説明

イオンモノマーの重合方法

【課題】極性溶媒系、特に水性溶媒系において、広範囲の極性、水溶性または親水性モノマーを効率的に重合できる原子(又は基)移動ラジカル重合法を提供する。
【解決手段】初期に、遷移金属錯体およびラジカル移動性アジド基を含む開始剤を含む系の存在下でフリーラジカル(共)重合性イオンモノマーの重合を開始することを含む、ラジカル重合性イオンモノマーを(共)重合するための制御重合方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の引照
本出願は、米国特許出願60/238,809(2000年10月6日出願)による優先権を主張する非仮特許出願である。
【0002】
発明の分野
本発明は、イオン置換基をもつモノマーを重合するための、および水溶性ブロックコポリマーを含めたブロックコポリマーを製造するための、制御重合方法に関する。より詳細には本発明は、追加官能基をもつ開始剤からのラジカル(共)重合性モノマーの制御重合に対するパラメーターおよび要件を開示することにより、制御またはリビングラジカル(共)重合法の有用性を拡大および改良することに関する。本発明は、イオン置換基を含むモノマーを特に水の存在下で直接(共)重合することによる、イオン置換基をもつポリマーの直接製造を提供する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ポリマー化学の分野では、新規重合法および新規ポリマーを開発する試みが続けられている。ポリマー化学における比較的最近の進歩は、制御またはリビング重合法の開発である。制御またはリビング重合法は、ポリマー成長反応と比較して本質的に連鎖移動および停止反応が存在しないものである。これらの開発により、マクロ機能性を示すポリマーが製造され、特異的な化学反応性をもつ機能性ポリマーが開発された。これらの新規ポリマーは、材料エンジニアがその後の材料形成反応(たとえば共重合反応、連鎖延長反応および架橋反応、ならびに分散固体を含む基質との相互作用)における、またはその反応の構成成分における構築ブロックとしてのポリマーの加工またポリマーの使用に利用できる制御レベルを向上させる。
【0004】
この試みにおいて依然として克服する必要のある重要な経済的ハードルは、入手できる低価格モノマーから、利用できる商業プロセス装置で制御重合する利点を提供することである。これらの長期目標が、先の出願に開示されるラジカル(共)重合性モノマーの制御重合の進歩を継続させる背景または駆動力となり、また原子移動ラジカル重合(atom transfer radical polymerization, ATRP)として知られる方法を拡張、簡略化および強化する誘因となっている。
【0005】
古典的ATRP反応から最近開発されたATRP法およびポリマーは、米国特許出願09/018,554および09/534,827に記載されており、これらの内容全体を本明細書に援用する。広範なラジカル(共)重合性モノマーを制御重合するための触媒法において多数のパラメーターを制御する方法が、Krzysztof Matyjaszewskiら著または共著による文献に記載されている。たとえば下記を参照:Wang, J. S. and Matyjaszewski, K., J. Am. Chem. Soc., vol.117, p.5614(1995); Wang, J. S. and Matyjaszewski, K., Macromolecules, vol.28, p. 7901(1995); K. Matyjaszewski et al., Science, vol. 272, p.866(1996); K. Matyjaszewski et al.,“制御/“リビング”ラジカル重合におけるゼロ価金属”,Macromolecules, vol.30, pp. 7348-7350(1997); J. Xia and K. Matyjaszewski,”制御/”リビング”ラジカル重合.AIBNを開始剤として用いる均質逆原子移動ラジカル重合”,Macromolecules, vol.30, pp. 7962-7696 (1997);米国特許出願09/126,768(その内容全体を本明細書に援用する);USP5,807,937、5,789,487、5,910,549、5,763,548、5,789,489、5,945,491、6,111,022、6,121,371、6,124,411、および6,162,882、ならびに米国特許出願09/034,187、09/018,554、09/431,871、09/359,359、09/359,591、09/369,157、09/126,768、および09/534,827(それぞれの内容全体を本明細書に援用する)。パラメーター間の微妙な相互作用をさらに探索し、これらの文献に開示された教示を実行することにより、機能性および形態を制御しうる多数の本来有用な新規材料を製造でき、その後の材料形成反応のための新規な末端機能性(tele- functional)構築ブロックを製造できる。これは、ラジカル(共)重合性モノマーのこの強力な制御重合法により達成できる、機能および形態の部位特異的制御を利用して得られる。
【0006】
ラジカル(共)重合性モノマーの重合を制御できる系または方法が、下記の4成分の使用を含むものとして先の出願に記載されている:(i)開始剤分子;(ii)遷移金属化合物:これは下記を含む:(iii)添加または結合した対イオン、および遷移金属化合物:後者は(iv)配位子(1以上)と錯形成している。開始剤分子または重合誘発分子は、遷移金属化合物との可逆的レドックス反応に関与しうる1以上のラジカル移動性原子または基を含むいかなる分子であってもよい。遷移金属化合物は添加または結合した対イオンを含有することができ、かつ遷移金属塩を含む。遷移金属は、すべての反応性酸化状態が反応媒質にある程度可溶性となるように、配位子(1以上)と錯形成させることができる。この系の成分を、ラジカル重合性モノマーの(共)重合がより厳密に制御されるように最適化することができる。USP5,763,548参照;その内容全体を本明細書に援用する。
【0007】
”逆”ATRPとして知られる態様においては、前記の開始剤分子をその場で遊離基(ラジカル)と遷移金属化合物のレドックス結合体との反応により形成することができる。合成系の他の成分、たとえばラジカル移動性原子または基、初期に遷移金属上に存在する対イオン、および任意成分である溶媒の選択が、プロセスに影響を及ぼす可能性がある。USP5,807,937は、組み合わせ官能基を含む単一分子、すなわち対イオンと配位子成分が1つの分子中にある錯体の一例を提供する。奪活剤、すなわち”永続ラジカル(persistent radical)”の役割、またはATRPについては遷移金属レドックス結合体の役割も、USP5,807,937に記載されている。
【0008】
先行技術に示されたATRPの基礎となる理論は以下のものであるが、この記述に限定すべきではない;重合は本質的に、成長しつつある活性ポリマー鎖末端と遷移金属錯体の間で強い炭素−遷移金属(C−Mt)結合が形成されずに行われる錯体型遷移金属触媒による可逆的レドックス反応により、開始剤分子からラジカル移動性原子または基[または重合プロセス中にはドーマントポリマー鎖末端]が開裂(および好ましくは本質的にホモリシス開裂)することによって進行する。この理論によれば、低い活性酸化状態または活性剤状態にある遷移金属錯体が開始剤分子(または成長しつつある活性ポリマー鎖末端)から可逆的レドックス反応でラジカル移動性原子または基をホモリシス除去することにより開始剤またはドーマントポリマー鎖末端を活性化するのに伴って、活性種が形成され、これが他の化学反応、本質的にはラジカルベースの化学反応を進行させる。高い酸化状態であるレドックス結合体状態または奪活剤状態にある遷移金属錯体は、ラジカル移動性原子または基を活性開始剤分子または成長しつつある鎖末端へ伝達し、これによって低い活性酸化状態の遷移金属錯体が再生する。ラジカルベースの化学反応が起きると、ラジカル移動性原子または基を含む新たな分子も形成される。先行文献においては、触媒活性遷移金属化合物をその場で形成するかまたは予め形成された錯体として添加することができ、これが広範な対イオンを含むものとして記載されている。対イオン(1以上)は開始剤中に存在するラジカル移動性原子または基、たとえばハライド(クロリドまたはブロミドなど)と同じであってもよく、あるいは異なるラジカル移動性原子または基であってもよい。後者の対イオンの例は、開始剤が最初に臭素を含有する場合、遷移金属化合物上のクロリド対イオンである。そのような組み合わせは、効率的な重合開始とそれに続く重合速度制御を可能にし、さらに、第1組の(コ)モノマーから第2組の(コ)モノマーへの特定の交叉反応に有用であってブロックコポリマーが効率的に形成されることが示された。
【0009】
本発明の目的に関して、“ポリマー”にはホモポリマーおよびコポリマーが含まれ(具体的内容からそれを含まないことが示されない限り)、これはブロック、ランダム、統計的周期性、グラディエントスター(gradient star)、グラフト、コーム(comb)、(超)分枝または樹状ポリマーであってもよい。一般名の前に括弧書きで示した”(コ)”、”(共)”は二者択一である。すなわち“(コ)ポリマー”はコポリマーまたはポリマー(ホモポリマーを含む)を意味する。一方、“(共)重合性”は本明細書に述べる重合機序で直接重合するモノマーを意味し、これには共重合によってのみポリマーに取り込まれうるコモノマーがさらに含まれる。同様に“(超)”には、ポリマー主鎖の分枝度が低い分枝度からきわめて高い分枝度にまで変動しうるという概念が含まれるものとする。
【0010】
ここ、または本明細書の他の箇所において、“制御および/または制御された”という語は、重合に際してプロセス条件が定められており、このため鎖破断プロセスの関与は鎖成長反応と比較して有意でないことを意味し、したがって予め定めた分子量、低い多分散度および高い機能性をもつポリマーが得られる。
【0011】
制御重合が下記の特色を示すことは広く認められている:
特色1.一次反応速度挙動、すなわちモノマー濃度([M])に対する重合速度(Rp)は、時間の直線関数である。これは、停止反応がないため活性成長反応種濃度([P*])が一定だからである。
【0012】
【数1】

【0013】
pは成長反応定数である。方程式1.2の結果を図1に示す。
図1は半対数プロットであり、活性成長反応種の濃度変化に対してきわめて敏感である。[P*]が一定であることは直線により明らかになる。上へ向いた弯曲は[P*]上昇を示し、これは低速開始の場合に起きる。他方、下へ向いた弯曲は[P*]低下を示し、これは停止反応または他の何らかの副反応、たとえば触媒系に対する毒作用により起きる可能性がある。
【0014】
半対数プロットが連鎖移動プロセスまたは異なる活性種間の低速交換には敏感でないことも注目すべきである。これらは活性成長反応種の数に影響を及ぼさないからである。
特色2.予め定めた重合度(Xn)、すなわち数平均分子量(Mn)は、モノマー転化率の直線関数である。
【0015】
【数2】

【0016】
この結果は、重合全体を通して鎖の数が一定であることにより得られる。これには下記の2つの条件が必要である:
開始は、ほぼすべての鎖が同時に成長し始めるのに十分なほど速やかでなければならないこと、及び
鎖の総数を増加させる連鎖移動反応が起きないこと。
【0017】
図2に、転化に伴う理想的な分子量成長、ならびに低速開始および連鎖移動が分子量増加に及ぼす影響を示す。
重要な点は、鎖の数が変化しないので分子量の増加は連鎖停止反応に対してきわめて敏感ではないという点である。きわめて高い分子量をもつポリマーに対して結合反応が重要な役割をもつ場合にのみ、停止反応の影響がプロット上にみられる。
【0018】
特色3.分子量分布が狭い。この特色はきわめて望ましいが、これは必ずしも制御重合により得られる結果ではない。これは連鎖移動および停止反応がないことを要求するだけでなく、開始、交換および脱成長の速度をも無視する。多数の研究[Gold, 1958#84; Coleman, 1963#88; Matyjaszewski, 1995#85; Hsieh, 1996#81; Matyjaszewski, 1996#86]に、分子量分布が狭いホ゜リマーを得るためには下記の5つの各要件を満たさなければならないと指摘されている:
i.開始速度が成長速度と競合する。この条件により、すべてのポリマー鎖の同時成長が可能となる;
ii.反応性の異なる種間での交換が成長反応より速い。この条件があれば確実にすべての活性鎖末端がモノマーとの反応に対して等しい感受性をもち、均一成長が得られる;
iii.連鎖移動または停止反応は無視できる程度でなければならない;
iv.脱成長反応速度が成長反応より実質的に遅い。これにより、重合が不可逆的であることが保証される;
v.系が均質であり、かつ混合が十分に速やかである。したがって、すべての活性中心が重合開始に導入される;
これが満たされれば、方程式1.4に示すようにポアソン分布が得られる:
【0019】
【数3】

