説明

イオン発生制御方法と加熱放電型印字ヘッド及びそれを備えた画像形成装置

【課題】放電電極に直接、電圧を印加する必要がなく、制御が容易で、放電電極の耐久性、長寿命性を向上させることができるイオン発生制御方法の提供。
【解決手段】イオンの発生制御を放電電極の温度制御により行うイオン発生制御方法であって、放電電極と対向配置される記録媒体の記録面と反対側の面に形成若しくは接触又は近接して配設された対向電極と,放電電極と,の間に放電制御電圧に相当する電位差を発生させる電界中に配置された放電電極への加熱の有無により放電の有無を制御してイオンの発生制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電潜像担持体や各種の記録媒体に静電潜像や可視像を形成するためのイオン発生制御方法と加熱放電型印字ヘッド及びそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、(特許文献1)乃至(特許文献3)に示すように、電子写真方式とは別方式の静電潜像形成方式である、イオン照射方式が開発されてきている。
電子写真方式が一様帯電+露光という2工程で、一様帯電した感光体上の露光した部分の電荷を逃がすことで、静電潜像担持体としての感光体上に静電潜像を形成するのに対し、イオン照射方式では、イオン生成可能な雰囲気中(大気中等)においては、放電電極からの電子の放出により発生するイオンの照射による選択的帯電(静電潜像形成帯電)のみで静電潜像担持体(絶縁体であれば良いので、必ずしも感光体である必要はない)上に静電潜像の形成を完了できるので、より簡素化された静電潜像形成方式である。
【0003】
この(特許文献1)乃至(特許文献3)のイオン照射方式は、放電電極に印加しただけでは放電が発生せず加熱することにより放電が発生する電圧(放電制御電圧)を印加した状態で、放電電極への加熱の有無を制御することにより、放電の有無を制御してイオンの発生制御を行う加熱放電方式であり、放電電極全体に同時に電圧を印加することができ、画像情報に基づいて放電電極に印加される電圧のオン/オフを個別に制御する必要がない。その結果、発熱抵抗体等による加熱の制御に使用する5V駆動のような低耐電圧対応のドライバICで放電の発生を制御することができ、放電の制御の観点からは最も優れた制御方式であると言える。
【0004】
このイオン照射型(加熱放電型)印字ヘッドによれば、デジタルペーパに代表されるような、表面に付与された電荷(静電潜像)の作用により画像を表示する静電現像方式の記録媒体に対して、静電潜像をイオン照射により直接形成できるので、静電現像方式の記録媒体に非接触で書き込むには現在考え得る最適な画像形成装置である。
また、イオン照射方式による静電潜像形成方式を応用したものとして、(特許文献3)には、イオンの照射により表面に静電潜像が形成される静電潜像担持体の表面に形成された静電潜像に基づいて、トナーやインク等を用いた顕像化手段によって静電潜像担持体の表面に可視像を形成し、その可視像を転写手段によって普通紙やOHPシート等の印字媒体に転写する画像形成装置も提案されている。
【特許文献1】特許第3725092号公報
【特許文献2】WO2005−056297号
【特許文献3】特許第3936726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(特許文献1)乃至(特許文献3)は、いずれも放電電極に直接、電圧が印加されているため、放電の発生効率という点では優れていた。しかしながら、常時、放電電極に高電圧が印加されるため、放電電極へのダメージが大きく、放電量が経時的に変化し易く、放電電極の耐久性、長寿命性の向上が望まれていた。
また、電圧が印加された放電電極を加熱手段で選択的に加熱して放電の発生の有無を制御するため、発熱抵抗体を用いて加熱する場合、放電電極と発熱抵抗体の間を確実に絶縁する必要があり、絶縁膜に高い絶縁性が要求され、製造工数がかかり、量産性、歩留まりの向上が望まれていた。
【0006】
本発明は上記従来の要望に応えるもので、放電電極に直接、電圧を印加する必要がなく、制御が容易で、放電電極の耐久性、長寿命性を向上させることができるイオン発生制御方法の提供、発熱抵抗体などの加熱手段を用いて放電電極を加熱する場合でも、加熱手段と放電電極の間に高い絶縁性が必要なく、絶縁膜を形成する工程を簡素化して歩留まりを向上させることができ、量産性、長寿命性に優れる加熱放電型印字ヘッドの提供、加熱放電型印字ヘッドからの放電量の経時変化が発生し難く、画像品質の信頼性、安定性に優れる画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明のイオン発生制御方法と加熱放電型印字ヘッド及びそれを備えた画像形成装置は、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載のイオン発生制御方法は、イオンの発生制御を放電電極の温度制御により行うイオン発生制御方法であって、前記放電電極と対向配置される記録媒体の記録面と反対側の面に形成若しくは接触又は近接して配設された対向電極と,前記放電電極と,の間に放電制御電圧に相当する電位差を発生させる電界中に配置された放電電極への加熱の有無により放電の有無を制御してイオンの発生制御を行う構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)放電電極と対向配置される記録媒体の記録面と反対側の面に形成若しくは接触又は近接して配設された対向電極と,放電電極と,の間に放電制御電圧に相当する電位差を発生させる電界中に配置された放電電極への加熱の有無により放電の有無を制御してイオンの発生制御を行うので、放電電極に直接電圧を印加する必要がなく、加熱手段で放電電極を選択的に加熱するだけで、放電電極から放電を発生させることができ、画像情報に基づいて、記録媒体の記録面の任意の位置にイオンを照射して所望の画像を形成することができる。
(2)放電電極に直接、電圧を印加する必要がないので、放電電極の耐久性、長寿命性を向上させることができる。
【0008】
ここで、放電制御電圧とは、その電位差だけでは放電電極からの放電は起こらないが、放電電極を加熱することにより放電が起こる電圧域を言い、放電電極の材質、記録媒体の種類、周囲の環境などに応じて変動する。放電電極と記録媒体が離間して形成された放電空間が、大気等のイオン生成可能な雰囲気である場合には、放出された電子が酸素や窒素をイオン化し、それらを記録媒体の記録面に到達させることができ、多量のイオンで効率的に電荷を注入することができる。
【0009】
本発明の請求項2に記載の加熱放電型印字ヘッドは、電界形成部と、前記電界形成部で形成される電界中に配置される放電電極と、前記放電電極を選択的に加熱する加熱手段と、を備え、前記放電電極と対向配置される記録媒体の記録面と反対側の面に形成若しくは接触又は近接して配設された対向電極と,前記放電電極と,の間に放電制御電圧に相当する電位差を発生させ、前記加熱手段による前記放電電極への加熱の有無により放電の有無を制御してイオンの発生制御を行う構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)電界形成部で形成される電界によって、放電電極と対向配置される記録媒体の記録面と反対側の面に形成若しくは接触又は近接して配設された対向電極と、放電電極と、の間に放電制御電圧に相当する電位差を発生させることができるので、放電電極に直接電圧を印加する必要がなく、加熱手段による放電電極への加熱の有無により放電の有無を制御してイオンの発生制御を行うことができ、画像情報に基づいて、記録媒体の記録面の任意の位置にイオンを照射して所望の画像を形成することができる。
(2)放電電極に直接、電圧を印加する必要がなく、放電電極の耐久性、長寿命性に優れる。
(3)放電電極に直接、電圧が印加されないので、発熱抵抗体を用いた加熱手段によって放電電極を加熱する場合でも、発熱抵抗体と放電電極の間に高い絶縁性が必要なく、絶縁膜を形成する工程を簡素化して歩留まりを向上させることができ、量産性に優れる。
【0010】
ここで、電界形成部は、対向電極と放電電極との間に、放電制御電圧に相当する電位差を発生させる電界を形成できるものであればよい。例えば、放電電極と離間して配置した電極やコイルなどで電界を形成するものが好適に用いられる。
放電電極は、略短冊状などに形成することができ、記録媒体の解像度などに応じて縞状に配置することができる。尚、放電電極のピッチは、記録媒体の解像度と同一である必要はなく、記録媒体の解像度よりも粗く形成し、記録媒体の解像度に合わせて少しずつ位置をずらしながら画像を形成することができる。
放電電極を加熱する加熱手段としては、放電電極の任意の位置(放電発生部)を選択的に加熱できるものであればよく、放電電極に密着して加熱するものでもよいし、放電電極から離間して加熱するものでもよい。
放電電極と密着させて加熱する加熱手段としては、従来の感熱式のファクシミリに使用されるサーマルプリントヘッドと同様の構成を好適に用いることができる。具体的には、発熱抵抗体と電気的に接続されたドライバICで発熱抵抗体の発熱を制御するものである。この発熱抵抗体としては、TaSiO2、RuO2等が好適に用いられる。
