説明

イエロートナー

【課題】 イエロー顔料のトナー表面への露出を抑制し、低温定着性が良好なイエロートナー、さらには低温低湿環境下でも帯電安定性に優れたイエロートナーを提供することである。
【解決手段】 イエロー顔料、結着樹脂、離型剤、及び、亜鉛フタロシアニン又は亜鉛フタロシアニン誘導体を含有するトナー粒子を有し、前記トナー粒子が水系媒体中で得られるイエロートナーにおいて、前記イエロー顔料をトルエンに分散させた分散液と水との界面張力A(mN/m)が20mN/m以上35mN/m以下であり、且つ、前記亜鉛フタロシアニン又は前記亜鉛フタロシアニン誘導体をトルエンに分散させた分散液と水との界面張力をB(mN/m)とした時、A<Bの関係を満足することを特徴とするイエロートナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真法、静電記録法、及び、トナージェット法の如き画像形成方法に用いられるイエロートナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真法においては、一般には光導電性物質を利用し、種々の手段により感光体上に静電荷像を形成し、次いで静電荷像を、トナーを用いて現像し、必要に応じて紙の如き転写材にトナー画像を転写した後、加熱、加圧、加熱加圧或いは溶剤蒸気により定着し、画像を得る。
【0003】
これらの画像形成方法を採用した画像形成装置において、紙やOHP(オーバーヘッドプロジェクター)シート等のメディアに転写されたトナー像を、熱により定着させる定着プロセスは、特に大きな消費電力を必要とするため、低温定着化による消費電力の低減が望まれている。
【0004】
一方、定着プロセスとトナーの溶融特性は、画像品質に大きく関わるところである。
特にフルカラー画像形成装置はイエロー、マゼンタ、シアン、ブラック等のカラー画像を同一の転写材上に複数色のトナーが重ね合わせられて形成されるため、転写材上のトナー量が多い。そのため、高着色力、高光沢度、豊かな色再現性、OHPの高い透明性を得るためには定着画像の溶融混色性や平滑性を高める必要がある。
【0005】
一般に、定着温度を低く設定すると、トナーの溶融熱量が不十分になり、画像光沢度や色再現性が低下傾向を示すと共に、定着画像の耐擦過性や耐剥離性能も劣ってくる。
【0006】
従って、トナーとしては、低熱量であっても溶融し、十分な定着性を示す必要が求められている。
【0007】
さらに、近年、水系媒体中で製造されているトナー、その中でも特にイエロートナーにおいて、顔料がフィラーとして働くためトナー粒子が硬くなる傾向があること、及び、前記顔料がトナー粒子表面に露出しやすいことが原因で、定着温度を低く設定すると、トナーの溶融が不十分となる課題がある。この課題を克服して、より一層の低温定着性の改善が求められていた。
【0008】
低温定着性を改善する手段として例えば、トナーの平均粘度変化量を規定する方法(例えば、特許文献1参照)や、トナーのソックスレー抽出法による溶媒が異なる場合における不溶成分や可溶成分の量を規定する方法(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
【0009】
しかし、本発明者らの検討によると、これらのトナーは従来トナーと比較して、確かに定着特性の向上が認められたが、特に上記の様なイエロートナーにおいて、低温の環境で高速で印字をするような熱量が十分に加えられない場合には、その定着性に改良の余地を有することが分かった。
【0010】
また、亜鉛フタロシアニンを用いて顔料の分散性を制御する方法(例えば、特許文献3参照)が提案されている。しかし、この方法により、イエロー顔料の分散性を向上させることはできるが、顔料のトナー粒子表面への露出を減らすことができないため、定着性に関しては依然として改良の余地を有していた。
【0011】
また、高画質化の要求と共に、画像品位の観点から、耐熱性や耐光性に優れたトナーが望まれている。これを改善することを目的として、耐熱性、耐光性に優れたイエロー顔料(例えば、特許文献4参照)が提案されている。しかし、上述してきたように、イエロートナーにおいて、イエロー顔料がトナー粒子表面に露出することによる定着不良、及びトナー粒子表面近傍にいることによる帯電不良が起こりやすい傾向にあった。その結果、摩擦帯電し易い顔料を使用した際に低温低湿環境下でのチャージアップが生じ、画像濃度の低下を引き起こしやすい状態になっていた。
【0012】
一方、パーソナルコンピューター用のカラープリンター及びパーソナルカラーコピーの分野においては、インターネットやパーソナルコンピューター画面からの出力が増大するために該分野における標準的な色空間であるsRGBへの対応が良好で、広い色再現が可能な画像形成システムおよびトナーが求められている。
【0013】
従来のイエロートナーに用いられる顔料としてはC.I.ピグメントイエロー73、C.I.ピグメントイエロー74などが使用されていたが、種々の課題が存在した。例えば、水系媒体中で製造されるイエロートナーにおいて、前記顔料は分散性が悪く、赤味による傾向があるため、イエロー・レッド色域の再現性には優れているものの、グリーン色域での再現性に劣ることから、sRGBの色空間には十分対応出来ていなかった。さらに、sRGB規格においてはグリーンの明度はマゼンタよりも高いことが求められており、前記のイエロー顔料は対応していなかった。
【0014】
また、sRGB規格におけるグリーン再現性の改善手段として、染料と顔料とを併用する方法が挙げられるが(例えば、特許文献5参照)、画像の耐光性、透明性さらには定着性に関して、更なる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2007−279666号公報
【特許文献2】特開2008−129308号公報
【特許文献3】特開2003−277643号公報
【特許文献4】特開平2−208662号公報
【特許文献5】特開2000−347459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明が解決しようとする課題は、イエロー顔料のトナー粒子表面への露出を抑制し、低温定着性が良好なイエロートナー、さらには低温低湿環境下でも帯電安定性に優れたイエロートナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明は、イエロー顔料、結着樹脂、離型剤、及び、亜鉛フタロシアニン又は亜鉛フタロシアニン誘導体を含有するトナー粒子を有するイエロートナーであって、前記トナー粒子が水系媒体中で得られる粒子であり、前記イエロー顔料をトルエンに分散させた分散液と水との界面張力A(mN/m)が20mN/m以上35mN/m以下であり、前記亜鉛フタロシアニン又は前記亜鉛フタロシアニン誘導体をトルエンに分散させた分散液と水との界面張力をB(mN/m)とした時、A<Bの関係を満足すること特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、低温定着性に優れ、低温低湿環境下でも帯電安定性に優れ、且つ、前記亜鉛フタロシアニン又は亜鉛フタロシアニン誘導体によりグリーンの色再現性の優れたトナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】トナーの帯電量を測定するための装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明者等は、優れた低温定着性、帯電安定性及び色再現性が得られるイエロートナーについて鋭意検討を行った。
