説明

イオンチャネルに対する抗体

抗E1イオンチャネル抗体又はその結合断片、前記抗体を含む薬学的組成物、処置、例えば、疼痛の処置/調節における抗体及びそれを含む組成物の使用、並びに前記抗体を作製及び調製するための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、機能的に改変する性質をもつ、イオンチャネルのE1部分に向けられる抗イオンチャネル抗体及び前記抗体の断片、前記抗体を含む薬学的組成物、処置、例えば、疼痛の処置/調節における抗体及びそれを含む組成物の使用、並びに前記抗体を作製及び調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオンチャネルは、イオンの電気化学的勾配を下るイオンの流れを可能にすることによって、全ての生細胞の細胞膜電位を確立し、且つ制御することを助けるポア形成タンパク質である。それらは、全ての生物学的細胞を囲む膜の中に存在する。ヒトゲノムは、広範な多様性を示し、且つ分泌、筋収縮、並びに心臓組織及び神経組織における活動電位の発生及び伝播などの多くの細胞過程に重要な役割を果たす400を超える数のイオンチャネル遺伝子を含む。
【0003】
イオンチャネルは、いくつかのタンパク質の集合に基づいた大きな分子構造の形をとり得る内在性膜タンパク質である。そのような「多サブユニット」集合体は、通常、膜又は脂質二重層の平面を貫いて、水で満たされたポアの周りに密接して詰め込まれた同一又は相同のタンパク質の配置を含む。通常αサブユニットと呼ばれる、ポア形成サブユニット(単数又は複数)は、イオンチャネルタンパク質の活性及び細胞表面発現を制御するのを助ける、膜結合型か又は細胞質性かのいずれかの補助サブユニットと会合し得る。様々なイオンチャネルのX線構造が最近、解明され(Doyleら、Science 280:69(1998);Jiangら、Nature 423:33(2003);Longら、Science 309:897(2005))、ポア構造の構成が、イオンチャネルファミリーメンバー間で大部分、保存されていることを示している。ゲーティング過程と呼ばれるイオンチャネルポアの開閉は、様々な細胞過程又は生化学的過程によって引き起こされ得る。
【0004】
イオンチャネルタンパク質の最も大きいファミリーは、例えば、ナトリウム、カルシウム、及びカリウムイオンチャネルを含む電位開口型チャネル、一過性受容器電位イオンチャネル、過分極活性化型イオンチャネル、内向き整流性イオンチャネル、2ポアドメインカリウムチャネル、及び電位開口型プロトンチャネルで構成される。最後のものは、pH感受性様式で脱分極させる。
【0005】
内向き整流性イオンチャネルは、15個の公式メンバー及び1個の非公式メンバーで構成される。そのファミリーはさらに、相同性に基づいて7個のサブファミリーに細分することができる。
【0006】
現在のところ、同定されている約10個の電位開口型カルシウムチャネルがある。
【0007】
一過性受容器電位イオンチャネルは、相同性に基づいて、以下の6個のサブファミリーに細分される:古典的(TRPC)、バニロイド受容体(TRPV)、メラスタチン(TRPM)、ポリシスチン(TRPP)、ムコリピン(TRPML)、及びアンキリン膜貫通タンパク質1(TRPA)。
【0008】
過分極活性化型イオンチャネルは、環状ヌクレオチドcAMP及びcGMPに感受性であり、それが、チャネル開口の電位感受性を変化させる。これらのチャネルは、一価陽イオンK及びNaに対して透過性である。このファミリーの4つのメンバーがあり、それらは全て、6回膜貫通型αサブユニットの四量体を形成する。これらのチャネルは過分極状態下で開口するため、それらは、心臓、特に洞房結節において、歩調取りチャネルとして機能する。
【0009】
電位開口型及びリガンド開口型のイオンチャネルは、イオンチャネルタンパク質ファミリーの最も代表的なメンバーである。電位開口型イオンチャネル(例えば、カルシウムチャネル、ナトリウムチャネル、及びカリウムチャネル)の活性は、細胞膜電位の変化によって制御されるが、リガンド開口型イオンチャネル(例えば、GABA−A受容体、アセチルコリン受容体)は、特異的な細胞内又は細胞外リガンドの結合によって制御される。ゲーティング機構は、非常に複雑であり、様々な膜、ポア構造及び細胞質構造に関係し、イオンチャネルのクラス間で異なる。
【0010】
電位感受性イオンチャネルと呼ばれることもある、電位開口型イオンチャネルは、心臓組織及び神経組織における細胞興奮性の基盤を与える膜貫通タンパク質のクラスである。これらのチャネルは、細胞過分極又は細胞脱分極のいずれかにより活性化され、細胞膜電位の制御をもたらすイオン流束を生じる。電位開口型ナトリウムチャネルは、一般的に、活動電位の惹起に関与するが、電位開口型カリウムチャネルは、細胞膜再分極を媒介する。様々な電位開口型イオンチャネル間の微調整された相互作用は、心臓活動電位及び神経活動電位の形をとるのに重要である。
【0011】
電位開口型ナトリウムチャネルの1つのクラスは、9つの異なるアイソフォーム(Nav1.1〜1.9)を含み、4つの異なるナトリウムチャネル特異的アクセサリータンパク質が記載されている(SCN1b〜SCN4b)。それらのアイソフォームの別々の機能活性は、様々な神経細胞型(Llinasら、J.Physiol.305:197〜213(1980);Kostyukら、Neuroscience 6:2423〜2430(1981);Bossuら、Neurosci.Lett.51:241〜246(1984)1981; Gillyら、Nature 309:448〜450(1984);Frenchら、Neurosci.Lett.56:289〜294(1985);Ikedaら、J.Neurophysiol.55:527〜539(1986);Jonesら、J.Physiol.389:605〜627(1987);Alonso&Llinas、1989;Gillyら、J.Neurosci.9:1362〜1374(1989))及び骨格筋(Gonoiら、J.Neurosci.5:2559〜2564(1985);Weissら、Science 233:361〜364(1986))において記載されている。Nav1.5及びNav1.4チャネルは、それぞれ、心臓組織及び筋肉組織に発現した主要なナトリウムチャネルアイソフォームであり、Na1.1、1.2、1.3、1.6、1.7、1.8、及び1.9は、中枢神経系及び末梢神経系に特異的に発現している。天然の毒素である、テトロドトキシン(TTX)を用いることによって、その毒素への親和性に基づいた、ナトリウムチャネルアイソフォームの薬理学的分類を確立することが可能になった。したがって、電位開口型ナトリウムチャネルは、TTX抵抗性(Na1.5、1.8、1.9)及びTTX感受性として分類された。
【0012】
特定のイオンチャネルは、疼痛の調節に関連づけられている(例えば、PNAS2001年11月6日、98巻23号、13373〜13378、及びThe Journal of Neuroscience 22、2004 24(38)832〜836参照)。イオンチャネルNa1.7は、神経因性疼痛などの疼痛を調節する能力があると考えられており、それゆえに、特に興味深い、治療介入の標的である。Na1.8及びNa1.9もまた、疼痛の調節において役割をもつと考えられる。
【0013】
Na1.7は、遺伝子SCN9Aによってコードされる電位活性化型テトロドトキシン感受性ナトリウムチャネルである。Na1.7の機能獲得型突然変異及び機能喪失型突然変異の両方は、ヒトにおいて、明らかな疼痛に関連した異常を生じる。
【0014】
もともと、SCN9Aにおける機能獲得型突然変異は、連鎖解析によって、紅痛症(又は原発性肢端紅痛症)及び発作性極度疼痛障害(以前には、家族性直腸痛)の原因として同定された。紅痛症は、四肢における熱及び発赤と共に灼熱痛の発作を伴うまれな常染色体優性障害である。神経障害がなく、その他の点では健康な個体が疼痛を感じることが全くできないことは、非常にまれな表現型である。ごく最近、Coxら(2006)及びGoldbergら(2007)によって報告された2つの研究が、染色体2q24.3(遺伝子SCN9Aを含む領域)にマッピングされる、常染色体劣性形質のような表現型を記載している。両方の研究において、詳細な神経学的試験により、これらの人々が、鋭い/鈍い及び熱い/冷たい刺激を区別することができるが、痛覚の全体的な欠如をもつことが明らかにされた。全員が、自分自身をかむことによって引き起こされる唇及び/又は舌の傷を有した。全員が頻繁に挫傷及び切り傷を負い、ほとんどの人が、骨折又は髄膜炎を経験していた。
【0015】
このデータは、イオンチャネルNa1.7の機能喪失をもたらすSCN9Aチャネル病が、神経病、又は認知障害、情動障害、若しくは神経障害の非存在下における疼痛に対する非感受性と関連しているという強力な証拠となっており、臨床的に、Na1.7を疼痛関連標的として確証している。さらに、KO研究及び動物疼痛モデルから、Na1.7が炎症性疼痛において主要な役割を果たしていると思われる。
【0016】
図2aは、4つのドメイン、A、B、C、及びD(ドメインI、II、III、及びIVとも呼ばれる)を含むNa1.7などのイオンチャネルの図表示である。各ドメインは、6つの膜貫通タンパク質ヘリックスS1、S2、S3、S4、S5、及びS6を含む。各膜貫通タンパク質の正確なアミノ酸番号は、用いられたデータベース登録によって異なるが、UniProtKB/Swiss−Protは、Na1.7について以下の情報を提供している:ドメインAにおいて、膜貫通タンパク質S1、S2、S3、S4、S5、及びS6は、それぞれ、アミノ酸122〜145、154〜173、187〜205、212〜231、248〜271、及び379〜404に割り当てられる;
ドメインBにおいて、膜貫通タンパク質S1、S2、S3、S4、S5、及びS6は、それぞれ、アミノ酸739〜763、775〜798、807〜826、833〜852、869〜889、及び943〜968に割り当てられる;
ドメインCにおいて、膜貫通タンパク質S1、S2、S3、S4、S5、及びS6は、それぞれ、アミノ酸1188〜1211、1225〜1250、1257〜1278、1283〜1304、1324〜1351、及び1431〜1457に割り当てられる;
ドメインDにおいて、膜貫通タンパク質S1、S2、S3、S4、S5、及びS6は、それぞれ、アミノ酸1511〜1534、1546〜1569、1576〜1599、1610〜1631、1647〜1669、及び1736〜1760に割り当てられる。
公開データベースで入手可能である、その配列のいくつかの天然のバリエーションがあり、例えば、UniProtKB/Swiss−Prot Q15858を参照されたい。
【0017】
本開示において、S1、S2、S3、S4、S5、及びS6は、異なるアミノ酸割り当てが与えられている場合を含む、上記の実体、又は代替のイオンチャネルにおけるそれに対応する実体を指し、それの天然又は非天然の変種及び異なるアイソタイプにおける対応実体が含まれる。
【0018】
各ドメインはまた、細胞外親水性ループE1、E2、及びE3を含む。各ドメインにおけるE1のアミノ酸配列は、膜貫通領域S1の後から始まり、S2で終わる。各ドメインにおけるE1は、他のドメインにおけるE1と異なる。各ドメインにおけるE2のアミノ酸配列は、膜貫通領域S3の後から始まり、S4で終わる。各ドメインにおけるE2は、他のドメインにおけるE2と異なる。各ドメインにおけるE3のアミノ酸配列は、膜貫通領域S5の後から始まり、S6で終わる。各ドメインにおけるE3もまた、他のドメインにおけるE3と異なる。
【0019】
Na及びCaイオンチャネルは、4つのドメインA、B、C、及びDを含み、それぞれが6つの膜貫通タンパク質ヘリックスを含むが、Kイオンチャネル、HCNイオンチャネル、及びTRPイオンチャネルなどの他のイオンチャネルは1つのドメインを含む。Na及びCaイオンチャネルにおける各ドメインについてのように、Kイオンチャネル、HCNイオンチャネル、及びTRPイオンチャネルは、上記のように、6つの膜貫通タンパク質ヘリックスS1、S2、S3、S4、S5、及びS6、並びに3つの細胞外親水性ループE1、E2、及びE3を含む。
【0020】
Na1.7イオンチャネルにおいて、細胞外ループ(Eループ)は、図2cにおける配列番号105の以下のアミノ酸残基である:
【表1】

