説明

イオン交換樹脂の洗浄工程の終了の判定方法及び装置

【課題】イオン交換樹脂の洗浄工程の終了を良好に判定することができる方法及び装置を提供する。
【解決手段】バルブ22B,23Bを閉弁すると共に、バルブ2,22A,23A,8を開弁する。超純水がイオン交換樹脂充填塔3内に流入し、イオン交換樹脂3aを洗浄する。イオン交換樹脂3aに含まれるアミン類等のシリコンエッチング原因物質が超純水中に溶出する。この洗浄水は、バルブ22Aを通ってカラム20A内に流入し、シリコン物質の粒子21Aと接触する。洗浄水中の有機物質がシリコン物質の粒子21Aの表面に吸着すると共にシリコン表面から水素が離脱する。カラム20Aから流出した洗浄水の水素濃度を水素濃度計11で測定する。この最大値が予め設定した所定値以下である場合には、最大値に達した時点又は当該時点から所定時間を経過した時点で、イオン交換樹脂3aの洗浄が終了したと判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイオン交換樹脂の洗浄工程の終了の判定方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ICやメモリーをはじめとする半導体製造工場や液晶パネル製造工場などでは、超純水が大量に使用されている。
【0003】
半導体製造工程においては、半導体デバイスの高精細化が進むに従い、シリコン表面の清浄度の維持、平坦度の維持が重要になってくる。高精細度の半導体を製造する工程においては、超純水が表面のシリコンをわずかでも溶解させると、表面のエッチングに伴う表面荒れが生じ、それに伴い電気特性を低下させるおそれがある。
【0004】
従って、半導体製造工程においては、シリコン表面荒れを生じさせることがない超純水を使用することが必要であり、超純水がシリコン表面をエッチングする性質を有するか否かを判断することは重要な課題である。
【0005】
この超純水の製造には、イオン交換樹脂が用いられる。このイオン交換樹脂に汚染物質が含まれていると、超純水の製造時に、超純水中にこの汚染物質が混入するおそれがある。したがって、このイオン交換樹脂を半導体製造工場や液晶パネル製造工場などに出荷する前には、超純水による洗浄が行われる。
【0006】
この出荷前におけるイオン交換樹脂の洗浄工程においては、全有機性炭素濃度(TOC)での管理がなされており、例えばイオン交換樹脂に通水した後の洗浄水のTOC濃度が1ppb程度以下となったときに洗浄工程を終了する。しかし、TOCとしては1ppb以下であっても、アミン類などが含まれていると、このイオン交換樹脂を用いて超純水を製造するときにこのアミン類などが溶出し、シリコンウエハをエッチングしてしまい、表面の粗さを大きくすることが知られている。また、アミン類のうちでも、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミンあるいはオクタデシルアミンなどのアルキル鎖が長いものほど、エッチング量が多いことが知られている(特許第4056417号)。
【0007】
ところで、特開2007−170863には、試料水をシリコン物質と接触させ、該シリコン物質に接触後の試料水に含有されるシリカ濃度に相関する物性値である溶存水素濃度を測定し、該シリコン物質との接触によって上昇した溶存水素濃度に基づいて、試料水の水質を評価する水質評価方法が記載されている。
【0008】
試料水中にアミン類などのようにシリコンをエッチングし易い物質(エッチング原因物質)が混入していると、試料水をシリコン物質に接触させた際にシリコン表面にエッチングが生じ、試料水中にシリコンが溶出する。溶出したシリコンはOHイオンもしくは水分子と反応し、イオン状シリカ(ケイ酸イオン)(SiO2−)になると共に、水素を生成させる。この水素は溶存水素となって水中に存在する。従って、溶存水素濃度はシリカ濃度と相関関係にあるため、溶存水素濃度の上昇をモニタリングすることによって、試料水がシリコンにエッチングを生じさせる水質かどうかを評価することができる。
【0009】
イオン交換樹脂がアニオン交換樹脂である場合、アニオン交換樹脂には交換基として例えば以下のようなアミンが存在する。アニオン交換樹脂を超純水で洗浄すると、洗浄水中にこのアミンが溶出する。
【0010】
【化1】

【0011】
このように、洗浄水中にアミンが存在すると、微量であってもシリコンウエハ表面がエッチングされることが知られている。例えば第一級アミンの場合、次のような反応式によってエッチングされることが知られている。
【0012】
2R−NH+2HO→2R−NH+2OH
Si+2OH+HO→SiO2−+2H
2R−NH→2R−NH+H
また、アミンに結合したアルキル鎖が長いほど、シリコンウエハのエッチングは激しくなることが報告されている。
【0013】
一方、イオン交換樹脂がカチオン交換樹脂の場合はシリコンがエッチングされるメカニズムは明らかではない。しかし、カチオン交換樹脂の超純水による洗浄後の洗浄水をシリコンウエハ表面に通水する試験を行ったところ、ウエハ表面が荒れたという結果を得た。この結果からすると、シリコンが洗浄水中の何らかのエッチング原因物質と反応して水素を発生したものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許第4056417
【特許文献2】特開2007−170863
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記の通り、出荷前におけるイオン交換樹脂の洗浄工程において、TOCの管理のみで洗浄工程の終了を判定する場合、洗浄が不十分なものとなるおそれがある。すなわち、洗浄排水のTOCが管理値未満となっても、アミン類などのエッチング原因物質が含まれていると洗浄は不十分であり、このイオン交換樹脂を用いて超純水を製造するとエッチング原因物質が溶出し、シリコンウエハをエッチングしてしまうおそれがある。
【0016】
本発明は、イオン交換樹脂の洗浄工程の終了を良好に判定することができる方法及び装置を提供することを目的とする。特に、半導体製造プロセスに用いる超純水を製造するためのイオン交換樹脂の洗浄工程の終了判定をする方法や装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1のイオン交換樹脂の洗浄工程の終了の判定方法は、イオン交換樹脂を洗浄水で洗浄する洗浄工程の終了を判定する方法において、イオン交換樹脂を洗浄した後の洗浄水を水素終端化されたシリコン物質に接触させ、接触後の洗浄水の溶存水素濃度を測定し、該測定値に基づいてイオン交換樹脂の洗浄の終了を判定することを特徴とするものである。