【0020】
方程式1.4によれば、多分散度(Mw/Mn)は分子量の増加に伴って低下する。上記の5つの前提条件をすべて満たす重合は、10より大きいXnについて多分散度が1.1未満の最終ポリマーを生成すると期待される。
【0021】
特色4.寿命の長いポリマー鎖。これは連鎖移動および停止反応を無視できる場合に得られる結果である。したがってすべての鎖は、モノマーがすべて消費された後もそれらの活性中心を保持する。追加モノマーを導入すると、成長反応が再開する。この独特な特色から、モノマーの逐次添加によりブロックコポリマーの製造が可能となる。
【0022】
合成手段としての制御重合の重要性は広く認められている。均一で予測可能な鎖長をもつポリマーが容易に得られる。制御重合は、組成、機能性および形態における多数の変異の多様な態様を分子レベルで選択および制御することにより、バルク特性を制御するのに最良の機会を与える。そのような制御がポリマー材料の製造に及ぼす結果を図3に模式的に示す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
ATRPは、制御/“リビング”ラジカル重合における最も有望な方法のひとつであり、広範なモノマーに利用でき、かつ十分に確定したポリマーを与えることができる方法である。しかし、特に水性系の場合、ATRP法ではごく限られた範囲の極性、水溶性または親水性モノマーを重合できるにすぎない。極性またはイオン性置換基を含むモノマーは、1以上の酸化状態をもつ遷移金属触媒にとってきわめて効率的な錯化剤となりうる。それは開始剤または成長しつつあるポリマー鎖と競合レドックス反応を行い、これがATRPにコモノマーとして使用できるモノマーの範囲を制限すると考えられていたからである。しかし、界面化学の制御手段を提供することによって広範な鎖内または末端イオン官能基をもつポリマーを複合構造体、接着剤および被覆製品、ならびに保健用品の製造に利用できるであろうから、この制限を克服して異種の官能基をもつモノマーをコポリマーに取り込んだ材料を直接製造するという誘因があった。ATRP反応は反応媒質成分の相互作用のため複雑であり、たとえばモノマーが遷移金属触媒と相互作用し、溶媒がモノマーと相互作用し、溶媒が開始剤と相互作用する。したがって、極性およびイオン性モノマーをATRPにより重合させる方法が求められおり、そのような方法で製造できる新規ポリマーが求められている。さらに、水溶性高分子開始剤(macroinitiator)の制御重合方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0024】
発明の概要
本発明は、初期に、遷移金属錯体、およびラジカル移動性アジド基を含む開始剤を含有する系の存在下に、特に水性系で、ラジカル(共)重合性極性モノマーまたはイオンモノマーの重合を開始するための制御重合方法を提供する。さらに、初期に、遷移金属錯体、およびラジカル移動性原子または基を含む開始剤、ならびに過剰の錯形成していない配位子1種類以上を含有する系の存在下でラジカル(共)重合性イオンモノマーの重合を開始することを含む、ラジカル重合性イオンモノマーを(共)重合するための制御重合方法を提供する。錯形成していない配位子は、遷移金属錯体を安定化し、遷移金属の不均化を少なくする。この方法で重合しうるイオンモノマーには、アニオンおよびカチオンの両モノマーが含まれる。
【0025】
水溶性高分子開始剤の使用を含む、水溶性ブロックコポリマーの製造のための制御重合方法も、本発明により提供される。本発明以前には製造されていない、水溶性ブロックを含む新規ポリマーも提供される。
【0026】
さらに本発明には、新規な水溶性ブロックコポリマー、極性官能基をもつモノマーを含むブロックコポリマー、イオン官能基を含むモノマーとのブロックコポリマー、および双性イオンブロックコポリマーを、均質水性系で合成する方法が含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
発明の詳細な記述
遷移金属仲介による、イオン化性又はイオン置換基をもつモノマーの本質的ラジカル(共)重合を実施することにより、ラジカル(共)重合性モノマーの制御重合のための条件を含めたいっそうの進歩が達成された。本明細書には、ラジカル移動性原子または基の選択を制御することにより、ATRP重合に直接導入する(共)重合性モノマーの範囲をさらに拡大しうることを教示する。さらに、イオン官能基をもつモノマーを取り込むための条件が定められたので、部位特異的イオン官能基をもつポリマーを直接製造することが可能になった。
【0028】
そのようなポリマーの製造には、モノマー/ポリマー遷移金属錯体の形成およびイオン媒質中の”無配位子”遷移金属錯体の不均化に関与するすべてのパラメーターを、完全に理解して制御する必要がある。この不均化反応を制御または少なくとも抑制しないと、触媒がATRPの基本であるレドックス反応に必要な2つの酸化状態に目的濃度で存在することができなくなり、制御重合反応が進行しない。この理解はカチオン官能基を含むモノマーの重合を目標とした実験中に得られたものであり、以下の記載においてはカチオンモノマーの重合に関して述べるが、この方法はカチオンモノマーだけでなく中性モノマーおよびアニオン官能基を含むモノマーにも適用できることに注目するのが重要である;これらは低い酸化状態の触媒では十分に良好に反応しないか、あるいは高い酸化状態のものと優先的に相互作用する(したがって低い酸化状態のものを不安定化し、より不均化しやすくする)。
【0029】
以下の記載においては銅または鉄を遷移金属の例として用いるが、他の出願に教示されるように、広範な他の遷移金属が可能であり、場合によっては好ましい。他の重合方法により製造されるポリマーの末端または側鎖に官能基を付与して、高分子開始剤または高分子モノマーとしてATRPに導入することができる;あるいは出願中の米国仮特許出願60/238,812(高分子開始剤と高分子モノマーの両方を同時に用いることを開示)に開示されるように、これを利用してポリマーへの高分子モノマーの取込みを改善し、改良されたブロックコポリマーおよびグラフトコポリマーを得ることができる。1つまたは複数の開始部位があって幾つかの方向に連鎖成長してもよい。開始剤がラジカル移動性原子または基のほかに特異的官能基をもち、ホモ−またはヘテロ−テレケリック材料を生成してもよい。反応は均質または不均質条件下で実施でき、前者の方が一般に良好な制御が得られる。反応温度は一般に室温から150℃の範囲であるが、その都度変更できる。反応は真空または加圧下で実施できる。反応は水分の存在下、さらには水中で、均質または不均質(乳濁液、懸濁液)両方の条件下で実施できる。酸素は排除すべきであるが、特に被酸化性遷移金属、たとえばCu0種の存在下では限られた量の酸素は許容でき、混合酸化状態を含む遷移金属錯体を製造するためには酸素を意図的に添加できる。試薬の添加順序は変更できるが、モノマー中および所望により溶媒中に予め調製した触媒溶液に開始剤を最後に添加する場合が最も多い。重要なパラメーターは、反応の開始時に少量のCuII種を添加または形成することであろう(USP5,807,937)。これにより、停止反応によって永続性ラジカルまたは奪活剤が自然形成されるという要求なしに失活プロセスが行われ、したがって即時制御が達成されるからである。実際に、広域スペクトルのイオンモノマーの制御重合を金属仲介重合、特に水性系での重合に応用するのを制限してきたのは、2つの酸化状態にある遷移金属錯体(ATRPの平衡定数により判定した濃度で)の同時利用に対するこの要求である。イオンモノマーのATRPを制御し続けるためには水性系でCuIがCuIIとCu0に不均化する本来の傾向を抑制しなければならないことを、本発明において教示する。具体的には、遷移金属が重合反応全体を通して確実に活性化状態と失活状態の両方で(適宜な濃度で)存在するようにしなければならない。後記のように、水が有機配位子を排除して“裸の”(すなわち弱く錯形成した)銅(I)イオンを銅(II)イオンと銅(0)に不均化するのを阻止する工程を採用しなければならない。
【0030】
ポリマーを制御重合法により製造する場合に、ポリマー鎖中に存在する末端官能基に対して開始剤分子の両断片がもつ役割を図3に示す。特異的な移動性原子または基をもつ開始剤を特異的遷移金属錯体と共に選択すると、開始、成長および(コ)モノマー取込みがさらに制御されることも、先の出願に示されている。本発明には、レドックス反応においてラジカル移動性基として作用するアジド基を遷移金属錯体と共にイオンモノマーの重合に使用することが含まれる。アジド基はポリマー末端基上に残り、その後の利用、たとえばポリマーまたは基質へのグラフトに際して反応性であり、あるいは連鎖延長および架橋反応に関与し、したがってさらに官能基を付与することなくそのような用途に直接使用できる。アジドを含む開始剤は、アジド含有ポリマーの製造のために、移動性および非移動性の両方のアジド官能基をもつことができる。さらに、アジド基の使用により、イオン基で置換されたモノマーの直接(共)重合が可能になる。これは、水の存在下で重合を実施したい場合に特に有用である。水は、特定の配位子の置換のほか、銅上のハロゲンを置換する可能性がある(Haddleton, D. M., et al., Chem. Comm., 683(1997); Ashford, E. J., et al., Chem. Comm., 1285 (1999))が、アジド基が遷移金属錯体上に存在してもそれを置換する可能性はないからである。さらに、水は開始剤またはドーマントポリマー鎖末端にあるラジカル移動性ハライドを加水分解する可能性もあるが、アジドをラジカル移動性基として用いると開始剤(または鎖末端)加水分解の可能性が少なくなる。
【0031】
この方法の例は4−ビニル安息香酸ナトリウムおよび2−トリメチルアンモニオエチルメタクリラートメタンスルホナートの直接重合である。これは有用性を示す手段として提示するにすぎず、用途を限定するためのものではない。このようなイオンモノマー、すなわちアニオン置換基を含むものおよびカチオン置換基を含むものをポリマーに直接導入するのは、先行技術方法に述べられたようにイオン置換基を含む機能性材料を得るために重合プロセスで遮蔽した官能基を使用したのちその置換基を脱保護するより経費が少なく効率的な経路である。したがって、保護されていない反応性イオン側鎖官能基をポリマー材料に直接付加することが本発明により可能になった。0.1モル%程度の少量のイオンモノマーを共重合に添加すると、重合度(DP)が1000を超えるのに伴って統計的に1個の官能基が各ポリマー鎖に付与される。重合度がより低いポリマーについて、各鎖に1個の官能基の導入は、目的官能基をもつ開始剤の使用により、またはラジカル移動性原子もしくは基から目的官能基への変換により行うのが最も好都合である。そのようなイオン官能基をもつポリマーは、直接利用のほか、他のポリマーとのブレンドおよびアロイ化に利用できる。そのような反応性官能基をもつ材料は、他の適宜な反応性官能基をもつ材料、または基質もしくは鉱物添加剤、または反応性官能基を含む強化材と直接相互作用して、被覆、複合材料、接着剤および保健用品部材を直接成形することができる。さらに、アジド基自体が末端刺激により反応し、他の官能基にも容易に変換される。先の出願に述べられた反応の例は下記の変換である;アジド末端基付きポリスチレン:これは水素化アルミニウムリチウムで第一級アミノ基に変換できる;およびアジド末端基付きポリアクリラート:これはトリフェニルホスフィンでホスホランイミンに変換したのち加水分解することによりアミノ基に変換できる。
【0032】
ATRPにおいて開始剤上に官能基を含む場合、アジド官能基には2つの役割がある:第一級置換基としてのアジド基、および第二級置換基としてのアジド基。第一級置換基としてのアジドの使用は、開始剤の非移動性残基上に残る官能基としてアジド官能基をポリマーに導入することを意味する。第二級官能基としてのアジドは、ラジカル移動性基として作用し、成長しつつあるポリマー鎖末端に官能基を導入し、さらに、官能性イオン基を含むモノマーをポリマーに直接取込むのを可能にする。したがって、最初の場合より広範な(コ)モノマーを(コ)ポリマー組成物に取込むことができる。第一級アジドと第二級アジドの両方を1つの開始剤分子に使用すると、”ホモ”−テレケリック−アゾ−材料を直接製造できる。”ホモ−”という添え字は、官能性末端基が両方ともアゾ基であるが、これら2つのアゾ基の反応性は異なるということを示すために用いられる。
【0033】
ラジカル移動性アジド基をもつアジドベース開始剤を製造する際の最初の方法は、ATRPに適切であることが示されているラジカル移動性原子としてハライドを用いたものに類似の構造をもつ開始剤を製造することであった。この方法で、制御重合可能であることが分かっている条件下で官能基をさらに含むモノマーの重合を調べることは可能であろう。ATRPの可能性をこのようなアゾ官能性末端キレート性ポリマーの直接製造にまで拡大することを例示するために選択されたモノマーは、水溶液中のジメチルアミノエチルメタクリラート(DMAEMA)の重合であった。ラジカル移動性基としてアジド基を用いる重合は、ラジカル移動性原子として臭素を用いて行う重合より低速であった。重合は制御され、アジドベース開始剤は末端アミン官能基をもつモノマーの重合において評価するのに適切であることが示された。ジエチルアモニウム基をアルキル化してカチオン官能基を含むポリマーを形成することによりDMAEMA基を含むポリマーを変換して、イオン官能基を含むポリマーにすることができる。その例は、DMAEMAブロックコポリマーとヨウ化メチルを反応させてヨウ化2−メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムを形成する反応である。ヨウ化メチルは実験室で用いるのに好都合であったが、その用途に望ましいポリマーの構造に応じて選択できる他のアルキル化剤を当業者は容易に判定できる。
【0034】
しかしそのような材料の直接製造には利点がある。アジド開始剤による直接重合のために選択された最初のイオンモノマーは、アニオン官能基をもつモノマーであった。選択されたモノマーは、先に制御ラジカル重合法により重合されたp−ビニル安息香酸ナトリウム塩であった:Keoshkerian, B., Macromolecules, 28, 6381(1995);ならびにGabaston, L. I., et al., Polym. Prepr., 38(1): 719-720(1997)およびPolymer, 40(16), 4505-40(16),4505-4515(1999)がニトロオキシド仲介重合法を用いて;Wang, X.-S., et al., Macromolecules, 33, 255(2000)が標準ハライド型開始剤を用いてATRPにより。このモノマーは、アジド基を移動性基として用い、適宜な時間枠内で重合が行われるように重合温度を選択することにより、ホモ重合および共重合させることができた。
【0035】
開始剤残基上にアジド基を第一級置換基またはラジカル移動性基としてもつ開始剤の使用により、イオン官能基を含む(コ)ポリマーの形成が可能なほか、開始剤残基上に残る任意の第一級アジド官能基のほかに機能性アジド末端基をもつテレケリックポリマー、ならびに成長しつつあるポリマー鎖末端それぞれにこの有用な官能基をもつブロック−およびグラディエント/ランダムコポリマーの直接製造が可能となる。そのような基は外部エネルギーに反応して連鎖延長した材料を形成することが示された。したがってこれらのポリマーは、マイクロ波エネルギーにより架橋または連鎖延長しうる粉末被覆を形成できる。
【0036】
ポリエチレングリコールアゾベースの単官能性高分子開始剤を製造するための、きわめて簡単で清浄な方法が開発された。これは、いかなるヒドロキシ含有分子にも利用できる方法であり、かつ商業化した場合に、エステル化反応に酸ハロゲン化物を用いるものより環境に対する影響がはるかに少ない方法である。遊離酸を触媒量のジシクロヘキシルカルボジイミドおよび塩基(縮合剤として)と共に用いる。ポリエチレングリコール(PEG)ベースの単官能性高分子開始剤を選択したのは、各ブロックが水溶性であるブロックコポリマーの製造に用いる水溶性高分子開始剤を得るためである。さらに、これはNMRによる分子量測定も可能であった。本明細書に記載する合成法は、通常採用されているトリエチルアミン存在下でのハロアシルブロミドとPEGの反応と異なり、より簡便であり、環境に対する影響がより少ない。後者の反応には乾燥試薬が必要であり、毒性が高く悪臭をもつアミンおよび酸臭化物が用いられるからである。
【0037】
これは、本明細書に製造方法を教示した幾つかの水溶性ブロックコポリマーの一例にすぎない。そのようなイオン官能基はGPC実施前に保護しなければならないと考えられていたので、これらの官能基を含むポリマーの分子量および分子量分布の測定は最初は若干困難であった。しかし本発明者らは、GPCを直接実施するのが可能であり、形成されたブロックポリマーは十分に制御された条件下で製造された材料がもつ分子量および分子量分布を示すことを見出した。
【0038】
次の段階は、各ブロックが水溶性ポリマーセグメントを含む水溶性ブロックコポリマーをラジカル法だけで製造することであった。2−DMAEMA、2−HEMA(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)およびイオンモノマーを重合させる幾つかの例を示す。DMAEMA、2−HEMAおよびHEAなどの水溶性モノマーをATRPにより、塊状で、および有機溶媒中で重合させてホモポリマーを形成することが先の出願および報文においてMatyjaszewskiらにより考察された。その後この研究は、モノメトキシキャッピングしたオリゴ(エチレンオキシド)メタクリラートのほかにこれらのモノマーを重合させるための条件がAmesにより公表されることによって確認された。DMAEMAの重合は、メタノール溶媒に富む混合物を重合に用いると改善された。メタノールは奪活剤の溶解度を改善するからである。
【0039】
本明細書中で以上に述べた研究および先の出願に開示された研究において、下記の点に注目することが重要である。すなわち、ラジカル重合機序により塊状または有機溶媒中で重合しうる官能性モノマーは多数あるが、ATRPによる水性系での重合に成功したのは、DMAEMA、置換ヒドロキシ(メタ)アクリラートまたは4−ビニル安息香酸ナトリウムを含む限られた範囲の水溶性極性モノマーにすぎない。この所見は重要であり、本発明者らはカチオン置換基またはアニオン置換基(たとえばスルホナート)を含むモノマーの制御重合に必要な条件を考察した。最終的には、制御プロセスで製造されたポリマーにこれらのモノマーを取り込むのに初めて成功した。ただしこの成功には、水溶液中でレドックス反応を行うことができる遷移金属触媒の挙動に関する化学をより深く理解して、この知見を重合プロセスに適用することが必要であった。
【0040】
2−トリメチルアンモニオエチルメタクリラートメタンスルホナート、およびトリフラート(TMAEMT)を、カチオン置換基を含むモノマーの例として選択した。これらを(共)重合させることはできたが、最初の実験では明らかにきわめて急速な失活反応がみられた。TMAEMATについて得た経験は、ATRPによる重合に成功したことのない他のモノマー、4−スチレンスルホン酸ナトリウムの場合と同様であった。両方の場合とも、反応体を慎重に脱泡したにもかかわらず、反応混合物は急速に緑色に変化した。最初はこの所見を酸化によるものと考えたが、有機配位子を失った遷移金属錯体の不均化反応によるものであった可能性もある。明らかに不均化を示すと思われるCu0の沈殿はみられなかったが、これは必ずしも容易にみられるわけではない。
【0041】
不均一水性媒質中で配位子としてPMDETAを用いるスチレンの重合も一般的ATRP法では困難であることが分かったが、成功しなかった試みの分析は、成分として水を含む重合系に重要なある相互作用を解明するのに役立った。銅(I)PMDETA錯体は水にきわめて易溶性であり、この例における後記の分析によれば有意の不均化の影響もみられた。
【0042】
先に明記したように、特定の水溶性モノマーおよび/またはイオンモノマーであるDMAEMA、ヒドロキシ(メタ)アクリラートまたは4−ビニル安息香酸ナトリウムのみをATRPにより重合させることができる。さらにこれらのモノマーは遷移金属触媒と錯体を形成できることに注目されたい。これは制御重合を困難にするが、遷移金属錯体(添加した配位子およびモノマー/ポリマーの両方と錯形成する)は依然としてレドックス反応に関与しうるので、実際には制御重合の実施を可能にする。本発明者らが最初に触媒系との錯体を形成しないイオンモノマーの重合を試みたとき、酸化された触媒が急激に出現するため反応は停止するようにみえた。
【0043】
本発明の範囲を限定するものではないが、現在では下記のように考えている。すなわち、試みた極性モノマーまたはイオンモノマーの塊状または水溶液中での重合に際して形成される極性の高い媒質中では、遷移金属錯体は配位子を失うか、あるいは結合している配位子の結合強度が弱くなる可能性があり、いずれの場合もCuIからCuIIとCu0への不均化のような不均化反応が起きると思われる(試験規模の反応ではCu0の出現は容易にはみられず、CuII種の強い色により遮蔽される)。
【0044】
Navan, N., et al., Inorg. Chem., 38, 3484-88(1999)に、このような不均化反応を抑制するためにはCuI錯体がCuII錯体より著しく安定な配位子を用いる必要があると指摘されている。Datta, D., Ind. J. Chem., 26A, 860(1987)には、方程式2.0に定めるように、媒質の極性がCuIの不均化平衡定数に影響を及ぼすもうひとつの重要な因子であることが示されている。
【0045】
【数4】