【0021】
Na1.7のいくつかのドメインにおける細胞外ループは、他のイオンチャネルに見出される細胞外ループと類似している。
【0022】
Na1.7は、末梢神経系、すなわち、侵害受容性後根神経節(DRG)に発現しており、最も顕著には、侵害受容性小径DRGニューロンで発現しており、脳においてはほとんど提示されていない。Na1.7分布(例えば、感覚終末)及び生理機能が、それが、痛刺激を伝達することに主要な役割を果たす素因をつくっている。
【0023】
末梢神経系におけるNa1.7の発現は、それを機能遮断抗体の作製のための非常に魅力的な標的にしており、これは、副作用がなく、又は副作用を許容できるレベルまで最小化する、疼痛についての価値のある処置への革新的なアプローチを示している。
【0024】
神経因性疼痛は、非常によく見られる状態である。米国において、人口の0.6%から1.5%の間、すなわち、180万〜450万人が罹患していると推定される(Pullar及びPalmer、2003)。毎年少なくとも140万人が、神経因性疼痛の3つの主原因である、有痛性糖尿病性神経障害(PDN)、ヘルペス後神経障害(PHN)、又は三叉神経痛(TN)と診断されている。神経因性疼痛の他の原因には、脊髄損傷、多発性硬化症、幻肢痛、脳卒中後痛、及びHIV関連痛が挙げられる。神経障害性関連慢性背痛、変形性関節症、及び癌を有する患者を含めたならば、その総数は、少なくとも2倍になるであろう。非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は、しばしば用いられるが、神経因性疼痛の処置にはあまり効果的ではない。さらに、それらの長期使用は、重篤な胃損傷を引き起こす可能性がある。他方、オピオイド(モルヒネ及び誘導体)の使用は、最も重度の形態である神経因性疼痛、すなわち、癌関連神経障害に制限されている。これは、悪心、嘔吐、呼吸抑制、便秘、及び耐性などの重篤な副作用、並びに耽溺及び乱用の可能性が、長期処置に付随するからである。その後者のことは、他の神経障害でのオピオイドの使用を妨げている(Dellemijn、1999;Namakaら、2004)。抗てんかん薬(AED)は、脳における異常な神経過剰興奮性を減弱することが知られている。神経過剰興奮性が神経因性疼痛において重要な役割を果たすことを考えると、AEDが慢性神経因性疼痛の処置に向けられたことは理解できる(Renfrey、Downton、及びFeatherstone、2003)。ごく最近の重要な例は、ガバペンチン(Neurontin)及びプレガバリン(Lyrica、Frampton及びScott、2004)である。しかしながら、神経因性疼痛の処置のゴールドスタンダードであるガバペンチンでさえも、せいぜい約40%の患者において50%、疼痛を低減するだけである(Dworkin、2002)。さらに、オピオイドと対照的に、ガバペンチンは、癌関連神経因性疼痛の処置に用いられていない。
【0025】
上記で述べたように、ヒトにおけるNa1.7の「機能喪失型」突然変異は、疼痛に対する非感受性をもたらす(Coxら、2006)。さらに、ヒトにおけるNa1.7の「機能獲得型」突然変異は、疼痛表現型の紅痛症及び発作性極度疼痛障害をもたらす(Dib−Hajj、Yang、Waxman、2008)。加えて、Na1.7を遮断する末梢作用性小分子は、炎症性疼痛及び神経因性疼痛のラットモデルにおいて痛覚過敏及び異痛症を逆転させる(McGowanら、2009)。したがって、末梢作用性Na1.7遮断抗体は、疼痛治療において有益であるはずである。
【0026】
今まで、イオンチャネルの強力な化学阻害剤が同定されているが、一般的に、これらは、他のイオンチャネルのアイソフォームに対する選択性が弱いことを特徴とする。生体における遍在性分布を考慮すれば、これらの非選択性阻害剤は、利用が限定されている。
【0027】
抗体は、それらの精巧な特異性により明らかに望ましいが、機能改変抗体を作製することは、1つには、最終的にクローナル抗体が治療適用に必要とされるという理由で、全く簡単というわけではなく、その分野のいくらかの研究者は、イオンチャネルの機能の改変をもたらすのにポリクローナル抗体が必要とされることを指摘している。Klionskyら(The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 319巻1号、192〜198ページ)は198ページにおいて以下のように述べている:
「ヒトTRPV1の前ポア領域・・に対して産生されたウサギ、マウス、又は完全ヒトのモノクローナル抗体のいずれも、チャネル活性化を遮断するのに効果的ではなかったので、この領域における小さいエピトープに対する高親和性結合作用物質を通してチャネル立体構造をロックすることは不可能であると我々は仮定する(Since no rabbit, mouse or fully human monoclonal antibodies generated against the prepore region of human TRPV1 ..were effective in blocking channel activation we hypothesise that it may not be possible to lock the channel conformation through high-affinity binders to small epitopes in this region)。」
【0028】
ナトリウムチャネル、特に、Na1.7、Na1.8、Na1.9は、機能改変抗体を作製することに関して特に困難な標的であったと思われる。しかしながら、本発明者らは、前記イオンチャネルの活性を、機能改変抗体、例えば、抗体のクローン集団を用いて変化させ得ることを今、見出した。今まで、イオンチャネルに対する抗体が作製されているが、疼痛の調節に関与するイオンチャネルに対する、E1結合性機能改変抗体は開示されていないと思われる。
【0029】
本発明者らは、機能改変抗体が、疼痛の調節に関与するイオンチャネルのE1ループに対して生産され得ることを今、確立した。そのドメインのそれぞれにおけるE1ループが比較的短いアミノ酸配列であるため、これは驚くべきことである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0030】
したがって、本発明は、抗E1イオンチャネル抗体又はその結合断片を提供し、前記イオンチャネルが疼痛の調節において機能しており、且つ前記抗体又は断片が、前記イオンチャネルを、それに結合した後、機能的に改変する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】HEK細胞におけるヒトNa1.7電流への特定のモノクローナル抗体の機能的効果を示す図である。
【図2a】Na1.7の図表示である。
【図2b】Na1.7のドメインA(配列番号101)、ドメインB(配列番号102)、ドメインC(配列番号103)、及びドメインD(配列番号104)についてのアミノ酸配列を示す図である。
【図2c】Na1.7の完全アミノ酸配列(配列番号105)を示す図である。
【図3A】インビトロでクローナル983抗Na1.7抗体が、電気的に誘導されるDRGスパイク頻度を低下させることを示す図である。
【図3B】インビトロで抗Na1.7モノクローナル抗体983が、電気的に誘導されるDRGスパイク頻度を低下させることを示す図である。
【図3C】インビトロで抗Na1.7モノクローナル抗体1080が、電気的に誘導されるDRGスパイク頻度を低下させることを示す図である。
【図3D】(a)HEK細胞に発現した組換えヒトNav1.7チャネルの自動パッチクランプ分析を示す図である。983モノクローナル抗体は、Nav1.7電流の用量依存性阻害を生じる。(b)HEK細胞に発現した組換えヒトNav1.7チャネルの自動パッチクランプ分析を示す図である。1080モノクローナル抗体は、Nav1.7電流の用量依存性阻害を生じる。
【図3E】HEK細胞に発現した組換えラットNav1.7チャネルの自動パッチクランプ分析を示す図である。983モノクローナル抗体は、Nav1.7電流の用量依存性阻害を生じる。1080モノクローナル抗体は、25μg/mlにおいて、Nav1.7電流の約26%阻害を生じる。
【図3F】983モノクローナル抗体によるヒトNav1.7阻害の動態を示す図である。
【図3G】Nav1.7ペプチドへの抗体983の特異的結合についてのELISAデータを示す図である。
【図3H】Nav1.7ペプチドへの抗体1080の特異的結合についてのELISAデータを示す図である。
【図4】特定の抗Na1.7抗体のアミノ酸配列を示す図である。
【図5】特定の抗Na1.7抗体のアミノ酸配列を示す図である。
【図6】特定の抗Na1.7抗体のアミノ酸配列を示す図である。
【図7】特定の抗Na1.7抗体のアミノ酸配列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
一態様において、本開示は、疼痛の調節に関連したイオンチャネルの活性を機能的に改変するイオンチャネルE1ループ結合性実体を提供し、それには、抗体、抗体断片、タンパク質又はタンパク質性スキャフォールド、核酸又はヌクレオチド、合成分子などの小分子など、特に、抗体、抗体断片、タンパク質若しくはタンパク質性スキャフォールド、又は核酸若しくはヌクレオチドが挙げられる。
【0033】
疼痛の調節に関与及び/又は関連すると考えられるイオンチャネルには、Na1.3、Na1.6、Na1.7、Na1.8、Na1.9、Ca3.1、Ca3.2、Ca3.3、Ca2.1、Ca2.2、Ca2.3、K2.1、K2.2、K7.x、HCN1、HCN2、TRPV1、TRPA1、ASIC1、TRPM8、TRPV3、及びTRP4が挙げられるが、それらに限定されない。
【0034】
一実施形態において、イオンチャネルは、Na1.7など、Na1.7、Na1.8、又はNa1.9についてのナトリウムチャネルである。免疫化に用いられるペプチドは、イオンチャネルの細胞外配列の少なくとも部分を含んでもよく、その細胞外配列がE1ループであり、且つイオンチャネルのAドメイン、Bドメイン、Cドメイン、又はDドメイン由来であってもよい。好ましい実施形態において、ペプチドは、イオンチャネルのAドメイン、Bドメイン、Cドメイン、又はDドメイン由来のE1細胞外領域の少なくとも一部を含む。さらに好ましい実施形態において、ペプチドは、イオンチャネルのAドメイン又はBドメイン由来のE1細胞外領域の少なくとも一部を含む。好ましくは、ペプチドは、BE1細胞外領域の少なくとも一部を含む。
【0035】
本発明の一実施形態において、イオンチャネルはNav1.7ではない。一実施形態において、本発明は、イオンチャネルのE1細胞外ループに結合する、抗E1イオンチャネル抗体又はその結合断片を提供し、前記イオンチャネルが、疼痛の調節において機能しており、前記抗体又は断片が、前記イオンチャネルを、それに結合した後、機能的に改変し、且つ前記イオンチャネルはNav1.7ではない。
【0036】
一実施形態において、イオンチャネルは、カリウムイオンチャネル、K2.1、K2.2、又はK7.xである。
【0037】
一実施形態において、イオンチャネルは、カルシウムイオンチャネル、例えば、Ca3.1、Ca3.2、Ca3.3、Ca2.1、Ca2.2、又はCa2.3である。
【0038】
一実施形態において、イオンチャネルは、過分極活性化型チャネルHCN1又はHCN2である。
【0039】
一実施形態において、イオンチャネルは、非ゲート型イオンチャネル、例えば、TRPV1、TRPA1、ASIC1、TRPM8、TRPV3、又はTRP4である。
【0040】
一実施形態において、処置、例えば、疼痛の調節、特に疼痛の寛解に用いるE1結合性抗イオンチャネル抗体が提供される。
【0041】
一実施形態において、調節、例えば、疼痛の寛解に用いるE1結合性抗イオンチャネル抗体が提供される。
【0042】
一実施形態において、調節、例えば、疼痛の、特に本明細書に記載された疼痛のサブグループの寛解に用いるE1結合性抗Na1.7抗体が提供される。
【0043】
一実施形態において、調節、例えば、疼痛の、特に本明細書に記載された疼痛のサブグループの寛解に用いるE1結合性抗Na1.8抗体が提供される。
【0044】
一実施形態において、調節、例えば、疼痛の、特に本明細書に記載された疼痛のサブグループの寛解に用いるE1結合性抗Na1.9抗体が提供される。
【0045】
一実施形態において、調節、例えば、疼痛の、特に本明細書に記載された疼痛のサブグループの寛解に用いるE1結合性抗HCN1抗体が提供される。
【0046】
一実施形態において、調節、例えば、疼痛の、特に本明細書に記載された疼痛のサブグループの寛解に用いるE1結合性抗HCN2抗体が提供される。
【0047】
一実施形態において、調節、例えば、疼痛の、特に本明細書に記載された疼痛のサブグループの寛解に用いるE1結合性抗TRPA1抗体が提供される。
【0048】
一実施形態において、調節、例えば、疼痛の、特に本明細書に記載された疼痛のサブグループの寛解に用いるE1結合性抗TRPV1抗体が提供される。
【0049】
一実施形態において、調節、例えば、疼痛の、特に本明細書に記載された疼痛のサブグループの寛解に用いるE1結合性抗TRPV3抗体が提供される。
【0050】
一実施形態において、調節、例えば、疼痛の、特に本明細書に記載された疼痛のサブグループの寛解に用いるE1結合性抗TRPM8抗体が提供される。
【0051】
一実施形態において、調節、例えば、疼痛の、特に本明細書に記載された疼痛のサブグループの寛解に用いるE1結合性抗TRP4抗体が提供される。
【0052】
一実施形態において、調節、例えば、疼痛の、特に本明細書に記載された疼痛のサブグループの寛解に用いるE1結合性抗ASIC1抗体が提供される。
【0053】
一実施形態において、調節、例えば、疼痛の、特に本明細書に記載された疼痛のサブグループの寛解に用いるE1結合性抗Ca3.1抗体が提供される。
【0054】
一実施形態において、調節、例えば、疼痛の、特に本明細書に記載された疼痛のサブグループの寛解に用いるE1結合性抗Ca3.2抗体が提供される。
【0055】
一実施形態において、調節、例えば、疼痛の、特に本明細書に記載された疼痛のサブグループの寛解に用いるE1結合性抗Ca3.3抗体が提供される。
【0056】
一実施形態において、調節、例えば、疼痛の、特に本明細書に記載された疼痛のサブグループの寛解に用いるE1結合性抗Ca2.1抗体が提供される。
【0057】
一実施形態において、調節、例えば、疼痛の、特に本明細書に記載された疼痛のサブグループの寛解に用いるE1結合性抗Ca2.2抗体が提供される。
【0058】
一実施形態において、調節、例えば、疼痛の、特に本明細書に記載された疼痛のサブグループの寛解に用いるE1結合性抗Ca2.3抗体が提供される。
【0059】
本明細書に用いられる場合の機能改変抗体は、イオンチャネルの活性を、例えば、インビトロ又はインビボアッセイで少なくとも1つにおいて20%など、少なくとも5%、例えば、10%又は15%、活性を低下させることによって、変化させる抗体又は(結合断片などの)断片を指すものとする。適切なインビトロアッセイには、本明細書に記載されているようなパッチクランプアッセイ又は他のアッセイが挙げられる。一実施形態において、機能改変抗体は、パッチクランプアッセイにより、電流の振幅を5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、又はそれ以上のパーセント、低下させる。
【0060】
イオンチャネルに機能改変を与える抗体及び機能改変抗体は、本明細書において交換可能に用いられる用語である。
【0061】
一実施形態において、機能改変は、例えば、イオンチャネルのポア(孔)を遮断し、閉鎖し、又は阻害するのに十分である。この機能改変は、任意の機構によってもたらされてもよく、その機構には、ポアを物理的に遮断すること、例えば、ポアを遮断する、イオンチャネルに立体構造的変化を引き起こすこと、又はイオンチャネルが非機能性状態(静止状態又は不活化状態)をとるように誘発すること、及び/又はイオンチャネルを非機能性状態に維持すること(アロステリック調節)が挙げられる。
【0062】
一実施形態において、機能改変は、イオンチャネルタンパク質の細胞表面レベルを低下させるのに十分である。この機能改変は、任意の機構によってもたらされてもよく、その機構には、細胞表面における機能性イオンチャネルタンパク質の数を低下させるように導く、イオンチャネルの抗体誘導性内部移行又はエンドサイトーシス又はサイクリングの増加が挙げられるが、それらに限定されない。
【0063】
イオンチャネルの機能改変について上記で提案した機構は例であり、機能改変抗体が、イオンチャネルにおいて機能改変効果を生じ得る様式の点において限定するものではない。
【0064】
Na1.7細胞外ドメイン対他のファミリーメンバーの細胞外ドメインの配列の違いを調べることによって、特定の関心対象の区域を同定することが可能になり、その区域は、例えば、それらの配列に基づいてペプチドを作製することにより、抗体の作製に用いることができる。Na1.7において、ドメインAアミノ酸146〜153、ドメインBアミノ酸764〜774、ドメインCアミノ酸1213〜1224及び1216−1224、並びにドメインDアミノ酸1535〜1545は、特に違い/差異のある領域であり、したがって、抗体を作製するのに特に適し得る。
【0065】
一実施形態において、抗体又は断片は、イオンチャネルのドメインAの細胞外(又は細胞外アクセス可能)領域にE1ループにおいて結合する。
【0066】
一実施形態において、抗体又は断片は、イオンチャネルにおけるドメインBの細胞外(又は細胞外アクセス可能)領域にE1ループにおいて結合する。
【0067】
一実施形態において、抗体又は断片は、イオンチャネルにおけるドメインCの細胞外(又は細胞外アクセス可能)領域にE1ループにおいて結合する。
【0068】
一実施形態において、抗体又は断片は、イオンチャネルにおけるドメインDの細胞外(又は細胞外アクセス可能)領域にE1ループにおいて結合する。
【0069】
一実施形態において、本発明による抗体又は断片を、問題のイオンチャネルを機能的に改変する他の実体、例えば、イオンチャネルのE3領域、例えば、ドメインAなどのドメインA、B、C、又はDのE3領域の部分に結合する抗体又は断片と併用して、用いてもよい。
【0070】
一実施形態において、E1結合性抗Na1.7抗体が提供される。
【0071】
抗Na1.7抗体は、Na1.7へ特異的に結合する抗体である。E1結合性抗Na1.7抗体は、Na1.7へE1領域において特異的に結合する抗体である。
【0072】
特異的結合とは、抗体が、関連するイオンチャネル、例えば、Na1.7に対して選択性であり、それを他のイオンチャネル及びタンパク質、例えば、同じファミリーにおける他のイオンチャネルと区別することができるという事実を指すものとする。選択的抗体は、例えば、他のイオンチャネルからNa1.7などの関連するイオンチャネルをアフィニティー精製するために用いることができるものである。
【0073】
一実施形態において、抗Na1.7抗体は、哺乳類Na1.7、例えば、ヒトNa1.7に特異的である。
【0074】
一実施形態において、E1結合性抗イオンチャネル抗体、例えば、抗Na1.7抗体は、関連するヒトイオンチャネル及び対応するラットイオンチャネルと交差反応する。
【0075】
一実施形態において、機能改変抗体又は断片は、抗体のクローン集団、例えば、モノクローナル集団である。ポリクローナル抗体がイオンチャネルの機能改変を得るのに必要とされることが、文献中で示唆されている。したがって、本開示が、関連するイオンチャネルを機能的に改変するモノクローナル抗体を提供することは特に驚くべきことである。
【0076】
本明細書に用いられる場合のモノクローナルとは、単細胞に由来する抗体又は断片を指すものとし、例えば、それは、ハイブリドーマテクロノジーを用いることによる。
【0077】
クローン集団は、同じアミノ酸配列及び特異性を含む同じ性質、特性を有する抗体又は断片の集団を指すものとする。
【0078】
一実施形態において、2つ以上、例えば、3つ又は4つの抗イオンチャネル抗体のクローン集団は混合して用いられ、その混合物は、本発明による少なくとも1つ、例えば、2つ、3つ、又は4つの抗体を含む。
【0079】
一実施形態において、本開示による抗体は抗体全体である。
【0080】
一実施形態において、抗体又はその断片は、多価及び/又は二重特異性である。本明細書で用いられる場合の多価とは、抗体又は断片の実体において複数の結合部位(例えば、少なくとも2つの結合部位)を指すものとする。本明細書との関連における多価性実体は、同じ特異性をもつ少なくとも2つの結合部位を有する。同じエピトープに結合する結合部位を有する多価抗体は、その実体が、第1及び第2の結合部位と異なる特異性をもつ第3の結合部位を含まない限り、二重特異性とはみなされないものとする。したがって、本開示に用いられる場合の二重特異性は、異なる、すなわち、別個の標的抗原に結合する、抗体又は断片における2つ以上の結合部位を必要とする。
【0081】
各結合部位が同じ又は異なる標的抗原上の異なるエピトープに結合する、複数の結合部位を有する実体においては、抗体又は断片の実体は、本開示の意味の範囲内において、二重特異性とみなされるものとする。
【0082】
本明細書で用いられる場合の結合部位は、標的抗原を特異的に結合する抗体又は断片の区域を指すものとする。重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインの対形成は、本明細書における結合部位の例とみなされるものとする。
【0083】
一実施形態において、本開示による抗体断片は一価である。換言すれば、1つの結合部位のみを有する。
【0084】
一実施形態において、抗体は、断片、例えば、単一ドメイン抗体、一本鎖Fv、Fab、Fab’、又は完全な重鎖と軽鎖の対形成である。
【0085】
本発明に用いる、本開示の抗体又はその断片は、任意の種由来であり得るが、好ましくは、モノクローナル抗体、ヒト抗体に由来し、又はヒト化断片である。本発明に用いる抗体断片は、免疫グロブリン分子の任意のクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、又はIgA)又はサブクラス由来であり得、例えば、マウス、ラット、サメ、ウサギ、ブタ、ハムスター、ラクダ、ラマ、ヤギ、又はヒトを含む任意の種から取得されてもよい。
【0086】
抗体可変ドメインにおける残基は、通常、Kabatらによって考案されたシステムにより番号が付けられる。このシステムは、Kabatら、1987、Sequences of Proteins of Immunological Interest、US Department of Health and Human Services、NIH、USA(以後、「Kabatら(上記)」)に示されている。この番号付けシステムは、他に指示されている場合を除き、本明細書で用いられる。
【0087】
Kabat残基呼称は、常にアミノ酸残基の直線的番号付けに直接対応するとは限らない。実際の直鎖アミノ酸配列は、基本的な可変ドメイン構造の、(フレームワークであろうと相補性決定領域(CDR)であろうと)構造コンポーネントの短縮又はそれへの挿入に対応して、厳密なKabat番号付けにおいてより少ない、又は追加のアミノ酸を含む場合がある。残基の正しいKabat番号付けは、所定の抗体について、「標準」Kabat番号付け配列とのその抗体の配列における相同性の残基のアラインメントによって決定され得る。
【0088】
重鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号付けシステムによる残基31〜35(CDR−H1)、残基50〜65(CDR−H2)、及び残基95〜102(CDR−H3)に位置する。Kabat番号付けを本明細書で用いるものとする。
【0089】
本明細書では用いられていない、代替の番号システムは、Chothia(Chothia, C.及びLesk,A.M. J.Mol.Biol.、196、901〜917(1987))であり、CDR−H1に等しいループが残基26から残基32にわたっている。「CDR−H1」についてのChothia及びKabat番号付けの組み合わせは、例えば、残基26〜35を含むであろう。
【0090】
軽鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号付けシステムによる残基24〜34(CDR−L1)、残基50〜56(CDR−L2)、及び残基89〜97(CDR−L3)に位置する。
【0091】
様々なウサギ抗体についてのCDRが下記に提供されている:
【表2−1】


