説明

アーク放電監視装置

【課題】直流高圧遮断器12の監視を必要とする場所のアーク放電16を確実に検出し、外乱光56による誤検出を防止する。
【解決手段】アーク放電16により発生する光を受光して検出信号を出力する光センサ18と、この光センサ18の出力する検出信号により警報表示をする表示装置20と、アーク放電16が発生する領域に受光端24を配置し、他端26を光センサ18に接続した光ガイド28とを備える。光ガイド28の受光端24側からみて、アーク放電16が発生する領域を囲む閉ループ30を描いたとき、その閉ループ30に外接する円32または多角形34を底面とし受光端24を頂点にした錐体36を設定して、錐体36の側面38に囲まれた状態で、受光端24からアーク放電16が発生する領域を見通すことができる範囲の光のみを受光する集光レンズ系40を、光ガイド28の受光端24に取りつけた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に直流高圧遮断器で発生するアーク放電を監視するためのアーク放電監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気鉄道に電力を供給する変電所等では、直流送電回路や直流電力機器等の保護のために、直流高圧遮断器が使用される。直流大電流を遮断するときに発生するアークは、接点を溶かしたり、周囲の絶縁物を発火させたりする。直流高圧遮断器ではアークが発生すると自動消滅し難く、強制的にアークを消滅させなければならない。放置すると、電気設備の火災を引き起こすおそれもある。そこで、アークの発生を電気的に検出する回路や、発生するアークを光ファイバで光学的に検出する装置が開発されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−243763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既知の従来の技術には、次のような解決すべき課題があった。
電気鉄道の運用のために、様々な場所で、直流高圧遮断器が使用されている。密閉された容器に収容した密閉式の遮断器も、接点が露出した開放型の遮断器もある。また、アークの発生箇所が必ずしも接点の近傍のみでないことがある。しかも、接点の周辺よりも、接点から離れた場所でのアーク放電のほうが、火災を引き起こしやすい。既知の光学的検出方法では、全てのアーク放電を漏れなく検出することが難しく、さらに、外乱光により誤検出が生じるという問題があった。
上記の課題を解決するために、本発明は、監視を必要とする場所の全てのアーク放電を漏れなく検出し、外乱光による誤検出を防止する、アーク放電監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下の構成はそれぞれ上記の課題を解決するための手段である。
〈構成1〉
アーク放電により発生する光を受光して検出信号を出力する光センサと、この光センサの出力する検出信号により警報表示をする表示装置と、前記アーク放電が発生する領域に受光端を配置し、他端を前記光センサに接続した光ガイドと、前記光ガイドの前記受光端側からみて、前記アーク放電が発生する領域を囲む閉ループを描いたとき、その閉ループに外接する円または多角形を底面とし前記受光端を頂点にした錐体を設定して、前記錐体の側面に囲まれた状態で、前記受光端から前記アーク放電が発生する領域を見通すことができる範囲の光のみを受光する集光レンズ系を、前記光ガイドの前記受光端に取りつけたことを特徴とするアーク放電監視装置。
【0006】
〈構成2〉
構成1に記載のアーク放電監視装置において、前記集光レンズ系の一部に、紫外光を通過させ、それ以外の光を遮断する光学フィルタを組み込んだことを特徴とするアーク放電監視装置。
【0007】
〈構成3〉
構成1または2に記載のアーク放電監視装置において、前記集光レンズ系は、前記光ガイドの受光端を頂点とする円錐または多角錘の一部の側面から成るフードであって、検出すべき波長の光を反射しない内壁を有するものと、前記受光端において、前記フードを通じて入射する光を、前記光ガイドの光軸に平行な光に変換する光学系を備えていることを特徴とするアーク放電監視装置。
【0008】
〈構成4〉
構成3に記載のアーク放電監視装置において、前記光ガイドは、コアとクラッドを有する一本または複数本の光ファイバであって、受光端において、光軸に垂直な面で切断したものであることを特徴とするアーク放電監視装置。
【発明の効果】
【0009】
〈構成1の効果〉
光ガイドの受光端を頂点とする円錐や多角錘の側面に囲まれた範囲で、アーク放電が発生する領域の光を受光するので、外乱光に妨げられずに、全てのアーク放電の発生を確実に検出できる。
〈構成2の効果〉
紫外光のみを受光端から受光すれば、紫外光成分の多いアーク放電を他の外光に紛らわされずに検出できる。
〈構成4の効果〉
