説明

アース構造体、ヒンジブラケット並びにフラットワイヤ

【課題】この発明は、安定したアース効果を得ることができると共に、耐久性のあるアース構造を提供することを目的とする。
【解決手段】車両パネル11と、該車両パネル11に回転開閉可能にアース付ヒンジ1aで取り付けられたドア12とをアース線5によって同電位とするアース構造であって、前記アース付ヒンジ1aを、回転方向に所定の厚みを有する立体形状に形成し、前記アース線5を、前記アース付ヒンジ1aの内側に収納し、前記アース線5を、前記該車両パネル11、及び前記ドア12に接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の車体に対して可動する部品を車体と同電位にするアース構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、車両の電装品は、エンジンルーム等に設置されたバッテリの正極側と接続されると共に、バッテリの負極側と接続された車体にアースされている。これにより、電気回路が成立し、電装品はバッテリから供給される電力によって駆動する。
【0003】
昨今は、車体に取り付けられて回転可動するドア等に多くの電装品が配置された車両が増えている。図10は、従来の車両の全開したドア部分を背面側から見た拡大断面図である。従来の車体は、車体パネル101のドア開口部の側面に備えた上下のドアヒンジ110,110の間の貫通孔111と、ドアヒンジ110,110を取り付けるドア120の前方側面の貫通孔(図示省略)とを跨ぐワイヤハーネス130が設けられている。このワイヤハーネス130には複数の電気供給線131、及びアース線132が収納されている。ここで、複数の電装品のそれぞれに対して、電気供給線131及びアース線132が必要である。このため、電装品の増加に伴い、電気供給線131及びアース線132も増加し、ワイヤハーネス130が太くなる傾向にある。ドアの可動に伴って、ワイヤハーネス130の跨ぎ部分130aも可動するが、この様に太いワイヤハーネス130の場合、多数の電線を1本にまとめたワイヤハーネス130の可撓性は低下し、各電線の耐久性が低下するものであった。
【0004】
また、閉状態のドア120と車体パネル101との間の車外側には隙間があるため、跨ぎ部分130aは露出している。このワイヤハーネス130は絶縁テープ等で被覆されているものの、露出部分の絶縁テープ等は劣化し、これに伴ってワイヤハーネス130を構成する電気供給線131やアース線132も劣化する。このうち、供給電力の通電を許容する電気供給線131は、銅線部分も被覆部分も厚く、劣化し難い構成となっている。しかし、アース線132は、アースできればよいため、電気供給線131に比べて被覆部分が薄いものが多い。したがってアース線132は、電気供給線131より劣化しやすく、アース線が劣化した場合、安定したアース効果を得ることができなくなるという可能性があった。
【0005】
そこで、アース線132の代わりに導電性のドアヒンジ110を用いることで、ドア120を車体パネル101にアースするアース構造が提案されている(特許文献1参照)。
このアース構造は、合成樹脂製のドアパネルに設置したアンテナのアースを、ボディとドアパネルを接続しているヒンジで構成するものである。しかし、この場合、ドアパネル側のヒンジ構成部品は、ボディ側のヒンジ構成部品と回転軸によって回転可能に接続されているため、安定したアース効果を得ることはできなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2003−165336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、安定したアース効果を得ることができると共に、耐久性のあるアース構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、車体と、該車体に回転開閉可能にヒンジで取り付けられた回転開閉体とをアース体によって同電位とするアース構造体であって、前記ヒンジを、回転方向に所定の厚みを有する立体形状に形成し、前記アース体を、前記ヒンジの内側に収納し、前記アース体を、前記該車体、及び前記回転開閉体に接続したことを特徴とする。
【0009】
上記回転開閉体は、フロントドアパネル、リアドアパネル、トランクパネル、ボンネット、或いは開閉式ドアミラー等であることを含む。