【0046】
溶媒の極性εの低下に伴って下記の順にlogKdispが低下することが示された:水(ε=78.54)logKdisp=6.00[Fenwick F., J. Am. Chem. Soc., 48, 860(1926)]、メタノール(ε=32.63)logKdisp=3.55およびエタノール(ε=24.33)logKdisp=0.55[Randles, J. E. B., J. Chem. Soc., 802(1941)]、ならびにアセトン(ε=20.70) logKdisp=−1.50[Coetzee, J. F., Siao W., Inorg. Chem., 2, 14(1963)]。溶媒−容質相互作用が純粋に静電性のものであると仮定すれば、溶媒極性に対するこの強い依存性はBorn溶媒和モデルを用いて説明できる。
【0047】
CuIを優先的に安定化する配位子、たとえば2,2’−ビピリジル(bpy)の存在下ですら、ある種の塩(無機モノマーを含む)を水性系に添加すると著しい不均化がみられる(たとえば高濃度のモノマー、2−トリメチルアンモニオエチルメタクリラートトリフラート)−これらのイオン種は系の極性を著しく高め、したがってKdispを高める可能性がある。本発明者らは、このような場合、ATRP反応を触媒しうる遷移金属錯体を得るためには不均化反応を抑制すべきであり、これはCuI触媒錯体を安定化しうる大過剰の配位子の添加により達成できると提唱する。媒質の極性を高める化合物が存在しない場合、bpyを配位子として水溶液中に用いると不均化はみられない。
【0048】
上記の解釈の基礎、およびこれから得られる本明細書に教示する方法、すなわち極性の高い媒質中で遷移金属仲介による制御重合を実施する方法は、両方の銅イオンと錯形成する配位子L(配位子として機能しうる数種類の分子を添加する場合も考慮する)の存在下での不均化反応を考察することにより達成できる。これを下記のように模式的に表わすことができる:
【0049】
【数5】