【0018】
請求項2のイオン交換樹脂の洗浄工程の終了の判定方法は、請求項1において、前記シリコン物質が、粒径0.1mm〜2.0mmの粒子状であることを特徴とするものである。
【0019】
請求項3のイオン交換樹脂の洗浄工程の終了の判定方法は、請求項1又は2において、前記シリコン物質をカラム内に充填し、イオン交換樹脂の洗浄水を該カラムに上向流で通水することにより流動層を形成することを特徴とするものである。
【0020】
請求項4のイオン交換樹脂の洗浄工程の終了の判定方法は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記シリコン物質に、空間速度100〜10,000h−1にてイオン交換樹脂の洗浄水を通水することを特徴とするものである。
【0021】
請求項5のイオン交換樹脂の洗浄工程の終了の判定方法は、請求項1ないし4のいずれか1項において、前記シリコン物質が純度99.9999%以上の高純度半導体シリコンであることを特徴とするものである。
【0022】
請求項6のイオン交換樹脂の洗浄工程の終了の判定方法は、請求項1ないし5のいずれか1項において、水素終端化する方法が、シリコン物質をオゾン水で洗浄した後にフッ酸で洗浄するものであることを特徴とするものである。
【0023】
請求項7のイオン交換樹脂の洗浄工程の終了の判定方法は、請求項1ないし6のいずれか1項において、前記シリコン物質を複数本のカラム内に充填し、前記測定値の経時変化に応じて、イオン交換樹脂の洗浄水を通水するカラムを切り替えながらイオン交換樹脂の洗浄の終了を判定することを特徴とするものである。
【0024】
請求項8のイオン交換樹脂の洗浄工程の終了の判定方法は、請求項7において、いずれかのカラムにイオン交換樹脂の洗浄水を通水し、該カラムに通水後の洗浄水の溶存水素濃度を測定し、この測定値が最大値となった時点又は該測定値が最大値となった時点から所定時間が経過した時点で、イオン交換樹脂の洗浄水を通水するカラムを別のカラムに切り替え、該別のカラムに通水後の洗浄水の溶存水素濃度を測定し、この測定値が最大値となった時点又は該測定値が最大値となった時点から所定時間が経過した時点で、イオン交換樹脂の洗浄水を通水するカラムをさらに別のカラムに切り替える、との工程を、あるカラムにおける該最大値が所定値以下となるまで行い、該最大値となった時点又は該最大値となってから所定時間が経過した時点を、イオン交換樹脂の洗浄を終了する時点と判定することを特徴とするものである。
【0025】
請求項9のイオン交換樹脂の洗浄工程の終了の判定方法は、請求項7又は8において、前記カラムの切替において、切替後のカラムへの通水の空間速度は、切替前のカラムへの通水の空間速度以下であることを特徴とするものである。
【0026】
請求項10のイオン交換樹脂の洗浄工程の終了の判定方法は、請求項1ないし9のいずれか1項において、イオン交換樹脂が半導体製造プロセスに用いる超純水の製造に用いるものであることを特徴とするものである。
【0027】
請求項11のイオン交換樹脂の洗浄工程終了の判定装置は、請求項7ないし10のいずれか1項に記載のイオン交換樹脂の洗浄工程の終了の判定方法によりイオン交換樹脂の洗浄工程の終了を判定するための装置であって、それぞれシリコン物質が充填された複数個のカラムと、各カラムにイオン交換樹脂を洗浄した後の洗浄水を切り替えて通水する通水手段と、各カラムから流出した流出水中の溶存酸素濃度を測定する手段とを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、イオン交換樹脂の洗浄時にイオン交換樹脂から溶出したアミン類などのシリコンエッチング原因物質を高感度にて検出し得るため、イオン交換樹脂の洗浄工程の終了を良好に判定することができる。
【0029】
本発明において、シリコン物質が粒径0.1mm〜2.0mmの粒子状であると、汚染物質の検出感度及び取扱性に優れる。
【0030】
本発明において、シリコン物質をカラム内に充填し、イオン交換樹脂の洗浄水を該カラムに上向流で通水することにより流動層を形成するのが好ましい。この場合、下向流や固定層とする場合と比べてシリコン物質と洗浄水との反応が早くなる。そのため、アミン類などのシリコンエッチング原因物質を高感度に検出し、イオン交換樹脂の洗浄工程の終了を良好に判定することができる。
【0031】
本発明において、シリコン物質に、空間速度100〜10,000h−1にてイオン交換樹脂の洗浄水を通水するのが好ましい。これにより、検出感度を高くすると共に検出時間を短くすることができる。
【0032】
本発明において、シリコン物質が純度99.9999%以上の高純度半導体シリコンであると、検出感度が良好なものとなる。
【0033】
本発明において、水素終端化する方法が、シリコン物質をオゾン水で洗浄した後にフッ酸で洗浄するものであると、水素終端化を簡易かつ十分に行うことができる。
【0034】
ところで、イオン交換樹脂から溶出したアミン類などシリコンのエッチング原因物質がシリコン物質に付着すると、該シリコン物質から剥れるのに時間がかかり、その間、このシリコン物質に付着したままのエッチング原因物質からも水素が生成され続ける。このため、イオン交換樹脂中のエッチング原因物質が十分に洗浄された後でも、このシリコン物質に付着したままのエッチング原因物質から生成された水素が検出され続け、溶存水素濃度がなかなか低下しないことがある。この場合、イオン交換樹脂の洗浄後における洗浄水中のエッチング原因物質の濃度と、この超純水をシリコン物質に通水後の流出水中の溶存水素濃度との相関性が低下し、イオン交換樹脂の洗浄工程の終了の判定を短時間で正確に行うことが困難となることがある。
【0035】
そこで、本発明において、シリコン物質を複数本のカラム内に充填し、溶存水素濃度の測定値の経時変化に応じて、イオン交換樹脂の洗浄水を通水するカラムを切り替えながらイオン交換樹脂の洗浄の終了を判定するのが好ましい。この場合、切替後においては、切替前のカラム内のシリコン物質に付着したままのエッチング原因物質から生成される水素の影響が除去されるため、イオン交換樹脂の洗浄工程の終了を短時間で正確に判定することができる。
【0036】
具体的には、いずれかのカラムにイオン交換樹脂の洗浄水を通水し、該カラムに通水後の洗浄水の溶存水素濃度を測定し、この測定値が最大値となった時点又は該測定値が最大値となった時点から所定時間が経過した時点で、イオン交換樹脂の洗浄水を通水するカラムを別のカラムに切り替え、該別のカラムに通水後の洗浄水の溶存水素濃度を測定し、この測定値が最大値となった時点又は該測定値が最大値となった時点から所定時間が経過した時点で、イオン交換樹脂の洗浄水を通水するカラムをさらに別のカラムに切り替える、との工程を、切替後のカラムにおける該最大値が所定値以下となるまで行い、このときの該最大値となった時点又は該最大値となってから所定時間が経過した時点を、イオン交換樹脂の洗浄を終了する時点と判定するのが好ましい。これにより、イオン交換樹脂の洗浄工程の終了をより短時間で判定することができる。