【表2−2】

【0092】
一実施形態において、本明細書における開示は、本明細書に開示された1個、2個、3個、4個、5個、又は6個のCDR配列を含む抗体にまで及ぶ。
【0093】
一実施形態において、本開示は、本明細書における配列(単数又は複数)由来の単一の可変ドメイン又は1対の可変ドメインを含む抗体にまで及ぶ。
【0094】
一実施形態において、重鎖の可変ドメインは、上記に掲載された表に示されている配列を有するCDRの少なくとも1つを含み、例えば、CDRがその「天然の位置」にある場合である。H1、H2、H3、L1、L2、又はL3などのCDRの天然の位置は、上記の表に示されており、例えば、配列番号4のCDRについての天然の位置は、H1であり、配列番号5のCDRについての天然の位置は、H2であり、配列番号6のCDRについての天然の位置は、H3であるなどである。類似の解釈がまた、軽鎖配列にも適用される。
【0095】
一例において、本発明の抗体は重鎖を含み、その重鎖の可変ドメインのCDR−H1、CDR−H2、及びCDR−H3の少なくとも2つが上記の表に示された配列から選択されており、例えば、CDRがそれらの天然の位置にあり、任意で、それらの天然の対形成にある。本明細書に用いられる場合の天然の対形成とは、同じ抗体由来(すなわち、上記の1つの表由来)のCDRの対形成を指すものとする。CA167_00983についての天然の対形成の例は、配列番号1と2、1と3、及び2と3である。
【0096】
一実施形態において、本発明による抗体は重鎖を含み、その可変ドメインが、以下に示された配列:
配列番号4 CDR−H1、
配列番号5 CDR−H2及び
配列番号6 CDR−H3、
又は
配列番号10 CDR−H1、
配列番号11 CDR−H2及び
配列番号12 CDR−H3、
又は
配列番号16 CDR−H1、
配列番号17 CDR−H2及び
配列番号18 CDR−H3、
又は、
配列番号22 CDR−H1、
配列番号23 CDR−H2及び
配列番号24 CDR−H3、
又は
配列番号28 CDR−H1、
配列番号29 CDR−H2及び
配列番号30 CDR−H3、
又は
配列番号34 CDR−H1、
配列番号35 CDR−H2及び
配列番号36 CDR−H3、
又は
配列番号40 CDR−H1、
配列番号41 CDR−H2及び
配列番号42 CDR−H3、
又は
配列番号46 CDR−H1、
配列番号47 CDR−H2及び
配列番号48 CDR−H3、
又は
配列番号52 CDR−H1、
配列番号53 CDR−H2及び
配列番号54 CDR−H3、
又は
配列番号58 CDR−H1、
配列番号59 CDR−H2及び
配列番号60 CDR−H3、
又はそれと少なくとも90%、95%、又は98%など、少なくとも60%、70%、80%の同一性又は類似性を有する配列を含む。
【0097】
一実施形態において、本発明による抗体は、重鎖を含み、その重鎖の可変ドメインが、本明細書に開示されているような、例えば、本明細書に列挙された、可変ドメイン又は可変ドメインコンポーネントを含む。
【0098】
本明細書に用いられる場合の可変ドメインコンポーネントとは、CDR及びそれらの組み合わせ、特に本明細書で明確に開示されているようなCDR及びそれらの組み合わせを指すものとする。
【0099】
別の実施形態において、本発明の抗体は重鎖を含み、その重鎖の可変ドメインが、本明細書に開示された重鎖可変領域と少なくとも90%、95%、又は98%の同一性又は類似性など、少なくとも60%、70%、80%の同一性又は類似性を有する配列を含む。
【0100】
本明細書に用いられる場合の「同一性」は、整列させた配列における任意の特定の位置で、アミノ酸残基がその配列間で同一であることを示す。本明細書に用いられる場合の「類似性」は、整列させた配列における任意の特定の位置で、アミノ酸残基がその配列間で類似した型であることを示す。例えば、ロイシンは、イソロイシン又はバリンの代わりに用いられてもよい。しばしばお互いに置換することができる他のアミノ酸には以下が挙げられるが、それらに限定されない:
−フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン(芳香族側鎖を有するアミノ酸);
−リシン、アルギニン、及びヒスチジン(塩基性側鎖を有するアミノ酸);
−アスパルテート及びグルタメート(酸性側鎖を有するアミノ酸)
−アスパラギン及びグルタミン(アミド側鎖を有するアミノ酸);並びに
−システイン及びメチオニン(イオウ含有側鎖を有するアミノ酸)。
同一性及び類似性の程度は、容易に計算することができる(Computational Molecular Biology、Lesk,A.M.編、Oxford University Press、New York、1988;Biocomputing.Informatics and Genome Projects、Smith,D.W.編、Academic Press、New York、1993;Computer Analysis of Sequence Data、Part 1、Griffin,A.M.及びGriffin,H.G.編、Humana Press、New Jersey、1994;Sequence Analysis in Molecular Biology、von Heinje、G.、Academic Press、1987;並びにSequence Analysis Primer、Gribskov,M.及びDevereux,J.編、M Stockton Press、New York、1991)。
【0101】
本発明はまた、E1結合性抗イオンチャネル抗体又は断片を提供し、そのイオンチャネルがインビボで疼痛の調節において役割/機能をもち、特に、前記イオンチャネルの機能を選択的に阻害する、本明細書に記載されたイオンチャネルに向けられる抗体、例えば、抗Na1.7抗体であり、前記抗体又は断片は、軽鎖CDRについて本明細書に示された配列(提供された表及びリストを参照)を有する少なくとも1つのCDRを含む軽鎖を有し、例えば、そのCDRがその「天然の位置」にある場合である。
【0102】
一実施形態において、本発明の抗体は軽鎖を含み、その軽鎖の可変ドメインにおけるCDR−L1、CDR−L2、及びCDR−L3の少なくとも2つが軽鎖CDRについて本明細書に示された配列から選択されており、例えば、CDRはそれらの天然の位置にあり、任意で、それらの天然の対形成にある。本明細書に用いられる場合の天然の対形成とは、1つの抗体由来のCDRが、同じ抗体、特に同じ抗体(すなわち、上記の1つの表由来)の同じ鎖由来のCDRと可変ドメインにおいて対形成する/同じ場所に位置するという事実を指すものとする。
【0103】
誤解を避けるために言えば、全ての順列が含まれることは言うまでもない。
【0104】
一例において、本発明の抗体は軽鎖を含み、その可変ドメインが、以下に示された配列:
配列番号1 CDR−L1、
配列番号2 CDR−L2及び
配列番号3 CDR−L3、
又は
配列番号7 CDR−L1、
配列番号8 CDR−L2及び
配列番号9 CDR−L3、
又は
配列番号13 CDR−L1、
配列番号14 CDR−L2及び
配列番号15 CDR−L3、
又は、
配列番号19 CDR−L1、
配列番号20 CDR−L2及び
配列番号21 CDR−L3、
又は
配列番号25 CDR−L1、
配列番号26 CDR−L2及び
配列番号27 CDR−L3、
又は
配列番号31 CDR−L1、
配列番号32 CDR−L2及び
配列番号33 CDR−L3、
又は
配列番号37 CDR−L1、
配列番号38 CDR−L2及び
配列番号39 CDR−L3、
又は
配列番号43 CDR−L1、
配列番号44 CDR−L2及び
配列番号45 CDR−L3、
又は
配列番号49 CDR−L1、
配列番号50 CDR−L2及び
配列番号51 CDR−L3、
又は
配列番号55 CDR−L1、
配列番号56 CDR−L2及び
配列番号57 CDR−L3、
それと少なくとも90%、95%、又は98%など、少なくとも60%、70%、80%の同一性又は類似性を有する配列を含む。
【0105】
一実施形態において、本発明は軽鎖を含み、その軽鎖の可変ドメインが、例えば記載された任意の重鎖由来の、本明細書に開示されているような可変ドメイン又は可変ドメインコンポーネントを含む。
【0106】
別の実施形態において、本発明の抗体は軽鎖を含み、その軽鎖の可変ドメインが、本明細書に開示された重鎖可変領域と少なくとも90%、95%、又は98%の同一性又は類似性など、少なくとも60%、70%、80%の同一性又は類似性を有する配列を含む。
【0107】
一実施形態において、1対の可変ドメイン、例えば、重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインが提供される。一態様において、同族の対である、重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインの対が提供される。
【0108】
本発明の抗体分子は、相補的軽鎖又は相補的重鎖をそれぞれ含む。
【0109】
一実施形態において、重鎖及び軽鎖は、天然の対形成であり、換言すれば、例えば、本明細書の単一の表に示されているような、同じ抗体由来である。
【0110】
一実施形態において、重鎖及び軽鎖は、非天然対形成を有する。
【0111】
本発明によって提供される1つの抗体は、図4に示された抗体983と本明細書で呼ばれる。
【0112】
さらなる態様において、本発明はまた、本開示による抗体又はその断片をコードするヌクレオチド配列を提供する。
【0113】
例えば、本明細書に記載されたイオンチャネルに向けられる、CDRグラフト化(又はヒト化)された(本発明による)抗イオンチャネル抗体、特に、前記イオンチャネルを機能的に改変することを特徴とする抗Na1.7抗体もまた本発明によって提供される。一実施形態において、CDRグラフト化抗体分子におけるCDRの1つ又は複数は、ウサギ抗体983から取得されている。本明細書に用いられる場合、用語「CDRグラフト化抗体分子」は、重鎖及び/又は軽鎖が、アクセプター抗体(例えば、ヒト抗体)の重鎖可変領域フレームワーク及び/又は軽鎖可変領域フレームワークへグラフト化されたドナー抗体(例えば、本明細書に記載されているようなラット又はウサギの抗体)由来の1つ又は複数のCDR(必要に応じて、1つ又は複数の改変CDRを含む)を含む、抗体分子を指す。概説として、Vaughanら、Nature Biotechnology、16、535〜539、1998を参照されたい。
【0114】
CDRがグラフト化される場合、任意の適切なアクセプター可変領域フレームワーク配列は、CDRが由来するドナー抗体のクラス/型を考慮して用いられてもよく、それには、ラット、ウサギ、マウス、霊長類、及びヒトのフレームワーク領域が挙げられる。好ましくは、本発明のCDRグラフト化抗体は、ヒトアクセプターフレームワーク領域、及び本明細書で言及されているようなドナー抗体由来のCDRの1つ又は複数を含む可変ドメインを有する。したがって、可変ドメインが、ヒトアクセプターフレームワーク領域、及び非ヒト、好ましくはラット、マウス、又はウサギのドナーCDRを含む、CDRグラフト化抗体が提供される。
【0115】
本発明に用いることができるヒトフレームワークの例は、KOL、NEWM、REI、EU、TUR、TEI、LAY、及びPOM(Kabatら、上記)である。例えば、KOL及びNEWMは、重鎖に用いることができ、REIは軽鎖に用いることができ、EU、LAY、及びPOMは、重鎖及び軽鎖の両方に用いることができる。或いは、ヒト生殖細胞系配列を用いてもよい;これらはhttp://vbase.mrc−cpe.cam.ac.uk/で入手できる。さらなる代替において、親和性成熟ヒトV領域配列のデータベースをフレームワークとして用いてもよい。
【0116】
本発明のCDRグラフト化抗体において、アクセプター重鎖及び軽鎖は、必ずしも同じ抗体由来である必要はなく、必要に応じて、異なる鎖由来のフレームワーク領域を有する複合鎖を含んでもよい。
また、本発明のCDRグラフト化抗体において、フレームワーク領域は、アクセプター抗体の配列と同じ配列を厳密に有する必要はない。例えば、通常の残基が、そのアクセプター鎖のクラス又は型についてより高い頻度で存在する残基へ変更されてもよい。或いは、アクセプターフレームワーク領域における選択された残基が、それらがドナー抗体において同じ位置に見出される残基に対応するように、変更されてもよい(Reichmannら、1998、Nature、332、323〜324参照)。そのような変化は、ドナー抗体の親和性を回復するための必要最低限に抑えられるべきである。変更される必要があり得る、アクセプターフレームワーク領域における残基を選択するためのプロトコールはWO91/09967に示されている。
【0117】
ドナー残基は、ドナー抗体、すなわち、CDRがもともと由来した抗体由来の残基であり、それは、本発明の一実施形態において、ラット、マウス、又はウサギの抗体に由来してもよく、必要に応じて、最終の抗体又は断片へ組み込まれ得る。
【0118】
一実施形態において、抗体(又はFab若しくはFab’断片などの断片)は、モノクローナル、完全ヒト、ヒト化、又はキメラ抗体断片である。一実施形態において、抗体、Fab又はFab’断片は、完全ヒト又はヒト化抗体である。
【0119】
したがって、本発明に用いる抗体は、完全長の重鎖と軽鎖を有する完全抗体分子、又はその断片を含んでもよく、Fab、修飾Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、単一ドメイン抗体(VH、VL、VHH、IgNAR Vドメインなど)、scFv、二価、三価、又は四価抗体、bis−scFv、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体、及び上記のいずれかのエピトープ結合断片であってもよいが、それらに限定されない(例えば、Holliger及びHudson、2005、Nature Biotech.23(9):1126〜1136;Adair及びLawson、2005、Drug Design Reviews−Online 2(3)、209〜217参照)。これらの抗体断片を作製及び製造するための方法は当技術分野においてよく知られている(例えば、Vermaら、1998、Journal of Immunological Methods、216、165〜181参照)。本発明に用いる他の抗体断片には、国際公開特許出願WO2005/003169、WO2005/003170、及びWO2005/003171に記載されたFab断片及びFab’断片が挙げられる。多価抗体は、複数の特異性を含んでもよいし、単一特異性であってもよい(例えば、WO92/22853及びWO05/113605参照)。
【0120】
一例において、本発明に用いる抗体は、ラクダ又はラマなどのラクダ科の動物由来であってもよい。ラクダ科の動物は、重鎖抗体と呼ばれる、軽鎖を欠く機能クラスの抗体を有する(Hamersら、1993、Nature、363、446〜448;Muyldermansら、2001、Trends.Biochem.Sci.26、230〜235)。これらの重鎖抗体の抗原結合部位は、N末端可変ドメイン(VHH)によって提供される3つの超可変ループ(H1〜H3)のみに限定される。VHHの最初の結晶構造により、H1ループ及びH2ループが、通常の抗体について定義された既知のカノニカル構造クラスに制限されないことが明らかになった(Decanniereら、2000、J.Mol.Biol、300、83〜91)。VHHのH3ループは、通常の抗体のそれらより平均して長い(Nguyenら、2001、Adv.Immunol.、79、261〜296)。ヒトコブラクダ重鎖抗体の大部分は、それらが産生されている酵素の活性部位への結合を優先する(Lauwereysら、1998、EMBO J、17、3512〜3520)。ある場合においては、H3ループは、残存するパラトープから突出し、ニワトリ卵白リゾチームの活性部位に挿入することが示された(Desmyterら、1996、Nat.Struct.Biol.3、803〜811、及びDe Genstら、2006、PNAS、103、12、4586〜4591、及びWO97049805)。
【0121】
これらのループを他のスキャフォールドにおいてディスプレイし、CDRライブラリーをそれらのスキャフォールドにおいて作製し得ることが示唆されている(例えば、WO03050531及びWO97049805参照)。
一例において、本発明に用いる抗体は、サメなどの軟骨魚由来であってもよい。軟骨魚(サメ、ガンギエイ、エイ、及びキメラ)は、IgNARとして知られた異型免疫グロブリンアイソタイプを有する。IgNARは、軽鎖と会合していないH鎖ホモ二量体である。各H鎖は、1つの可変ドメイン及び5つの定常ドメインを有する。IgNAR Vドメイン(又はV−NARドメイン)は、2つの密接に関係したサブタイプ、I及びIIへの分類を可能にするいくつかの非カノニカルシステインを有する。タイプII V領域は、CDR1及びCDR3に追加のシステインを有し、そのシステインは、ラクダ科の動物のVHHドメインに観察されるものと類似した、ドメイン拘束ジスルフィド結合を形成すると提唱されている。その上、CDR3は、ラクダ科の動物のVHHと類似して、より伸長した立体構造をとり、抗体フレームワークから突出しているであろう。実際、上記のVHHドメインのように、特定のIgNAR CDR3残基もまた、ニワトリ卵白リゾチーム活性部位において結合する能力があることが実証されている(Stanfieldら、2004、Science、305、1770〜1773)。
【0122】
VHHドメイン及びIgNAR Vドメインを作製する方法の例は、例えば、Lauwereysら、1998、EMBO J.1998、17(13)、3512〜20;Liuら、2007、BMC Biotechnol.、7、78;Saerensら、2004、J.Biol.Chem.、279(5)、51965〜72に記載されている。
【0123】
本発明に用いる抗体には、任意の適切なクラス、例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、若しくはIgM、又はIgG1、IgG2、IgG3、若しくはIgG4などのサブクラスの抗体全体、及びそれらの機能活性断片若しくは誘導体が挙げられ、それらは、モノクローナル抗体、クローナル抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、又はキメラ抗体であり得るが、それらに限定されない。
【0124】
一実施形態において、本開示による抗体又はその特定の断片に用いられる定常領域は、ハイブリッド定常領域又は突然変異型定常領域である。ハイブリッド定常領域は、2つ以上の別個の定常領域、例えば、2つ以上の別個のヒト定常領域由来の部分又はドメインを含む。
【0125】
ハイブリッド定常領域の例として、米国特許出願公開第2007/0041972号に開示されたものが挙げられ、それにおいては、少なくともCH1及びヒンジ領域が1つ又は複数のIgG2抗体に由来し、CH2及びCH3領域の少なくとも一部が1つ又は複数のIgG4 CH2及びCH3領域に由来する。エクリズマブ(Eculizimumab)(Alexion Pharmaceuticals)は、ハイブリッド定常領域を含む発作性夜間血色素尿症についてのヒト化抗ヒトC5モノクローナル抗体である。それは、IgG2由来のCH1及びヒンジと、IgG4由来のCH2及びCH3ドメインとのハイブリッド鎖を有する。それはFcγRに結合しないし、補体も活性化しない。それはまた、低い免疫原性を有する(196人の患者のたった3人(3%)に検出される抗エクリズマブ抗体の低力価)。
【0126】
WO2008/090958は、IgG1由来のCH1、ヒンジ、及びCH2、並びにIgG3由来CH3ドメインの鎖を含む特定のハイブリッド定常領域を開示する。そのハイブリッドは、IgG1又はIgG3抗体のCDC活性より高いCDC活性を有し、IgG1と等価のプロテインA結合活性を有する。
【0127】
さらなるハイブリッド定常領域は、Taoら(S.L.Morrisonのグループ)J.Exp.Med 173 1025〜1028、1991に開示されている。この論文は、全てのクラスからの多数のIgGドメイン交換を含むが、重要なハイブリッドはg1g4及びg4g1であり、それぞれ、CH2ドメインにおいて連結している。IgG(1−1−1/4−4)は、IgG1と対照的に、補体を活性化することが全くできない。しかしながら、IgG(4−4−4/1−1)は、IgG4と比較して有意な活性を示したが、IgG1と比較してわずかに損なわれていた。重要な違いは、ヒンジであると思われ、多くの論文が、その後に、ヒンジは補体活性化を調節するが、媒介しないことを実証している。
【0128】
Taoら(S.L.Morrisonのグループ)J.Exp.Med 178 661〜667、1993は、補体活性化におけるアイソタイプ特異的違いを決定するヒトIgGの構造的特徴を開示している。IgG4におけるSer331(CH2)は、C1q結合及び補体活性化を妨げる。IgG4及びIgG(1−1−1/4−4)におけるSer331のProへの突然変異誘発は、結合及び活性化を可能にするが、IgG1のそれより低いレベルである。興味深いことには、IgG1におけるP331Sは結合を可能にするが、活性化を可能にしない。
【0129】
Zuckerら、Canc Res 58 3905〜3908 1998は、複数のドメインがインビボでの半減期に寄与していることを実証するために、組み替えた定常領域エクソンを有するキメラヒト−マウスIgG抗体を用いている。特に、この論文は、IgG(1−1−1/4−4)ハイブリッドなどの半減期を調べている。SCIDマウスにおいて、IgG(1−1−1/4−4)は、IgG4より有意に長いが、IgG1よりわずかに短い半減期を有する。IgG(4−4−4/1−1)は最も長い半減期を有する。
【0130】
突然変異型定常領域の例には、ヒトCTLA−4とIgG1ヒンジ−Fcとの融合体であるAbataceptに用いられたものが挙げられる。そのヒンジは、CPPCからSPPSへ変化していた。後者はO−glyである。突然変異型定常領域は、ADCC又はCDCを媒介せず、低い免疫原性を有する(3%の発生率)。
【0131】
そのヒンジは、補体活性化において役割をもつ可能性があると考えられる。結晶学的研究から推定される機能的ヒンジは、IgG1の216から237まで及び、
【化1】