【0050】
上記スキームにおいて、Kdispは副反応がない状態での不均化平衡定数であり、βIiおよびβIIjはそれぞれ配位子Lを含むCuIおよびCuII錯体の全安定度定数である。
次いで条件付き不均化定数Kdispを導入する。これは下記に述べられた他の条件付き平衡定数と類似する:Schwarzenbach, G., Die Komplexometrische Titration,第2版,編者F.Enke,シュツットガルト, 1956; Ringborn, A., J. Chem. Educ., 35, 282-88(1958);Flaschka, H. A., EDTA Titrations, Pergamon, ニューヨーク, 1959, 4章;Ringborn, A., Complexation in Analytical Chemistry, Interscience, ニューヨーク, ロンドン, 1963;Ringborn, A., Harju L., Anal. Chim. Acta, 59, 33-47; 49-58(1972); Ringborn, A., Still E., Anal. Chim. Acta, 59, 143-6(1972);およびSmith, R. M., Martell, A. E., Critical Stability Constants, Vol.2: Amines, Plenum, ニューヨーク, 1975。これはすべての銅種の全平衡濃度、すなわちその系内に存在する遊離イオンおよび銅錯体の濃度の和により得られる。したがって下記のように表わすことができる:
【0051】
【数6】

【0052】
次いで、錯形成副反応に関与する銅種のα−係数(これらの反応の有意性を示す)を下記のように定めることができる:
【0053】
【数7】

【0054】
【数8】

【0055】
これらを用いて条件付き不均化定数Kdisp*を下記のように書き直すことができる:
【0056】
【数9】

【0057】
上記の関係は、配位子Lが高酸化状態の銅イオンより低酸化状態の銅イオンと安定な錯体を形成すれば不均化反応を大幅に抑制できることを明らかに示す。これは、適宜な配位子を適宜な濃度で用いてこの平衡を目的どおりに“調整”できることも証明する。配位子がCuIまたはCuIIのいずれかに強く結合するのでない場合ですら、それが大過剰に存在する場合、たとえばそれを溶媒として添加できる場合、あるいは実際にそれが重合反応のモノマーである場合には、比率αII/(αI2が1よりはるかに小さければ、やはり不均化を有意に抑制できる点に注目すべきである。極性モノマーまたはイオンモノマーの制御ATRPについて達成された限定された成功は、モノマーまたは高分子開始剤がCuI種と錯体を形成しうる場合に達成された。
【0058】
次いで、系内に2種類の配位子LとMが存在する場合について考察する。ここで錯体の全安定度定数をβIi,L(i=1,2,...,m)、βIIj,L(j=1,2,...,n)(それぞれ配位子LのCuIおよびCuII錯体について)、βIk,M(k=1,2,...,p)、およびβIIl,M(l=1,2,...,q)(それぞれ配位子MのCuIおよびCuII錯体について)と表示する。この場合も、両配位子LおよびMのCuIおよびCuII両方についてα−因子を使用でき、各酸化状態の銅についてα−係数は両配位子の係数の和から1を引いたもの、すなわち下記のものである[Ringborn, A., Complexation in Analytical Chemistry, Interscience, ニューヨーク, ロンドン, 1963]:
【0059】
【数10】

【0060】
条件付き不均化定数は前記(方程式2.4)と同じく、ただし新たなα−係数の定義を用いて表わすことができる。
以上に概説した方法を2より多い副反応(すなわち2種類を超える配位子が存在する)に拡張できる;それぞれの種(CuIまたはCuII)についてのα−係数が(すべての副反応のα−係数の和)−(これらの反応の数)+1である点に注意しさえすればよい。
【0061】
具体例
具体例1.
0.1Mピリジン(bipy型配位子のモデル)の存在下で銅種についての不均化平衡定数がどれだけ低下するかの測定を考慮できる。CuIのピリジン錯体の全安定度定数は、βI1=6.92×104、βI2=3.89×107、βI3=1.51×108、およびβI4=3.31×108であり、CuII−錯体の全安定度定数は、βII1=3.63×102、βII2=2.82×104、βII3=5.01×105、およびβII4=3.16×106である[Smith, R. M., Martell, A. E., Critical Stability Constants, Vol.2: Amines, Plenum, ニューヨーク, 1975]。
【0062】
前記のデータから、方程式2.1と2.4を用いてCuIおよびCuIIのα−係数を計算できる;それらはそれぞれαI=5.80×105およびαII=1.14×103である。したがって、配位子がこの濃度であれば、CuIIよりCuIの方と安定な錯体が形成され、不均化定数はファクター(αI2/αII=2.95×108だけ低下する。
【0063】
具体例2.
2種類の配位子を含有する錯体の形成を考慮しさえすれば、0.1Mエチレンジアミン(en)(線状アミンベースの配位子のモデル)の存在下で銅種についての不均化平衡定数がどれだけ変化するかも測定できる。CuIのen錯体の全安定度定数はβI2=1.58×1011であり、CuII錯体の全安定度定数はβII2=1.10×1020である[同様にSmith R. M., Martell, A. E., Critical Stability Constants, Vol.2: Amines, Plenum, ニューヨーク, 1975からのデータ]。CuIおよびCuIIのα−係数はそれぞれαI=1.58×109およびαII=1.10×1018である。CuIよりCuIIの方と安定な錯体を形成する配位子、すなわち添加したenがこの濃度であれば、不均化定数はわずかファクター(αI2/αII=2.27だけ低下する。言い換えると、enをモデルとするタイプの配位子の添加は不均化反応に有意の影響を及ぼさない。
【0064】
これら2つの具体例から、水性媒質中で実施される重合に過剰のPMDETA(enと類似の挙動)を添加しても不均化反応に有意の影響を及ぼさないが、過剰のbpyの使用は強い影響をもちうると結論できる。残念ながらbpyは水性媒質中できわめて溶解性ではない。ただしピリジンは可溶性であり、ピリジンを溶媒または反応混合物成分として用いて不均化反応を抑制する作用を及ぼすことはできる。
【0065】
具体例3および4.
CuIと錯形成しないイオンモノマーを含む系に本発明を適用する例として、カチオンモノマーTMAEMTを含有する2つの混合物を調製した。酸化を最小限に抑え、有意量の不均化が起きてCuII錯体が急速に生成するかどうか明瞭に示されるように、両実験ともきわめて慎重な脱泡を行った(最高10回の凍結−吸引−融解サイクル)。第1反応媒質はメタノールと水の混合物を溶媒として含有し、第2反応媒質は同量のピリジンと水を含有していた。CuCl/bpy(1:20)を両混合物に添加すると、前者の場合はきわめて急速な不均化がみられ(緑色溶液が生成し、Cuの沈殿が生じた)。一方、第2のピリジン含有溶液の場合、錯体は褐色溶液を形成し、1週間以上安定であることが認められた。これは不均化の低下を明瞭に示し、ATRPに用いる触媒が本発明により安定化されることを強く示す。
【0066】
きわめて類似する挙動が、アニオン官能基を含むATRP“困難な”他の水溶性モノマー、たとえば4−スチレンスルホン酸ナトリウムにみられる。これは本発明以前にはATRPにより重合できなかったものである。
【0067】
CuIよりCuIIの方と有意に安定な錯体を形成する他の水溶性モノマーはビニルイミダゾールである。配位子または代替配位子を添加しない状態では、この場合も触媒の不均化が著しい問題であろうと予想できる。重合を可能にするためには、CuIを安定化するドナー溶媒(または代替配位子)を反応媒質への添加剤として用いなければならない。
【0068】
本来遷移金属と錯形成しない広範な一群の極性モノマー及びイオンモノマーの例であるモノマーには、2−DMAEMA、2−HEMA、4−ビニル安息香酸ナトリウム、ポリ(エチレングリコール)メタクリラートモノメチルエーテル、およびメタクリル酸ナトリウムが含まれる。したがって、銅種と相互作用しないだけでなく、媒質の極性をも著しく高め、このため特に水性系では触媒の不均化を起こしやすいイオンモノマーの重合方法を教示する。過剰の配位子または代替配位子、たとえばピリジンを添加すると、遷移金属錯体は金属仲介によるリビングラジカル重合に必要な2つの酸化状態で存在することができる。
【実施例】
【0069】
実験の部
アジド中間体の合成
実施例1.
2−アジドエタノール
アジド含有開始剤を製造するための最初の方法は、ATRPにより製造したポリマー上の末端基にある臭素の変換に適することが示されている化学的方法で“標準”開始剤中の臭素原子を直接置換するものであった。この直接法では、完全転化がGCにより確認されたが、開始剤抽出後の単離収率が低かった。2−アジドエタノールは水溶性であると思われる。
【0070】
別法は、トリメチルシリルアジドをテトラヒドロフラン溶液中でフッ化テトラブチルアンモニウムおよびフッ化カリウムの存在下に用いて実施された。この方法では2−アジドエタノール生成物が形成されたが、反応速度は文献記載よりはるかに小さいことが認められ、生成物は付随するフッ化テトラブチルアンモニウムを少量含有していた。
【0071】
第3の方法では水中の相間移動触媒を用い、同様にGC分析は100%の転化率および副生物がないことを示したが、2−アジドエタノールは低い単離収率で得られた。
実施例1a.
ナトリウムアジドを用いる2−アジドエタノール合成
【0072】
【表1】

【0073】
極性溶媒DMFまたはDMSO中で反応を実施した。両例とも生成物は少量の溶媒を含有していた。DMSO/DMF中の0.5M NaN3溶液に2−ブロモエタノールを添加し、反応混合物を室温で一夜撹拌した。次いで水およびエーテルを添加し、層を分離し、有機層を水で抽出した。有機層をMgSO4で乾燥させ、次いで溶媒を蒸発させた;
1H−NMRおよびFT−IRにより特性解明する;
1H−NMR:δ:3.81(t,2H);3.41(t,2H);2.75(s,1H);
FT−IR:cm-1:3550−3100(b);2110(s)。
【0074】
実施例1b.
トリメチルシリルアジドを用いる2−アジドエタノール合成
【0075】
【表2】

【0076】
乾燥丸底フラスコに2−ブロモエタノール、トリメチルシリルアジドおよびフッ化カリウムを窒素下で装入した。この混合物に、フッ化テトラブチルアンモニウム溶液を添加した。2日間撹拌した後、反応混合物をエーテルで希釈し、沈殿を濾別し、溶媒を蒸発させた。生成物は2−アジドエタノールのほかに少量のテトラブチルアンモニウム化合物を含有していた。2−アジドエタノールの生成を1H−NMRにより確認した;δ:3.81(t,2H);3.41(t,2H);2.75(s,1H)。
【0077】
実施例1c.
相間移動触媒を用いる2−アジドエタノール合成
【0078】
【表3】

【0079】
成分を25mlの丸底フラスコ内で混合し、室温で撹拌した。転化率をGC分析により測定する。2日後、転化率は99%である。水およびエーテルを添加し、有機層を水で抽出し、次いでMgSO4で乾燥させ、溶媒を蒸発させる。橙色の液体が得られる。これはわずかに粘稠である。生成物は少量のテトラブチルアンモニウム化合物を含有し、収率は40%である。
【0080】
実施例2.
2−アジド−1−メチルエタノールの合成
【0081】
【化1】