【0037】
前記カラムの切替において、切替後のカラムへの通水の空間速度は、切替前のカラムへの通水の空間速度以下であることが好ましい。
【0038】
本発明のイオン交換樹脂の洗浄工程終了の判定装置は、シリコン物質が充填された複数個のカラムを有するため、カラムの切替を行いながら、イオン交換樹脂の洗浄工程の終了を短時間で判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明方法のフロー図である。
【図2】本発明方法の別のフロー図である。
【図3】第1及び第2のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値の変化を示すグラフである。
【図4】第1〜第3のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0041】
本発明は、イオン交換樹脂を洗浄水で洗浄する洗浄工程の終了を判定する方法において、イオン交換樹脂を洗浄した後の洗浄水を水素終端化されたシリコン物質に接触させ、接触後の洗浄水の溶存水素濃度を測定し、該測定値に基づいてイオン交換樹脂の洗浄の終了を判定することを特徴とするものである。
【0042】
イオン交換樹脂を超純水で洗浄すると、イオン交換樹脂内に含まれたシリコンをエッチングし易い物質が超純水中に溶出する。このシリコン表面荒れを生じさせるエッチング原因物質としては、アミン類などが挙げられる。アミン類のうち特にドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミンなどのアルキル鎖が長いものは、エッチング量が多いため、本発明方法により精度よく検知することができる。
【0043】
本発明では、イオン交換樹脂の充填量と通水量との関係が、SV=20〜100h−1となるように調節するのが好ましい。このイオン交換樹脂を充填するためのカラムとしては、超純水と接触して溶出物を排出しなければ良く、アクリル製でも良く、ポリテトラフルオルエチレン、PFA等のフッ素樹脂製でも良い。
【0044】
この有機物質を含んだ洗浄水を、シリコン物質に接触させる。このシリコン物質は、水素終端化されていることが必要である。その方法としてまずオゾン水でシリコン表面の有機物を酸化処理し、次いでフッ酸で水素終端化するのが望ましい。オゾン水のオゾン濃度は1ppm以上が良く処理時間は30分程度が良い。フッ酸の濃度は0.5〜1%程度で良く、処理時間は5分程度が良い。
【0045】
このように水素終端化されたシリコン物質をカラムに充填し、このカラム内に、上記のイオン交換樹脂の洗浄水を通水する。通水時間は、例えば6時間から24時間程度である。これにより、シリコン表面にエッチング原因物質が付着し、以下の反応式によって水素が発生する。
【0046】
Si+HO→SiO+2H
この水素は溶存水素となって水中に存在する。従って、溶存水素濃度の上昇をモニタリングすることによって、イオン交換樹脂の洗浄工程の終了を良好に判定することができる。
【0047】
本発明では、シリコンの充填量と洗浄水の通水量との関係が、SV=100〜10,000h−1特に200〜5000h−1となるように調節するのが好ましい。ここでSVとはSpace Velocity(空間速度)の略称であり、1時間あたりの通水量をシリコンの充填量で除算した値となる。例えばシリコンの充填量が120mLで通水量が60L/hであれば、SV=60×1,000/120=500h−1となる。SVが10000h−1よりも大きくなると、洗浄水がシリコンの充填材に接触する時間が短くなり、洗浄水中のアミン類などのエッチング原因物質の検出感度が低くなる。一方、SVが100h−1を下回ると、水素濃度が飽和状態となるのに極めて長い時間(24時間以上)を要し、検出時間が長くなる。このシリコンは、流動層となるように充填するのが好ましい。例えば、SV=2,000h−1とした場合、0.1ppb程度のヘキサデシルアミンが超純水中に含まれていると、4ppb程度の水素を放出する。
【0048】
充填材料のシリコンとしては金属シリコンが用いられる。この金属シリコンとしては、純度が99%の金属シリコン(純度は2N、不純物を1%含む)を用いるよりは、純度6N以上のもの、例えば高純度の半導体ウエハ(99.999999999%,11N)の破砕物あるいは、太陽電池用(99.9999%,6N以上)に球状に形成されたシリコン(例えば特許第4074931号に記載のもの)を利用するのが望ましい。
【0049】
シリコン物質の大きさ(粒径)は、特に制限はないが、0.2mm〜2.0mmが良く、望ましくは0.2mm〜1.0mm程度とする。シリコン物質の形状は、特に制限はない。再溶解して、球形にしたものでも良い。
【0050】
シリコン物質を充填するためのカラムとしては、超純水と接触して溶出物を排出しなければ良く、アクリル製でも良く、ポリテトラフルオルエチレン、PFA等のフッ素樹脂製でも良い。
【0051】
水中の溶存水素濃度測定には、各種の溶存水素濃度計を用いることができ、例えば、隔膜電極式溶存水素濃度計が挙げられる。
【0052】
洗浄の対象となるイオン交換樹脂は、アニオン交換樹脂であってもよく、カチオン交換樹脂であってもよい。また、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の混合物であってもよい。
【0053】
本発明の方法は、特に半導体製造プロセス向けの超純水製造装置のサブシステムに用いられる非再生型のイオン交換樹脂の初期洗浄において好適に適用される。
【0054】
イオン交換樹脂の洗浄に用いられる超純水は、次の水質を満たすものであることが好ましい。
【0055】
電気比抵抗 :18MΩ・cm以上
金属イオン濃度:5ng/L以下
残留イオン濃度:10ng/L以下
微粒子数 :1mL中に0.1μm以上の微粒子5個以下
TOC :0.1〜10μg/L
【0056】
以下、図面を参照して本発明についてさらに詳細に説明する。
【0057】
第1図は本発明方法及び装置を示すフロー図である。
【0058】
超純水は、配管1、バルブ2を通ってイオン交換樹脂充填塔3内に導入され、塔3内のイオン交換樹脂3aが該超純水で洗浄される。なお、第1図ではイオン交換樹脂充填塔3内に下向流が形成するように超純水を導入しているが、上向流が形成するように超純水を導入してもよい。