【0021】
その結果、トナー粒子中に亜鉛フタロシアニン又は亜鉛フタロシアニン誘導体を含有すること、及び、イエロー顔料及び亜鉛フタロシアニン又は亜鉛フタロシアニン誘導体をそれぞれトルエンに分散させた分散液と水との界面張力の値を制御することにより、低温定着性、低温低湿環境下での帯電安定性、及び、グリーンの色再現性に優れたイエロートナーが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0022】
本発明のイエロートナーはイエロー顔料、結着樹脂、離型剤、及び、亜鉛フタロシアニン又は亜鉛フタロシアニン誘導体を含有するトナー粒子を有し、前記トナー粒子が水系媒体中で得られるイエロートナーにおいて、前記イエロー顔料をトルエンに分散させた分散液と水との界面張力A(mN/m)が20mN/m以上35mN/m以下であり、且つ、前記亜鉛フタロシアニン又は前記亜鉛フタロシアニン誘導体をトルエンに分散させた分散液と水との界面張力をB(mN/m)とした時、A<Bの関係を満足することを特徴とする。
【0023】
本発明によりイエロートナーの低温定着性が向上する詳細なメカニズムに関しては以下のように考えている。
【0024】
一般的に、水系媒体中で製造されるトナーにおいて、親水性の高いトナー材料はトナー表層近傍による多く分布する傾向がある。
【0025】
したがって、親水性が高いイエロー顔料はトナー表層近傍に多く分布するため、より多くトナー粒子表面に露出しやすい。さらに前記顔料はフィラーとしてトナー媒体中で硬化し、且つ、トナーを紙等のメディアに定着するのに必要な熱を吸収してしまうため、このような状態のトナーをメディアに定着させるためにはより多くの熱が必要となる。つまり、低温定着性を達成するにはこの点に対して更なる改良が必要であった。
【0026】
本発明はトナー粒子表層へのイエロー顔料の露出を抑制することができたのではないかと本発明者等は考えている。
【0027】
すなわち、亜鉛フタロシアニン又は亜鉛フタロシアニン誘導体は上記界面張力の値の範囲を満たすイエロー顔料よりも、親水性が低いため、トナー粒子表層への分布が少ない。また、中心金属である亜鉛は五配位構造、又は六配位構造をとることができる金属であるため、前記亜鉛フタロシアニンの空軌道に対してイエロー顔料が吸着することが可能である。その結果、イエロー顔料は亜鉛フタロシアニン又は亜鉛フタロシアニン誘導体の存在でトナー粒子内部へ存在しやすい傾向となり、トナー粒子表層への露出が抑制されたのではないかと考えられる。
【0028】
イエロー顔料をトルエンに分散させた分散液の水に対する界面張力は、小さい値を示す程、界面が水に馴染みやすい性質、つまり、親水性が高い性質を示す。
【0029】
従って、水系媒体中で製造されるトナー粒子において、前記亜鉛フタロシアニン又は亜鉛フタロシアニン誘導体の存在下、イエロー顔料の界面張力が次の値を満たすときに、前記イエロー顔料のトナー粒子表面近傍での分布が適切であると考えられる。
【0030】
つまり、本発明において前記界面張力A(mN/m)は20mN/m以上35mN/m以下であり、且つ、前記界面張力をB(mN/m)とした時、A<Bを満足することが必須である。
【0031】
前記界面張力Aが20mN/mよりも小さくなると、イエロー顔料の親水性が高いため、亜鉛フタロシアニンとの相互作用があるにもかかわらず、イエロー顔料の表層露出が抑制しきれないので、本発明の効果が得られないと考えられる。また、界面張力の値が35mN/mよりも大きくなると、イエロー顔料の親水性が低いため、イエロー顔料はトナー粒子内部に存在しやすく、加えて、亜鉛フタロシアニンとの相互作用により、より一層トナー粒子内部に分布する。その結果、トナー粒子中での顔料の偏在、さらにそのことにより、他のトナー構成材料の偏在が生じる傾向になる。その結果、局所的に熱が伝わり難いトナー部位ができ、前記のような定着効果が得られないと考えられる。また、前記界面張力の値がA<Bの関係を満足しない場合、すなわち、亜鉛フタロシアニン又は亜鉛フタロシアニン誘導体をトルエンに分散させた分散液と水との界面張力Bがイエロー顔料をトルエンに分散させた分散液と水との界面張力Aよりも低い場合、亜鉛フタロシアニン又は亜鉛フタロシアニン誘導体がイエロー顔料に吸着したとしても、上記のようにイエロー顔料をトナー内部に抑制させる効果が得られないため、前記のような定着効果が得られないと考えられる。
【0032】
また、前記定着効果が得られる、より好ましい前記界面張力Aとしては20mN/m以上25mN/m以下である。イエロー顔料の界面張力Aを前記範囲にすることにより、トナー粒子表面のイエロー顔料の露出を抑制できると共に、トナーを構成する他の材料とイエロー顔料との馴染みが良好であり、材料の偏在を最も抑制できる状態であると考えれる。
【0033】
また、本発明は摩擦帯電能が高い、イエロー顔料を含むトナーを用いる際に生じる、低温低湿環境下での画像濃度の低下を改善することができる。この点に関して、発明者等は以下のように考えている。
【0034】
従来、水系媒体中で製造されるイエロートナーにおいて、顔料がトナー表層又は表層近傍に存在しやすい傾向にあった。その結果、摩擦帯電能が高いイエロー顔料を用いた際に、トナー表面近傍に存在する顔料により低温低湿下でチャージアップが生じ、画像濃度が低下する傾向があった。
【0035】
本発明は亜鉛フタロシアニン又は亜鉛フタロシアニン誘導体が前記イエロー顔料に作用し、中心金属である亜鉛が電荷のリークサイトになることで、チャージアップを抑制し、画像濃度の低下を改善するのではないかと考えている。
【0036】
さらに、発明者等の検討により、上記の画像濃度改善の効果は下記の条件を満たすイエロー顔料であることを見出した。つまり、磁性キャリアを用いて帯電させたイエロー顔料の15℃10%での帯電量が−35mC/kg以上−12mC/kg以下であることにより、画像濃度の低下を改善する効果が得られる。
【0037】
また、イエロートナーに前記亜鉛フタロシアニン又は亜鉛フタロシアニン誘導体を加えることにより、その色相をグリーンにシフトさせることができる。その結果、従来、不十分であったグリーンの色再現性を改善することができる。
【0038】
また、イエローの界面張力の値を上記の値に制御することに加えて、前記亜鉛フタロシアニン又は亜鉛フタロシアニン誘導体の量を調整することにより、トナー中でのイエロー顔料の分散性を制御することも可能となり、その彩度、透明性に関しても改善することができる。
【0039】
本発明に係わるイエロー顔料を前記の界面張力に調整する手段としては、イエロー顔料に表面処理を行う方法、又はイエロー顔料の種類を変更する方法などが挙げられる。
【0040】
顔料に表面処理をする方法としては、例えばロジンを用いる方法がある。具体的にロジンを用いて顔料を表面処理する方法としては、(1)ロジンと顔料を乾式混合した後、必要に応じて溶融混練等の熱処理を施す乾式混合法、(2)顔料製造時の顔料の合成溶液中にロジンのアルカリ水溶液を加えた後、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、又はマンガン等のレーキ金属塩を添加し、ロジンを不溶化することで顔料表面に被覆処理を施す湿式処理等が挙げられる。
【0041】