【0082】
用いた方法は、最初はエポキシド(特にCHO)とナトリウムアジドの反応について記載されたものである(J. Org. Chem., 1999, 64, 6094)。条件を改変し、代表的実験では2.06ml(2.94*10-2mol)のプロピレンオキシドを、水15ml中におけるナトリウムアジド4.78(7.35*10-2mol)の溶液に添加した。20時間撹拌した後、生成した2−アジド−2−メチルエタノールを10mlのエーテルで2回抽出し、次いで塩を添加し、10mlのエーテルでさらに3回、10mlの塩化メチレンで5回の抽出を繰り返した。濾過した溶液を採集し、MgSO4で乾燥させた。次いで溶媒を真空下に、まず室温で除去する。1.4g(1.386*10-2mol);収率:47.15%。
【0083】
実施例3.
2−アジドエチル2−ブロモプロピオネート(アゾ開始剤1)の合成
【0084】
【表4】

【0085】
塩化メチレン中、0℃で合成を実施した。塩化メチレン中の2−ブロモプロピオニルブロミド溶液を、塩化メチレン中の2−アジドエタノール混合物に滴下し、生成した臭化水素酸を中和するためにトリエチルアミンを添加した。室温で一夜撹拌した後、水を添加し、有機層を水で3回抽出し、次いで有機相を乾燥させ、溶媒を蒸発させた。生成物は副生物の混合物であり、シリカゲルカラムで分離して純粋な2−アジドエチル2−ブロモプロピオネートにしなければならなかった。1H−NMRおよびFT−IRにより特性解明した;
【0086】
【化2】

【0087】
実施例4.
エチル2−ブロモ−2−メチルプロピオネートおよびナトリウムアジドから水中で相間移動触媒としてテトラヘキシルアンモニウムブロミドを用いるエチル2−アジド2−メチルプロピオネートの合成
有機ハロゲン化物と金属アジドを相間移動触媒、たとえばアンモニウム塩[2−4,6]またはPEG誘導体の存在下でSN−反応させることによる有機アジドの合成は、広く利用される方法である(この反応には比較的大量の相間移動触媒を用いた。ハロゲン化アルキルが加水分解しやすい可能性のある場合にはこれが推奨される)。1.9602g(10.06mmol)のエチル2−ブロモ−2−メチルプロピオネート、0.9769g(15.03mmol)のナトリウムアジド、および0.8057g(1.85mmol)のテトラヘキシルアンモニウムブロミドを10mlの水と混合した。得られた混合物を室温で20時間撹拌した(反応の進行をGCで追跡し、20時間後、反応物中にエチル2−ブロモ−2−メチルプロピオネートの残留はみられなかった)。次いでエチル2−アジド−2−メチルプロピオネート生成物をエーテル(3×20ml)で抽出し、エーテル溶液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、エーテルを真空下で蒸発させた。収率は定量的である。
【0088】
実施例5.
エチル2−ブロモ−2−メチルプロピオネートおよびナトリウムアジドから水中で相間移動触媒として硫酸水素テトラブチルアンモニウムを用いるエチル2−アジド−2−メチルプロピオネートの合成
より低価格で有機溶媒中での溶解度がより低い相間移動触媒である硫酸水素テトラブチルアンモニウムを用いて、エチル2−アジド−2−メチルプロピオネートを合成した。3.9094g(20.04mmol)のエチル2−ブロモ−2−メチルプロピオネート、1.6265g(25.02mmol)のナトリウムアジド、および1.6986g(5.00mmol)の硫酸水素テトラブチルアンモニウムを15mlの水と混合した。エチル2−ブロモ−2−メチルプロピオネートの転化率をGCで追跡した。39時間後、反応が完了した。この混合物に10mlの水を添加し、得られたエチル2−アジド−2−メチルプロピオネートをエーテル(3×20ml)で抽出した。エーテル溶液を合わせて硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を回転蒸発器により除去した。エチル2−アジド−2−メチルプロピオネートの収量は2.815g(17.8mmol、すなわち88.8%)であった。このエステルをIRおよび1H−NMR分光法により特性解明した。NMRスペクトルは下記の信号を含む(δ,ppm):1.66(t,3H)、1.74(s,6H)および4.12(q,2H)(比較として、エチル2−ブロモ−2−メチルプロピオネートのスペクトルは1.31(t,3H)、1.92(s,6H)および4.23(q,2H)の信号を含む)。
【0089】
実施例6.
単官能性開始剤の合成:モノメチル化PEG(Me1PEG)(分子量550)とブロモイソ酪酸(BiBA)のエステル(これは両親媒性ブロックコポリマーまたは水溶性ブロックコポリマーの製造のための水溶性高分子開始剤とみなすことができる)
PEGと2−ブロモ−および2−クロロプロパン酸のエステルを、対応する酸塩化物から出発して4−ジメチルアミノピリジン(4−DMAP)およびトリエチルアミンの存在下に塩化メチレン中で製造することが文献に記載されている[Jankova,K., Chen,X. Kops,J., Batsberg,W., Macromolecules, 31, 538-41(1998)]。しかしこの反応は、すべての化学物質を慎重に乾燥させることを必要とする。ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を触媒量の塩基(たとえば4−DMAP)の存在下に塩化メチレン中で縮合剤として用いると、カルボン酸とアルコールのエステル化反応を室温で比較的短い反応時間実施して容易に高収率を達成できるという報告が文献に多数ある[Neises,B., Steglich,W., Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 17, 522-4(1978);Hassner,A., Alexanian,V., Tetrahedron Lett., 46, 4475-8(1978)]。この反応を用いてMe1PEGとBiBAのエステル化を実施すると、高収率でエステルが得られた。
【0090】
実施例7.
3.3480g(20.05mmol)のBiBAを30mlの塩化メチレンに溶解した。この溶液に、撹拌しながら、11.07g(20.13mmol)のMe1PEG(分子量約550g/mol)を添加し、次いで4.1342g(20.04mmol)の固体DCCを添加した。DCC添加のほとんど直後にジシクロヘキシルカルボジイミドの沈殿が生じた。フラスコを氷水浴に入れ、0.113g(0.92mmol)の4−DMAPを添加し、混合物を冷却浴内で約5分間撹拌した。フラスコを室温に高め、5時間撹拌した。沈殿したジシクロヘキシルカルボジイミドを濾過し、フィルター上で合計約130mlの塩化メチレンにより十分に洗浄した(乾燥後、その重量は4.1913g、すなわち18.68mmolであった。これはDCCの転化率93.22%に相当する)。次いで、溶液と洗液を合わせたものから回転蒸発器により溶媒を除去した。少量の固体沈殿を含有するわずかに黄色味を帯びた油が得られた。次いで、このエステルを凍結および室温に高める操作を、結晶がそれ以上分離しなくなるまで数回行った。次いでそれを濾過すると12.8362g(91.6%)の収量が得られた。このエステルをIR(1720cm-1に強い吸収、3600〜3200cm-1に吸収なし、または有意でない吸収)および1H−NMR(δ:1.93,3.38,3.65および4.32ppm−相対強度約6:3:54:2の信号;2.17ppmにアセトンの比較的強い信号もみられた)分光法により特性解明した(比較として、最初のMe1PEGの1H−NMRスペクトルは3.39および3.65ppmに相対強度3:63の2つの信号を含む)。
【0091】
実施例8.
ポリエチレングリコールベースのアジド高分子開始剤Me1PEG−OOC−C(N3)Me2の合成:分子量=661g/mol(アゾ開始剤2)[参照:Pfaender,H.R., Weiner,V., Synthesis, 1345(1996)]
試薬/条件;3.4998gのMe1PEG−OOC−C(Br)Me2:分子量=699(5mmol);0.6501gのNaN3(10mmol);0.1602gのBu4NBr(0.5mmol);温度:85℃。混合物を27時間撹拌し(25時間後に反応完了;1H−NMRに基づく)、冷却し、20mlのエーテルで抽出した。溶液を濾過し、塩類を再び20mlのエーテルで抽出した。溶液を合わせたものから溶媒を蒸発させた。収量:2.924g(88.5%)。イソブチラート部分からの2つのメチル基の一重線が1.47ppmにあり、これは出発臭素化合物については1.93ppmにある。IRスペクトルには約2100cm-1に信号がみられる。IRスペクトルに基づけば、この化合物はある量のMe1PEGを含むと示唆できる(あるいはそれは少量の水分を含む可能性もある)。
【0092】
実施例9.
1−アジド−1−フェニル酢酸メチル(アゾ開始剤3)の合成
開始剤1は水溶液中でのDMAEMAのATRPに有効であることが示されている。したがって類似の構造2をもつ開始剤である1−アジド−1−フェニル酢酸メチルを合成し、それをこのモノマーの制御重合に使用できるか調べるのは妥当であった。開始剤2を下記のスキームに従って合成した:
【0093】
【化3】

