血清に添加したものおよび尿素窒素溶液又はアンモニア溶液を添加しない管理血清を使用した。
操作方法試料液0.1mlに第一試薬3mlを加え、37℃で5分間インキュベートした後、第二試薬を1ml加えて、単位時間当りの吸光度変化を340nmで測定した。測定結果を表1に尿素窒素量として示す。
【0031】
【表1】


【0032】表1の測定結果から、アンモニアを添加した場合にも、アンモニアの影響を受けることなく、尿素窒素量がほぼ正確に測定できたことがわかる。
【0033】比較例1 第一試薬 グルタミンシンセターゼ(バチルス属由来) 6U/ml L−グルタミン酸 50mM ATP 10mM MgCl2 15mM α−ケトグルタル酸 10mM NADH 0.3mM 非イオン性界面活性剤 0.1% トリス緩衝液(pH8.5) 20mM 第二試薬 ウレアーゼ(ナタマメ由来) 30U/ml グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(牛肝臓由来)1.5U/ml α−ケトグルタル酸 10mM NADH 0.3mM EDTA・2K 70mM ADP 2mM 非イオン性界面活性剤 0.1% トリス緩衝液(pH8.5) 20mM
【0034】試料液実施例1と同じものを使用した。
操作方法試料液0.1mlに第一試薬3mlを加え、37℃で5分間インキュベートした後、第二試薬を1ml加えて、単位時間当りの吸光度変化を340nmで測定した。測定結果を表1に尿素窒素量として示す。
【0035】表1の測定結果より、第一試薬からEDTA・2Kを除くと、アンモニアを添加した場合にアンモニアの消去後、グルタミンシンセターゼが完全に停止しておらず、尿素窒素の測定値が負の影響を受けて正確に測定されていないことがわかる。
【0036】比較例2 第一試薬 L−グルタミン酸 50mM ATP 10mM MgCl2 15mM α−ケトグルタル酸 10mM NADH 0.3mM 非イオン性界面活性剤 0.1% トリス緩衝液(pH8.5) 20mM 第二試薬 ウレアーゼ(ナタマメ由来) 30U/ml グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(牛肝臓由来)1.5U/ml α−ケトグルタル酸 10mM NADH 0.3mM EDTA・2K 70mM ADP 2mM 非イオン性界面活性剤 0.1% トリス緩衝液(pH8.5) 20mM
【0037】試料液実施例1と同じものを使用した。
操作方法試料液0.1mlに第一試薬3mlを加え、37℃で5分間インキュベートした後、第二試薬を1ml加えて、単位時間当りの吸光度変化を340nmで測定した。測定結果を表1に尿素窒素量として示す。
【0038】表1の測定結果より、第一試薬EDTA・2Kとグルタミンシンセターゼを添加しないと、アンモニアを添加した場合に尿素窒素量がアンモニアの影響を受けて正確に測定されていないことがわかる。
【0039】比較例3 第一試薬 グルタミンシンセターゼ 3U/ml L−グルタミン酸 50mM ATP 10mM MgCl2 15mM α−ケトグルタル酸 10mM NADH 0.3mM 非イオン性界面活性剤 0.1% トリス緩衝液(pH8.5) 20mM 第二試薬 ウレアーゼ(ナタマメ由来) 30U/ml グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(牛肝臓由来)1.5U/ml α−ケトグルタル酸 10mM NADH 0.3mM EDTA・2K 70mM ADP 2mM 非イオン性界面活性剤 0.1% トリス緩衝液(pH8.5) 20mM
【0040】試料液実施例1と同じものを使用した。
操作方法試料液0.1mlに第一試薬3mlを加え、37℃で5分間インキュベートした後、第二試薬を1ml加えて、単位時間当りの吸光度変化を340nmで測定した。測定結果を表1に尿素窒素量として示す。
【0041】表1の測定結果より、第一試薬のグルタミンシンセターゼ濃度を低下させても、第一試薬にEDTA・2Kを添加しないと、アンモニアを添加した場合にアンモニアの消去後グルタミンシンセターゼが完全に停止せず、尿素窒素の測定値が負の影響を受けて正確に測定されていないことがわかる。