、それぞれからなる。一実施形態において、本開示による抗体又は断片は機能的ヒンジを含む。
【0132】
定常領域への突然変異/改変は、例えば、安定性の増加を生じ得、例えば、米国特許出願公開第2004/0191265は、IgG1ヒンジの突然変異誘発を開示しており、その突然変異誘発は、ヒトIgG1の位置233〜239又は249におけるヒンジ領域に1つ又は複数のアミノ酸改変を導入することによってIgGの安定性を増加させた。これは、1週間55℃まで加熱した際、分解を低下させた。
【0133】
或いは、上流ヒンジ部(ヒトIgG1残基226〜243、並びに他のIgGサブタイプ及び/若しくは他の種由来の免疫グロブリンにおける対応する残基)並びに/又は隣接CH1及び/若しくはCH2配列(ヒトIgG1残基249、並びに他のIgGサブタイプ及び/若しくは他の種由来の免疫グロブリンにおける対応する残基)における不安定性アミノ酸(例えば、ヒスチジン又はスレオニン)又は反応性アミノ酸(例えば、リシン又はグルタミン酸)に点突然変異を起こすことによって、改変をもたらしてもよい。
【0134】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術(Kohler&Milstein、Nature、1975、256、495〜497)、トリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら、Immunology Today、1983、4、72)、及びEBVハイブリドーマ技術(Coleら、「Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy」、77〜96ページ、Alan R.Liss,Inc.、1985)などの当技術分野において知られた任意の方法によって調製されてもよい。
【0135】
本発明に用いる抗体はまた、例えば、Babcook,J.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1996、93(15)、7843〜7848、WO92/02551、WO2004/051268、及びWO2004/106377に記載された方法による、特定の抗体の生産のために選択された単一のリンパ球から生じた免疫グロブリン可変領域cDNAをクローン化及び発現することによる単一リンパ球抗体方法を用いて作製されてもよい。
【0136】
ヒト化抗体は、非ヒト種由来の1つ又は複数の相補性決定領域(CDR)、及びヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域を有する、非ヒト種由来の抗体分子である(例えば、米国特許第5,585,089号参照)。
【0137】
本発明に用いる抗体はまた、当技術分野において知られた様々なファージディスプレイ方法を用いて作製することができ、その方法には、Brinkmanら、J.Immunol.Methods、1995、182、41〜50;Amesら、J.Immunol.Methods、1995、184、177〜186;Kettleboroughら、Eur.J.Immunol.、1994、24、952〜958;Persicら、Gene、1997 187、9〜18;及びBurtonら、Advances in Immunology、1994、57、191〜280;WO90/02809;WO91/10737;WO92/01047;WO92/18619;WO93/11236;WO95/15982;及びWO95/20401;並びに米国特許第5,698,426号;第5,223,409号;第5,403,484号;第5,580,717号;第5,427,908号;第5,750,753号;第5,821,047号;第5,571,698号;第5,427,908号;第5,516,637号;第5,780,225号;第5,658,727号;第5,733,743号;及び第5,969,108号により開示されたものが挙げられる。また、トランスジェニックマウス、又は他の哺乳類を含む他の生物体を、ヒト化抗体を作製するために用いてもよい。
【0138】
完全ヒト抗体は、重鎖及び軽鎖の両方の可変領域及び(存在する場合)定常領域が、全てヒト起源であり、又は必ずしも同じ抗体由来であるとは限らないが、ヒト起源の配列と実質的に同一である。完全ヒト抗体の例として、例えば、上記のファージディスプレイ方法により作製された抗体、及び例えば、EP0546073B1、米国特許第5,545,806号、米国特許第5,569,825号、米国特許第5,625,126号、米国特許第5,633,425号、米国特許第5,661,016号、米国特許第5,770,429号、EP0438474B1、及びEP0463151B1に一般論として記載されているような、マウス免疫グロブリン可変領域遺伝子及び/又は定常領域遺伝子がそれらのヒト対応物によって置き換えられているマウスによって産生された抗体を挙げることができる。
【0139】
本発明に用いる抗体又は断片は、任意の適切な酵素切断及び/又は消化技術を用いて、例えば、ペプシンでの処理により、任意の抗体全体、特にモノクローナル抗体全体から得ることができる。
【0140】
或いは、又は加えて、抗体の出発物質を、抗体可変領域及び/又は定常領域をコードするDNAの操作及び再発現を含む組換えDNA技術を用いることによって調製してもよい。標準分子生物学技術を、必要に応じて、アミノ酸又はドメインを改変、付加、又は除去するために用いてもよい。可変領域又は定常領域へのいかなる変更もなお、本明細書に用いられる場合の用語「可変」領域及び「定常」領域に含まれる。
【0141】
論じられているように、抗体断片「出発物質」は、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、サメ、ラクダ、ラマ、ヤギ、又はヒトを含む任意の種から取得されてもよい。抗体断片の部分は、1つより多い種から取得されてもよく、例えば、抗体断片はキメラであってもよい。一例において、定常領域が1つの種由来であり、可変領域が別の種由来である。抗体断片出発物質はまた改変されていてもよい。別の例において、抗体断片の可変領域は、組換えDNA操作技術を用いて作製されていてもよい。そのような操作されたバージョンには、天然抗体のアミノ酸配列における、又はそれらへの挿入、欠失、又は変化によって天然抗体可変領域から生じたものが挙げられる。この型の具体的な例には、少なくとも1つのCDR、並びに任意で、1つの抗体由来の1つ又は複数のフレームワークアミノ酸、及び第2の抗体由来の可変領域ドメインの残部を含む、操作された可変領域ドメインが挙げられる。これらの抗体断片を作製及び製造するための方法は、当技術分野においてよく知られている(例えば、Bossら、米国特許第4,816,397号;Cabillyら、米国特許第6,331,415号;Shraderら、WO92/02551;Wardら、1989、Nature、341、544;Orlandiら、1989、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、86、3833;Riechmannら、1988、Nature、322、323;Birdら、1988、Science、242、423;Queenら、米国特許第5,585,089号;Adair、WO91/09967;Mountain and Adair、1992、Biotechnol.Genet.Eng.Rev、10、1〜142;Vermaら、1998、Journal of Immunological Methods、216、165〜181参照)。
【0142】
したがって、一実施形態において、定常領域ドメインは、ヒトIgA、IgD、IgE、IgG、又はIgMドメインであり得る。特に、ヒトIgG定常領域ドメイン、とりわけ、抗体分子が治療的使用を意図されており、且つ抗体エフェクター機能が必要とされる場合、IgG1及びIgG3のアイソタイプのヒトIgG定常領域ドメインを用いてもよい。或いは、IgG2及びIgG4アイソタイプを、抗体分子が治療目的を意図され、且つ抗体エフェクター機能が必要とされない場合、用いてもよい。これらの定常領域ドメインの配列変種もまた用い得ることは認識されているであろう。例えば、Angalら、Molecular Immunology、1993、30(1)、105〜108に記載されているように、位置241におけるセリンがプロリンへ変化しているIgG4分子を用いてもよい。抗体が様々な翻訳後修飾を受け得ることもまた、当業者によって理解されているであろう。これらの修飾の型及び程度は、抗体を発現するために用いられる宿主細胞系及び培養条件に依存することが多い。そのような修飾には、グリコシル化、メチオニン酸化、ジケトピペラジン形成、アスパルテート異性化、及びアスパラギン脱アミドにおけるバリエーションを挙げることができる。よくある修飾は、(Harris,RJ. Journal of Chromatography 705:129〜134、1995に記載されているような)カルボキシペプチダーゼの作用によるカルボキシ末端塩基性残基(リシン又はアルギニンなど)の喪失である。
【0143】
一実施形態において、抗体又は断片の軽鎖は、κか又はλのいずれかのCLドメインを含む。
【0144】
本明細書で用いられる場合の用語「抗体」又は断片はまた、生体適合性フレームワーク構造へ組み込まれた1つ又は複数のCDRを含む結合作用物質も含み得る。一例において、生体適合性フレームワーク構造は、局在的表面領域において抗原に結合する1つ又は複数のアミノ酸配列(例えば、CDR、可変領域など)をディスプレイすることができる、立体構造的に安定な構造支持体、又はフレームワーク、又はスキャフォールドを形成するのに十分であるポリペプチド又はその部分を含む。そのような構造は、天然のポリペプチド又はポリペプチド「折り畳み」(構造モチーフ)であり得、又は天然のポリペプチド又は折り畳みに対して、アミノ酸の付加、欠失、又は置換などの1つ又は複数の改変を有し得る。これらのスキャフォールドは、ヒト、他の哺乳類、他の脊椎動物、無脊椎動物、植物、細菌、又はウイルスなどの任意の種(又は1つより多い種)のポリペプチド由来であり得る。
【0145】
典型的には、生体適合性フレームワーク構造は、免疫グロブリンドメイン以外のタンパク質スキャフォールド又は骨格に基づいている。例えば、フィブロネクチン、アンキリン、リポカリン、ネオカルチノスタチン(neocarzinostain)、チトクロームb、CP1ジンクフィンガー、PST1、コイルドコイル、LACI−D1、Zドメイン、及びテンダミスタット(tendramisat)に基づいたものを用いてもよい(例えば、Nygren及びUhlen、1997、Current Opinion in Structural Biology、7、463〜469参照)。
【0146】
一実施形態において、抗体又は断片の総電荷は中性である。
【0147】
一実施形態において、抗体又は断片の総電荷は負である。
【0148】
一実施形態において、抗体又は断片の総電荷は正である。
【0149】
一実施形態において、CDRは、代替型のスキャフォールド、例えば、フィブロネクチン又はアクチン結合性リピートへグラフト化又は操作されてもよい。
【0150】
一実施形態において、抗体又は断片は、ポリマー、毒物又はそれにコンジュゲートした化学阻害剤などの生体毒素を含む毒素などのエフェクター分子を含む。
【0151】
生体毒素及び毒物は、細胞シグナル伝達の遮断剤などの天然の調節剤である。本発明による抗体又は断片にコンジュゲートした場合、それらは、抗体により提供される選択性を維持しながら、イオンチャネルへの機能的効果を増強するために用いることができる。例えば、タランチュラコモリグモ毒ペプチドProTxIIは、Na1.7を選択的に阻害することが示されており、例えば、Mol Pharmacol 74:1476〜1484、2008を参照されたい。一実施形態において、毒素は、ボツリヌス毒素、例えば、ボツリヌス毒素Aである。他の毒素には、テトロドトキシン及びサキシトキシンが挙げられる。
【0152】
一実施形態において、抗体又は断片はアプタマーにコンジュゲートされている。アプタマーは、二次構造及び三次構造をとり、且つ結合して、タンパク質活性を調節することができる一本鎖オリゴヌクレオチド配列である。そのような構造の抗体へのコンジュゲーションにより、イオンチャネルの標的特異的調節がもたらされる(直接的効果)。
【0153】
一実施形態において、抗体又は断片は、イオンチャネルの合成化学阻害剤などの化学阻害剤にコンジュゲートされている。化学阻害剤の例には、以下の式(I)の化合物が挙げられる:
【化2】


式中、nは0又は1である;
mは0又は1である;
pは0又は1である;
YはCH、N、又はNOである;
Xは酸素又はイオウである;
Wは酸素、H、又はFである;
AはN又はC(R)である;
GはN又はC(R)である;
DはN又はC(R)である;
ただし、A、G、及びDのうちの1個以下が窒素であるが、Y、A、G、及びDのうちの少なくとも1つが窒素又はNOである;
R1が水素又はC〜Cアルキルである;
、R、及びRが、非依存的に、水素、ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、アリール、ヘテロアリール、OH、OC〜Cアルキル、CO、−CN、−NO、−NR、−CF、−OSOCFであり、又はRとR、若しくはRとRがそれぞれ一緒になって、0個から2個の間の窒素原子を含み、且つ以下の置換基のうちの1〜2つで置換された、AとG、又はGとDをそれぞれ共有する別の6員芳香環又はヘテロ芳香環を形成し得る:非依存的に、水素、ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、アリール、ヘテロアリール、OH、OC〜Cアルキル、CO、−CN、−NO、−NR、−CF、−OSOCF
及びRは、非依存的に、水素、C〜Cアルキル、C(O)R、C(O)NHR、C(O)OR、SO10であり、又は一緒になって、(CHQ(CHであり得る(式中、QはO、S、NR11、又は結合である;jは2〜7である;kは0〜2である;R、R、R、R10、及びR11は非依存的に、C〜Cアルキル、アリール、若しくはヘテロアリール、又はそれらの鏡像異性体であり、それらの薬学的に許容される塩はニコチン性アセチルコリン受容体の強力なリガンドである)。
EP0996622を参照されたい。
【0154】
Bioorg Med Chem(2003)11:2099〜113.RA Hill、S Rudra、B Peng、DS Roane、JK Bounds、Y g、A Adloo、T Luは、阻害剤として特定のヒドロキシル置換型スルホニル尿素を開示している。
【0155】
4,4−ジイソチオシアナトスチルベン−2,2’−ジスルホン酸(DIDS)は、陰イオン輸送阻害剤として用いられている。
【0156】
以下もまた、Na1.7の化学阻害剤である:
【表3】

【0157】
上記表に2と名付けられた化合物、N−[(R)−1−(R)−7−クロロ−1−イソプロピル−2−オキソ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾ[b]アゼピン−3−イルカルバモイル)−2−(2−フルオロフェニル)−エチル]−4−フルオロ−2−トリフルオロメチル−ベンズアミドは、McGowanら、Anesthesia and Analgesia 109巻、3号、2009年9月(題が「末梢作用性Na1.7ナトリウムチャネル遮断剤は、炎症性疼痛及び神経因性疼痛のラットモデルにおいて痛覚過敏及び異痛症を逆転させる(A Peripherally Acting Na1.7 Sodium Channel Blocker Reverses Hyperalgesia and Allodynia on Rat Models of Inflammatory and Neuropathic Pain)」である)による論文で論じられている。
【0158】
Tarnawaら(2007)(「中枢神経系疾患の処置のための電位開口型ナトリウムチャネルの遮断剤(Blockers of voltage−gated sodium channels for the treatment of central nervous system diseases)」、Recent Patents on CNS Drug Discovery、2:57)は、最近のナトリウムチャネル遮断剤の医薬品化学を概説した。リドカイン、メキシレチン、カルバマゼピン、フェニトイン、ラモトリギンなどのいくつかの古い薬物、及びラコサミド、オキシカルバゼピン、クロベネチン、ラルフィナミドなどの新しく開発された薬物は、動物モデルにおいて様々な型の慢性疼痛の処置に効果的であることが証明されているナトリウムチャネル遮断剤であり、それらの一部は、臨床的にも用いられている。電位開口型ナトリウムチャネルの化学調節剤のいくつかの他の例は下記に列挙されている:
【化3】