【0094】
2.2908g(10mmol)の1、0.8137g(12.5mmol)のナトリウムアジド、および0.8500g(2.5mmol)の硫酸水素テトラブチルアンモニウムを7.5mlの水と混合した。混合物を室温で39時間撹拌し、反応終了時に5mlの水を添加し、続いてエーテル(3×10ml)で抽出した。エーテル溶液を合わせて硫酸ナトリウムで乾燥させ、エーテルを回転蒸発器により除去した。収量1.3383g。
【0095】
ポリマーの合成
アジド末端基をもつテレケリックポリマー、および十分に確定したブロック−およびグラディエント/ランダムコポリマーの製造の例として、アジド官能基付き開始剤;2−アジドエチル2−ブロモイソプロピオネート;α−メチルベンジルアジド;およびエチルアジドイソブチラートを、まずスチレン、MIMAおよびアクリル酸n−ブチルの制御重合に用いた。スチレン重合に用いた開始剤はα−メチルベンジルアジドであり;メタクリル酸n−ブチルの重合にはエチルアジドイソブチラートを開始剤として用いた。開始剤エチルアジドイソブチラートは前記のように相間移動触媒を用いて製造された。重合は成功し、次いでこれらのアゾ開始剤を用いてより高官能性のモノマーを重合させた。
【0096】
実施例10.
2−アジド−1−メチルエチル−2−ブロモプロピオネートを用いるスチレンの重合
反応条件:St/CuIBr/POAZBP−1/PMDETA=200/1/2/1。温度:90℃。重合は制御様式で進行し、転化率が時間と共に直線的に増大し、分子量が転化率と共に増加し、狭い分子量分布が維持された。260分後の収率=75.39%;Mn=5219;PDI(多分散度)=1.21。
【0097】
反応比:St/CuIBr/POAZBP−1/PMDETA=200/1/2/1の場合、20時間後の収率=98.52&;Mn=32,837;PDI=1.19。
反応比:St/CuIBr/POAZBP−1/PMDETA=400/1/2/1の場合、20時間後の収率=94.34%;Mn=26,693;PDI=1.15。
【0098】
実施例11.
α−メチルベンジルアジドを用いるスチレンの重合
はるかに低い目的分子量を目標として、α−メチルベンジルアジド(α−MBA)を用いるスチレンの重合を実施した。この実験および下記の実験の意図は、それらの末端基をMALDIにより分析できるポリマーを得ることであった。1つの実験は塩化銅(I)ベースの触媒系を用い、他の1つはヘキサフルオロリン酸銅(I)を用いて行われた。
【0099】
(比較例)開始剤としてのCuPF6/dNBpyの存在下でのスチレン(Sty)とα−MBAの塊状ATRP(nvt−sty5)。スチレン−5ml;CuPF6.4MeCN−0.2031g(0.545mol);dNbpy−0.4455g;α−MBA−80μl;目標DP=80。温度:90℃。
【0100】
混合物を10mlのシュレンク(Schlenk)フラスコ内で撹拌した。反応速度の結果および得られた分子量の結果は、重合がきわめて急速で良好な制御が得られないことを示す。PDIは2の範囲。
【0101】
実施例12.
開始剤としてのCuCl/dNBpyの存在下でのスチレン(Sty)とα−MBAの塊状ATRP(nvt−sty6)。スチレン−5ml;CuCl−0.0546g;dNbpy−0.4455g;α−MBA−80μl;目標DP=80。温度:90℃。
【0102】
混合物を10mlのシュレンクフラスコ内で撹拌した。反応速度の結果および得られた分子量の結果は、実施例11のようにCuPF6を触媒として用いた場合より重合速度がはるかに小さく、PDIが低いことを示す。生成ポリマーの多分散度は平均1.5であった。
【0103】
実施例13.
2−アジド−1−メチルエチル2−ブロモプロピオネート(POAZBr)を開始剤として用いるMIMAの重合。供給材料:MIMA:CuBr:POAZBr:BiPy=100:1:2:1。反応時間:1時間;反応温度=60℃。収率:78.3;Mn=44,070;PDI=1.29。
【0104】
水溶性ブロックコポリマー
実施例14.
Me1PEGと2−クロロプロピオン酸(2−CPA)のエステル(nvt−peg4)の合成
この合成には、DCCおよび4−ジメチルアモニウムピリジン(4−DMAP)の存在下での2−CPAとMe1PEG(分子量550g/mol)の反応を用いた。この開始剤は、アクリラートおよびスチレンから誘導されたイオンモノマー、たとえば4−スチレンスルホン酸ナトリウムおよび4−ビニル安息香酸ナトリウムの水性重合に用いられる。これは、加水分解に対して対応する臭素誘導体より安定であると予想されるからである。
【0105】
2.1765g(20mmol)の2−CPAおよび11.07g(20.1mmol)のMe1PEG(分子量約550g/mol)を、30mlの塩化メチレンに添加し、溶解させた。混合物を氷水浴に浸漬し、撹拌しながら4.133g(20mmol)の融解DCCを添加し、ビーカーを約5mlの塩化メチレンですすぎ、これも反応混合物に添加した。DCC添加のほとんど直後にジシクロヘキシルカルボジイミドの沈殿が生じた。次いで0.11g(0.92mmol)の4−DMAPを添加し、混合物を冷却浴内で約5分間撹拌した。次いで混合物を室温で5時間撹拌した。沈殿したジシクロヘキシルカルボジイミドを濾過し、フィルター上で合計約80mlの塩化メチレンにより十分に洗浄した。乾燥後、生成物の重量は4.292g、すなわち19.1mmolであった。これはDCCの転化率95.4%に相当する。溶液と洗液を合わせたものから回転蒸発器により溶媒を除去した。少量の固体沈殿を含有するわずかに黄色味を帯びた油が得られた。次いで、このエステルを凍結および室温に高める操作を、結晶がそれ以上分離しなくなるまで数回行った。次いでそれを濾過した;収量:11.512g(17.97mmol,89.9%)。このエステルをIR(1720cm-1に強い吸収、3600〜3200cm-1に有意でない吸収)および1H−NMR分光法により特性解明した。
【0106】
実施例15.
Me1PEGと2−ブロモプロピオン酸(2−BPA)のエステル(nvt−peg5)の合成
3.0632g(20mmol)の2−BPAおよび11.08g(20.1mmol)のMe1PEG(分子量約550g/mol)を、30mlの塩化メチレンに添加し、溶解させた。混合物を氷水浴に浸漬した。次いで撹拌しながら4.131g(20mmol)の融解DCCを添加し、この試薬のビーカーを約5mlの塩化メチレンですすぎ、これも反応混合物に添加した。DCC添加のほとんど直後にジシクロヘキシルカルボジイミドの沈殿が生じた。次いで0.11g(0.92mmol)の4−DMAPを添加した後、混合物を冷却浴内で約5分間撹拌した。次いで混合物を室温で5時間撹拌した。沈殿したジシクロヘキシルカルボジイミドを濾過し、フィルター上で合計約80mlの塩化メチレンにより十分に洗浄した(乾燥後、その重量は4.422g、すなわち19.7mmolであった。これはDCCの転化率98.5%に相当する)。次いで、溶液と洗液を合わせたものから回転蒸発器により溶媒を除去した。少量の固体沈殿を含有するわずかに黄色味を帯びた油が得られた。次いで、このエステルを凍結および室温に高める操作を、結晶がもはや分離しなくなるまで数回行った。次いでそれを濾過した;収量:12.425g(18.14mmol,90.7%)。このエステルをIR(1726cm-1に強い吸収、3600〜3200cm-1にごく弱い吸収)および1H−NMR分光法(δ:1.87(d),3.36(s),3.67,4.32(t)および4.41(q)ppm−相対強度約3:3:58:2:1の信号;5.30ppmに塩化メチレンの信号もみられた)。
【0107】
実施例16.
DMAEMAのATRPに用いるポリ(HEMA)ベース高分子開始剤(nvt−hema35)の製造
HEMAの重合を水−メタノール混合物中で実施した。このモノマーとポリマーの両方がメタノールに可溶性であるが、ポリマーは水に溶解しないからである。分子量をNMRにより分析できるポリマーを製造するために、PEGベースの高分子開始剤を用いた。触媒はCuBr/bpyであった。反応は30℃および室温ですらきわめて速いことが分かったので、重合の速度を低下させて制御を改善するために種々の量のCu(II)を添加した。銅の全量を一定に維持した。
【0108】
大量のポリ(HEMA)ベース高分子開始剤(DP=100(目標))を、DMAEMAで連鎖延長するために製造した。
試薬:
CuCl−0.2246g
CuCl2−0.2494g(銅全量の45%)
Bpy−1.2878g
HEMA−50ml(53.65g)
MeOH−35ml、水−15ml
MePEGBiB(分子量699g/mol)−2.25ml
DP(目標)−100
T=35℃。
【0109】
【表5】

【0110】
ポリマーをメタノールに溶解し、この溶液を塩基性アルミナのカラムに通し、こうして得た透明な溶液を濃縮し、大過剰のエーテル中でポリマーを沈殿させることにより精製した。精製後、ポリマーの分子量は12.43kg/molと測定された(溶離剤DMF;ポリ(MIMA)標準品に対して);PDI=1.18。
【0111】
実施例17.
水溶液中でのHEMAおよびDMAEMAのブロックコポリマーの製造
ポリ(HEMA)高分子開始剤から出発し、HEMAの重合の場合と同じ条件を第2モノマーDMAEMAの重合に適用した。反応はHEMAの重合より低速であったが、低いPDIのブロックコポリマーが製造された。
【0112】
試薬:
ポリ(HEMA)の分子量=4.420kg/mol−0.176g
1.4mlのメタノール、0.6mlの水
この溶液をF−P−T(凍結−吸引−融解)4回により脱泡し、次いで凍結混合物に触媒を添加した:
CuCl−0.0027g
CuCl2−0.0016g(銅全量の30%)
Bpy−0.0124g
温度=35℃。
【0113】
【表6】

【0114】
実施例18.
PEGベース高分子開始剤を用いるDMAEMAのホモ重合試験[PEG−b−DMAEMAの形成]
分子量分布を制御するために、MePEGベース高分子開始剤を用い、水とDMFの混合物中で種々の濃度のCu(II)を添加してDMAEMAを重合する幾つかの試みを行った。転化率はすべてGCにより、DMFの信号を内標準として用いて容易に測定できる。分子量はGPCにより、DMF中の50mM LiBrを溶離剤として用いて測定された(pMMAに対して)。
【0115】
水−DMF混合物(1:1)中、25℃で、CuCl(およびCuCl2)/bpy錯体を触媒として用いて最初の反応を行った。反応は速やかであったが、Cu(II)添加量に関係なく、速度に著しい違いはなかった。この結果は反応媒質中での銅錯体の溶解速度が小さいためであることが分かった−分析のために採取したすべての試料に常に若干の不溶錯体が残っていた。しかし、わずかに多量の水を含有する溶媒中で実験を実施し、かつ触媒が確実に完全に溶解するように開始剤の添加前に反応混合物を撹拌すると、重合に添加するCu(II)量と反応速度の間に良好な関係がみられた。すべての場合、転化率に伴って分子量が顕著に増加し(最高約8000g/molに増加)、ポリマーの多分散度は1.4〜1.6であった。これは最初の実験よりはるかに良好である。
【0116】
アゾ開始剤2を用いるジメチルアミノメタクリラートの重合
この実験はアゾ開始剤2(前記参照)を用いて実施された。3.5mlのDMAEMA(3.266g;20.77mmol)、0.0204gのCuCl(0.206mmol)および0.0646gのBipy(0.416mmol)を混合し、10分後、水3.5ml中の開始剤(0.1359g;0.206mmol)溶液を添加した。20℃では反応速度が小さすぎたので、この温度で2時間後、温度を60℃に高めた。1時間で約11%の転化率が達成され、得られたポリマーの分子量は990g/mol(理論値:約1700g/mol)およびPDIは1.04であった。重合速度は臭素ベース開始剤(構造式1)の場合より小さかった。これは、この開始剤を荷電モノマーの重合に利用できることを示唆した。
【0117】
実施例19.
ジメチルアミノメタクリラートの重合
7mlのDMAEMA(6.531g;41.5mmol)、0.0206gのCuCl(0.208mmol)および0.0658gのBiPy(0.421mmol)を混合し、10分間撹拌した。透明な褐色の溶液が得られた。この溶液に、水7ml中における0.1355g(0.205mmol)のアゾ開始剤2の溶液を添加した。実験の温度を55℃に維持した。重合の進行を表7に示す。
【0118】
【表7】

【0119】
イオンモノマーの重合
実施例20.
アゾ開始剤2を用いる4−ビニル安息香酸ナトリウムの重合(これも水溶性ブロックコポリマーの製造である)
4−ビニル安息香酸(VBA)ナトリウム塩の水性ATRPは周囲温度ですら反応速度が大きいと報告されている。NaVBAを水中で重合する実験を行った。触媒は、0.0100gのBiPy(0.064mmol)を水0.25ml中の0.0047gのCuBr(0.033mmol)に添加することにより形成された。次いで0.5068g(3.42mmol)のVBAを1.7M水酸化ナトリウム水溶液2.5ml(全4.28mmolのNaOH)に溶解して添加し、最後に、0.0933g(0.133mmol)のブロモイソ酪酸Me1PEGエステル(分子量約699g/mol)開始剤を1mlの0.2M NaOHに溶解した溶液0.25ml(したがって用いた開始剤の量は0.0334mmol)を添加した。混合物を20〜22℃で撹拌した。反応混合物は粘稠になり、10時間後、重合が完了した(NMRによる)。時間に伴う転化率を下記に示す。
【0120】
【表8】

【0121】
実施例21.
水中でアゾ開始剤2により開始する4−ビニル安息香酸ナトリウム(NaVBA)の重合
目標DP=100;4−VBA−0.5017g(3.4mmol);NaOHの1.7M溶液;CuPF6.4MeCN−0.0132g(0.035mmol);BiPy−0.0108g(0.067mmol);アゾ開始剤2(Me1PEGベース)−22μl;60℃。
【0122】
条件は前記の反応と同じであるが、開始剤としてアゾ開始剤2を用いた。この高分子開始剤の溶解度が最終ブロックコポリマーの特性に役割をもつかを調べることが目的であったからである。
【0123】
【表9】