本発明のイエロートナーに用いられるイエロー顔料としては上記の手段を用いることにより、界面張力を調整することが可能であるため、一般的に市販されているイエロー顔料を使用することが可能である。特に、C.I.ピグメントイエロー62、73、74、83、93、94、95、109、110、111、120、128、129、147、151、154、155、166、167、168、180、185、191及び199等が挙げられる。さらに、さらなる低温定着性の改善、グリーンの色再現性の観点からC.I.ピグメントイエロー、155、であることが好ましい。
【0042】
本発明に用いる亜鉛フタロシアニンは、以下の構造式(1)で示される。
【0043】
【化1】

【0044】
(式中、R,R,R,Rは水素原子もしくは炭素数1〜8のアルキル基、アルキレン基、アルコキシ基を示し、同一でも異なっても良い。nは1もしくは2である。)
また、亜鉛フタロシアニン誘導体としては公知のものを用いることができる。たとえば、4つあるイソインドール部位にカルボン酸、スルフォン酸等の官能基を導入したものや、その他の芳香族系基、脂肪族基、エーテル基、アルコール基等の置換基を導入したものが挙げられる。但し、アミン基の様なそれ自体が配位子となりうる官能基や、顔料との吸着面に立体障害となるような側鎖は好ましくない。
【0045】
前記構造式(1)で示される亜鉛フタロシアニンの含有量に関しては、イエロー顔料に対して亜鉛フタロシアニンが0.1質量%以上10質量%以下含有されていることが好ましい。
【0046】
上記範囲にあることにより、亜鉛フタロシアニンとイエロー顔料の作用効果が強く、更に低温定着性が良好となる。
【0047】
本発明では、イエロートナーのL表色系による色相角hは95°以上110°以下であることが好ましい。前記色相角は、a−b座標において、紙上のトナー付着量が0.50mg/cmの画像の色相(a,b)と原点とを結ぶ直線と、正のa軸とがなす角度であり、正のa軸から反時計回りの方向において、前記直線と正のa軸とがなす角度である。
【0048】
色相角が前記範囲にあることにより、本発明のイエロートナーと従来のシアントナーとを組み合わせた緑の色相の再現性が改善し、彩度の高い緑の画像が得られる。
【0049】
さらに、本発明のトナーの色相角を前記範囲にすることによりOHT上の色相と紙上の色相の差を少なくできることを見出した。
【0050】
本発明のトナーを製造する方法として懸濁重合法又は乳化重合法であることが好ましい、特に、懸濁重合法によりトナーを製造することがより好ましい。
【0051】
懸濁重合法によるトナー粒子の製造方法を説明する。重合性単量体、着色剤、離型剤、極性樹脂、荷電制御剤及び必要に応じた他の添加物を、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機の如き分散機に依って均一に溶解または分散させる。これに重合開始剤を溶解し、重合性単量体組成物を調製する。次に、前記重合性単量体組成物を分散安定剤含有の水系媒体中に分散して粒子を形成(造粒)し、粒子中の重合性単量体を重合させることによってトナー粒子を製造する。前記重合開始剤は、重合性単量体中に他の添加剤を添加する時に同時に加えても良いし、水系媒体中に前記重合性単量体組成物を分散する直前に混合しても良い。また、造粒直後、重合反応を開始する前に重合性単量体あるいは溶媒に溶解した重合開始剤を加えることもできる。
【0052】
上記の懸濁重合法によりトナーを製造した場合、極性樹脂および荷電制御樹脂がトナー粒子表面付近に均一に移行し、水中の分散剤と引き合うことで該粒子表面を分散剤で均一に覆うことによりトナー粒子の合一を防ぎ、優れた造粒安定性を示し、製造面において好ましい効果をもたらす。さらに、トナー粒子がより真球状に製造できるため、転写性が良好になる。
【0053】
本発明のトナーに用いられる結着樹脂としては、一般的に用いられているスチレン−アクリル共重合体、スチレン−メタクリル共重合体、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体が挙げられる。上記結着樹脂を構成する重合性単量体としては、ラジカル重合が可能なビニル系重合性単量体を用いることが可能である。前記ビニル系重合性単量体としては、単官能性重合性単量体或いは多官能性重合性単量体を使用することができる。
【0054】
結着樹脂を生成するための重合性単量体としては、以下のものが挙げられる。スチレン;o−(m−,p−)メチルスチレン、m−(p−)エチルスチレンの如きスチレン系単量体;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、メタクリル酸ベヘニル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きアクリル酸エステル系単量体或いはメタクリル酸エステル系単量体;ブタジエン、イソプレン、シクロヘキセン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミドの如きエン系単量体。
【0055】
本発明においては、トナー粒子の機械的強度を高めために、結着樹脂を合成する時に架橋剤を用いてもよい。
【0056】
2官能の架橋剤として、以下のものが挙げられる。ジビニルベンゼン、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート(MANDA日本化薬)、及び前記のジアクリレートをジメタクリレートに代えたもの。
【0057】
多官能の架橋剤としては、以下のものが挙げられる。ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及びそのメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート及びトリアリルトリメリテート。これらの架橋剤の添加量は、重合性単量体100.00質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上3.00質量部以下、より好ましくは0.10質量部以上1.50質量部以下である。
【0058】
本発明のトナーに使用可能な離型剤としては、以下のものが挙げられる。パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムの如き石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレン、ポリプロピレンの如きポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックスの如き天然ワックス及びその誘導体(誘導体には酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物も含まれる)、エステルワックス、ケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックス、シリコ−ンワックス。これらワックスは単独で、または2種以上を併せて用いられる。
【0059】
これらの中でも、低温低湿環境下での耐久における、現像ローラーへのフィルミングが良好になることからエステル系ワックスが好ましい。特に、示差走査熱量(DSC)測定装置で測定される昇温時のDSC曲線において、最大吸熱ピーク温度が70℃以上であることが好ましい。
詳細なメカニズムに関しては、発明者等は次のように考えている。
【0060】