【0059】
このイオン交換樹脂3aの洗浄水は、バルブ22Aを通ってカラム20A内に導入されるか、又は、バルブ22Bを通ってカラム20B内に導入される。これらカラム20A,20Bは並列に配置されている。カラム20A,20B内には、水素終端化されたシリコン物質の粒子21A,21Bが充填されており、このシリコン物質の粒子21A,21Bが流動層を形成するように上向流の流速が選定される。シリコン物質の粒子21A又は21Bと接触した水は、バルブ23A又はバルブ23B,配管7、バルブ8、流量計9を通って系外に排出される。この水の一部は、配管7から分岐する配管10によって分取され、水素濃度計11にて水素濃度が測定された後、流量計12を通って系外に排出される。
【0060】
以下に、本発明を第1図の装置に適用した場合のイオン交換樹脂の洗浄工程の終了の判定方法の一例について説明する。
【0061】
<ステップ1>
第1図の通り、バルブ22B,23Bを閉弁すると共に、その他のバルブ(バルブ2,22A,23A,8)を開弁する。これにより、超純水が配管1、バルブ2を通ってイオン交換樹脂充填塔3内に流入し、イオン交換樹脂3aを洗浄する。このとき、イオン交換樹脂3aに含まれるアミン類等のシリコンエッチング原因物質が超純水中に溶出する。
【0062】
このエッチング原因物質を含んだ洗浄水は、バルブ22Aを通ってカラム20A内に流入し、シリコン物質の粒子21Aと接触する。このとき、洗浄水中のエッチング原因物質がシリコン物質の粒子21Aの表面に吸着すると共にシリコン表面から水素が離脱し、洗浄水中に溶存する。
【0063】
カラム20Aから流出した洗浄水は、一部が水素濃度計11にて水素濃度を測定される。
【0064】
この水素濃度計11による水素濃度の測定を継続すると、測定値が増加して最大値になった後、減少する。この最大値が予め設定した所定値以下である場合には、最大値に達した時点又は当該時点から所定時間を経過した時点で、イオン交換樹脂3aの洗浄が終了したと判定し、バルブ2を閉弁してイオン交換樹脂3aの洗浄を終了する。この所定値とは、例えば0.5〜3ppbである。この所定時間とは、例えば5〜24時間である。
【0065】
一方、この最大値が所定値を超えている場合にあっては、この測定値が該所定値に減少するまでこの運転を継続すると、長時間を要することになる。その理由は以下の通りである。イオン交換樹脂3aから溶出したエッチング原因物質がシリコン物質の粒子21に付着すると、該シリコン物質の粒子21から剥れるのに時間がかかり、その間、このシリコン物質の粒子21に付着したままのエッチング原因物質からも水素が生成され続ける。このため、イオン交換樹脂3a中のエッチング原因物質が十分に洗浄除去された後でも、このシリコン物質の粒子21に付着したままのエッチング原因物質から生成された水素が検出され続け、溶存水素濃度がなかなか低下しない。この場合、イオン交換樹脂3aの洗浄後における超純水中のエッチング原因物質濃度と、この超純水をシリコン物質の粒子21に通水後の流出水中の溶存水素濃度との相関性が低下し、イオン交換樹脂3aの洗浄工程の終了の判定を短時間で正確に行うことが困難となる。
【0066】
従って、この最大値が所定値を超えている場合には、最大値に達した時点又は当該時点から所定時間を経過した時点で、次のステップ2を実行する。この所定時間とは、例えば1〜3時間である。
【0067】
<ステップ2>
バルブ22A,23Aを閉弁すると共にバルブ22B,23Bを開弁することにより、洗浄水を通水するカラムをカラム20Aからカラム20Bに切り替える。
【0068】
これにより、イオン交換樹脂充填塔3から流出した洗浄水は、バルブ22Bを通ってカラム20B内に流入し、シリコン物質の粒子21Bと接触する。このシリコン物質の粒子21Bと接触させた洗浄水の一部について、ステップ1と同様に水素濃度計11にて水素濃度を測定する。この水素濃度が予め設定した所定値以下になった時点又は当該時点から所定時間を経過した時点で、イオン交換樹脂3aの洗浄が終了したと判定する。この所定値とは、例えば0.5〜3ppbである。この所定時間とは、例えば4〜8時間である。
【0069】
このように、ステップ2では、新たなカラム20Bを用いてイオン交換樹脂3aの洗浄の終了を判定する。そのため、ステップ2での水素濃度の測定においては、ステップ1で用いたカラム20A内のシリコン物質の粒子21Aに付着したままのエッチング原因物質から生成される水素の影響が除去される。これにより、イオン交換樹脂3aの洗浄工程の終了を短時間で正確に判定することができる。
【0070】
なお、カラムの切替において、切替後のカラム20Bへの通水の空間速度は、切替前のカラム20Aへの通水の空間速度以下であるのが好ましい。
【0071】
<別の態様>
上記実施の形態では、カラムは2基であったが、3基以上であってもよい。この場合、例えば上記のステップ2において、水素濃度計11による水素濃度を測定の最大値が予め設定した所定値を超えた場合には、最大値に達した時点又は当該時点から所定時間を経過した時点で、通水するカラムをカラム20Bから第3のカラムに切り替えてもよい。また、この最大値が予め設定した所定値以下となるまでこのカラムの切替を順次に実行し、該最大値が所定値以下となった時点又は当該時点から所定時間を経過した時点で、イオン交換樹脂3aの洗浄が終了したと判定するようにしてもよい。
【0072】
なお、第1図において、カラムの数を1基としてもよい。この場合、水素濃度計11による水素濃度の測定値が予め設定した所定値以下になる時点又は当該時点から所定時間が経過する時点までステップ1を継続することになる。但し、この場合、上述の通りイオン交換樹脂3aの洗浄の終了の判定に長時間を要するため、カラムは2基以上であるのが好ましい。
【0073】
<さらに別の態様>
上記実施の形態では、水素濃度の測定値に基づいてカラムの切替のタイミングを決定しているが、この水素濃度の測定値の変化速度に基づいてカラムの切替のタイミングを決定してもよい。
【0074】