図(15a).Merckによって特許取得された、芳香環及びヘテロ芳香環の組み合わせをもつ化合物
【化4】


図(16).Atkinsonによって特許取得された、ビアリールカルボキサミド化合物
【化5】


図(17).Ehringによって特許取得された、芳香環及びヘテロ芳香環の組み合わせをもつ化合物
【化6】


図(18b).Vertexによって特許取得された、組み合わされた芳香環及びヘテロ芳香環を有する化合物
【化7】


図(19).Ionixによって特許取得された、組み合わされた芳香環及びヘテロ芳香環を有する化合物
電位開口型ナトリウムチャネルの化学調節剤を記載する他の参考文献:Angerら(2001)J.Med.Chem.44(2):115; Hoytら(2007)、Bioorg.Med.Chem.Lett.17:6172;Yangら(2004)、J.Med.Chem.47:1547;Benesら(1999)J.Med.Chem.42:2582
米国特許第7456187号は、以下の式の特定のカリウムチャネル阻害剤を開示する:
【化8】


式中、Rは、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、又はアルキルである;
は、H、アルキル、ニトロ、−CO、CONR、又はハロである;
はH、NR、NC(O)R、ハロ、トリフルオロメチル、アルキル、ニトリル、又はアルコキシである;
及びRは、同じでも異なっていてもよく、H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、若しくはシクロアルキルであってもよい;又はR及びRは一緒になって、飽和、非飽和、若しくは部分的飽和の4〜7員環を形成してもよく、ただし、前記環は任意で、N、O、若しくはSから選択された1つ若しくは複数のさらなるヘテロ原子を含んでもよい;
Xは、O、S、又はNRである;
は、H又はアルキルである;
は、水素、メチル、又はエチルである;
は、メチル又はエチルである;
Lは、(CH(式中、nは1、2、又は3である)である;及び
Yは、アリール、複素環基、アルキル、アルケニル、若しくはシクロアルキル、又はその薬学的に許容される塩である。
【0159】
Bioorganic and Medical Chemistry Letters 19巻、第11刷、2009年6月1日、3063〜3066ページは、以下の式の特定の阻害剤を開示している:
【化9】


より具体的には:
【化10】


【化11】

【0160】
一実施形態において、抗体又は断片にコンジュゲートした実体は、その分子の全体的電荷を変化させる。
【0161】
本明細書で用いられる場合のエフェクター分子という用語は、例えば、抗悪性腫瘍剤、薬物、毒素、生物活性タンパク質、例えば、酵素、他の抗体又は抗体断片、合成又は天然のポリマー、核酸及びその断片、例えば、DNA、RNA、及びその断片、放射性核種、特に放射性ヨウ化物、放射性同位元素、キレート金属、ナノ粒子、並びに、蛍光化合物又はNMR若しくはESR分光測定法によって検出され得る化合物などのレポーター群を含む。
【0162】
エフェクター分子の例には、細胞毒、又は細胞にとって有害である(例えば、細胞を殺す)任意の作用物質を含む細胞毒性物質を挙げることができる。例として、コンブレタスタチン、ドラスタチン、エポチロン、スタウロスポリン、メイタンシノイド、スポンギスタチン、リゾキシン、ハリコンドリン、ロリジン、ヘミアスタリン、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアンタラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、及びピューロマイシン、並びにそれらの類似体又は相同体が挙げられる。
【0163】
エフェクター分子にはまた、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキセート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシル、デカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、及びロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、及びシス−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン)、及びドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、アントラマイシン(AMC)、カリケアマイシン、又はデュオカルマイシン)、及び有糸分裂阻害剤(例えば、ビンクリスチン及びビンブラスチン)を挙げ得るが、それらに限定されない。
【0164】
他のエフェクター分子には、111In及び90Y、Lu177、ビスマス213、カリホルニウム252、イリジウム192、及びタングステン188/レニウム188などのキレート放射性核種;又は非限定的に、アルキルホスホコリン、トポイソメラーゼI阻害剤、タキソイド、及びスラミンなどの薬物を挙げ得る。
【0165】
他のエフェクター分子には、タンパク質、ペプチド、及び酵素が挙げられる。関心対象となる酵素には、タンパク質分解性酵素、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、トランスフェラーゼが挙げられるが、それらに限定されない。関心対象となるタンパク質、ポリペプチド、及びペプチドには、免疫グロブリン、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素、又はジフテリア毒素などの毒素が挙げられるが、それらに限定されない。
【0166】
他のエフェクター分子には、例えば、診断に有用な検出可能な物質を挙げ得る。検出可能な物質の例として、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性核種、ポジトロン放出金属(ポジトロン放出断層撮影用)、及び非放射性常磁性金属イオンが挙げられる。一般的には、診断法として用いる、抗体にコンジュゲートすることができる金属イオンについて米国特許第4,741,900号を参照されたい。適切な酵素には、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼが挙げられる;適切な補欠分子族には、ストレプトアビジン、アビジン、及びビオチンが挙げられる;適切な蛍光物質には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル、及びフィコエリトリンが挙げられる;適切な発光物質には、ルミノールが挙げられる;適切な生物発光物質には、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、及びエクオリンが挙げられる;並びに適切な放射性核種には、125I、131I、111In、及び99Tcが挙げられる。
【0167】
別の例において、エフェクター分子は、インビボでの抗体の半減期を増加させ、及び/又は抗体の免疫原性を低下させ、及び/又は上皮性関門を渡っての免疫系への抗体の送達を増強することができる。この型の適切なエフェクター分子の例には、ポリマー、アルブミン、アルブミン結合タンパク質、又はWO05/117984に記載されているものなどのアルブミン結合化合物が挙げられる。
【0168】
エフェクター分子がポリマーである場合、一般的には、それは、合成ポリマーであっても天然ポリマーであってもよく、例えば、任意で置換される直鎖若しくは分岐鎖のポリアルキレン、ポリアルケニレン、若しくはポリオキシアルキレンのポリマー、又は分岐型若しくは非分岐型多糖、例えば、ホモ多糖若しくはヘテロ多糖であり得る。
【0169】
上記の合成ポリマー上に存在し得る具体的な任意の置換基には、1つ又は複数のヒドロキシ基、メチル基、又はメトキシ基が挙げられる。
【0170】
合成ポリマーの具体的な例として、任意で置換される直鎖又は分岐鎖のポリ(プロピレングリコール)ポリ(ビニルアルコール)又はその誘導体、特に、メトキシポリ(エチレングリコール)などの任意で置換されるポリ(エチレングリコール)又はその誘導体が挙げられる。
【0171】
適切なポリマーには、ポリ(エチレングリコール)、又は特に、メトキシポリ(エチレングリコール)などのポリアルキレンポリマー又はその誘導体、特に、約15000Daから約40000Daまでの範囲の分子量を有するものが挙げられる。
【0172】
ポリマーのサイズは、必要に応じて変わり得るが、一般的に、500Daから50000Daまで、例えば、20000Daから40000Daまでなど、5000Daから40000Daまでの平均分子量範囲にある。ポリマーサイズは、特に、その製造物の意図される使用、例えば、腫瘍などの特定の組織に局在化する能力、又は循環半減期を延ばす能力に基づいて選択され得る(概説として、Chapman、2002、Advanced Drug Delivery Reviews、54、531〜545参照)。したがって、例えば、その製造物が、例えば腫瘍の処置に用いるために、循環を出て、組織に浸透するように意図される場合、低分子量ポリマー、例えば、約5000Daの分子量をもつポリマーを用いることが有利であり得る。その製造物が循環内に留まる適用について、より高分子量のポリマー、例えば、20000Daから40000Daまでの範囲の分子量を有するポリマーを用いることが有利であり得る。
【0173】
一実施形態において、用いられるPEGは、例えば、Enzon Pharmaceuticalsによって供給される、遊離可能PEGである。
【0174】
一例において、本発明に用いる抗体は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)部分に付着している。1つの特定の例において、抗体は抗体断片であり、PEG分子が、抗体断片に位置する任意の利用可能なアミノ酸側鎖又は末端アミノ酸官能基、例えば、任意の遊離アミノ基、イミノ基、チオール基、ヒドロキシル基、又はカルボキシル基を通して付着していてもよい。そのようなアミノ酸は、抗体断片内に天然で存在していてもよいし、組換えDNA方法を用いて断片へと操作されていてもよい(例えば、米国特許第5,219,996号;第5,667,425号;WO98/25971参照)。一例において、本発明の抗体分子は、修飾Fab断片であり、その修飾は、エフェクター分子の付着を可能にする1つ又は複数のアミノ酸の、その重鎖のC末端への付加である。適切には、付加のアミノ酸は、エフェクター分子が付着し得る1つ又は複数のシステイン残基を含む修飾ヒンジ領域を形成する。2個以上のPEG分子を付着させるために複数の部位を用いることができる。
【0175】
一実施形態において、Fab又はFab’は、1つ又は2つのPEG分子でPEG化される。
【0176】
一実施形態において、PEG分子は、軽鎖内のシステイン171に連結しており、例えば、参照により本明細書に組み入れられたWO2008/038024を参照されたい。
【0177】
一実施形態において、Fab又はFab’は、表面アクセス可能なシステインを通してPEG化されている。
【0178】
適切には、PEG分子は、融合タンパク質に位置する少なくとも1つのシステイン残基のチオール基を通して共有結合している。融合タンパク質に付着した各ポリマー分子は、タンパク質内に位置するシステイン残基のイオウ原子に共有結合し得る。共有結合は、一般的に、ジスルフィド結合、又は、特に、イオウ−炭素結合である。チオール基が付着点として用いられる場合、適切に活性化されたPEG分子、例えば、マレイミドなどのチオール選択性誘導体及びシステイン誘導体が用いられ得る。活性化PEG分子は、上記のような分子を含むポリマー融合タンパク質の調製における出発物質として用いることができる。活性化PEG分子は、α−ハロカルボン酸又はエステル、例えば、ヨードアセトアミド、イミド、例えば、マレイミド、ビニルスルホン、又はジスルフィドなどのチオール反応基を含む任意のポリマーであり得る。そのような出発物質は、商業的に(例えば、Nektar(以前はShearwater Polymers Inc.)、Huntsville、AL、USAから)入手することができ、又は通常の化学的手順を用いて市販の出発物質から調製することができる。具体的なPEG分子として、20Kメトキシ−PEG−アミン(Nektar(以前はShearwater);Rapp Polymere;及びSunBioから入手可能)、及びM−PEG−SPA(Nektar(以前はShearwater)から入手可能)が挙げられる。
【0179】
PEG分子などのエフェクター分子は、アルデヒド糖を通して、又はより一般的には、抗体断片に位置する任意の利用可能なアミノ酸側鎖又は末端アミノ酸官能基、例えば、任意の遊離アミノ基、イミノ基、チオール基、ヒドロキシル基、又はカルボキシル基を通しての方法を含む、いくつかの異なる方法によって、抗体に付着し得る。エフェクター分子の付着部位は、ランダムでも部位特異的でもあり得る。
【0180】
ランダム付着は、リシンなどのアミノ酸を通して達成される場合が多く、これは結果として、リシンの位置に依存して抗体断片全体にわたるいくつかの部位に付着している、PEG分子などのエフェクター分子を生じる。これは一部の場合では成功しているが、付着した、PEG分子などのエフェクター分子の正確な位置及び数を制御することができず、これは、例えば、付着しているのがあまりにも少なすぎる場合には、活性の損失、及び/又は、例えば、それらが抗原結合部位に干渉する場合には、親和性の損失をもたらし得る(Chapman 2002 Advanced Drug Delivery Reviews、54、531〜545)。結果として、PEG分子などのエフェクター分子の制御された部位特異的付着が通常、好まれる方法である。
【0181】
PEG分子などのエフェクター分子の部位特異的付着は、最も一般的には、システイン残基への付着によって達成され、そのような残基が抗体断片において比較的まれであるからである。抗体ヒンジは、これらがシステイン残基を含み、且つ抗原結合に関与する可能性が高い融合タンパク質の他の領域から離れていることから、部位特異的付着のためによく用いられる領域である。適切なヒンジは、断片内に天然で存在してもよいし、組換えDNA技術を用いて作製してもよい(例えば、米国特許第5,677,425号;WO98/25971;Leongら、2001 Cytokine、16、106〜119;Chapmanら、1999 Nature Biotechnology、17、780〜783参照)。或いは、又は加えて、部位特異的システインはまた、例えば、エフェクター分子付着のための表面露出システイン(単数又は複数)を生じるように、抗体断片へ操作されてもよい(米国特許第5,219,996号)。
【0182】
したがって、一実施形態において、PEG分子は表面露出システインに付着している。
【0183】
本明細書に用いられる場合の表面露出システイン(遊離システイン)とは、そのタンパク質が「天然の」折り畳まれた立体構造をとる場合、PEG分子などのエフェクター分子をそれにコンジュゲートさせるのにアクセス可能であるシステインを指すものとする。この型の遊離システインを操作する方法の例はまた、米国特許第7,521,541号に提供されている。
【0184】
具体的な天然のポリマーには、ラクトース、アミロース、デキストラン、グリコーゲン、又はそれらの誘導体が挙げられる。
【0185】
本明細書で用いられる場合の「誘導体」とは、反応性誘導体、例えば、マレイミドなどのチオール選択性反応基を含むものとする。反応基は、直接的に、又はリンカーセグメントを通して、ポリマーに連結し得る。そのような基の残基は、場合によっては、融合タンパク質とポリマーとの間の連結基としてその製造物の一部を形成することは認識されているであろう。
【0186】
本発明はまた、本明細書に記載された抗体、又はその重鎖若しくは軽鎖のその断片をコードする単離されたDNAを提供する。
【0187】
さらなる態様において、前記DNAを含むベクターが提供される。
【0188】
ベクターが構築され得る一般的な方法、トランスフェクション方法、及び培養方法は、当業者によく知られている。この関連において、「Current Protocols in Molecular Biology」、1999、F.M.Ausubel(編)、Wiley Interscience、New York及びCold Spring Harbor Publishingによって制作されたManiatis Manualが参照される。
【0189】
さらなる態様において、前記ベクター及び/又はDNAを含む宿主細胞が提供される。
【0190】
任意の適切な宿主細胞/ベクター系が、本発明の融合タンパク質分子をコードするDNA配列の発現に用いることができる。細菌系、例えば、大腸菌(E.coli)系、及び他の微生物系を用いてもよいし、真核生物、例えば、哺乳類の宿主細胞発現系もまた用いることができる。適切な哺乳類宿主細胞には、CHO細胞、骨髄腫細胞、又はハイブリドーマ細胞が挙げられる。
【0191】
本発明はまた、本発明による抗体又はその断片を生産するための方法であって、本発明のベクター(及び/又はDNA)を含む宿主細胞を、抗体又はその断片をコードするDNAからのタンパク質の発現をもたらすのに適した条件下で培養する段階、及びそれを単離する段階を含む、方法を提供する。
【0192】
重鎖及び軽鎖の両方を含む産物の生産のために、細胞系を、軽鎖ポリペプチドをコードする第1のベクター及び重鎖ポリペプチドをコードする第2のベクターである、2つのベクターでトランスフェクションしてもよい。或いは、単一のベクターを用いてもよく、そのベクターは、軽鎖ポリペプチド及び重鎖ポリペプチドをコードする配列を含む。
【0193】
一態様において、配列が、疼痛の調節に関与するイオンチャネル、例えば、Na1.7のE1細胞外領域由来である、ペプチドを用いて抗体を作製する方法が提供される。そのようなペプチドは、ポリクローナル抗体を生産するための免疫化プロトコール、及び/又は特定の抗イオンチャネル抗体、例えば、抗Na1.7抗体を選択するためのスクリーニング若しくはパニングプロトコールの両方において、用いられる。一実施形態は、他のイオンチャネル及びそのアイソフォームと最大限の相違点がある、前述の細胞外領域の別々の配列に対応するペプチドを用いる。
【0194】
ヒトタンパク質SCN9A(アクセッション番号Q15858)としてSwiss Protデータベースに寄託されたNa1.7配列のアミノ酸配列番号付けに基づいて、これらの配列は、以下の通りである:
ドメインAアミノ酸146〜153、
ドメインBアミノ酸764〜774、
ドメインCアミノ酸1216〜1224、及び
ドメインDアミノ酸1535〜1545は、特別な違い/差異がある領域であり、したがって、抗体を作製するのに特に適している。
【0195】
選択されるペプチドは、通常の線状ペプチドでも環状ペプチドでもよく、上記配列由来の少なくとも4個の連続したアミノ酸を含み得る。どちらの場合においても、ペプチドは、担体タンパク質又はレポーター群の高分子担体への次のコンジュゲーションに用いられる単一の官能基を含むように設計される。前記官能基は、システイン残基の側鎖チオール、アスパラギン酸若しくはグルタミン酸の側鎖カルボキシル、又はN末端アミノ基若しくはリシン側鎖残基の一級アミンであり得る。
【0196】
前記官能基を有するアミノ酸残基は、天然Na1.7配列に対応してもよいし、天然Na1.7配列への追加であってもよい。Na1.7ペプチド配列におけるこの残基の位置は、配列のいずれかの末端にあってもよいし、任意の内部の位置にあってもよい。一実施形態において、ペプチドは、例えば、以下の配列のいずれかを含む線状ペプチドであり、そのペプチドが由来する、Na1.7のドメインA、B、C、又はDが括弧内に示されている。そのペプチド内で下線の引かれているシステインは、イオンチャネルにおける非天然のシステイン残基である。以下のペプチド内のシステイン残基は、担体タンパク質を付着するために用いられ得る。
【化12】