【0042】実施例2 第一試薬 グルタミンシンセターゼ 6U/ml L−グルタミン酸 50mM ATP 10mM MgCl2 15mM EDTA・2K 2mM α−ケトグルタル酸 10mM NADPH 1.5U/ml 非イオン性界面活性剤 0.1% トリス緩衝液(pH8.5) 20mM 第二試薬 クレアチニンデイミナーゼ 10U/ml グルタミン酸デヒドロゲナーゼ 1.5U/ml α−ケトグルタル酸 10mM NADPH 0.3mM EDTA・2K 70mM 非イオン性界面活性剤 0.1% トリス緩衝液(pH8.5) 20mM
【0043】試料液クレアチニン溶液(1.1mg/dl、5.7mg/dl)を管理血清に添加したもの、アンモニア溶液(30mg/dl、90mg/dl)を管理血清に添加したものおよびクレアチニン溶液又はアンモニア溶液に添加しない管理血清を使用した。
操作方法試料液0.1mlに第一試薬3mlを加え、37℃で5分間インキュベートした後、第二試薬を1ml加えて、単位時間当り吸光度変化を340nmで測定した。測定結果を表2にクレアチニン量として示す。
【0044】比較例4〜6下記第一試薬および第二試薬を用いて、実施例1と同じ試料液を実施例1と同じ操作方法により吸光度測定した。その結果を表2にクレアチニン量として示す。
第一試薬(比較例4)
グルタミンシンセターゼ 6U/ml L−グルタミン酸 50mM ATP 10mM MgCl2 15mM α−ケトグルタル酸 10mM NADPH 1.5U/ml 非イオン性界面活性剤 0.1% トリス緩衝液(pH8.5) 20mM 第二試薬(比較例4)
クレアチニンデイミナーゼ 10U/ml グルタミン酸デヒドロゲナーゼ 1.5U/ml NADPH 0.3mM EDTA・2K 70mM 非イオン性界面活性剤 0.1% トリス緩衝液(pH8.5) 20mM
【0045】
第一試薬(比較例5)
L−グルタミン酸 50mM ATP 10mM MgCl2 15mM α−ケトグルタル酸 10mM NADPH 1.5U/ml 非イオン性界面活性剤 0.1% トリス緩衝液(pH8.5) 20mM 第二試薬(比較例5)
クレアチニンデイミナーゼ 10U/ml グルタミン酸デヒドロゲナーゼ 1.5U/ml NADPH 0.3mM EDTA・2K 70mM 非イオン性界面活性剤 0.1% トリス緩衝液(pH8.5) 20mM
【0046】
第一試薬(比較例6)
グルタミンシンセターゼ 3U/ml L−グルタミン酸 50mM ATP 10mM MgCl2 15mM α−ケトグルタル酸 10mM NADPH 1.5U/ml 非イオン性界面活性剤 0.1% トリス緩衝液(pH8.5) 20mM 第二試薬(比較例6)
クレアチニンデイミナーゼ 10U/ml グルタミン酸デヒドロゲナーゼ 1.5U/ml EDTA・2K 70mM NADPH 0.3mM 非イオン性界面活性剤 0.1% トリス緩衝液(pH8.5) 20mM
【0047】
【表2】


【0048】表2の測定結果から、アンモニアを添加した場合(実施例2)にも、アンモニアの影響を受けることなく、クレアチニン量がほぼ正確に測定できていることがわかる。また第一試薬からEDTA・2Kを除くと(比較例4)、アンモニアを添加した場合にアンモニアの消去後、グルタミンシンセターゼが完全に停止しておらず、クレアチニンの測定値が負の影響を受けて正確に測定されていないことがわかる。また第一試薬にEDTA・2Kとグルタミンシンセターゼを添加しないと(比較例5)、アンモニアを添加した場合にクレアチニン量がアンモニアの影響を受けて正確に測定されていないことがわかる。さらに第一試薬のグルタミンシンセターゼ濃度を低下させても、第一試薬にEDTA・2Kを添加しないと(比較例6)、アンモニアを添加した場合にアンモニア消去後、グルタミンシンセターゼが完全に停止せず、クレアチニンの測定値が負の影響を受けて正確に測定されていないことがわかる。