【0011】
放電電極と離間して加熱する加熱手段としては、レーザ光を照射する方式や赤外線を照射する方式等の光照射部を有するものが好適に用いることができる。レーザ光を照射する方式の光照射部としては、レーザ照射部とポリゴンミラーやガルバノミラー等の光走査部を組合せて放電電極に対してレーザ光のみを走査(スキャン)させるもの、放電電極に対してレーザ照射部自体をシリアル走査させるもの等が好適に用いられる。また、レーザ光や赤外線を光ファイバーや集光レンズで集光して放電電極に照射してもよい。特に多本数の光ファイバーを高密度かつ高精度に配列した光ファイバーアレイを用いた場合、同時に複数の放電電極の放電発生部に対し、レーザ光や赤外線を選択的に照射することができ、高速記録が可能である。このとき、各々の光ファイバーと放電電極(放電発生部)を一対一に対応させ、光ファイバーの出口先端を放電電極に固定してもよい。また、光ファイバーの出口先端などの集光部の光の出口表面に直接、クロムを蒸着して金メッキする等して放電電極を形成することもできる。
【0012】
記録媒体は、電荷の作用により静電潜像が形成されるものであればよく、デジタルペーパのような静電現像方式の記録媒体や静電潜像担持体などを用いることができる。
静電現像方式の記録媒体を用いる場合、媒体本体の表示層としては、透過型のネマティック液晶やスメクティック液晶等のシャッター機能を有する液晶材料を用いた液晶方式や白色又は黒色を選択的に表示可能なツイストボール方式,電気泳動方式,粉体移動方式等の画像表示材料が封入されたものが好適に用いられる。尚、これらの記録媒体には、媒体本体の上面及び下面に所定のパターンで形成された電極に電子やイオンを照射し、電荷を注入することにより、上面と下面の電極間の電位差によって可視像を形成する電荷注入型の記録媒体も含まれる。
これらの表示層に、加法混色法における三原色(R,G,B)を持つカラーフィルタや減法混色法における三原色(Y,M,C)を持つ反射層を組み合わせたものはカラー表示を行うことができる。また、カラーフィルタを組み合わせる代わりに、減法混色法における三原色(Y,M,C)等に着色したツイストボールや微粒子等の画像表示材料を表示原色の色毎に配列したものでもカラー表示を行うこともできる。また、1枚の媒体本体を複数の領域に分割し、領域毎に異なる色を表示するものも用いることができる。
【0013】
記録媒体の記録面の表面抵抗は、画像形成時に電子やイオンにより付与された電荷が速やかに消滅するように109Ω・cm〜1013Ω・cmの抵抗値に形成したものが好適に用いられる。記録面表面の抵抗値が109Ω・cmより小さくなるにつれ、記録媒体の記録面に載せた電荷が面上で移動し易くなり、画像がぼやける傾向があり、1013Ω・cmより大きくなるにつれ、記録面が帯電し易くなり、静電気などの影響により画像が変化する傾向があり、いずれも好ましくない。
【0014】
対向電極は、記録媒体の記録面と反対側の面(裏面)に媒体本体と一体に形成してもよいし、画像形成装置に設けた平板状の記録媒体載置部や搬送ローラ等の表面に形成して放電電極と対向するように媒体本体の裏面に接触又は近接させてもよい。
尚、対向電極は媒体本体の全面に渡って共通のベタ状に形成する以外に、媒体本体の表示画素の各行或いは各列に対応させて短冊状に形成したり、各画素に対応させてマトリックス状に形成したりすることにより、選択的な接地や電圧印加を行うことができる。特に、行単位や列単位で選択できるものは選択制御が容易で好適に用いられる。
この対向電極がカラーフィルタ若しくは着色されたツイストボールや微粒子の表示原色の配置に対応して分割されて形成されている場合、対向電極を媒体本体のカラー表示の表示原色の色単位で選択することができるので、画像情報を色単位に分割して画像を形成することができ、色ずれを確実に防止して高品質なカラー画像を得ることができる。
【0015】
静電潜像担持体としては、ドラム型,ベルト型,平板型(シート状)等の様々な形状のものを用いることができる。静電潜像担持体の素材としては、電子やイオンの照射により表面が帯電するものであればよいので、感光体である必要はなく、アルマイト等の絶縁体やポリエチレンテレフタレート(PET)等のフィルム状の合成樹脂やガラス等を用いることもできる。尚、静電潜像担持体が感光体の場合は、光を照射することで除電することができ、絶縁体の場合はAC電圧で除電することができる。また、静電潜像担持体が絶縁体の場合、感光体に比べ劣化が発生し難く長寿命性に優れる。
静電潜像担持体の表面に形成される静電潜像に基づいて、顕像化手段で静電潜像担持体に可視像を形成し、静電潜像担持体自体をそのまま記録媒体として用いることもできるし、静電潜像担持体に形成された可視像を転写手段で転写して、普通紙やOHPシートなどの印字媒体に画像(可視像)を形成することもできる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の加熱放電型印字ヘッドであって、前記電界形成部が、前記放電電極と離間して配置された電界形成用電極と、前記対向電極と前記電界形成用電極との間に電界形成用電圧に相当する電位差を設定する電位差設定部と、を備えた構成を有している。
この構成により、請求項2の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)電界形成部が、放電電極と離間して配置された電界形成用電極と、対向電極と電界形成用電極との間に電界形成用電圧に相当する電位差を設定する電位差設定部を有することにより、放電電極に直接電圧を印加することなく、放電電極と対向電極との間に、簡便かつ確実に放電制御電圧に相当する電位差を発生させて放電に備えることができ、加熱手段で放電電極を選択的に加熱するだけで、放電電極からの放電の発生を制御することができ、取り扱い性に優れる。
【0017】
ここで、従来の加熱放電型印字ヘッド(例えば特許第3725092号やWO2005/056297号)は、放電電極に直接、放電制御電圧を印加すると共に、加熱手段で放電電極の選択的な加熱を行って放電の発生を制御していた。この従来の加熱放電型印字ヘッドの放電電極は、例えば複数の放電発生部(個別放電電極)の一端部を共通電極で接続した櫛型、複数の放電発生部の両端部を共通電極や補助共通電極で接続した梯子型、長方形状や正方形状等の平板ベタ状などの形状に形成していた。
請求項3の加熱放電型印字ヘッドは、従来の放電電極の共通電極と放電発生部を分離したものに相当し、請求項3の電界形成用電極及び放電電極は、それぞれ従来の共通電極及び放電発生部とみなすことができる。
【0018】
電界形成用電圧は、放電電極と対向電極との間に放電制御電圧に相当する電位差が発生するように、放電電極と電界形成用電極との距離に応じて、適宜、選択することができる。
電界形成用電圧の波形としては様々な波形を選択することができ、三角波、矩形波、台形波、sin波等を単独で或いは組合せて用いたり、さらにこれらに直流電圧や交流電圧を重畳したりできる。例えば、電界形成用電極に交流電圧のみを印加すると、放電電極からの放電に伴って正負のイオンが生成される。そこで、負のイオンのみを選別するには交流電圧に負の直流電圧を重畳し、正のイオンのみを選別するには交流電圧に正の直流電圧を重畳したものを電界形成用電極に印加する。
【0019】
電界形成用電極は、加熱放電型印字ヘッドの放電電極全面に対向している必要はなく、少なくとも一部に対向していればよい。また、電界形成用電極は、一箇所に固定してもよいし、放電電極に対して走査させながら電界を形成する領域を移動させてもよい。加熱手段として、レーザ光や赤外線などの光を照射する方式を用いる場合、放電電極の表面側から光を照射することが好ましいが、放電電極を形成する放電電極形成基板が、透光性を有するガラスや合成樹脂などで形成されている場合は、放電電極形成基板側から放電電極の裏面に光を照射して加熱することもできる。
【0020】
記録媒体として、記録面と反対側の面に対向電極が一体に形成された専用の記録媒体や静電潜像担持体を用いた場合、高品質な画像を得ることができる。即ち、記録媒体の記録面と反対側の面(裏面)に、電界形成用電極との間に電界を形成するための対向電極を配置し、加熱放電型印字ヘッドの放電電極と対向電極の間に放電制御電圧に相当する電位差が生じるように、対向電極に接地又は電圧印加を行うことにより、加熱放電型印字ヘッドで発生した電子やイオンを各種媒体の記録面に確実に到達させることができる。
また、記録媒体が対向電極を備えていない場合も、装置側に対向電極を設けておくことにより、記録媒体の記録面と反対側の面に対向電極を接触又は近接させることができ、対向電極を備えていない記録媒体にも高品質な画像を形成することができ、記録媒体の選択の範囲が広く、汎用性に優れる。
電位差設定部では、電界形成用電圧に相当する電圧を全て電界形成用電極に印加し、対向電極を接地するようにしてもよいし、放電電極と対向電極との間に放電制御電圧に相当する電位差が発生するように、電界形成用電圧に相当する電圧を電界形成用電極と対向電極に適宜分配して印加するようにしてもよい。尚、対向電極への接地や電圧印加は、常時行ってもよいし、場所或いは時間によって選択的に行ってもよい。