上記アース体を前記車体及び前記回転開閉体に接続するとは、前記車体及び前記回転開閉体に対して、アース体を通電性のボルトで接続固定すること、或いは溶接すること等であることを含む。
【0010】
これにより、車体と回転開閉体とを確実に通電させて同電位とすることができる。また、例えば、アース体の車外側をヒンジで覆う配置である場合、少なくとも、ドアの閉状態や、開閉式ドアミラーの開状態等の通常状態において、アース体の露出を防止できる。したがって、耐久性のあるアース構造体を得ることができる。
【0011】
この発明の態様として、前記ヒンジを、前記車体に固定する車体側固定部と、前記回転開閉体に固定する回転開閉体側固定部と、車体側固定部と回転開閉体側固定部とを枢動可能に接続する枢動軸とで構成とし、前記アース体に、前記枢動軸に対する位置を保持する保持部を備えることができる。
これにより、アース体の位置が回転開閉体の開閉によって変わることを防止でき、アース体がヒンジの可動を妨げることを防止できる。したがって、より耐久性のあるアース構造体を得ることができる。
【0012】
また、この発明の態様として、前記保持部を、前記枢動軸の外周を周回させた前記アース体の一部で構成することができる。
これにより、別部材によって保持部を構成する場合と比較して、部品点数を低減することができる。
【0013】
また、この発明の態様として、前記アース体に、前記車体に接続する車体接続部と、前記回転開閉体に接続する回転開閉体接続部とを備え、前記車体に、前記車体接続部と車体側固定部とを重ね合わせてアースボルトで接続固定すると共に、前記回転開閉体に、前記回転開閉体接続部と前記回転開閉体側固定部とを重ね合わせてアースボルトで接続固定することができる。
【0014】
上記アースボルトは、螺入時に、車体や回転開閉体のネジ孔に塗布された塗装を剥離しながら螺挿することができるとともに、固定するアース体との接触面積を確実に確保することのできるフランジ部を備えた通電性のボルトである。
これにより、ヒンジの固定と共に、アース体を車体および回転開閉体に電気的に接続でき、物理的に接続固定できる。したがって、アース体単体での接続固定作業を省くことができ、組立工程数を低減することができる。
【0015】
また、この発明の態様として、前記アース体を、シート状に形成することができる。
上記シート状のアース体は、薄板状の導電体とその導電体を被覆するラミネートシートで構成されたフラットワイヤ等であることを含む。
これにより、アースの湾曲方向には可撓するが、その他方向の可撓性を有しないアース体を提供できる。この一方向への可撓性により、ヒンジ内部でシート状のアース体が他の方向へ変形することを規制できる。したがって、ヒンジの回動を、シート状のアース体が妨げることを防止できる。
【0016】
また、この発明は、車体に対して回転開閉体を回転可能に接続するヒンジブラケットであって、回転方向に所定の厚みを有する立体形状に形成し、前記車体と前記回転開閉体とを電気的に接続して同電位とするアース体の大部分を、内側に収納したことを特徴とする。
【0017】
このヒンジブラケットにより、車体と回転開閉体を物理的に開閉可能に接続できると共に、車体と回転開閉体とを電気的に接続して同電位とすることができ、利便性が向上する。したがって、回転開閉体に装備する電装品のそれぞれを車体にアース接続する必要がなくなり、車体と回転開閉体のとの間の可動空間を跨ぐアース線をなくすことができる。
【0018】
さらに、この発明は、薄板状の導電板と、前記導電板を被覆する不導電性のシートとで構成したフラットワイヤにおいて、長手方向内側に、一端を挿通許容する挿通孔を設けたことを特徴とする。
【0019】
これにより、フラットワイヤの一端を挿通孔に挿通させてループ状を形成することができる。したがって、ヒンジに備えた枢動軸の外周を上記ループ部分で周回させることができる。これにより、ヒンジ内部でのフラットワイヤの位置を上記枢動軸で規制することができる。
【0020】
この発明の態様として、前記シートに、前記導電板が露出する露出部を備えることができる。
これにより、確実にアースボルトと導電板とが接触することができる。したがって、前記アース体を車体や回転開閉体に、電気的に接続することを確実に実行できる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、安定したアース効果を得ることができると共に、耐久性のあるアース構造体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