すなわち、水系媒体中で製造されるトナーにおいて、前記エステル系ワックスの有するエステル部位が亜鉛フタロシアニンの中心金属である亜鉛と作用する。さらに、亜鉛フタロシアニンは親水性が低いため、上記ワックスがトナー内部に存在し易く、トナー表面への露出が抑制される。そのため、前記ワックスはトナー中にしっかりと内包化される。その結果、現像ローラーに対する汚染が抑制され、フィルミングが良好になると考えられる。さらに最大吸熱ピーク温度が70℃以上であると前記作用効果が特に顕著で更に良好になると考えている。
【0061】
本発明のトナーにおいては、必要に応じて荷電制御剤をトナー粒子と混合して用いることも可能である。荷電制御剤を配合することにより、荷電特性を安定化、現像システムに応じた最適の摩擦帯電量のコントロールが可能となる。
【0062】
荷電制御剤としては、公知のものが利用でき、特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。さらに、トナー粒子を直接重合法により製造する場合には、重合阻害性が低く、水系媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が特に好ましい。
【0063】
荷電制御剤として、トナーを負荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。有機金属化合物、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物。他には、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノールの如きフェノール誘導体類なども含まれる。さらに、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、樹脂系帯電制御剤が挙げられる。
【0064】
また、トナーを正荷電性に制御する荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。ニグロシン及び脂肪酸金属塩の如きによるニグロシン変性物;グアニジン化合物;イミダゾール化合物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートの如き4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩の如きオニウム塩及びこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、りんタングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など);高級脂肪酸の金属塩;樹脂系荷電制御剤。
【0065】
本発明のトナーは、これら荷電制御剤を単独で或いは2種類以上組み合わせて含有することができる。
荷電制御剤の好ましい配合量は、重合性単量体100.0質量部に対して0.1質量部以上20.0質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上10.0質量部以下である。しかしながら、本発明のトナーには、荷電制御剤の添加は必須ではなく、トナー規制部材や現像ローラーとの摩擦帯電を積極的に利用することでトナー中に必ずしも荷電制御剤を含ませる必要はない。
【0066】
本発明のトナーに用いられる重合開始剤としては、以下のものが挙げられる。2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルの如きアゾ系又はジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、TERT−ブチル−パーオキシピバレートの如き過酸化物系重合開始剤。
【0067】
これらの重合開始剤の使用量は、目的とする重合度により変化するが、一般的には、重合性単量体100質量部に対して3質量部以上20質量部以下である。重合開始剤の種類は、重合法により若干異なるが、10時間半減期温度を参考に、単独または混合して使用される。
【0068】
本発明における、極性樹脂は、スチレン系の共重合体、マレイン酸共重合体、飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。より好ましくは、飽和及び不飽和のポリエステル樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂は、スチレンやアクリレートモノマーを主成分とする分散質の油滴中で、重合が進むにつれて層分離し易い傾向を示すため、安定した最外殻のシェル層が形成される。均一なシェル層の形成は、耐久性に優れる。
【0069】
前記ポリエステル樹脂を構成するアルコール成分と酸成分を以下に例示する。アルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ブテンジオール、オクテンジオール、シクロヘキセンジメタノール、水素化ビスフェノールA、また下記一般式(A)で表されるビスフェノール誘導体、
【0070】
【化2】

【0071】
(式中、Rはエチレンまたはプロピレン基であり、x,yはそれぞれ1以上の整数であり、かつx+yの平均値は2〜10である。)
あるいは構造式Aの化合物の水添物、また、下記一般式(B)で示されるジオール、
【0072】
【化3】

【0073】
あるいは式Bの化合物の水添物のジオール、さらには、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビット、ソルビタン、ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルの如き多価アルコール等、が挙げられる。
【0074】
2価のカルボン酸としては以下のものが挙げられる。フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸の如きベンゼンジカルボン酸またはその無水物、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸またはその無水物、またさらに炭素数6〜18のアルキルまたはアルケニル基で置換されたコハク酸もしくはその無水物、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸またはその無水物、さらには、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸の如き多価カルボン酸やその無水物。
【0075】
本発明における、極性樹脂の含有量は、重合性単量体100質量部に対して1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。極性樹脂が1質量部以上含有されると、均一なシェル層を形成することができる。また20質量部以内で含有されると、乳化粒子等の生成が抑えられ、安定した現像性を示すことができる。
【0076】
本発明において、水系媒体調製時に使用する分散安定剤としては、公知の無機系及び有機系の分散安定剤を用いることができる。
【0077】
具体的には、無機系の分散安定剤の例としては、以下のものが挙げられる。リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ。また、有機系の分散剤としては、以下のものが挙げられる。ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプン。