光軸に垂直な面で切断した光ファイバの端面からは、開口角の範囲でのみ光が入力する。従って、上記の光学系により導かれた光のみを受け入れ、外乱光を遮断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は遮断器12の外観斜視図、(b)はアーク放電監視装置10の概略説明図である。
【図2】集光レンズ系40の特性説明図である。
【図3】集光レンズ系40の具体的な構造例を示す縦断面図である。
【図4】光ファイバ54の一端を接続した光センサ18と後続装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を実施例毎に詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
図1(a)は遮断器12の外観斜視図、(b)はアーク放電監視装置10の概略説明図である。
アーク放電監視装置10は、例えば、図1(a)に示すような遮断器12に取りつけられる。遮断器12の内部には、直流高圧電流を断続するための接点14が配置され、例えば、遮蔽板15により電気的に遮蔽されている。接点14を開閉したときに、例えば、接点14と遮蔽板15との間にアーク放電16が発生することがある。これをアーク放電監視装置10が検出する。
【0013】
アーク放電監視装置10は、アーク放電16により発生する光を受光して検出信号を出力する光センサ18と、この光センサ18の出力する検出信号により警報表示をする表示装置20を備える。アーク放電16により発生する光は、光ガイド28を通じて光センサ18に入力する。アーク放電16により生じる光は紫外光成分が多いので、光センサ18は紫外領域に近い光に対して高感度のものが好ましい。光ガイド28は、例えば、石英ガラス製の光ファイバを1本あるいは複数本束ねたものが適する。
【0014】
光ガイド28は、アーク放電16が発生する領域に受光端24を配置し、他端26を光センサ18に接続している。光ガイド28の受光端24には、集光レンズ系40を取りつけている。
【0015】
図2は、集光レンズ系40の特性説明図である。
集光レンズ系40は、次のように設計する。まず、図1に示した光ガイド28の受光端24側からみて、アーク放電16が発生する領域を囲む閉ループ30を描く。次に、図2(a)に示すように、その閉ループ30に外接する円32を描く。この円32を底面とし受光端24を頂点37にした錐体36(ここでは円錐)を設定する。
【0016】
この錐体36の側面38に囲まれた状態で、受光端24からアーク放電16が発生する領域を見通すことができる範囲の光のみを受光するように構成する。その構成例は図3で説明する。なお、アーク放電16が発生する領域を囲む閉ループ30が多角形の場合には、例えば、図2(b)に示すように、多角形34を底面とし受光端24を頂点37にした錐体36を設定すればよい。なお、図2(b)では、アーク放電が発生する領域22が多角形34を形成しており、この多角形34を閉ループ30として錐体36を設定している。従って、図の該当する部分の符号を22(34)(30)とした。
【0017】
即ち、図1に示すように、光ガイド28の受光端24を頂点37とする錐体36の側面38に囲まれた範囲で、アーク放電16が発生する領域の光を受光する。それ以外の場所から入射する光は、集光レンズ系40により遮断される。その結果、外乱光56に妨げられずに、アーク放電16の発生を確実に検出できる。
【0018】
上記のように、錐体36の底面は、楕円形でも四角形でも構わない。また、正多角形でなくて、凹凸のある変形した多角形であってもよい。可能な限り外乱光56を遮断して、アーク放電16が発生するおそれのある領域全てを監視対象にする。
【実施例2】
【0019】
図3は集光レンズ系40の具体的な構造例を示す縦断面図である。
集光レンズ系40は、フード44と光学系48と光学フィルタ42を組み合わせたものである。光学フィルタ42側に光ファイバ54の受光端24が固定されている。光ファイバ54は、例えば、コア50とクラッド52とを有するプラスチック光ファイバである。即ち、この実施例では、光ガイド28に光ファイバ54を使用した。
【0020】
フード44は、例えば、金属あるいはプラスチックから構成され、光ファイバ54の受光端24を頂点37とする円錐の一部の側面38から成るフード44である。このフード44は、検出すべき波長の光を反射しない内壁46を有する。例えば、フード44を黒色のプラスチック成型体により構成すれば、この特性を実現できる。
【0021】
光学系48は、光ファイバ54の受光端24において、フード44を通じて入射する光を、光ファイバ54の光軸に平行な光に変換する機能を有し、例えば、凹レンズにより構成する。プリズムやコリメータレンズ等により構成することもできる。これにより、フード44を通じて入射する全ての光を光ファイバ54のコア50に導入することができる。