【0124】
重合速度は比較的小さいが、転化率に伴って分子量が増加し、転化率50%未満でもPDIはかなり低い。この結果は、制御重合であることを示唆する。
実施例22.
水中での4−ビニル安息香酸ナトリウム(NaVBA)の重合
目標DP=100;4−VBA−0.5027g(3.4mmol);NaOHの1.7M溶液;CuPF6.4MeCN−0.0121g(0.034mmol);BiPy−0.0110g(0.068mmol);アジド開始剤−5μl;30℃。
【0125】
4−ビニル安息香酸(VBA)をNaOH溶液2ml(少なくとも1時間のパージ)に溶解する。得られた溶液を銅錯体水溶液に添加する。まず固体物質をガス抜きし、次いで0.25mlの脱酸素水および0.05mlのNaOH溶液を添加することにより、触媒錯体溶液を調製した。次いで開始剤を添加する。一定時間後、試料を採取し、0.2mlの試料と5mlの水および数滴のHCl(1:1)を混合することにより重合反応を停止した。沈殿したモノマーおよびポリマーを濾過し、乾燥させた。NMRスペクトル測定のために、重水酸化ナトリウムを添加したD2Oに乾燥試料を溶解した。分子量は幾つかの方法で測定でき、これにはメチルエステルへの変換が含まれる。しかし、最終ポリマーが有意量の試薬および少量の未反応ポリビニル安息香酸を含有するので、この方法は最適ではない。このため、一部の試料のみをDMF中でGPCにより分子量分析した。
【0126】
【表10】

【0127】
分子量はきわめて高いが、得られたポリマーのPDIは中性モノマーDMAEMAの場合よりはるかに良好である。
実施例23.
水中での4−ビニル安息香酸ナトリウム(NaVBA)の重合
目標DP=100;4−VBA−0.5027g(3.4mmol);NaOHの1.7M溶液;CuPF6.4MeCN−0.0123g(0.034mmol);BiPy−0.0113g(0.069mmol);アジド開始剤−5.2μl;50℃。
【0128】
実験条件は実施例24の場合と同じであったが、重合速度を高めるために温度を高めた。結果は、この例では重合が既にかなり速やかであることを示す。
【0129】
【表11】

【0130】
星印を付けた数値は、純粋な酸をDMFに溶解し、GPCに直接注入した場合に得られた。これはこの実験で分析した最終試料であり、メチルエステルへの変換が不必要であることが証明された。これは、エステル変換後に測定したPDIおよび分子量はおそらく信頼性がなく、この反応を行わない方が良好な結果が得られることを意味する。
【0131】
実施例24.
水中での4−ビニル安息香酸ナトリウム(NaVBA)の重合
目標DP=100;4−VBA−0.5017g(3.4mmol);NaOHの1.7M溶液;CuPF6.4MeCN−0.0124g(0.036mmol);BiPy−0.0108g(0.067mmol);アジド開始剤−6.5μl;50℃。
【0132】
条件は前記反応の場合と同じであるが、開始剤としてアゾ開始剤3をアゾ開始剤1の代わりに用いる。初期の反応混合物は緑色であり、重合速度の低下が生じたのは偶発的な触媒酸化による可能性がある。この反応をさらに高い温度で繰り返した。
【0133】
【表12】

【0134】
実施例25.
水中でアゾ開始剤3により開始する4−ビニル安息香酸ナトリウム(NaVBA)の重合
目標DP=100;4−VBA−0.5008g(3.4mmol);NaOHの1.7M溶液;CuPF6.4MeCN−0.0132g(0.035mmol);BiPy−0.0108g(0.067mmol);アゾ開始剤3−6.5μl;60℃。
【0135】
条件は前記反応の場合と同じであるが、開始剤として用いたアジド3を実験前に窒素で1時間パージした(前記の場合、開始剤をパージしなかった)。
【0136】
【表13】

【0137】
上記にみられるように、重合は前記のものより速やかであるが、アジド1を用いた反応よりはなお低速である。転化率に伴って分子量が増加する傾向のあることが分かる。
これらの実験の結論として、水中で各種アジドにより開始した重合では、中性モノマーDMAEMAの場合よりはるかに良好な荷電モノマーNaVBAの制御重合が得られる。
【0138】
実施例26.
水中でアジド2により開始する4−ビニル安息香酸ナトリウム(NaVBA)の重合
目標DP=100;4−VBA−0.5031g(3.5mmol);NaOHの1.7M溶液;CuPF6.4MeCN−0.0123g(0.032mmol);BiPy−0.0109g(0.067mmol);アジド2(Me1PEGベース)−23μl;40℃。
【0139】
反応条件は前記反応の場合と同じであるが、アジド2を開始剤として用いた。この開始剤による反応はアジド1により開始した反応より低速であることが示された。反応速度を比較するために、この例では実施例27で用いたものと全く同じ条件を用いた。
【0140】
【表14】

【0141】
アジド3により開始した例より重合速度ははるかに小さい。
カチオン基をもつモノマーの制御重合
実施例27.
2−トリメチルアンモニオエチルメタクリラートメタンスルホナート(アンモニウム1)
3.14g(20mmol)のDMAEMAを30mlのアセトニトリルに溶解し、1.7ml(2.203g,20mmol)のメタンスルホン酸メチルを添加した。混合物を撹拌しながら90℃(還流)に24時間加熱した。反応期間の終了時に混合物は粘稠になり、メタクリラートがある程度重合した可能性が示される。混合物を400mlのエーテルに注入し、沈殿を濾過し、エーテルで洗浄し、次いで真空乾燥させた。得られた塩はきわめて吸湿性である。これは少量のポリマーを含有するので、この合成を重合阻害剤の存在下で再実施し、それを反応後に分離する;収量3.50g(65%)。
【0142】
実施例28.
2−トリメチルアンモニオエチルメタクリラートトリフラート、2−TMAEMT(nvt−amm1)の合成
2−トリメチルアンモニオエチルメタクリラート塩類は、2−DMAEMAおよび強いメチル化剤から合成できる。本発明の実験の目的(ATRP)には、メチル化剤としてヨウ化メチルは適さない。これはヨウ素アニオンを導入するからである。純粋な(すなわち重合阻害剤を含有しないモノマー)2−DMAEMAとメタンスルホン酸メチルをアセトニトリル中で反応させるのは不十分であることを上記に示した。
【0143】
このため別の方法を探索する必要があった。Barneyの特許[Barney,A.L.,USP2,677,679,1954年5月4日(DuPont)]には、2−DMAEMAから2−メタクロイルオキシエチルトリアルキルアンモニウム塩を製造するための各種アルキル化剤が示唆されている。これにはハロゲン化アルキル、スルフェート、スルホナート、ホスフェートおよびホスファイトが含まれるが、実験法は示されていない。ForsheyとKirbyによる他の特許[Forshey,W.O.,Jr., Kirby,J.E.,USP2,680,112,1954年6月1日(DuPont)]では、エーテル中のメチルトシラートまたはブタノン中の硫酸ジメチルを2−DMAEMAのメチル化に用いている。メチルトリフラートは最良のメチル化剤のひとつであることが知られており(メチルトシラートおよびヨウ化メチルより反応性が約104〜105高い[Hansen,R.L., J. Org. Chem., 30, 4322(1965)])、したがってメチル化剤として広く利用されている[Howells,R.D., McCown,J.D., Chem. Rev., 77, 69(1977)]。通常、メチルトリフラートは非求核性非極性溶媒、たとえばベンゼンおよびトルエン中で用いられる。
【0144】
この反応は最終的にはベンゼン中で実施でき、トリフラートアニオンを含む表題アンモニウム塩が実際に定量的な収率で得られた。
【0145】
【化4】

【0146】
100mlの丸底フラスコ内で、2.997g(19.06mmol)の2−DMAEMAを30mlのベンゼンに溶解した。混合物を氷水浴に浸漬し、2.2ml(3.19g,19.44mmol)のTfOMeを添加した(発熱反応)。次いで撹拌バーをフラスコに入れ、還流冷却器を取り付け、混合物を70℃で24時間撹拌した。24時間後、2液相からなる混合物を氷で冷却し、結晶質生成物を濾過により単離した。これをフィルター上で合計100mlのベンゼンにより洗浄し、真空乾燥させると、定量的収率で2−トリメチルアンモニオエチルメタクリラートトリフラートが得られた。クロロホルム中のこの塩のNMRスペクトルは下記の信号を含む:6.14 ppm(d,1H),5.67 ppm(d,1H),4.56 ppm(t,2H),3.82 ppm(t,2H),3.30 ppm(s,9H),および1.93 ppm(s,3H)。溶媒として水を用いるとこの塩のプロトン信号はわずかに上方へシフトする:6.05 ppm(d,1H),5.67 ppm(d,1H),4.55 ppm(t,2H;水の信号と重なる),3.70 ppm(t,2H),3.13 ppm(s,9H),および1.85 ppm(s,3H)。比較すると、2−DMAEMAの2つのメチレン基の信号は4.25 ppmおよび2.62 ppmに出現し、窒素に結合した2つのメチル基の信号は2.32 ppmにある(クロロホルム中のスペクトル)。
【0147】
実施例29.
2−メタクロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムトリフラート、2−MAOETMAT(nvt−amm1−2)の合成
これは前記と同様な合成であるが、反応を室温で(60または70℃でなく)、わずか2時間(10または24時間でなく)実施した。この場合もなお塩の収率はきわめて良好で、塩類は著しく白色の結晶質固体(灰色味を帯びた塩でなく)として得られた。
【0148】
100mlの丸底フラスコ内で、3.5ml(3.27g,0.0208mol)の2−DMAEMAを30mlのベンゼンに溶解した。次いでフラスコをゴム膜で密封し、氷水浴に浸漬した。フラスコをアルミニウム箔で包んで、反応混合物を直射光線から隔離した。撹拌しながら、2.5ml(3.63g,0.022mol)のTfOMeを5分間で少量ずつ添加した。アンモニウム塩が白色固体として沈殿した。次いで混合物を室温でさらに2時間撹拌した。この塩を濾過し、フィルター上で50mlのベンゼンにより洗浄し、真空乾燥した。収量5.90g(0.0184mol;88.5%)。
【0149】
実施例30.
水中、20℃で、塩素含有開始剤nvt−peg4を用いる2−MAOETMATの重合(nvt−ammpol8)[イオンブロックをもつ水溶性ブロックコポリマーの直接製造]
このモノマーの重合は35および50℃ではきわめて速やかであることが示されているが、この実験はより低い温度、すなわち20℃で重合を実施し、さらに”より低速な”加水分解安定性の塩素含有高分子開始剤を用いた。
【0150】
目標DP=100;2−MAOETMAT−0.6426g(2mmol);CuCl−0.0020g(0.02mmol);bpy−0.0061g(0.04mmol);Me1PEG−CP−13.5;反応温度20℃。
【0151】
CuBrおよびbpyを1mlの重水に溶解し(フラスコから酸素を除去した後)、重水(脱酸素)2ml(NaOD溶液0.15mlを含有)中における、4%NaOD溶液0.05mlおよびモノマーの溶液を添加し、最後に開始剤を添加した。試料を定期的に採取して転化率および分子量をNMRにより調べた。しかしこれらの重合条件下での重合はきわめて低速で、18時間後に達した転化率は30%であった。重合中、混合物は明かるい赤橙色であり、完全に均質とはいえなかった(Cu2Oのものと同様な色;これはおそらくpH値が高すぎたことを示唆する。これをより低いpH値で再実施するのはこのためである)。18時間後、反応混合物の色はわずかに緑色であった。
【0152】
【表15】