【0197】
これらの配列は、N末端か又はC末端のいずれかで、例えば、Nαアセチル基又はアミド基で、それぞれキャッピングされていてもよい。
【0198】
他のNav1.7配列には、以下が挙げられる。
【化13】

【0199】
本発明の一実施形態において、抗E1イオンチャネル抗体を作製するのに用いられるNa1.7ペプチドは、配列番号107〜122からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。さらなる実施形態において、抗E1イオンチャネル抗体を作製するのに用いられるNa1.7ペプチドは、配列番号107、108、110〜112、114〜116、及び119〜127からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0200】
他のイオンチャネルのE1ループ由来の免疫原は、同様に調製することができ、したがって、例えば、それぞれの免疫原は、例えば、下記の太字で示された、少なくとも4個の連続したアミノ酸残基、及びN末端及び/又はC末端のいずれかでの追加の残基を示されているような配列順序で含む。この場合もやはり、選択されたペプチドは、N末端においてN−アセチルなどの官能基によって、及び/又はC末端においてアミドなどの官能基によってキャッピングされてもよい。ペプチドは、線状ペプチドとして合成されてもよいし、環状ペプチドとして合成されてもよい。いずれの場合においても、ペプチドは、異種タンパク質などの高分子担体への共有結合性付着のための単一の固有官能基を含むように設計される。
【0201】
ペプチドがアスパルテート、グルタメート、又はリシン残基を含まず、且つN末端がキャッピングされている場合には、固有の官能基は、アミド化学作用による担体への結合のために直接、誘導体化され得るC末端カルボン酸であり得る。
【0202】
ペプチドがリシン残基を含まない場合には、固有の官能基は、マレイミドなどのさらなる反応基を導入するように誘導体化することができるN末端アミノ基であり得る。
【0203】
ペプチドが単一のシステイン残基を含む場合には、その側鎖チオールが、マレイミド化学作用により担体へ結合することができる固有の官能基であり得る。
【0204】
いずれかの末端における追加の残基(天然か又は非天然のいずれかのアミノ酸)、例えば、システインによって固有の官能基を組み入れて、特異的な結合を可能にしてもよい。
【0205】
特定のイオンチャネル由来の配列の例は下記に列挙されており、ペプチドが由来するドメインA、B、C、又はDは、各ペプチドについてその配列の前に表されている:
【化14】

【0206】
したがって、一実施形態において、抗E1イオンチャネル抗体を作製するのに用いられるNa1.3ペプチドは、配列番号131〜134からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【化15】

【0207】
本発明の一実施形態において、抗E1イオンチャネル抗体を作製するのに用いられるNa1.6ペプチドは、配列番号135〜138からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【化16】

【0208】
本発明の一実施形態において、抗E1イオンチャネル抗体を作製するのに用いられるNa1.8ペプチドは、配列番号139〜145からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【化17】

【0209】
本発明の一実施形態において、抗E1イオンチャネル抗体を作製するのに用いられるNa1.9ペプチドは、配列番号146〜149からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【化18】

【0210】
本発明の一実施形態において、抗E1イオンチャネル抗体を作製するのに用いられるHCN1又はHCN2ペプチドは、配列番号150又は151のアミノ酸配列を有する。
【0211】
一態様において、環状ペプチドを用いる抗体を作製する方法が提供される。
【0212】
本明細書で用いられる場合の環状ペプチドとは、アミノ酸の配列が、ジスルフィド結合などの結合によって連結され、それにより、識別可能な出発点及び/又は終了点をもたないループ又は円を形成するペプチドである。環状ペプチドは、非限定的に、以下などの様々な手段によって対応する線状ペプチドから形成することができる:ペプチド結合を形成する、C末端カルボキシル基のN末端αアミノ基へのライゲーション;或いは、(アスパラギン酸又はグルタミン酸残基の)側鎖カルボキシル基をリシンの側鎖アミノ基若しくはN末端αアミノ基へライゲーションさせてもよいし、又はC末端カルボキシル基をリシンの側鎖アミノ基へライゲーションさせてもよい;線状配列において少なくとも3個の残基分、お互いに分離した2個のシステイン残基の側鎖チオール間でのジスルフィド結合の形成。線状配列における重複の区域に「環完成結合」を形成することが望ましい場合がある。本明細書に用いられる場合の重複の区域とは、配列に存在する2個以上のアミノ酸の反復があるところを指すものとする。したがって、本明細書に用いられる場合の重複の配列とは、配列中にいくらかの共通性があるところ、例えば、3個又は4個のアミノ酸など、少なくとも2個のアミノ酸が、2つの分離した位置での配列において同じ順序で位置しているところを指すものとする。これらの重複の領域は、整列させて、1つの位置におけるアミノ酸が第2の位置における対応するアミノ酸に取って代わって環化ペプチドを形成するように、ライゲーションすることができる。
【0213】
したがって、一実施形態において、ペプチドは、アミド結合を形成することによって環化される。一実施形態において、ペプチドは、ジスルフィド結合を形成することによって環化される。
【0214】
一実施形態において、配列は、線状配列における重複の領域でライゲーションされる。
【0215】
環状ペプチドは、当技術分野において知られた任意の適切な方法を用いて合成され得る。一実施形態において、環状ペプチドは、アミノ酸側鎖の反応を防ぐために保護基を用い(Barlos,K.;Gatos,D.;Kutsogianni,S.;Papaphotiou,G.;Poulos,C.;Tsegenidis,T. Int.J.Pept.Protein Res. 1991、38巻、6刷 562〜568ページ)、続いて、環化し、保護基を除去することによって(Kessler Hら、1989、Computer Aided Drug Design、461〜484ページ;Dekker Mら、1990、J.Peptide Research、35、287〜300ページ;Gurrath M.ら、1992、Eur.J.Biochem.、210、911〜921;Izumiya N.ら、1981、Biopolymers、20、1785〜1791;Brady S.F.ら、1983、Peptides,Structure and Function、Proceedings of the Eighth American Peptide Symposium、V.J.Hruby及びD.H.Rick編、127〜130ページ、Pierce Chemical Company、Rockford、Illinois;He J.X.ら、1994、Lett.Peptide Sci.、1、25〜30)、合成される。
【0216】
驚くべきことに、機能改変抗体は、例えば、たった5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、又は19個のアミノ酸を含む、非常に短い環状ペプチド配列を用いて作製することができる。これは、ペプチドを環化することによって与えられる強剛性により得る。
【0217】
一実施形態において、Na1.7由来の少なくとも4個の連続したアミノ酸の断片を含む環化ペプチドは、例えば、以下から選択され、そのペプチドが由来する、ドメインA、B、C、又はD及び細胞外ループE1、E2、又はE3が括弧内に示されている:
【化19】

【0218】
一実施形態において、Na1.7由来の少なくとも4個の連続したアミノ酸の断片、及び、例えば、担体への付着のための1個の追加のシステイン残基を含む環状ペプチドは、以下から選択され、ペプチドが由来するドメインA、B、C、又はD、及び細胞外ループE1、E2、又はE3が括弧内に表されている:
【化20】

【0219】
したがって、本発明の一実施形態において、抗E1イオンチャネル抗体を作製するのに用いられるNa1.7環状ペプチドは、配列番号123〜130からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0220】
宿主動物において抗イオンチャネル抗体を生産することを目的として免疫原を調製するために、各ペプチドは、担体タンパク質への共有結合性コンジュゲーションを必要とする。担体タンパク質は、宿主種に対するそれの「外来性」に基づいて選択される;したがって、ウサギ又は齧歯類の免疫化について、適切な担体タンパク質の例は、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、オボアルブミン(OVA)、及びウシ血清アルブミン(BSA)である。上記ペプチドのそれぞれは、線状か環状かに関わらず、上記タンパク質のそれぞれの1つへシステインチオールを通してコンジュゲートすることができ、後者のリシン側鎖アミノ基が、マレイミド官能基で共有結合性に修飾されて、それぞれ、以下を生じている:
・KLH−マレイミド
・オボアルブミン−マレイミド、又は
・BSA−マレイミド
【0221】
本開示は、上記で列挙された担体のそれぞれと別々にコンジュゲーションした本明細書に記載されたペプチドのそれぞれを明確に構想しており、すなわち、宿主を免疫するための45個の異なる分子が具体的に提供されており、例えば、
【化21】