【0078】
また、市販のノニオン、アニオン、カチオン型の界面活性剤の利用も可能である。この様な界面活性剤としては、以下のものが挙げられる。ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム。
【0079】
本発明のトナーに用いられる水系媒体調製時に使用する分散安定剤としては、無機系の難水溶性の分散安定剤が好ましく、しかも酸に可溶性である難水溶性無機分散安定剤を用いることが好ましい。
【0080】
また、本発明においては、水系媒体を調製する場合に、これらの分散安定剤の使用量は重合性単量体100.0質量部に対して、0.2質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。また、本発明においては、重合性単量体組成物100質量部に対して300質量部以上3,000質量部以下の水を用いて水系媒体を調製することが好ましい。
【0081】
上記のような分散安定剤が分散された水系媒体を調製する場合には、市販の分散安定剤をそのまま用いて分散させてもよい。また、細かい均一な粒度を有する分散安定剤の粒子を得るために、水の如き液媒体中で、高速撹拌下、分散安定剤を生成させて水系媒体を調製してもよい。例えば、リン酸三カルシウムを分散安定剤として使用する場合、高速撹拌下でリン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合してリン酸三カルシウムの微粒子を形成することで、好ましい分散安定剤を得ることができる。
本発明のトナーは、トナー粒子と、無機微粉体等の外添剤とを有するトナーであることが好ましい。
【0082】
前記無機微粉体としては、シリカ微粉体、酸化チタン微粉体、アルミナ微粉体またはそれらの複酸化物微粉体の如き微粉体が挙げられる。前記無機微粉体の中でもシリカ微粉体及び酸化チタン微粉体が好ましい。また、無機微粉体以外の外添剤として、各種樹脂粒子、脂肪酸金属塩などが挙げられる。これらを単独で、あるいは複数を併用して用いることが好ましい。
【0083】
前記シリカ微粉体としては、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ又はヒュームドシリカ、及び水ガラスから製造される湿式シリカ、ゾル−ゲル法により製造されるゾルゲルシリカなどが挙げられる。無機微粉体としては、表面及びシリカ微粉体の内部にあるシラノール基が少なく、またNAO、SO2−の少ない乾式シリカの方が好ましい。また乾式シリカは、製造工程において、塩化アルミニウム、塩化チタン他の如き金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって製造された、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体であっても良い。
【0084】
前記無機微粉体を疎水化処理することによって、トナーの帯電量の調整、環境安定性の向上、高湿環境下での特性の向上を達成できるので、疎水化処理された無機微粉体を用いることが好ましい。トナーに添加された無機微粉体が吸湿し難いと、トナーとしての帯電量低下が軽減し、現像性や転写性が向上する傾向にある。
【0085】
無機微粉体の疎水化処理剤としては、未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物、有機チタン化合物が挙げられる。これらの処理剤は単独で或いは併用して用いられても良い。
【0086】
その中でも、シリコーンオイルにより処理された無機微粉体が好ましい。より好ましくは、無機微粉体をカップリング剤で疎水化処理すると同時或いは処理した後に、シリコーンオイルにより処理した疎水化処理無機微粉体が、環境特性に優れるため好ましい。
以下、本発明に係る各種測定方法について説明する。
【0087】
<界面張力測定>
本発明における界面張力は、以下に述べる懸滴法により測定した。
具体的には温度25℃の環境下にて協和界面科学(株)製のFACE 固液界面解析装置 Drop Master700を用い、レンズ部の視野としてWIDE1にて測定した。まず、内径が0.4mmの細管である釣針の先端をイオン交換水に入れる。次に細管はシリンジ部に接続する。シリンジ部には測定するサンプルのトルエン分散液を脱気した状態で入れる。なお、本発明の測定方法においては、トルエンに分散させるサンプル濃度は0.99質量%で実施した。次にシリンジ部を協和界面科学(株)製 AUTO DISPENSER AD−31に接続してトルエン分散液を細管から押し出すことにより、イオン交換水内で細管先端部に液滴を作成することができる。そして、この液滴の形状から水との界面張力を計算する。液滴を作成する上での制御や計算方法については協和界面科学(株)製の測定解析システムを用いて行った。なお、計算に必要な水とトルエン分散液の密度差は水とトルエンの密度差である0.13g/cmとして行った。最終的な界面張力の測定結果は10回の測定値の平均値とした。
【0088】
<重量平均粒径(D4)測定>
トナーの重量平均粒径(D4)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。尚、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
【0089】
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
【0090】
なお、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行った。
専用ソフトの標準測定方法(SOM)を変更画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
【0091】
専用ソフトのパルスから粒径への変換設定画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
【0092】
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【0093】
<画像の色相測定>
トナーの色相は実施例で得られたトナーを実施例に記載した画像形成装置(LBP7700C(キヤノン社製)の改造機)を用いてトナーの載り量を0.50mg/cmとしたベタ画像を得て、その画像のa、b(a、bは色相と彩度を示す色度)を測定した。測定器にはX−Rite社製分光測色計タイプ938を用い、観察用光源はC光源、視野角は2°とした。色相角は得られたa、bより求めた。
【0094】
<イエロー顔料の帯電量測定>
イエロー顔料の帯電量は、イエロー顔料0.5質量部に対し、磁性キャリア(日本画像学会社製、Standard Carrier For q/m Measurement N−01)99.5質量部を混合したものを、15℃10%環境下で24時間放置後、YAYOI社製YS−8D型により150rpmの条件で3分間振とうした後、下記の要領で測定した。
【0095】