【0049】実施例3 第一試薬 グルタミンシンセターゼ 6U/ml L−グルタミン酸 50mM ATP 10mM MgCl2 15mM EDTA・2K 2mM NADPH 0.3U/ml α−ケトグルタル酸 10mM 非イオン性界面活性剤 0.1% グッド緩衝液(pH6.8) 20mM 第二試薬 グアニン 200μM グルタミン酸デヒドロゲナーゼ 1.5U/ml α−ケトグルタル酸 10mM NADPH 0.3mM EDTA・2K 70mM 非イオン性界面活性剤 0.1% グッド緩衝液(pH6.8) 20mM
【0050】試料液グアナーゼ溶液(2.0、6.0U/1)を管理血清に添加したもの、アンモニア溶液(30、90mg/dl)を管理血清に添加したものおよびグアナーゼ溶液又はアンモニア溶液を添加しない管理血清を使用した。
操作方法試料液0.1mlに第一試薬3mlを加え、37℃で5分間インキュベートした後、第二試薬を1ml加えて、単位時間当り吸光度変化を340nmで測定した。測定結果を表3にグアナーゼ活性として示す。
【0051】比較例7〜9下記第一試薬および第二試薬を用いて、実施例1と同じ資料液を実施例1と同じ操作方法により吸光度を測定した。その測定結果は表3にグアナーゼ活性として示す。
第一試薬(比較例7)
グルタミンシンセターゼ 6U/ml L−グルタミン酸 50mM ATP 10mM MgCl2 15mM α−ケトグルタル酸 10mM NADPH 0.3U/ml 非イオン性界面活性剤 0.1% グッド緩衝液(pH6.8) 20mM 第二試薬(比較例7)
グアニン 200μM グルタミン酸デヒドロゲナーゼ 1.5U/ml NADPH 0.3mM EDTA・2K 70mM 非イオン性界面活性剤 0.1% グッド緩衝液(pH6.8) 20mM
【0052】
第一試薬(比較例8)
L−グルタミン酸 50mM ATP 10mM MgCl2 15mM α−ケトグルタル酸 10mM NADPH 0.3U/ml 非イオン性界面活性剤 0.1% グッド緩衝液(pH6.8) 20mM 第二試薬(比較例8)
グアニン 200μM グルタミン酸デヒドロゲナーゼ 1.5U/ml NADPH 0.3mM EDTA・2K 70mM 非イオン性界面活性剤 0.1% グッド緩衝液(pH6.8) 20mM
【0053】
第一試薬(比較例9)
グルタミンシンセターゼ 3U/ml L−グルタミン酸 50mM ATP 10mM MgCl2 15mM α−ケトグルタル酸 10mM NADPH 1.5U/ml 非イオン性界面活性剤 0.1% グッド緩衝液(pH6.8) 20mM 第二試薬(比較例9)
グアニン 200μM グルタミン酸デヒドロゲナーゼ 1.5U/ml NADPH 0.3mM EDTA・2K 70mM 非イオン性界面活性剤 0.1% グッド緩衝液(pH6.8) 20mM
【0054】
【表3】


【0055】表3の測定結果から、アンモニアを添加した場合(実施例3)にも、アンモニアの影響を受けることなく、グアナーゼ量がほぼ正確に測定できていることがわかる。また第一試薬からEDTA・2Kを除くと(比較例7)、アンモニアを添加した場合にアンモニアの消去後、グルタミンシンセターゼが完全に停止しておらず、グアナーゼ活性の測定値が負の影響を受けて正確に測定されていないことがわかる。 また第一試薬にEDTA・2Kをグルタミンシンセターゼを添加しないと(比較例8)、アンモニア添加した場合にグアナーゼ活性がアンモニアの影響を受けて正確に測定されていないことがわかる。さらに第一試薬のグルタミンシンセターゼ濃度を低下させても、第一試薬にEDTA・2Kを添加しないと(比較例9)、アンモニアを添加した場合にアンモニア消去後、グルタミンシンセターゼが完全に停止せず、グアナーゼ活性の測定値が負の影響を受けて正確に測定されていないことがわかる。なお、上記実施例および比較例において、非イオン性界面活性剤としては、ポリエチレングリコールモノ−p−イソオクチルシクロヘキシルエーテルを使用した。
【0056】