【0022】
光ファイバ54の端面は、特別の加工処理を必要としない。コア50とクラッド52を有する一本または複数本の光ファイバ54を、受光端24において、光軸に垂直な面でそのまま切断したものでよい。開口角の小さな光ファイバでも、入射する全ての光をコア50に受け入れることができる。同時に、光学系48により導かれた光のみを受け入れ、外乱光56を遮断することができる。
【0023】
光学フィルタ42は、集光レンズ系40の一部に組み込まれる。光学フィルタ42には、紫外光を通過させ、それ以外の光を遮断するものを使用する。アーク放電16により生じる光には紫外光成分が多く含まれる。紫外光のみを受光端24から受光すれば、アーク放電16以外の原因で光が侵入しても、その光を光学フィルタ42で遮断するので、さらにアーク放電16の検出精度が向上する。
【0024】
図4は、光ファイバ54の一端を接続した光センサ18と後続装置の説明図である。
光ファイバ54の一端は、光センサ18に固定されている。光センサ18が入射する光を検出すると、その端子から入射光の強度に比例した検出信号が出力される。これを増幅回路58で増幅する。
【0025】
増幅回路58の出力は判定回路60に入力する。判定回路60は、増幅回路58の出力が一定のレベル以上の場合にスイッチ回路62を駆動して、スイッチをオンにする。これにより、例えば、パトライト(登録商標)により構成される表示装置20を駆動して、アークが発生していることを通報する。表示装置20は例えば、ブザーでもよい。また、遠隔地の監視センターに警報信号を送信する発信器であってもよい。
【0026】
以上の構成により、本発明のアーク放電監視装置は、遮断器12で発生するアーク放電による光を外乱光に妨害されることなく確実に検出して、監視員等に通知することができる。従って、アーク放電により発生する火災等を未然に防ぐことができる。
【符号の説明】
【0027】
10 アーク放電監視装置
12 遮断器
14 接点
15 遮蔽板
16 アーク放電
18 光センサ
20 表示装置
22 アーク放電が発生する領域
24 受光端
26 他端
28 光ガイド
30 閉ループ
32 円
34 多角形
36 錐体
37 頂点
38 側面
40 集光レンズ系
42 光学フィルタ
44 フード
46 内壁
48 光学系
50 コア
52 クラッド
54 光ファイバ
56 外乱光
58 増幅回路
60 判定回路
62 スイッチ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーク放電により発生する光を受光して検出信号を出力する光センサと、
この光センサの出力する検出信号により警報表示をする表示装置と、
前記アーク放電が発生する領域に受光端を配置し、他端を前記光センサに接続した光ガイドと、
前記光ガイドの前記受光端側からみて、前記アーク放電が発生する領域を囲む閉ループを描いたとき、その閉ループに外接する円または多角形を底面とし前記受光端を頂点にした錐体を設定して、前記錐体の側面に囲まれた状態で、前記受光端から前記アーク放電が発生する領域を見通すことができる範囲の光のみを受光する集光レンズ系を、前記光ガイドの前記受光端に取りつけたことを特徴とするアーク放電監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアーク放電監視装置において、
前記集光レンズ系の一部に、紫外光を通過させ、それ以外の光を遮断する光学フィルタを組み込んだことを特徴とするアーク放電監視装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアーク放電監視装置において、
前記集光レンズ系は、前記光ガイドの受光端を頂点とする円錐または多角錘の一部の側面から成るフードであって、検出すべき波長の光を反射しない内壁を有するものと、前記受光端において、前記フードを通じて入射する光を、前記光ガイドの光軸に平行な光に変換する光学系を備えていることを特徴とするアーク放電監視装置。
【請求項4】
請求項3に記載のアーク放電監視装置において、
前記光ガイドは、コアとクラッドを有する一本または複数本の光ファイバであって、受光端において、光軸に垂直な面で切断したものであることを特徴とするアーク放電監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−105660(P2013−105660A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249658(P2011−249658)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(591235614)昭和電子工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】