【0021】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の加熱放電型印字ヘッドであって、前記電位差設定部が、前記電界形成用電極に電圧を印加する電界形成用電圧印加部と、前記対向電極への接地又は電圧印加を行う媒体側電圧選択部と、を備えた構成を有している。
この構成により、請求項3の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)電位差設定部が、電界形成用電極に電圧を印加する電界形成用電圧印加部と、対向電極への接地又は電圧印加を行う媒体側電圧選択部を有することにより、記録媒体の種類や特性に応じて、電界形成用電極と対向電極に電界形成用電圧を分配して印加することができ、汎用性に優れると共に、放電電極と対向電極との間に確実に放電制御電圧に相当する電位差を発生させることができ、放電に伴って発生したイオンを記録面の所望の位置に精度良く照射して可視像や静電潜像を形成することができ、画像の高品質性に優れる。
【0022】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載の加熱放電型印字ヘッドであって、前記放電電極が、前記電界形成用電極側の端部に形成された受電部と、前記電界形成用電極側と反対側の端部に形成された放電発生部と、を有し、前記受電部と前記放電発生部を除いて前記放電電極に被覆膜が覆設されている構成を有している。
この構成により、請求項3又は4の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)放電電極が、電界形成用電極側の端部に形成された受電部を有するので、電界形成用電極と受電部を近接して対向させることができ、放電電極と対向電極との間に効率的に放電制御電圧に相当する電位差を発生させることができ、放電発生の信頼性に優れる。
(2)受電部と放電発生部を除いて放電電極に被覆膜が覆設されているので、放電電極の放電発生部以外の箇所から放電が発生するのを防止でき、放電発生部から無駄なく集中的に放電を発生させることができ、放電発生の効率性に優れると共に、放電電極を保護することができ、放電電極の耐久性に優れる。
【0023】
ここで、被覆膜は絶縁体で形成され、ガラス、アラミドやポリイミド等の合成樹脂、SiO2等のセラミック、マイカ等の材質が好適に用いられる。被覆膜は、スクリーン印刷、蒸着、スパッタ等により形成することができる。
【0024】
請求項6に記載の発明は、請求項2乃至5の内いずれか1項に記載の加熱放電型印字ヘッドであって、前記加熱手段が、前記放電電極と絶縁された発熱抵抗体を備えた構成を有している。
この構成により、請求項2乃至5の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)加熱手段が、放電電極と絶縁された発熱抵抗体を備えていることにより、加熱の制御に5V駆動のような低耐電圧対応のドライバICを使用することができ、放電の制御が容易で、取り扱い性に優れる。
(2)放電電極と発熱抵抗体を絶縁して密着させることにより、発熱抵抗体の発する熱を効率的に放電電極に伝達することができ、発熱した発熱抵抗体に対応する放電電極(放電発生部)から放電を発生させることができる。
【0025】
ここで、放電電極と発熱抵抗体を絶縁する絶縁膜の材質としては、絶縁性及び加熱手段による加熱に耐える耐熱性を有すると共に、加熱手段が発する熱を放電電極に伝達できる熱伝達性を有するものが好適に用いられる。具体的には、ガラスやポリイミド,芳香族ポリアミド,ポリフェニレンオキシド,ポリベンズイミダゾール,ボリフェニルキノキサリン,ポリアリレート,ポリエーテルイミド,ポリエーテルスルフォン,ポリフェニレンサルファイド,ポリエーテルエーテルケトン,アラミド等の合成樹脂等が好適に用いられる。
尚、発熱抵抗体については、請求項2で説明した通りなので、説明を省略する。
【0026】
請求項7に記載の発明は、請求項2乃至5の内いずれか1項に記載の加熱放電型印字ヘッドであって、前記加熱手段が、前記放電電極と離間して配置された光照射部である構成を有している。
この構成により、請求項2乃至5の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)加熱手段が、放電電極と離間して配置された光照射部であることにより、放電電極と加熱手段を絶縁するための絶縁膜などを設けることなく、放電電極と加熱手段との間を確実に絶縁することができ、製造工数を低減でき、量産性及び加熱制御の信頼性を向上させることができる。
(2)放電電極と加熱手段が離間して配設されているので、別々に製造したものを簡便に組合せて使用することができ、放電電極又は加熱手段のいずれか一方に不具合が生じた際に、不具合が生じたものだけを修理、交換することができ、メンテナンス性、省資源性に優れる。
(3)放電電極と加熱手段が離間して配設されていることにより、放電電極と加熱手段が接触することがないので、加熱停止状態での放電電極の冷却時間を大幅に短縮することができ、加熱停止に対する放電停止の応答性を向上させて短時間で放電の有無を切替えることができ、画像品質及び記録速度を向上できる。
【0027】
ここで、光照射部については、請求項2で説明した通りなので、説明を省略する。
【0028】
本発明の請求項8に記載の画像形成装置は、請求項2乃至7の内いずれか1項に記載の加熱放電型印字ヘッドを備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)加熱放電型印字ヘッドを有することにより、各種媒体に電荷を付与することができ、媒体の種類に応じて可視像や静電潜像を形成することができる。
【0029】
ここで、復元器(初期化手段)として、帯電ローラや帯電ブラシ等を備えることにより、画像形成装置の内部で静電現像方式の記録媒体や静電潜像担持体などの各種媒体の表面を一様に帯電させて初期化することができ、各種媒体への書き換えを繰返し行うことができる。
尚、復元器を備える代わりに、加熱放電型印字ヘッドから画像が形成された各種媒体に画像形成時と逆極性のイオンを照射して、不要な画像を消去することもできる。
各種媒体の記録面と反対側の面に対向電極が形成されている場合は、画像形成装置は対向電極への接地や電圧印加を行う媒体側電圧選択部を備えていればよい。
また、各種媒体の記録面と反対側の面に対向電極が形成されていない場合は、各種媒体の記録面と反対側の面に接触又は近接する対向電極を装置側に設けることにより、媒体側電圧選択部による接地や電圧印加を行うことができる。
【0030】
画像形成装置は、加熱放電型印字ヘッドと各種媒体を固定或いは相対的に移動させて画像を形成することができる。各種媒体を平板状の媒体載置部に載置して加熱放電型印字ヘッド又は媒体載置部を水平移動させるようにしてもよいし、各種媒体を搬送ローラで搬送してもよい。特に、対向電極を装置側に設ける場合は、媒体載置部の表面に対向電極を形成することにより、各種媒体と対向電極を面接触させることができ、対向電極に印加した電圧を各種媒体に作用させて電子やイオンの電荷を確実に記録面に付与することができる。
尚、この画像形成装置は、紙代わりの媒体として持ち運んだりして使用する静電現像方式の記録媒体に画像を形成する以外に、固定若しくは着脱自在に配設された記録媒体を表示媒体として広告などの画像を表示する看板等の画像表示装置としても使用することができる。
【0031】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の画像形成装置であって、前記加熱放電型印字ヘッドからの放電による電荷の作用で内部に可視像が出現する記録媒体に対して記録を行う構成を有している。
この構成により、請求項8の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)加熱放電型印字ヘッドからの放電により、記録媒体の内部に非接触で可視像を形成することができるので、部品点数が少なく、記録媒体へのダメージも必要最低限に押えることができ実用性に優れる。
【0032】
請求項10に記載の発明は、請求項8に記載の画像形成装置であって、前記記録媒体が、前記加熱放電型印字ヘッドからの放電による電荷の作用で表面に静電潜像が形成される静電潜像担持体を備え、前記静電潜像担持体の表面に形成される静電潜像に基づいて前記記録媒体に可視像を形成する顕像化手段を備えた構成を有している。
この構成により、請求項8の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)記録媒体が、静電潜像担持体を備えることにより、加熱放電型印字ヘッドからのイオン照射で静電潜像担持体の表面に静電潜像を形成することができ、その静電潜像に基づいて、顕像化手段で記録媒体の表面に可視像を形成することができる。
(2)加熱放電型印字ヘッドからのイオンの照射により静電潜像担持体の表面に静電潜像を形成することができるので、ポリゴンミラー等の露光光学系を必要とせず、部品点数が少なく構造を簡素化できる。
【0033】
ここで、静電潜像担持体としては、請求項2で説明したものと同様のものが好適に用いられるが、この画像形成装置によれば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のフィルム状の合成樹脂やガラス等で形成された静電潜像担持体に高品質な画像を形成することができる。