すなわち、本実施の形態に係るイオン交換樹脂の洗浄工程の終了の判定方法は、シリコン物質の粒子が充填されたカラムに、イオン交換樹脂に通水後の試料水を通水しながら、該カラムからの流出水中の溶存水素濃度を測定し、該測定値に基づいてイオン交換樹脂の洗浄工程の終了を判定する方法において、第1のカラムに試料水を通水しながら、該第1のカラムからの流出水中の溶存水素濃度を測定し、該測定値が基準濃度設定値mを超えるか、又は、該測定値の上昇速度が基準濃度変化速度設定値Δd(正の数)を超えた場合には、試料水中の汚染物質濃度が所定濃度を超えていると判定する水質判定工程と、該水質判定工程の後に、該第1のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値が、第1の濃度設定値mを超えて上昇し、その後、該第1の濃度設定値m以下まで低下するか、又は、該測定値の上昇速度が、第1の濃度変化速度設定値Δd(負の数)以下まで低下したときには、試料水の通水を第2のカラムに切り替えるカラム切替工程と、該第2のカラムに試料水を通水しながら、該第2のカラムからの流出水中の溶存水素濃度を測定し、該測定値が、第2の濃度設定値mを超えないか、又は、該測定値の上昇速度が、第2の濃度変化速度設定値Δd(正の数)を超えないときには、試料水中の汚染物質濃度が前記所定濃度以下まで減少したと判定する洗浄終了判定工程とを含むことを特徴とする。
【0075】
まず、第1のカラムに、イオン交換樹脂に通水後の試料水を通水しながら、該第1のカラムからの流出水中の溶存水素濃度を測定する。第1のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値が基準濃度設定値mを超えるか、又は、該測定値の上昇速度が基準濃度変化速度設定値Δdを超えた場合には、試料水中の汚染物質濃度が所定濃度を超えていると判定する(水質判定工程)。
【0076】
なお、各カラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定間隔は、0.5〜10分程度、特に1〜5分程度が好ましい。
【0077】
この基準濃度設定値mとは、含まれる汚染物質が前記所定濃度である試料水を、エッチング原因物質が付着していないシリコン物質が充填されたカラムに通水した場合における、この通水開始直後の該カラムからの流出水中の溶存水素濃度に相当するもの(実験値又は理論値)である。また、基準濃度変化速度設定値Δdとは、この場合における、該カラムからの流出水中の溶存水素濃度の上昇速度に相当するもの(実験値又は理論値)である。
【0078】
次に、第1のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値が第1の濃度設定値mを超えて上昇し、その後、該第1の濃度設定値m以下となったとき、又は、この測定値の上昇速度が第1の濃度変化速度設定値Δd(負の数)以下となったときには、未通水の第2のカラムに通水を切り替えて(カラム切替工程)、該第2のカラムからの流出水中の溶存水素濃度を測定する。
【0079】
この第1の濃度設定値m及び第1の濃度変化速度設定値Δdは、それぞれ、第1のカラムからの流出水中に含まれる、該第1のカラム内のシリコン物質に付着した汚染物質から生成された水素の濃度を考慮して、実験値又は理論値として予め設定するものである。前記第1の濃度設定値mは、前記基準濃度設定値mより大きく設定する。また、前記第1の濃度変化速度設定値Δdは、前記基準濃度変化速度設定値Δdより小さく、且つ負の数として設定する。
【0080】
このカラム切替工程の時点では、実質的に、該第2のカラム内のシリコン物質にはまだ試料水中のエッチング原因物質が付着していないので、該第2のカラムからの流出水の溶存水素濃度には、シリコン物質に付着した汚染物質から生成された水素の濃度は含まれていない。そのため、この第2のカラムからの流出水の溶存水素濃度と試料水中の汚染物質濃度との相関性がきわめて高く、正確な水質判定を行うことができる。従って、本発明においては、第2のカラムに通水しながら、該第2のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定を継続し、第3図のように、この測定値が第2の濃度設定値mを超えないか、又は、この測定値の上昇速度が第2の濃度変化速度設定値Δdを超えなければ、試料水中の汚染物質濃度が所定濃度以下であり、イオン交換樹脂の洗浄が終了したと判定する(洗浄終了判定工程)。
【0081】
この第2の濃度設定値m及び第2の濃度変化速度設定値Δdは、それぞれ、第2のカラムからの流出水中に含まれる、該第2のカラム内のシリコン物質に付着した汚染物質から生成された水素の濃度を考慮して、実験値又は理論値として予め設定するものである。なお、第2のカラムに通水を切り替えた時点においては、試料水中の汚染物質濃度は第1のカラムへの通水時よりも低下しているので、その分を考慮して、第2の濃度設定値mは、前記第1の濃度設定値mよりも低く設定する。同様に、第2の濃度変化速度設定値Δdは、前記基準濃度変化速度設定値Δdより低く設定する。
【0082】
なお、この水質判定工程においては、カラム切替工程後に通水が開始された第2のカラムからの流出水中の測定値が、第2の濃度設定値mを超えることなく、又はこの測定値の上昇速度が第2の濃度変化速度設定値Δdを超えることなく、そのピーク(極大値)を超えたときに、水質改善が完了したと判定することが原則となる。しかしながら、水質の改善が進むと、溶存水素濃度の極大値が小さくなり、ピークが鈍くなる(ブロードになる)ため、このピークの判定自体が困難となる場合がある。従って、本実施の形態においては、カラム切替工程後、第2のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値が第2の濃度設定値mを超えないか、又はこの測定値の上昇速度が第2の濃度変化速度設定値Δdを超えないまま一定時間が経過した場合には、イオン交換樹脂の洗浄が終了したと判定してもよいものとする。ここで、該一定時間とは、1〜5時間程度、特に2〜4時間程度が好適である。なお、この判定基準は、後述の第2の水質判定工程にも適用しうる。
【0083】
本実施の形態のように、第1のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値が第1の濃度設定値m以下となったとき、又は、この測定値の上昇速度が第1の濃度変化速度設定値Δd以下となったときに、未通水の第2のカラムに通水を切り替えることにより、試料水中の汚染物質濃度が所定濃度未満まで減少したと判定するまでの測定時間を短縮することができる。
【0084】
[m,m,m,Δd,Δd,Δdの好適条件]
前記基準濃度設定値mは、0.1〜0.5ppbであることが好ましく、前記基準濃度変化速度設定値Δdは、0.2〜0.4ppb・h−1であることが好ましい。前記第1の濃度設定値mは、0.5〜2.5ppbであることが好ましく、前記第1の濃度変化速度設定値Δdは、−0.4〜−0.2ppb・h−1であることが好ましい。また、前記第2の濃度設定値mは、0.1〜0.5ppbであることが好ましく、前記第2の濃度変化速度設定値Δdは、0.05〜0.2ppb・h−1であることが好ましい。なお、基準濃度設定値mと第2の濃度設定値mとは好適な数値範囲が同じであるが、上記の数値範囲内であれば、基準濃度設定値mと第2の濃度設定値mとは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0085】