【0153】
ただし、DP実験値は計算値にきわめて近接していた点に注目されたい。
実施例31.
ヨウ化2−メタクロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、2−MAOETMAI(nvt−amm2)の合成
250mlの丸底フラスコ内で、10ml(9.33g,0.059mol)の2−DMAEMAを20mlのアセトンに溶解した。次いでフラスコをゴム膜で密封し、氷水浴に浸漬した。撹拌しながら、4ml(9.12g,0.064mol)のMeIを10分間で少量ずつ添加した。アンモニウム塩が沈殿して混合物の撹拌が困難となった。このため、10mlのアセトンを添加した。次いで混合物を室温でさらに2時間撹拌した。直射光線を避けるためにフラスコをアルミニウム箔で覆った(2−DMAEMAおよびおそらく対応するアンモニウム塩は露光するときわめて重合しやすい)。白色固体を濾過し、フィルター上でアセトンにより洗浄し、真空乾燥した。収量16.644g(0.0556mol;94.3%)。
【0154】
実施例32.
水中、20℃で、塩素含有開始剤nvt−peg4を用いる2−MAOETMAIの重合(nvt−ammpol9)
この反応は前記ときわめて類似するが、銅に配位する可能性のある対イオンの使用により不都合な影響を受けるか調べるために、モノマーのヨウ素塩を用いた。目標DP=100;2−MAOETMAI−0.5983g(2mmol);CuCl−0.0020g(0.02mmol);bpy−0.0060g(0.04mmol);Me1PEG−CP−13.5;反応温度20℃。
【0155】
CuBrおよびbpyを1mlの重水に溶解した(フラスコから酸素を除去した後)。次いで4%NaOD溶液0.05ml、および重水(脱酸素)3ml(NaOD溶液0.15mlを含有)中のモノマー溶液を添加した。残念ながらこのヨウ化物は水にきわめて易溶性ではないので、大量の溶媒を用いなければならない。この量の水でも、モノマーを溶解するために混合物を加熱する必要がある。この比較的低い反応温度ではモノマーは部分沈殿する可能性がある(反応混合物は混濁していた)。最後に開始剤を添加した。試料を定期的に採取して転化率および分子量をNMRにより調べた。これらの重合条件下での重合はきわめて低速で、18時間後に達した転化率は15%未満であった。重合中、混合物は灰褐色であり、完全に均質とはいえなかった。18時間後、反応混合物の色は前記の反応と同様に明かるい橙色であった。転化率は長い反応時間でもきわめて低く、適切に測定することができなかった。これは、ヨウ化物アニオンが銅に配位したためか、あるいはモノマー濃度が低いためと思われる。
【0156】
実施例33.
MeIによるポリ(DMAEMA)のメチル化試験
DMAEMAを一般的なラジカル重合により重合させ(15mlのDMAEMA、10mlの水、5mlのDMF、および0.0799gのVA−044、70℃)、試料をメチル化した。0.88gのポリ(DMAEMA)を20mlのアセトンに溶解した。混合物は透明ではなかったが、4mlのメタノール添加後、透明な溶液が得られた。直射光線によるヨウ素化合物の光化学的分解を避けるために、フラスコをアルミニウム箔で包んだ。これに1mlのヨードメタンを添加し、反応混合物を室温で5時間撹拌し、沈殿した高分子アンモニウム塩を濾過し、フィルター上でアセトンにより洗浄した。次いでポリマーを乾燥させた。収量1.275g。試料を重水に溶解し、ジュウテリウム化3−トリメチルシリルプロピオン酸ナトリウム塩を内標準として添加し、NMRスペクトルを得た。比較すると、水中のポリ(DMAEMA)の1H NMRスペクトルは下記の信号を含む:δ:0.85−1.25 ppm(3H,CCH3),1.8−2.2 ppm(2H,主鎖からのCH2),2.35 ppm(6H,N(CH32),2.75 ppm(2H,NCH2),および4.18 ppm(OCH2)。図5に示すように、メチル化は完全である−ポリ(DMAEMA)の残留はみられない。2.20 ppmのピークは若干の残留アセトンであり、4.63のピークは水に帰属する。
【0157】
酸性モノマーのATRPのための配位子
実施例34.
酸に対するDMDETSの銅錯体の安定性
メタノール中におけるCuCl2とDMDETSの錯体の、高酸性物質(たとえばTsOH)に対する安定性を調べるために、分光試験を実施した。下記の溶液を調製した:
(A)5mlのMeOH中0.0920gのDMDETS(0.101M);
(B)5mlのMeOH中0.0070gのCuCl2(0.010M)。
【0158】
0.5mlの(A)と5mlの(B)を混合し、混合物を10mlに希釈した。1日間放置した後、10mg(0.053mmol)のTsOH.H2Oを上記溶液5mlに添加した(CuCl2とDMDETSの両方について0.005M;TsOH.H2Oの濃度は0.01M、すなわち酸は銅錯体に比較して過剰である)。TsOHの存在下(CuDMDETS3.1)での溶液のスペクトルは、強酸が存在しない場合(CuDMDETS3.2)と同じであった。これは、錯体がこれらの条件下で安定であることを示す。電子スペクトルの比較を図4に示す。
【0159】
実施例35.
CuCl/DMDETSの存在下でのMMA重合試験
下記の試薬を用いた:
MMA−4ml
ブタノン−2ml
CuCl−0.0182g(0.187mmol)
DMDETS−30μl(0.18mmol)
EbiB−27μl(目標DP=200)
T=70℃。
【0160】
フラスコを油浴に浸漬した後、混合物は乳濁(混濁)し、それから若干のガスが発生しているように見える。重合は20時間後ですら起きなかった。これは、銅錯体が反応媒質に不溶性であるためか、あるいは錯体のレドックス電位のためと思われる。
【0161】
結論として、硫黄ベースの配位子が酸性モノマーのATRPにきわめて有望であると思われる。それら自体が安定であり、酸の存在下でも安定だからである。適切なレドックス電位をもつ錯体を与える適正な配位子を見出すべきであることは明らかである。
【0162】
実施例36.
水−メタノール中でのカチオンモノマー2−TMAEMTのATRP(nvt−ammpol10)
CuCl−0.0044g
CuCl2−0.0026g(全Cuの30%;すなわち3.11×10-5mol)
Bpy−0.0194g
TMAEMT−2g
メタノール−d4−1.5ml,D2O−1.5ml
MePEGBiB(分子量699g/mol)−40μl
DP(目標)−100
T=25℃。
【0163】
モノマーを重水とメタノールの混合物に溶解した。溶液をきわめて慎重に脱泡した(10サイクルのF−P−T)。このモノマーを用いる場合は反応混合物が緑色にきわめて変化しやすいことが知られているからである。混合物を凍結し、フラスコを開け、触媒を添加した。溶液がなお凍結した状態でフラスコをゴム膜で閉じ、密封した。次いで、真空を付与し、そしてフラスコに窒素を戻し充填する操作を、数回繰り返した。しかし、混合物を室温に高めた後、溶液は直ちに緑色に変化した。少量の赤褐色沈殿が生じた(銅)。これは、銅(I)錯体の不均化を示す。
【0164】
実施例37.
水−ピリジン中でのカチオンモノマー2−TMAEMTのATRP(nvt−ammpol12)
CuBr−0.0087g
Bpy−0.0194g
TMAEMT−2g
ピリジン−1.5ml,H2O−1.5ml
MePEGBiB(分子量699g/mol)−40μl
DP(目標)−100
T=25℃。
【0165】
実施例36のものと同じ方法を用いた。溶液は融解後、開始剤の添加後ですら褐色のままであった。予想どおり、ピリジンはCu(I)に対する安定剤としてアセトニトリルより大きな影響をもつ。時間と共に混合物はわずかに緑色味を帯びたが、Cu(I)の褐色はなおみられた。30分後、転化率は98%に達し、DPは101であった(試料を乾燥させ、それらを重水に溶解した後のNMRの結果)。これらの予備試験結果は、前記の理論的考察が正しいことを証明する。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】各種の制御および無制御重合法について、時間に対するIn([M]0/[M])の依存性を示すグラフである。
【図2】理想的な制御重合についての転化率に対する分子量の依存性、ならびに無制御重合プロセスの低速開始、連鎖移動および結合が転化率に対する分子量変化に及ぼす影響を示すグラフである。
【図3】制御重合法により得られるポリマーの例を示す表である。
【図4】DMDETSの銅錯体の電子吸収スペクトルを比較したグラフであり、波長(nm)に対して示す。
【図5】水中におけるメチル化ポリ(DMAEMA)ヨウ素塩の1H NMRスペクトルのグラフであり、ポリ(DMAEMA)のメチル化が完全であることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
初期に、遷移金属錯体およびラジカル移動性アジド基を含む開始剤を含む系の存在下でフリーラジカル(共)重合性イオンモノマーの重合を開始することを含む、ラジカル重合性イオンモノマーを(共)重合するための制御重合方法。
【請求項2】
さらに、非イオンモノマーの重合を開始し、その際、非イオンモノマーに対するイオンモノマーのモル比が0.1モル%より大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
開始剤が高分子開始剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
高分子開始剤が水溶性である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
イオンモノマーがアニオン性である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
イオンモノマーがカチオン性である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
系がさらに溶媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
溶媒が水である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
溶媒の少なくとも一部が遷移金属の少なくとも一部と錯体を形成する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
開始剤が第2官能基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
第2官能基が第一級アジドである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第2官能基がイオン官能基である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
初期に、遷移金属錯体およびラジカル移動性原子または基を含む開始剤ならびに過剰の錯形成していない配位子1種類以上を含む系の存在下でラジカル(共)重合性イオンモノマーの重合を開始することを含む、ラジカル重合性イオンモノマーを(共)重合するための制御重合方法。
【請求項14】
過剰の配位子が、低い酸化状態の遷移金属錯体を安定化する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
系が2種類以上の配位子を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1種類の(共)重合性イオンモノマーがアニオン性である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
(共)重合性イオンモノマーがカチオン性である、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
溶媒の存在下で実施される、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
溶媒が水である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
初期に、水溶性高分子開始剤および1種類以上の配位子を含む遷移金属錯体を含む系の存在下でラジカル(共)重合性モノマーを重合させることを含む、水溶性ブロックコポリマーを製造するための制御重合方法。
【請求項21】
水溶性高分子開始剤が制御ラジカル重合法により製造される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
水溶性高分子開始剤が、
ペンダントまたは末端ヒドロキシ基をもつ高分子と遊離カルボン酸を含む分子を、触媒量のジシクロヘキシルカルボジイミドおよび塩基を縮合剤として用いて反応させる
ことを含む方法により製造される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
水が溶媒として存在する、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
ラジカル(共)重合性モノマーがイオン官能基を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
ラジカル(共)重合性モノマーがイオン官能基を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
ラジカル(共)重合性モノマーが、イオン官能基に変換できる官能基を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
請求項20に記載の方法により製造されたポリマー。
【請求項28】
請求項20に記載の方法により製造されたHEMA−b−DMAEMAポリマー。
【請求項29】
請求項20に記載の方法により製造されたPEO−b−DMAEMAポリマー。
【請求項30】
請求項20に記載の方法により製造されたPEO−b−ビニルベンゾエートポリマー。
【請求項31】
請求項20に記載の方法により製造されたPEO−b−MAOETMATポリマー。
【請求項32】
請求項20に記載の方法により製造されたPEO−b−TMAEMTポリマー。
【請求項33】
水溶性ポリマーブロックを含むブロックコポリマー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−13414(P2009−13414A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−182957(P2008−182957)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【分割の表示】特願2002−532495(P2002−532495)の分割
【原出願日】平成13年10月5日(2001.10.5)
【出願人】(591236068)カーネギー−メロン ユニバーシティ (12)
【氏名又は名称原語表記】CARNEGIE−MELLON UNIVERSITY
【Fターム(参考)】