【実施例1】
【0023】
車両10の側面図を示す図1と、アース付ヒンジ1aの斜視図を示す図2、アース付ヒンジ1aの可動についての説明図を示す図3と、ドア12を開放状態とした車両10の背面側から見た拡大断面図を示す図4とともに、アース付ヒンジ1aについて説明する。
【0024】
図1に示すように、車両10には、前後に並ぶフロント用とリア用の2つのドア12が車両10の正面から見て左右対称に設けられている。各ドア12は、上下に2つ配置されたドアヒンジ1により左右に回転開閉可能に車両パネル11に物理接続されている。各ドア12を接続するドアヒンジ1の少なくとも一方はアース付ヒンジ1aにより構成されている。なお、車両パネル11は、図示省略するバッテリの負極と電気的に接続されている。したがって、バッテリから電装品に電力供給する電気回路は上記バッテリの正極と電装品の正極とを接続し、車両パネル11と電装品の負極とを接続することで成立する。また、ドア12には、図示省略する複数の電装品が装備されている。それらの電装品は例えば、パワーウィンドの開閉装置であったり、オーディオスピーカであり、それぞれはアースする必要がある。
【0025】
アース付ヒンジ1aは、図2に示すように、車両固定金物2と、ドア固定金物3と、該車両固定金物2とドア固定金物3とを回転自在に接続する回転軸4と、アース線5と、車両固定金物2及びドア固定金物3を車両パネル11又はドア12に固定する固定ボルト(図示省略)と、アースボルト6とで構成している。
【0026】
車両固定金物2は、上下に備えた適宜の肉厚のフランジ2aと、上下のフランジ2aの間に配した適宜の肉厚のウェブ2bとで構成された縦断面コの字型の鋼材であり、平面視への字型に形成している。なお、2つのフランジ2aは、軸孔を有する軸受け部2cをドア固定金物3側の端部に、上下対称に備えている。この軸受け部2cの軸孔には回転軸4がウェブ2bと平行に上下に一直線に挿通されている。また、フランジ2aの短辺のウェブ2bの端部付近に、上下方向に所定間隔を隔てて配した2個の固定ボルト孔2dを備えている。
【0027】
ドア固定金物3は、上下に備えた適宜の肉厚のフランジ3aと、上下のフランジ3aの間に配した適宜の肉厚のウェブ3bとで構成された縦断面コの字型の鋼材であり、2つのフランジ3aは、軸孔3eを有する軸受け部3cを車両固定金物2側の端部に、上下対称に備えている。また、図3に示すように、ウェブ3bは、外側を軸受け部3cの外縁付近に沿って延伸させている。さらに、ウェブ3bの中央付近に、上下方向に所定間隔を隔てて配した2個の固定ボルト孔3dを備えている。
【0028】
なお、上側のフランジ3aの上面と下側のフランジ3aの底面との間隔を、前記車両固定金物2の上側のフランジ2aの底面と下側のフランジ2aの上面との間隔よりわずかに短く形成している。したがって、ドア固定金物3は、車両固定金物2の内側にはまり込む態様となる。
【0029】
上記車両固定金物2とドア固定金物3とを、軸受け部2cの内側に軸受け部3cをはめ込むような態様で配置し、連通させた前記軸孔3eに軸部4aを貫通させ、軸部4aの上下端に備えた円形のフランジ4bで上下方向から挟み込むように車両固定金物2とドア固定金物3とを回転可能に接続している。
【0030】
また、図2及び図3に示すように、車両固定金物2のウェブ2b及びドア固定金物3のウェブ3bのぞれぞれの内側面に沿うようにアース線5を配している。アース線5は、複数の導電性の素線で構成された素線束5aを不導電性のシース5bで被覆した電線であり、両端部に、導電性の板材をドーナツ状に形成した端子5cを備えている。詳述すると、端子5cの一部を径外方向に延伸した断面C型のかしめ部5dで、シース5bを一部はがして露出させた素線束5aをかしめてアース線5に端子5cを装着している。なお、端子5cの内側円は固定ボルト孔2dや固定ボルト孔3dと略同一の径に形成している。
【0031】
また、ウェブ2b及びウェブ3bの内側面に沿わせて配されたアース線5は、ウェブ2b及びウェブ3bの内側面の長さに対して十分な余長を持って構成されており、アース線5の長さ方向の一部で、軸部4aの外側を周回させてループ状を形成している。
【0032】
アース付ヒンジ1aを車両パネル11に取り付けるには、まず、アース付ヒンジ1aを、図3に示すように、車両固定金物2の固定ボルト孔2dと、ドア開口部側面の車両パネル11の取り付け位置に備えた固定ボルト孔11aとを連通させ、車両固定金物2を車両パネル11に固定する。