顕像化手段としては、トナー現像を行う現像器が好適に用いられるが、インクやその他の方法で現像を行ってもよい。
【0034】
請求項11に記載の発明は、請求項8に記載の画像形成装置であって、前記加熱放電型印字ヘッドに対向して配置され前記加熱放電型印字ヘッドからの放電による電荷の作用で表面に静電潜像が形成される静電潜像担持体を備えた構成を有している。
この構成により、請求項8の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)加熱放電型印字ヘッドに対向する静電潜像担持体を有することにより、加熱放電型印字ヘッドからのイオン照射で静電潜像担持体の表面に静電潜像を形成することができ、その静電潜像で記録媒体を静電現像して可視像を形成することができるので、加熱放電型印字ヘッドと記録媒体が直接対向せず、加熱放電型印字ヘッドの汚れを防止できる。
【0035】
ここで、静電潜像担持体については、請求項1で説明した通りであるので、説明を省略する。
【0036】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の画像形成装置であって、前記静電潜像担持体の表面に形成された静電潜像に基づいて前記静電潜像担持体の表面に可視像を形成する顕像化手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、を備えた構成を有している。
この構成により、請求項11の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)顕像化手段により静電潜像に基づいて静電潜像担持体の表面に可視像を形成することができ、転写手段で可視像を記録媒体に転写して記録を行うことができるので、普通紙の他、OHPシート、光沢紙等の様々な印字媒体を記録媒体として使用することができ汎用性に優れる。
【0037】
ここで、静電潜像担持体としては、前述と同様のものを用いることができる。顕像化手段としては、前述と同様に、トナー現像を行う現像器が好適に用いられるが、インクやその他の方法で現像を行ってもよい。可視像を記録媒体に転写するための転写手段として、アルミニウム等の金属製のローラの表面をシリコーンゴム等の合成ゴムで被覆した転写定着ローラ等が好適に用いられる。トナー現像の際に圧力定着型のトナーを用いれば、転写手段により押圧することで可視像を記録媒体に転写できると共に、定着させることができる。
画像形成装置には、転写後の静電潜像担持体の表面に残留したトナーを物理的に掻き取って清浄化するクリーナと、加熱放電型印字ヘッドによる書き込み(イオン照射)の前に静電潜像担持体の表面を除電する除電器を備えることが好ましい。これにより、常に安定した状態で静電潜像担持体の表面に静電潜像を形成することができ信頼性に優れる。また、静電潜像担持体としてアルマイト等の絶縁体を用いた場合、クリーナによる掻き取りのダメージが発生し難く、特に長寿命性に優れる。
【発明の効果】
【0038】
以上のように、本発明のイオン発生制御方法と加熱放電型印字ヘッド及び画像形成装置によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)放電電極と対向配置される記録媒体の記録面と反対側の面に形成若しくは接触又は近接して配設された対向電極と,放電電極と,の間に放電制御電圧に相当する電位差を発生させる電界中に配置された放電電極への加熱の有無により放電の有無を制御してイオンの発生制御を行うので、放電電極に直接電圧を印加する必要がなく、加熱手段で放電電極を選択的に加熱するだけで、放電電極から放電を発生させることができ、画像情報に基づいて、記録媒体の記録面の任意の位置にイオンを照射して所望の画像を形成することができる放電の制御性に優れたイオン発生制御方法を提供することができる。
【0039】
請求項2に記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)放電電極に直接電圧を印加することなく、電界形成部で形成される電界によって、放電電極と対向電極との間に、放電制御電圧に相当する電位差を発生させることができ、加熱手段による放電電極への加熱の有無により放電の有無を制御してイオンの発生制御を行うことができ、画像情報に基づいて、記録媒体の記録面の任意の位置にイオンを照射して所望の画像を形成することができる放電電極の耐久性、長寿命性に優れた加熱放電型印字ヘッドを提供することができる。
【0040】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)放電電極と離間して配置された電界形成用電極と対向電極との間に電界形成用電圧が印加されることにより、放電電極に直接電圧を印加することなく、放電電極と対向電極との間に、簡便かつ確実に放電制御電圧に相当する電位差を発生させることができ、加熱手段で放電電極を選択的に加熱するだけで、放電電極からの放電の発生を制御することができる取り扱い性に優れた加熱放電型印字ヘッドを提供することができる。
【0041】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)電界形成用電極に電圧を印加する電界形成用電圧印加部と、対向電極への接地又は電圧印加を行う媒体側電圧選択部により、記録媒体の種類や特性に応じて、電界形成用電極と対向電極に電界形成用電圧を分配して印加することができ、汎用性に優れ、放電電極と対向電極との間に確実に放電制御電圧に相当する電位差を発生させることができ、放電に伴って発生したイオンを記録面の所望の位置に精度良く照射して可視像や静電潜像を形成することができる画像の高品質性に優れた加熱放電型印字ヘッドを提供することができる。
【0042】
請求項5に記載の発明によれば、請求項3又は4の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)受電部と放電発生部を除いて放電電極に被覆膜が覆設されていることにより、放電電極を保護することができると共に、放電電極の放電発生部以外の箇所から放電が発生するのを防止でき、放電発生部から無駄なく集中的に放電を発生させることができる放電電極の耐久性、放電発生の効率性に優れた加熱放電型印字ヘッドを提供することができる。
【0043】
請求項6に記載の発明によれば、請求項2乃至5の内いずれか1項の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)加熱手段として放電電極と絶縁された発熱抵抗体を用いることにより、加熱の制御に5V駆動のような低耐電圧対応のドライバICを使用することができ、放電の制御が容易で、取り扱い性に優れた加熱放電型印字ヘッドを提供することができる。
【0044】
請求項7に記載の発明によれば、請求項2乃至5の内いずれか1項の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)加熱手段として放電電極と離間して配置された光照射部を用いることにより、放電電極と加熱手段を絶縁するための絶縁膜などを設けることなく、放電電極と加熱手段との間を確実に絶縁することができ、メンテナンスが容易で、製造工数を低減できる量産性及び加熱制御の信頼性に優れた加熱放電型印字ヘッドを提供することができる。
(2)放電電極と加熱手段が離間して配設されていることにより、放電電極と加熱手段が接触することがなく、加熱停止状態での放電電極の冷却時間を大幅に短縮することができ、加熱停止に対する放電停止の応答性を向上させて短時間で放電の有無を切替えることができ、高速記録が可能で、放電制御及び画像品質の信頼性に優れた加熱放電型印字ヘッドを提供することができる。
【0045】
請求項8に記載の発明によれば、請求項2乃至7の内いずれか1項の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)放電制御が容易な加熱放電型印字ヘッドを用いて、各種媒体に電荷を付与することができ、媒体の種類に応じて可視像や静電潜像を形成することができる汎用性、取扱い性に優れた画像形成装置を提供することができる。
【0046】
請求項9に記載の発明によれば、請求項8の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)加熱放電型印字ヘッドからの放電により、記録媒体の内部に非接触で可視像を形成することができ、部品点数が少なく、記録媒体へのダメージも必要最低限に押えることができる実用的で量産性、取り扱い性に優れた画像形成装置を提供することができる。
【0047】
請求項10に記載の発明によれば、請求項8の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)加熱放電型印字ヘッドからのイオン照射で静電潜像担持体の表面に静電潜像を形成することができ、その静電潜像に基づいて、顕像化手段で記録媒体の表面に可視像を形成することができ、静電潜像担持体を高品質な画像が形成可能な記録媒体に使用することができる取扱い性に優れた画像形成装置を提供することができる。
【0048】