第4図のように、前記カラム切替工程後に、第2のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値が第2の濃度設定値mを超えるか、又は、この測定値の上昇速度が第2の濃度変化速度設定値Δdを超えた場合には、イオン交換樹脂の洗浄未了と判定して、引き続きイオン交換樹脂の洗浄を行うようにしてもよい。即ち、第2のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値が第2の濃度設定値mを超えるか、又は、この測定値の上昇速度が第2の濃度変化速度設定値Δdを超えた場合には、試料水中の汚染物質濃度が所定濃度を超えていると判定する(水質判定工程)。次に、この測定値が第3の濃度設定値mを超えて上昇し、その後第3の濃度設定値m以下まで低下したとき、又は、この測定値の上昇速度が第3の濃度変化速度設定値Δd(負の数)以下まで低下したときには、第3のカラムに試料水の通水を切り替えるか、又は通水前の状態に戻した第1のカラムに試料水の通水を切り替える(第2のカラム切替工程)。そして、この第1又は第3のカラムからの流出水中の溶存水素濃度を測定し、この測定値が第4の濃度設定値mを超えないか、又は、この測定値の上昇速度が第4の濃度変化速度設定値Δdを超えなければ、試料水中の汚染物質濃度が前記所定濃度以下まで減少したと判定する(第2の水質判定工程)。なお、この場合、前述の通り、イオン交換樹脂の洗浄が進行するのに伴って測定値のピークが鈍くなり、このピークの判定が困難である場合には、第2のカラム切替工程後、第1又は第3のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値が第4の濃度設定値mを超えないか、又はこの測定値の上昇速度が第4の濃度変化速度設定値Δdを超えないまま一定時間(好ましくは1〜5時間程度、特に好ましくは2〜4時間程度)が経過した場合には、イオン交換樹脂の洗浄が終了したと判定してもよい。
【0086】
この第3の濃度設定値m及び第3の濃度変化速度設定値Δdとは、それぞれ、第2のカラムからの流出水中に含まれる、該第2のカラム内のシリコン物質に付着した汚染物質から生成された水素の濃度を考慮して、実験値又は理論値として予め設定するものである。なお、第2のカラムに通水を切り替えた時点においては、試料水中の汚染濃度は第1のカラムへの通水時よりも低下しているので、溶存水素濃度の極大値は小さくなり、そのピークはブロードになる。よって、その分を考慮して、第3の濃度設定値mは、第2の濃度設定値mより高く、且つ第1の濃度設定値mより低く設定する。また、第3の濃度変化速度設定値Δdは、0未満且つ第1の濃度変化速度設定値Δdより高く設定する。
【0087】
また、第4の濃度設定値m及び第4の濃度変化速度設定値Δdは、それぞれ、第3のカラムからの流出水中に含まれる、該第3のカラム内のシリコン物質に付着した汚染物質から生成された水素の濃度を考慮して、実験値又は理論値として予め設定するものである。なお、第3のカラムに通水を切り替えた時点においては、試料水中の汚染物質濃度は第2のカラムへの通水時よりも低下しているので、その分を考慮して、第4の濃度設定値mは、前記第3の濃度設定値mよりも低く設定する。同様に、第4の濃度変化速度設定値Δdは、前記基準濃度変化速度設定値Δdより低く設定する。
【0088】
この場合にも、第2のカラム切替工程の時点では、実質的に、第3のカラム内又は通水前の状態に戻した第1のカラム内のシリコン物質にはまだ試料水中のエッチング原因物質が付着していないので、該第1又は第3のカラムからの流出水の溶存水素濃度と試料水中の汚染物質濃度との相関性がきわめて高く、正確な水質判定を行うことができる。また、このようにすることにより、第2のカラム内のシリコン物質に付着した汚染物質が該シリコン物質から剥がれ、この汚染物質から生成された水素が該第2のカラムからの流出水中に含まれなくなるまで、該第2のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定を継続する必要がないので、試料水中の汚染物質濃度が所定濃度未満まで減少したと判定するまでの測定時間を短縮することができる。
【0089】
なお、仮に第2のカラム切替工程後に、第1又は第3のカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値が第4の濃度設定値mを超えた場合、又は、この測定値の上昇速度が第4の濃度変化速度設定値Δdを超えた場合には、イオン交換樹脂の洗浄未了と判定して(第2の水質判定工程)、さらに別の未通水のカラムか、又は通水前の状態に戻した第1又は第2のカラムに通水を切替えて第2の水質判定工程と同様の工程を繰り返してもよい。この工程は、カラム切替工程後に通水を開始したカラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値が所定の濃度設定値を超えないか、又はこの測定値の上昇速度が所定の濃度変化速度設定値を超えない状態となるまで複数回繰り返してもよい。
【0090】
[m,m,Δd,Δdの好適条件]
前記第3の濃度設定値mは、0.5〜1.0ppbであることが好ましく、前記第3の濃度変化速度設定値Δdは、−0.2〜−0.1ppb・h−1であることが好ましい。前記第4の濃度設定値mは、0.1〜0.5ppbであることが好ましく、前記第4の濃度変化速度設定値Δdは、0.05〜0.2ppb・h−1であることが好ましい。なお、第4の濃度設定値mは、前記基準濃度設定値mと好適な数値範囲が同じであるが、上記の数値範囲内であれば、第4の濃度設定値mは、基準濃度設定値mと同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0091】
本実施の形態においては、各カラムに試料水を上向流で通水することにより流動層を形成すると共に、通水速度をSV100〜10,000h−1とすることが好ましい。このようにすることにより、シリコン物質と試料水との反応が早くなる。そのため、イオン交換樹脂の洗浄後の洗浄水中の極微量のエッチング原因物質を短時間で高精度に検出し、洗浄水の水質を精度よく評価することができる。
【0092】