【0033】
このとき、端子5cの取り付かない上側の固定ボルト孔2dには通常のボルトを螺入して車両固定金物2を車両パネル11に固定する。また、端子5cの内側円と、端子5cが取り付く下側の固定ボルト孔2dと、固定ボルト孔11aとを連通させ、これらの孔にアースボルト6を螺入して車両固定金物2とアース線5とを車両パネル11に固定する。なお、アースボルト6は、通常のボルトと異なり、固定ボルト孔11aを塗布した塗料をボルト軸6aの螺子山で剥離しながら螺入することができる。したがって、アース線5は、アースボルト6を介して確実に車両パネル11に導通可能に接続することができる。
【0034】
また、同様に、ドア固定金物3の固定ボルト孔3dと、ドア12の前方側面の取り付け位置に備えた固定ボルト孔12aとを連通させ、ドア固定金物3をドア12に固定する。このとき、端子5cの取り付かない上側の固定ボルト孔3dには通常のボルトを螺入してドア固定金物3をドア12に固定する。また、端子5cの内側円と、固定ボルト孔3dと、固定ボルト孔12aとを連通するように、アースボルト6を螺入して、車両固定金物2とアース線5とをドア12に固定する。したがって、アース線5は、アースボルト6を介して確実にドア12に導通可能に接続することができる。
なお、ドアヒンジ1は、アース付ヒンジ1aからアース線5を除いただけで、その他の構成は略同一であるため、詳細な説明を省略する。
【0035】
以上の構成により、ドア12が閉状態であるアース付ヒンジ1a部分の拡大平面図を示す図3(A)、及びドア12が開状態であるアース付ヒンジ1a部分の拡大平面図を示す図3(B)に示すように、ドア12を車両10のドア開口部に対して開閉自在に取り付けることができる。また、車両固定金物2及びドア固定金物3の内側面に沿わせたアース線5によってアースされた車両パネル11とドア12とを同電位とすることができる。さらには、車両固定金物2に対してドア固定金物3を、回転軸4を回動軸として回転させた場合であっても、アース線5の一部で軸部4aの外側を周回させているため、アース線5のアース付ヒンジ1a内部での位置を保持できる。したがって、アース線5がアース付ヒンジ1aの回動に伴って移動してアース付ヒンジ1aの回転に支障することを防止できる。これにより、車両固定金物2とドア固定金物3との間にアース線5が挟まり、損傷を受けることを防止できる。
【0036】
また、アース線5を車両固定金物2、及びドア固定金物3の内側(車内側)に配したことにより、アース線5が外側(車外側)に露出することを防止できる。したがって、日光、ほこり、雨風等によってシース5bが劣化する可能性を低減でき、アース線5の耐久性を向上することができる。
【0037】
また、アース付ヒンジ1aで車両パネル11とドア12とを同電位にすることができるため、ドア12に装着する電装品はドア12に接続することで車体パネル11にアース接続したことと同様のアース効果を得ることができる。
【0038】
また、アース線5をヒンジ内部に収納したことによって、図4で示すように、車両パネル11とドア12との可動空間を跨ぐワイヤハーネス13にアース線5を組み込む必要がなくなる。したがって、ワイヤハーネス13を構成する電線の本数を低減でき、ワイヤハーネス13の径を細くすることができる。これにより、ワイヤハーネス13の可撓性を向上させることができ、ワイヤハーネス13を構成する各電線の耐久性を向上することができる。
【0039】
また、アース付ヒンジ1aの構成部品である車両固定金物2、ドア固定金物3、並びに回転軸4は可動する鋼製部品であるが、アース付ヒンジ1a内部に配したアース線5は、アース付ヒンジ1aの可動に対して追従することのできる可撓性部品であるため、アース線5がアース付ヒンジ1aの可動を妨げることを防止できる。
【0040】
また、車両パネル11とドア12にアース付ヒンジ1aを取り付ける作業は、アース線の取り付け作業を、ヒンジの取り付け作業に統合することができるため、車両の製造作業性を高めることができる。
【0041】
なお、ウェブ2b、ウェブ3bに車両固定金物2及びドア固定金物3をそれぞれ固定するため固定ボルト孔2dとは別に、端子5cを車両パネル11やドア12に固定するためのアースボルト6の貫通を許容するアースボルト孔を備え、車両パネル11やドア12にも、アースボルト6の螺挿を許容するアースボルト孔を備えてもよい。
【0042】