図1に、イエロー顔料の帯電量を測定する帯電量測定装置の説明図を示した。まず、底に500メッシュのスクリーン103のある金属製の測定容器102に、帯電量を測定しようとする顔料とキャリアの混合物約0.4gを入れ、金属製のフタ104をする。このときの測定容器102全体の重量を秤り、その値をW(g)とする。次に、吸引機101(測定容器102と接する部分は少なくとも絶縁体)において、吸引口から吸引し、風量調節弁106を調整して真空計105の圧力を250mmAqとする。この状態で充分、好ましくは2分間吸引を行ってトナーを吸引除去する。このときの電位計109の電位をV(ボルト)とする。ここで108は、コンデンサーであり、容量をC(μF)とする。次に、吸引後の測定容器全体の重量を秤りW(g)とする。この顔料の帯電量(mC/kg)は、上記で測定した値を用いて下式の如く計算される。測定結果を、表1に示した。
【0096】
【数1】

【実施例】
【0097】
本発明を以下に示す実施例により具体的に説明する。しかし、これは本発明をなんら限定するものではない。なお、実施例中及び比較例中の部および%は特に断りがない場合、全て質量基準である。
【0098】
以下に実施例で用いた着色剤について説明する。なお、表1において、PYはC.I.ピグメントイエローの意味である。また、実施例で用いた亜鉛フタロシアニンをトルエンに分散させた分散液と水との界面張力は36mN/mであった。
<イエロー顔料1〜5、及び、比較用のイエロー顔料1>
イエロー顔料1〜5については、市販のイエロー顔料を表面処理することなく、そのまま使用した。イエロー顔料1はC.I.ピグメントイエロー155(クラリアント社製)、イエロー顔料2はC.I.ピグメントイエロー93(BASF社製)、イエロー顔料3はC.I.ピグメントイエロー128(BASF社製)、イエロー顔料4はC.I.ピグメントイエロー180(クラリアント社製)、イエロー顔料5はC.I.ピグメントイエロー185(BASF社製)、比較用のイエロー顔料1はC.I.ピグメントイエロー74(山陽色素社製)である。
【0099】
<イエロー顔料6>
・イオン交換水 1500質量部
・C.I.ピグメントイエロー185(BASF社製) 97.0質量部
【0100】
上記材料を撹拌・混合し、C.I.ピグメントイエロー185を水中に懸濁させた。その後、ロジン(酸価:130)3.0質量部及び33%濃度の水酸化ナトリウム水溶液30質量部を添加した。液温を98℃に昇温した後、温度を保ったまま1時間撹拌した。65℃に降温した後31%濃度の塩酸約60質量部を添加して樹脂を沈殿させた。沈殿した組成物をろ別し、イオン交換水によって洗浄した後乾燥し、イエロー顔料6を得た。イエロー顔料6の界面張力の値及び帯電量を表1に示す。
【0101】
<イエロー顔料7>
イエロー顔料6の製造方法において、ロジンの添加量を10.0質量部及び顔料をC.I.ピグメントイエロー74に変更し、その添加量を90.0質量部にした以外は同様の方法にて作製し、イエロー顔料7を得た。イエロー顔料7の界面張力の値及び帯電量を表1に示す。
【0102】
<イエロー顔料8>
イエロー顔料6の製造方法において、顔料をC.I.ピグメントイエロー74に変更した以外は同様の方法にて作製し、イエロー顔料8を得た。イエロー顔料8の界面張力の値及び帯電量を表1に示す。
【0103】
<イエロー顔料9>
イエロー顔料6の製造方法において、顔料をC.I.ピグメントイエロー155に変更した以外は同様の方法にて作製し、イエロー顔料9を得た。イエロー顔料9の界面張力の値及び帯電量を表1に示す。
【0104】
<比較用のイエロー顔料2>
イエロー顔料6の製造方法において、ロジンの添加量を8.0質量部及びC.I.ピグメントイエロー155の添加量を92.0質量部に変更した以外は同様の方法にて作製し、比較用のイエロー顔料2を得た。比較用のイエロー顔料2の界面張力の値及び帯電量を表1に示す。
【0105】
【表1】

【0106】
<トナーの製造例1>
ベヘン酸ベヘニル(融点71℃)10.0質量部、スチレン20.0質量部を70℃に加熱しディスパーで15分撹拌した。次いで、この分散液をホモジナイザー(15ーM−8PA型 ゴーリン社製)を用い高圧剪断70℃,4900kPa(50kg/cm)の条件で分散し、ワックス分散液を得た。
【0107】
次に、
・スチレン 30.0質量部
・イエロー顔料1 6.0質量部
・亜鉛フタロシアニン(大日精化社製) 0.060質量部
・荷電制御剤(ボントロンE−88;オリエント化学社製) 1.0質量部
上記材料をアトライター(三井鉱山社製)3時間分散し、顔料分散組成物を調製した。
【0108】
また、別容器にて、下記材料をプロペラ式撹拌装置にて溶解して樹脂溶解液を調製した。
・スチレン 20.0質量部
・N−ブチルアクリレート 30.0質量部
・ポリエステル樹脂
(酸価:8.0mgKOH/g、重量平均分子量(Mw):9,500)
5.0質量部
更に、フラスコに60℃に加温したイオン交換水900質量部、リン酸カルシウム2.5質量部を添加し、TK式ホモミキサー(特殊機化工業)を用いて10,000rpmにて撹拌し、水系媒体を得た。
【0109】
次に、上記顔料分散組成物、上記樹脂溶解液、上記ワックス分散液をビーカーに投入後、60℃に昇温し、30分間分散・混合を行い、分散液Aを得た
さらに、上記分散液Aに重合開始剤2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)8.0質量部を溶解し、重合性単量体組成物を調製した。上記水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、温度60℃、窒素雰囲気下において、TK式ホモミキサー(特殊機化工業)にて10,000rpmで15分間撹拌し、重合性単量体組成物を造粒した後、パドル撹拌翼で撹拌しつつ温度70℃に昇温した。5時間反応させた後、更に80℃に昇温し、3時間反応させた。冷却後、塩酸を加えpHを1.4にし、3時間撹拌した。トナー粒子を濾別し、水洗を行った後、温度40℃にて48時間乾燥し、トナー粒子Aを得た。
【0110】
トナー粒子A(100.0質量部)に対し、ジメチルシリコーンオイルで表面処理された疎水性シリカ微粉体1.5質量部(数平均一次粒子径:16nm)をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で10分間乾式混合して、トナー(A)を得た。トナー(A)の各種物性を表2に示す。
【0111】
<トナーの製造例2〜7、9〜23及び、比較用トナーの製造例1〜3及び、5>
トナーの製造例1において、添加する着色剤、ワックスの種類及び亜鉛フタロシアニンの含有量を、表2に示す組成に変更することを除いて、トナーの製造例1と同様にしてトナー(B)〜(G)、(I)〜(W)、及び比較例のトナー(a)〜(c)、及び(e)を製造した。尚、比較用トナーの製造例5においては、亜鉛フタロシアニンの代わりに銅フタロシアニン(大日精化社製)を用いた。材料、及び得られたトナーの特徴、物性を表2に示す。
【0112】
<トナーの製造例8>
下記のモノマー類・乳化剤水溶液の混合物を重合開始から5時間かけて、開始剤水溶液を重合開始から6時間かけて添加し、さらに30分保持した。
【0113】
[モノマー類]
・スチレン 80.0質量部
・アクリル酸ブチル 20.0質量部
・アクリル酸 3.0質量部
・ブロモトリクロロメタン 0.5質量部
・2−メルカプトエタノール 0.01質量部
・ジビニルベンゼン 0.15質量部
【0114】
[乳化剤水溶液]
・10%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 4.0質量部
・脱塩水 100.0質量部
【0115】
[開始剤水溶液]
・8%過酸化水素水溶液 9.0質量部
・8%アスコルビン酸水溶液 9.0質量部
重合反応終了後冷却し、重合体微粒子分散液Aを得た。