請求項11に記載の発明によれば、請求項8の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)加熱放電型印字ヘッドからのイオン照射で静電潜像担持体の表面に静電潜像を形成し、その静電潜像に基づいて各種の記録媒体を静電現像して可視像を形成することができ、加熱放電型印字ヘッドと記録媒体が直接対向せず、加熱放電型印字ヘッドの汚れを防止できる加熱放電型印字ヘッドの取り扱い性、メンテナンス性に優れた画像形成装置を提供することができる。
【0049】
請求項12に記載の発明によれば、請求項11の効果に加え、以下のような効果を有する。
(1)顕像化手段により静電潜像に基づいて静電潜像担持体の表面に形成した可視像を、転写手段で記録媒体に転写して記録を行うことができ、普通紙の他、OHPシート、光沢紙等の様々な印字媒体を記録媒体として使用することができる汎用性に優れた画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
本発明のイオン発生制御方法と加熱放電型印字ヘッド及びそれを備えた画像形成装置について、以下図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1(a)は実施の形態1の加熱放電型印字ヘッドを備えた画像形成装置の要部断面模式図であり、図1(b)は図1(a)のA−A線矢視断面模式図である。
図1中、1は本発明の実施の形態1の加熱放電型印字ヘッド10を備えた画像形成装置、11は後述する対向電極32と電界形成用電極13との間に電界形成用電圧に相当する電位差を設定する電位差設定部14を有する加熱放電型印字ヘッド10の電界形成部、13は基板12上に形成され放電電極20と離間して配置された電界形成部11の電界形成用電極、15aは電界形成用電極13に電圧を印加する電位差設定部14の電界形成用電圧印加部、15b対向電極への接地を行う電位差設定部14の媒体側電圧選択部、16は後述する加熱手段の発熱抵抗体18aや放電電極20が形成される加熱放電型印字ヘッド10の放電電極形成基板、18aは放電電極形成基板16の電界形成用電極13と対向する位置に帯状に形成された加熱手段の発熱抵抗体、19はガラスやポリイミド,芳香族ポリアミド,ポリフェニレンオキシド,ポリベンズイミダゾール,ボリフェニルキノキサリン,ポリアリレート,ポリエーテルイミド,ポリエーテルスルフォン,ポリフェニレンサルファイド,ポリエーテルエーテルケトン,アラミド等の合成樹脂で形成され放電電極形成基板16上の発熱抵抗体18aに覆設された絶縁膜、20は金,銀,銅,アルミニウム等の金属を蒸着、スパッタ、印刷、メッキするなどして略短冊状に形成され放電電極形成基板16上の絶縁膜19によって発熱抵抗体18aと絶縁された加熱放電型印字ヘッド10の放電電極、20aは放電電極20の電界形成用電極13側の端部に形成され発熱抵抗体18aによって選択的に加熱される受電部、20bは放電電極20の受電部20a側と反対側の端部に形成された放電発生部、21はガラス、アラミドやポリイミド等の合成樹脂、SiO2等のセラミック、マイカ等の絶縁性の材質で形成され受電部20aと放電発生部20bを除いて放電電極20に覆設された被覆膜、30は画像形成装置1で使用する静電現像方式の記録媒体、31はPET等のフィルム状の合成樹脂やガラス等で透明に形成された記録媒体30の媒体基板、32は後述する媒体本体33の表示画素の各行に対応させてITO等で短冊状に形成され放電電極20の放電発生部20bと対向して配設された記録媒体30の透明な対向電極、33は電荷の作用により静電潜像が形成され内部に可視像が形成される記録媒体30の媒体本体、34は加法混色法における三原色(R,G,B)が縞模様状に配置された媒体本体33のカラーフィルタ、35はネマティック液晶やスメクティック液晶等のシャッター機能を有する液晶材料を用いた液晶方式や白色又は黒色を選択的に表示可能なツイストボール方式,電気泳動方式,粉体移動方式等の画像表示材料が封入された媒体本体33の表示層、sは記録媒体30の記録面である。
【0051】
次に、加熱放電型印字ヘッドの加熱手段の詳細について説明する。
図2は実施の形態1の画像形成装置における加熱放電型印字ヘッドの加熱手段の要部模式平面図である。
図2中、18bは発熱抵抗体18aと電気的に接続され発熱抵抗体18aの発熱を制御する加熱手段17のドライバIC、22aは発熱抵抗体18aに通電するための発熱用共通電極、22bは発熱抵抗体18aに通電するための発熱用個別電極である。
【0052】
次に、実施の形態1における加熱放電型印字ヘッドを備えた画像形成装置に用いる記録媒体の詳細について説明する。
図3は実施の形態1における加熱放電型印字ヘッドを備えた画像形成装置に用いる記録媒体のカラーフィルタを示す模式平面図であり、図4は実施の形態1における加熱放電型印字ヘッドを備えた画像形成装置に用いる記録媒体の対向電極を示す模式平面図である。
図3に示すように、カラーフィルタ34には、媒体本体33の表示原色として加法混色法における三原色(R,G,B)が縞模様状に繰り返し配置されている。
【0053】
図4中、32aはカラーフィルタ34に縞模様状に繰り返し配置された3色の表示原色(R,G,B)に対応して配置された対向電極32の色分割電極、32bは色分割電極32aにアラミドやポリイミド等の合成樹脂をコーティングして形成した絶縁膜、32cは同色の色分割電極32a同士を後述する色選択電極32dで接続するために絶縁膜32bに形成された接続用開口部、32dは同色の色分割電極32a同士を接続して色分割電極32aを色単位で選択するための対向電極32の色選択電極である。
【0054】
媒体本体33は、カラーフィルタ34と表示層35を組み合わせることにより、透過光を利用してカラー表示を行う。本実施の形態では、カラーフィルタ34が加法混色法における三原色(R,G,B)を備えることにより、フルカラー表示を行うことができるが、カラー表示の表示原色は二色以上であればよく、色の組合せも適宜、選択することができる。一つの画素を表示原色の数に応じて複数のサブ画素に分割し、各々のサブ画素に表示原色を縞模様状に配置することでカラー化に対応できる。
尚、カラーフィルタ34は光を透過してカラー表示することができればよいので、表示層35の裏面に限らず、表示層35の上面(記録面s)側に配置してもよい。また、ITO等の透明な対向電極32の下面に配置してもよい。
【0055】
記録媒体30の記録面sの表面抵抗は、画像形成時に電子やイオンにより付与された電荷が速やかに消滅するように109Ω・cm〜1013Ω・cmの抵抗値に形成したものを使用した。記録面sの表面の抵抗値が109Ω・cmより小さくなるにつれ、記録媒体30の記録面sに載せた電荷が面上で移動し易くなり、画像がぼやける傾向があり、1013Ω・cmより大きくなるにつれ、記録面sが帯電し易くなり、静電気などの影響により画像が変化する傾向があることがわかったためである。
【0056】
以上のように構成された加熱放電型印字ヘッドを備えた画像形成装置の動作に基づいてイオン発生制御方法並びに画像形成方法を説明する。
図1に示すように、まず、電位差設定工程における電界形成工程の電界形成用電圧印加工程において、電位差設定部14の電界形成用電圧印加部15aにより電界形成用電極13に電界形成用電圧を印加する。
続いて、電位差設定工程における電界形成工程の媒体側電圧選択工程において、電位差設定部14の媒体側電圧選択部15bにより媒体本体33のカラー表示の表示原色(R,G,B)の色単位で対向電極32を選択し接地する(ここでは一番左を選択)。
続いて、放電電極加熱工程において、選択された色を表示すべき画素に対応する位置にある放電電極20の受電部20a(一番左)を加熱手段17の発熱抵抗体18aにより選択的に加熱する。このとき、一画素の内の選択された色に対応した対向電極32(一番左)のみが接地されているので、発熱抵抗体18aにより加熱された放電電極20の受電部20a(一番左)に電界形成用電極13から電荷が注入される。注入された電荷は、電荷が注入された受電部20a(一番左)に連なる放電発生部20b(一番左)から放出され、記録媒体30の記録面s上の接地された対向電極32(一番左)に対応する位置に向かって移動する。電荷によって酸素や窒素がイオン化し、記録媒体30の記録面s上にイオンが照射され、電荷が注入されて画像が形成される。
接地されていない他の色に対応した対向電極32と放電電極20との間では放電は発生しないので、一番左の対向電極32上のサブ画素の位置には、放電に伴って発生した電子やイオンの電荷の作用により、静電潜像が形成され画像が表示されるが、他の対向電極32上には静電潜像は形成されず、画像は表示されない。また、加熱手段17の発熱抵抗体18aにより加熱されていない放電電極20の放電発生部20bと、それに対向する対向電極32との間でも放電は発生しない。
以上の動作を表示原色の色単位で繰り返し、カラー画像を形成する。記録媒体30の記録面sと反対側の面から見ると、画像情報に基づいて形成されたカラー画像が表示されることとなる。
【0057】
本実施の形態においては、媒体側電圧選択工程の後工程として放電電極加熱工程を行ったが、媒体側電圧選択工程と放電電極加熱工程を同時に行ってもよい。