これにより、通常ボルトで車両固定金物2やドア固定金物3を車両パネル11やドア12に固定し、ドアヒンジ1の固定完了後、アース線5を車両固定金物2やドア固定金物3を介して車両パネル11やドア12にアースボルト6で固定してもよい。これにより、これまでの通常のドアヒンジ1の組み付け工程を行い、その後付加的なアース線5の取り付けを行えばよく、既存の組み付け工程を利用することができる。
【0043】
また、ウェブ2bおよびウェブ3bに端子5cやアース線本体部を係止して仮固定可能な係止鈎部を備えても良い。これにより、ウェブ2b及びウェブ3bの内側面に沿って配したアース線5の端子5cやアース線本体部を該係止鈎部に係止させておくことで、アース付ヒンジ1aに対してアース線5を仮固定することができる。したがって、車両固定金物2やドア固定金物3を車両パネル11やドア12に固定する際に、端子5cの位置を手で押えておく必要が無くなり、アース付ヒンジ1aの組み付けが容易となる。
なお、アース線5は、必ずしも回転軸4の軸部4aの外側を周回させなくとも良い。
【実施例2】
【0044】
次に、アース線5をフラットワイヤ7で構成した場合について、フラットワイヤ7の平面図を示す図5、フラットワイヤ7の各断面の拡大断面図を示す図6、軸部4aに巻きつけた状態のフラットワイヤ7の説明図を示す図7、ならびにフラットワイヤ7を車両パネル11やドア12に接続固定した状態の拡大断面図を示す図8と共に説明する。
【0045】
フラットワイヤ7は、長さ方向順に、短帯部7a、中央部7b、ならびに長帯部7cで一体構成され、中央部7bの中央には長手方向に長い略楕円形の帯部通過孔7dを備えている。例えば、短帯部7aを略正方形に、長帯部7cを該短帯部7aより長手方向に4倍程度の長さを有する略長方形に形成している。中央部7bを、短帯部7aや長帯部7cの幅(図5中上下方向長さ)の約半分程度の幅を有し、長帯部7cと略同一の長さの帯状体を、短帯部7aの3/4程度の間隔を隔てて上下方向に平行に配し、短帯部7a及び長帯部7cから滑らかに分岐してそれぞれの境界部分を形成している。
【0046】
なお、フラットワイヤ7の外形は、後述する導電性帯状板8を表裏から挟みこんで囲繞する不導電性ラミネートシート9で形成している。
導電性帯状板8は、シート状銅板の打ち抜き等によって形成された銅製の帯状板であり、短帯部7aや長帯部7cの1/4程度の幅で形成され、短帯部7aの外側端部付近から、中央部7bを通って長帯部7cの外側端部付近まで連続して配されている。
【0047】
この導電性帯状板8は、図5中のB−B断面の断面図である図6(B)に示すように、短帯部7a及び長帯部7cにおいて短帯部7aや長帯部7cの幅の1/4程度の間隔を隔てて平行に配されている。帯部通過孔7dの上下両側に配した中央部7bでは、図5中のA−A断面の断面図である図6(A)に示すように、それぞれに導電性帯状板8が幅方向中央付近に配されている。
【0048】
また、不導電性ラミネートシート9の短帯部7a及び長帯部7cの外側端部近傍の幅方向中央には、図5中のC−C断面の断面図である図6(C)に示すように、前記アースボルト6(図3)のボルト軸6aの通過を許容するアースボルト貫通孔9aを備えている。詳述すると、アースボルト貫通孔9aは、ボルト軸6aより大きな径であり、かつ、アースボルト6のボルト頭部より小さな径で形成されている。なお、アースボルト貫通孔9aの径内方側では、前記導電性帯状板8が露出している。
【0049】
上記構成により、フラットワイヤ7をウェブ2b及びウェブ3bの内側面に沿わせて配し、アースボルト貫通孔9aと、固定ボルト孔2d(3d)を固定ボルト孔11a(12a)とを連通させて、アースボルト6で車両パネル11(ドア12)に固定することによって、図8に示すように、アースボルト6が導電性帯状板8と接触し、アースボルト6を介して車両パネル11(ドア12)と導電性帯状板8とを通電可能に接続することができる。
【0050】
また、長帯部7cの外側端部を短帯部7a側に折り返し、帯部通過孔7dを貫通させ、長帯部7c側に戻すことで、フラットワイヤ7をループ状に形成することができる。したがって、アース付ヒンジ1a内部に配したフラットワイヤ7の一部で、図7に示すように、軸部4aに巻きつけることができる。
【0051】
このように、フラットワイヤ7を、実施例1のアース線5の代わりに用いることで、実施例1に述べたアース付ヒンジ1aと同様の効果を得ることができる。