【0116】
また、下記のモノマー類・乳化剤水溶液の混合物を重合開始から5時間かけて、開始剤水溶液を重合開始から6時間かけて添加し、さらに30分保持した。
【0117】
[モノマー類]
・スチレン 80.0質量部
・アクリル酸ブチル 20.0質量部
・アクリル酸 3.0質量部
・ブロモトリクロロメタン 0.5質量部
・2−メルカプトエタノール 0.01質量部
・ジビニルベンゼン 0.80質量部
【0118】
[乳化剤水溶液]
・10%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 4.0質量部
・脱塩水 100.0質量部
【0119】
[開始剤水溶液]
・8%過酸化水素水溶液 9.0質量部
・8%アスコルビン酸水溶液 9.0質量部
重合反応終了後冷却し、重合体微粒子Bを調製した。
【0120】
(ワックス分散剤の調製)
ベヘン酸ベヘニル(融点71℃)25.0質量部、アニオン界面活性剤(ネオゲンSC 第一工業製薬社製)2.5質量部、脱塩水100.0質量部を100℃に加熱しディスパーで15分撹拌した。次いで、この分散液をホモジナイザー(15−M−8PA型 ゴーリン社製)を用い高圧剪断105℃,4900kPa(50kg/cm)の条件で乳化し、ワックス分散液を得た。
【0121】
(着色剤微粒子分散液の調製)
脱塩水100.0質量部に、イエロー顔料4を25.0質量部、及びポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル6.0質量部を加え、ボールミルにて分散し、イエロー着色剤微粒子分散液を得た。
【0122】
(帯電制御剤微粒子分散液の調製)
脱塩水100.0質量部に、帯電制御剤4,4’−メチレンビス〔2−〔N−(4−クロロフェニル)アミド〕−3−ヒドロキシナフタレン〕25.0質量部、及びアルキルナフタレンスルホン酸塩5.0質量部の存在下にボールミルにて分散し、帯電制御剤微粒子分散液を得た。
【0123】
次に、
・重合体微粒子分散液A 410.0質量部(固形分として)
・着色剤微粒子分散液 40.0質量部(固形分として)
・帯電制御剤微粒子分散液 1.0質量部(固形分として)
以上を撹拌装置、冷却管、温度計を装着した凝集熟成用の反応容器に投入し撹拌した。この混合液を1.0モル/リットル−水酸化カリウム水溶液を用いてpH=5.1に調整した。
【0124】
上記混合液に凝集剤として、20.0%塩化ナトリウム水溶液180.0質量部を20分間で滴下し、加熱用オイルバス中で反応容器内を撹拌しながら50℃まで加熱し、50℃で1時間保持する。さらに55℃まで昇温し、1時間保持して、重合体微粒子A、着色剤微粒子及び帯電制御剤微粒子の凝集体A分散液を得た。
【0125】
上記凝集体A分散液中に、ワックス分散液75.0質量部(固形分として)を添加し、凝集剤として、20.0%塩化ナトリウム水溶液500.0質量部を滴下し、凝集体B分散液を得た。
【0126】
さらに、上記凝集体B分散液中に、重合体微粒子B分散液50.0質量部(固形分として)を添加し、凝集剤として、20.0%塩化ナトリウム水溶液500.0質量部を滴下し、凝集体C分散液を得た。
【0127】
最後に上記凝集体C分散液中に、重合体微粒子B分散液35.0質量部(固形分として)を添加し、凝集剤として、20.0%塩化ナトリウム水溶液500.0質量部を滴下し、凝集体D分散液を得た。そこへアニオン性界面活性剤(第一工業製薬製:ネオゲンSC)5.0質量部を添加した後、反応容器を密閉し、磁力シールを用いて撹拌を継続しながら95℃まで加熱し、5時間保持した。上記スラリーを冷却し、スラリーの10倍の水量で洗浄し、乾燥をしてトナー粒子(H)を得た。
【0128】
トナー粒子(H)100.0質量部に対し、ジメチルシリコーンオイルで表面処理された疎水性シリカ微粉体1.5質量部(数平均一次粒子径:16nm)をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で10分間乾式混合して、トナー(H)を得た。トナー(H)の各種物性を表2に示す。
【0129】
<トナーの製造例24>
着色剤として、イエロー顔料の代わりにシアン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)を使用すること、また亜鉛フタロシアニンを使用しないこと、ワックスの種類、及び、トナーの重量平均粒径D4を除いてトナーの製造例1と同様にしてシアントナーであるトナー(X)を得た。得られたトナーの物性を表2に示す。
【0130】
<比較用トナーの製造例4>
(n−電子供与性化合物の製造例)
以下に示す方法によりスチレン−(4−ビニルピリジン)共重合体の合成を行った。
【0131】
テトラヒドロフラン250mlを1リットル反応容器に仕込み、テトラヒドロフランの温度を68℃した。次に、スチレン70g、4−ビニルピリジン3g、2,2−アゾイソブチロニトリル6.15g、テトラヒドロフラン80mlの混合溶液を作製し、混合溶液を反応容器内に2時間かけて滴下した。滴下後、68℃で4時間還流させた。これを室温に冷却し、メタノール1リットルを加えた。析出した結晶を濾過し、メタノール洗浄、水洗を行った。得られた粉体を温度30℃で24時間減圧乾燥させ、スチレン−(4−ビニルピリジン)共重合体を16.3g得た。得られたスチレン−(4−ビニルピリジン)共重合体は分子量測定を行ったところ、数平均分子量(Mn)が2040であり、重量平均分子量(Mw)が4470であることが分かった。
【0132】
前記共重合体を顔料分散組成物の製造時に加えることを除いて、比較用トナー(b)と同様に製造し、比較用トナー(d)を得た。材料、及び得られたトナーの特徴、物性を表2に示す。
【0133】
【表2】


(※1:亜鉛フタロシアニンの代わりに銅フタロシアニンを使用)
(D4はトナーの重量平均粒径(μm)を表す。hは色相角(°)を表す。)
【0134】
〔実施例1〕
上記トナー(A)について、評価方法を具体的に示す。
評価機としてLBP7700C(キヤノン社製)の改造機(評価機本体のギア及びソフトウエアを変更することにより、プロセススピードが290mm/secとなるようにした)を使用し、カートリッジにトナー(A)を詰め替えた。低温低湿環境下(15℃、10%RH)において低温定着性、画像濃度、フィルミング、グリーンの色調、OHP透明性、及び、OHT上と紙上での画像の色差の評価を行った。
【0135】
(1)低温定着性の評価(こすり試験)
評価紙としてBusiness4200(秤量105g/m、Xerox社製)を用い、トナーの載り量を0.50mg/cmとしたベタ画像を180℃に温調した定着器に通し、4.9Kpaの荷重をかけつつ柔和な薄紙(例えば、商品名「ダスパー」、小津産業(株)製)により、得られた定着画像を5往復摺擦し、下式により画像濃度の低下率(%)を算出し、低温定着性を評価した。なお、画像濃度はカラー反射濃度計(X−Rite 404A:X−Rite Co.製)で測定した。
濃度低下率=(摺擦前の画像濃度−摺擦後の画像濃度)×100/摺擦前の画像濃度
A: 10%未満
B: 10%以上、15%未満
C: 15%以上、20%未満
D: 20%以上
【0136】
(2)低温定着性の評価(テープハガシ試験)
トナーの載り量を0.50mg/cmとしたベタ画像を170℃に温調した定着器に通し、その定着画像上にポリエステルテープを貼り、その上から同様に4.9Kpaの荷重をかけ、シルボン紙により摺擦し、その後テープを剥がし、テープを剥がす前後の画像濃度の低下率(%)で評価した。なお、画像濃度はカラー反射濃度計(X−Rite 404A:X−Rite Co.製)で測定した。