又は
【化22】


である。したがって、配列番号107〜151から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドのいずれも、上記で列挙された担体タンパク質のそれぞれとコンジュゲートすることができる。
【0222】
上記のように、担体タンパク質は、システイン残基などの固有の官能基を通してコンジュゲートすることができる。しかしながら、ペプチドを担体タンパク質へコンジュゲートするためにシステイン残基の代わりにいかなる代替の天然又は非天然の残基を用いてもよい。システインの代わりに用いられ得る非天然の残基の例は、ホモシステイン残基であり、それは、側鎖に追加のメチレン基をさらに含むシステインの相同体である。したがって、システイン残基を含む、配列番号107〜151から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドのいずれも、ホモシステイン残基などの担体タンパク質へのコンジュゲーションのための代替の適切な天然又は非天然の残基で、システイン残基を置き換えるように改変されてもよい。
【0223】
本開示はまた、本明細書に開示された新規のペプチド及びそれを含む組成物まで及ぶ。
【0224】
一般的に、0.001mgから1mgの間の各ペプチド−担体タンパク質が、宿主動物あたりの各免疫化用量に必要とされる。
【0225】
機能改変抗体を生産するのに適した代替の免疫原には以下が挙げられる:関連する完全長ヒトイオンチャネル、例えばNa1.7、個々のサブドメイン及びサブドメインの切断型を含むその切断型;発現を助け、又は細胞外ループを免疫系に提示するために他の膜貫通タンパク質の領域へ融合したイオンチャネルの領域を有するキメラ分子、及びイオンチャネルの領域を所望の立体構造に拘束するためのイオンチャネルの突然変異型。
【0226】
これらの免疫原を、直接的細胞免疫化又は免疫化用のタンパク質の精製のために、哺乳類細胞において発現させてもよい。
【0227】
これらの免疫原を、免疫化用のタンパク質の精製のために、大腸菌又は無細胞発現系に発現させてもよい。
【0228】
精製されたタンパク質を、免疫化のために脂質小胞又はミセルへ組み込んでもよい。
【0229】
これらのイオンチャネルバージョンはまた、免疫化のためのリポ粒子として作製されてもよい。
【0230】
加えて、上記免疫原のいずれも、機能改変抗体を同定するためのスクリーニングツールとして利用することができる。
【0231】
したがって、一態様において、例えば、少なくとも1つのイオンチャネルE1ペプチド−担体タンパク質コンジュゲートで、又は同じ担体タンパク質に別々にコンジュゲートされたいくつかの異なるペプチド(ここで、少なくとも1つはE1である)で、若しくは同じ担体タンパク質にコンジュゲートされた混合物として、免疫することにより、宿主に抗体を作製する方法が提供される。
【0232】
一実施形態において、方法は、1回、2回、3回、4回、又は5回の免疫化を含む。
【0233】
一実施形態において、方法は、それぞれのコンジュゲートペプチド(単数又は複数)での、2回又は3回など、少なくとも2回の免疫化を含む。
【0234】
一実施形態において、2回目の免疫化は、ペプチド(単数又は複数)は共通しているが、担体タンパク質が1回目の免疫化に用いられた担体タンパク質と異なっている、異なるコンジュゲートを用いる。
【0235】
したがって、一実施形態において、3回目の免疫化は、ペプチド(単数又は複数)は1回目及び2回目の免疫化のそれと共通しているが、担体タンパク質が1回目及び/又は2回目の免疫化に用いられたそれと異なっている、異なるコンジュゲートを用いる。担体タンパク質に対する望ましくない抗体特異性は、このようにして最小限にすることができる。
【0236】
連続的免疫化のための適切な担体タンパク質組み合わせには、任意の順序でのKLH及びオボアルブミン及びBSAが挙げられる。
【0237】
担体を変えることは、ペプチドへの応答を最適化することにおいて有利であり得る。
【0238】
各免疫化はまた、一般的に、免疫応答を刺激するためにアジュバントの投与を含む。適切なアジュバントとして、フロイント完全又は不完全アジュバント、並びに、ミョウバン、QS21、MPL、及び/又はCPGを含むアジュバントが挙げられる。
【0239】
方法は、抗体又は抗体産生細胞を宿主から分離する段階をさらに含んでもよい。
【0240】
一実施形態において、宿主は、マウス若しくはラットなどの齧歯類、ラクダ、ラマ、ブタ、イヌ、霊長類、サメ、又はウサギ、特にウサギである。
【0241】
前述のペプチドはまた、レポーター群にコンジュゲートされていてもよい。レポーター群は、例えば、ビオチン、蛍光群、若しくは酵素タグ、又は抗イオンチャネル抗体の検出若しくは単離を可能にする任意の群であり得る。レポーター群−ペプチドコンジュゲートは、生じたポリクローナル血清及びモノクローナル抗体をスクリーニングするために用いることができる。例えば、スクリーニングELISAは、ストレプトアビジンコーティング化マイクロウェル及び捕獲されるビオチン化ペプチドを含み得る。これに対する免疫血清の滴定により、ペプチド特異的抗体の表面への結合を生じ、その抗体が、次に、第4の抗種(抗ウサギなど)IgG−ペルオキシダーゼ層によって明らかにすることができる。
【0242】
レポーター群−ペプチドコンジュゲートはまた、ファージパニングなどのライブラリーに基づいた技術による様式のように、特異的イオンチャネル抗体を単離するために用いることもできる。
【0243】
方法はまた、例えば、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体を提供するために、さらなる精製段階を含んでもよい。
【0244】
方法はまた、前記免疫化に由来する組換えクローン抗体を作製する段階を含んでもよい。
【0245】
クローン抗体が組換え的に調製することができる前に、可変領域などの部分、又は抗体の全部を、クローン化及び/又は配列決定することが必要になる場合がある。
【0246】
本開示はまた、本明細書の方法から取得可能な、又は取得された抗体産生細胞及び抗体まで及ぶ。
【0247】
本開示はまた、本明細書の方法を用いて取得可能な、又は取得された抗体又は適切な抗体断片まで及ぶ。
【0248】
本開示はまた、本明細書における抗体又は断片を含む薬学的組成物を含む。
【0249】
薬学的組成物は、適切には、治療的有効量の本発明の抗体を含む。用語「治療的有効量」は、本明細書で用いられる場合、標的にされた疾患若しくは状態を処置し、寛解させ、若しくは予防するのに、又は検出可能な治療効果若しくは予防効果を示すのに、必要とされる治療剤の量を指す。いずれの抗体についても、治療的有効量は、最初に、細胞培養アッセイにおいてか又は動物モデル、通常には、齧歯類、ウサギ、イヌ、ブタ、若しくは霊長類においてかのいずれかで推定することができる。動物モデルをまた、適切な濃度範囲及び投与経路を決定するために用いてもよい。その後、そのような情報は、ヒトにおける有用な用量及び投与経路を決定するために用いることができる。
【0250】
ヒト対象についての正確な治療的有効量は、病状の重症度、対象の一般的な健康状態、対象の年齢、体重、及び性別、食事、投与時間及び投与頻度、合剤(単数又は複数)、反応感度、及び治療に対する許容度/応答に依存する。この量は、日常的実験により決定することができ、臨床医の判断の範囲内である。一般的に、治療的有効量は、0.01mg/kgから50mg/kgまで、例えば、0.1mg/kg〜20mg/kgである。薬学的組成物は、便利には、用量あたりの本発明の活性物質の所定量を含む単位用量の形で提供されてもよい。
【0251】
組成物を、患者へ個々に投与してもよいし、他の作用物質、薬物、又はホルモンと(例えば、同時に、逐次的に、又は別々に)併用して投与してもよい。
【0252】
本発明の抗体又は断片が投与される用量は、処置される状態の性質、疾患の程度及び/又は存在する症状に、並びに抗体又は断片が予防的に用いられることになっているのか、又は既存の状態を処置するために用いられることになっているのかに依存する。
【0253】
投薬頻度は、抗体分子の半減期及びその効果の持続時間に依存する。抗体分子が短い半減期(例えば、2〜10時間)を有する場合には、1日に1回又は複数回、投薬する必要があり得る。或いは、抗体分子が長い半減期(例えば、2〜15日)を有する場合には、1日に1回、1週間に1回、又はさらに1カ月ごと若しくは2カ月ごとに1回、投薬することが必要なだけであり得る。
【0254】
薬学的に許容される担体はそれ自体、組成物を受ける個体にとって有害な抗体の産生を誘導すべきではなく、且つ毒性であるべきではない。適切な担体は、タンパク質、ポリペプチド、リポソーム、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合体アミノ酸、アミノ酸共重合体、及び不活性ウイルス粒子などの大きく、ゆっくりと代謝される高分子であり得る。
【0255】
薬学的に許容される塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、及び硫酸塩などの鉱酸塩、又は酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、及び安息香酸塩などの有機酸の塩を用いることができる。
【0256】
治療組成物における薬学的に許容される担体は、追加として、水、生理食塩水、グリセロール、及びエタノールなどの液体を含んでもよい。さらに、湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝物質などの補助物質がそのような組成物中に存在してもよい。そのような担体は、薬学的組成物によって、患者の経口摂取用の錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、及び懸濁液として製剤化することが可能になる。
【0257】
投与のための適切な形には、非経口投与に適した形、例えば、注射又は注入、例えば、ボーラス注射又は持続注入によるものが挙げられる。製造物が注射又は注入用である場合、それは、油性又は水性の媒体における懸濁液、溶液、又は乳濁液の形をとることができ、懸濁剤、保存剤、安定化剤、及び/又は分散剤などの製剤化剤を含んでもよい。或いは、抗体分子は、適切な滅菌液体と共に用いる前の、再構成するための乾燥した形であってもよい。
【0258】
いったん製剤化されると、本発明の組成物は、対象に直接、投与することができる。処置される対象は動物であり得る。しかしながら、1つ又は複数の実施形態において、組成物は、ヒト対象への投与に適応している。
【0259】
適切には、本開示による製剤において、最終製剤のpHは、抗体又は断片の等電点の値に類似せず、例えば、製剤のpHが7であるならば、8〜9又はそれより上のpIが適当であり得る。理論に縛られるつもりはないが、これは最終的に、安定性が向上した最終製剤を提供することができ、例えば、抗体又は断片は溶解した状態のままである。
【0260】
本発明の薬学的組成物は、いくつの経路によって投与されてもよく、その経路には、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、脳室内、経真皮(transdermal)、経皮(transcutaneous)(例えば、WO98/20734参照)、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所、舌下、腟内、又は直腸内の経路が挙げられるが、それらに限定されない。皮下噴射器もまた、本発明の薬学的組成物を投与するのに用いてもよい。典型的には、治療組成物を、溶液か又は懸濁液かのいずれかの注射剤として調製してもよい。注射前の液体媒体における溶液又は懸濁液に適した固形にもまた調製してもよい。
【0261】
組成物の直接的送達は、一般的に、皮下、腹腔内、静脈内、若しくは筋肉内への注射、又は組織の間質腔へ送達される注射によって達成される。組成物はまた、病変へ投与することができる。投薬処置は、単回投与スケジュールでも複数回投与スケジュールでもよい。
【0262】
組成物中の活性成分はタンパク質分子であることは認識されているであろう。したがって、それは、胃腸管内で分解されやすい。したがって、組成物が胃腸管を用いる経路によって投与されることになっている場合には、組成物は、抗体を分解から保護するが、いったんそれが胃腸管から吸収されたならば、抗体を放出する作用物質を含むことが必要であろう。
【0263】
薬学的に許容される担体の徹底的な議論は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company、N.J. 1991)において入手できる。
【0264】
一実施形態において、製剤は、吸入を含む局所投与のための製剤として提供される。
【0265】
適切な吸入可能な調製物には、吸入可能な粉末、噴霧ガスを含む計量エアロゾル、又は噴霧ガスを含まない吸入可能な溶液が挙げられる。活性物質を含む本開示による吸入可能な粉末は、前述の活性物質だけからなってもよいし、生理的に許容される賦形剤との前述の活性物質の混合物からなってもよい。
【0266】
これらの吸入可能な粉末には、単糖(例えば、グルコース又はアラビノース)、二糖(例えば、ラクトース、サッカロース、マルトース)、オリゴ糖及び多糖(例えば、デキストラン)、ポリアルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール、キシリトール)、塩(例えば、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム)、又はこれらのお互いとの混合物が挙げられる。適切には、単糖又は二糖が用いられ、特に、水和物の形でのラクトース又はグルコースが用いられるが、それらに限らない。
【0267】
肺沈着のための粒子は、1〜9ミクロン、例えば、0.1μmから5μmまで、特に1μmから5μmまでなど、10ミクロン未満の粒子サイズを必要とする。(抗体又は断片などの)活性成分の粒子サイズは最も重要である。
【0268】
吸入可能なエアロゾルを調製するために用いることができる噴霧ガスは当技術分野において知られている。適切な噴霧ガスは、n−プロパン、n−ブタン、又はイソブタンなどの炭化水素、並びにメタン、エタン、プロパン、ブタン、シクロプロパン、若しくはシクロブタンの塩素化及び/又はフッ素化誘導体などのハロ炭化水素の中から選択される。前述の噴霧ガスは、単独で用いてもよいし、それらの混合物として用いてもよい。
【0269】
特に適切な噴霧ガスは、TG11、TG12、TG134a、及びTG227の中から選択されるハロゲン化アルカン誘導体である。前述のハロゲン化炭化水素のうち、TG134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン)及びTG227(1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン)並びにそれらの混合物は特に適している。
【0270】
噴霧ガス含有吸入可能エアロゾルはまた、共溶媒、安定化剤、表面活性物質(界面活性剤)、抗酸化剤、潤滑剤などの他の成分、及びpHを調整するための手段を含んでもよい。これらの成分の全ては当技術分野において知られている。
【0271】
本発明による噴霧ガス含有吸入可能エアロゾルは、5重量%までの活性物質を含んでもよい。本発明によるエアロゾルは、例えば、0.002〜5重量%、0.01〜3重量%、0.015〜2重量%、0.1〜2重量%、0.5〜2重量%、又は0.5〜1重量%の活性成分を含む。
【0272】
或いは、肺への局所投与はまた、例えば、ネブライザー、例えば、コンプレッサーに接続したネブライザー(例えば、Pari Respiratory Equipment,Inc.、Richmond、Va製のPari Master(登録商標)コンプレッサーに接続したPari LC−Jet Plus(登録商標)ネブライザー)などの装置を用いる、溶液又は懸濁液の製剤の投与によってもよい。
【0273】
本発明の抗体又は断片は、溶媒中に分散して、例えば、溶液又は懸濁液の形で、送達することができる。それは、適切な生理的溶液、例えば、生理食塩水、又は他の薬理学的に許容される溶媒若しくは緩衝溶液中に懸濁することができる。当技術分野において知られた緩衝溶液は、約4.0〜5.0のpHに達するように、1mlの水あたり0.05mg〜0.15mgのエデト酸二ナトリウム、8.0mg〜9.0mgのNaCl、0.15mg〜0.25mgのポリソルベート、0.25mg〜0.30mgの無水クエン酸、及び0.45mg〜0.55mgのクエン酸ナトリウムを含み得る。懸濁液は、例えば、凍結乾燥した抗体を用いることができる。
【0274】
治療用の懸濁液又は溶液の製剤はまた、1つ又は複数の賦形剤を含むことができる。賦形剤は、当技術分野においてよく知られており、それらには、緩衝剤(例えば、クエン酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、及び重炭酸緩衝剤)、アミノ酸、尿素、アルコール、アスコルビン酸、リン脂質、タンパク質(例えば、血清アルブミン)、EDTA、塩化ナトリウム、リポソーム、マンニトール、ソルビトール、及びグリセロールが挙げられる。溶液又は懸濁液は、リポソーム又は生分解性ミクロスフェア内にカプセル化することができる。製剤は、一般的に、滅菌製造方法を用いて実質的に滅菌した形で提供される。
【0275】
これは、当業者によく知られた方法による、製剤に用いられる緩衝溶媒/溶液の濾過、滅菌緩衝溶媒/溶液中での抗体の無菌的懸濁、及び滅菌容器への製剤の分配による生産及び滅菌を含み得る。
【0276】
本開示による噴霧可能な製剤は、例えば、ホイルに包んでパッケージングされた単一用量単位(例えば、密封されたプラスチック容器又はバイアル)として提供されてもよい。各バイアルは、ある体積、例えば、2mlの溶媒/溶液緩衝液中の単位用量を含む。
【0277】
本開示の融合タンパク質分子は、噴霧による送達に適していると考えられる。
【0278】
本開示の抗体及び断片は、疼痛、例えば、有痛性糖尿病性神経障害(PDN)、帯状疱疹後神経障害(PHN)、又は三叉神経痛(TN)を含む神経因性疼痛を処置するのに適し得る。神経因性疼痛の他の原因には、脊髄損傷、多発性硬化症、幻肢痛、脳卒中後痛、及びHIV関連痛が挙げられる。慢性背痛、変形性関節症、及び癌などの状態もまた、神経障害関連性疼痛の発生を生じる場合があり、したがって、本開示による抗体又は断片での処置に適している可能性がある。
【0279】
一実施形態において、本発明による抗体又は断片は、体性痛、内臓痛、神経因性疼痛、侵害受容性疼痛、急性疼痛、慢性疼痛、突出痛、及び/又は炎症性疼痛を含む疼痛の処置又は予防に適している。
【0280】
一実施形態において、本発明による抗体又は断片は、以下の疼痛の型の1つ又は複数の処置又は予防に適している:異痛症、有痛性知覚脱失、狭心痛、突出痛、複合性局所性疼痛症候群I型、複合性局所性疼痛症候群II型、痛覚過敏(hyperalgesia)、痛覚異常鋭敏(hyperpathia)、特発性疼痛、悪性疼痛、錯感覚、幻肢痛、心因性疼痛。
【0281】
一実施形態において、本開示による抗体又は断片は、喘息、喘息における気道過敏、例えば喘息における、慢性咳嗽、及び/又は慢性閉塞性気道の処置に有用である。
【0282】
一実施形態において、本開示による抗体又は断片は、炎症、変形性関節症、関節リウマチ、及び/又はそれらのいずれかに伴う疼痛の処置に有用である。
【0283】
一実施形態において、本開示による抗体又は断片は、急性損傷、例えば、裂傷、切創、火傷、銃弾による負傷、及び/又は榴散弾による負傷などの創傷に伴う疼痛の処置に有用である。
【0284】
論じられているように、本開示による抗体又は断片は、急性疼痛及び慢性疼痛、神経因性疼痛、侵害受容性疼痛、内臓痛、背痛、並びに疾患及び変性症に伴う疼痛などの疼痛の処置に有用である可能性が高い。
【0285】
疼痛は、1つ又は複数の原因から生じ得、その原因として、末梢性神経障害、中枢性神経障害、手根管症候群、足根管症候群、尺骨神経絞扼、圧迫神経根障害、腰部脊椎管狭窄、坐骨神経圧迫、脊髄根圧迫、肋間神経痛、圧迫神経根障害、及び神経根性腰痛などの神経圧迫又は絞扼性症候群、脊髄根破壊、背痛、神経炎、自己免疫疾患、術後痛、歯痛、直接的外傷、炎症、HIV感染、天然痘感染、ヘルペス感染、毒物曝露、浸潤癌、化学療法、放射線療法、ホルモン治療、異物、火傷、先天性欠損、幻肢痛、関節リウマチ、変形性関節症、骨折の疼痛、痛風の疼痛、線維筋痛、多発性硬化症、下痢に伴う疼痛、過敏性腸症候群、偏頭痛、脳炎、糖尿病、慢性アルコール症、甲状腺機能低下、尿毒症、並びにビタミン欠乏が挙げられるが、それらに限定されない。したがって、本開示による抗体又は断片は、上記適応症の1つ又は複数の症状の処置又は寛解に有用であり得る。
【0286】
一実施形態において、本開示による抗体又は断片は、イオンチャネル阻害剤についてスクリーニングするためのアッセイにおける標準として用いられる。
【0287】
本明細書の関連において含むこと(comprising)とは、含むこと(including)を意味するものとする。
【0288】
理論的には、本発明の適切な実施形態が組み合わせられ得る。
【0289】
特定の特徴/要素を含むように実施形態が記載されている。本開示はまた、前記特徴/要素からなる、又は本質的にそれらからなる別々の実施形態まで及ぶ。
【0290】
本発明はさらに、以下の実施例において、ただ例証として記載され、添付の図を参照する:
【実施例】
【0291】
Na1.7の治療抗体の作製/選択
ペプチドは、Peptide Protein Research Ltd.、Fareham、U.K.によって供給され、線状ペプチドを、Atherton及びSheppard(1989) Solid Phase peptide synthesis:a practical approach Oxford、England:IRL Pressの方法によるFmoc固相ペプチド化学によって合成した。N末端からC末端への環状ペプチドについては、コンピュータ支援薬物設計、方法、及び適用、T.J.Perun及びC.L.Probst編、461〜484ページ、Marcel Dekker、New−York;Toniolo C.、1990、Int.J.Pept.Protein Res.、35、287〜300;Gurrath M.ら、1992、Eur.J.Biochem.、210、911〜921;Izumiya N.ら、1981、Biopolymers、20、1785〜1791;Brady S.F.ら、1983、Peptides,Structure and Function、Proceedings of the Eighth American Peptide Symposium、V.J.Hruby及びD.H.Rick編、127〜130ページ、Pierce Chemical Company、Rockford、Illinois;He J.X.ら、1994、Lett.Peptide Sci.、1、25〜30において、Barlosら、Int.J.Pept.Protein Res.1991の方法により側鎖保護ペプチドとして合成し、環化を液相中で実施し、続いて、Kessler Hら、1989の方法により側鎖を脱保護した。
【0292】
KLH、OVA、又はBSAのいずれかにコンジュゲートしたヒトNa1.7ペプチドの組み合わせでウサギを免役した(表1)。5回の皮下免疫化(KLH、OVA、BSA、KLH、OVA)後、動物を屠殺し、PBMC、脾臓、及び骨髄を採取した。血清を、ヒトビオチン化ペプチドへの結合についてELISAにおいて試験した。
【表4】

【0293】
表は、免疫されるウサギ番号、免疫化のために用いられるペプチド組み合わせ、及びペプチド配列を示す。B11は、ドメインBにおけるループE1由来のペプチドである。C11はドメインCにおけるループE1由来のペプチドである。D11はドメインDにおけるループE1由来のペプチドである。
【0294】
Tickleら、2009(JALA、14巻、5号、303〜307ページ)に記載された方法を実質的に用いてSLAMを実施した。簡単に述べれば、ウサギ脾細胞又はPBMCを用いてSLAM培養物を設定し、上清を、まず、FMATにおけるビーズに基づいたアッセイにおいてビオチン化ペプチドに結合する能力についてスクリーニングした。これは、ストレプトアビジンビーズ(Bangs Laboratories)に結合したビオチン化ヒトペプチドを用い、ヤギ抗ウサギFc−Cy5コンジュゲート(Jackson immunoResearch)を用いて結合を明らかにする均一系アッセイであった。その後、このスクリーニングから陽性であったものを、非特異的抗体を同定する陰性スクリーニングに供した。これは、ペプチドを有しないストレプトアビジンビーズ又は無関係のペプチドを有するストレプトアビジンビーズを用い、ヤギ抗ウサギFc−Cy5コンジュゲート(Jackson immunoResearch)との結合を明らかにして、ペプチド特異的結合体を同定した。
【0295】
10個のSLAM実験から、いくつかのB11特異的、C11特異的、及びD11特異的抗体含有ウェルが、上記のスクリーニングを用いて同定された。
【0296】
いくつかのこれらのウェルからの、蛍光焦点方法による単一B細胞単離、及びその後の可変領域遺伝子のクローニングにより、逆転写(RT)−PCR後、重鎖及び軽鎖の可変領域遺伝子対がうまく得られた。これらのV領域遺伝子をウサギIgG1完全長抗体としてクローン化し、HEK293一過性発現系において再発現させた。
【0297】
クローン化されたV領域の配列分析により、抗ヒトB11特異的のいくつかの固有のファミリーの存在が明らかにされた(下記の表2参照)。これらの抗体のDNA配列及びアミノ酸配列は、図に示されている。抗体を一過性CHO系において発現させ、その後、精製して、インビトロ及びインビボでのさらなる特徴づけを可能にした。
【表5】