また、電界形成用電圧印加工程において、電界形成用電圧印加部15aで電界形成用電圧に相当する電圧を全て電界形成用電極13のみに印加し、媒体側電圧選択工程において、媒体側電圧選択部15bで対向電極32を選択的に接地する代わりに、電界形成用電圧印加工程及び媒体側電圧選択工程において、放電電極20と対向電極32の間に放電制御電圧に相当する電位差が発生するように電界形成用電極13及び対向電極32に電界形成用電圧を分配して印加するようにしてもよい。このとき、媒体側電圧選択工程による対向電極32への電圧印加を選択的に行うことにより、無駄な電圧印加を行う必要がなく、省エネルギー性に優れる。また、誤って加熱手段17による加熱が行われても電圧が印加されていない対向電極32からは放電が発生しないので、放電発生制御の信頼性に優れる。
【0058】
尚、電界形成用電圧は、放電電極20と対向電極32との間に放電制御電圧に相当する電位差が発生するように、放電電極20と電界形成用電極13との距離に応じて、適宜、選択することができる。また、電界形成用電極13及び対向電極32に印加する電圧は記録媒体30の種類や特性などに応じて、適宜、選択することができる。
電界形成用電極13に交流電圧のみを印加すると正負のイオンが生成されるが、負の直流電圧を重畳することにより、負のイオンのみを選別することができ、放電を安定させることができる。尚、正のイオンのみを選別するには交流電圧に正の直流電圧を重畳すればよい。
【0059】
尚、電界形成部11の構成は、本実施の形態に限定されるものではなく、放電電極20と対向電極32との間に放電制御電圧に相当する電位差を発生させる電界を形成できるものであればよい。例えば、電界形成用電極13の代わりにコイルなどを用いてもよい。
本実施の形態では、放電電極20を略短冊状に形成し、記録媒体30の解像度(対向電極32のピッチ)に合わせて縞状に配置したが、放電電極20の配置はこれに限定されるものではない。例えば、放電電極20を記録媒体30の解像度よりも粗いピッチで形成しておき、記録媒体30の解像度に合わせて少しずつ位置をずらしながら画像を形成すれば、記録媒体30の解像度よりも粗いピッチで形成された放電電極20によって高解像度の画像を形成することができる。
【0060】
また、本実施の形態では、放電電極20の受電部20a側のピッチと放電発生部20b側のピッチが同一となるように放電電極20を形成したが、放電電極20の受電部20a側のピッチを記録媒体30の解像度よりも粗いピッチで形成し、放電発生部20b側のピッチを記録媒体30の解像度と同一となるように形成してもよい。これにより、発熱抵抗体18aの発熱を制御するドライバIC18bや発熱抵抗体18aに通電するための発熱用共通電極22a、発熱用個別電極22bの配線のピッチを拡げることができ、ショートなどが発生し難く、量産性、動作の信頼性に優れる。
【0061】
尚、電界形成用電極13は、放電電極20の全ての受電部20aに同時に対向している必要はなく、一部に対向していればよい。その場合、電界形成用電極13を受電部20aの配列方向に走査させれば、電界形成用電極13によって所望の位置に電界を形成すると共に、加熱手段17による選択的な加熱を行って放電電極20の任意の受電部20aに電荷を注入し、放電発生部20bから放電を発生させることができる。
また、本実施の形態では、電界形成用電極13と対向する受電部20aを発熱抵抗体18aで加熱したが、発熱抵抗体18aによる加熱位置は、放電電極20の長手方向の任意の位置を加熱することができる。よって、放電電極20の放電発生部20bの位置を加熱してもよい。
【0062】
本実施の形態の画像形成装置1では、白色又は黒色を選択的に表示可能な表示層35にカラーフィルタ34を組み合わせてカラー表示を行う媒体本体33を用いて記録媒体30を形成したが、記録媒体はこれに限定されるものではない。例えば、カラーフィルタ34を用いずに、減法混色法における三原色(Y,M,C)等に着色したツイストボールや微粒子等の画像表示材料を表示原色の色毎に配列した媒体本体を用いても、カラー表示が可能な記録媒体を形成することができる。また、フルカラー表示以外に任意のモノカラー表示を行う記録媒体も使用することができる。
【0063】
本実施の形態では、記録面sと反対側の面に対向電極32が一体に形成された専用の記録媒体30を用いたが、記録媒体が対向電極32を備えていない場合も、画像形成装置1側に対向電極32を設けておくことにより、記録媒体の記録面sと反対側の面に対向電極32を接触又は近接させることができ、対向電極32を備えていない記録媒体にも高品質な画像を形成することができ、記録媒体の選択の範囲を広げることができ、汎用性を向上させることができる。
また、画像形成装置1に、復元器(初期化手段)として、帯電ローラや帯電ブラシ等を備えることにより、画像形成装置1の内部で静電現像方式の記録媒体30を一様に帯電させて初期化することができ、記録媒体30への書き換えを繰返し行うことができる。
尚、復元器を備える代わりに、加熱放電型印字ヘッド10から画像が形成された記録媒体30に画像形成時と逆極性のイオンを照射して、不要な画像を消去することもできる。
【0064】
画像形成装置1は、加熱放電型印字ヘッド10と記録媒体30を固定或いは相対的に移動させて画像を形成することができる。記録媒体30を平板状の媒体載置部(図示せず)に載置して加熱放電型印字ヘッド10又は媒体載置部を水平移動させるようにしてもよいし、記録媒体30を搬送ローラで搬送してもよい。特に、対向電極32を画像形成装置1側に設ける場合は、媒体載置部の表面に対向電極32を形成することにより、記録媒体30と対向電極32を面接触させることができ、放電電極20と対向電極32の間に確実に放電制御電圧に相当する電位差を発生させて電子やイオンの電荷を確実に記録媒体30の記録面sに付与することができる。
尚、画像が形成された記録媒体30は、紙代わりの媒体として持ち運んだりして使用することができるが、画像形成装置1に固定された記録媒体30を表示媒体として画像を表示すれば、画像形成装置1を書き換え可能な画像表示装置として、広告用の看板等の代わりに使用することができる。
【0065】
実施の形態1のイオン発生制御方法によれば、以下の作用を有する。
(1)放電電極20と対向配置される記録媒体30の記録面sと反対側の面に形成若しくは接触又は近接して配設された対向電極32と,放電電極20と,の間に放電制御電圧に相当する電位差を発生させる電界中に配置された放電電極20への加熱の有無により放電の有無を制御してイオンの発生制御を行うので、放電電極20に直接電圧を印加する必要がなく、加熱手段17で放電電極20を選択的に加熱するだけで、放電電極20から放電を発生させることができ、画像情報に基づいて、記録媒体30の記録面sの任意の位置にイオンを照射して所望の画像を形成することができる。
(2)放電電極20に直接、電圧を印加する必要がないので、放電電極20の耐久性、長寿命性を向上させることができる。
【0066】
実施の形態1の加熱放電型印字ヘッドによれば、以下の作用を有する。
(1)電界形成部11で形成される電界によって、放電電極20と対向配置される記録媒体30の記録面sと反対側の面に形成若しくは接触又は近接して配設された対向電極32と、放電電極20と、の間に放電制御電圧に相当する電位差を発生させることができるので、放電電極20に直接電圧を印加する必要がなく、加熱手段17による放電電極20への加熱の有無により放電の有無を制御してイオンの発生制御を行うことができ、画像情報に基づいて、記録媒体30の記録面sの任意の位置にイオンを照射して所望の画像を形成することができる。
(2)放電電極20に直接、電圧を印加する必要がなく、放電電極20の耐久性、長寿命性に優れる。
(3)放電電極20に直接、電圧が印加されないので、発熱抵抗体18aを用いた加熱手段17によって放電電極20を加熱する場合でも、発熱抵抗体18aと放電電極20の間に高い絶縁性が必要なく、絶縁膜19を形成する工程を簡素化して歩留まりを向上させることができ、量産性に優れる。
(4)電界形成部11が、放電電極20と離間して配置された電界形成用電極13と、対向電極32と電界形成用電極13との間に電界形成用電圧に相当する電位差を設定する電位差設定部14を有することにより、放電電極20に直接電圧を印加することなく、放電電極20と対向電極32との間に、簡便かつ確実に放電制御電圧に相当する電位差を発生させて放電に備えることができ、加熱手段17で放電電極20を選択的に加熱するだけで、放電電極20からの放電の発生を制御することができ、取り扱い性に優れる。
(5)電位差設定部14が、電界形成用電極13に電圧を印加する電界形成用電圧印加部15aと、対向電極32への接地を行う媒体側電圧選択部15bを有することにより、放電電極20と対向電極32との間に確実に放電制御電圧に相当する電位差を発生させることができ、放電に伴って発生したイオンを記録面の所望の位置に精度良く照射して可視像や静電潜像を形成することができ、画像の高品質性に優れる。
(6)放電電極20が、電界形成用電極13側の端部に形成された受電部20aを有するので、電界形成用電極13と受電部20aを近接して対向させることができ、放電電極20と対向電極32との間に効率的に放電制御電圧に相当する電位差を発生させることができ、放電発生の信頼性に優れる。