【発明の効果】活性化金属との結合性の強い結合剤を目的成分を測定する第二試薬に含有させるだけでは、グルタミンシンセターゼの反応を完全に停止することができず、負の誤差を生じる(比較例2、3参照)。したがって本発明では、特定量の結合剤の共存下にグルタミンシンセターゼを反応させて内因性アンモニアおよび外因性アンモニアを消去し、次いで目的とする測定成分、例えば尿素窒素、クレアチニン、グアナーゼなどの測定系にさらに該結合剤を添加することにより、グルタミンシンセターゼの反応を完全に消去させて目的成分を測定することにより、上記欠点を解消する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (a)グルタミンシンセターゼ、(b)L−グルタミン酸、(c)ATPおよび(d)活性化金属を、(e)活性化金属との結合性の強い結合剤1〜10mMの共存下に試料に作用させて、内因性アンモニアおよび外因性アンモニアを消去し、次いで該結合剤をさらに1〜100mM添加して、グルタミンシンセダーゼ反応を停止することを特徴とするアンモニアの消去法。
【請求項2】 (a)グルタミンシンセターゼ、(b)L−グルタミン酸、(c)ATPおよび(d)活性化金属および(e)1〜10mMのEDTA塩を含む第一試薬を試料に作用させ、次いで(f)ウレアーゼ、(g)グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、(h)α−ケトグルタル酸、(i)NAD(P)Hおよび(j)1〜100mMのEDTA塩を含有する第二試薬を作用させ、次いで吸光度変化を測定することを特徴とする試料中の尿素窒素の測定法。
【請求項3】 (a)グルタミンシンセターゼ、(b)L−グルタミン酸、(c)ATP、(d)活性化金属および(e)1〜10mMのEDTA塩を含む第一試薬を試料に作用させ、次いで(f)クレアチニンデイミナーゼ、(g)グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、(h)α−ケトグルタル酸、(i)NAD(P)Hおよび(j)1〜100mMのEDTA塩を含む第二試薬を作用させ、次いで吸光度変化を測定することを特徴とする試料中のクレアチニンの測定法。
【請求項4】 (a)グルタミンシンセターゼ、(b)L−グルタミン酸、(c)ATP、(d)活性化金属および(e)1〜10mMのEDTA塩を含む第一試薬を試料に作用させ、次いで(f)グアニン、(g)グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、(h)α−ケトグルタル酸、(i)NAD(P)Hおよび(j)1〜100mMのEDTA塩を含む第二試薬を作用させ、次いで吸光度変化を測定することを特徴とする試料中のグアナーゼの測定法。
【請求項5】下記組成を含む第一試薬と下記第二試薬からなる尿素窒素測定用試薬。
第一試薬:(a)グルタミンシンセターゼ(b)L−グルタミン酸(c)ATP(d)活性化金属および(e)1〜10mMの活性化金属との結合性の強い結合剤第二試薬:(f)ウレアーゼ(g)グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(h)α−ケトグルタル酸(i)NAD(P)Hおよび(j)1〜100mMの活性化金属との結合性の強い結合剤
【請求項6】下記組成を含む第一試薬と下記第二試薬からなるクレアチニン測定用試薬。
第一試薬:(a)グルタミンシンセターゼ(b)L−グルタミン酸(c)ATP(d)活性化金属および(e)1〜10mMの活性化金属との結合性の強い結合剤第二試薬:(f)クレアチニンデイミナーゼ(g)グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(h)α−ケトグルタル酸(i)NAD(P)Hおよび(j)1〜100mMの活性化金属との結合性の強い結合剤
【請求項7】下記組成を含む第一試薬と下記第二試薬からなるグアナーゼ測定用試薬。
第一試薬:(a)グルタミンシンセターゼ(b)L−グルタミン酸(c)ATP(d)活性化金属および(e)1〜10mMの活性化金属との結合性の強い結合剤第二試薬:(f)グアニン(g)グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(h)α−ケトグルタル酸(i)NAD(P)Hおよび(j)1〜100mMの活性化金属との結合性の強い結合剤