本実施の形態においては、水質判定工程、カラム切替工程、洗浄終了判定工程、第2のカラム切替工程、及び第2の水質判定工程の全ての工程において、カラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値に基づいて判定を行うようしてもよく、あるいは、上記の全ての工程において、カラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値の上昇速度に基づいて判定を行うようしてもよい。また、上記のうちいずれかの工程においては、カラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値に基づいて判定を行い、残りの工程においては、カラムからの流出水中の溶存水素濃度の測定値の上昇速度に基づいて判定を行うようしてもよい。
[本実施の形態の一例]
以下、図面を参照して実施の形態の一例について詳細に説明する。
【0093】
第2図は、本実施の形態の一例を示すフロー図である。
【0094】
第2図では、第1図において、カラム20A,20Bに加えて更にカラム20Cをこれらと並列に配置したものである。なお、カラム20Cの上流側及び下流側には、それぞれバルブ22C及び23Cが設けられている。その他の構造は第1図の場合と同様である。
【0095】
以下に、第2図を用いて、イオン交換樹脂の洗浄工程の終了の判定方法について説明する。
【0096】
<ステップ1> 第2図の通り、バルブ22B,23B,22C,23Cを閉弁し、その他のバルブ(バルブ2,22A,23A,8)を開弁し、イオン交換樹脂充填塔3に超純水を通水する。これにより、この充填塔3内のイオン交換樹脂3aが洗浄される。このイオン交換樹脂3aの洗浄後の洗浄水が、第1のカラム20Aに通水される。第1のカラム20Aからの流出水中の溶存水素濃度の測定値が、予め設定された基準濃度設定値mを超えるか、又はこの測定値の上昇速度が、予め設定された基準濃度変化速度設定値Δdを超えた場合には、超純水中のシリコン汚染物質の濃度が高いと判断し、ステップ2に移る。
【0097】
<ステップ2> 時間の経過と共に、イオン交換樹脂3aが洗浄されることにより、第1のカラム20Aからの流出水中の溶存水素濃度測定値が徐々に低下し、予め設定された第1の濃度設定値m(>基準濃度設定値m)以下まで低下したとき、又は、この測定値の上昇速度が、予め設定された第1の濃度変化速度設定値Δd(<0)以下まで低下したときには、イオン交換樹脂3aを洗浄後の洗浄水中におけるシリコン汚染物質の濃度が十分に低減された可能性があると判断し、バルブ22A,23Aを閉じると共にバルブ22B,23Bを開け、通水カラムを第1のカラム20Aから第2のカラム20Bに切り替える(カラム切替工程)。次いで、次のステップ3を実行する。
【0098】
<ステップ3> 第2のカラム20Bへの切り替え後、該第2のカラム20Bからの流出水中の溶存水素濃度測定値は徐々に上昇するが、この測定値が、予め設定された第2の濃度設定値mを超えないか、又は、この測定値の上昇速度が、予め設定された第2の濃度変化速度設定値Δdを超えない場合には、イオン交換樹脂を洗浄後の洗浄水中のシリコン汚染物質の濃度が十分に低減されたと判断し、総てのバルブ(バルブ2,22A,23A,22B,23B,22C,23C,8)を閉じ、イオン交換樹脂3aの洗浄を終了する。
【0099】
これに対し、第2のカラム20Bへの通水開始後、該第2のカラム20Bからの流出水中の溶存水素濃度測定値が前記第2の濃度設定値mを超えるか、又は、この測定値の上昇速度が前記第2の濃度変化速度設定値Δdを超えた場合には、イオン交換樹脂の洗浄後の洗浄水中におけるシリコン汚染物質の濃度がまだ十分に低減されていないと判断し、ステップ4に移行する(水質判定工程)。
【0100】
<ステップ4> 第2のカラム4bからの流出水中の溶存水素濃度測定値が第3の濃度設定値m以下まで低下したとき、又は、この測定値の上昇速度が第3の濃度変化速度設定値Δd以下まで低下したときには、イオン交換樹脂3aの洗浄後の洗浄水中におけるシリコン汚染物質の濃度が十分に低減された可能性があると判断し、バルブ22B,23Bを閉じると共にバルブ22C,23Cを開け、通水カラムを第2のカラム20Bから第3のカラム20Cに切り替える(第2のカラム切替工程)。その後、次のステップ5を実行する。
【0101】
<ステップ5> 第3のカラム20Cへの通水開始後、該第3のカラム20Cからの流出水中の溶存水素濃度測定値は徐々に上昇するが、この測定値が第4の濃度設定値mを超えないか、又は、この測定値の上昇速度が第4の濃度変化速度設定値Δdを超えない場合には、イオン交換樹脂3aの洗浄水中におけるシリコン汚染物質の濃度が十分に低減されたと判断し、総てのバルブ(バルブ2,22A,23A,22B,23B,22C,23C,8)を閉じ、イオン交換樹脂3aの洗浄を終了する(第2の水質判定工程)。
【0102】
なお、上記の実施の形態では、3個のカラム20A,20B,20Cを備えているが、2個又は4個以上備えていてもよい。ただし、装置構成を単純化する方が低コスト化かつ省スペース化が可能となり、制御しやすいという点もあるため、カラムを2個とするのが好ましい。
【実施例】
【0103】
以下、実施例及び比較例について説明する。
【0104】
[実施例1]
実施例1では、第1図の装置を用いた。
【0105】
内径25mm、高さ700mmのアクリル製カラム20A内に、シリコン物質の粒子21Aとして、シリコン球(純度:4N、篩分け法による平均粒径:1mm)を30mL充填した。なお、シリコン粒は、充填前にオゾン水で30分洗浄した後に、1%HF溶液中に5分浸漬して水素終端化を行ったものである。
【0106】
また、内径25mm、高さ700mmのアクリル製カラムよりなるイオン交換樹脂充填塔3内に、イオン交換樹脂3aとしてアニオン交換樹脂(ダウケミカル社製「EXAG」)を2.5L充填した。
【0107】
以下の水質の超純水を1L/minでイオン交換樹脂充填塔3に通水した。その下流のカラム20Aにおいては、上向流が形成し、シリコン球は展開して流動層となった。このときのSVは2,000h−1であった。カラム20A流出水中の溶存水素濃度は、隔膜電極式溶存水素計(オービスフェア製)を利用して測定した。
【0108】
超純水の水質
電気比抵抗 :18MΩ・cm以上
金属イオン濃度:5ng/L以下
残留イオン濃度:10ng/L以下
微粒子数 :1mL中に0.1μm以上の微粒子5個以下
TOC :0.1〜10μg/L
【0109】
通水直後には、溶存水素濃度が10ppbであった。1ppb以下となるまで運転を継続したところ、3日間を要した。この時点でイオン交換樹脂3aの洗浄が終了したと判定し、洗浄を停止した。エッチング原因物質の溶出量の低下を溶存水素濃度の低下によって把握し、洗浄終了のタイミングを適切に判定することができた。
【0110】
[比較例1]