(7)受電部20aと放電発生部20bを除いて放電電極20に被覆膜21が覆設されているので、放電電極20の放電発生部20b以外の箇所から放電が発生するのを防止でき、放電発生部20bから無駄なく集中的に放電を発生させることができ、放電発生の効率性に優れると共に、放電電極20を保護することができ、放電電極20の耐久性に優れる。
(8)加熱手段17が、放電電極20と絶縁された発熱抵抗体であることにより、加熱の制御に5V駆動のような低耐電圧対応のドライバICを使用することができ、放電の制御が容易で、取り扱い性に優れる。
(9)放電電極20と発熱抵抗体18aを絶縁して密着させることにより、発熱抵抗体18aの発する熱を効率的に放電電極20に伝達することができ、発熱した発熱抵抗体18aに対応する放電電極20(放電発生部20b)から放電を発生させることができる。
【0067】
実施の形態1の画像形成装置によれば、以下の作用を有する。
(1)加熱放電型印字ヘッド10を有することにより、記録媒体30に電荷を付与することができ、可視像を形成することができる。
(2)加熱放電型印字ヘッド10からの放電により、記録媒体30の内部に非接触で可視像を形成することができるので、部品点数が少なく、記録媒体30へのダメージも必要最低限に押えることができ実用性に優れる。
【0068】
(実施の形態2)
図5(a)は実施の形態2の加熱放電型印字ヘッドを備えた画像形成装置の要部断面模式図であり、図5(b)は図5(a)のB−B線矢視断面模式図である。尚、実施の形態1と同様のものには同一の符号を付して説明を省略する。
図5において、実施の形態2の画像形成装置1aが実施の形態1と異なるのは、静電潜像担持体33aを備えた記録媒体30aの表面に形成される静電潜像に基づいて記録媒体30aに可視像を形成する顕像化手段25を備えている点である。
顕像化手段25としては、トナー現像を行う現像器が好適に用いられるが、インクやその他の方法で現像を行ってもよい。
【0069】
実施の形態2の画像形成装置1aで用いられる加熱放電型印字ヘッド10aが実施の形態1と異なるのは、電界形成部11aの電界形成用電極13を放電電極20の受電部20aと対向させず、放電電極20の直列方向に配置している点と、電界形成用電極13が電界形成用電圧印加部15aによって電圧が印加される電圧印加用共通電極部13aと一端が電圧印加用共通電極部13aで接続され他端が放電電極20の受電部20aに対応して分割された分割電極部13bを有する櫛型に形成されている点と、電位差設定部14の媒体側電圧選択部15cにおいて、記録媒体30aの対向電極32に電圧を印加している点と、発熱抵抗体18aを用いた加熱手段17の代わりに、放電電極13と離間して配置された光照射部を有する加熱手段17aを備えている点である。
加熱手段17aは光照射部とポリゴンミラーやガルバノミラーを組合せたものや、光照射部をシリアル走査させるものが好適に用いられる。
【0070】
また、実施の形態2の画像形成装置1aで用いられる記録媒体30aが実施の形態1と異なるのは、静電現像方式の媒体本体33の代わりに、静電潜像担持体33aを備えている点と、対向電極32が静電潜像担持体33aの全面に渡って共通のベタ状に形成されている点である。
静電潜像担持体33aの素材としては、電子やイオンの照射により表面が帯電するものであればよいので、感光体である必要はなく、アルマイト等の絶縁体やポリエチレンテレフタレート(PET)等のフィルム状の合成樹脂やガラス等を用いることもできる。
【0071】
以上のように構成された加熱放電型印字ヘッドを備えた画像形成装置の動作に基づいてイオン発生制御方法並びに画像形成方法を説明する。
図5に示すように、まず、電位差設定工程における電界形成工程において、電位差設定部14の電界形成用電圧印加部15a及び媒体側電圧選択部15cにより、電界形成用電極13及び対向電極32に電界形成用電圧を分配して印加する。
続いて、放電電極加熱工程において、画像を表示すべき画素に対応する位置にある放電電極20の受電部20a(一番左)を加熱手段17aにより選択的に加熱する。このとき、記録媒体30aの全面に共通した対向電極32に電圧が印加されているが、放電電極20の受電部20a(一番左)が加熱手段17aにより選択的に加熱されているので、加熱手段17aにより加熱された放電電極20の受電部20a(一番左)のみに電界形成用電極13から電荷が注入される。注入された電荷は、電荷が注入された受電部20a(一番左)に連なる放電発生部20b(一番左)から放出され、記録媒体30aの記録面s上の電荷が放出された放電発生部20bと対向する位置に向かって最短距離を移動する。電荷によって酸素や窒素がイオン化し、記録媒体30aの記録面s上にイオンが照射され、電荷が注入されて静電潜像が形成される。
加熱手段17aにより加熱されていない放電電極20の放電発生部20bと、それに対向する対向電極32との間では放電は発生しない。
以上の動作を記録媒体30aの画素単位で繰り返し、記録媒体30aの記録面sの全面に静電潜像を形成する。
静電潜像形成工程が終了したら、電位差設定部14の媒体側電圧選択部15cによる電圧印加を停止し、顕像化手段25により、静電潜像担持体33aの表面に形成された静電潜像に基づいて記録媒体30aに可視像を形成する現像工程を行う。
【0072】
本実施の形態では、電界形成工程において、電位差設定部14の電界形成用電圧印加部15aにより電界形成用電極13に電圧を印加する電界形成用電圧印加工程と、媒体側電圧選択部15cにより対向電極32に電圧を印加する媒体側電圧選択工程を同時に行い、その後工程として放電電極加熱工程を行ったが、先に電界形成工程の電界形成用電圧印加工程のみを行い、その後工程として媒体側電圧選択工程と放電電極加熱工程を同時に行ってもよい。
また、電界形成用電極13及び対向電極32に電界形成用電圧を分配して印加する代わりに、実施の形態1と同様に、電界形成用電圧印加工程において、電界形成用電圧印加部15aで電界形成用電圧に相当する電圧を全て電界形成用電極13のみに印加し、媒体側電圧選択工程において、媒体側電圧選択部15bで対向電極32を接地するようにしてもよい。
【0073】
本実施の形態では、放電電極20の表面側から加熱手段17aによって光を照射したが、放電電極形成基板16を透光性を有するガラスや合成樹脂などで形成し、放電電極形成基板16側から放電電極20の裏面に光を照射して加熱することもできる。尚、加熱手段17aにより、放電電極形成基板16側から放電電極20の裏面を加熱する場合、加熱位置は受電部20aの位置に限定されず、放電電極20の任意の位置を加熱することができる。
【0074】
本実施の形態では、静電潜像担持体33aの表面に形成される静電潜像に基づいて、顕像化手段25で記録媒体30aの記録面sに可視像を形成し、そのまま記録媒体として用いる場合について説明したが、画像形成装置が静電潜像担持体33aを備えている場合は、さらに転写手段を設けることにより、静電潜像担持体33aに形成された可視像を転写手段で転写して、普通紙やOHPシートなどの印字媒体に画像(可視像)を形成することもできる。転写手段としては、アルミニウム等の金属製のローラの表面をシリコーンゴム等の合成ゴムで被覆した転写定着ローラ等が好適に用いられる。トナー現像の際に圧力定着型のトナーを用いれば、転写手段により押圧することで可視像を記録媒体に転写できると共に、定着させることができる。
【0075】
実施の形態2のイオン発生制御方法によれば、以下の作用を有する。
(1)放電電極20と対向配置される記録媒体30aの記録面sと反対側の面に形成若しくは接触又は近接して配設された対向電極32と,放電電極20と,の間に放電制御電圧に相当する電位差を発生させる電界中に配置された放電電極20への加熱の有無により放電の有無を制御してイオンの発生制御を行うので、放電電極20に直接電圧を印加する必要がなく、加熱手段17aで放電電極20を選択的に加熱するだけで、放電電極20から放電を発生させることができ、画像情報に基づいて、記録媒体30aの記録面sの任意の位置にイオンを照射して所望の画像を形成することができる。
(2)放電電極20に直接、電圧を印加する必要がないので、放電電極20の耐久性、長寿命性を向上させることができる。
【0076】
実施の形態2の加熱放電型印字ヘッドによれば、以下の作用を有する。
(1)電界形成部11aで形成される電界によって、放電電極20と対向配置される記録媒体30aの記録面sと反対側の面に形成若しくは接触又は近接して配設された対向電極32と、放電電極20と、の間に放電制御電圧に相当する電位差を発生させることができるので、放電電極20に直接電圧を印加する必要がなく、加熱手段17aによる放電電極20への加熱の有無により放電の有無を制御してイオンの発生制御を行うことができ、画像情報に基づいて、記録媒体30aの記録面sの任意の位置にイオンを照射して所望の画像を形成することができる。
(2)放電電極20に直接、電圧を印加する必要がなく、放電電極20の耐久性、長寿命性に優れる。
(3)電界形成部11aが、放電電極20と離間して配置された電界形成用電極13と、対向電極32と電界形成用電極13との間に電界形成用電圧に相当する電位差を設定する電位差設定部14を有することにより、放電電極20に直接電圧を印加することなく、放電電極20と対向電極32との間に、簡便かつ確実に放電制御電圧に相当する電位差を発生させて放電に備えることができ、加熱手段17aで放電電極20を選択的に加熱するだけで、放電電極20からの放電の発生を制御することができ、取り扱い性に優れる。