【0298】
図4〜7は、抗Na1.7抗体についての配列を示す。その抗体が由来する免疫されたウサギ及びそれらのペプチド特異性が詳述されている。
【0299】
抗体試験のためのh Na1.7記録についての手順
溶液及び抗体操作
細胞外溶液は以下を含んだ(mM):130 NaCl、4 KCl、1.5 CaCl、1 MgCl、30 グルコース、10 HEPES(Tris−BaseでpH7.4、及び300〜305mモル浸透圧)。細胞内溶液は以下を含み(mM):5 NaCl、115 CsF、20 CsCl、110 HEPES、10 EGTA遊離酸(CsOHでpH7.2、及び290〜295mモル浸透圧)、それを新鮮な状態にするか、又は凍結させるかのいずれかにした。細胞外溶液及び細胞内溶液を使用前に濾過した。抗体を、96ウェルポリプロピレン化合物プレート(Sarsted、#83.1835.500)への移動前に、細胞外溶液中に直接、希釈し、新鮮な状態で(15分以内で)調製した。選択的ペプチドを用いる実験について、等濃度での抗体及びペプチドを、パッチクランプ実験の前に4℃で少なくとも30分間、プレインキュベートした。
【0300】
細胞調製
ヒトNa1.7チャネル(IX型電位開口型ナトリウムチャネルαサブユニット)を安定に発現するHEK293細胞を、Upstate(Upstate、Millipore、カタログ#CYL3011)から購入した。10%FBS(Lonza、#DE14−802F)、1%ペニシリン+ストレプトマイシン(Lonza、DE17−603E)、1%非必須アミノ酸(Lonza、BE13−114E)、及び400μg/ml G418(GIBCO、#10131−027)を含む、グルタミン含有標準培地DMEM−F12を用いて、コラーゲンI型でコーティングされたT−75(BD BioCoat(商標)Collagen I Cellware、Becton Dickinson Labware、Bedford、MA、#356485)フラスコ内で細胞を培養した。細胞を、15,000細胞/cm2の密度又は8,000細胞/cm2の密度でそれぞれ、PatchXpress(登録商標)7000A(Axon instrument、MDS Analytical Technologiesの新しい一員)で用いる前に2日間又は3日間、プレーティングした。細胞コンフルエンスは90%を超えることはなかった。実験の当日、細胞を、Accumax(Sigma、A7089)を用いて収集した。簡単に述べれば、細胞を、カルシウム及びマグネシウムを含まないPBS(Lonza、#BE12−516F)中で2回、洗浄し、1:4の希釈のAccumax溶液を加え、37℃で1.5〜2分間、インキュベートした。10%FBSを含む、15mM HEPES及びL−グルタミン含有DMEM−F12(Lonza、#BE12−719F)(回復培地)を加えて、Accumax消化を終息させた。続いて、細胞を、50mlのファルコンチューブ内で1,000rpmで5分間、遠心分離し、ペレットを10mlの回復培地中に再懸濁する。細胞を数え(CoulterZ2)、約10万細胞/mlで懸濁し、室温で最低90分間、15mlのスクリューキャップ式チューブへ移した。その後、細胞を1,000rpmで60秒間、遠心分離した。ペレットを1,000μlの細胞外溶液中に穏やかに再懸濁し、1,000rmpで30秒間、2度目の遠心分離を行った。ペレットを150μLの細胞外溶液中に再懸濁し、すぐに、PatchXpress(登録商標)で試験した。
【0301】
PatchXpress(登録商標)手順
AVIVA Biosciences SealChip16(商標)電極アレイ(Axon Instruments、Union City、CAから購入)を、PatchXpress(登録商標)システムのホルダー内に手で置き、細胞のアプライについては、自動調製された。細胞内溶液を各チャンバーの下部へ注入し、細胞外溶液を、16個のノズルの洗浄装置を通してチャンバーの上部へ灌流した。この時間中、穴に細胞片がない状態を保つために、圧力制御装置で、細胞内側からの陽圧(+10mmHg)を維持した。細胞は、各ウェルに(10K〜30K細胞を含む)4μlが加えられる前に、統合Cavroピペッティングロボットによって粉砕された。
【0302】
PatchXpress(登録商標)h Na1.7アッセイ
10秒後、圧力を+4mmHgから−30mmHgへ切り換え、16個の穴(電極)のそれぞれに懸濁細胞を引き寄せた。ギガオームシールが得られ、且つ20秒間、検証されるまで、36秒ごとに1.6mmHg/秒の速度で−1mmHgから−35mmHgへの陰圧ランプを繰り返すことによってシール形成が達成された。−80mVのピペット電位で7.5mmHg/秒の速度での−40mmHgから−150mmHgへの陰圧のランプ増加を用いて穴を覆う膜のパッチを破ることによってホールセルアクセスが達成された。ホールセル記録後、細胞を、細胞外溶液で66秒間、洗浄して、ウェルにおける過剰な細胞を除去した。細胞を5分間、透析させておき、その間、アクセス抵抗をモニターした。ホールセル試運転時点から実験の終了まで、電位プロトコール間、細胞を−80mVで保持した。10秒間隔で20ミリ秒間、−80mVから0mVへの脱分極ステップによって誘発されるナトリウム電流への抗体効力を評価するために時間経過プロトコールを適用した。各試行が始まる前にホールセル補償が自動的になされ、電気的アクセス抵抗(Ra)が65%、補正された。−80mVを保持しながら、P/Nリーク減算プロトコール(N=4)を用いて線形リーク減算をオンラインで実施した。
安定化期間後(最高10分まで)、陰性対照溶液(細胞外溶液)を5分間、アプライし、続いて、抗体を2回、投与した。ウェルへの同じ濃度の化合物の2回の添加の間の間隔は、約11秒であった。抗体溶液(45μL)を、持続的に吸引しながら、望ましい濃度で、オンラインで加えた(30μL/秒)。抗体への18分間の曝露中、連続的に電流をモニターした。
【0303】
データ解析
以下の場合には、細胞を分析しなかった:
(1)膜抵抗が最初、200Mオーム未満であった、
(2)電流振幅<200pA、
(3)アクセス抵抗が20Mオーム以下、及び
(4)陰性対照添加後、実質的な安定化電流がない。
電流振幅を、DataXpress2ソフトウェア(Axon instruments)を用いて測定し、ランダウン電流補正を、線形又は指数フィッティング法により、洗浄時間後の最後の10〜15個のデータ点、及び陰性対照添加後の最後の10〜15個のデータ点に関連した測定に実施した。
抗体添加の前の平均電流補正振幅により電流を標準化した。18分間の抗体アプライ後の残留応答によって電流阻害を推定した。データは下記の表3に示されている。
表3:
【表6】

【0304】
図1
図1は、特定のペプチドの存在下又は非存在下における、HEK細胞に発現したヒトNav1.7電流への選択された抗体(25μg/ml)の機能的効果を示す。Nav1.7電流は、反復刺激プロトコールを用いる自動パッチクランプにより記録され、データは、最後の刺激後の標準化Nav1.7電流として提示される。選択された抗体を、特定のペプチド(25μg/ml)の存在下、4℃で30分間、インキュベートし、その後、Nav1.7電流記録のためにPatchXpressシステムへ移した。ペプチドの存在は、系統的に、抗体の阻害効果を逆転させ、したがって、Nav1.7電流の阻害が、抗体のNav1.7細胞外ループとの特異的な相互作用によって媒介されることを示している。
【0305】
図3D(a)
HEK細胞に発現した組換えヒトNav1.7チャネルの自動パッチクランプ分析。983モノクローナル抗体は、Nav1.7電流の用量依存性阻害を生じる。データ点は、抗体の存在下における反復電位ステッププロトコールの適用後の標準化ピーク電流振幅(エンドポイント)を表す。
【0306】
図3D(b)
HEK細胞に発現した組換えヒトNav1.7チャネルの自動パッチクランプ分析。1080モノクローナル抗体は、Nav1.7電流の用量依存性阻害を生じる。データ点は、抗体の存在下における反復電位ステッププロトコールの適用後の標準化ピーク電流振幅(エンドポイント)を表す。
【0307】
図3E
HEK細胞に発現した組換えラットNav1.7チャネルの自動パッチクランプ分析。983モノクローナル抗体は、Nav1.7電流の用量依存性阻害を生じる。1080モノクローナル抗体は、25μg/mlにおいてNav1.7電流の約26%阻害を生じる。データ点は、抗体の存在下における反復電位ステッププロトコールの適用後の標準化ピーク電流振幅(エンドポイント)を表す。
【0308】
図3F
983モノクローナル抗体によるヒトNav1.7阻害の動態。組換えヒトNav1.7チャネルを発現するHEK細胞を、電位ステッププロトコールを用いて0.1Hzで約20分間、刺激する。データ点は、10秒ごとに記録されたNav1.7チャネルの標準化ピーク電流振幅(ランダウン補正済み)を表す。Nav1.7電流は、抗体(25μg/ml)の存在下で低下するが、0.1Hzでのチャネルの反復活性化が維持される場合だけである。プロトコールの終了時点(及び抗体のインキュベーション後)でのみのNav1.7チャネルの刺激は、Nav1.7電流の阻害を生じない。データは、983モノクローナル抗体による特異的阻害が、Nav1.7チャネルタンパク質の反復活性化(チャネルサイクリング)を必要とすることを示唆している。
【0309】
後根神経節インビトロ試験
初代培養調製
生後1日から3日の間の1〜2匹の野生型ラットの子から後根神経節を単離した。神経節を、切開後、PBS中で洗浄し、すぐに、2mg/mlのコラゲナーゼ(Sigma−Aldrich、#C2674)を含むDMEM(Lonza、#BE12−604F)溶液中へ置き、酵素消化のために37℃で約45分間、インキュベートした。コラゲナーゼ溶液を除去し、10%ウシ胎児血清(Lonza、#DE14802F)、0.5mMのL−グルタミン(Lonza、#BE17−605E)、1%のペニシリン/ストレプトマイシン(Lonza、#BE17−603E)、及び20ng/mlの神経成長因子(NGF、Invitrogen)を追加したDMEMと交換した。その後、神経節を機械的に粉砕し、1000gで5分間、遠心分離し、同じ培地中に再懸濁した。分離された細胞を数え、50μg/mlのポリ−D−リシン(Sigma)及び30μg/mlのラミニン(Invitrogen)でプレコーティングされたカバーガラス上で100,000〜120,000細胞/mlの懸濁液まで希釈し、使える状態になるまで、37℃、5%COで、インキュベートした。
【0310】
初代培養電気生理学
調製から2日間以内のインビトロでの培養(DIV)後、分離したDRGを、使用のために採取した。Ikegami ICD−42B CCDカメラを有するOlympus BX50WI正立顕微鏡で細胞を可視化した。5khzデジタルサンプリングを用いて、電気生理学的記録が得られ、Axopatch 1D(Molecular Devices)増幅器において3dB、3khz周波数でフィルターにかけられ、Digidata 1322Aアナログ−デジタルコンバータ(Molecular Devices)を用いてデジタル信号へ変換された。pClamp 10ソフトウェア(Molecular Devices)を用いて、全ての記録が得られ、続いて、Clampfit 10(Molecular Devices)において解析された。Sutter p−97水平ピペットプーラーでホウケイ酸ガラスピペットから記録電極を引き抜いて、4.5〜6MΩの最終抵抗にし、以下を含む(mM)内部溶液で満たした:140K−メタンスルホネート、5 NaCl、1 CaCl2、2 MgCl2、11 EGTA、10 HEPES、2 Mg−ATP、及び1 Li−GTP;pHをTris−baseで7.2に調整し、重量オスモル濃度をスクロースで310mOsmに調整した。バス溶液は以下を含んだ(mM):130 NaCl、25 グルコース、10 HEPES、4 KCl、2 CaCl、1 MgCl、1.25 NaPO;pHをNaOHで7.35に調整し、重量オスモル濃度をスクロースで310mOsmに調整した。液間電位は、14.2mVであると計算され、全ての報告された電位は、補償するように補正されている。
電位クランプモードにおける陽圧の解除及び手動吸引による密封(>1GΩ)の形成後、容量性電流を補償し、コマンド電位を−70mVに設定した。細胞膜を破り、細胞が細胞内溶液を5分間、透析するようにさせた。透析後、ホールセルパラメータを記録した。ホールセルキャパシタンスが>35pFであり、又は電極抵抗の3倍未満の安定したアクセス抵抗が達成され得ない場合には、細胞を棄却した。増幅器を電流クランプモードへ切り換え、静止膜電位を記録した。その後、活動電位(AP)又は一続きのAPを誘発することを意図された、一連の1.5秒の持続時間の、増加性振幅の脱分極電流ステップを細胞に注入した。最大−35mVへの脱分極後の単一のステップ中、1つより多いAPを誘起することができなかった細胞を棄却した。
その後、細胞を対照溶液か又は抗体溶液かのいずれかで、記録チャンバーを十分満たすように、90秒間、記録される細胞上へ直接的に高速バス灌流を行うことにより、処理し、その記録チャンバーが十分満たされた時点で、灌流と吸引の両方を停止した。前の一連の脱分極電流ステップを、40分間にわたって、2分間隔で、典型的には、個々のステップ間に1.5秒の遅延を入れて、繰り返し与え、膜再分極を可能にした。たまに、静止膜電位(RMP)が、実験経過中、−65mVの一定RMPを維持するために調整されている場合には、定電流を注入した。実験経過中、RMPがプラス方向かマイナス方向かのいずれかに20%より多く偏向し、又は保持電流が100pAより多く変化した細胞を、棄却した。各ステップについての個々の保持電流及び注入電流、加えて、実験経過中、変化したいかなる電気生理学的パラメータも、各細胞について個々に書き留めた。
【0311】
データ解析
各脱分極ステップについて活動電位(AP)を手作業で数え、誘発APの総数を各時点について合計した。Microsoft Excel 2003において、各時点におけるAPの数を、時間=0における誘発APの数に対して標準化し、Graphpad Prism 5.0ソフトウェアを用いて時間の関数としてプロットした。それぞれのプロットされたデータ点は、特定化された実験条件下での全ての記録された細胞の平均値を表し、誤差バーは計算された標準誤差を表す。
図3A:処理前(時間=0)及び処理後(時間=30分目)の代表的なDRGニューロンからの誘発活動電位の電流クランプトレース。
時間=2分目での抗体投与後、媒体又は対照抗体で処理された対照と比較した電位。
図3B:抗体983(25μg/ml)は、時間=2分目での抗体投与後、媒体又は対照抗体で処理された対照と比較して、誘発活動電位の数を有意に低下させた。
【0312】
図3C:培養ラット後根神経節(DRG)ニューロンにおける活動電位誘起に関する電気生理学(電流クランプ記録)研究。25μg/mlの用量での1080モノクローナル抗体は、DRGニューロンの電気的に誘導されるスパイク頻度を低下させる。データ点は、抗体適用前の時間0において観察された最初の頻度と比較した、標準化スパイク頻度を表す。
【表7】

【0313】
ペプチド結合ELISA
Nunc96ウェルプレートを、カーボネートコーティング緩衝液中5ug/mlストレプトアビジン(Jackson 016−000−114)の100ul/ウェルにおいて4℃で一晩、コーティングした。プレートを、PBS/ツイーン中で4回、洗浄し、室温で1時間、200ul/ウェルのブロッキング溶液(PBS中1%BSA)を加えた。プレートを、PBS/ツイーン中で4回、洗浄し、室温で1時間、100ul/ウェルの5ug/mlビオチン化ペプチドを加えた。プレートを、PBS/ツイーン中で4回、洗浄し、室温で1時間、100ul/ウェルの抗体を加えた(プレートに沿って、10ug/mlから始まり、ブロッキング溶液中3.16倍系列で希釈していく)。プレートを、PBS/ツイーン中で4回、洗浄し、室温で1時間、100ul/mlのヤギ抗ウサギFc HRP(Jackson 111−036−046)を加えた。プレートを、PBS/ツイーン中で4回、洗浄し、100ul/ウェルのTMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)溶液を加えた。50ul/ウェルのNaFを加えて、反応を停止させ、吸光度を630nmで読み取った。
図3Gは、抗体983の様々な環状Navイオンチャネルペプチド表4への結合についてのELISAデータを示す。
図3Hは、抗体1080の様々な環状Navイオンチャネルペプチド表4への結合についてのELISAデータを示す。
両方の場合における特異的結合は、B11.7ペプチドについてのみ観察され、その他のNavイオンチャネル由来の等価のループへの結合は観察されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンチャネルのE1細胞外ループに結合する、抗E1イオンチャネル抗体又はその結合断片であって、前記イオンチャネルが疼痛の調節において機能し、前記抗体又は断片が前記イオンチャネルを、それに結合した後、機能的に改変する、上記抗体又はその結合断片。
【請求項2】
イオンチャネルが、Na1.3、1.6、1.7、1.8、及び1.9からなる群から選択されるナトリウムイオンチャネルである、請求項1に記載の抗E1イオンチャネル抗体又はその結合断片。
【請求項3】
抗体が、イオンチャネルのドメインA、ドメインB、ドメインC、又はドメインDにおけるE1ループに結合する、請求項2に記載の抗E1イオンチャネル抗体又はその結合断片。
【請求項4】
抗体又は断片が抗Na1.7抗体又は断片である、請求項2又は請求項3に記載の抗E1イオンチャネル抗体又はその結合断片。
【請求項5】
抗体又はその断片が、配列番号107〜130からなる群から選択されるアミノ酸配列に結合する、請求項4に記載の抗E1イオンチャネル抗体又はその結合断片。
【請求項6】
抗体又はその断片が、配列番号131〜134からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するNa1.3ペプチドに結合する、請求項2又は請求項3に記載の抗E1イオンチャネル抗体又はその結合断片。
【請求項7】
抗体又はその断片が、配列番号135〜138からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するNa1.6ペプチドに結合する、請求項2又は請求項3に記載の抗E1イオンチャネル抗体又はその結合断片。
【請求項8】
抗体又はその断片が、配列番号139〜145からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するNa1.8ペプチドに結合する、請求項2又は請求項3に記載の抗E1イオンチャネル抗体又はその結合断片。
【請求項9】
抗体又はその断片が、配列番号146〜149からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するNa1.9ペプチドに結合する、請求項2又は請求項3に記載の抗E1イオンチャネル抗体又はその結合断片。
【請求項10】
抗体又はその断片が、K2.1、K2.2、及びK7.xからなる群から選択されるカリウムイオンチャネルに結合する、請求項1に記載の抗E1イオンチャネル抗体又はその結合断片。
【請求項11】
抗体又はその断片が、HCN1及びHCN2からなる群から選択される過分極活性化型イオンチャネルに結合する、請求項1に記載の抗E1イオンチャネル抗体又はその結合断片。
【請求項12】
抗体又はその断片が、配列番号150又は151のアミノ酸配列を有するペプチドに結合する、請求項11に記載の抗E1イオンチャネル抗体又はその結合断片。
【請求項13】
抗体又はその断片が、Ca3.1、Ca3.2、Ca3.3、Ca2.1、Ca2.2、及びCa2.3からなる群から選択されるカルシウムイオンチャネルに結合する、請求項1に記載の抗E1イオンチャネル抗体又はその結合断片。
【請求項14】
抗体又はその断片が、TRPV1、TRPA1、ASIC1、TRPM8、TRPV3、及びTRP4からなる群から選択される非ゲート型イオンチャネルに結合する、請求項1に記載の抗E1イオンチャネル抗体又はその結合断片。
【請求項15】
抗体が、それが特異的である関連するイオンチャネルの機能を、インビトロパッチクランプアッセイにおいて少なくとも5パーセント阻害する、請求項1から14までのいずれか一項に記載の抗体又は断片。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図3H】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−508443(P2013−508443A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535812(P2012−535812)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066274
【国際公開番号】WO2011/051349
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(507073918)ユセベ ファルマ ソシエテ アノニム (70)
【Fターム(参考)】