イオン交換樹脂充填塔3に通水後の洗浄水を、第1図におけるカラム20A及びその下流側に通水することなく、TOC計(シーバース社製「500RL」」)を利用してTOC濃度を測定したこと以外は実施例1と同様にして、イオン交換樹脂3aの洗浄を行った。TOC濃度が1ppb以下となるまでに5時間を要した。その後さらに24時間経過後に洗浄を停止した。その後洗浄水を第1図におけるカラム20A及びその下流側に通水したところ、溶存水素濃度は5ppbであり、エッチング原因物質の溶出が発生していたことから洗浄が不十分であったことがわかった。
【0111】
[実施例2]
実施例2でも、第1図の装置を用いた。アニオン交換樹脂としては三菱化学製SAT25を充填した。
【0112】
なお、カラム20Bとしては、カラム20Aと同様のものを用いた。シリコン物質の粒子21Bとしても、粒子21Aと同様のものを用いたが、充填量を120mLとした。
【0113】
先ず、ステップ1として、カラム20Aを用いて運転を行った。すなわち、超純水を1L/minで上向流として通水すると、シリコン球は展開して流動層となった。このときのSVは2,000h−1であった。カラム20A流出水中の溶存水素濃度は、隔膜電極式溶存水素計(オービスフェア製)を利用して測定した。
【0114】
通水から短時間の間に、溶存水素濃度が25ppbまで急激に増加した。その後、20ppb程度で安定した。25ppbに達してから2時間運転を継続したが水素濃度の低下は緩やかであった。
【0115】
そこで、ステップ2として、カラム20Aからカラム20Bに運転を切り替えた。カラム20B内にも上向流が形成し、シリコン球は展開して流動層となった。このときのSVは500h−1であった。カラム20B流出水中の溶存水素濃度も、隔膜電極式溶存水素計(オービスフェア製)を利用して測定した。カラム20Bに切り替えてから5時間経過後に、溶存水素濃度が2ppb程度で安定した。この時点でイオン交換樹脂3aの洗浄が終了したと判定し、洗浄を停止した。シリコン球を充填したカラムを2本用いることにより、洗浄終了の判定に要する時間を大幅に短縮することができた。
【符号の説明】
【0116】
3 イオン交換樹脂充填塔
3a イオン交換樹脂
11 水素濃度計
20A,20B カラム
21A,21B シリコン物質の粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換樹脂を洗浄水で洗浄する洗浄工程の終了を判定する方法において、
イオン交換樹脂を洗浄した後の洗浄水を水素終端化されたシリコン物質に接触させ、接触後の洗浄水の溶存水素濃度を測定し、該測定値に基づいてイオン交換樹脂の洗浄の終了を判定することを特徴とするイオン交換樹脂の洗浄工程の終了の判定方法。
【請求項2】
請求項1において、前記シリコン物質が、粒径0.1mm〜2.0mmの粒子状であることを特徴とするイオン交換樹脂の洗浄工程の終了の判定方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記シリコン物質をカラム内に充填し、イオン交換樹脂の洗浄水を該カラムに上向流で通水することにより流動層を形成することを特徴とするイオン交換樹脂の洗浄工程の終了の判定方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記シリコン物質に、空間速度100〜10,000h−1にてイオン交換樹脂の洗浄水を通水することを特徴とするイオン交換樹脂の洗浄工程の終了の判定方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記シリコン物質が純度99.9999%以上の高純度半導体シリコンであることを特徴とするイオン交換樹脂の洗浄工程の終了の判定方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、水素終端化する方法が、シリコン物質をオゾン水で洗浄した後にフッ酸で洗浄するものであることを特徴とするイオン交換樹脂の洗浄工程の終了の判定方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、前記シリコン物質を複数本のカラム内に充填し、
前記測定値の経時変化に応じて、イオン交換樹脂の洗浄水を通水するカラムを切り替えながらイオン交換樹脂の洗浄の終了を判定することを特徴とするイオン交換樹脂の洗浄工程の終了の判定方法。
【請求項8】
請求項7において、いずれかのカラムにイオン交換樹脂の洗浄水を通水し、該カラムに通水後の洗浄水の溶存水素濃度を測定し、この測定値が最大値となった時点又は該測定値が最大値となった時点から所定時間が経過した時点で、イオン交換樹脂の洗浄水を通水するカラムを別のカラムに切り替え、
該別のカラムに通水後の洗浄水の溶存水素濃度を測定し、この測定値が最大値となった時点又は該測定値が最大値となった時点から所定時間が経過した時点で、イオン交換樹脂の洗浄水を通水するカラムをさらに別のカラムに切り替える、
との工程を、あるカラムにおける該最大値が所定値以下となるまで行い、
該最大値となった時点又は該最大値となってから所定時間が経過した時点を、イオン交換樹脂の洗浄を終了する時点と判定することを特徴とするイオン交換樹脂の洗浄工程の終了の判定方法。
【請求項9】
請求項7又は8において、前記カラムの切替において、切替後のカラムへの通水の空間速度は、切替前のカラムへの通水の空間速度以下であることを特徴とするイオン交換樹脂の洗浄工程の終了の判定方法。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項において、イオン交換樹脂が半導体製造プロセスに用いる超純水の製造に用いるものであることを特徴とするイオン交換樹脂の洗浄工程の終了の判定方法。
【請求項11】
請求項7ないし10のいずれか1項に記載のイオン交換樹脂の洗浄工程の終了の判定方法によりイオン交換樹脂の洗浄工程の終了を判定するための装置であって、
それぞれシリコン物質が充填された複数個のカラムと、
各カラムにイオン交換樹脂を洗浄した後の洗浄水を切り替えて通水する通水手段と、
各カラムから流出した流出水中の溶存酸素濃度を測定する手段と
を有することを特徴とするイオン交換樹脂の洗浄工程終了の判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−72963(P2011−72963A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229607(P2009−229607)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)