A: 15%未満
B: 15%以上、20%未満
C: 20%以上、25%未満
D: 25%以上
【0137】
(3)画像濃度の評価
上記LBP7700C(キヤノン社製)の改造機を用いて、低温低湿環境下(15℃、10%)でBusiness4200(秤量105g/m、Xerox社製)を用い、初期と5%の印字比率の画像を8,000枚印字後の画像濃度を評価した。なお、画像濃度はカラー反射濃度計(X−Rite 404A:X−Rite Co.製)で測定した。
A: 1.35以上
B: 1.30以上、1.35未満
C: 1.25以上、1.30未満
D: 1.25以下
【0138】
(4)現像ローラーのフィルミングの評価
初期と5%の印字比率の画像を8,000枚印字後、イエローベタ画像を5枚連続複写して、白く筋状に抜けている箇所を数え、画像1枚当たりの平均個数を算出し、以下の評価基準に従い評価した。
A: 全くなし
B: 1個以上3個未満
C: 3個以上5個未満
D: 5個以上
【0139】
(5)グリーン色調の評価
Mf8350Cdn(キヤノン社製)を評価機として使用。実施例1〜23及び比較例1〜5のイエロートナーを用いて、感光ドラム上の静電潜像を現像し、これを転写材上に転写し、画像を得た。
【0140】
このとき定着条件は次のとおりであった。転写材としてはBusiness4200(秤量105g/m、Xerox社製)を用い、トナーの載り量を0.50mg/cmとしたベタ画像を作像し、前記画像を入射角75度で測定した光沢度が25〜35になるよう定着温度を調整した。
【0141】
また、各色の濃度条件は、コダック社製のグレースケールとカラーパッチを原稿とし、フルカラーコピー画像でグレースケールがなるべく忠実に再現できる様に調整し、イエロー(Y)単色コピーの最高濃度が1.1以上となるように濃度調節した。
【0142】
そして、上記状態のMf8350Cdnでそれぞれ作製したイエロートナーと実施例24で作製したシアントナー(トナー(X))を重ね合わせて得られたグリーンの画像について光沢度20〜25の定着条件で出し、このとき各色の最高濃度で重なり合った部分をコダック社製のカラーパッチとの色調差(ΔΕ:色度差)で評価した。
【0143】
評価については画像の明度L、彩度C、色相角hについてCMC(1:1)の色度差式を導入し、比較例1の値を100としたとき下記の様に評価した。
A: ΔΕ≦80
B: 80<ΔΕ≦90
C: 90<ΔΕ≦100
D: ΔΕ>100
【0144】
CMCの色度差式とは、ジャーナル・オブ・ザ・ソサエティー・オブ・ダイヤー・アンド・カラーリスト(Journal of the Society of Dyers and Colourists)、100 128(1984)に提案されている色度式で、明度L、彩度C、色相角h視感の補正を加えて評価するものであり、下記式で示される。
△E=[(ΔL/lSL)+(△C/CSC)+(Δh/SH)1/2
(lSL:明度ΔLに対する補正係数、cSc:彩度ΔCに対する補正係数、
SH:色相角Δhに対する補正係数)
尚、画像の明度L、彩度C、色相角hの測定は、X−Rite SP68(D65,視野角2度; X−Rite 社製)を使用した。
【0145】
(6)OHP透明性の評価
オーバーヘッドプロジェクター(OHP)に投影したOHT画像の透過性については、市販のオーバーヘッドプロジェクターを用いて、トランスペアレンシーフィルムに形成したベタ画像を投影して、投影像を目視で観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
A: 透明性に優れ、明暗ムラもなく、色再現性も優れる。
B: 若干明暗ムラがあるものの、実用上問題ない。
C: 明暗ムラがあり、色再現性に乏しい。
D: 透明性、色再現性に乏しく実用上問題あり。
【0146】
(7)OHT上と紙上での画像の色差の評価
また、OHT上と紙上での画像の色差の評価については、LBP7700C(キヤノン社製)の改造機を用いて得られたベタ画像をオーバーヘッドプロジェクター(OHP:3M社製 9550)にて透過画像とし、白色壁面に投影した画像を分光放射輝度計(フォトリサーチ社製 PR650)にて測定した。
【0147】
そしてその白色壁面に投影した画像の色相角h(OHT)と紙上の色相角h(紙)との角度差Δhを、下記に示すように定義し4段階評価で示した。
A: Δh≦5
B: 5<Δh≦10
C: 10<Δh≦20
D: Δh>20
【0148】
〔実施例2〜23、及び、比較例1〜5〕
実施例1のトナー(A)の代わりにトナー(B)〜(W)、及び、(a)〜(e)を用いて、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0149】
【表3】

【符号の説明】
【0150】
101 吸引機
102 測定容器
103 スクリーン
104 フタ
105 真空計
106 風量調節弁
107 吸引口
108 コンデンサー
109 電位計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イエロー顔料、結着樹脂、離型剤、及び、亜鉛フタロシアニン又は亜鉛フタロシアニン誘導体を含有するトナー粒子を有するイエロートナーであって、
前記トナー粒子は水系媒体中で得られる粒子であり、
前記イエロー顔料をトルエンに分散させた分散液と水との界面張力A(mN/m)が20mN/m以上35mN/m以下であり、
前記亜鉛フタロシアニン又は前記亜鉛フタロシアニン誘導体をトルエンに分散させた分散液と水との界面張力をB(mN/m)とした時、A<Bの関係を満足する、ことを特徴とするイエロートナー。
【請求項2】
前記トナーのL表色系による色相角(h)が95°以上110°以下であることを特徴とする請求項1に記載のイエロートナー。
【請求項3】
前記亜鉛フタロシアニン又は前記亜鉛フタロシアニン誘導体が、前記イエロー顔料に対して0.1質量%以上10質量%以下含有されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のイエロートナー。
【請求項4】
前記イエロー顔料の帯電量が−35mC/kg以上−12mC/kg以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のイエロートナー。
【請求項5】
前記離型剤がエステル系ワックスを含有し、前記トナーの示差走査熱量(DSC)測定における最大吸熱ピークが70℃以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のトナー。
【請求項6】
前記イエロー顔料が、C.I.ピグメントイエロー155であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のイエロートナー。

【図1】
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【公開番号】特開2013−50606(P2013−50606A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188959(P2011−188959)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】