(4)電位差設定部14が、電界形成用電極13に電圧を印加する電界形成用電圧印加部15aと、対向電極32への電圧印加を行う媒体側電圧選択部15cを有することにより、記録媒体30aの種類や特性に応じて、電界形成用電極13と対向電極32に電界形成用電圧を分配して印加することができ、汎用性に優れると共に、放電電極20と対向電極32との間に確実に放電制御電圧に相当する電位差を発生させることができ、放電に伴って発生したイオンを記録面の所望の位置に精度良く照射して可視像や静電潜像を形成することができ、画像の高品質性に優れる。
(5)放電電極20が、電界形成用電極13側の端部に形成された受電部20aを有するので、電界形成用電極13と受電部20aを近接して対向させることができ、放電電極20と対向電極32との間に効率的に放電制御電圧に相当する電位差を発生させることができ、放電発生の信頼性に優れる。
(6)受電部20aと放電発生部20bを除いて放電電極20に被覆膜21が覆設されているので、放電電極20の放電発生部20b以外の箇所から放電が発生するのを防止でき、放電発生部20bから無駄なく集中的に放電を発生させることができ、放電発生の効率性に優れると共に、放電電極20を保護することができ、放電電極20の耐久性に優れる。
(7)加熱手段17aが、放電電極20と離間して配置された光照射部であることにより、放電電極20と加熱手段17aを絶縁するための絶縁膜などを設けることなく、放電電極20と加熱手段17aとの間を確実に絶縁することができ、製造工数を低減でき、量産性及び加熱制御の信頼性を向上させることができる。
(8)放電電極20と加熱手段17aが離間して配設されているので、別々に製造したものを簡便に組合せて使用することができ、放電電極20又は加熱手段17aのいずれか一方に不具合が生じた際に、不具合が生じたものだけを修理、交換することができ、メンテナンス性、省資源性に優れる。
(9)放電電極20と加熱手段17aが離間して配設されていることにより、放電電極20と加熱手段17aが接触することがないので、加熱停止状態での放電電極20の冷却時間を大幅に短縮することができ、加熱停止に対する放電停止の応答性を向上させて短時間で放電の有無を切替えることができ、画像品質及び記録速度を向上できる。
【0077】
実施の形態2の画像形成装置によれば、以下の作用を有する。
(1)加熱放電型印字ヘッド10aを有することにより、記録媒体30aに電荷を付与することができ、静電潜像を形成することができる。
(2)記録媒体30aが、静電潜像担持体33aを備えることにより、加熱放電型印字ヘッド10aからのイオン照射で静電潜像担持体33aの表面に静電潜像を形成することができ、その静電潜像に基づいて、顕像化手段25で記録媒体30aの表面に可視像を形成することができる。
(3)加熱放電型印字ヘッド10aからのイオンの照射により静電潜像担持体33aの表面に静電潜像を形成することができるので、ポリゴンミラー等の露光光学系を必要とせず、部品点数が少なく構造を簡素化できる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、放電電極に直接、電圧を印加する必要がなく、制御が容易で、放電電極の耐久性、長寿命性を向上させることができるイオン発生制御方法の提供、発熱抵抗体などの加熱手段を用いて放電電極を加熱する場合でも、加熱手段と放電電極の間に高い絶縁性が必要なく、絶縁膜を形成する工程を簡素化して歩留まりを向上させることができ、量産性、長寿命性に優れる加熱放電型印字ヘッドの提供、加熱放電型印字ヘッドからの放電量の経時変化が発生し難く、画像品質の信頼性に優れる画像形成装置の提供を行って、記録媒体の種類によらず高品質な画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】(a)実施の形態1の加熱放電型印字ヘッドを備えた画像形成装置の要部断面模式図(b)図1(a)のA−A線矢視断面模式図
【図2】実施の形態1の画像形成装置における加熱放電型印字ヘッドの加熱手段の要部模式平面図
【図3】実施の形態1における加熱放電型印字ヘッドを備えた画像形成装置に用いる記録媒体のカラーフィルタを示す模式平面図
【図4】実施の形態1における加熱放電型印字ヘッドを備えた画像形成装置に用いる記録媒体の対向電極を示す模式平面図
【図5】(a)実施の形態2の加熱放電型印字ヘッドを備えた画像形成装置の要部断面模式図(b)図5(a)のB−B線矢視断面模式図
【符号の説明】
【0080】
1,1a 画像形成装置
10,10a 加熱放電型印字ヘッド
11,11a 電界形成部
12 基板
13 電界形成用電極
14 電位差設定部
15a 電界形成用電圧印加部
15b,15c 媒体側電圧選択部
16 放電電極形成基板
17,17a 加熱手段
18a 発熱抵抗体
18b ドライバIC
19 絶縁膜
20 放電電極
20a 受電部
20b 放電発生部
21 被覆膜
22a 発熱用共通電極
22b 発熱用個別電極
25 顕像化手段
30,30a 記録媒体
31 媒体基板
32 対向電極
32a 色分割電極
32b 絶縁膜
32c 接続用開口部
32d 色選択電極
33 媒体本体
33a 静電潜像担持体
34 カラーフィルタ
35 表示層
s 記録面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンの発生制御を放電電極の温度制御により行うイオン発生制御方法であって、前記放電電極と対向配置される記録媒体の記録面と反対側の面に形成若しくは接触又は近接して配設された対向電極と,前記放電電極と,の間に放電制御電圧に相当する電位差を発生させる電界中に配置された放電電極への加熱の有無により放電の有無を制御してイオンの発生制御を行うことを特徴とするイオン発生制御方法。
【請求項2】
電界形成部と、前記電界形成部で形成される電界中に配置される放電電極と、前記放電電極を選択的に加熱する加熱手段と、を備え、前記放電電極と対向配置される記録媒体の記録面と反対側の面に形成若しくは接触又は近接して配設された対向電極と,前記放電電極と,の間に放電制御電圧に相当する電位差を発生させ、前記加熱手段による前記放電電極への加熱の有無により放電の有無を制御してイオンの発生制御を行うことを特徴とする加熱放電型印字ヘッド。
【請求項3】
前記電界形成部が、前記放電電極と離間して配置された電界形成用電極と、前記対向電極と前記電界形成用電極との間に電界形成用電圧に相当する電位差を設定する電位差設定部と、を備えたことを特徴とする請求項2に記載の加熱放電型印字ヘッド。
【請求項4】
前記電位差設定部が、前記電界形成用電極に電圧を印加する電界形成用電圧印加部と、前記対向電極への接地又は電圧印加を行う媒体側電圧選択部と、を備えたことを特徴とする請求項3に記載の加熱放電型印字ヘッド。
【請求項5】
前記放電電極が、前記電界形成用電極側の端部に形成された受電部と、前記電界形成用電極側と反対側の端部に形成された放電発生部と、を有し、前記受電部と前記放電発生部を除いて前記放電電極に被覆膜が覆設されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の加熱放電型印字ヘッド。
【請求項6】
前記加熱手段が、前記放電電極と絶縁された発熱抵抗体を備えたことを特徴とする請求項2乃至5の内いずれか1項に記載の加熱放電型印字ヘッド。
【請求項7】
前記加熱手段が、前記放電電極と離間して配置された光照射部であることを特徴とする請求項2乃至5の内いずれか1項に記載の加熱放電型印字ヘッド。
【請求項8】
請求項2乃至7の内いずれか1項に記載の加熱放電型印字ヘッドを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
前記加熱放電型印字ヘッドからの放電による電荷の作用で内部に可視像が出現する記録媒体に対して記録を行うことを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記記録媒体が、前記加熱放電型印字ヘッドからの放電による電荷の作用で表面に静電潜像が形成される静電潜像担持体を備え、前記静電潜像担持体の表面に形成される静電潜像に基づいて前記記録媒体に可視像を形成する顕像化手段を備えたことを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記加熱放電型印字ヘッドに対向して配置され前記加熱放電型印字ヘッドからの放電による電荷の作用で表面に静電潜像が形成される静電潜像担持体を備えたことを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記静電潜像担持体の表面に形成された静電潜像に基づいて前記静電潜像担持体の表面に可視像を形成する顕像化手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、を備えたことを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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