また、フラットワイヤ7は薄板状であるため、図3に示すようなアース付ヒンジ1aの回転方向に対しては容易に変形するが、フラットワイヤ7の幅方向には変形しがたい。したがって、フラットワイヤ7がアース付ヒンジ1a内部で上下方向に変形することによって生じる劣化を防止することができる。
【0052】
なお、導電性帯状板8は、図9に示すように、1条のシート状銅板で構成することができる。この構成によれば、アースボルト6は導電性帯状板8の幅方向中央部分を突き破って配置されることになり、アースボルト6と導電性帯状板8との電機接続をより確実にすることができる。
【0053】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の車体は、車両パネル11に対応し、
以下同様に、
ヒンジは、アース付ヒンジ1aに対応し、
回転開閉体は、ドア12に対応し、
アース体は、アース線5及びフラットワイヤ7に対応し、
車体側固定部は、車両固定金物2に対応し、
回転開閉体側固定部は、ドア固定金物3に対応し、
枢動軸は、軸部4aに対応し、
車体接続部及び回転開閉体接続部は、端子5cに対応し、
アースボルトは、アースボルト6に対応し、
フラットワイヤは、フラットワイヤ7に対応し、
挿通孔は、帯部通過孔7dに対応し、
貫通孔は、アースボルト貫通孔9aに対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】車両の側面図。
【図2】アース付ヒンジの斜視図。
【図3】アース付ヒンジの可動についての説明図。
【図4】ドアを開放状態とした車両の背面側から見た拡大断面図。
【図5】フラットワイヤの平面図。
【図6】フラットワイヤの各断面の拡大断面図。
【図7】軸部に巻きつけた状態のフラットワイヤの説明図。
【図8】フラットワイヤを車両パネルやドアに接続固定した状態の拡大断面図。
【図9】フラットワイヤの他の構成例を示す平面図。
【図10】従来の開放状態のドアの背面側から見た拡大断面図。
【符号の説明】
【0055】
1a…アース付ヒンジ
2…車両固定金物
3…ドア固定金物
4a…軸部
5…アース線
5c…端子
6…アースボルト
7…フラットワイヤ
7d…帯部通過孔
9a…アースボルト貫通孔
11…車両パネル
12…ドア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、該車体に回転開閉可能にヒンジで取り付けられた回転開閉体とをアース体によって同電位とするアース構造体であって、
前記ヒンジを、回転方向に所定の厚みを有する立体形状に形成し、
前記アース体を、前記ヒンジの内側に収納し、
前記アース体を、前記該車体、及び前記回転開閉体に接続した
アース構造体。
【請求項2】
前記ヒンジを、
前記車体に固定する車体側固定部と、
前記回転開閉体に固定する回転開閉体側固定部と、
車体側固定部と回転開閉体側固定部とを枢動可能に接続する枢動軸とで構成とし、
前記アース体に、
前記枢動軸に対する位置を保持する保持部を備えた
請求項1に記載のアース構造体。
【請求項3】
前記保持部を、
前記枢動軸の外周を周回させた前記アース体の一部で構成した
請求項1又は2に記載のアース構造体。
【請求項4】
前記アース体に、前記車体に接続する車体接続部と、前記回転開閉体に接続する回転開閉体接続部とを備え、
前記車体に、前記車体接続部と車体側固定部とを重ね合わせてアースボルトで接続固定すると共に、
前記回転開閉体に、前記回転開閉体接続部と前記回転開閉体側固定部とを重ね合わせてアースボルトで接続固定した
請求項1、2あるいは3に記載のアース構造体。
【請求項5】
前記アース体を、
シート状に形成した
請求項1から4のうちいずれか1つに記載のアース構造体。
【請求項6】
車体に対して回転開閉体を回転可能に接続するヒンジブラケットであって、
回転方向に所定の厚みを有する立体形状に形成し、
前記車体と前記回転開閉体とを電気的に接続して同電位とするアース体の大部分を、前記ヒンジの内側に収納した
ヒンジブラケット。
【請求項7】
薄板状の導電板と、前記導電板を被覆する不導電性のシートとで構成したフラットワイヤにおいて、
長手方向内側に、一端を挿通許容する挿通孔を設けた
フラットワイヤ。
【請求項8】
前記シートに、前記導電板が露出する露出部を備えた
請求項7に記載のフラットワイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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